JP5288349B2 - 免疫学的分析試薬及び免疫学的分析方法 - Google Patents
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Description
なお、本明細書における前記「分析」には、分析対象物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」と、分析対象物質の存在の有無を判定する「検出」との両方が含まれる。
また、ラテックス粒子を磁性粒子にすることで、磁性粒子に結合した第一抗体により分析対象物をトラップし、磁石で集積させて未反応物等を洗浄後(いわゆるB/F分離)、酵素や蛍光剤等シグナルを発生する物質を標識した第二抗体を添加して分析するサンドイッチ法も多用されている。
抗原抗体反応によって定量する分析対象物質の多くは、一般的に生体試料中に含まれる微量成分であり、低濃度領域における定量性を重視している。しかし、疾病の進行度合いによっては測定対象物質濃度が異常に高値を示す場合があるため、臨床検査の現場においては、低値から高値までを正確に測定できる性能を有する試薬が求められている。
また、近年あらたな問題として、非特許文献1に開示されているように、ラテックス粒子表面に抗原又は抗体を結合させることで抗原又は抗体に構造的な変性が起こり、試料中に共存する「変性部位に対して結合する物質」による非特異反応を起こす検体がみられることがあった。これにより、測定結果の信頼性が失われることになり、正確な疾病診断ができなくなる。この問題は、抗原又は抗体、あるいはラテックス粒子をそれぞれ個別に検討しても解決できるものではなく、非常に困難性の高い課題である。
すなわち、ラテックス粒子を合成する際に抗原又は抗体を共存させる低温ミニエマルション重合により作製されたラテックス粒子は、合成完了時に抗原又は抗体がラテックス粒子表面に導入させることで、従来結合できずに洗浄により取り除かれたり、遠心や分散処理により結合した抗原又は抗体が剥がれ落ちたりすることがないラテックス粒子を作製することができた。上記粒子を使用することにより高い反応性を得ることが可能となった。
また、ラテックス粒子を合成する際に抗原又は抗体を共存させるミニエマルション重合により作製されたラテックス粒子は、合成完了時に抗原又は抗体がラテックス粒子表面に導入されているため、結合による立体障害による変性が起こることがなく、従って従来みられていた非特異反応を起こす検体との反応が回避できるようになった。本発明はこうした知見に基づくものである。
また、本発明は、(1)分析対象化合物を含む可能性のある被検試料と、
(2)ラテックス粒子の合成反応において、前記分析対象物質に対する抗原又は抗体を共存させた状態でモノマーを重合させ、前記ラテックス粒子の表面に前記抗原又は抗体が導入されたラテックス粒子と
を液中で接触させる、免疫学的分析方法に関する。
本発明方法の好ましい態様によれば、前記接触の後、抗原抗体反応により生じたラテックス粒子の凝集度合いを光学的に分析する。
本発明方法の別の好ましい態様によれば、前記接触の後、前記液と前記ラテックス粒子とを分離し、前記ラテックス粒子に結合した分析対象物質、あるいは、前記液中に残存する分析対象物質を分析する。
[1]モノマー、ラジカル重合開始剤、乳化剤、及びハイドロフォーブを用いてミニエマルション重合を行う際に、抗原又は抗体を共存させて高分子微粒子を製造することを特徴とする、表面に前記抗原又は抗体が導入された高分子微粒子の製造方法;
[2]前記ミニエマルション重合が、重合反応を低温で行う低温エマルション重合である、[1]の製造方法;
[3]前記ラジカル重合開始剤がレドックス開始剤である、[1]又は[2]の製造方法;
[4]前記レドックス開始剤が、アスコルビン酸とH2O2との組合せである、[3]の
製造方法;
[5]前記乳化剤が界面活性剤である、[1]〜[4]の製造方法;
[6]前記乳化剤が、ポリエチレングリコール鎖を有する重合性界面活性剤である、[1]〜[5]の製造方法;
[7]前記ハイドロフォーブがヘキサデカン又はポリスチレンである、[1]〜[6]の製造方法;
[8][1]〜[7]の製造方法により得られる、高分子微粒子の表面に抗原又は抗体が導入された高分子微粒子
に関する。
すなわち、ラテックス粒子を合成する際に抗原又は抗体を共存させる低温ミニエマルション重合により作製されたラテックス粒子は、合成完了時に抗原又は抗体がラテックス粒子表面に導入させることで、従来結合できずに洗浄により取り除かれたり、遠心や分散処理により結合した抗原又は抗体が剥がれ落ちたりすることがないラテックス粒子を作製することができ、このようなラテックス粒子を使用することにより高い反応性を得ることが可能である。また、合成完了時に抗原又は抗体がラテックス粒子表面に導入されているため、結合による立体障害による変性が起こることがなく、従って従来みられていた非特異反応を起こす検体との反応を回避することができる。
