JP5294104B2 - タワークレーンの支持構造 - Google Patents
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Description
ここで、建物内部にマストを設置するフロアクライミングは、建物の構築高に合わせてマスト下端の支持部を上層へ盛り替えつつクライミングさせていくものである。具体的には、ベース架台を下方から引き上げて通過させることが可能な大きさを有する開口部が建物内部に設けられており、構築中の最上階に昇降装置を固定するとともにベース架台を基礎階に対して解放し、昇降装置の油圧シリンダを作動させてベース架台と一緒にマストを引き上げ、ベース架台を途中階の柱梁に固定し、昇降装置を使用してクレーン本体をマストの最上部までクライミングさせる手順を繰り返しながら建物を構築する構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献2には、マストの上部に上部架台を設け、マストの下端に本体支持架台を設けた構造であって、上部架台と本体支持架台とのそれぞれに備えた反力受け構造を拡縮機構により各階の柱に押し付けてクレーン本体に作用するモーメントを柱で受ける支持構造について記載されている。
すなわち、フロアクライミングの場合には、タワークレーンの垂直荷重を床コンクリートや梁によって支持する構造であるので、例えば床コンクリートを支持する鉄骨梁の直下に、仮設の補強間柱を複数設置する等の補強を行って梁の強度を高める必要がある。そのため、特許文献1、2のようにマストの下部で垂直荷重を受ける構造では、そのマスト下部に設置されている補強間柱を撤去するまでは仕上げ作業などの次の工程にかかることができないという不具合が生じ、工期に影響を及ぼすという問題があった。
また、本発明の他の目的は、クライミングに伴う後施工の簡略化が図れるタワークレーンの支持構造を提供することである。
そして、マストの垂直荷重を支持する上部支持部を受ける第2支持階の梁には、それを下方から支持する補強間柱を設置する必要があるが、その設置位置はマストの上下方向略中間部であり、従来のようにマスト下部に設置する必要がなく、マスト下部を上階に移設するまで補強間柱を撤去することができず、工程に影響を及ぼすといった不具合をなくすことができる。
また、上部支持部が係止部材によって上下移動しないように固定させるとともに上部支持部で受ける垂直荷重が小さいのでタワークレーン設置部の直近の躯体の梁(例えば、小梁)に垂直荷重をもたせることが可能な簡単な構造であり、従来のベース架台付きの自立型タワークレーンに比べて小型化することができるので、その大きさに合わせて開口部の縮小化を図ることができる。
本発明では、マストの周囲を取り囲んだ状態の下部支持部および上部支持部の支持枠体を、それぞれが配置される開口部の床コンクリートに水平反力を取って固定することで、マストのモーメント(水平荷重)を各支持部にもたせることができる。
本発明では、第2支持階の梁上に配置させた上部支持部において、マストの係合孔に上部支持部に設けられている突出部材を係合させ、上部支持部に対してマストを上下移動を規制した状態で固定することで、上部支持部でマストにかかるタワークレーン全体の垂直荷重を支持することができる。
本発明では、下部支持部とマストとの間に隙間が生じていたり、上部支持部と下部支持部における平面上の位置がずれていたりすることでマストが傾いている場合に、球面滑り軸受によって支持枠体に対してマストのみを傾斜させることが可能であり、マストの角度が変わっても、支持枠体によってマストを支持できるとともに、支持枠体の姿勢を水平も維持することができることから、上部支持部で支持する垂直荷重を常に均等に分散させて第2支持階の梁に伝えることができる。
また、垂直荷重を受ける上部支持部の構造を小型化することができ、その上部支持部の大きさに合わせてマストの設置領域となる床コンクリートの開口部の縮小が可能となり、後施工となる小梁の本数や開口部の床コンクリートの施工量を低減することができる。
図1は本発明の実施の形態によるタワークレーンの構成を示す側面図であって、マストをベース架台に固定した状態の図、図2は下部支持部を示す平面図、図3は図2に示すA−A線断面図、図4は図2に示すB−B線断面図、図5は上部支持部を示す平面図、図6は図5に示すC−C線断面図、図7は図5に示すD−D線断面図、図8は上部支持部の設置状態を示す斜視図、図9(a)〜(c)はタワークレーンのクライミングの工程を説明する側面図、図10(a)〜(c)は図9(c)に続くクライミングの工程を説明する側面図である。
図1に示すように、本実施の形態による建物は、鉄骨梁構造をなし、各階F1、F2、…に配置される本設梁5が所定の間隔をもって配置され、さらに本設梁5を支持する鉄骨小梁5´が適宜設けられている。そして、各階F1、F2、…に構築されるスラブ(床コンクリート6)には、タワークレーン1の鉛直方向で同軸上の位置にマスト3を貫通させるための開口部7が形成されている。この開口部7の位置は、建物の各階F1、F2、…の本設梁5、5(図2参照)どうしに跨るように配置されている。また、本設梁5には、建物の構築中において必要に応じて、仮設の補強間柱9が設けられている。
