JP5291441B2 - ポリエチレン系樹脂発泡シートおよびその製造方法ならびに発泡成形品 - Google Patents
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Description
従来、ポリエチレン樹脂発泡シートなどの熱可塑性樹脂発泡シート(以下、発泡シート類と記す。)は、表面に光沢を有し、またその発泡シート類を熱成形して得られるトレーなどの発泡成形品についても、光沢を有するものが提供されていた。
特許文献1の従来技術は、少なくとも片面に樹脂層を設けた養生板、仕切り板のような、剛性を必要とするポリエチレン系樹脂積層発泡体の提供が目的であり、この従来技術には、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面につや消し処理を施すことに関しては記載されていない。
特許文献2の従来技術は、溶融張力とMFRの積が一定以上であるポリエチレン系樹脂組成物を用いることによって、高い曲げ弾性率や剛性を実現できる、としているが、この従来技術には、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面につや消し処理を施すことに関しては記載されていない。
特許文献3の従来技術は、ポリプロピレン系樹脂発泡シートにおいて、意匠性を改善するために光沢度の低い発泡シートの提供を目的としているが、この従来技術では、ポリエチレン系樹脂発泡シートに関しては記載がなく、また、ポリプロピレン系樹脂発泡シート表面の光沢がどうして低下できるのかについては記載されていないので、この従来技術から樹脂材料の異なるポリエチレン系樹脂発泡シートの表面光沢を低下させるために適用することはできない。
特許文献4の従来技術は、高密度ポリエチレン系樹脂を主原料として独立気泡を有する良好な発泡シートを得ているが、この従来技術には、ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面につや消し処理を施すことに関しては記載されていない。
図1〜図3は、本発明に係る実施例1で製造された発泡シートの表面の電子顕微鏡画像であり、図1(×18)は、発泡シート表面に対し垂直(90度)な方向から撮影した画像であり、図2(×400)は、発泡シートの表面に対して50度傾斜した方向から撮影した画像であり、図3(×80)は、発泡シート押出方向に対して平行に切断した断面を撮影した画像である。
また、発泡シートの表面に形成されたこのさざ波模様は、フィルムが積層された発泡シートや発泡成形品に加工されても消えることがなく維持される。
一方、水の接触角が85度未満であると、撥水性、防汚性が不十分となり、それを用いた容器は表面に水滴が比較的付着しやすく、鮮魚等の食品を容器から取り出した後に、食品から浸み出した液体(ドリップ)が容器表面に広がった状態で付着するため、見栄えが悪く、またその容器をリサイクルするために洗浄する際に、簡単な水洗い等ではドリップ等の汚れが落ちにくく、洗浄に手間がかかる。
1)原料のポリエチレン系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練し、押出機に取り付けたサーキュラダイから押出発泡させて円筒状の発泡成形体を製造し、この発泡成形体を径方向に拡径させつつマンドレルに供給して冷却し、しかる後、発泡成形体を押出方向に連続的に切断、展開してポリエチレン系樹脂発泡シートを製造する方法、
2)原料のポリエチレン系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練し、押出機に取り付けたTダイからシート状に押出発泡させてポリエチレン系樹脂発泡シートを製造する方法などが挙げられる。
平均弦長t=60/(気泡数×写真の倍率)・・・式1
気泡径D=平均弦長t/0.616・・・式2
ポリエチレン系樹脂発泡シート(以下、発泡シートと略記する。)の作製方法としては、ポリエチレン系樹脂として、日本ポリエチレン社製の商品名「HS−451」(MI=2.0、密度0.954g/cm3、溶融張力30mN)を100質量部に対し、発泡核剤としてクエン酸モノナトリウムと重曹の混合物である大日精化工業社製のP0208Kを0.3質量部添加した混合樹脂原料を用いた。
次に、得られた発泡シートの一方の面に、バリアー性フイルム(厚さ100μm、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)/EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)/Ny(ナイロン)/LLDPE)をφ250mm誘電加熱ロールを用いて、表面温度200℃、引取り速度7.5m/minでフイルム積層を行い、フィルムが積層された発泡シートも作製した。
