本発明に係る燃料噴射ポンプ100は、ディーゼルエンジンに具備される燃料噴射装置の一部を成す装置である。この燃料噴射装置では、ディーゼルエンジンの燃料タンクに貯溜された燃料がフィードポンプにより燃料噴射ポンプ100へ送られ、燃料噴射ポンプ100により高圧に加圧される。そして、この高圧の燃料が燃料噴射ポンプ100により燃料噴射ノズルへ高圧管を介して圧送され、燃料噴射ノズルによりディーゼルエンジンのシリンダ室内に形成される燃焼室に噴射される。
以下では、本発明に係る燃料噴射ポンプの実施の一形態である燃料噴射ポンプ100について、図1から図7までを参照して説明する。以下では便宜上、図1の紙面手前方向を前方向として説明を行う。また、図面中の各部材は、特に油路接続構造を強調するため、大きさの比率を適宜に変更して示している。
図1に示すように、燃料噴射ポンプ100は、ポンプ本体部10、電磁スピル弁部30、および等圧弁部60を具備する。ポンプ本体部10は、燃料噴射ポンプ100の主たる構造体を成す。ポンプ本体部10の上部には電磁スピル弁部30が設けられ、電磁スピル弁部30の上部には等圧弁部60が設けられる。燃料噴射ポンプ100に送られてきた燃料は、まずポンプ本体部10に送られ、続いて電磁スピル弁部30、等圧弁部60に順に圧送される。
以下では、ポンプ本体部10の詳細な構成について、図1および図2を参照して説明する。ポンプ本体部10は、取付台11、ポンプ本体12、バレル50、プランジャ14、下バネ受け15、上バネ受け16、プランジャバネ17、タペット18、ローラ19、およびカム20などを備える。
取付台11は、ポンプ本体部10の下部に備えられ、ディーゼルエンジンのシリンダブロックに取り付けられる。この取付台11の取付によって、ポンプ本体部10、ひいては燃料噴射ポンプ100が、ディーゼルエンジンのシリンダブロックに取り付けられる。
ポンプ本体12は、ポンプ本体部10の主たる構造体を成す部材である。ポンプ本体12は略円筒形状に形成される。ポンプ本体12は、その長手方向(軸線方向)を上下方向として取付台11の上方に配置され、その下端部で取付台11に固設される。ポンプ本体12の上半部の内径は、下半部の内径に比して縮径されており、上半部の内壁と下半部の内壁との間には側面視で段差が形成されている。
バレル50は、円筒部50A、フランジ部50B、および縮径部50Cを有する。円筒部50Aは、略円筒形状に形成され、その外径をポンプ本体12の上半部の内径と略一致させている。円筒部50Aの一端(上端)には、円筒部50Aの外径に対して伸径したフランジ部50Bが、円筒部50Aの径方向外側に向かって突出するように、一体的に形成される。円筒部50Aの他端(下端)には、円筒部50Aの外径に対して縮径した縮径部50Cが円筒部50Aと一体的に形成される。円筒部50Aの内径は、縮径部50Cの内径と一致しており、円筒部50Aの内壁面と縮径部50Cの内壁面とが、同一面上に位置するように形成されている。円筒部50Aの内部空間と縮径部50Cの内部空間とは、後述のプランジャ14を内装するプランジャ孔14hを形成している。
バレル50は、円筒部50Aの外周面がポンプ本体12上半部の内壁面と密着した状態で、かつ、フランジ部50Bの下端面とポンプ本体12の上端面とが密着した状態で、ポンプ本体12に嵌着される。
ポンプ本体12とバレル50との間には、燃料ギャラリ13が形成される。燃料ギャラリ13は、ポンプ本体12の内壁面の上下中途部と、バレル50の円筒部50Aの外壁面とによって形成される、平面視で略環状の空間である。燃料ギャラリ13は、ポンプ本体12に形成される燃料供給通路21などを介して燃料タンクと連通される。こうして、燃料タンクからの燃料が、燃料供給通路21を通じて燃料ギャラリ13内に送られる。
さらに、バレル50には、油吸排通路53が上下方向に延長するように形成される。油吸排通路53の上端側開口がバレル50の上端面55に形成され、油吸排通路53の下端側開口が燃料ギャラリ13に臨むように形成されて、燃料ギャラリ13とバレル50の上端面55側の空間とが連通される。こうして、燃料ギャラリ13からの燃料を油吸排通路53を通じて後述の電磁スピル弁部30に送る(搬送する)こと、および電磁スピル弁部30からの燃料を油吸排通路53を通じて燃料ギャラリ13に送る(搬送する)ことが、可能となっている。
プランジャ14は、略円柱形状に形成され、その外径を円筒部50Aおよび縮径部50Cの内径と略一致させている。プランジャ14はバレル50のプランジャ孔14hに隙間なく挿入され、その外周面をプランジャ孔14hの内壁面に密接させつつ上下方向に摺動可能とされる。
プランジャ14がバレル50に挿入されたとき、プランジャ14の上端面とバレル50(円筒部50A)の内壁面とにより加圧室23が形成される。加圧室23は、プランジャ14のプランジャ孔14h内における摺動によってその体積が増減する空間である。プランジャ孔14hに送られてきた燃料は、加圧室23にて加圧される。
加圧室23は、燃料搬送通路51によりバレル50の上端面55側の空間と連通している。燃料搬送通路51は、プランジャ14およびバレル50の軸線上に配置され、上下方向に延長するように形成される。燃料搬送通路51の上端側開口は、バレル50の上端面55の中央部に形成されている。
下バネ受け15は、ポンプ本体12の下部内に設けられ、プランジャ14の下端部に係合されている。下バネ受け15は、プランジャ14と共に上下方向に摺動可能とされる。
上バネ受け16は、ポンプ本体12の上下中途部内で下バネ受け15の上方となる位置に設けられ、下バネ受け15と対向するように配置される。上バネ受け16は、バレル50の縮径部50Cに嵌合されて、後述するプランジャバネ17により上方へ付勢されてポンプ本体12の内壁面(前述の段差の部分)に下方から当接している。