図1に示すように、本実施の形態によるタワークレーン1は、建物の1階(基礎階F1)の床コンクリート6上に設置される平面視で十字状にビームを配置させたベース架台2と、ベース架台2上に立設されたマスト3と、マスト3に上下動自在に挿通支持されたクレーン本体10とを備えて構成されている。
そして、本タワークレーン1では、建物の各階F1、F2、…の本設梁5、5どうしの間で床コンクリート6に形成した開口部7にマスト3が配置され、詳しくは後述するが、タワークレーン1が所定の高さまでクライミングした時点でベース架台2をマスト3から切り離し、図2〜図7に示す上下二段の支持部(下部支持部20、上部支持部30)によって床コンクリート6からマスト3を水平支持するとともに、そのタワークレーン1に作用する垂直荷重を上部支持部30で支持する構造となっている。
図3および図6に示すように、マスト3の外周面には、マスト3の軸方向に所定間隔をもって複数の係合孔3b、3b、…が形成され、そのいずれかの係合孔3bには後述する上部支持部30の突出部材 33(図5参照)が係合するようになっている。また、マスト3の外周面には、長尺で断面視三角形状をなす複数(4条)の廻止め部材3cがそれぞれマスト3の周面に上下方向に延びて設けられ、それら廻止め部材3cがマスト3の周方向に所定間隔をもって配置されている。廻止め部材3cは、下部支持部20と上部支持部30に対してマスト3がその中心軸線を中心に回転することを規制するものである。
構台12は、上部昇降フレーム11Aの下部に緊結(ボルト等で)された状態で固定され、クライミングによってクレーン本体10に対してマスト3を上昇させる際の反力を所定階の本設梁5にとることが可能な構成となっている。
図2乃至図4に示すように、下部支持部20は、マスト3の下部3aを所定階(以下、下部支持部20を設置する階を第1支持階という)の床コンクリート6に反力を取って水平支持し、マスト3に作用するモーメント(水平荷重)を受けるためのものである。すなわち、下部支持部20は、マスト3の周囲を取り囲むようにして設けられる支持枠体21と、この支持枠体21に設けられていて開口部7を形成する床コンクリート6から略水平方向の反力を取るための水平支持ジャッキ22とを備えている。
各伝達部材24A〜24Dは、H型鋼などの鋼材から形成され、その軸方向が四角形状に枠組みされた枠本体部材23の一対の対向部材と同軸となるように接続されている。そして、挿通部23aにマスト3を挿通させた状態で、伝達部材24はその軸方向を本設梁5の軸方向に対して略直交する方向に向けて配置されている。図2に示すように、枠本体部材23は、マスト3中心を通る垂線上で左右に分割(分割部P1参照)できるようになっており、本設梁5上に配置された状態からマスト3を挟み込むようになっている。
このように下部支持部20では、本設梁5、5に支持枠体21を橋渡しするようにして載置させた状態で、水平支持ジャッキ22によって床コンクリート6に反力を取って支持枠体21を固定し、タワークレーン1の水平荷重を床コンクリート6を介して建物に有効に伝達できる構造となっている。
図5乃至図7に示すように、上部支持部30は、マスト3の上下方向略中間部を第1支持階より上方の第2支持階(以下、上部支持部30を設置する階を第2支持階という)の床コンクリート6に反力を取って水平支持するととともに、マスト3の上下移動を規制する後述する突出部材33を設け、その突出部材33を介してマスト3にかかる垂直荷重を第2支持階の本設梁5にもたせるためのものである。
すなわち、上部支持部30は、マスト3の周囲を取り囲むようにして設けられる支持枠体31と、この支持枠体31に設けられていて第2支持階の開口部7を形成する床コンクリート6から略水平方向の反力を取るための水平支持ジャッキ32と、マスト3の係合孔3bに係合可能に設けられた突出部材33(係止部材)とを備えている。
各伝達部材35A〜35Dは、H型鋼などの鋼材から形成され、その軸方向が四角形状に枠組みされた枠本体部材34の一対の対向部材と同軸となるように接続されている。そして、挿通部34aにマスト3を挿通させた状態で、伝達部材35はその軸方向を本設梁5の軸方向に対して略直交する方向に向けて配置されている。そして、これら伝達部材35A〜35Dは、基端を軸にして矢印E方向に折りたたみ自在な構造をなし、折りたたまれた状態で上方支持部30の外形が本設梁5、5間を通過可能な大きさとなっている。つまり、第2支持階でマスト3を上部支持部30で支持するときには伝達部材35が外方に張り出して本設梁5上に載置した状態となり、上部支持部30を上階に移設する際には伝達部材35を折りたたんだ状態となる。
このように上部支持部30では、本設梁5、5に支持枠体31を橋渡しするようにして載置させた状態で、水平支持ジャッキ32によって床コンクリート6に反力を取って支持枠体31を固定し、タワークレーン1の水平荷重を床コンクリート6を介して建物に有効に伝達できる構造となっている。
また、上部支持部30が突出部材33をマスト3の係合孔3bに挿入して上下移動しないように固定させるとともに垂直荷重が小さく、タワークレーン設置部直近の躯体の本設梁5に垂直荷重をもたせることが可能な簡単な構造であり、従来のベース架台付きの自立型タワークレーンに比べて小型化することができるので、その大きさに合わせて開口部7の縮小化を図ることができる。
