JP5296609B2 - 固体酸化物形燃料電池の製造方法 - Google Patents
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これに対し、たとえば、La(Ni,Fe)O3などの高い電極活性を有する金属酸化物を空気極として用いることにより、動作温度を800℃以下好ましくは700℃程度にまで低減することができれば、セパレータ(インターコネクタ)やマニホールドにステンレスなどの金属部材を用いることが可能となり、製造コストの低減を図れるようになる。
ここで、処理温度を高温とするのはアルミニウム原子を金属側に十分拡散させてより強い接合を形成するためである。また、アルミ箔に高圧をかけるのはアルミ箔を接合面に完全に密着させ、かつ、溶融したアルミが凝集するのを防ぐためである。
質の一方の面に燃料極が形成されるとともに他方の面に空気極が形成された燃料電池セル
と、この燃料電池セルと接合される金属部材とを有する固体酸化物形燃料電池の製造方法
であって、前記燃料電池セルおよび前記金属部材のそれぞれの接合部位の内部に金属層を形成する原子を打ち込んで金属層を形成する工程と、前記燃料電池セルと前記金属部材とを重ね合わせて、前記燃料電池セルおよび前記金属部材のそれぞれに形成された前記金属層を互いに接触させる工程と、前記燃料電池セルおよび前記金属部材のそれぞれに形成された前記金属層を溶融させて、前記燃料電池セルと前記金属部材とを接合する工程と、前記溶融させた金属層に酸化処理を施す工程とを少なくとも備えることを特徴とする。
る工程は、前記燃料電池セルおよび前記金属部材のそれぞれの接合部位の内部に真空成膜法により前記金属層を形成する原子を打ち込んで前記金属層を形成するものとしてもよい。
また、溶融した金属層を酸化させることにより、燃料電池セルと金属部材との電気絶縁を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態1について図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1は、ジルコニア系酸化物イオン伝導体からなる電解質基板の一方の面に燃料極が形成されるとともに他方の面に空気極が形成された燃料電池セルに、耐熱合金から成るセルカバーを接合する固体酸化物形燃料電池の製造方法である。
まず、本発明の実施の形態1にかかる製造方法によって製造される固体酸化物形燃料電池140の一構成例を説明する。
図1および図2に示すように、この例における固体酸化物形燃料電池140は、円盤状の燃料電池セル110と環状のセルカバー120とを酸化アルミニウム130を用いて接合したものである。
燃料電池セル110は、たとえば、電解質基板112は、イットリア添加ジルコニア(YSZ。たとえば、0.9ZrO2−0.1Y2O3)により構成され、空気極114は、LSM(たとえば、La0.78Sr0.22MnO3)により構成され、燃料極116は、NiO−YSZサーメットにより構成されたものを用いる。
なお、酸化アルミニウム130の層は20〜400nm程度の厚さである。
次に、本発明の実施の形態1にかかる固体酸化物形燃料電池140を製造する手順について、主に図3を参照しながら説明する。
燃料電池セル110は、たとえば次のような方法により製造することができる。
まず、ドクターブレード法により0.2mm厚のイットリア添加ジルコニア(YSZ。たとえば、0.9ZrO2−0.1Y2O3)を1300℃で焼成して電解質基板112を形成する。この後、電解質基板112の一面を鏡面研磨しておく。続いて、電解質基板112の面のうち鏡面研磨がなされてない面に、NiO−YSZのスラリ(たとえばイットリアを10mol%の割合で添加したイットリア添加ジルコニア粉末(平均粒径は約0.2μm)と、NiO粉末(平均粒径は約0.8μm)とを重量比2対3の割合で混合したもの。)をスクリーンプリント法で塗布したうえで白金メッシュ集電体を乗せ、空気中、1300℃の雰囲気で8時間にわたって焼成することにより燃料極116を形成する。次いで、電解質基板112の面のうち鏡面研磨がなされた面に、粒径0.8μmのLSM(たとえば、La0.78Sr0.22MnO3)のスラリを塗布したうえで白金メッシュ集電体を乗せ、1100℃の雰囲気で4時間にわたって焼成することにより空気極114を形成する。以上の方法により、燃料電池セル110が得られる。