従来公知のラテックス粒子では、例えば、物理的吸着によりラテックス粒子に抗原又は抗体を直接固定化するか、あるいは、ラテックス粒子の表面の官能基、例えば、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基、ヒドロキシル基、アルデヒド基、又はエポキシ基などを介した共有結合により、ラテックス粒子に抗原又は抗体を結合させていた。
M. Asua, Prog. Polym. Sci., 2002, 27, 1283-1346)と同様にして実施することができる。
persulfate(KPS)]、FeSO4/KPS、FeSO4/H2O2、アスコルビン酸(ビタミンC)/H2O2等を挙げることができる。高い転化率(例えば、75〜98%)を達成することができる点で、アスコルビン酸/H2O2の組合せが好ましい。
前記長鎖アルコールとしては、例えば、1−ペンタノール、デカノールを挙げることができる。
例えば、重合用モノマー(例えば、スチレンモノマー)40mmolに対して、抗原又は抗体[例えば、ウシ血清アルブミン、IgG、F(ab’)2]を、通常0.01〜5g、好ましくは0.02〜2g、より好ましくは0.08〜0.8gの量で;ラジカル重合開始剤(例えば、アスコルビン酸、H2O2)を、通常0.01〜4mmol、好ましくは0.02〜2mmolの量で;乳化剤(例えば、NKエステルM−230G、NKエステルM−90G)を、通常0.1〜10mmol、好ましくは0.2〜5mmol、より好ましくは0.4〜4mmolの量で;それぞれ、用いることができる。反応時間は、通常1時間以上、好ましくは3〜48時間、より好ましくは4〜24時間である。反応温度は、通常0〜80℃、好ましくは0〜60℃、より好ましくは0〜40℃である。
また、本発明で分析可能な被検試料は、前記分析対象物質を含む可能性のある試料であれば、特に限定されず、特には生体試料、例えば、血液、血清、血漿、尿、髄液、又は細胞若しくは組織破砕液などを挙げることができる。
パートナー導入ラテックス粒子の平均粒径は、分析対象物質の検出濃度又は測定機器によって適宜選択することができ、通常、0.05〜0.5μmの範囲で適宣選択することができる。
あるいは、前記試薬と被検試料とを液中で接触させた後、B/F分離を行うことにより、ラテックス粒子と液とを分離し、前記ラテックス粒子に結合した分析対象物質、あるいは、前記液中に残存する分析対象物質を分析(特に測定)することにより、被検試料中の分析対象物質の量を分析(特には測定)することができる。
(1)BSA導入ラテックス粒子の調製
スチレン40mmol、ヘキサデカン4mmol、BSA200mg、CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)23CH3(NKエステルM−230G;新中村化学工業株式会社)0.8mmol、アスコルビン酸0.4mmol、及び水20gを混合し、ソニケーション(UH−300:株式会社エスエムテー)を出力80%、パルス50%で氷浴下15分間実施した。三口フラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら窒素バブリングを15分間実施した後、H2O2 0.4mmolを入れ、200rpmで攪拌しながら30℃又は60℃で6時間重合してBSA導入ラテックス粒子を調製した。なお、得られたBSA導入ラテックス粒子の平均粒径は0.109μm(30℃の場合)及び0.121μm(60℃の場合)であった。
BSA導入ラテックス粒子(1%濃度)1mLに対して、免疫学的測定用ブロッキング試薬N101(日本油脂株式会社)1mLを添加し、室温にて30分間攪拌した。この混合液を35000rpmで遠心分離した。得られた沈殿物にトリス緩衝液(pH8.0)10mLを添加し、ラテックスを懸濁させ、BSA導入ラテックス粒子懸濁液を調製した。
0.5重量%BSAを含有する0.1mol/Lトリス緩衝液(PH8.0)に、0.9重量%の濃度となるように塩化ナトリウムを添加して緩衝液とした。以下、BSAを含まないNaCl含有トリス緩衝液を「緩衝液A」と、BSAを含有するNaCl含有トリス緩衝液を「緩衝液B」と称する。
