以下、図面を参照して本発明の実施をするための最良の形態(以下、実施形態という)について説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
図1は、従来の方法によってカーボンナノチューブ1を配向成長させた場合の図である。図1に示すように、大量のカーボンナノチューブ1が成長している。しかし、隣接するカーボンナノチューブ1は、互いに接触していない場合がある。図2は、従来の方法によってカーボンナノチューブ1を配向成長させた場合のカーボンナノチューブ1の正面図である。図3は、従来の方法によってカーボンナノチューブ1を配向成長させた場合のカーボンナノチューブ1の上面図である。図2及び図3に示すように、隣接するカーボンナノチューブ1の間には間隔がある。すなわち、隣接するカーボンナノチューブ1の間には隙間が生じている。ただし、すべてが接触しないで孤立しているわけではない。配向成長するには接触した部分も必要な場合がある。特にカーボンナノチューブが細くなった場合には一部接触した部分がないと配向成長しにくくなる。この場合でも隣接するカーボンナノチューブ1の間には隙間が生じる。
〈第1実施形態〉
図4から図11を用いて、本実施形態のカーボンナノチューブ1の成長方法を示す。図4に示すように、シリコン基板2上にチタン(Ti)層を形成する。そして、チタン層3上にコバルト(Co)層4を形成する。この場合、コバルト層4を直径1μm程度でパターニングしておく。本実施形態では、コバルト層4を直径1μm程度でパターニングしているが、これに限定されず、任意の大きさにパターニングしてもよい。コバルト層4をパターニングすることにより、カーボンナノチューブ1が成長する位置を制御することができる。
次に、チタン層3及びコバルト層4が形成されたシリコン基板2を熱CVDチャンバーに導入する。そして、熱CVDチャンバーにアルゴン(Ar)とアセチレン(C2H2)との混合ガス(9:1)を1kPaで導入する。
さらに、熱CVDチャンバー内の圧力が安定した後、シリコン基板2を30分かけて510℃に加熱する。次に、シリコン基板2を510℃に加熱した状態で10分間保持する。上記の過程を経て、コバルト層4上にカーボンナノチューブ1が成長する。図5は、コバルト層4にカーボンナノチューブ群5が成長した図である。カーボンナノチューブ群5とは、コバルト層4上に成長したカーボンナノチューブ1のまとまりをいう。
図5に示すように、コバルト層4上のカーボンナノチューブ1は、垂直方向に成長している。図5は、カーボンナノチューブ群5が成長した例であって、カーボンナノチューブ1の数はこれに限定されるものではない。また、本実施形態では、カーボンナノチューブ1を成長させる際に、触媒金属としてコバルトを使用している。しかし、触媒金属としてコバルトに限らず鉄(Fe)やニッケル(Ni)等の遷移金属を使用してもよい。また、カーボンナノチューブ1の成長方法として、化学的気相成長法(CVD法)、ホットフィラメントCVD法及びプラズマCVD法を使用してもよい。
次に、有機溶媒(カーボンナノチューブと異なる付着物質を含む溶媒)を含む樹脂に、カーボンナノチューブ群5を浸漬する。具体的には、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6に図5で示すカーボンナノチューブ群5を浸漬する。有機溶媒を含む樹脂にカーボンナノチューブ群5を浸漬する場合、カーボンナノチューブ群5はシリコン基板2とともに浸漬する。図6は、有機溶媒を含む樹脂にカーボンナノチューブ群5を浸漬した図である。
例えば、図6に示すように、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5をAの部分まで浸漬する。また、例えば、図7に示すように、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5をBの部分まで浸漬する。図6及び図7は、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5を浸漬した直後を示した図である。
図6では、カーボンナノチューブ1の浸漬部分をカーボンナノチューブ1の長さの半分程度とする。浸漬部分とは、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ1を浸漬する部分をいう。図7では、浸漬部分をカーボンナノチューブ1の長さの20パーセント程度とする。浸漬部分は、有機溶媒の種類、樹脂の種類などに応じて適宜変更することができる。
