JP5291441B2 - ポリエチレン系樹脂発泡シートおよびその製造方法ならびに発泡成形品 - Google Patents

ポリエチレン系樹脂発泡シートおよびその製造方法ならびに発泡成形品 Download PDF

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Description

本発明は、ポリエチレン系樹脂発泡シートに関し、特に、シートの表面の光沢度が低く、つや消し状で紙(和紙)のような外観を有すると共に、良好な撥水作用を有し、容器表面の付着水分の除去が容易であり、防汚性に優れた容器等の発泡成形品を製造可能なポリエチレン系樹脂発泡シートとその製造方法および該シートから製造された発泡成形品に関する。
ポリエチレン系樹脂発泡シートの押出発泡においては、押出機内にポリエチレン系樹脂を発泡剤、気泡調整剤などと共に、高温、高圧条件下で混練したのち、先端部に接続したサーキュラーダイ出口より円筒状で押し出される。ダイから押し出された溶融軟化した樹脂は、大気中でエアー冷却されて発泡制御されながら、冷却マンドレルに到達し、冷却されたのち、カッターにてカットされ、一枚の発泡シートとして紙管などに巻き取られ、発泡シートとして製造されている。
ポリエチレン樹脂発泡シートは、その樹脂特性からポリスチレンやポリプロピレンと比較して低温脆性に優れ、冷凍容器や冷凍水産台紙などの包装材料の用途に適している。
従来、ポリエチレン樹脂発泡シートなどの熱可塑性樹脂発泡シート(以下、発泡シート類と記す。)は、表面に光沢を有し、またその発泡シート類を熱成形して得られるトレーなどの発泡成形品についても、光沢を有するものが提供されていた。
近年、消費者ニーズの多様化に伴い、発泡シート類を熱成形して得られたトレーなどの容器において、光沢を抑えた見栄えの良い容器が要求されてきた。特に、光沢が無く・つや消し状の表面を有する紙に似た風合いのものが要求されてきている。発泡シート類の表面を「つや消し」状に処理するためには、発泡シート類本体ではなく、発泡シート類に積層される非発泡樹脂フィルムにつや消し処理を施していた。この非発泡樹脂フィルムにつや消し処理を施す方法としては、例えばエンボスロール等により、表面を加熱・成形してつや消し処理を施したり、または成形時につや消し表面を有する金型を用いて表面改良を行う方法などが挙げられる。このように、従来は、発泡シート類につや消し処理を施すためには、発泡シート類に、つや消し処理を施した非発泡樹脂フィルムを積層する方法が知られていた。
一方、発泡シート類の表面、特に、押出発泡によって得られる発泡シート類の表面においては、製造時に発泡シート類に延伸がかかり表面が平滑になることにより、その表面につや消し処理を施すことは困難であった。また、完成した発泡シート類の表面につや消し処理を施そうとした場合、発泡シート類の表面をロール等により加熱すると、発泡シート類の気泡構造が壊れたり、変形するなどの不具合を生じるために、美麗なつや消し表面を有する発泡シート類を得ることは難しい。
従来、ポリエチレン系樹脂押出発泡シートに関連する従来技術として、例えば、特許文献1〜4が提案されている。
特許文献1には、ポリエチレン系樹脂組成物からなる樹脂層形成用樹脂溶融物とポリエチレン系樹脂組成物からなる発泡層形成用樹脂溶融物とを環状ダイに導入し、該環状ダイから共押出することにより発泡層の少なくとも片面に樹脂層が積層された筒状積層発泡体を形成し、続いて該筒状積層発泡体の内面を冷却装置の周面に沿わせて通過させて冷却し、該筒状積層発泡体を押出方向に切開くことにより、厚さ1mm以上の発泡層の少なくとも片面に厚さ30〜300μmの樹脂層が積層されている積層発泡体を製造する方法であって、該樹脂層形成用樹脂溶融物を形成する該ポリエチレン系樹脂組成物の100℃における貯蔵弾性率(E’)が1.5×10〜50.0×10Paであることを特徴とするポリエチレン系樹脂積層発泡体の製造方法が開示されている。
特許文献2には、見掛け密度70g/L〜350g/L、連続気泡率40%以下のポリエチレン系樹脂押出発泡シートであって、該発泡シートを構成するポリエチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率が300MPa以上であり、該樹脂組成物の190℃での溶融張力(A)が15mN〜400mN、且つ前記溶融張力(A)と該樹脂組成物のMFR(B:g/10分)の積(A×B)の値が100以上であることを特徴とするポリエチレン系樹脂押出発泡シートが開示されている。
特許文献3には、少なくとも片面の光沢度が20以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡シートが開示されている。また該シートは、平均厚みが1〜5mm,見かけ密度が0.1〜0.5g/cc,厚み方向のセル数が5個以上で、独立気泡率が60%以上であること、片面にポリプロピレン系樹脂非発泡層が積層されており、発泡層表面の光沢度が20以下であること、ポリプロピレン系樹脂発泡シートの基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂が、ポリプロピレン系樹脂とイソプレン、ラジカル開始剤を溶融混練して得られる改質ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい旨が記載されている。
特許文献4には、190℃におけるダイスェルが1.50以上である高密度ポリエチレンのみからなるポリエチレン系樹脂よりなると共に、見掛け密度が0.11〜0.80g/cm、厚みが0.5〜5.0mm、連続気泡率が50%以下であることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シートと、高密度ポリエチレンを60〜95質量%含有し且つ190℃におけるダイスェルが1.55以上であるポリエチレン系樹脂からなると共に、見掛け密度が0.10〜0.80g/cm、厚みが0.5〜5.0mm、連続気泡率が50%以下であることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シートが開示されている。
