JP5289905B2 - 抗三価クロムモノクローナル抗体と該抗体を利用した六価クロムの分析方法 - Google Patents

抗三価クロムモノクローナル抗体と該抗体を利用した六価クロムの分析方法 Download PDF

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本発明は、抗三価クロムモノクローナル抗体と該抗体を利用した六価クロムの分析方法に関する。さらに詳述すると、本発明は、エチレンジアミンテトラ酢酸と錯体を形成した三価クロムを特異的に認識する抗三価クロムモノクローナル抗体と、この抗体を利用して六価クロムを定性的または定量的に分析する方法に関する。
尚、本明細書において、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)と錯体を形成した金属は、例えばCr(III)-EDTAのように、金属元素(価数)−EDTAと記載することとする。
クロム(Cr)は、自然界において三価クロムと六価クロムの形態で存在する元素である。ここで、六価クロムは本来的には自然界において多く存在するものではなく、自然界において存在している六価クロムは、人為的に製造された六価クロムに由来するものが殆どである。即ち、クロムには、めっき、合金、炉材、皮なめし、顔料及び化学薬品等に代表される様々な工業上の用途があり、工業的過程の中で六価クロムが人為的に製造され、それが環境中に蓄積されて現在の六価クロムによる環境汚染に至っている。
クロムは人体に対して必須元素である一方で、過剰に摂取すると毒性を呈する。特に、六価クロムは非常に高い毒性を呈することが知られている。例えば、六価クロムが皮膚や気道に付着することに起因して炎症を引き起こしたり、さらには六価クロムが肺まで到達して肺ガンを引き起こす危険性も知られている。また、近年では、低濃度の六価クロムによって慢性中毒が引き起こされることも報告されている。
このように、六価クロムは毒性が非常に高い物質であることから、六価クロムに対する環境基準が厳しく規制されている。例えば、水質汚濁防止法に基づく一律排水基準では六価クロム濃度が0.5mg/L以下に規制されている。水道法に基づく水質基準では六価クロム濃度が0.05mg/L以下に規制されている。環境基本法に基づく環境基準では六価クロム化合物濃度が0.05mg/L以下に規制されている。土壌汚染対策法では溶出基準として六価クロム化合物濃度が0.05mg/L以下、含有基準として六価クロム化合物250mg/kg以下に規制されている。
土壌汚染対策法では、六価クロム濃度分析の公定法として、フレーム原子吸光法、電気加熱原子吸光法、ICP発光分光分析法を用いることが定められている。しかし、公定法分析には多大な時間と費用を要すると共に、汚染調査が必要とされる土壌や水は今後さらに拡大することが予想される。したがって、分析時間と費用の削減のためには、六価クロムが環境基準値以上存在している高濃度エリアを絞り込んだ後に、該高濃度エリアのみを公定法分析することが望ましいため、高濃度エリアを絞り込むための簡便・迅速な分析法の確立が望まれている。
六価クロムの簡易分析法としては、例えば比色法が利用されており、測定キットとして「パックテスト(登録商標)」(共立理化学研究所)、「ポナールキット」(同仁化学)などが商品化されている。しかし、これらの方法は検出感度が十分なものではなく、水道法に基づく水質基準濃度の測定ができない。また、妨害物質の影響を受けやすいなどの問題もある。
ここで、特定物質に対する簡易な測定法としては、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、免疫発光測定法、エンザイムイムノアッセイ(EIAまたはELISA)などの免疫反応を利用した方法が知られている。また、微量物質の測定法としては、間接蛍光抗体法、競合アッセイ法の他に蛍光センサーを利用する方法(非特許文献1)などがあり、その応用範囲は広い。例えば、重金属測定用のモノクローナル抗体を利用して、特定の重金属を高感度且つ高精度に測定する方法が知られている(非特許文献2)。
N. Ohmura, et al., Anal. Chemistry, Vol. 73, pp.3392‐33, 99 (2001) 俵田啓他, 分析化学, 第52巻, 第583頁, 2003年
しかしながら、現在の六価クロムの環境基準値として最も厳しい規制値である水道法による水質基準値(六価クロム濃度0.05mg/L(50ppb)以下)の測定を安定且つ確実に行うためのモノクローナル抗体は見出されておらず、免疫学的手法を用いた六価クロムの簡易分析が実施できないのが現状である。
そこで、本発明は、現在の環境基準値として最も厳しい規制値である0.05mg/L(50ppb)の六価クロムの測定を安定且つ確実に行うためのモノクローナル抗体を提供することを目的とする。また、本発明は、モノクローナル抗体を利用した免疫学的手法により六価クロムを検出・定量する方法を提供することを目的とする。
かかる課題を解決するため、本願発明者が鋭意検討し、エチレンジアミンテトラ酢酸と錯体を形成した三価クロム(Cr(III)-EDTA)を特異的に認識する抗三価クロムモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを単離することに成功した。そして、このハイブリドーマにより産生されるモノクローナル抗体が、Cr(III)-EDTAを極めて特異的に認識するものであり、しかも、非常に低濃度のCr(III)-EDTAを検出する能力を有しているものであることが明らかとなった。
