JP5294194B2 - 脳血管性認知症の治療薬 - Google Patents
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ここで、「脳血管性認知症の治療薬」とは服用することで脳血管性認知症に罹るのを予防する効果と、脳血管性認知症の症状を改善する効果のいずれか一方、あるいは両方の効果を持つ物質を意味する。なお、前記ヒスチジンは、D体である、D−ヒスチジン(ヒスチジンをN末端にもつ化合物におけるヒスチジンを含む)は、L体である、L−ヒスチジンに比べて酵素分解を受けにくく、生体内で長い時間、十分な活性を発現するのに必要な濃度を保つことができるため好適である。
ここで、補助食品とは、特定の保健の目的が期待できることを表示した食品であって、身体の生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含み、有効性および安全性を個別商品ごとに国によって審査される特定保健用食品、並びに病者用食品等の特別用途食品などを示す。
本実施の形態に係る脳血管性認知症の治療剤、治療剤含有飲食物、または治療剤含有補助食品の製法は、目的、剤形により異なるが、各分野において従来公知に用いられている常法により製造、加工可能である。
(実施例1)
実施例1では、様々な魚介類の水抽出液をメインに、亜鉛の神経細胞死を抑制する活性を検査した。魚介類は宮崎県近郊で取れるものを利用した。魚介類の可食部と非可食部とに分けたのち、エタノールなどの有機溶媒または水を加え、ブレンダー等で破砕したのち、遠心上清部分を集め、凍結乾燥により濃縮・固形化した。また、魚の煮汁は、脱塩後、凍結乾燥により濃縮・固形化した。固形化したそれらの試料を、100mgに対して1mLの水を加え、よく混和した後、遠心上清を得た。これを0.45μm孔のフィルターで処理したものを試料とした。
各実験では、コントロール(亜鉛および試験試料を加えなかった場合の生存細胞)と、亜鉛のみを添加した場合の生存細胞について、WST−1法による吸光度を測定した。これにより試験試料の抑制活性を示すWST−1法の吸光度について、実験日が違っても正確に判断することができる。
強い抑制活性を示した試料については、顕微鏡により細胞死の様子を確認した。また、試料の調製を再度行い、数回の抑制活性試験を行い、最終的に図1で黒塗りのバーで示した試料(番号:12W,13W,79W,80W,88W,89W,98W,101W,IWA)について注目することにした。実施例2では、それらサンプル中にあるカルノシンの量を測定した。カルノシンは、特許文献1によれば亜鉛による細胞死を抑制することが明らかになっており、また、カルノシンが魚介類の筋肉中にある程度含まれていることは周知の事実である。まず、実施例1で得た抑制活性が、これら試料に含まれるカルノシンによるものか検証するために、カルノシン量をHPLC装置で測定した。
カルノシン濃度はコウイカ、スミクイウオ、ウルメイワシで10mM以上であったが、細胞培養液に対する投与量は、5%(200μLに対して10μL)であるので、これら試料でのカルノシン最終濃度は最大で0.6mMであることが明らかになった。特許文献1によれば、亜鉛による神経細胞死を抑制するには最小でも2mM以上のカルノシンが必要であるので、これら試料に存在するカルノシン含量は、抑制活性を引き起こすには不十分であることが明らかになった。
この実験から、これら試料がもつ抑制活性はカルノシン以外の成分によるものであると結論した。
実施例3で、これら試料中の活性成分を単離した。豊富に試料があり、抑制活性も高いウルメイワシの煮汁(IWA)を使用して、成分の単離をおこなった。ウルメイワシの煮汁の凍結乾燥品を100mg/mLで水に溶解し、その遠心上清を精製出発材料とした。
単離した活性成分、IWA−AM_9について機器分析で成分を同定した。
図4に結果を示す。質量電荷比100〜1000の間で分析した結果、m/z156.1に強度の大きなシグナルを得た。煮汁などに良く含まれる低分子成分の中で、分子量155.1を持つ構造として、以下の化学構造を有するヒスチジンが候補となった。
ヒスチジン単品を用い、亜鉛神経細胞死抑制活性の濃度依存性を検査した。L−ヒスチジン塩酸塩を水で溶解した。不死化視床下部神経細胞(GT1−7細胞)は常法により培養し、トリプシン酵素により分散させた後、無血清培地(DMEM/F−12)に加えて5×105個/mLの濃度にした後、96穴培養プレート(Nunc社製)に200μLずつ分注したものを炭酸ガスインキュベーター(37℃、7%CO2)にて24時間培養した。GT1−7細胞に、調製したヒスチジン溶液を最終濃度で30μM〜500μMになるように投与し、次いで、亜鉛水溶液30μMを投与した。亜鉛投与24時間後に細胞生存率をWST−1法により測定した(n=6)。試薬には、Cell Counting Kitを用いた。図7から明らかなように、ヒスチジン濃度依存的に細胞死は抑制され、300μMヒスチジンの添加により、亜鉛による神経細胞死はほぼ完全に抑制された。