実施例1(2)で調製したBSA導入ラテックス粒子懸濁液(第2試薬)と、実施例1(3)で調製した緩衝液A又はB(第1試薬)とから構成される2液系の試薬を、本発明の免疫学的分析試薬としての抗BSA抗体測定試薬として、以下の実施例で評価した。
(1)抗BSA抗体標準溶液の調製
抗BSA抗体(Rabbit Anti cow albumin;DAKO社、900単位)を生理食塩水で倍々希釈し、900、450、225、113、56、28、14、及び7単位濃度の標準抗BSA抗体希釈列を調製した。
標準抗BSA抗体希釈列15μLに、実施例1(3)で調製した緩衝液A又はB90μLを混合し、37℃で適時保持した後、実施例1(2)で調製したBSA導入ラテックス粒子懸濁液90μLを添加攪拌し、この後、5分後の波長800/570nmでの吸光度を測定した。この間の570nm吸光度変化量と800nm吸光度変化量の差を吸光度変化量(ΔAbs)とした。測定は日立自動分析装置7170型を用いて行った。
なお、比較のために、平均粒径0.11μmのポリスチレンラテックス粒子(日本合成ゴム製:固形分10%)を用いて、前記粒子1%濃度1mLにBSAを0.3%(3mg/mL)量感作して調製したBSA結合ラテックス粒子懸濁液を使用した。
本実施例では、標準抗BSA抗体希釈列の代わりに、正常検体であるヒト血清5例(検体No.1〜No.5)と非特異的検体であるヒト血清3例(検体No.6〜No.8)を用いること以外は、前記実施例2(2)の操作を繰り返した。なお、前記非特異的検体は、ラテックス粒子にBSAを結合したBSA結合ラテックス粒子懸濁液に対して非特異的に反応し、BSAを結合していないラテックス粒子懸濁液とは反応しない検体である。
表3から明らかなように、正常検体(血清NO.1〜No.5)、非特異的検体(血清No.6〜No.8)ともにBSA導入ラテックス粒子懸濁液との反応はみられないが、BSA結合ラテックス粒子懸濁液においては、BSAを含まない緩衝液(緩衝液A)においても、0.5%BSAを懸濁させた緩衝液(緩衝液B)においても、非特異検体との強い反応がみられた。
(1)IgG導入ラテックス粒子の調製
スチレン40mmol、ヘキサデカン4mmol、IgG 200mg、CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)23CH3(NKエステルM−230G;新中村化学工業株式会社)0.6mmol,アスコルビン酸0.4mmol、及び水20gを混合し、ソニケーション(UH−300:株式会社エスエムテー)を出力80%、パルス50%で氷浴下15分間実施した。三口フラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら窒素バブリングを15分間実施した後、H2O2 0.4mmolを入れ、200rpmで攪拌しながら30℃で6時間重合してIgG導入ラテックス粒子を調製した。なお、IgG導入ラテックス粒子の平均粒径は0.318μmであった。
IgG導入ラテックス粒子(1%濃度)1mLに対して、免疫学的測定用ブロッキング試薬N101(日本油脂株式会社)1mLを添加し、室温にて30分間攪拌した。この混合液を35000rpmで遠心分離した。得られた沈殿物にトリス緩衝液(pH8.0)10mLを添加し、ラテックスを懸濁させ、IgG導入ラテックス粒子懸濁液を調製した。
実施例4(2)で調製したIgG導入ラテックス粒子懸濁液(第2試薬)と、実施例1(3)で調製した緩衝液B(第1試薬)とから構成される2液系の試薬を、本発明の免疫学的分析試薬としての抗IgG抗体測定試薬として、以下の実施例で評価した。
(1)抗IgG抗体標準溶液の調製
抗IgG抗体(Anti-IgG H&L chains;MILES-YEDA社、2.8mg/mL)を生理食塩水で倍々希釈し、2.8、1.4、0.7、0.35、0.175、0.088、及び0.044mg/mLの、7濃度の標準抗IgG抗体希釈列を調製した。
標準抗IgG抗体希釈列2μLに、実施例1(3)で調製した緩衝液90μLを混合し、37℃で適時保持した後、実施例4(2)で調製したIgG導入ラテックス粒子懸濁液90μLを添加攪拌し、この後、5分後の波長800/570nmでの吸光度を測定した。この間の570nm吸光度変化量と800nm吸光度変化量の差を吸光度変化量(ΔAbs)とした。測定は日立自動分析装置7170型を用いて行った。
なお、比較のために、平均粒径0.283μmのポリスチレンラテックス粒子(セキスイ社製:固形分10%)を用いて、前記粒子1%濃度1mLにIgGを1%(10mg/mL)量感作して調製したIgG結合ラテックス粒子懸濁液と、IgG未感作のラテックス粒子懸濁液とを使用した。