そこで、本願発明者はこのモノクローナル抗体の優れた性質を最大限に発揮させるべくさらなる鋭意検討を重ね、このモノクローナル抗体を利用して六価クロムを高精度に測定することを可能とする分析方法を確立し、本願発明を完成させるに至った。
即ち、本発明のモノクローナル抗体は、受託番号FERM P−21618として受託されたハイブリドーマにより産生され、エチレンジアミンテトラ酢酸により三価クロムが配位された三価クロム錯体を特異的に認識する抗三価クロムモノクローナル抗体である。
本発明のハイブリドーマは、受託番号FERM P−21618として受託されている。より詳細には、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成20年7月24日付けで受託番号FERM P−21618として受託されている。
本発明のモノクローナル抗体は、試料中の三価クロムを定性的または定量的に測定する免疫学的手法に利用することができる。免疫学的手法としては、本発明のモノクローナル抗体を用いればいずれでも良いが、例えば免疫クロマトグラフィー、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、免疫発光測定法、エンザイムイムノアッセイ(EIAまたはELISA)、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)、免疫比濁法(TIA)、ラテックス免疫比濁法(LTIA)、蛍光センサー法などの方法が挙げられる。
また、本発明の三価クロムを定性的または定量的に測定するためのキットは、本発明のモノクローナル抗体のみから構成されていてもよいが、他の試薬例えばキレート剤、キレート剤−タンパク質複合体、ポジティブコントロール試料、ネガティブコントロール試料などを包含してもよい。また、モノクローナル抗体、キレート剤−タンパク質複合体のいずれか、または両方が標識されていてもよい。さらに、本発明のキットは、モノクローナル抗体を含め必要な試薬がフィルターなどに吸着されている免疫クロマトグラフィー装置(例えば、試験紙)の形態でもよい。
本発明の分析方法は、試験試料中に含まれる六価クロムと三価クロムとを分離した後、分離された六価クロムを還元剤と反応させて三価クロムとし、この三価クロムとエチレンジアミンテトラ酢酸とを反応させて三価クロム錯体を得、この三価クロム錯体を本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法により測定することにより、試験試料に含まれる六価クロムを定性的または定量的に分析するようにしている。
本発明のモノクローナル抗体は、エチレンジアミンテトラ酢酸により三価クロムが配位された三価クロム錯体(Cr(III)-EDTA)を特異的に認識するが、六価クロムは認識しない。そこで、試験試料に含まれる六価クロムと三価クロムとを分離し、六価クロムを三価クロムに還元した後、この三価クロムをエチレンジアミンテトラ酢酸に配位させて三価クロム錯体を得ることで、本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法による三価クロム錯体の測定が可能になる。そして、三価クロム錯体の測定値は、試験試料中の六価クロム濃度に対応するので、この分析方法により、試験試料中の六価クロムを定性的または定量的に分析することができる。
ここで、試験試料中に含まれる六価クロムと三価クロムとを分離する際には、強塩基性陰イオン交換樹脂を利用することが好ましい。具体的には、試験試料を強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させて六価クロムを吸着させることにより試験試料中に含まれる六価クロムと三価クロムとを分離した後、強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着している六価クロムを還元剤と反応させて三価クロムとすることにより強塩基性陰イオン交換樹脂から脱離させるようにする。強塩基性陰イオン交換樹脂は、六価クロムを吸着するが三価クロムは吸着しない。さらには、三価クロム以外の金属陽イオンも吸着しない。したがって、強塩基性陰イオン交換樹脂に試験試料を接触させることによって、三価クロムさらには金属陽イオンを強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させることなく、六価クロムのみを強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着させることができる。そして、強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着している六価クロムを還元剤と反応させて三価クロムとすることで、強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着している六価クロムを三価クロムとして強塩基性陰イオン交換樹脂から脱離させて回収することができる。
また、本発明の分析方法は、試験試料を第1の試料と第2の試料との二つに等量に分け、第1の試料には還元剤を添加する前処理を行った後にエチレンジアミンテトラ酢酸を添加し、第2の試料には還元剤を添加する前処理を行わずにエチレンジアミンテトラ酢酸を添加し、次いで第1の試料と第2の試料とを、請求項1記載のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法により測定し、第1の試料の測定結果と第2の試料の測定結果とを比較して、試験試料に含まれる六価クロムを定性的または定量的に分析するようにしている。
