図1は本発明による無線式の住警器の外観を示した説明図であり、図1(A)に正面図を、図1(B)に側面図を示している。
図1において、本実施形態の住警器10はカバー12と本体14で構成されている。カバー12の中央には、周囲に煙流入口を開口し、その内部には検煙部16が配置され、火災による煙が所定濃度に達したときに火災を検出するようにしている。
カバー12に設けた検煙部16の左下側には音響穴18が設けられ、この背後にブザーやスピーカを内蔵し、警報音や音声メッセージを出力できるようにしている。検煙部16の下側には警報停止スイッチ20が設けられている。警報停止スイッチ20は住警器の機能点検を指示する点検スイッチとしての機能を兼ねている。例えば、火災警報時に警報停止スイッチ20が操作されると警報を停止し、通常状態で警報停止スイッチ20が操作されると機能点検を開始して結果を報知する。
警報停止スイッチ20は、半透明部材で形成されたスイッチカバーと、スイッチカバーの内部に配置されたタクトスイッチ(図示せず)とで構成されている。スイッチカバー内部のタクトスイッチ近傍には、点線で示すようにLED22が配置されており、LED22が点灯すると、警報停止スイッチ20のスイッチカバーの部分を透過してLED22の点灯状態が外部から分かるようにしている。
また本体14の裏側上部には取付フック15が設けられており、設置する部屋の壁にビスなどをねじ込み、この取付フック15をビスに取り付けることで、壁面に住警器10を設置することができる。
なお図1の住警器10にあっては、検煙部16を備えた火災による煙を検出する住警器を例にとっているが、これ以外に火災による熱を検出するサーミスタ等の温度検出素子を備えた住警器や火災に伴うその他の物理現象を検出する住警器、火災以外にガス漏れを検出する警報器、侵入者や地震その他の異常を検出する各種の警報器、これらを組み合わせて成る警報器についても、本発明の対象に含まれる。
また、本発明の警報システムは、上記のような異なる警報器を混在させるものであっても良い。
図2は住宅に対する本実施形態の住警器の設置状態を示した説明図である。図2の例にあっては、住宅24に設けられている台所、居間、主寝室、子供部屋のそれぞれに本実施形態の住警器10−1〜10−4が設置され、更に屋外に建てられたガレージ26にも住警器10−5を設置している。
住警器10−1〜10−5のそれぞれは、イベント信号を相互に無線により送受信する機能及びイベント信号を中継する機能を備えており、更に5台の住警器10−1〜10−5で1つのグループを構成して、この住宅全体の火災監視を行っている。
いま住宅24の子供部屋で万一、火災が発生したとすると、住警器10−4が火災を検出して警報を開始する。この火災を検出して警報を開始することを、住警器における「発報」という。住警器10−4が発報すると、住警器10−4は連動元として機能し、連動先となる他の住警器10−1〜10−3,10−5に対し、火災発報を示すイベント信号を無線により送信する。他の住警器10−1〜10−3,10−5の内、連動元の住警器10−4からの火災発報を示すイベント信号を受信した住警器は、連動先としての警報動作を行うと共に受信したイベント信号に含まれる中継担当符号に基づいて中継回数を判断し、他の住警器に対する中継の有無を制御する。
ここで連動元となった住警器10−4の警報音としては、例えば音声メッセージにより「ウーウー 火災警報器が作動しました 確認してください」を連続して出力するとともに、LED22を点灯駆動する。一方、連動先の住警器10−1〜10−3,10−5にあっては、「ウーウー 別の火災警報器が作動しました 確認してください」といった音声メッセージを連続して出力するとともに、LED22を所定の第1周期で点滅駆動する。
住警器10−1〜10−5が警報音を出している状態で、図1に示した住警器に設けている警報停止スイッチ20を操作すると、警報音の停止処理が行われる。ここで、本実施形態の警報音の停止処理としては次のいずれかの停止処理を行う。
(1)連動元として警報中の住警器10−4の警報停止スイッチを操作すると、連動先を含め全ての住警器10―1〜10―5の警報音を停止する。
このとき、連動先の住警器10―1〜10―3、10―5に於いてはLED22を消灯するが、連動元のLED22だけは所定の点灯・点滅・明滅を、少なくとも所定期間継続させても良い。これにより連動元の発報履歴が残ることになり、消火後の発報元特定や、誤報・非火災報を発した住警器の特定が容易になる。
(2)連動先として警報中の住警器10−1〜10−3、10−5の内の任意の住警器の警報停止スイッチを押すと、連動元の住警器10−4のみが警報音の出力を継続し、連動先の住警器10−1〜10−3,10−5は警報音出力を停止する。