プランジャバネ17は、圧縮バネであり、ポンプ本体12の下部内で下バネ受け15と上バネ受け16の間に介設される。プランジャバネ17はプランジャ14の下部に外嵌される。プランジャバネ17の上端は、上バネ受け16を介してバレル50に掛止される。プランジャバネ17の下端は、下バネ受け15を介して後述のタペット18に掛止される。こうして、プランジャ14は下バネ受け15を介してプランジャバネ17に付勢されて、下方へ常時付勢されている。
タペット18は、ポンプ本体12の下部内に設けられる。タペット18は、円筒部18Aと、ローラ支持部18Bとを有している。円筒部18Aは、下端部を閉口(封止)した有底の略円筒形状に形成され、その外径をポンプ本体12の下半部の内径と略一致させている。円筒部18Aは、その外周面をポンプ本体12の内壁面に密接させつつ上下方向に摺動可能とされている。円筒部18A内には、下バネ受け15が配置される。ローラ支持部18Bは、円筒部18Aの閉口(封止)された下面の周縁部から下方に突出されて、下向きの凹形状に形成される。ローラ支持部18Bは円筒部18Aと一体とされる。ローラ支持部18Bには、支持軸190が、水平方向(前後方向)に横架されている。
ローラ19は、タペット18のローラ支持部18Bに支持軸190を介して回転自在に支持される。ローラ19は、プランジャバネ17によって下方に付勢されている下バネ受け15およびタペット18を介して、下方へ常時付勢されている。このように構成することにより、ローラ19は常に後述のカム20と当接している。
カム20は、カム軸200に固設され、このカム軸200が回転することにより一体的に回転される。カム軸200は、ディーゼルエンジンのクランクケースに軸支されている。カム軸200に外嵌されたカムギアと、ディーゼルエンジンのクランク軸に外嵌された歯車とが、互いに噛合している。こうして、前記クランク軸の回転は、前記歯車などを介してカム軸200に伝達され、カム軸200が回転されるように構成されている。なお、カム20はカム軸200に一体的に形成されるものとしても構わない。
以下では、電磁スピル弁部30の詳細な構成について、図1および図2を参照して説明する。電磁スピル弁部30は、電磁スピル弁部本体40、スピル弁31、およびアーマチュア34などを備える。
電磁スピル弁部本体40は、電磁スピル弁部30の主たる構造体を成す部材であり、後述のスピル弁31をプランジャ14の軸線方向上方に取り付けるものである。電磁スピル弁部本体40は、略円柱形状あるいは直方体形状に形成され、その軸線がプランジャ14およびバレル50の軸線と一直線となる状態で、バレル50に固定される。図2に示すように、電磁スピル弁部本体40の下端面45とバレル50の上端面55とは、ボルト70・70・・・により相互に圧接されている。
図1に示すように、電磁スピル弁部本体40の上下中央部には、軸線方向を左右方向(水平方向)とするスピル弁孔31hが形成されている。スピル弁孔31hの右端部は、閉口(封止)されている。スピル弁孔31hの左端部には、外部からソレノイド32などが取り付けられることにより、閉口(封止)されている。
電磁スピル弁部本体40の軸線上には、燃料搬送通路41が形成されている。燃料搬送通路41は、電磁スピル弁部本体40を上下方向に貫通している。燃料搬送通路41の下端側開口は、電磁スピル弁部本体40の下端面45の中央部に形成されている。ボルト70・70・・・(図2参照)で電磁スピル弁部本体40をバレル50に固定したとき、燃料搬送通路41の下端側開口と、バレル50の燃料搬送通路51の上端側開口とが一致して接続される。換言すれば、電磁スピル弁部本体40とバレル50とが圧接されて固定されたとき、燃料搬送通路41・51の開口同士が接続される。
さらに、電磁スピル弁部本体40には、スピル弁孔31hと電磁スピル弁部本体40の下端面45側の空間とを連通する油吸排通路43が形成される。油吸排通路43の上端側開口は、スピル弁孔31hの壁面に形成されている。油吸排通路43の下端側開口は、電磁スピル弁部本体40の下端面45に形成されている。電磁スピル弁部本体40をバレル50の上端面55に固定したとき、電磁スピル弁部本体40の油吸排通路43の下端側開口と、バレル50の油吸排通路53の上端側開口とが一致して接続される。換言すれば、電磁スピル弁部本体40とバレル50とが圧接されて固定されたとき、油吸排通路43・53の開口同士が接続される。
また、電磁スピル弁部本体40の上端面中央部(電磁スピル弁部本体40の軸線上)には、下方に向けて等圧弁バネ室33が形成される。等圧弁バネ室33は、略円柱形状の空間である。等圧弁バネ室33の中央部(電磁スピル弁部本体40の軸線上)には、燃料搬送通路41の上端側開口が形成されている。
スピル弁31は、スピル弁孔31hに内装される。スピル弁31は、燃料を燃料噴射ノズル側に圧送するタイミングを制御するものである。スピル弁31は、その軸線方向中途部に縮径部を有するように略円柱形状に形成される。スピル弁31は、スピル弁孔31hに内装された状態において、その外周面をスピル弁孔31hの内壁面と密接させつつ左右方向に摺動可能とされる。
スピル弁31の左端部には、アーマチュア34が固設される。アーマチュア34は磁性体からなる部材であり、後述のソレノイド32の磁力によりスピル弁31を変位させるものである。スピル弁31にはバネが嵌装されており、該バネによってスピル弁31は右方向に常時付勢されている。
ソレノイド32は磁力を発生させる部材である。ソレノイド32は、アーマチュア34と対向するように、電磁スピル弁部本体40の外側に燃料噴射ポンプ100の外部の装置を介して固設される。ソレノイド32は、制御装置(不図示)からの指令信号にしたがって適宜の磁力を発生させることによってアーマチュア34を変位させ、ひいてはスピル弁31を変位させる。