特開2004−1401号公報 特開2004−43813号公報 特開2004−331722号公報 特開2005−290329号公報
しかしながら、特許文献1〜4に開示された従来技術には、次のような問題があった。
特許文献1の従来技術は、少なくとも片面に樹脂層を設けた養生板、仕切り板のような、剛性を必要とするポリエチレン系樹脂積層発泡体の提供が目的であり、この従来技術には、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面につや消し処理を施すことに関しては記載されていない。
特許文献2の従来技術は、溶融張力とMFRの積が一定以上であるポリエチレン系樹脂組成物を用いることによって、高い曲げ弾性率や剛性を実現できる、としているが、この従来技術には、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面につや消し処理を施すことに関しては記載されていない。
特許文献3の従来技術は、ポリプロピレン系樹脂発泡シートにおいて、意匠性を改善するために光沢度の低い発泡シートの提供を目的としているが、この従来技術では、ポリエチレン系樹脂発泡シートに関しては記載がなく、また、ポリプロピレン系樹脂発泡シート表面の光沢がどうして低下できるのかについては記載されていないので、この従来技術から樹脂材料の異なるポリエチレン系樹脂発泡シートの表面光沢を低下させるために適用することはできない。
特許文献4の従来技術は、高密度ポリエチレン系樹脂を主原料として独立気泡を有する良好な発泡シートを得ているが、この従来技術には、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面につや消し処理を施すことに関しては記載されていない。
また、ポリエチレン系樹脂発泡シートを熱成形して製造されるトレーなどの容器に関する問題点として、従来の容器は、表面に水滴が比較的付着しやすいため、鮮魚等の食品を容器から取り出した後に、食品から浸み出した液体(ドリップ)が容器表面に広がった状態で付着するため、見栄えが悪く、またその容器をリサイクルするために洗浄する際に、簡単な水洗い等ではドリップ等の汚れが落ちにくく、洗浄に手間がかかる、という問題があった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、表面の光沢度が低く、つや消し状で紙(和紙)のような風合いを持ち意匠性に優れていると共に、その表面が高い撥水性を有し、洗浄容易性、防汚性にも優れたポリエチレン系樹脂発泡シートと発泡成形品の提供を目的とする。
前記目的を達成するため、本発明は、少なくとも一方の面の光沢度(但し、該光沢度はJIS K7105に記載の方法に従って測定された光沢度である。)が10以下であり、且つ水の接触角が85度以上であることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シートを提供する。
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートにおいて、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートは、平均厚みが0.3mm〜2.5mmの範囲であり、密度が0.11g/cm〜0.8g/cmの範囲であることが好ましい。
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートにおいて、前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの片面にポリエチレン系非発泡樹脂フィルムが積層され、該ポリエチレン系非発泡樹脂フィルムが積層されていない発泡シートの表面の光沢度が10以下であり、且つ水の接触角が85度以上である構成としてもよい。
また本発明は、前述した本発明に係るポリエチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られた発泡成形品を提供する。
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートは、少なくとも一方の面の光沢度が10以下であり、且つ水の接触角が85度以上であるものなので、表面の光沢度が低く、つや消し状で紙(和紙)のような風合いを持ち意匠性に優れていると共に、その表面が高い撥水性を有し、洗浄容易性、防汚性にも優れている。
本発明の発泡成形品は、本発明に係る前記ポリエチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られ、少なくとも一方の面の光沢度が10以下であり、且つ水の接触角が85度以上であるものなので、表面の光沢度が低く、つや消し状で紙(和紙)のような風合いを持ち意匠性に優れていると共に、その表面が高い撥水性を有し、洗浄容易性、防汚性にも優れている。
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートは、少なくとも一方の面の光沢度(但し、該光沢度はJIS K7105に記載の方法に従って測定された光沢度である。)が10以下であり、且つ水の接触角が85度以上であることを特徴としている。
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シート(以下、発泡シートと略記する。)の大きな特徴は、発泡シートの表面に微細なさざ波模様が形成されている点である。