このとき、連動元の住警器10−4に於いてはLED22を点灯継続するか、連動先の第1周期とは異なる第2周期で点滅駆動させても良い。そして、連動先の住警器10−1〜3、10―5に於いては、LED22を消灯しても良いが、第1の周期で点滅を継続しても良いし、連動元と同じ第2の周期で点滅するようにしても良い。このようにして、連動元の住警器10―4の警報音が聞こえない場所に設置されている連動先の警報器においても、連動元が引き続き警報中であることを知ることが出来ると同時に、警報停止操作を行った連動先警報器からの警報停止信号が受け付けられた他の警報器を明確に識別特定することができる。
(3)警報中の住警器10−1〜10−5の内の任意の住警器の警報停止スイッチを操作すると、連動先、連動元に関わらず、全ての住警器の警報音を停止する。
このとき、各住警器のLED22は、(1)と同様の制御とすることが出来る。
(4)前記(1)の停止処理を第1モード、前記(2)の停止処理を第2モード、前記(3)の停止処理を第3モードとし、少なくとも2つのモードからいずれかのモードを選択して停止処理を行う。
図3は本発明による住警器の実施形態を示したブロック図である。図3は図2に示した5台の住警器10−1〜10−5につき、その内の住警器10−1について回路構成を詳細に示している。他の住警器10−2〜10―5についても、住警器10−1と同様の構成を備えている。
住警器10−1はCPU28を備え、CPU28に対してはアンテナ31を備えた無線回路部30、記録回路部32、センサ部34、報知部36、操作部38を設け、必要各部に電源を供給する電池電源40を備えている。
無線回路部30には送信回路42と受信回路44が設けられ、他の住警器10−2〜10−5との間でイベント信号を無線により送受信し、またイベント信号を中継できるようにしている。無線回路部30としては、日本国内の場合には、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)またはSTD−T67(特定小電力無線局テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備の標準規格)に準拠した構成を備える。
もちろん無線回路部30としては、日本国内以外の場所については、その地域の割当無線局の標準規格に準拠した内容を持つことになる。
記録回路部32にはメモリ46が設けられている。メモリ46には住警器を特定するID(識別子)となる送信元符号52と、図2のように複数の住警器で連動警報を行うグループを構成するためのグループ符号54が格納されている。送信元符号52としては、国内に提供される住警器の数を予測し、例えば同一符号として重複しないように26ビットの符号コードが使用される。
グループ符号54はグループを構成する複数の住警器に共通に設定される符号であり、無線回路部30で受信した他の住警器からのイベント信号に含まれるグループ符号がメモリ46に登録しているグループ符号54に一致したときに、このイベント信号を有効な信号として受信して処理することになるので、近隣住宅等に設置された、連動を要しない他グループの警報器との混信を回避出来る。
またメモリ46にはグループ管理テーブル70、中継回数テーブル72及び中継管理テーブル74が設けられる。グループ管理テーブル70にはグループを構成する住警器10−1〜10−5の送信元符号を予め登録している。中継回数テーブル72にはイベント種別に応じて所定の閾値中継回数が予め登録されている。中継管理テーブル74には一度中継したイベント信号に関する情報が記憶されている。
センサ部34には、本実施形態にあっては検煙部16が設けられている。検煙部16が煙をとらえるとセンサ部34は検出信号を出力する。検出信号はCPU28に取り込まれ(AD変換)、CPU28側で所定の火災レベルを超えると火災発報を判別し、また、検出信号が低下して火災レベルを下回ることで火災発報がなくなったこと(火災復旧)を判別するようにしている。
センサ部34には検煙部16以外に、火災による温度上昇を検出するサーミスタを設けてもよい。またガス漏れ監視用の警報器の場合には、センサ部34にガス漏れセンサが設けられることになる。
報知部36にはスピーカ58とLED22が設けられている。スピーカ58は、図示しない音声合成回路部からの音声メッセージや警報音を出力する。LED22は図示しない駆動回路を介して点滅や明滅、点灯などにより、火災などの異常を表示する。