表4及び図2から明らかなように、IgG導入ラテックス粒子懸濁液を用いた場合(本発明試薬)には、抗IgG抗体濃度が1.4mg/mLで吸光度変化量(ΔAbs)812に対して、IgG結合ラテックス粒子懸濁液を用いた場合(従来試薬)には、吸光度変化量(ΔAbs)219と、明らかにIgG導入ラテックス粒子懸濁液が高感度であった。
(1)抗CRP抗体F(ab’)2導入ラテックス粒子の調製
スチレン10mmol、ヘキサデカン1mmol、抗CRP抗体F(ab’)2 50mg、CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)23CH3(NKエステルM−230G;新中村化学工業株式会社)0.2mmol、アスコルビン酸0.1mmol、及び水5gを混合し、ソニケーション(UH−300:株式会社エスエムテー)を出力50%、パルス50%で氷浴下15分間実施した。三口フラスコに入れ、100rpmで攪拌しながら窒素バブリングを15分間実施した後、H2O2 0.1mmolを入れ、200rpmで攪拌しながら室温で6時間重合して抗CRP抗体F(ab’)2導入ラテックス粒子を調製した。なお、抗CRP抗体F(ab’)2導入ラテックス粒子の平均粒径は0.249μmであった。
抗CRP抗体F(ab’)2導入ラテックス粒子(1%濃度)1mLに対して、免疫学的測定用ブロッキング試薬N101(日本油脂株式会社)1mLを添加し、室温にて30分間攪拌した。この混合液を35000rpmで遠心分離した。得られた沈殿物にトリス緩衝液(pH8.0)10mLを添加し、ラテックスを懸濁させ、抗CRP抗体F(ab’)2導入ラテックス粒子懸濁液を調製した。
実施例6(2)で調製した抗CRP抗体F(ab’)2導入ラテックス粒子懸濁液(第2試薬)と、実施例1(3)で調製した緩衝液B(第1試薬)とから構成される2液系の試薬を、本発明の免疫学的分析試薬としてのCRP測定試薬として、以下の実施例で評価した。
(1)CRP標準溶液の調製
CRP(オリエンタル酵母株式会社製リコンビナントCRP溶液100mg/dL)を生理食塩水で希釈し、3.2、1.6、0.8、0.4、0.2、及び0.1mg/dLの、6濃度の標準CRP希釈列を調製した。
標準CRP希釈列2μLに、実施例1(3)で調製した緩衝液90μLを混合し、37℃で適時保持した後、実施例6(2)で調製した抗CRP抗体F(ab’)2導入ラテックス粒子懸濁液90μLを添加攪拌し、この後、5分後の波長800/570nmでの吸光度を測定した。この間の570nm吸光度変化量と800nm吸光度変化量の差を吸光度変化量(ΔAbs)とした。測定は日立自動分析装置7170型を用いて行った。
表5から明らかなように、抗CRP抗体F(ab’)2ラテックス粒子懸濁液を用いた場合(本発明試薬)、0.1〜3.2mg/dLの範囲においてCRP標準液と濃度依存的な反応性が得られた。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
Claims (4)
- ラテックス粒子の合成反応において、分析対象物質に対する抗原又は抗体を共存させた状態でモノマーを重合させ、前記ラテックス粒子の表面に前記抗原又は抗体が導入されたラテックス粒子の懸濁液を含む、免疫学的分析試薬であって、前記重合が、モノマー、ラジカル重合開始剤、乳化剤、及びハイドロフォーブを用いるミニエマルション重合であり、前記ラジカル重合開始剤がレドックス開始剤であり、ラテックス粒子の平均粒径が0.05〜0.5μmである、前記免疫学的分析試薬。
- (1)分析対象化合物を含む可能性のある被検試料と、
(2)ラテックス粒子の合成反応において、前記分析対象物質に対する抗原又は抗体を共存させた状態でモノマーを重合させ、前記ラテックス粒子の表面に前記抗原又は抗体が導入されたラテックス粒子と
を液中で接触させる、免疫学的分析方法であって、前記重合が、モノマー、ラジカル重合開始剤、乳化剤、及びハイドロフォーブを用いるミニエマルション重合であり、前記ラジカル重合開始剤がレドックス開始剤であり、ラテックス粒子の平均粒径が0.05〜0.5μmである、前記免疫学的分析方法。 - 前記接触の後、抗原抗体反応により生じたラテックス粒子の凝集度合いを光学的に分析する、請求項2に記載の免疫学的分析方法。
- 前記接触の後、前記液と前記ラテックス粒子とを分離し、前記ラテックス粒子に結合した分析対象物質、あるいは、前記液中に残存する分析対象物質を分析する、請求項2に記載の免疫学的分析方法。
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