本発明によれば、エチレンジアミンテトラ酢酸と錯体を形成した三価クロムを特異的に認識する抗三価クロムモノクローナル抗体および該抗体を用いる免疫学的方法、該方法に用いるキット(装置)が提供される。本発明のモノクローナル抗体は、Cr(III)-EDTAに対して極めて高い親和性・特異性を有し、且つ極めて低濃度の三価クロム錯体Cr(III)-EDTAを検出することが可能であることから、環境試料等に含まれる微量の三価クロムの検出及び定量分析を高精度に且つ高い信頼性を以て簡易に実施することができる。
また、本発明のモノクローナル抗体を利用することで、六価クロムを定性的または定量的に分析することも可能であることから、環境への排出基準のみならず、高い検出感度が要求される水質基準や環境基準に対する六価クロムの検出及び定量分析を高精度に且つ高い信頼性を以て簡易に実施することが可能になる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
<本発明のモノクローナル抗体の特徴>
本発明のモノクローナル抗体は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)と錯体を形成した三価クロム(Cr(III)-EDTA)を特異的に認識する抗三価クロムモノクローナル抗体である。このモノクローナル抗体は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに平成20年7月24日付けで受託番号FERM P−21618として受託されているハイブリドーマにより産生される。
本発明のモノクローナル抗体は、受託番号FERM P−21618として受託されているハイブリドーマを培養した際の培地から得られる。培地は、脱塩カラムを用いて培地自体に含まれる若干の重金属を除去するのが好ましい。さらに、培地中に含まれる他のタンパク質の影響を排除するため、例えばプロテインAアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより抗体を精製するのが好ましい。
本発明のモノクローナル抗体は、Cr(III)-EDTAに対する解離定数が0.0097μMであり、Cr(III)-EDTAに対する交差反応性を100%としたときに、Ni(II)−EDTA, Zn(II)−EDTA, Fe(III)−EDTA, Cd(III)−EDTA, Mg(II)−EDTA, Ca(II)−EDTA, Pb(II)−EDTA及びfree−EDTA(金属と結合していないEDTA)との交差反応性は1.1%以下である。また、通常、金属は単独では抗原性を有しないので、EDTAと錯体を形成していない金属(金属イオン)は当然認識しない。また、本発明のモノクローナル抗体のCr(III)-EDTAに対する検出限界は、0.2ppb(3nM)である。
<六価クロムの分析方法>
本発明のモノクローナル抗体は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)と錯体を形成した三価クロム(Cr(III)-EDTA)を特異的に認識する抗三価クロムモノクローナル抗体であり、陰イオンである六価クロム(通常はクロム酸イオン[CrO4]2-、または二クロム酸イオン [Cr2O7]2-として存在する)を直接検出することはできない。そこで、以下に、本発明のモノクローナル抗体を利用して六価クロムを定性的または定量的に分析する方法について説明する。
六価クロムを定性的または定量的に分析する本発明の分析方法は、試験試料中に含まれる六価クロムと三価クロムとを分離した後、分離された六価クロムを還元剤と反応させて三価クロムとし、この三価クロムとエチレンジアミンテトラ酢酸とを反応させて三価クロム錯体(Cr(III)-EDTA)を得、この三価クロム錯体を本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法により測定し、試験試料に含まれる六価クロムを定性的または定量的に分析するようにしている。
試験試料中に含まれる六価クロムと三価クロムとを分離する方法としては、例えばカラムを利用した方法が挙げられる。即ち、試験試料をカラムに通液させて、六価クロムをカラムに吸着させる一方で、三価クロムはカラムに吸着させることなく通過させて、試験試料中の六価クロムと三価クロムとを分離することができる。逆に、試験試料をカラムに通液させて三価クロムをカラムに吸着させる一方で、六価クロムはカラムに吸着させることなく通過させることで、試験試料中の六価クロムと三価クロムとを分離することもできる。
具体的には、例えば、強塩基性陰イオン交換樹脂(例えば、三菱化学製のダイヤイオンNSA100)を充填剤として充填したカラムを利用し、このカラムに試験試料を通液させることで、陰イオンである六価クロムのみをカラムに吸着させ、三価クロムさらには他の金属陽イオンをカラムに吸着させることなく通過させることができる。本発明のモノクローナル抗体はCr(III)-EDTAを極めて特異的に認識することから、試験試料に含まれる金属陽イオンがエチレンジアミンテトラ酢酸と錯体を形成したときに、これが分析の際の妨害成分となって分析精度が低下することは殆どありえないが、三価クロムに対して極めて高濃度(例えばニッケルが三価クロムに対して100倍以上の濃度で含まれている場合)の金属陽イオンが試験試料に含まれている場合には、この金属陽イオンとエチレンジアミンテトラ酢酸とによる金属錯体が妨害成分となって分析精度を低下させる場合がある。しかしながら、上記のように、六価クロムのみをカラムに吸着させ、三価クロムさらには他の金属陽イオンをカラムに吸着させることなく通過させることで、目的とする六価クロムの分析を、妨害成分となり得る他の金属陽イオンを十分に排除した状態で行うことができる。但し、六価クロムと三価クロムとを分離するために用いる充填剤は、これに限定されるものではなく、六価クロムと三価クロムの何れか一方を吸着して分離することのできる公知あるいは新規の充填剤を適宜用いることができる。