操作部38には警報停止スイッチ20が設けられている。警報中に警報停止スイッチ20を操作すると、住警器10−1から出力している警報音を停止することができる。警報停止スイッチ20は、本実施形態にあっては点検スイッチと兼用している。警報停止スイッチ20は、警報中に操作されたときにのみ警報停止操作として受け付けられる。一方、警報音を出力していない通常監視状態で警報停止スイッチ20は点検スイッチとして機能し、警報中以外のときに点検スイッチが操作されると、報知部36から点検用の音声メッセージなどが出力される。
電池電源40は、例えば所定セル数のリチウム電池やアルカリ乾電池を使用しており、電池容量としては住警器10−1における無線回路部30を含む回路部全体の低消費電力化により、約10年の電池寿命を保証している。
CPU28にはプログラムの実行により実現される機能として、イベント処理部60と中継制御部62が設けられている。
イベント処理部60は、センサ部34の検出信号に基づく異常(火災)発生、操作部38による警報停止、電池電源40又はセンサ部34の障害検出、センサ部34の検出信号に基づく異常がなくなる異常復旧、及び電池電源40又はセンサ部34の障害がなくなる障害復旧等の状態変化をイベントとして検知したときに、連動元としてのイベント対応処理を行った後に、検知イベントを示すイベント信号を連動先の警報器に送信させ、一方、連動元の警報器からイベント信号を受信したときに、自身が連動元でない場合には、連動先としてのイベント対応処理を行わせる。
この機能を実現するためイベント処理部60には、異常(火災)監視部64、障害検出部65を含むイベント検知部61、警報停止部66及び復旧部68が設けられている。
異常監視部64は、センサ部34からの検出信号に基づいて火災を判別したときに、報知部36のスピーカ58から連動元を示す警報音例えば「ウーウー 火災警報器が作動しました 確認してください」を繰り返し出力させると共にLED22を駆動し、そしてイベント処理部60の、図示しない通信制御部を介して火災発報を示すイベント信号を無線回路部30の送信回路42によりアンテナ31から他の住警器10−2〜10−5に向けて送信させる。
また異常監視部64は、他の住警器10−2〜10−5のいずれかから火災発報を示すイベント信号を無線回路部30の受信回路44により受信したときに、自身が連動元でない場合には、報知部36のスピーカ58から連動先を示す警報音例えば「ウーウー 別の火災警報器が作動しました 確認してください」となる音声メッセージを連続的に出力させる。
ここで、異常監視部64で火災発報を検知して連動元警報音を出すときには、報知部36のLED22を例えば明滅させ、一方、連動先警報音を出す場合には、報知部36のLED22を点滅させる。若しくは、連動元警報音を出す場合と連動先警報音を出す場合について、LEDの発光周期を異ならせる。これによって、連動元警報と連動先警報におけるLED22の表示を区別できるようにしている。さらには、LED発光の明るさを両者に於いて異ならせることで、どちらかの警報器の電力消耗を抑制することが出来る。例えば、連動元は監視エリア内に火災が発生していることから、目視確認を目的とする警報(表示警報)は重要度が相対的に低いとも考えられ、連動元については発光周期を連動先に比べて長くしたり、表示を暗くしたり、表示警報を行わないようにすることもできる。
もちろん、連動元警報と連動先警報のいずれについても、同じLED22の明滅または点滅表示であってもよい。
警報停止部66は、連動元を示す警報出力中に操作部38に設けている警報停止スイッチ20の操作を検出したとき、スピーカ58から出力している連動元を示す警報音を停止させると共に、警報停止のイベント信号を、図示しない通信制御部を介して無線回路部30の送信回路42から他の住警器10−2〜10−5に送信し、他の住警器10−2〜10−5における連動先の警報音を停止させる。
この場合、スピーカ58から出力している連動元を示す警報音を停止させずに、警報停止のイベント信号を無線回路部30の送信回路42から他の住警器10−2〜10−5に送信し、他の住警器10−2〜10−5における連動先の警報音を停止させ、連動元警報だけは残すようにしても良い。もちろん、前述の(1)〜(3)で示した第1〜第3のモード、また(4)で選択された第1〜第3のモードの停止処理に従って動作させることも出来る。
また警報停止部66は、連動先を示す警報中に自身の操作部38の警報停止スイッチ20の操作を検出したとき、スピーカ58から出力している連動先を示す警報音を停止させると共にLED22に対し所定の表示制御を行い、警報停止のイベント信号を無線回路部30の送信回路42から他の住警器10−2〜10−5に送信する。