図8にウルメイワシ煮汁をアミノ酸分析した結果を示す。図8のアミノ酸分析から、アミノ酸としてヒスチジンのみが大量に含まれていることが明らかになった。1mg/mL試料に250μMのヒスチジンが含まれており、ウルメイワシ煮汁乾燥品1gあたりに38mgのヒスチジンが含まれていることが明らかになった。全重量の3.8%がヒスチジンであり、ヒスチジンの単離においてウルメイワシ煮汁乾燥品は有用であると言える。また、標準品との比較により4.5分に現れたピークはタウリンであることが明らかになったが、タウリンは亜鉛による神経細胞死抑制活性を示さない。
抑制活性を示した他の魚介類抽出液について、アミノ酸分析によりヒスチジン含量を測定した。その結果を表3に示す。
含有ヒスチジン濃度はマアジで一番大きく28mM、アオリイカで一番小さく2mMであった。細胞培養液に対する投与量は、5%(200μLに対して10μL)である。これら試料を加えたときの最終濃度を示した。マアジで1400μM、アオリイカで100μMになった。図7で示したように、ヒスチジンは最終濃度で100μMもあれば、亜鉛による神経細胞死を抑制する活性を示すので、測定していないスミクイウオを除いて、活性を示したこれらの試料は含有するヒスチジンによって抑制活性を示したと結論した。
アミノ酸およびタウリンについて亜鉛の神経細胞死抑制活性を調べた。アミノ酸はグリシン、ヒスチジンを除きすべてL体を用いた。各々の単品を水に溶解し、最終濃度が1mMになるように細胞に加えた。不死化視床下部神経細胞(GT1−7細胞)は常法により培養し、トリプシン酵素により分散させた後、無血清培地(DMEM/F−12)に加えて5×105個/mLの濃度にした後、96穴培養プレート(Nunc社製)に200μLずつ分注したものを炭酸ガスインキュベーター(37℃、7%CO2)にて24時間培養した。GT1−7細胞に、調製した各液を最終濃度で1mMになるように投与し、次いで、亜鉛水溶液30μMを投与した。亜鉛投与24時間後に細胞生存率をWST−1法により測定した(n=6)。試薬には、Cell Counting Kitを用いた。
ヒスチジンによる、亜鉛神経細胞死抑制活性をラット初代培養神経細胞で検査した。
胎齢18日のラット胎児より大脳皮質を切り出し、パパイン酵素により分散させた後、Dulbecco’s MEM(DMEM)培地を加えて、2×105個/mLの濃度にした。次いで、96穴培養プレート(Nunc社製)に200μLずつ分注したものを、炭酸ガスインキュベーター(37℃、7%CO2)にて培養した。培養1週間後、培地を無血清培地(DMEM)に置換し、一週間程度培養したものを使用した。用意したラット海馬初代培養神経細胞に、100mMに調製したL−ヒスチジンを1%加え、最終濃度で1mMになるように投与し、次いで、亜鉛水溶液150μMを投与した。亜鉛投与24時間後に細胞生存率をWST−1法により測定した(n=6)。試薬には、Cell Counting Kitを用いた。
ヒスチジンの類似体、構成化合物およびヒスチジン含有化合物について、亜鉛の神経細胞死抑制活性が現れる濃度を調べた。
L−ヒスチジン、D−ヒスチジンの他、その類似体としてL−ヒスチジンアミド、1−メチル−L−ヒスチジン、アセチル−L−ヒスチジンを検査した。また、ヒスチジン側鎖の構造であるイミダゾール、ヒスチジンの分解物としてよく知られるヒスタミンについても検査した。さらに、ヒスチジンを含む化合物として、L−ヒスチジル−L−アラニン、L−アラニル−L−ヒスチジン、βアラニル−L−ヒスチジン(カルノシン)についても検査した。それぞれの単品を水で溶解し、最終濃度が10mMから0.05mMになるように培養細胞に加え、抑制活性を調べた。不死化視床下部神経細胞(GT1−7細胞)は常法により培養し、トリプシン酵素により分散させた後、無血清培地(DMEM/F−12)に加えて5×105個/mLの濃度にした後、96穴培養プレート(Nunc社製)に200μLずつ分注したものを炭酸ガスインキュベーター(37℃、7%CO2)にて24時間培養した。GT1−7細胞に、調製した溶液を投与したのち、亜鉛水溶液30μMを投与した。亜鉛投与24時間後に細胞生存率をWST−1法により測定した(n=6)。試薬には、Cell Counting Kitを用いた。
第1グループとして、ヒスチジンと同じ抑制活性強度を有する以下の化合物が挙げられる。
D−アミノ酸を分解する酵素活性は限定されており、L−アミノ酸に比べて酵素分解を受けにくいと考えられる。D−ヒスチジンがL−ヒスチジンに比べて、細胞培養液中に長い時間高濃度な状態で存在するかHPLCで検査した。
D−ヒスチジンはL−ヒスチジンに比べて、培養初期(0−12時間)での減少量が少ないことが明らかになった。
Claims (2)
- D体のヒスチジンを有効成分とすることを特徴とする脳血管性認知症治療薬。
- 前記D体のヒスチジンが魚介類由来であることを特徴とする請求項1に記載の脳血管性認知症治療薬。
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