図1〜図3は、本発明に係る実施例1で製造された発泡シートの表面の電子顕微鏡画像であり、図1(×18)は、発泡シート表面に対し垂直(90度)な方向から撮影した画像であり、図2(×400)は、発泡シートの表面に対して50度傾斜した方向から撮影した画像であり、図3(×80)は、発泡シート押出方向に対して平行に切断した断面を撮影した画像である。
図1〜図3の画像からわかるように、本発明の発泡シートの表面には、微細なさざ波模様が形成され、これによって表面の低い光沢度とつや消し状で紙(和紙)のような風合いが達成されている。また、この表面のさざ波模様は、特に図2の拡大画像(400倍)からわかるように、波状に延びる突条と、それに囲まれた比較的平坦な部分とからなっており、波状に延びる突条は、平坦な部分と明確に区別できる。つまり、波状に延びる突条は、平坦な部分から比較的急峻に立ち上がって形成されている。この表面の微細構造によって、本発明の発泡シートは、水の接触角が85度以上という高い撥水性を有している。この高い撥水性は、前述した波状に延びる突条によるロータス効果(Lotus effect)によるものと推定される。
また、発泡シートの表面に形成されたこのさざ波模様は、フィルムが積層された発泡シートや発泡成形品に加工されても消えることがなく維持される。
本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートは、少なくとも一方の面の光沢度が10以下であるので、表面の光沢度が低く、つや消し状で紙(和紙)のような風合いを持ち、意匠性に優れている。その光沢度が10を超えると、つや消し状の風合いが弱く、光沢が強くツルツルした表面状態となり、外観が従来品と変わらなくなってしまう。光沢度は9.5以下が好ましく、5.0〜9.5の範囲がより好ましい。
また本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートは、少なくとも一方の面の水の接触角が85度以上であるので、その表面が高い撥水性を有し、洗浄容易性、防汚性にも優れている。本発明のポリエチレン系樹脂発泡シートを用いたトレーなどの容器は、その表面が高い撥水性を有しており、ドリップが水滴状に付いて除去しやすいので、衛生的であり、ドリップ除去後の見栄えも良好である。またその容器をリサイクルするために洗浄する際、簡単な水洗いのみでドリップ等を除去できる利点がある。水の接触角は86度以上が好ましく、97〜95度の範囲がより好ましい。
一方、水の接触角が85度未満であると、撥水性、防汚性が不十分となり、それを用いた容器は表面に水滴が比較的付着しやすく、鮮魚等の食品を容器から取り出した後に、食品から浸み出した液体(ドリップ)が容器表面に広がった状態で付着するため、見栄えが悪く、またその容器をリサイクルするために洗浄する際に、簡単な水洗い等ではドリップ等の汚れが落ちにくく、洗浄に手間がかかる。
なお、表面の水の接触角が低い従来のポリエチレン系樹脂発泡シートを用いた容器であっても、例えば、フッ素樹脂やシリコーン樹脂等を塗布することで撥水性を高めることができるが、そのような容器は食品包装用の容器としては好ましくなく、また撥水剤のコストやその塗布に余分な手間がかかるために製造コストが上昇してしまう欠点がある。
本発明の発泡シートの原料樹脂であるポリエチレン系樹脂とは、エチレンの単独重合体、エチレンと1−オレフィン単量体との共重合体、及び、エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけをもつ非オレフィン単量体との共重合体をいい、これらは単独で用いても良いし、二種以上を併用してもよい。
ここで、1−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられ、官能基に炭素、酸素及び水素原子だけをもつ非オレフィン単量体としては、例えば、酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタクリレートなどが挙げられる。なお、エチレンと1−オレフィン単量体との共重合体、及び、エチレンと官能基に炭素、酸素及び水素原子だけをもつ非オレフィン単量体との共重合体において、エチレン含有量は70モル%以上が好ましく、80〜97モル%がより好ましい。
本発明で用いるポリエチレン系樹脂は、その密度や製造方法に関係なく、各種のポリエチレン系樹脂を使用でき、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などが挙げられ、その中でも、低コストであり、製造した発泡シートの機械特性が良好であり、特に比較的高い剛性が得られるなどの点から、高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
本発明において高密度ポリエチレンとは、ポリエチレン系樹脂のうち、密度が0.942g/cm以上のものをいう。なお、ポリエチレン系樹脂の密度は、JIS K7112:1999「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」にて規定されたA法(水中置換法)を用いて測定されたものをいう。
高密度ポリエチレンは、耐熱性、耐寒性、機械的強度及び耐薬品性に優れていることから、種々の用途に用いられており、断熱性、柔軟性及び緩衝性を付与するために発泡させたものが一部実用化されている。
本発明の発泡シートにおいて、シート表面の光沢度の調整方法としては、(a)原料とするポリエチレン系樹脂のMI、(b)押出発泡時の樹脂温度、(c)サーキュラーダイから押出された発泡シートに吹き付けるエア温度、などを調整することが挙げられる。
(a)原料とするポリエチレン系樹脂のMIは、4.0以下が好ましく、より好ましくは2.5以下である。
(b)押出発泡時の樹脂温度については、155℃以上が好ましく、155℃〜175℃がより好ましく、160℃〜165℃の範囲が最も好ましい。175℃を超えると、良好な独立気泡を有する発泡シートを得ることができず、155℃未満では、得られるシート表面の光沢性が徐々に増加し、つや消し表面のシートを得るという目的を達成できなくなる。