更に警報停止部66は、連動先を示す警報出力中に他の住警器10−2〜10−5から警報停止のイベント信号を無線回路部30の受信回路44により受信したときは、連動先を示す警報音を停止させると共に、所定の表示制御を行う。
復旧部68は、センサ部34に設けた検煙部16から煙がなくなることで火災が判別されなくなったときに、連動元警報を停止させて通常状態に戻すと共に、火災復旧を示すイベント信号を図示しない通信制御部を介して無線回路部30の送信回路42から連動先の住警器10−2〜10−5に送信させ、一方、自身が連動先として動作している場合に、他の住警器10−2〜10−5のいずれかから火災復旧を示すイベント信号を無線回路部30の受信回路44で受信したときに、連動先警報を停止させて通常状態に戻す。
これによって、住警器10−1で連動元警報が出されその後火災状態が解消し、センサ部34からの検出信号が火災レベルを下回った場合には、復旧部68により自動的に連動元の警報音は停止して通常の監視状態に復旧することができる。このとき、LED22については、履歴表示として所定の駆動を行っても良い。
同時に住警器10−1から連動先警報を出している他の住警器10−2〜10−5に火災復旧を示すイベント信号が送信され、それぞれの連動元警報を自動的に停止させることができ、住警器10−2〜10−5に出向いて警報停止操作を行う必要はない。
中継制御部62は、他の住警器からイベント信号を受信したときに、イベント信号に含まれる中継担当符号の数から中継回数Nを計算し、中継回数テーブル72のイベント種別で決まる閾値として中継回数Nthと比較し、閾値中継回数Nth未満であれば中継し、閾値中継回数Nthに一致したら中継を終了する。また中継制御部62はイベント信号を中継するときに、中継元を示す中継担当符号をイベント信号に加えて中継送信する。
またイベント処理部60は、イベント信号に送信毎に順次増加する連続番号(以下「連番」という)と送信元符号を含めて送信しており、これを受けて中継制御部62は、連動元又は中継元の警報器からイベント信号または中継イベント信号を受信したときに、イベント信号または中継イベント信号に含まれる連番と送信元符号(先頭の送信元符号)の組を、メモリ46の中継管理テーブル74に記憶している既に受信済みの連続番号と送信元符号の組と比較し、一致した場合は同じイベント信号は既に中継済みであることから、イベント信号の中継を終了させ、同じイベント信号を繰り返し中継しないようにしている。なお、以下の説明では、中継イベント信号も単にイベント信号として説明する。
更に、中継制御部62は、中継管理テーブル74に予め登録している連動グループを構成する住警器毎に異なる遅延タイミングによりイベント信号を中継送信する。遅延タイミングは他の住警器からイベント信号を受信してから中継送信するまでのタイムラグを設定する情報であり、複数の住警器が同時にイベント信号を受信しても、異なる遅延タイミングの設定によりイベント信号を中継送信するタイミングを相互に異ならせ、複数の住警器の同時中継によるイベント信号の衝突確率を低くすることができる。この処理については、後に詳しく説明する。
このような住警器10−1に設けた回路部は他の住警器10−2〜10−5についても同様であり、メモリ46に格納している送信元符号52が各住警器固有の符号となっている。
図4(A)は本実施形態で使用するイベント信号のフォーマットを示した説明図である。図4において、イベント信号48は連番50、送信元符号52、グループ符号54及びイベント符号56、及び中継の際に付加される中継担当符号57で構成されている。
連番50はイベント信号の順番を示す連続番号であり、イベント信号を送信する毎に例えば1つずつ増加させる。また、連番50は住警器10−1〜10−5の各々で非同期に生成している。
この連番は、例えば点検処理時や復旧処理時に各住警器個別に初期化するようにしても良いし、点検連動処理時や復旧連動処理時に、グループ内の全住警器一斉に初期化するようにしても良い。また中継管理テーブルに記憶しておく連番と送信元符号の組は、その送信元符号について最新のものだけを記憶しておくようにすれば、連番と送信元符号の組が重複することによる無駄な中継を避けることが出来る。加えて、住警器のメモリ容量が少なくて済む。
送信元符号52は例えば26ビットの符号である。またグループ符号54は例えば8ビットの符号であり、同一グループを構成する例えば図3の5台の住警器10−1〜10−5につき同じグループ符号が設定されている。
なおグループ符号54としては、同一グループの住警器に同一のグループ符号を設定する以外に、予め定めたグループを構成する住警器に共通な基準符号と、各住警器に固有な送信元符号との演算から求めた住警器ごとに異なるグループ符号であってもよい。