ここで、強塩基性陰イオン交換樹脂を充填剤として充填したカラムを利用した場合、カラムに吸着された六価クロムをカラムから脱離する処理が必要である。カラムに吸着された六価クロムをカラムから脱離して回収するには、三価クロムがカラムに吸着されない性質を利用すればよい。例えば、還元剤を溶け込ませた水をカラムに通液して六価クロムを還元剤と反応させることで、カラム吸着されていた六価クロムが三価クロムに還元されてカラムから脱離し、同時に水に溶出する。この操作により、カラムに吸着された六価クロムをカラムから脱離させるのと同時に三価クロムに還元させた状態で水に溶出させて回収することができる。尚、還元剤としては、例えばメタ二亜硫酸ナトリウムが挙げられるが、これに限定されるものではない。
カラムから脱離された三価クロムはエチレンジアミンテトラ酢酸に配位させて、三価クロム錯体(Cr(III)-EDTA)を形成する。これにより、本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法により、三価クロム錯体を定性的にまたは定量的に分析することができる。そして、本発明のモノクローナル抗体により定性的または定量的に分析された三価クロム錯体の濃度は、試験試料に含まれていた六価クロムの濃度と対応する。したがって、本発明の分析方法により、環境から採集された試験試料の六価クロムを定性的または定量的に分析することができる。
また、カラムに吸着されなかった試験試料中の三価クロムをエチレンジアミンテトラ酢酸に配位させて、三価クロム錯体(Cr(III)-EDTA)を形成し、本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法により測定を行うことで、試験試料中の三価クロムを定性的または定量的に分析することもできる。
<本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定法>
本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定法としては、例えば、免疫クロマトグラフィー、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、免疫発光測定法、エンザイムイムノアッセイ(EIAまたはELISA)、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)、免疫比濁法(TIA)、ラテックス免疫比濁法(LTIA)、蛍光センサー法などの方法が挙げられる。以下、本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的測定法の一例として免疫クロマトグラフィーを例に挙げて説明する。
免疫クロマトグラフィーは、試料を試験紙上に滴下するだけで目的物質である三価クロムの有無を数分から数十分の間に判定できるため簡便性に優れ、かつ特別な機械装置を必要としないため非常に安価である。本発明において、免疫クロマトグラフィーは、キレート剤−タンパク質複合体を利用することにより、三価クロムを効果的に検出するものである。
図4にその実施形態の一例を示す。プラスチックバッキングシート1の上に、メンブレン2と吸収パッド3を一部で重なるように配置し、メンブレン2の先端の試料滴下位置5に試料を滴下すると試料が吸収パッド3に向かってメンブレン2上を流動し、標識された本発明のモノクロナール抗体あるいは標識されたEDTA−タンパク質複合体が固定化された領域4を通過する際に、Cr(III)-EDTAが本発明のモノクローナル抗体に捕捉され、あるいは三価クロムがEDTA−タンパク質複合体のEDTAと錯体を形成してその錯体に本発明のモノクローナル抗体が捕捉されることで、固定化領域4を目視可能として検出対象物の有無を容易に検出可能としている。なお、キレート剤を直接標識することは困難であることから、キレート剤であるEDTAにタンパク質を付加する前または後に、タンパク質の色素粒子を付加することで、間接的にEDTAを標識することが好ましい。あるいは、モノクローナル抗体自体を標識することもできる。これらタンパク質の標識は通常行われている方法によって行うことができる。
図5に、本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫クロマトグラフィーの第1の試験法の概略を示す。本発明のモノクローナル抗体を試験紙の一部分に試料の流れを横切るように帯状に固定化する。次いで、試験試料中にEDTA−タンパク質−色素粒子(キレート剤−標識タンパク質)複合体を添加して、三価クロムと結合させたのち試験紙に滴下させる(図5(A)及び(B)参照)。試験試料中に三価クロムが存在する場合には、三価クロムがEDTAと錯体を形成し、この錯体と標識タンパク質複合耐とが試験紙上に帯状に固定化されているモノクローナル抗体によって捕捉され、その結果として色素粒子が帯状に密集して試料中の三価イオンが可視化する(図5(C)及び(D)参照)。試験試料中に三価クロムが存在しない場合には、EDTA−タンパク質−色素粒子複合体は試験紙上に固定化されているモノクローナル抗体に捕捉されないため、色素粒子による可視化は起こらない。