具体的には、図4および図5に示すように、燃料電池セル110の電解質基板112のうち鏡面研磨処理を施した空気極114側の面に、たとえばステンシルマスクなどの手法を用いて環状のアルミニウム層118を形成する。セルカバー120についても、セルカバー120の部位のうち鏡面研磨処理を施した、燃料電池セル110に形成されたアルミニウム層118と接合する部位にも、同じくステンシルマスクなどの手法を用いて環状のアルミニウム層122を形成する。
ここで、燃料電池セル110に形成されたアルミニウム層118およびセルカバー120に形成されたアルミニウム層122はともに厚さ70nmとした。
具体的には、窒素雰囲気中など、アルミニウムの酸化が進行しにくい条件下で700℃でアルミニウム層118,122のアルミニウムを加熱して溶融させると同時に、燃料電池セル110およびセルカバー120を重ねた状態で加重をかけ、接合部位に約0.1MPaの圧力を加えることにより燃料電池セル110とセルカバー120とを接合する。
ここで、接合部位に約0.1MPaという比較的小さな圧力しかかけないのは、図3のステップS13の処理にて、真空成膜の過程で既に一部のアルミニウム原子が電解質基板112およびセルカバー120の内部に打ち込まれた状態でアルミニウム層118,122が形成されているので、電解質基板112とアルミニウム層118との界面や、アルミニウム層122とセルカバー120との界面では、アルミニウム原子はもとより強く密着しているからである。
なお、加熱温度は700℃に限定されるものではなく、アルミニウムの融点660℃よりも高い温度であればよい。
具体的には、雰囲気を空気に替え、700℃の温度で1時間ほど加熱する。これにより、電解質基板112からアルミニウムに対して酸素が拡散して、溶融したアルミニウムが酸化して、燃料電池セル110とセルカバー120とを接合する酸化アルミニウム130が生成される。
この結果、燃料電池セル110とセルカバー120とを酸化アルミニウム130により接合した固体酸化物形燃料電池140が得られる。
なお、酸化アルミニウム130の層は、燃料電池セル110とセルカバー120との間を電気的に絶縁するとともに、シール材として気密性を保つ働きがある。
次に、実施の形態1にかかる方法により製造された固体酸化物形燃料電池140の発電特性の試験結果を示す。
図6は、固体酸化物形燃料電池140の発電特性を試験する装置の構成を示す図である。セルカバー120の外周部をアルミナ管150によって挟持することにより固体酸化物形燃料電池140を固定し、同時にセルカバー120およびアルミナ管150の組み合わせにより空気極114と燃料極116を遮断(ガスシール)した。本来、すべての接合部位に酸化アルミニウムによるガスシール処理を施すのが望ましいが、この装置では、便宜のため、セルカバー120とアルミナ管150との接合部位にはパイレックス(登録商標)ガラスを用いている。なお、固体酸化物形燃料電池140の空気極114および燃料極116に対して、白金メッシュ集電体152a,152bをそれぞれ接続し、白金メッシュ集電体152a,152bを外部電極として固体酸化物形燃料電池140の起電力を測定した。
次に、実施の形態1にかかる方法により製造された固体酸化物形燃料電池140の強度特性の試験結果を示す。
なお、試験の便宜をはかるために、燃料電池セル110に替えて、厚さ1mmで、1.5cm角のジルコニア角材の中心に厚さ70nmで、1cm角のアルミニウム層をRFスパッタリング法にて形成したものを用いるとともに、セルカバー120に替えて、厚さ1mmで、1.5cm角のステンレス角材の中心に同じく厚さ70nmで、1cm角のアルミニウム層をRFスパッタリング法にて形成したものを用い、両者を上述した図3のステップS13〜S15の処理に従って接合した。
このように製造した固体酸化物形燃料電池140の代替試料に対し、室温にてひっぱり試験を行なったところ、1MPaの力でひっぱっても接合面の破壊が起こらず、十分な強度を有することを確認できた。
したがって、より低い温度および圧力でも、燃料電池セル110と金属部材であるセルカバー120とを酸化アルミニウム130により接合して、固体酸化物形燃料電池140を製造することができる。
次に、本発明の実施の形態2について図面を参照して詳細に説明する。実施の形態2も、ジルコニア系酸化物イオン伝導体からなる電解質基板の一方の面に燃料極が形成されるとともに他方の面に空気極が形成された燃料電池セルに、耐熱合金から成るセルカバーを接合する固体酸化物形燃料電池の製造方法である