イベント符号56は、火災、ガス漏れなどのイベント内容を表す符号であり、本実施形態にあっては3ビット符号を使用しており、例えば「001」で火災、「010」でガス漏れ、「011」で復旧、「100」で警報停止、「101」で障害、「110」で障害復旧、「111」をリザーブとしている。なおイベント符号56のビット数は、イベントの種類が増加したときには更に4ビット、5ビットと増加させることで、複数種類のイベント内容を表すことができる。
図4(B)は連動元から受信したイベント信号を中継送信するときのイベント信号48−1のフォーマットであり、イベント符号56に続いて第1回目の中継を行った中継元を示す情報として中継担当符号57−1を追加している。
例えば、連動元が住警器10−1であったとすると、送信元符号50には連動元となる住警器の送信元符号「101」が設定され、住警器10−1からのイベント信号を住警器10−2で受信して中継したとすると、第1回目の中継元となる住警器10−2の送信元符号「102」を中継担当符号57−1として追加する。
図4(C)は、図4(B)のイベント信号を更に中継送信するイベント信号48−2のフォーマットであり、連第1回目の中継を行った住警器を示す中継担当符号57−1に続き、第2回目の中継を行う住警器を示す中継担当符号57−2が追加されている。
例えば、住警器10−2から中継送信されたイベント信号を住警器10−3で受信して中継したとすると、第2回目の中継を行う住警器10−3の送信元符号「103」を中継担当符号57−2として追加する。
このように本実施形態では、イベント信号を中継する毎に、中継を行った住警器を示す中継担当符号が次々とイベント信号に追加されて行くことになる。
図5(A)は図3のメモリ46に記憶したグループ管理テーブル70の内容を示した説明図であり、図3の同一グループに属する住警器10−1〜10−5の送信元符号を101,102,103,104,105とした場合を例にとっている。
グループ管理テーブル70の登録処理は、例えば工場出荷時や住宅に設置するときに、5台の住警器10−1〜10−5を作業テーブルなどの1箇所に並べて発報登録作業を行うことで実現できる。
ここで示す一例としての発報登録作業は、住警器10−1〜10−5の内のいずれか1つを順次、登録送信モードとして登録イベント信号を送信し、登録受信モードにより待受け状態となっている他の住警器で登録イベント信号を受信し、登録イベント信号に含まれる送信元符号を取得してメモリ46のグループ管理テーブル70に登録する処理を行わせる。
ここに登録された送信元符号から、演算処理によりグループ内住警器に共通の共通符号を生成する。簡単な例として、それぞれの送信元符号の下数桁を加算した値とすること等ができる。もちろん、予め決定した共通符号を、同一グループに属する住警器に直接登録するようにしても良い。
図5(B)は図3のメモリ46に記憶した中継回数テーブル72の内容を示した説明図であり、イベント種別として、火災、火災復旧、警報停止、障害及び障害復旧に分けて中継回数の最大回数を示す閾値中継回数Nthを予め登録している。閾値中継回数は火災、火災復旧、警報停止といった緊急性の高いイベントについては例えば3回と多く設定し、障害や障害復旧といった緊急性の低いイベントについては例えば1回と少なく設定している。
図5(C)は図3のメモリ46に記憶した中継管理テーブル74の内容を示した説明図であり、例えば送信元符号=102をもつ住警器10−2からイベント信号を受信して中継した場合の記憶内容を示している。
例えば中継管理テーブル74に登録が無い状態で住警器10−2からイベント信号を受信したとすると、受信したイベント信号から連番=00001と送信元符号=102の組を取得し、この場合、中継管理テーブル74に同じ組はないことから、イベント信号を中継送信すると共に連番=00001と送信元符号=102の組を中継管理テーブル74に登録する。
その後、中継した同じイベント信号が他の住警器による中継を経て再び受信された場合、そのイベント信号から取得した連番と送信元符号の組は、中継管理テーブル74に登録している組に一致することを判別して中継を終了し、それ以上中継しないようにする。
なお無線通信に関する法規格上、信号送信する端末は送信信号に送信元を特定できる符号を付加しなければならない。このため本実施例の住警器でも、信号送信する際に自身の送信元符号を付加しなければならないことから、実際にはイベント信号48には送信元符号52の他に、中継送信元符号を含めることになる。従って連動元となる住警器が発信する(中継でない)イベント信号では、送信元符号と中継送信元符号が同じになる。そして、中継イベント信号を送信する住警器は、自身の中継送信元符号と連動元の送信元符号を含むイベント信号を送信する。以下の説明では、中継送信元符号を省略する。