(c)サーキュラーダイから押出された発泡シートに吹き付けるエア温度については、25℃〜45℃の範囲が好ましく、30℃〜40℃のエア温度が最も好ましい。このエア温度が25℃未満では、押出発泡されたシートの表面が急冷され、光沢性が増してつや消し表面のシートを得るという目的を達成できなくなる。45℃を超えると、押出発泡されたシートの冷却が十分に得られず、発泡シートが伸ばされて十分な厚みが得られなかったり、独立気泡の発泡シートが得られない虞がある。
そして、ポリエチレン系樹脂発泡シートの見掛け密度は、小さいと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの機械的強度が低下する一方、大きいと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの断熱性、軽量性及び柔軟性が低下するので、0.11〜0.80g/cmの範囲とし、0.15〜0.60g/cmが好ましく、0.20〜0.50g/cmがより好ましく、0.20〜0.45g/cmが特に好ましい。
なお、ポリエチレン系樹脂発泡シートの見掛け密度は、ポリエチレン系樹脂発泡シートの任意の部分から該発泡シートをその厚み方向の全長に亘って切り込むことによって、一辺が100mmの平面正方形状の試験片を3個、切り出し、各試験片の体積及び質量を測定する。そして、各試験片の質量を体積で除すことによって各試験片の密度を算出し、各試験片の密度の相加平均値をポリエチレン系樹脂発泡シートの見掛け密度とする。
また、ポリエチレン系樹脂発泡シートの厚みは、薄いと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの機械的強度及び断熱性が低下する一方、厚いと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの成形性が低下するので、0.3〜2.5mmが好ましく、0.35〜2.0mmがより好ましい。
更に、ポリエチレン系樹脂発泡シートの連続気泡率は、50%以下とされ、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。これは、ポリエチレン系樹脂発泡シートの連続気泡率が高いと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの機械的強度や表面平滑性が低下すると共に、ポリエチレン系樹脂発泡シートを熱成形した際にポリエチレン系樹脂発泡シートの表面に凹凸が発生して表面平滑性が低下する虞れがある上に、ポリエチレン系樹脂発泡シートの伸びが低下して破れが発生する虞れがあるからである。
なお、ポリエチレン系樹脂発泡シートの連続気泡率は、ASTM D−2856−87に準拠して1−1/2−1気圧法にて測定されたものをいう。具体的には、ポリエチレン系樹脂発泡シートを一辺25mmの平面正方形状に切断し、この切断片を厚み方向に複数枚重ね合わせて厚みが約25mmの試験片を作製する。この要領で5個の試験片を作製し、各試験片の連続気泡率を空気比較式比重計(東京サイエンス社製 商品名「1000型」)を用いて、1−1/2−1気圧法により測定し、その相加平均値をポリエチレン系樹脂発泡シートの連続気泡率とする。
続いて、上記ポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法を説明する。このポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法としては、
1)原料のポリエチレン系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練し、押出機に取り付けたサーキュラダイから押出発泡させて円筒状の発泡成形体を製造し、この発泡成形体を径方向に拡径させつつマンドレルに供給して冷却し、しかる後、発泡成形体を押出方向に連続的に切断、展開してポリエチレン系樹脂発泡シートを製造する方法、
2)原料のポリエチレン系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練し、押出機に取り付けたTダイからシート状に押出発泡させてポリエチレン系樹脂発泡シートを製造する方法などが挙げられる。
上記1),2)の何れの方法にあっても、押出機から吐出された直後のポリエチレン系樹脂は、発泡すると共に樹脂自体も膨張することから、円筒状発泡成形体の周方向或いはシートの幅方向にコルゲーションと称される波打ち現象が見られ、このコルゲーションがポリエチレン系樹脂発泡シートに残存したままであると、ポリエチレン系樹脂発泡シートの品質が不均一となったり或いはポリエチレン系樹脂発泡シートの用途が制限される虞れがあるので、ポリエチレン系樹脂発泡シートからコルゲーションを除去することが好ましい。
そして、上記1)の製造方法は、円筒状発泡成形体を径方向に拡径させて発泡成形体の周方向に延伸させていることから、発泡成形体に発生したコルゲーションを除去し易い。従って、上記1)の製造方法は、コルゲーションが発生し易い、高発泡倍率のポリエチレン系樹脂発泡シートの製造に適しており、具体的には、見掛け密度が0.11〜0.50g/cmのポリエチレン系樹脂発泡シートの製造に適しており、見掛け密度が0.11〜0.35g/cmのポリエチレン系樹脂発泡シートの製造に更に適している。
また、押出機に取り付けたサーキュラダイのリップ部における内ダイの外径と、マンドレルの押出機側先端の外径との比は、小さいと、円筒状発泡成形体に発生したコルゲーションを除去することができないことがある一方、大きいと、発泡成形体が破断することがあるので、2.00以上が好ましく、2.25以上がより好ましく、2.50以上が特に好ましく、大きすぎると、円筒状発泡成形体が裂けたり或いはちぎれたりすることがあるので、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましい。