図1に示すように、本タワークレーン1の設置方法とフロアクライミング方法は、工事初期段階においてタワークレーン1を従来通りに自立させた状態で設置したのち、工事の進捗に合わせた適当なタイミングで、マスト3の下部3aの固定をベース架台2から第2支持階に設置した下端支持部20に移設するとともに、マスト3の上下方向略中間部を第2支持階に設置した上部支持部30で支持し、クライミングに伴って下部支持部20と上部支持部30の位置を順次上階へと移設するものである。
そして、下部支持部20と上部支持部30とで支持されたマスト3に沿ってクレーン本体10を11階F11から上方にクライミングさせ、昇降装置11を使用してマスト3を順次盛り替えながら上昇させる。
また、図5〜図7に示すように、上部支持部30は、突出部材33をマスト3の係合孔3bに係合させつつ、分割された枠本体部材34A、34Bでマスト3を挟持して枠本体部材34とマスト3とを固定し、支持枠体31を本設梁5上に載置させて開口部7とマスト3との間に介在させ、開口部7の床コンクリート6から反力を取って水平支持ジャッキ32を略水平方向に伸張させることでマスト3を支持する。
これにより、図10(a)に示す5階F5に設けた下端支持部20と、9階F9に設けた上部支持部30によってマスト3に作用するモーメント(水平荷重)を受けもつとともに、上部支持部30でマスト3にかかるタワークレーン1全体の垂直荷重を受けもつ構造で設置することができる。
なお、マスト3の下部3aを上階に移設して、不要になった開口部7において床コンクリート6を施工する。また、上部支持部30を上階に移設した後には、その上部支持部30が設置されていた階の床コンクリート6を補強していた補強間柱9を解体、撤去する。
また、下部支持部の構造を小型化することができ、設置領域となる床コンクリートの開口部が縮小可能となり、後施工となる小梁の本数や開口部の床コンクリートの施工量を低減することができる。
さらに、本支持構造では、躯体が鉄骨、RCにかかわらず採用することができ、上部支持部30には圧縮力のみとなり、押金物による上下からの挟み込みによる固定が不要となる。
図11に示すように、変形例では、マスト3の姿勢にかかわらず、上部支持部30を水平に維持するための水平維持機構40を上部支持部30に備えた構成となっている。すなわち、水平維持機構40は、マスト3の周囲に対して着脱可能な内輪部41及び内輪部41を回転自在に保持する外輪部42からなる球面滑り軸受43と、球面滑り軸受43を上下方向から挟持するようにして保持する上部保持リング44、下部保持リング45とを備えた構成となっている。
例えば、本実施の形態では上部支持部30の突出部材33が枠本体部材34から突出した状態で固定された構造となっているが、これに限定されることはなく、例えば駆動機構により枠本体部材34から突出自在な構成とすることも可能である。
また、下端支持部20、および上部支持部30の設置位置は、本実施の形態および変形例に限定されることはない。
2 ベース架台
3 マスト
3a 下部
3b 係合孔
5 本設梁
6 床コンクリート
7 開口部
9 補強間柱
10 クレーン本体
20 下部支持部
21 支持枠体
30 上部支持部
31 支持枠体
33 突出部材(係止部材)
40 水平維持機構
41 内輪部
41a 球状滑り面
41b 突出部材(係止部材)
42 外輪部
42b 球面座
43 球面滑り軸受
Claims (4)
- マストと、該マストの上部を挿通支持させた状態でそのマストに沿って上下動自在とされるクレーン本体とを設け、建物内の各階の床コンクリートに形成した開口部に前記マストを配置させたタワークレーンの支持構造であって、
前記マストの下部を第1支持階のスラブの床コンクリートに反力を取って水平支持する下部支持部と、
前記マストの上下方向略中間部を第2支持階のスラブの床コンクリートに反力を取って水平支持するととともに、前記マストの上下移動を規制する係止部材を設け、該係止部材を介して前記マストにかかる垂直荷重を前記第2支持階の梁にもたせる上部支持部と、
を備え、
前記下部支持部及び前記上部支持部のうち該上部支持部のみが前記垂直荷重を支持することを特徴とするタワークレーンの支持構造。 - 前記下部支持部および前記上部支持部は、それぞれ水平支持ジャッキを介して前記床コンクリートに反力を取って固定させるとともに、前記マストを挿通させて水平方向の移動を規制するように前記マストの周囲を取り囲む支持枠体を有していることを特徴とする請求項1に記載のタワークレーンの支持構造。
- 前記上部支持部の前記係止部材は、前記マストの外周部に形成された係合孔に係合可能な突出部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のタワークレーンの支持構造。
- 前記上部支持部は、
前記係止部材が設けられていて前記マストの周囲に係止されるとともに、外周面に球面を有する内輪部と、該内輪部の球面に対して回転自在に保持する球面座を有する外輪部とからなる球面滑り軸受を備え、
前記床コンクリートに反力を取った前記支持枠体によって、前記球面滑り軸受を介して前記マストを水平支持する構成であることを特徴とする請求項2に記載のタワークレーンの支持構造。
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