更に、中継管理テーブル74には連動グループを構成する住警器毎に異なる遅延タイミングを予め登録している。遅延タイミングは他の住警器からイベント信号を受信してから中継送信するまでのタイムラグを設定する情報であり、複数の住警器が同時にイベント信号を受信しても、異なる遅延タイミングの設定によりイベント信号を中継送信するタイミングを相互に異ならせ、複数の住警器の同時中継によるイベント信号の衝突確率を低くする。
即ち、図3に示した中継制御部62は、連動元又は中継元の警報器からイベント信号を受信したときに、連動関係にある他の警報器と異なるタイミングでイベント信号を中継送信する。例えば受信中継制御部69は、連動元又は中継元の警報器からイベント信号を受信したときに、自己の送信元符号に基づく遅延タイミングでイベント信号を中継送信する。
具体的には、図5(C)の中継管理テーブル74を登録している住警器10−1は、送信元符号=101であることから、送信元符号=101の末尾の「1」を遅延タイミングに登録している。なお、送信元符号=101は2進符号であることから、1グループの最大数を例えば8台とすると、例えば下位3ビットにより遅延タイミングを決めて登録する。
このようにして設定された遅延タイミングに、所定の単位時間を乗じて時間変換したうえで遅延処理されることになる。なお、遅延タイミングの決め方は相互に相違すれば良く、ラウンドロビンなどの適宜の方法で決めることができる。必ずしも全ての住警器について相違していなくても、一部が相違することでも所定の効果が得られる。
図6は本実施形態による基本的な処理例を概略的に示したフローチャートであり、電池電源40による電源供給開始で起動し、まずステップS1で初期化処理と自己診断を行う。この処理には、同じ住戸に設置されている例えば5台の住警器10−1〜10−5でグループを形成するためのグループ管理テーブル70の設定、中継回数テーブル72のイベント種別毎の閾値中継回数の設定、更には中継管理テーブル74における遅延タイミングの設定が含まれる。自己診断で故障が無ければステップS2の火災監視処理とステップS3の障害監視処理を繰り返し実行している。なお、点検指示の割込処理等は省略している。
図7は図6のステップS2における中継制御を含む火災監視処理の詳細を示したフローチャートであり、図3のCPU28のプログラムの実行による処理となる。
図7において、火災監視処理は、ステップS11で火災発報を監視しており、センサ部34から出力された検出信号が所定の火災レベルを超えると火災発報を判別してステップS12に進み、連番、送信元符号、火災発報を示すイベント符号を含むイベント信号を他の住警器に無線により送信した後、ステップS13で連動元を示す警報を出力する。
続いて、ステップS14でセンサ部34からの検出信号が低下して火災発報がなくなる火災復旧の有無を判別しており、火災発報が継続している場合はステップS15で警報停止スイッチ20による警報停止操作の有無を判別し、警報停止操作が無ければステップS16で他の住警器からの警報停止のイベント信号の受信の有無を判別する処理を繰り返している。なお、火災発報の継続中にあっては、所定時間毎に火災発報を示すイベント信号の送信を繰り返している。
ステップS14〜S16の処理サイクル中に、センサ部34からの検出信号が低下し火災発報がなくなるとステップS14で火災復旧が判別され、ステップS18で連番、送信元符号、火災復旧を示すイベント符号を含むイベント信号を他の住警器に送信し、ステップS20に進んで連動元警報を停止し、この場合は通常の監視状態に戻る。
またステップS16で他の住警器から警報停止イベント信号の受信を判別すると、ステップS17で受信中継制御を行った後、ステップS20に進んで連動元警報を停止する。ここで、ステップS17の中継制御の詳細は図8のフローチャートに示すようになる。
図8の受信中継制御は、ステップS31で受信したイベント信号から連番と送信元符号の組を取得し、ステップS32で中継管理テーブル74に登録済みの組に一致するか否か判別し、不一致の場合はステップS33に進んで連番と送信元符号の組を中継制御テーブル74に登録する。
続いてステップS34でイベント信号から中継担当符号の数を中継回数Nとして取得し、続いてステップS35でイベント符号から得られたイベント種別によりメモリ46の中継回数テーブル72を参照して閾値中継回数Nthを取得し、ステップS36で両者が一致するか否か判定する。