図6に、本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫クロマトグラフィーの第2の試験法の概略を示す。第2の試験法では、第1の試験法におけるモノクローナル抗体の代わりに、EDTA−タンパク質を試験紙上に帯状に固定化する(図6(B)参照)。色素粒子はモノクローナル抗体に付加する。この標識抗体と試験試料をともに試験紙に滴下させると(図6(A)及び(B)参照)、三価クロムが試験紙上のEDTA−タンパク質複合体に捕捉されて、三価クロムがEDTAと錯体を形成し、結果として標識されたモノクローナル抗体がこの錯体を介して試験紙上に捕捉され、帯状に密集した色素粒子により試料中の三価クロムが可視化される(図6(C)及び(D)参照)。
第1の試験法及び第2の試験法の利点は、タンパク質を介することでキレート剤であるEDTAを帯状に試験紙に固定することが容易になること、およびタンパク質1分子当たりに複数のEDTAを付加することができ、単純に試験紙上にEDTAを固定した場合に比べて表面積を大きく取ることが可能になり、結果として検出感度を上げることができることである。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、六価クロムを定性的または定量的に分析する上述の方法とは別の方法により、六価クロムを分析するようにしてもよい。
具体的には、試験試料に還元剤を添加する前処理を行った後にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を添加した第1の試料と、試験試料に還元剤を添加する前処理を行わずにエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を添加した第2の試料とを、本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法により測定し、第1の試料の測定結果と第2の試料の測定結果とを比較して、試験試料に含まれる六価クロムを定性的または定量的に分析するようにしてもよい。
試験試料を第1の試料と第2の試料との二つに等量に分け、第1の試料には還元剤を添加する前処理を行った後にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を添加し、第2の試料には還元剤を添加する前処理を行わずにエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)を添加することにより、第1の試料中に存在していた三価クロムと六価クロムは全て三価クロム錯体として存在するようになる。一方、第2の試料中に存在していた三価クロムと六価クロムは、三価クロムのみがキレート剤に配位して三価クロム錯体となる。したがって、第1の試料と第2の試料とを本発明のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法により測定し、第1の試料の三価クロム錯体の測定値と第2の試料の三価クロム錯体の測定値との差を計算することで、試験試料中の六価クロムを定性的または定量的に分析することができる。また、第1の試料の三価クロム錯体の測定値と第2の試料の三価クロム錯体の測定値との差を計算することで、同時に試験試料中の三価クロムを定性的または定量的に分析することができる。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<使用した試薬類>
六価クロム溶液は二クロム酸カリウム(和光純薬162-03652)を用いて作製した。三価クロム溶液は塩化クロム(III)六水和物(和光純薬033-17482)を用いて作製した。1-(4-Isothiocyanobenzyl)ethylenediamine-N、N、N’、N’-tetraacetic acid(以下、イソチオシアノベンジル−EDTAと略す)は同人化学より購入したものを用いた。スカシガイ由来のヘモシアニン(以下、KLHと略す)、及びニワトリ卵由来のアルブミン(以下、OVAと略す)は、シグマアルドリッチジャパンより購入したものを用いた。細胞融合に用いたポリエチレングリコールは重合度1500のものを日本ロシュより購入したものを用いた。HAT培地(Hypoxantin Aminopterin Thymidine培地)及びHT培地(Hypoxantin Thymidine培地)は、市販のRPMI1640液体培地(Invitrogen製)に、HATサプリメントまたはHTサプリメント(Invitrogen製)を適量加えて作製した。三価クロムとEDTAの錯体は、塩化クロム(III)とEDTAナトリウム塩を混合して作製した。その他の金属とEDTAとの錯体も塩化物の溶液を用いて作製した。2-Morpholinoethanesulfonic acid monohydrate(以下MESと略す)は、同仁化学研究所より購入した。その他の試薬は市販特級品を用いた。
<実施例1>
Cr(III)-EDTAを特異的に認識するモノクローナル抗体を作製し、その性質について評価を行った。
(1)抗原の作製