そして、上記1)の製造方法において、得られるポリエチレン系樹脂発泡シートの平均気泡径が0.10〜1.00mmとなるように調整することが好ましく、0.20〜0.80mmとなるように調整することがより好ましく、0.25〜0.60mmとなるように調整することが特に好ましい。なお、ポリエチレン系樹脂発泡シートの平均気泡径は、後述する物理型発泡剤と、気泡核剤としての作用も奏する後述の熱分解型発泡剤とを併用したり、或いは、気泡核剤の添加によって制御することができ、具体的には、ポリエチレン系樹脂発泡シートの製造時、ポリエチレン系樹脂100質量部に対して気泡核剤0.1〜3.0質量部添加するのが好ましい。このような気泡核剤としては、例えば、タルク、マイカなどが挙げられる。
これは、ポリエチレン系樹脂発泡シートの平均気泡径が小さいと、気泡膜が薄くなり、円筒状発泡成形体を径方向に拡径させる際に気泡破れが発生するなどしてポリエチレン系樹脂発泡シートの表面平滑性の低下を生じることがある一方、大きいと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面平滑性が低下することがあるからである。
更に、上記1)の製造方法において、ポリエチレン系樹脂発泡シートにおける押出方向(MD)の平均気泡径と、平均気泡径との比(MDの平均気泡径/平均気泡径)が0.70〜1.60となるように調整することが好ましい。
一方、上記1)の製造方法において、ポリエチレン系樹脂発泡シートにおける発泡シート表面に沿い且つ押出方向に直交する方向(TD)の平均気泡径と、平均気泡径との比(TDの平均気泡径/平均気泡径)が1.10〜2.00となるように調整することが好ましい。
これは、ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるMD又はTDの平均気泡径と、平均気泡径との比(MD又はTDの平均気泡径/平均気泡径)は、小さいと、円筒状の発泡成形体の延伸が不充分となって発泡成形体に発生したコルゲーションを除去することができないことがある一方、大きいと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの製造時に破泡してポリエチレン系樹脂発泡シートの連続気泡率が大きくなることがあるからである。なお、ポリエチレン系樹脂発泡シートにおけるMD又はTDの平均気泡径と、平均気泡径との比(MD又はTDの平均気泡径/平均気泡径)は、サーキュラダイのリップ部における内ダイの外径と、マンドレルの押出機側先端の外径との比や、サーキュラダイのスリットクリアランスを調整することによって制御することができる。
なお、ポリエチレン系樹脂発泡シートの平均気泡径は、下記の要領で測定されたものをいう。即ち、ポリエチレン系樹脂発泡シートの平均気泡径は、ASTM D2842−69の試験方法に準拠して測定された平均弦長に基づいて算出されたものをいう。具体的には、ポリエチレン系樹脂発泡シートを、平均気泡径を測定したい方向に沿った面で切断し、その切断面のうちの外周部を除いた中央部分を任意に4箇所、走査型電子顕微鏡を用いて拡大して電子顕微鏡写真を撮影する。
次に、撮影した各写真に写真上長さ60mmの直線を、平均気泡径を測定したい方向に描き、この直線上にある気泡数から、気泡の平均弦長tを下記式1に基づいて算出する。直線は各写真毎に6本づつ描き、各直線ごとに平均弦長tを算出し、各写真毎に平均弦長tの相加平均を算出し、この相加平均値を気泡の平均弦長tとする。なお、直線上に長さ60mmの直線を描けない場合には、長さ20mm或いは30mmの直線を写真上に描き、この直線上にある気泡数を測定し、長さ60mmの直線上にある気泡数に比例換算する。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)・・・式1
そして、下記式2により気泡径Dを算出し、各写真の気泡径Dの相加平均をポリエチレン系樹脂発泡シートの所望方向の平均気泡径とする。
気泡径D=平均弦長t/0.616・・・式2
なお、ポリエチレン系樹脂発泡シートの平均気泡径は、上述の要領で、MDの平均気泡径、TDの平均気泡径、及び、MD及びTDに直交する方向(VD)の平均気泡径をそれぞれ測定し、MD、TD及びVDの平均気泡径を相加平均することによって算出することができる。
また、上記1)の製造方法で用いられる発泡剤としては、従来から発泡シートの製造に用いられているものであれば、特に限定されないが、熱分解型発泡剤のみを発泡剤として用いると、低い見掛け密度に発泡させにくく、しかも、熱分解型発泡剤は気泡核剤としても作用することから、得られるポリエチレン系樹脂発泡シートの気泡が微細化し易くなり、気泡が微細化して気泡膜が薄くなると、円筒状発泡成形体を径方向に拡径させる際に気泡破れが発生したり或いは樹脂の伸び不良が原因となって、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面平滑性の低下を生じることがある。従って、上記1)の製造方法で用いられる発泡剤としては、物理型発泡剤が好ましく、物理型発泡剤と熱分解型発泡剤とを併用することがより好ましい。
このような物理型発泡剤としては、例えば、ブタン、ペンタンなどの炭化水素又はこれらのハロゲン化物、ジメチルエーテルなどのエーテル類、アルコール、ケトン、窒素、二酸化炭素などの無機ガスなどが挙げられる。なお、物理型発泡剤の添加量は、ポリエチレン系樹脂100質量部に対して0.05〜3.0質量部が好ましい。
そして、熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、重曹とクエン酸との混合物などが挙げられ、アゾジカルボンアミド、重曹とクエン酸との混合物が好ましい。なお、熱分解型発泡剤の添加量は、ポリエチレン系樹脂100質量部に対して0.05〜2質量部が好ましい。