得られた発泡シート、及び得られたフイルムが積層された発泡シートは、真空成形法を用いて上下ヒーター温度210℃、サイクルタイム15秒の成形条件で熱成形され、寸法が15cm×19cm×深さ25mmの食品トレー形状の発泡成形品をそれぞれのシートから得た。
得られた発泡シート、フイルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品について各測定を行い、結果を表1に示した。また、これらの測定方法は以下の通りとした。
結晶化度は、JIS K7121:「プラスチックの転移温度測定法法」に記載の方法により測定した。即ち、示差走査熱量計装置DSC6220型(SIIナノテクノロジー社製)を用い、測定容器に試料を6.5mg充填して、窒素ガス流量30mL/minのもと、10℃/minの昇温速度で220℃まで昇温し、10分間保持後、取り出して室温にて急冷する熱処理の後、窒素ガス流量30mL/minのもと、10℃/minの昇温速度で220℃まで昇温し、ガラス転移温度を測定し、中間点ガラス転移温度をガラス転移温度とした。結晶化度(%)は、次式3から算出した。
結晶化度(%)=(結晶化熱量(mJ/mg)/285.7)×100 ・・・式3
試料シートの幅方向に沿って3点測定し、それらの平均値を結晶化度とした。
光沢度は、JIS K7105:「プラスチックの光学的特性試験方法」に記載の方法により測定した。即ち、ハンディ光沢計 グロスチェッカーIG−330(堀場製作所社製)を用いて、60度計(入射角60度)で、発泡シートの表面(フィルムが積層された発泡シートにおいては、フィルムが積層されていない面を表面とする)を幅方向に沿って5点測定し、それらの平均値を光沢度とした。また、発泡成形品においては、成形品の表面(フィルムが積層された成形品においては、フィルムが積層されていない面を表面とする)を5点測定し、それらの平均値を光沢度とした。
東京サイエンス社製の空気比較式比重計1000型を用い、試料シートを25mm辺で複数枚切り出す。厚み方向に複数枚重ねて見かけ体積V1をノギスで測定する。
次に、ASTM D−2856−87に準拠して、1−1/2−1気圧法によって体積V2を測定し、次式4から連続気泡率(%)を算出した。
連続気泡率(%)=(見掛け体積−空気比較式比重計での測定体積)/見かけ体積×100 ・・・式4
水の接触角は、固液界面解析装置DropMaster300(協和界面科学社製)を使って、液滴法により測定した。滴下液は蒸留水、液量は1.0μLとし、接触角の計算はθ/2法により算出した。
測定に用いる試験片は、試験環境20℃、相対湿度57%雰囲気下、16時間以上放置した試料で測定を行った。測定する場所は、<光沢度>測定の場所と同様とし、5点測定した平均値を水の接触角とした。
(接触角の評価)
○:85度以上 撥水性が高く、水滴がつき難く、汚れがつき難いため良好。
×:85度未満 撥水性が低く、水滴がつき易く、汚れがつき易いため不良。
(つや消し外観の評価基準)
○:発泡シートの光沢度が10以下であり、光沢が弱く、表面がつや消し状で紙(和紙)のような高級感のある外観を有する。
△:発泡シートの光沢度が10を超えており、光沢がやや強く、紙(和紙)のような高級感がない。
×:発泡シートの光沢度が15を超えており、光沢が強く、紙(和紙)のような高級感がない。
引取速度を5.0m/min、発泡剤を1.4質量部、樹脂温度を166.5℃、冷却エア温度を30℃としたこと以外は、実施例1と同様に発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品の製造を行った。
得られた発泡シートの厚みは、平均で0.51mm、密度0.44g/cm3、シート幅1040mmであった。
本実施例2で製造した発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品について各測定を行い、結果を表1に示した。
原料のポリエチレン系樹脂として、日本ポリエチレン社製の商品名「EH−001」(MI=4.3、密度0.951g/cm3、溶融張力22mN)を100質量部用い、樹脂温度を164.0℃としたこと以外は、実施例1と同様に発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品の製造を行った。
得られた発泡シートは、厚みが0.76mm、密度0.399g/cm3であった。
この比較例1で製造した発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品について各測定を行い、結果を表1に示した。