1mgのイソチオシアノベンジル−EDTAを10mgのKLHと3mLの50mMホウ酸緩衝液(pH9.5)中で37℃、4時間反応させ、アミノ基を介してEDTAをKLHに結合させた。次いで、脱塩カラム(バイオラッド製、10DGパックドカラム)を用いて50mM MES緩衝液pH6.5にバッファー置換した。この溶液に対して最終的に5mMとなるよう三価クロムを加えて、Cr(III)-EDTA-KLH複合体を抗原として作製した。また、KLHの代わりにOVAを用いて同様な操作を行い、Cr(III)-EDTA-OVA複合体を作製して、これをスクリーニング用抗原とした。
(2)マウスの免疫
Cr(III)-EDTA-KLH複合体を抗原としてマウス(Bulb/c、雌、日本クレア)に免疫した。初回免疫(5週齢時)では、抗原(タンパク質量にして約1mg)を完全アジュバンド(和光純薬製)に混合後、皮下注射した。さらに、初回免疫の2週間後と4週間後と6週間後に同量の抗原を、皮下注射した。その後、1週間以上経過した後、同量の抗原を腹腔または尾部静脈に注射し、その4、5日後に脾臓を摘出した。
(3)ハイブリドーマの作製
免疫したマウスから摘出した脾臓細胞をRPMI1640培地で洗浄した後、ミエローマ細胞NSO株(理化学研究所)とポリエチレングリコール溶液中で2分間混合し、細胞融合を行った。ミエローマ細胞は凍結保存されていたものを細胞融合実験の約10日前に解凍し、約40mLのRPMI1640培地(含10%牛胎児血清)で培養したものを用いた。状態の良いミエローマ細胞を調製するために細胞融合実験の前日には必ず培地交換を行った。融合反応後の細胞は約120mLのHAT培地(含20%牛胎児血清)に懸濁後、96穴マイクロプレート6枚に200μLずつ分注した。細胞融合の翌日及び5日後に100μLの培養液を新しいHAT培地(含20%牛胎児血清)に交換した。それ以後はほぼ4日に1度の頻度で100μLの培養液を新しいHT培地(含10%牛胎児血清)に交換した。
(4)ハイブリドーマのスクリーニング
細胞融合から2週間以上経過した培養上清を用いて、目的の抗体を分泌するハイブリドーマを蛍光センサー法によりスクリーニングした。蛍光センサー法に用いる抗原ビーズは以下のようにして作製した。アガロースビーズ(ファルマシア製)にCr(III)-EDTA-OVA複合体をアガロースビーズに添付の取扱い説明書に従って固定化した。約1mLのアガロースビーズに約0.1mgの抗原複合体を固定化した後、10mg/mLの牛血清アルブミン(BSA)溶液を1mL用いてビーズ表面をブロッキングした。
抗原に結合した抗体量を蛍光光度計キネクサ3000(KinExA3000、Sapidyne社)を用いて測定した。96穴プレートの培養液の上清約10μLずつ取り、1本の試験管にまとめ(約1.0mL)、これを測定試料とした。測定試料のうち0.5mLを一次スクリーニングに供した。まず、測定試料を0.25mL/分の流速で120秒間抗原ビーズに作用させた。さらに抗原ビーズを0.25mL/分の流速で30秒間、PBS(Phosphate Buffer saline)緩衝液(Invitrogen製)で洗浄し、5nMの二次抗体(Cy5標識ヤギ抗マウスIgG抗体、ImmunoResearch Laboratories製)を0.25mL/分の流速で96秒間(計0.4ml)作用させた。最後にPBSによるビーズの洗浄を0.25mL/分の流速で30秒間、1.5mL/分の流速で90秒間行った。二次抗体には蛍光物質(Cy5)が結合しており、洗浄後ビーズ上に残った蛍光の強度は、ビーズ上の抗原に結合した抗体の量を反映している。次に、測定試料の残分を二次スクリーニングに供した。測定試料にCr(III)-EDTAを100μMとなるように加え、平衡化したのち、Cr(III)-EDTAと結合しなかった抗体のビーズへの結合を同様に測定した。二次スクリーニングによって、Cr(III)-EDTAと特異的に結合する抗体を含むと判定されたプレートについては、1本の試験管にまとめる培養上清を12穴分〜1穴分と段階的に絞り込みながら、一次スクリーニング同様、上清中の抗体のビーズへの結合を測定し、目的の抗体を産生するハイブリドーマの特定を行った。
その結果、Cr(III)-EDTAと特異的に結合する抗体を産生する培養画分が見出された。この培養画分は、限界希釈法およびメチルセルロース培地を用いた培養によるコロニー形成によって単一のクローンに単離され、これをRD3G4株と命名した。ハイブリドーマRD3G4株は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託した(受託番号FERM P−21618)。
(5)RD3G4抗体の性質の特定
シングルコロニーに由来するRD3G4株が培養液中に分泌するモノクローナル抗体をRD3G4抗体とした。これを培養液から精製した後、以下の分析実験に供した。
RD3G4抗体とEDTA錯体の結合性を定量的に評価するため、RD3G4抗体とEDTA錯体の結合試験を行った。結合試験に供する試料は、試験管中で約5nMのRD3G4抗体に濃度の異なるEDTA錯体を添加して作製した。このとき、試験管中では、RD3G4抗体とEDTA錯体の結合(抗原抗体反応)が起こるので、この反応が平衡に達するに十分と思われる時間(約15分間)をおいてから測定に供した。尚、本実験では、EDTA錯体として、Cr(III)-EDTA、Ni(II)-EDTA、Zn(II)-EDTA、Fe(III)-EDTA、Cd(II)-EDTA、Cd(II)-EDTA、Mg(II)-EDTA、Ca(II)-EDTA、Pb(II)-EDTA、free-EDTA(金属を配位していないEDTA)を用いた。