このように構成することにより、燃料の搬送される通路は、スピル弁31を変位させてスピル弁31の縮径部の位置状態を変更することで、燃料搬送通路41の下半部から送られてきた燃料を油吸排通路43に送りつつ燃料搬送通路41の上半部への流れは遮断した状態(開弁状態)と、燃料搬送通路41の下半部から送られてきた燃料を燃料搬送通路41の上半部に送りつつ油吸排通路43への流れは遮断した状態(閉弁状態)とに、切換可能となっている。こうして、スピル弁31を適宜に変位させることにより、燃料を燃料噴射ノズル側に圧送するタイミングを制御することが可能となっている。
以下では、等圧弁部60の詳細な構成について、図1および図2を参照して説明する。等圧弁部60は、等圧弁部本体61、吐出弁62、および等圧弁63などを備える。
等圧弁部本体61は、等圧弁部60の主たる構造体を成す。等圧弁部本体61は、その軸線がバレル50および電磁スピル弁部本体40の軸線と一直線となる状態で、電磁スピル弁部本体40に固定される。等圧弁部本体61の下端面と電磁スピル弁部本体40の上端面とは、ボルトにより圧接されることにより、相互に密着している。
等圧弁部本体61の下端面中央部(等圧弁部本体61の軸線上)には、上方に向けて吐出弁バネ室65が形成される。吐出弁バネ室65は、略円柱形状の空間である。吐出弁バネ室65は等圧弁バネ室33と連通されており、吐出弁バネ室65と等圧弁バネ室33とでひとつの内部空間が形成されている。等圧弁部本体61の上部には、雌ネジ部64が一体的に形成される。雌ネジ部64と吐出弁バネ室65とは、吐出口66により連通される。吐出口66は、等圧弁部本体61の軸線上に形成される。
吐出弁62はプランジャ14の軸線方向上方に配置され、等圧弁部本体61内に設けられる。吐出弁62は、吐出弁バネ室65に内装されて、上方に備えられたバネによって下方に常時付勢されている。吐出弁62は、所定値未満の圧力を有する燃料が燃料搬送通路41から送られてきた場合には、閉弁状態を維持し、燃料の燃料噴射ノズル側への流れを遮断する。一方、吐出弁62は、所定値以上の圧力を有する燃料が燃料搬送通路41から送られてきた場合には、バネの付勢力に抗して上方に移動し(開弁状態となり)、燃料を燃料噴射ノズル側に圧送可能とする。
等圧弁63はプランジャ14の軸線方向上方に配置され、等圧弁部本体61内に設けられる。等圧弁63は、等圧弁バネ室33に内装されて、下方に備えられたバネによって上方に常時付勢されている。等圧弁63は、所定値未満の圧力を有する燃料が高圧管から送られてきた場合には、閉弁状態を維持し、燃料の燃料噴射ポンプ100側への流れ(逆流)を遮断する。一方、等圧弁63は、所定値以上の圧力を有する燃料が高圧管から送られてきた場合には、バネの付勢力に抗して下方に移動し(開弁状態となり)、燃料を燃料噴射ポンプ100側に逆流させる。
等圧弁部本体61の雌ネジ部64には、高圧管継手67が取り付けられる。高圧管継手67の一端には、雄ネジ部が形成されており、この雄ネジ部が雌ネジ部64に螺合される。これにより、高圧管継手67が等圧弁部本体61の上部に着脱可能に取り付けられる。高圧管継手67の他端は、高圧管に接続される。
このように構成することにより、カム20がカム軸200とともに回転されると、タペット18がカム20の回転に追従するようにローラ19を介して上下方向に往復運動され、タペット18の往復運動によって、プランジャ14がプランジャ孔14h内で往復運動される。そして、プランジャ14の往復運動によって、燃料ギャラリ13から加圧室23への燃料の吸入工程と、加圧室23から燃料搬送通路51および燃料搬送通路41を介して燃料噴射ノズル側への燃料の吐出工程とが、交互に行われる。
すなわち、前記吸入工程においては、プランジャ14がプランジャバネ17の付勢力によって下方に移動し、加圧室23内の圧力が低下する。その結果、燃料ギャラリ13内の燃料が、油吸排通路53、油吸排通路43、スピル弁孔31h、燃料搬送通路41、および燃料搬送通路51を順に経て、加圧室23内に送られる(吸入工程)。
一方、吐出工程においては、プランジャ14がプランジャバネ17の付勢力に抗して上方に押し上げられ、加圧室23の圧力が上昇する。その結果、加圧室23内の燃料が加圧され、燃料搬送通路51および燃料搬送通路41に圧送されて吐出弁62に送られる(吐出工程)。
燃料搬送通路41から送られてきた燃料は、スピル弁31が閉弁している状態においては吐出弁62側に送られる。所定値以上の圧力を有する燃料が燃料搬送通路41から流れてくると、吐出弁62が開弁し、燃料が高圧管継手67および高圧管を経て燃料噴射ノズル側に圧送される。一方、スピル弁31が開弁している状態においては、燃料搬送通路41から送られてきた燃料は油吸排通路43および油吸排通路53を経て燃料ギャラリ13に送られる。この場合には、燃料が所定の圧力に達成せず、吐出弁62は閉弁状態に保たれる。この場合には、燃料は燃料噴射ノズル側に圧送されない。
次に、燃料噴射ポンプ100に具備される第一実施形態に係る油路接続構造1について、図3から図7までを参照して説明する。ここでは、バレル50(第一構造体)の上端面55に上端側開口を有する燃料搬送通路51(高圧燃料通路)と、電磁スピル弁部本体40(第二構造体)の下端面45に下端側開口を有する燃料搬送通路41(高圧燃料通路)との接続構造についての説明を行う。同時に、バレル50の上端面55に上端側開口を有する油吸排通路53(低圧燃料通路)と、電磁スピル弁部本体40の下端面45に下端側開口を有する油吸排通路43(低圧燃料通路)との接続構造についての説明を行う。