また、ポリエチレン系樹脂発泡シートの一面に熱可塑性樹脂フィルムを積層一体化させる方法としては、汎用の方法が用いられ、共押出法、熱ラミネート法、接着剤を用いる方法などが挙げられるが、生産効率が高いことから共押出法が好ましい。
具体的には、上記共押出法とは、一の押出機から発泡シートを構成する発泡剤含有ポリエチレン系樹脂を押出すと共に、他の押出機から熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂を押出し、これらの樹脂を合流ダイに供給して、発泡剤含有ポリエチレン系樹脂の表裏面或いは内外面に熱可塑性樹脂フィルムが積層された積層樹脂とした上で、この積層樹脂を合流ダイ又は合流ダイに連結されたダイから押出発泡させる方法である。
上述のようにして得られたポリエチレン系樹脂発泡シートは、真空成形法、圧空成形法、真空・圧空成形法などの汎用の熱成形方法を用いて熱成形されて成形品とされるが、真空成形法によって熱成形されることが好ましい。
そして、ポリエチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られた発泡成形品は、多種多様の用途に用いることができ、例えば、食品用容器、工業部品用容器などの各種容器、これら容器内を仕切る仕切材などに用いることができる。特に、本発明の発泡成形品は、食品用容器として用いると、少なくとも一方の面の光沢度が10以下であり、且つ水の接触角が85度以上であるものなので、表面の光沢度が低く、つや消し状の風合いを持ち意匠性に優れていると共に、その表面が高い撥水性を有し、洗浄容易性、防汚性にも優れている。また、本発明の発泡成形品は、ポリエチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られたものなので、低温脆性に優れ、冷凍容器や冷凍水産台紙などの包装材料に適している。
更に、上記ポリエチレン系樹脂発泡シートの少なくとも一面に熱可塑性樹脂フィルムを積層一体化させてることによって、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面平滑性の向上を図ってもよい。
このような熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、上記ポリエチレン系樹脂からなるフィルム、プロピレンの単独重合体やプロピレンと1−オレフィン単量体との共重合体などのプロピレン系樹脂からなるフィルムなどのオレフィン系樹脂フィルムが挙げられ、ポリエチレン系樹脂フィルムが好ましい。なお、1−オレフィン単量体としては、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
[実施例1]
ポリエチレン系樹脂発泡シート(以下、発泡シートと略記する。)の作製方法としては、ポリエチレン系樹脂として、日本ポリエチレン社製の商品名「HS−451」(MI=2.0、密度0.954g/cm、溶融張力30mN)を100質量部に対し、発泡核剤としてクエン酸モノナトリウムと重曹の混合物である大日精化工業社製のP0208Kを0.3質量部添加した混合樹脂原料を用いた。
この混合樹脂原料を直径115mmφの単軸押出機に入れ、最高温度設定を220℃になるように押出機内で混合樹脂原料を加熱溶融・混練し、途中で発泡剤(イソブタン/ノルマルブタン=50/50)を1.5質量部圧入した後、発泡剤含有溶融樹脂を冷却し、口径125mmφのサーキュラーダイから樹脂温度165℃で押出し、発泡させた。サーキュラーダイから樹脂を押出発泡した直後に、その環状の発泡シートの内側、外側に35℃の冷却エアを吹き付けながら、直径339.5mmφの冷却マンドレルに通して冷却成形し、引取速度3.4m/minで環状シートを引き取り、カッターで切開して1枚の発泡シートとして巻き取り、発泡シートを作製した。
得られた発泡シートは、厚みが平均で0.75mm、密度0.40g/cm、幅1040mmであった。
次に、得られた発泡シートの一方の面に、バリアー性フイルム(厚さ100μm、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)/EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)/Ny(ナイロン)/LLDPE)をφ250mm誘電加熱ロールを用いて、表面温度200℃、引取り速度7.5m/minでフイルム積層を行い、フィルムが積層された発泡シートも作製した。
得られた発泡シート、及び得られたフイルムが積層された発泡シートは、真空成形法を用いて上下ヒーター温度210℃、サイクルタイム15秒の成形条件で熱成形され、寸法が15cm×19cm×深さ25mmの食品トレー形状の発泡成形品をそれぞれのシートから得た。
得られた発泡シート、フイルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品について各測定を行い、結果を表1に示した。また、これらの測定方法は以下の通りとした。
<結晶化度の測定方法>
結晶化度は、JIS K7121:「プラスチックの転移温度測定法法」に記載の方法により測定した。即ち、示差走査熱量計装置DSC6220型(SIIナノテクノロジー社製)を用い、測定容器に試料を6.5mg充填して、窒素ガス流量30mL/minのもと、10℃/minの昇温速度で220℃まで昇温し、10分間保持後、取り出して室温にて急冷する熱処理の後、窒素ガス流量30mL/minのもと、10℃/minの昇温速度で220℃まで昇温し、ガラス転移温度を測定し、中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。結晶化度(%)は、次式3から算出した。
結晶化度(%)=(結晶化熱量(mJ/mg)/285.7)×100 ・・・式3
試料シートの幅方向に沿って3点測定し、それらの平均値を結晶化度とした。