測定は、上述した蛍光センサー法により行った。即ち、蛍光センサー法では、抗原ビーズに捕捉された抗体を蛍光として検出するので、測定開始前にEDTA錯体と結合した抗体は検出されなくなる。したがって、測定開始前にEDTA錯体と結合した抗体が多くなるほど、検出される蛍光強度は小さくなることになる。
また、RD3G4抗体とEDTA錯体の結合性の定量的評価には、以下の手法を用いた。即ち、蛍光光度計による測定データを近似式1に当てはめ、IC50値を求めた。
y=99/(1+(x/P1)P2)+0.5・・・・・・・・・(近似式1)
ここで、yは抗原を加えなかったときの蛍光強度値を100%としたときの相対的な蛍光強度値であり、xは抗原(錯体)濃度であり、P1とP2は近似のパラメータである。測定データは、抗原を加えなかったときの蛍光強度の値を100%として相対値に変換した後、グラフ作成ソフトウェアOrigin version 6.0(OriginLab製)を用いて最適なP1及びP2を決定した。このようにして得られた近似式を抗体と抗原の結合曲線とし、y=50%になるときのxの値(=P1)をIC50値とした。なお、IC50値に対して抗体濃度が十分に小さい(10分の1以下の)ときには、IC50値と結合解離定数とがほぼ一致することが知られている。
RD3G4抗体の各種金属錯体に対する結合性を表す結合曲線を図1に示す。また、IC50値(結合解離定数)を求め、さらに結合解離定数から求めた交差反応性を計算した結果を表1に示す。
この結果、RD3G4抗体のCr(III)-EDTA以外の錯体に対する交差反応性は1.1%以下であることが確認された。このことから、RD3G4抗体は、Cr(III)-EDTAに対して極めて優れた特異性を有していることが明らかとなった。
次に、図1のグラフに基づき、RD3G4抗体のCr(III)-EDTAに対する検出限界を決定した。錯体濃度と蛍光強度との間に直線的な関係のある範囲の下限をその錯体濃度に対する検出限界とすると、RD3G4抗体のCr(III)-EDTAに対する検出限界は、約0.2ppb(3nM)であることが明らかとなった。
(実施例2)
試料中の六価クロムを三価クロムに還元してからRD3G4抗体を利用して測定を行うことにより、試料中の六価クロム濃度を測定できるか検討した。
六価クロムの三価クロムへの変換は、メタ二亜硫酸ナトリウムを還元剤として用いることにより行った。ここで、メタ二亜硫酸ナトリウム溶液は酸性であるため、そのまま抗体と接触させると抗体を変性失活させてしまう虞がある。そのため、抗体と混合する前に中和する必要がある。また、メタ二亜硫酸の還元活性の残存によって抗体を変性させる虞があるため、あらかじめ適当なタンパク質などを加えて還元活性を消失させる必要がある。さらに、抗体が認識するのはCr(III)そのものではなく、Cr(III)-EDTAであるため、EDTAを加える必要もある。また、三価クロムはアクア錯体[Cr(H2O)6]2+を形成しやすいため、常温ではEDTAとの錯体形成に時間を要する。そこで、Cr(III)のEDTAへの配位を促進するためには、混合液に熱を加えることが有効である。そこで、本実施例では、以下の方法を採用した。
具体的には、各種濃度に調製された六価クロム溶液40μLに対して0.22Mのメタ二亜硫酸ナトリウム溶液360μLをそれぞれ添加して計400μLとし、これに対し250mMのトリスと25μMのEDTAとを含む溶液400μLを混合し、良く攪拌した後、これを90℃で10分間インキュベートした。その後、1%の牛血清アルブミン(BSA)を含む250mMのトリス溶液を400μL加えて攪拌した。この状態で合計1200μLとなった溶液の内の1000μLと、667μLのRD3G4抗体を含むPBS緩衝液を混合した試料を、上述した蛍光センサー法により測定した。尚、RD3G4抗体の濃度は最終的に0.5nMとなるように調製した。
結果を図2に示す。図2の横軸は、メタ二亜硫酸ナトリウム溶液により還元処理を行う前の六価クロム溶液の濃度を示している。この結果から、本法によって約0.03μL(約1.5ppb)の六価クロムの検出が可能であることが明らかとなった。
環境基準や水質基準などにおける規制値は、50ppb(約1μM)である。本法を用いることで、仮に試料が前処理等により30倍程度に希釈されたとしても、試料中の50ppbの六価クロムの検出は十分に可能であることが明らかとなった。
(実施例3)
三価クロムと六価クロムとを区別して測定する方法について検討した。
(1)六価クロムの還元と回収についての検討
イオン交換樹脂を利用した六価クロムの吸着・回収実験を行った。イオン交換樹脂には、強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学 ダイヤイオンNSA100)を用いた。この樹脂を0.1Mの塩酸で洗浄した後、内径12.5mmのカラムに高さ20mmになるように充填した。このカラムに50ppbまたは100ppbの六価クロム溶液5mLを導入した。この5mLの六価クロム溶液が完全に流れきった後、5mLの蒸留水をカラムに導入し、樹脂を洗浄した。その後、0.2Mのメタ二亜硫酸ナトリウム溶液15mLをカラムに導入し、樹脂に結合した六価クロムを三価クロムに還元すると共に、三価クロムをメタ二亜硫酸ナトリウム溶液に溶出させた。
この溶出液中のクロム濃度をICP−MSにより測定し、回収率を求めた。結果を表2に示す。表2に示される結果から、カラムに導入されたクロムのほぼ全てが回収できることが明らかとなった。
(2)三価クロムの除去についての検討