以下では、バレル50の上端面55、すなわち電磁スピル弁部本体40との接触面の構成について、図3および図4を参照して詳細に説明する。図3に示すように、バレル50の上端面55には、高圧側突出部56、低圧側突出部57、およびネジ穴55h・55h・・・などが形成されている。
図4に示すように、高圧側突出部56は、バレル50の上端面55から上方に僅かに突出され、その突出端面が水平面となるように形成される。高圧側突出部56は、燃料搬送通路51の上端側開口の外周縁部に沿って、平面視で略環状に形成される。すなわち、高圧側突出部56は燃料搬送通路51の上端側開口と同心状に配置されて、この上端側開口を取り囲む(包囲する)ように形成される。これにより、高圧側突出部56のシール輪郭(外側の輪郭)は、燃料搬送通路51の上端側開口と略同心の円形状とされる。
低圧側突出部57は、バレル50の上端面55から上方に僅かに突出して形成され、その突出端面が水平面となるように形成される。低圧側突出部57は、低圧燃料通路突出部58と、包囲突出部59とからなる。低圧燃料通路突出部58と包囲突出部59とは、低圧側突出部57の上端面55からの突出高さが高圧側突出部56の上端面55からの突出高さと同一となるように、一体的に形成される。
図3に示すように、低圧燃料通路突出部58は、油吸排通路53(低圧燃料通路)の上端側開口の外周縁部に沿って、平面視で略環状に形成される。すなわち、低圧燃料通路突出部58は、油吸排通路53の上端側開口と同心状に配置されて、この上端側開口を取り囲む(包囲する)ように形成される。これにより、低圧燃料通路突出部58のシール輪郭(外側の輪郭)は、燃料搬送通路51の上端側開口と略同心の円形状とされる。
包囲突出部59は、低圧燃料通路突出部58と一体的に連続して、平面視で略環状に形成される。包囲突出部59は、燃料搬送通路51の上端側開口および高圧側突出部56と同心状に配置されて、この高圧側突出部56と低圧燃料通路突出部58とを取り囲むように(包囲するように)形成される。これにより、包囲突出部59のシール輪郭は、燃料搬送通路51の上端側開口と略同心の円形状とされる。
なお、本発明の実施形態においては、低圧側突出部57の上端面55からの突出高さは、図4に示すように、高圧側突出部56の上端面55からの突出高さと同一としている。他の燃料噴射ポンプの構成としては、高圧側突出部の突出高さと低圧側突出部の突出高さとを相違させても良い。同様に、低圧燃料通路突出部の接触面(第一構造体の上端面)からの突出高さと、包囲突出部の接触面(第一構造体の上端面)からの突出高さとを相違させても良い。
高圧側突出部56および低圧側突出部57の突出端面の面積は、バレル50の上端面55の面積に比して充分に小さい面積となるように形成される。高圧側突出部56および低圧側突出部57は、ラップ仕上げや研磨処理、或いは焼入れなどの熱硬化処理後における切削加工などが施されることにより、良好なシール性が得られる表面粗さとなるように加工されている。
なお、本実施形態の低圧側突出部57は、低圧燃料通路突出部58と包囲突出部59とからなるものとしたが、低圧燃料通路突出部を形成しない構成としても構わない。この場合には、包囲突出部の面内、すなわち包囲突出部の内側の輪郭と外側の輪郭とに挟まれる部分に、油吸排通路の上端側開口を形成することが好ましい。
上端面55の外周部には、ボルト70・70・・・を締結するための複数(本実施形態では4つ)のネジ穴55h・55h・・・が形成されている。ネジ穴55h・55h・・・は、低圧側突出部57(包囲突出部59)の外側となる位置に互いに適宜の間隔を置きながら形成される。
ネジ穴55h・55h・・・の位置は、本実施形態においては、2つのネジ穴55h・55hと、2つのネジ穴55h・55hとが、燃料搬送通路51を挟んで一直線上に形成される。このように構成することは、ボルト70・70・・・を締結した際にその締結軸力が接触面の外周部に所定間隔置きに均等に加わるという点で好ましい。
以下では、電磁スピル弁部本体40の下端面45、すなわちバレル50との接触面の構成について、図5および図6を参照して詳細に説明する。図5に示すように、電磁スピル弁部本体40の下端面45には、高圧側シール面46と低圧側シール面47とが備えられている。また、電磁スピル弁部本体40には、貫装孔45h・45h・・・が上下方向に貫通するように形成されている。
図6に示すように、低圧側シール面47は、電磁スピル弁部本体40の下端面45に燃料搬送通路41の下端側開口を中心として底面視で略円環形状に形成され、この下端面45の外周部よりも下方に向かって僅かに突出した水平な突出面とされる。また、低圧側シール面47には、油吸排通路43の下端側開口が形成されている。
低圧側シール面47は、電磁スピル弁部本体40をバレル50の上端面55に固定したときに、包囲突出部59の外側のシール輪郭を完全に取り囲む(包囲する)大きさに形成される(図7参照)。すなわち、低圧側シール面47は、その外径が同心状に配置される包囲突出部59の外径よりも大きくなるように形成される。
なお、本実施形態に係る低圧側シール面47は、電磁スピル弁部本体40の下端面45の外周部よりも下方に向かって僅かに突出した面としたが、例えば低圧側シール面の下端面の外周部からの突出高さが0となるように構成しても良い。
高圧側シール面46は、電磁スピル弁部本体40の下端面45の中央部に燃料搬送通路41の下端側開口を中心として底面視で略円形状となるように形成され、この下端面45の低圧側シール面47よりも僅かに突出した水平な突出面とされる。高圧側シール面46は、低圧側シール面47と電磁スピル弁部本体40の径方向に連続し、同心状に配置される。また、高圧側シール面46の中央部には、燃料搬送通路41の下端側開口が形成されている。