図6及び図7では、カーボンナノチューブ群5の根元側(シリコン基板2と接触している端部側)を浸漬部分としている。また、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5を浸漬する場合、カーボンナノチューブ群5の先端側(シリコン基板2と接触していない端部側)を浸漬させることもできる。
例えば、図8に示すように、各カーボンナノチューブ1の先端側を浸漬部分とする。この場合、図8に示すように、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5をCの部分まで浸漬する。また、例えば、図9に示すように、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5をDの部分まで浸漬する。図8及び図9は、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5を浸漬した直後を示した図である。図8では、カーボンナノチューブ1の浸漬部分をカーボンナノチューブ1の長さの半分程度とする。図9では、浸漬部分をカーボンナノチューブ1の長さの20パーセント程度とする。
有機溶媒を含む樹脂にカーボンナノチューブ群5を浸漬する時間は、1分程度とする。本実施形態では、有機溶媒を含む樹脂にカーボンナノチューブ群5を浸漬する時間を1分程度としたが、これに限定されるものではない。したがって、カーボンナノチューブ1の構造、数等によって適宜変更してもよい。
有機溶媒として、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコールを使用する。また、樹脂として、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などを使用する。樹脂として、より具体的には、例えば、エポキシ系樹脂を使用する。
図6及び図7に示すように、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5を浸漬した場合、隣接するカーボンナノチューブ1の間は有機溶媒を含む樹脂で満たされる。そして、シリコン基板2上のカーボンナノチューブ群5は、各カーボンナノチューブ1の端部の一方が寄り添って形成される。
有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5を浸漬した場合、毛細管現象により有機溶媒を含む樹脂がカーボンナノチューブ1を浸漬していない部分へ移動する。そして、有機溶媒を含む樹脂は、カーボンナノチューブ1の端部まで移動する。有機溶媒を含む樹脂がカーボンナノチューブ1の端部まで移動した場合、カーボンナノチューブ1は有機溶媒を含む樹脂で覆われた状態となる。
有機溶媒を含む樹脂がカーボンナノチューブ1の端部まで移動する際に、表面張力により、隣接するカーボンナノチューブ1は寄り添う。また、有機溶媒を揮発させた場合、カーボンナノチューブ1は樹脂で覆われた状態となる。そして、有機溶媒が揮発する際の体積収縮により、樹脂で覆われた各カーボンナノチューブ1は寄り添う。すなわち、有機溶媒を含む樹脂から有機溶媒が揮発した場合、樹脂のみが各カーボンナノチューブ1を覆う。そのため、樹脂で覆われた各カーボンナノチューブ1はさらに寄り添う。
したがって、樹脂で覆われた各カーボンナノチューブ1が互いに寄り添ってカーボンナノチューブ群5を形成する。また、各カーボンナノチューブ1が隣接するカーボンナノチューブ1と接触した場合、各カーボンナノチューブ1は互いに寄り添った状態を保持する。すなわち、各カーボンナノチューブ1を覆っている樹脂によって各カーボンナノチューブ1は互いに寄り添った状態が保持される。言い換えれば、各カーボンナノチューブ1を覆っている樹脂は、隣接するカーボンナノチューブ1同士が固着した状態を保持する。
図10は、各カーボンナノチューブ1の端部の一方が寄り添って形成されたカーボンナノチューブ群5の正面図である。図10は、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5を浸漬し、カーボンナノチューブ群5を容器6から引き上げた後の図である。