まず、本発明の実施の形態2にかかる製造方法によって製造される固体酸化物形燃料電池240の一構成例を説明する。
図7および図8に示すように、固体酸化物形燃料電池240は、円盤状の燃料電池セル210と環状のセルカバー220とを酸化アルミニウム230を用いて接合したものであり、基本的には、実施の形態1にかかる固体酸化物形燃料電池140と同じ構成である。
しかしながら、実施の形態2では、燃料電池セル210とセルカバー220とを接合する酸化アルミニウム230の層は5〜200μmの厚みを有しており、実施の形態1にかかる酸化アルミニウム130の層に比べると少なくとも10倍は厚い。
次に、本発明の実施の形態2にかかる固体酸化物形燃料電池240を製造する手順について、主に図9を参照しながら説明する。
なお、燃料電池セル210は、実施の形態1にかかる燃料電池セル110と同じ方法により製造することができる。
ここで、アルミニウム箔232は5〜200μmと厚いので、燃料電池セル210とセルカバー220との接合部位に、アルミニウム箔232の厚さ(5〜200μm)と同程度の凹凸があるときでも、後述するステップS25,S26の処理を経て良好にガスシールすることができる。すなわち、実施の形態1とは異なり、燃料電池セル210やセルカバー220を鏡面研磨しなくても、良好にガスシールすることができる。
このようにして、燃料電池セル210とセルカバー220とを酸化アルミニウム230により接合した固体酸化物形燃料電池240が得られる。
実施の形態2にかかる手順で製造した固体酸化物形燃料電池240の発電特性・強度特性を調べたところ、実施の形態1にかかる固体酸化物形燃料電池140と同様に、十分な発電特性・強度を有することが確認された。
次に、本発明の実施の形態3について図面を参照して詳細に説明する。実施の形態3も、酸化物イオン伝導体からなる電解質層の一方の面に燃料極が形成されるとともに他方の面に空気極が形成された燃料電池セルに、耐熱合金から成るセルカバーを接合する固体酸化物形燃料電池の製造方法である。しかしながら、実施の形態3では、図12,13に示すように、燃料極316を支持体とした燃料電池セル310により固体酸化物形燃料電池340が構成される点が実施の形態1,2とは異なる。燃料電池セル310は、燃料極316が厚く、電解質層312は非常に薄いのが特徴である。また、燃料極316の面積が最も広いということも特徴である。
次いで、固体酸化物形燃料電池340の製造手順について、主に図14を参照しながら説明する。
燃料電池セル310は、たとえば以下のような方法により製造することができる。
まず、実施の形態1,2で用いたと同じ技術であるドクターブレード法により、NiO−YSZのスラリからなる燃料極316のグリーンシートを作製し、この上に、電解質層312のもととなるYSZをスクリーンプリント法により塗布したうえで、60mm径の大きさでカットする。これを、200℃、12時間で脱脂した後、空気中で、1350℃、4時間の条件で焼成し、60mm径、厚さ20μmの電解質層312、および厚さ1mmの燃料極316からなるセル基板を得る。この後、電解質層312に、50mm径のLSMのスラリを同様にプリントし、1150℃、2時間焼成することにより空気極314を形成し、燃料電池セル310が得られる。
この後、実施の形態2で説明した図9のステップS23の処理と同様、図15,16に示す様に、たとえば20μm程の厚みを有する環状のアルミニウム箔332を燃料電池セル310とセルカバー320との接合部位に介在させ(ステップS33)、燃料電池セル310とセルカバー320とを重ね合わせて、燃料電池セル310に形成されたアルミニウム層318と、セルカバー320に形成されたアルミニウム層322とを接触させる(ステップS34)。続いて、実施の形態2の図9のステップS25,S26の処理と同様に、燃料電池セル310とセルカバー320とをアルミニウムの酸化が進行しにくい状況下で接合した後(ステップS35)、溶融したアルミニウムを酸化させる(ステップS36)。
以上の手順により、燃料電池セル310とセルカバー320とを酸化アルミニウム330により接合した固体酸化物形燃料電池340が得られる。
実施の形態3にかかる方法により製造された固体酸化物形燃料電池340の発電特性の試験結果を示す。