三価クロムが上記カラムを素通りするか否かを検討した。上記カラムに0.1mg/Lまたは1mg/Lの三価クロム溶液5mLを導入し、この5mLの三価クロム溶液が完全に流れきった後、5mLの蒸留水をカラムに導入し、樹脂を洗浄した。そして、カラム通過液を2mLずつ回収し、そのクロム濃度をICP−MSによって測定した。結果を図3に示す。図3(a)は0.1mg/Lの三価クロム溶液をカラムに導入した場合の結果を示し、図3(b)は1mg/Lの三価クロム溶液をカラムに導入した場合の結果を示している。
図3に示される結果から、上記樹脂には三価クロムが殆ど結合することなく、三価クロム溶液に含まれる三価クロムのほぼ全量がカラムを素通りすることが明らかとなった。また、カラムの洗浄に用いる蒸留水の量は、5mLで十分であることも明らかとなった。
(3)六価クロムとその他金属の分離に関する検討
実際に種々の金属が混在している六価クロム溶液を試験試料として、六価クロムを区別して分析可能か検討した。
Cr3+、Mg2+、Cu2+及びMn2+をそれぞれ1ppm含む六価クロム濃度50ppbの六価クロム溶液を上記カラムに5mL導入し、完全に流れきった後、5mLの蒸留水を上記カラムに導入し、樹脂を洗浄した。次に、0.2Mのメタ二亜硫酸ナトリウム溶液15mLを上記カラムに導入し、樹脂に結合した六価クロムを三価クロムに還元すると共に、三価クロムをメタ二亜硫酸ナトリウム溶液に溶出させた。
溶出液中のクロム、マグネシウム、銅及びマンガン濃度をICP−MSにより測定した。その結果、クロムの回収率は当初の六価クロム溶液の六価クロム濃度に対して平均106.6%であった。また、溶出液中のマグネシウム、銅及びマンガン濃度は5ppb以下であった。したがって、カラムに導入した六価クロムをその他金属から分離・精製できることが明らかとなった。
ここで、0.2Mのメタ二亜硫酸ナトリウム溶液に溶出した六価クロム由来の三価クロムは、実施例2において説明した方法により測定可能である。また、本実施例では、六価クロム溶液5mLに対して、0.2Mのメタ二亜硫酸ナトリウム溶液を15mL使用することから、六価クロム溶液は3倍に希釈されている。したがって、本精製法を用いる場合の六価クロムの検出限界は、実施例2で求められた六価クロムの検出限界の3倍である約0.1μM(約4.5ppb)となる。よって、環境基準や水質基準などにおける六価クロムの規制値である50ppb(約1μM)である。を十分に測定可能であることが明らかとなった。
また、上記カラムを素通りした通過液をRD3G4抗体により測定することで、通過液中の三価クロム濃度の測定も可能である。
以上より、本実施例で示す精製方法によって、試験試料中の六価クロムと三価クロムとを区別して測定可能であることも明らかとなった。
RD3G4抗体の各種金属錯体に対する結合性を表す結合曲線を示す図である。 六価クロムを三価クロムに変換してからRD3G4抗体を利用して測定した場合の結合曲線を示す図である。 カラムに三価クロム溶液と蒸留水とを通過させたときの通過液のクロム濃度を示すグラフである。 免疫クロマトグラフィー装置の構成図である。 本発明にかかる抗三価クロムモノクローナル抗体を用いた三価クロムの第1の検出方法の原理図である。 本発明にかかる抗三価クロムモノクローナル抗体を用いた三価クロムの第2の検出方法の原理図である。

Claims (7)

  1. 受託番号FERM P−21618として受託されたハイブリドーマにより産生され、エチレンジアミンテトラ酢酸と錯体を形成した三価クロムを特異的に認識する抗三価クロムモノクローナル抗体。
  2. 受託番号FERM P−21618として受託されたハイブリドーマ。
  3. 試料中の三価クロムを定性的または定量的に測定する免疫学的手法において、請求項1に記載のモノクローナル抗体を用いる方法。
  4. 請求項1に記載のモノクローナル抗体を含む、試料中の三価クロムを定性的または定量的に測定するための分析キット。
  5. 試験試料中に含まれる六価クロムと三価クロムとを分離した後、分離された六価クロムを還元剤と反応させて三価クロムとし、この三価クロムとエチレンジアミンテトラ酢酸とを反応させて三価クロム錯体を得、この三価クロム錯体を請求項1に記載のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法により測定することにより、前記試験試料に含まれる六価クロムを定性的または定量的に分析することを特徴とする分析方法。
  6. 験試料を強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させて六価クロムを吸着させることにより前記試験試料中に含まれる六価クロムと三価クロムとを分離した後、前記強塩基性陰イオン交換樹脂に吸着している六価クロムを還元剤と反応させて三価クロムとすることにより前記強塩基性陰イオン交換樹脂から脱離させる請求項5に記載の分析方法。
  7. 試験試料を第1の試料と第2の試料との二つに等量に分け、前記第1の試料には還元剤を添加する前処理を行った後にエチレンジアミンテトラ酢酸を添加し、前記第2の試料には還元剤を添加する前処理を行わずにエチレンジアミンテトラ酢酸を添加し、次いで前記第1の試料と前記第2の試料とを、請求項1記載のモノクローナル抗体を用いた免疫学的手法により測定し、前記第1の試料の測定結果と前記第2の試料の測定結果とを比較して、前記試験試料に含まれる六価クロムを定性的または定量的に分析することを特徴とする分析方法。
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