中継回数Nが閾値中継回数Nth未満で不一致となった場合には、ステップS37に進んで、中継する住警器を示す中継担当符号をイベント信号に追加した後、ステップS38に進んで、図5(C)の中継管理テーブル74から取得した遅延タイミングへの到達を監視し、遅延タイミングへの到達を判別すると、ステップS39に進んで連番、送信元符号、追加した1又は複数の中継担当符号、イベント符号を含むイベント信号を中継送信する。
一方、ステップS36で中継回数テーブル72から取得した閾値中継回数Nthに中継回数Nが一致することを判別した場合は、ステップS40に進んで中継を終了する。
一方、ステップS32で中継管理テーブル74に登録している組に一致した場合は、ステップS40に進んで中継を終了とする。なお、中継管理テーブル74に登録している組は、次に受信したイベント信号から取得した連番と送信元符号の組の上書きで更新される。また、上書きとせずに、先入れ先出しで一定数の組を記憶するようにしても良い。
なお、連動元としてイベント信号を送信した場合には、連動先から中継送信されてくるそのイベントを受信したときに再中継しないため、たとえば連動元としてイベント信号を送信するときには、自己の中継管理テーブルに自己の送信元符号と連番を記憶するようにすることが出来る。
再び図7を参照するに、ステップS15で自己の警報停止操作を判別した場合は、ステップS19に進んで他の住警器に連番、送信元符号、警報停止を示すイベント符号を含むイベント信号を送信し、ステップS20で連動元警報を停止する。
一方、ステップS11で火災発報でなかった場合には、ステップS21で他の住警器からの火災発報を示すイベント信号受信の有無を判別している。他の住警器から火災発報を示すイベント信号の受信を判別すると、ステップS22に進んで図8に示した中継制御を行い、中継回数Nが閾値中継回数Nth未満であれば、連番、送信元符号、火災発報を示すイベント符号、及び追加した中継担当符号を含むイベント信号を中継送信し、中継回数Nが閾値中継回数Nthに一致すれば中継を終了し、続いてステップS23で連動先を示す警報を出力する。
続いてステップS24で他の住警器からの火災復旧を示すイベント信号受信の有無を判別しており、火災復旧を示すイベント信号を受信すると、ステップS28に進んで図8に示した中継制御を行い、中継回数Nが閾値中継回数Nth未満であれば、連番、送信元符号、火災復旧を示すイベント符号、及び追加した中継担当符号を含むイベント信号を中継送信し、中継回数Nが閾値中継回数Nthに一致すれば中継を終了し、続いてステップS29に進んで連動先警報を停止し、この場合は通常の監視状態に戻る。
ステップS24で火災復旧を示すイベント信号受信がない場合には、ステップS25で他の住警器からの警報停止を示すイベント信号の受信の有無をチェックしており、警報停止を示すイベント信号の受信を判別すると、ステップS28に進んで図8に示した中継制御を行い、中継回数Nが閾値中継回数Nth未満であれば、連番、送信元符号、警報停止を示すイベント符号、及び追加した中継担当符号を含むを含むイベント信号を中継送信し、中継回数Nが閾値中継回数Nthに一致すれば中継を終了し、続いてステップS29で連動先を示す警報を停止する。
ステップS25で警報停止を示すイベント信号受信がない場合には、ステップS26で警報停止スイッチ20による警報停止操作の有無を判別しており、警報停止操作を判別すると、ステップS27に進んで他の住警器に、連番、送信元符号、警報停止を示すイベント符号を含むイベント信号を中継送信した後、ステップS29で連動先を示す警報を停止する。
図9は図6のステップS3における中継制御を含む障害監視処理の詳細を示したフローチャートである。
障害の種類としては、電池電圧の低下(ローバッテリー障害)やセンサの故障(センサ障害)等があるが、自己がローバッテリー障害時には連動元としての不急の警報、例えば障害イベント信号送信や、連動先としての障害イベント信号中継制御を行わないようにして、電池消耗を抑制することも出来る。
図9の障害監視処理を、センサ部34のセンサ障害を例にとって説明すると次のようになる。
図9において、ステップS51でセンサ部34のセンサ障害の検出の有無を監視しており、センサ部34からの検出信号が所定の零点レベル(通常時正常信号レベル:センサの検出能力が失われていないか確認するため、煙発生のない場合でも若干の信号が出力されるようにしている)を下回るとセンサ障害が検出されてステップS52に進んで連番、送信元符号、センサ障害を示すイベント符号を含むイベント信号を他の住警器に無線により送信した後、ステップS53で連動元を示す警報を出力する。