図11は、各カーボンナノチューブ1の端部の一方が寄り添って形成されたカーボンナノチューブ群5の上面図である。図11は、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5を浸漬し、カーボンナノチューブ群5を容器6から引き上げた後の図である。
図10及び図11に示すように、有機溶媒を含む樹脂によって満たされた容器6にカーボンナノチューブ群5を浸漬した場合、各カーボンナノチューブ1の端部の一方が寄り添って形成される。
有機溶媒を含む樹脂にカーボンナノチューブ群5を浸漬することに代えて、有機溶媒を含む樹脂をカーボンナノチューブ群5に滴下してもよい。また、スピンコート法を用いて有機溶媒を含む樹脂をカーボンナノチューブ群5に滴下してもよい。
有機溶媒を含む樹脂をカーボンナノチューブ群5に滴下する場合、各カーボンナノチューブ1が有機溶媒を含む樹脂で覆われるように滴下する。具体的には、各カーボンナノチューブ1の一部に有機溶媒を含む樹脂を滴下する。各カーボンナノチューブ1の一部に有機溶媒を含む樹脂を滴下した場合、毛細管現象により有機溶媒を含む樹脂を滴下していない部分に有機溶媒を含む樹脂が移動する。有機溶媒を含む樹脂を滴下していない部分に有機溶媒を含む樹脂が移動した場合、カーボンナノチューブ1は有機溶媒を含む樹脂で覆われた状態となる。
有機溶媒を含む樹脂が有機溶媒を含む樹脂を滴下していない部分に移動する際に、表面張力により、隣接するカーボンナノチューブ1は寄り添う。また、有機溶媒を揮発させた場合、カーボンナノチューブ1は樹脂で覆われた状態となる。そして、有機溶媒が揮発する際の体積収縮により、樹脂で覆われた各カーボンナノチューブ1は寄り添う。すなわち、有機溶媒を含む樹脂から有機溶媒が揮発した場合、樹脂のみが各カーボンナノチューブ1を覆う。そのため、樹脂で覆われた各カーボンナノチューブ1はさらに寄り添う。
したがって、樹脂で覆われた各カーボンナノチューブ1が互いに寄り添ってカーボンナノチューブ群5を形成する。また、各カーボンナノチューブ1が隣接するカーボンナノチューブ1と接触した場合、各カーボンナノチューブ1は互いに寄り添った状態を保持する。すなわち、各カーボンナノチューブ1を覆っている樹脂によって各カーボンナノチューブ1は互いに寄り添った状態が保持される。言い換えれば、各カーボンナノチューブ1を覆っている樹脂は、隣接するカーボンナノチューブ1同士が固着した状態を保持する。
このように、樹脂で覆われた各カーボンナノチューブ1は、その端部の一方が互いに寄り添って形成される。その結果、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度は、カーボンナノチューブ群5の先端側と根元側とで異なる。すなわち、一方の端部と他方の端部とでカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5が形成される。カーボンナノチューブ群5の先端側のカーボンナノチューブ1の密度は、カーボンナノチューブ群5の根元側のカーボンナノチューブ1の密度よりも高密度になる。
例えば、有機溶媒としてエタノールを使用し、樹脂としてエポキシ樹脂を使用した場合、有機溶媒を含む樹脂はエタノールで希釈したエポキシ樹脂である。また、エタノールとエポキシ樹脂との比率は任意である。ただし、隣接するカーボンナノチューブ1の間の隙間のすべてがエポキシ樹脂によって埋まらないようにする。隣接するカーボンナノチューブ1の間の隙間のすべてがエポキシ樹脂によって埋まると、隣接するカーボンナノチューブ1は寄り添うことができない。その結果、樹脂で覆われた各カーボンナノチューブ1は、その端部の一方が互いに寄り添って形成できない。そのため、例えば、有機溶媒を含む樹脂の体積をカーボンナノチューブ群5の体積よりも少なくする。これにより、隣接するカーボンナノチューブ1の間の隙間のすべてがエポキシ樹脂によって埋まることがなくなる。
本実施形態では、有機溶媒と樹脂の組み合わせを示したが、樹脂の変わりに、ナノポーラスシリカ(誘電体材料)などの微結晶材料を用いても良い。こうすることで樹脂だけでなく、誘電体材料でも寄り添った形のカーボンナノチューブが形成できる。
〈第2実施形態〉