<光沢度>
光沢度は、JIS K7105:「プラスチックの光学的特性試験方法」に記載の方法により測定した。即ち、ハンディ光沢計 グロスチェッカーIG−330(堀場製作所社製)を用いて、60度計(入射角60度)で、発泡シートの表面(フィルムが積層された発泡シートにおいては、フィルムが積層されていない面を表面とする)を幅方向に沿って5点測定し、それらの平均値を光沢度とした。また、発泡成形品においては、成形品の表面(フィルムが積層された成形品においては、フィルムが積層されていない面を表面とする)を5点測定し、それらの平均値を光沢度とした。
<連続気泡率>
東京サイエンス社製の空気比較式比重計1000型を用い、試料シートを25mm辺で複数枚切り出す。厚み方向に複数枚重ねて見かけ体積V1をノギスで測定する。
次に、ASTM D−2856−87に準拠して、1−1/2−1気圧法によって体積V2を測定し、次式4から連続気泡率(%)を算出した。
連続気泡率(%)=(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見かけ体積×100 ・・・式4
<水の接触角>
水の接触角は、固液界面解析装置DropMaster300(協和界面科学社製)を使って、液滴法により測定した。滴下液は蒸留水、液量は1.0μLとし、接触角の計算はθ/2法により算出した。
測定に用いる試験片は、試験環境20℃、相対湿度57%雰囲気下、16時間以上放置した試料で測定を行った。測定する場所は、<光沢度>測定の場所と同様とし、5点測定した平均値を水の接触角とした。
(接触角の評価)
○:85度以上 撥水性が高く、水滴がつき難く、汚れがつき難いため良好。
×:85度未満 撥水性が低く、水滴がつき易く、汚れがつき易いため不良。
また、光沢度の測定値、表面の目視観察等により、「つや消し外観」を、次の評価基準で評価した。
(つや消し外観の評価基準)
○:発泡シートの光沢度が10以下であり、光沢が弱く、表面がつや消し状で紙(和紙)のような高級感のある外観を有する。
△:発泡シートの光沢度が10を超えており、光沢がやや強く、紙(和紙)のような高級感がない。
×:発泡シートの光沢度が15を超えており、光沢が強く、紙(和紙)のような高級感がない。
[実施例2]
引取速度を5.0m/min、発泡剤を1.4質量部、樹脂温度を166.5℃、冷却エア温度を30℃としたこと以外は、実施例1と同様に発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品の製造を行った。
得られた発泡シートの厚みは、平均で0.51mm、密度0.44g/cm、シート幅1040mmであった。
本実施例2で製造した発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品について各測定を行い、結果を表1に示した。
[比較例1]
原料のポリエチレン系樹脂として、日本ポリエチレン社製の商品名「EH−001」(MI=4.3、密度0.951g/cm、溶融張力22mN)を100質量部用い、樹脂温度を164.0℃としたこと以外は、実施例1と同様に発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品の製造を行った。
得られた発泡シートは、厚みが0.76mm、密度0.399g/cmであった。
この比較例1で製造した発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品について各測定を行い、結果を表1に示した。
[比較例2]
原料のポリエチレン系樹脂として、東ソー社製の商品名「06S55A」(MI=4.0、密度0.950g/cm、溶融張力45mN)を100質量部用い、樹脂温度を166.5℃とした以外は、実施例1と同様に発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品の製造を行った。
得られた発泡シートは、厚みが0.76mm、密度0.40g/cmであった。
この比較例2で製造した発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品について各測定を行い、結果を表1に示した。
[比較例3]
樹脂温度を153℃、冷却エア温度を24℃とした以外は、実施例1と同様に発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品の製造を行った。
得られた発泡シートは、厚みが0.76mm、密度0.399g/cmであった。
この比較例3で製造した発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品について各測定を行い、結果を表1に示した。
実施例1〜2、比較例1〜3の測定結果を表1にまとめて記す。
また、図1〜図3に実施例1で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像を示し、図4〜図6に比較例1で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像を示し、図7〜図9に比較例2で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像を示す。
これらの図のうち、図1(×18)、図4(×18)、図7(×18)は、発泡シート表面に対し垂直(90度)な方向から撮影した画像であり、図2(×400)、図5(×400)、図8(×400)は、発泡シートの表面に対して50度傾斜した方向から撮影した画像であり、図3(×80)、図6(×80)、図9(×80)は発泡シート押出方向に対し平行に切断した断面を撮影した画像である。なお、×は倍率を示す。
本発明に係る実施例1で得られた発泡シートは、図1〜図3に示す通り、シート表面に微細なさざ波模様が形成されている。このさざ波模様の輪郭の突出高さは、後述する比較例1の発泡シートの場合と比べて大きく、且つ突出の傾斜が急であり、電子顕微鏡画像では輪郭が明瞭に識別できる。