図17に示すように、固体酸化物形燃料電池340のセルカバー320の外周部を金属からなる2つのセパレータ360a,360bで挟みこむことにより、発電ユニット370を構成した。発電ユニット370では、セルカバー320とセパレータ360a,360bとがコンプレッションシールされることによりマニホールドとして機能する。ここで、コンプレッションシールとは、セルカバー320とセパレータ360a,360bとの接合部位に、図示しない環状の薄いマイカを介在させたうえで、セパレータ360a,360bを上下から押して圧力によって遮断(ガスシール)する方法である。発電ユニット370では、セパレータ360a,360bを上下から押すことができるため、ここでは、コンプレッションシール法を採用した。なお、図17には、発電ユニット370を一つのみ示しているが、発電ユニット370を複数組み合わせることによりスタックを構成できるのは言うまでもない。
このような構成の発電ユニット370に対し、実施の形態1と同様、燃料極316に3%加湿した水素を供給するとともに、空気極314に100cc/秒の割合で酸素を供給したところ、1.02Vという高い起電力が得られた。したがって、実施の形態3にかかる製造方法により製造された固体酸化物形燃料電池340(発電ユニット370)においても、燃料電池セル310とセルカバー320とが酸化アルミニウム330により良好に接合されていることが示された。
なお、上述した実施の形態では、燃料電池セル110,210,310およびセルカバー120,220,320のそれぞれの接合部位にRFスパッタリングやDCスパッタリングなどの真空成膜法によりアルミニウム層118,122,218,222,318,322を形成するものとして説明したが、真空成膜法に限定されるものではなく、燃料電池セル110,210,310およびセルカバー120,220,320のそれぞれの接合部位の内部にアルミニウム原子を打ち込んで、強い密着力を有するアルミニウム層を形成するものであれば、いかなる手法を用いてもよい。
同じく、上述した実施の形態では、セルカバー120,220,320は環状のものとしたが、このような形に限定されるものではなく、それぞれ、燃料電池セル110および電解質基板112、燃料電池セル210および電解質基板212、燃料電池セル310および電解質層312を接合するのであれば、いかなる形状であってもかまわない。
Claims (5)
- 酸化物イオン伝導体からなる電解質の一方の面に燃料極が形成されるとともに他方の面
に空気極が形成された燃料電池セルと、この燃料電池セルと接合される金属部材とを有す
る固体酸化物形燃料電池の製造方法であって、
前記燃料電池セルおよび前記金属部材のそれぞれの接合部位の内部に金属層を形成する原子を打ち込んで金属層を形成する工程と、
前記燃料電池セルと前記金属部材とを重ね合わせて、前記燃料電池セルおよび前記金属
部材のそれぞれに形成された前記金属層を互いに接触させる工程と、
前記燃料電池セルおよび前記金属部材のそれぞれに形成された前記金属層を溶融させて、
前記燃料電池セルと前記金属部材とを接合する工程と、
前記溶融させた金属層に酸化処理を施す工程と、
を少なくとも備えることを特徴とする固体酸化物形燃料電池の製造方法。 - 請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池の製造方法において
前記金属層を形成する工程は、前記燃料電池セルおよび前記金属部材のそれぞれの接合
部位の内部に真空成膜法により前記金属層を形成する原子を打ち込んで前記金属層を形成する
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池の製造方法。 - 請求項1または2に記載の固体酸化物形燃料電池の製造方法において、
前記燃料電池セルおよび前記金属部材のそれぞれの接合部位に鏡面研磨処理を施す工程
をさらに備えることを特徴とする固体酸化物形燃料電池の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池の製造方法において、
前記燃料電池セルと前記金属部材との接合部位に、前記金属層と同成分からなる金属箔を介在させる工程
をさらに備えることを特徴とする固体酸化物形燃料電池の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の固体酸化物形燃料電池の製造方法において、
前記金属層は少なくともアルミニウムを含む金属である
ことを特徴とする固体酸化物形燃料電池の製造方法。
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