高圧側シール面46は、低圧側シール面47よって完全に取り囲まれる(包囲される)大きさに形成される。同時に、高圧側シール面46は、電磁スピル弁部本体40がバレル50に固定されたときに、高圧側突出部56の外側のシール輪郭を完全に取り囲む(包囲する)大きさに形成される(図7参照)。すなわち、高圧シール面46は、その外径が同心状に配置される低圧側シール面47の内径と略同一となり、かつその外形が同心状に配置される高圧側突出部56の外形よりも大きくなるように形成される。
そして、電磁スピル弁部本体40がバレル50に固定されたときに、高圧側シール面46が高圧側突出部56の突出端面に、低圧側シール面47が低圧側突出部57(低圧燃料通路突出部58および包囲突出部59)に接触するように構成される。高圧側シール面46および低圧側シール面47のうち、少なくとも高圧側突出部56の突出端面または低圧側突出部57の突出端面と接触(当接)する領域は、ラップ仕上げや研磨処理、或いは焼入れなどの熱硬化処理後における切削加工などが施されることにより、良好なシール性が得られる表面粗さとなるように加工されている。
このように構成することにより、高圧側突出部56と高圧側シール面46とを密着するように接合(圧接)すると、互いの接触面のシール性により、燃料搬送通路51の上端側開口と燃料搬送通路41の下端側開口とをその外周縁部を密着させた状態で接続することが可能となっている。同様に、低圧側突出部57と低圧側シール面47とを密着するように接合(圧接)すると、互いの接触面のシール性により、油吸排通路53の上端側開口と油吸排通路43の下端側開口とをその外周縁部を密着させた状態で接続することが可能となっている。
下端面45の外周部には、ボルトを締結するための4つの貫装孔45h・45h・・・の下端が配置されている。貫装孔45h・45h・・・は、バレル50の上端面55と、電磁スピル弁部本体40の下端面45とを接触させて接合したときに、バレル50の上端面55に配置されたネジ穴55h・55h・・・と一致する位置に形成される。
以下では、バレル50と電磁スピル弁部本体40とを4本のボルト70・70・・・により圧接して固定したときの、互いの接触面(接合面)、即ちバレル50の上端面55と電磁スピル弁部本体40の下端面45の状態について、図7を参照して詳細に説明する。
バレル50と電磁スピル弁部本体40とは、4本の締結部材であるボルト70・70・・・が電磁スピル弁部本体40の貫装孔45h・45h・・・に貫装されて、バレル50のネジ穴55h・55h・・・に螺合されることで、互いに締結される。この締結によって、バレル50の上端面55と電磁スピル弁部本体40の下端面45とが、圧接(接合)される。すなわち、ボルト70・70・・・で締結したときに発生する締結軸力により、バレル50の上端面55(バレル50の接触面)と電磁スピル弁部本体40の下端面45(電磁スピル弁部本体40の接触面)とが固定される。
したがって、バレル50と電磁スピル弁部本体40の互いの接触面の外周部(以下、ボルト締結部というものとする)においては、バレル50の上端面55と電磁スピル弁部本体40の下端面45とが隙間なく当接して密着することとなる。また、電磁スピル弁部本体40の低圧側シール面47は、ボルト締結部から距離が近い側の突出部である低圧側突出部57の突出端面と接触(当接)して密着し、油吸排通路43・53の開口同士の接続部がシールされることとなる。
このように電磁スピル弁部本体40の下端面45は、外周部でバレル50の上端面55のボルト締結部と、これよりも内側の低圧側シール面47で低圧側突出部57とに接合した場合、中央部が僅かに湾曲した状態となる。すなわち、電磁スピル弁部本体40の下端面45は、その中央部が上方に僅かに反り返った状態で、バレル50の上端面55に固定されることとなる。
ここで、電磁スピル弁部本体40の高圧側シール面46は低圧側シール面47よりもバレル50の上端面55側に突出されていることから、電磁スピル弁部本体40とバレル50との接触面の中央部においては、高圧側突出部56の突出端面と高圧側シール面46とが隙間なく当接して密着し、燃料搬送通路41・51の開口同士の接続部がシールされることとなる。つまり、電磁スピル弁部本体40とバレル50との接触面との間の中央部に生じる隙間の一部が、低圧側シール面47よりもバレル50の上端面55側に突出される高圧側シール面46と高圧側突出部56の突出端面とによって埋められるようになっている。
このように構成することにより、バレル50の上端面55(接合面)に複数の突出部(高圧側突出部56および低圧側突出部57)が互いに所定間隔をとって形成されていることなどにより上端面55が面一となっていない場合でも、バレル50の上端面55と電磁スピル弁部本体40の下端面45との間で隙間が生じる中央部では接触面同士の隙間が高圧側シール面46によって埋められるので、燃料搬送通路41・51の開口同士の接続部を確実にシールして、この接続部からの燃料の漏れを防止することが可能となる。
一方、このとき、バレル50の上端面55と電磁スピル弁部本体40の下端面45との間であって、バレル50の上端面55のボルト締結部と低圧側突出部57とに挟まれる領域(外側平坦部)、および高圧側突出部56と低圧側突出部57とに挟まれる領域(内側平坦部)では、バレル50の上端面55が電磁スピル弁部本体40の下端面45と接触(当接)していない。
このように構成することにより、シールされる範囲を小さい面積に抑えることができ、高圧側突出部56および低圧側突出部57の双方において高い面圧を確保することが可能となっている。このことは、高いシール性を確保する上で有効である。また、シールされる範囲を小さい面積に抑えることができるので、高圧側突出部56、低圧側突出部57、高圧側シール面46、および低圧側シール面47の、研磨処理等の表面の加工が必要となる部分の面積を小さくすることができる。このことは、加工処理に必要な時間を削減し、作業効率を向上させるとともに、コストダウンを図る上で有効である。