一方、図7〜図9に示した比較例2の発泡シートは、シート表面が平滑であり、さざ波模様は全く認められない。
また、図4〜図6に示した比較例1の発泡シートは、微かにさざ波模様が認められるものの、さざ波の輪郭の突出高さが実施例1の場合よりも低く、且つ突出の傾斜がなだらかであり、輪郭が不明瞭である。
なお、実施例2と比較例3の発泡シートの電子顕微鏡画像は図示しないが、それぞれ実施例1と比較例1の画像とほぼ同等であった。
前述した通り、実施例1,2と比較例1〜3のそれぞれの発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品(以下、発泡シート等という)は、その表面の微細構造が明確に異なっており、その微細構造の違いによって、光沢度及び撥水性(水に対する接触角)などに差異がある。
光沢度については、表1に記した結果から分かるように、実施例1では5.0〜8.0、実施例2で5.3〜9.5と、低い値であり、紙(和紙)のような外観を呈しており、つや消し外観評価は○であった。
一方、比較例1〜3は、光沢度が11.5以上であり、実施例1,2の発泡シート等と比べ、光沢が強く、紙のような外観とは言えず、「つや消し外観」の評価は△または×であった。特に、比較例2の発泡シート等は光沢が強く、「つや消し外観」の評価は×であった。
また、撥水性については、実施例1,2と比較例1〜3とで明確な差が生じた。
実施例1,2で得られた発泡シート等は、水の接触角が88度以上であり、一方、比較例1〜3は、接触角が85度未満であり、水滴に対する接触角に関して、実施例1,2と比較例1〜3とでは明確な差異が認められた。
本発明に係る実施例1で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像(×18)であり、発泡シート表面に対し垂直(90度)な方向から撮影した画像である。 本発明に係る実施例1で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像(×400)であり、発泡シート表面に対し50度傾斜した方向から撮影した画像である。 本発明に係る実施例1で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像(×80)であり、発泡シート押出方向に対し平行に切断した断面を撮影した画像である。 本発明に係る比較例1で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像(×18)であり、発泡シート表面に対し垂直(90度)な方向から撮影した画像である。 本発明に係る比較例1で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像(×400)であり、発泡シート表面に対し50度傾斜した方向から撮影した画像である。 本発明に係る比較例1で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像(×80)であり、発泡シート押出方向に対し平行に切断した断面を撮影した画像である。 本発明に係る比較例2で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像(×18)であり、発泡シート表面に対し垂直(90度)な方向から撮影した画像である。 本発明に係る比較例2で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像(×400)であり、発泡シート表面に対し50度傾斜した方向から撮影した画像である。 本発明に係る比較例2で製造した発泡シートの電子顕微鏡画像(×80)であり、発泡シート押出方向に対し平行に切断した断面を撮影した画像である。

Claims (6)

  1. 少なくとも一方の面の光沢度(但し、該光沢度はJIS K7105に記載の方法に従って測定された光沢度である。)が10以下であり、且つ水の接触角が85度以上であることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シート。
  2. MI2.5以下かつ密度0.942g/cm 以上であるポリエチレン系樹脂が発泡されてなることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン系樹脂発泡シート。
  3. 前記ポリエチレン系樹脂発泡シートは、平均厚みが0.3mm〜2.5mmの範囲であり、密度が0.11g/cm〜0.80g/cmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂発泡シート。
  4. 前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの片面にポリエチレン系非発泡樹脂フィルムが積層され、該ポリエチレン系非発泡樹脂フィルムが積層されていない発泡シートの表面の光沢度が10以下であり、且つ水の接触角が85度以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡シート。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られた発泡成形品。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、
    ポリエチレン系樹脂を溶融混練し、これを押出発泡させて発泡シートとし、これに25〜40℃のエアを吹き付けて冷却することを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
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