続いて、ステップS54でセンサ部34からの検出信号が零点レベルに回復するか否かの障害復旧を判別しており、センサ障害が継続している場合はステップS55で警報停止スイッチ20による警報停止操作の有無を判別し、警報停止操作が無ければステップS56で他の住警器からの警報停止のイベント信号の受信の有無を判別する処理を繰り返している。なお、センサ障害の継続中にあっては、所定時間毎にセンサ障害を示すイベント信号の送信を繰り返している。
ステップS54〜S56の処理サイクル中に、センサ部34からの検出信号の零点レベルが回復するとステップS54で障害復旧が判別され、ステップS58に進んで連番、送信元符号、障害復旧を示すイベント符号を含むイベント信号を他の住警器に送信した後、ステップS60に進んで連動元警報を停止し、この場合は通常の監視状態に戻る。
またステップS56で他の住警器から警報停止イベント信号の受信を判別すると、ステップS57に進んで図8に示した中継制御を行い、中継回数Nが閾値中継回数Nth未満であれば、連番、送信元符号、警報停止を示すイベント符号、及び追加した中継担当符号を含むイベント信号を中継送信し、中継回数Nが閾値中継回数Nthに一致すれば中継を終了し、続いてステップS60に進んで連動元警報を停止する。
更に、ステップS55で自己の警報停止操作を判別した場合はステップS59に進んで連番、送信元符号、警報停止を示すイベント符号を含むイベント信号を中継送信し、ステップS50で連動元警報を停止する。
一方、ステップS51でセンサ障害が検出されなかった場合には、ステップS61で他の住警器からの障害を示すイベント信号受信の有無を判別している。他の住警器からセンサ障害を示すイベント信号の受信を判別すると、ステップS62に進んで図8に示した中継制御を行い、中継回数Nが閾値中継回数Nth未満であれば、連番、送信元符号、障害を示すイベント符号、及び追加した中継担当符号を含むイベント信号を中継送信し、中継回数Nが閾値中継回数Nthに一致すれば中継を終了し、続いてテップS63に進んで連動先を示す障害警報を出力する。
次にステップS64で他の住警器からの障害復旧を示すイベント信号の受信の有無を判別しており、障害復旧を示すイベント信号を受信すると、ステップS68に進んで図8に示した中継制御を行い、中継回数Nが閾値中継回数Nth未満であれば、連番、送信元符号、火災復旧を示すイベント符号、及び追加した中継担当符号を含むイベント信号を中継送信し、中継回数Nが閾値中継回数Nthに一致すれば中継を終了し、続いてステップS69に進んで連動先を示す障害警報を停止し、この場合は通常の監視状態に戻る。
ステップS64で障害復旧のイベント信号受信が無い場合には、ステップS65で他の住警器からの警報停止を示すイベント信号の受信の有無をチェックしており、警報停止を示すイベント信号の受信を判別すると、ステップS68に進んで図8に示した中継制御を行い、中継回数Nが閾値中継回数Nth未満であれば、連番、送信元符号、警報停止を示すイベント符号、及び追加した中継担当符号を含むイベント信号を中継送信し、中継回数Nが閾値中継回数Nthに一致すれば中継を終了し、続いてステップS69で連動先を示す警報を停止する。
ステップS65で警報停止を示すイベント信号受信がない場合には、ステップS66で警報停止スイッチ20による警報停止操作の有無を判別しており、警報停止操作を判別するとステップS67に進んで他の住警器に、連番、送信元符号、警報停止を示すイベント符号を含むイベント信号を中継送信した後、ステップS69で連動先を示す警報を停止する。
ここで、図10はセンサ障害を例にとっているが、電池電源40からの電源電圧が所定電圧以下に低下することで検出するローバッテリー障害についても同様である。もちろん、その他の障害についても同様に適用できる。
なお上記の実施形態は火災検出を対象とした住警器を例に取るものであったが、これ以外にガス漏れ警報器や、防犯用警報器など、それ以外の適宜の異常を検出する適宜の警報器につき、本実施形態の警報停止処理をそのまま適用することができる。また住宅用に限らずビルやオフィス用など各種用途の警報器にも適用できる。
また、本発明は、警報器間通信の一部または全部を有線で行うものについても適宜に適用できる。
また、本発明の中継に係る処理は、例えば親機と子機を設けて子機からのイベント情報を親機経由で連動させていた従来の連動型警報器システムの親機、子機にも適用でき、さらに異なるグループの親機間連動にも適用できる。
また、上記の実施形態は警報器にセンサ部と警報出力処理部を一体に設けた場合を例にとるが、他の実施形態として、センサ部と警報出力処理部を別体とした警報器であっても良い。
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。