さらに、高い面圧を発生させることができるので、高圧側突出部56と高圧側シール面46の間、および低圧側突出部57と低圧側シール面47の間には、滑りが生じ難く、これらの部材間のフレッティング摩耗(微小な相対往復滑り運動が繰り返された結果生ずる表面損傷)を防止することが可能となる。
以上の如く、本実施形態に係る燃料噴射ポンプ100は、バレル50と電磁スピル弁部本体40との互いの接触面(上端面55・下端面45)の、中央部に燃料搬送通路51・41の開口をそれぞれ形成し、この中央部よりも外側に油吸排通路53・43の開口をそれぞれ形成して、燃料搬送通路51・41の開口同士と油吸排通路53・43の開口同士とをそれぞれ接続する油路接続構造1を具備する燃料噴射ポンプ100であって、前記油路接続構造1は、バレル50の上端面55から突出され、燃料搬送通路51の開口を取り囲む高圧側突出部56と、バレル50の上端面55から突出され、油吸排通路53の開口および高圧側突出部56を取り囲む低圧側突出部57(低圧燃料通路突出部58・包囲突出部59)と、電磁スピル弁部本体40の下端面45に含まれ、高圧側突出部56の突出端面と接触する高圧側シール面46と、電磁スピル弁部本体40の下端面45に含まれ、低圧側突出部57の突出端面と接触する低圧側シール面47と、低圧側突出部57および低圧側シール面47よりも外側に配置され、バレル50と電磁スピル弁部本体40とを圧接して固定するボルト70・70・・・とを備え、前記低圧側突出部57の接触面からの突出高さと、高圧側突出部56の接触面からの突出高さとを、同一となるように形成し、高圧側シール面46を低圧側シール面47よりもバレル50の上端面55側に突出させたものである。したがって、高圧側シール面46(高圧側突出部56)と低圧側シール面47(低圧側突出部57)の双方で高い面圧を確保することができ、良好なシール性を確保することが可能となる。また、高圧側突出部56が包囲突出部59(低圧側突出部57)に包囲されているので、万一燃料が燃料搬送通路51の上端側開口と燃料搬送通路41の下端側開口との接続部から漏れ出た場合でも、包囲突出部59(低圧側突出部57)によって燃料の外部への漏れを防ぐことが可能である。すなわち、燃料搬送通路51および燃料搬送通路41からの燃料の漏れを、高圧側突出部56と低圧側突出部57とで二重に防止することが可能となる。
なお、本実施形態においては、高圧側突出部56および低圧側突出部57をバレル50の上端面55に形成し、高圧側シール面46および低圧側シール面47を電磁スピル弁部本体40の下端面45に備える構成としたが、例えばこれを逆の構成にすることも可能である。すなわち、電磁スピル弁部本体を第一構造体として高圧側突出部および低圧側突出部を電磁スピル弁部本体の下端面に形成し、バレルを第二構造体として高圧側シール面および低圧側シール面をバレルの上端面に形成するように構成しても良い。
また、本実施形態においては、電磁スピル弁部本体40の上側から電磁スピル弁部本体40に4本のボルト70・70・・・を貫装してバレル50の上部に形成したネジ穴50h・50h・・・でネジ止めするものとしたが、例えばボルトをバレルの下側からバレルに設けた貫装孔に貫装するとともに、電磁スピル弁部本体の下部に形成したネジ穴でネジ止めする構成としても良い。また、締結手段はボルトに特に限らず、ピンをボルトとを併用して締結手段とする構成としても良い。なお、締結部材の数は4本(4つ)に特に限るものではないことは、勿論のことである。
次に、燃料ポンプ100に具備される第二実施形態に係る油路接続構造2について、図8から図10までを参照して説明する。
図8から図10までに示すように、油路接続構造2は、油路接続構造1の水平な突出面からなる高圧側シール面46に代えて、曲面からなる高圧側シール面80を備える点で、油路接続構造1と主として相違する。
図9に示すように、高圧側シール面80は、電磁スピル弁部本体40の下端面45の中央部に燃料搬送通路41を中心として底面視で略円形状となるように形成され、この下端面45の低圧側シール面47よりも下方に向かって僅かに突出(隆起)した突出面であり、所定の曲率を有して下向きに凸となる曲面とされる。高圧側シール面80は、低圧側シール面47と電磁スピル弁部本体40の径方向に連続して同心状に配置され、その中央部が最も膨出した形状となるように形成される。また、高圧側シール面80の中央部には、燃料搬送通路41の下端側開口が形成されている。
高圧側シール面80は、低圧側シール面47(シール輪郭)によって完全に取り囲まれる(包囲される)大きさに形成される。同時に、高圧側シール面80は、電磁スピル弁部本体40がバレル50に固定されたときに、高圧側突出部56の外側のシール輪郭を完全に取り囲む(包囲する)大きさに形成される(図10参照)。すなわち、高圧シール面80は、その外径が同心状に配置される低圧側シール面47の内径と略同一となり、かつその外形が同心状に配置される高圧側突出部56の外径よりも大きくなるように形成される。
そして、電磁スピル弁部本体40がバレル50に固定されたときに、高圧側シール面80が高圧側突出部56の突出端面に、低圧側シール面47が低圧側突出部57(低圧燃料通路突出部58および包囲突出部59)に接触するように構成される。高圧側シール面80のうち、少なくとも高圧側突出部56の突出端面と接触(当接)する領域は、ラップ仕上げや研磨処理、或いは焼入れなどの熱硬化処理後における切削加工などが施されることによって、良好なシール性が得られる表面粗さとなるように加工されている。