原料のポリエチレン系樹脂として、東ソー社製の商品名「06S55A」(MI=4.0、密度0.950g/cm3、溶融張力45mN)を100質量部用い、樹脂温度を166.5℃とした以外は、実施例1と同様に発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品の製造を行った。
得られた発泡シートは、厚みが0.76mm、密度0.40g/cm3であった。
この比較例2で製造した発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品について各測定を行い、結果を表1に示した。
樹脂温度を153℃、冷却エア温度を24℃とした以外は、実施例1と同様に発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品の製造を行った。
得られた発泡シートは、厚みが0.76mm、密度0.399g/cm3であった。
この比較例3で製造した発泡シート、フィルムが積層された発泡シート、およびそれらの発泡成形品について各測定を行い、結果を表1に示した。
これらの図のうち、図1(×18)、図4(×18)、図7(×18)は、発泡シート表面に対し垂直(90度)な方向から撮影した画像であり、図2(×400)、図5(×400)、図8(×400)は、発泡シートの表面に対して50度傾斜した方向から撮影した画像であり、図3(×80)、図6(×80)、図9(×80)は発泡シート押出方向に対し平行に切断した断面を撮影した画像である。なお、×は倍率を示す。
一方、図7〜図9に示した比較例2の発泡シートは、シート表面が平滑であり、さざ波模様は全く認められない。
また、図4〜図6に示した比較例1の発泡シートは、微かにさざ波模様が認められるものの、さざ波の輪郭の突出高さが実施例1の場合よりも低く、且つ突出の傾斜がなだらかであり、輪郭が不明瞭である。
なお、実施例2と比較例3の発泡シートの電子顕微鏡画像は図示しないが、それぞれ実施例1と比較例1の画像とほぼ同等であった。
光沢度については、表1に記した結果から分かるように、実施例1では5.0〜8.0、実施例2で5.3〜9.5と、低い値であり、紙(和紙)のような外観を呈しており、つや消し外観評価は○であった。
一方、比較例1〜3は、光沢度が11.5以上であり、実施例1,2の発泡シート等と比べ、光沢が強く、紙のような外観とは言えず、「つや消し外観」の評価は△または×であった。特に、比較例2の発泡シート等は光沢が強く、「つや消し外観」の評価は×であった。
実施例1,2で得られた発泡シート等は、水の接触角が88度以上であり、一方、比較例1〜3は、接触角が85度未満であり、水滴に対する接触角に関して、実施例1,2と比較例1〜3とでは明確な差異が認められた。
Claims (6)
- 少なくとも一方の面の光沢度(但し、該光沢度はJIS K7105に記載の方法に従って測定された光沢度である。)が10以下であり、且つ水の接触角が85度以上であることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シート。
- MI2.5以下かつ密度0.942g/cm 3 以上であるポリエチレン系樹脂が発泡されてなることを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン系樹脂発泡シート。
- 前記ポリエチレン系樹脂発泡シートは、平均厚みが0.3mm〜2.5mmの範囲であり、密度が0.11g/cm3〜0.80g/cm3の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレン系樹脂発泡シート。
- 前記ポリエチレン系樹脂発泡シートの片面にポリエチレン系非発泡樹脂フィルムが積層され、該ポリエチレン系非発泡樹脂フィルムが積層されていない発泡シートの表面の光沢度が10以下であり、且つ水の接触角が85度以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡シート。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡シートを熱成形して得られた発泡成形品。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法であって、
ポリエチレン系樹脂を溶融混練し、これを押出発泡させて発泡シートとし、これに25〜40℃のエアを吹き付けて冷却することを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法。
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