電磁スピル弁部本体40をバレル50に固定するときに、高圧側シール面80と高圧側突出部56とを密着するように接合(圧接)すると、互いの接触面のシール性により、燃料搬送通路51の上端側開口と燃料搬送通路41の下端側開口とをその外周縁部を密着させた状態で接続することが可能となっている。同様に、低圧側突出部57と低圧側シール面47とを密着するように接合(圧接)すると、互いの接触面のシール性により、油吸排通路53の上端側開口と油吸排通路43の下端側開口とをその外周縁部を密着させた状態で接続することが可能となっている。
高圧側シール面80の曲率は、電磁スピル弁部本体40をバレル50に固定したときに、低圧側シール面47が描く輪郭の各点の座標から曲率を計算した上で、その曲率と一致するように形成することが好ましい。このように構成することにより、高圧側突出部56と高圧側シール面80と、および低圧側突出部57と低圧側シール面47の間とを確実に密着させることが可能となる。
このように構成することにより、図10に示すように、電磁スピル弁部本体40とバレル50との接触面の中央部においては、高圧側突出部56と高圧側シール面80とが隙間なく当接して密着し、燃料搬送通路41・51の開口同士の接続部がシールされることとなる。
すなわち、電磁スピル弁部本体40の外周部がボルト70・70・・・により締め付けられると、電磁スピル弁部本体40の中央部の膨出部となる高圧側シール面80がバレル50の高圧側突出部56と接触(当接)した状態で、電磁スピル弁部本体40の下端面45がバレル50の上端面55に対して反り返ることになるが、高圧側シール面80がこの反りを相殺することが可能な曲率をもつことから、高圧側突出部56と高圧側シール面80とが隙間なく当接して密着し、燃料搬送通路41・51の開口同士の接続部がシールされることとなる。そして、その周囲の低圧側シール面47側の反りの割合は中央部に比して小さいため包囲突出部59と低圧側シール面47の間の隙間も生じないように密着することとなる。
そのため、バレル50の上端面55(接触面)に複数の突出部(高圧側突出部56および低圧側突出部57)が互いに所定間隔をとって形成されていることなどにより上端面55が面一となっていない場合でも、バレル50の上端面55と電磁スピル弁部本体40の下端面45との間で隙間が生じる中央部では接触面同士の隙間が高圧側シール面80によって埋められるので、燃料の漏れを防止することが可能となる。
また、高圧側シール面80の曲率を低圧側シール面47が描く輪郭に合わせて形成することにより、高圧側突出部56と高圧側シール面80とを、微小な隙間を埋めてより確実に密着させることができ、良好なシール性を得ることが可能である。
油路接続構造2においても、油路接続構造1の場合と同様に、バレル50の上端面55と電磁スピル弁部本体40の下端面45との間であって、バレル50の上端面55のボルト締結部と低圧側突出部57とに挟まれる領域(外側平坦部)、および高圧側突出部56と低圧側突出部57とに挟まれる領域(内側平坦部)では、バレル50の上端面55が電磁スピル弁部本体40の下端面45と接触(接合)していない。
このように構成することにより、シールされる範囲を小さい面積に抑えることができ、高圧側突出部56および低圧側突出部57の双方において高い面圧を確保することが可能となっている。このことは、高いシール性を確保する上で有効である。さらに、高い面圧を発生させることができるので、高圧側突出部56と高圧側シール面80の間、および低圧側突出部57と低圧側シール面47の間には、滑りが生じ難く、これらの部材間のフレッティング摩耗を防止することが可能である。
以上の如く、本実施形態に係る燃料噴射ポンプ100は、高圧側シール面46は、所定の曲率を有する高圧側シール面80としたものである。したがって、高圧側シール面80(高圧側突出部56)と低圧側シール面47(低圧側突出部57)の双方で高い面圧を確保することができ、良好なシール性を確保することが可能である。
次に、燃料ポンプ100に具備される第三実施形態に係る油路接続構造3について、図11から図13までを参照して説明する。
図11および図12に示すように、油路接続構造3は、油路接続構造1の水平な突出面からなる高圧側シール面46および水平な面からなる低圧側シール面47に代えて、曲面からなる高圧側シール面90を備える点で、油路接続構造1と主として相違する。つまり、油路接続構造3は、高圧側シール面90が前述のような低圧側シール面を兼ねるものとされる。
図12に示すように、高圧側シール面90は、電磁スピル弁部本体40の下端面45の中央部およびその周辺部に燃料搬送通路41を中心として底面視で略円形状となるように形成され、この下端面45の外周部よりも下方に向かって僅かに突出(隆起)した突出面であり、所定の曲率を有して下向きに凸となる曲面とされる。高圧側シール面90は、その中央部が最も膨出した形状となるように形成される。また、高圧側シール面90の中央部には、燃料搬送通路41の下端側開口が形成されている。高圧側シール面90の外周部付近には、油吸排通路43の下端側開口が形成されている。
高圧側シール面90は、油吸排通路43を完全に取り囲む(包囲する)ことができる大きさに形成される。そのうえ、高圧側シール面90は、下端面45の外周縁部によって完全に囲まれる(包囲される)大きさに形成される。同時に、高圧側シール面90は、電磁スピル弁部本体40がバレル50に固定されたときに、高圧側突出部56および低圧側突出部57の外側の輪郭を完全に取り囲む(包囲する)大きさに形成される(図13参照)。すなわち、高圧シール面90は、油吸排通路43が径方内側に位置する外径をもって形成される。そのうえ、高圧シール面90は、その外径が下端面45の外径よりも小さくなり、同心状に配置される高圧側突出部56の外径および低圧突出部57の包囲突出部59の外径よりも大きくなるように形成される。
そして、電磁スピル弁部本体40がバレル50に固定されたときに、高圧側シール面90の中央部が高圧側突出部56の突出端面に、高圧側シール面90の外周部が低圧側突出部57(低圧燃料通路突出部58および包囲突出部59)に接触するように構成される。高圧側シール面90のうち、少なくともシール面(高圧側突出部56の突出端面および低圧側突出部57の突出端面)と接触(当接)する領域は、ラップ仕上げや研磨処理、或いは焼入れなどの熱硬化処理後における切削加工などが施されることによって、良好なシール性が得られる表面粗さとなるように加工されている。
電磁スピル弁部本体40をバレル50に固定するときに、高圧側シール面90の中央部と高圧側突出部56、および高圧側シール面90の外周部と低圧側突出部57をそれぞれ密着するように接合(圧接)すると、互いの接触面のシール性により燃料搬送通路51の上端側開口と燃料搬送通路41の下端側開口、および油吸排通路53の上端側開口と油吸排通路43の下端側開口とをその外周縁部を密着させた状態で接続することが可能となっている。
高圧側シール面90の曲率は、電磁スピル弁部本体40をバレル50に固定したときに、下端面45が描く輪郭の各点の座標から曲率を計算した上で、その曲率と一致するように形成することが好ましい。このように構成することにより、高圧側突出部56と高圧側シール面90とを、および低圧側突出部57と高圧側シール面90とを、確実に密着させることが可能となる。
このように構成することにより、図13に示すように、電磁スピル弁部本体40とバレル50との接触面の中央部においては、高圧側突出部56と高圧側シール面90とが隙間なく当接(接触)して密着し、燃料搬送通路41・51の開口同士の接続部がシールされることとなる。また、電磁スピル弁部本体40とバレル50との接触面の中央部よりも外側においては、低圧側突出部57と高圧側シール面90とが隙間なく当接(接触)して密着し、油吸排通路通路43・53の開口同士の接続部がシールされることとなる。
すなわち、電磁スピル弁部本体40の外周部がボルト70・70・・・により締め付けられると、電磁スピル弁部本体40の中央部の膨出部となる高圧側シール面90がバレル50の突出部高圧側突出部56と接触(当接)した状態で、電磁スピル弁部本体40の下端面45がバレル50の上端面55に対して反り返ることになるが、高圧側シール面90がこの反りを相殺することが可能な曲率をもつことから、高圧側突出部56と高圧側シール面90とが隙間なく当接して密着し、燃料搬送通路41・51の開口同士の接続部がシールされることとなる。同時に低圧側突出部57と高圧側シール面90とが隙間なく当接(接触)して密着し、油吸排通路通路43・53の開口同士の接続部がシールされることとなる。
そのため、バレル50の上端面55(接合面)に複数の突出部(高圧側突出部56および低圧側突出部57)が互いに所定間隔をとって形成されていることなどにより上端面55が面一となっていない場合でも、バレル50の上端面55と電磁スピル弁部本体40の下端面45との間で隙間が生じる中央部では接触面同士の隙間が高圧側シール面90によって埋められ、この中央部よりも外側でも接触面同士の隙間が高圧側シール面90によって埋められるので、燃料の漏れを防止することが可能である。
また、高圧側シール面90の曲率を電磁スピル弁部本体40の下端面45が描く輪郭に合わせて形成することにより、高圧側突出部56と高圧側シール面90、および低圧側突出部57と高圧側シール面90を、微小な隙間を埋めてより確実に密着させることができ、良好なシール性を得ることが可能である。
油路接続構造3においても、油路接続構造1の場合と同様に、バレル50の上端面55と電磁スピル弁部本体40の下端面45との間であって、バレル50の上端面55のボルト締結部と低圧側突出部57とに挟まれる領域(外側平坦部)、および高圧側突出部56と低圧側突出部57とに挟まれる領域(内側平坦部)では、バレル50の上端面55が電磁スピル弁部本体40の下端面45と接触(接合)していない。
このように構成することにより、シールされる範囲を小さい面積に抑えることができ、高圧側突出部56および低圧側突出部57の双方において高い面圧を確保することが可能となっている。このことは、高いシール性を確保する上で有効である。さらに、高い面圧を発生させることができるので、高圧側突出部56と高圧側シール面90の間、および低圧側突出部57と高圧側シール面90の間には、滑りが生じ難く、これらの部材間のフレッティング摩耗を防止することが可能である。
以上の如く、本実施形態に係る燃料噴射ポンプ100は、高圧側シール面46は、低圧側シール面47を兼ねて、高圧側突出部56の突出端面と低圧側突出部57の突出端面とに接触させたものである。したがって、高圧側シール面90(高圧側突出部56)と、低圧側シール面を兼ねる高圧側シール面90(低圧側突出部57)の、双方で高い面圧を確保することができ、良好なシール性を確保することが可能である。
なお、第一実施形態から第三実施形態までの油路接続構造は、電磁スピル弁部本体40の下端面45とバレル50の上端面55との油路接続構造に適用するものとして説明したが、高圧燃料通路と低圧燃料通路とを備える油路接続構造に関し広く適用できるものである。したがって、例えば燃料噴射ポンプの、電磁スピル弁部本体を第一構造体とし、等圧弁部本体を第二構造体として、本実施形態に係る油路接続構造を適用することが可能である。あるいは、燃料噴射装置に具備される他の部材である燃料噴射ノズルに、本実施形態に係る油路接続構造を適用することも可能である。