本発明の第2実施形態を図12及び図13の図面に基づいて説明する。上記第1実施形態では、有機溶媒を含む樹脂を用いて各カーボンナノチューブ1を覆うことにより、一方の端部と他方の端部とでカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を形成する方法について説明した。本実施形態では、金属を用いて各カーボンナノチューブ1を覆うことにより、一方の端部と他方の端部とでカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を形成する方法について説明する。他の構成および作用は第1実施形態と同様である。そこで、同一の構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付し、その説明を省略する。また、必要に応じて図5から図11の図面を参照する。
まず、図5に示すチタン層3及びコバルト層4が形成されたシリコン基板2にカーボンナノチューブ群5を成長させる。カーボンナノチューブ群5の成長方法は、第1実施形態と同様であり、ここではその説明を省略する。次に、各カーボンナノチューブ1に金属を蒸着させる。例えば、各カーボンナノチューブ1に蒸着させる金属として金(Au)を使用する。また、各カーボンナノチューブ1に蒸着させる金属として、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉛(Pb)、はんだ等を使用してもよい。
各カーボンナノチューブ1に金を蒸着させる場合、スパッタ法により各カーボンナノチューブ1の表面に金を1ナノメートル(nm)程度の厚さで蒸着させる。スパッタ法を用いることにより、各カーボンナノチューブ1に金を正確に蒸着させることが可能である。例えば、スパッタ装置を用いる場合、蒸着させる金の膜厚を1ナノメートル(nm)と設定することにより、各カーボンナノチューブ1は膜厚1ナノメートル(nm)の金が蒸着する。この場合、カーボンナノチューブ1に対して金を蒸着させる部分は任意である。また、蒸着させる金の体積は、蒸着させる対象となるカーボンナノチューブ群5の体積によって決定する。また、各カーボンナノチューブ1に金属を蒸着させることに代えて、溶融した金属に各カーボンナノチューブ1を浸漬させてもよい。
次に、カーボンナノチューブ群5に対して約300度の熱処理を行う。金の融点は通常1000度を超える。しかし、金をナノサイズまで小さくした場合、金の融点は低下する。したがって、カーボンナノチューブ群5に対して約300度の熱処理を行った場合、各カーボンナノチューブ1に蒸着した金は溶融する。そして、各カーボンナノチューブ1は溶融した金で覆われる。各カーボンナノチューブ1に蒸着させる金属として、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、鉛(Pb)、はんだ等を使用した場合の熱処理の温度は、実験又はシミュレーションによって求めておけばよい。
各カーボンナノチューブ1に蒸着した金が溶融する際、表面張力により、隣接する金で覆われたカーボンナノチューブ1は寄り添う。そして、金で覆われた各カーボンナノチューブ1が寄り添って形成される。したがって、金で覆われた各カーボンナノチューブ1は、互いに寄り添ってカーボンナノチューブ群5を形成する。また、各カーボンナノチューブ1が隣接するカーボンナノチューブ1と接触した場合、各カーボンナノチューブ1は互いに寄り添った状態を保持する。すなわち、各カーボンナノチューブ1を覆っている金によって各カーボンナノチューブ1は互いに寄り添った状態が保持される。言い換えれば、各カーボンナノチューブ1を覆っている金は、隣接するカーボンナノチューブ1同士が固着した状態を保持する。
このように、金で覆われた各カーボンナノチューブ1は、その端部の一方が互いに寄り添って形成される。その結果、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度は、カーボンナノチューブ群5の先端側と根元側とで異なる。すなわち、一方の端部と他方の端部とでカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5が形成される。カーボンナノチューブ群5の先端側のカーボンナノチューブ1の密度は、カーボンナノチューブ群5の根元側のカーボンナノチューブ1の密度よりも高密度になる。
図12は、各カーボンナノチューブ1の端部の一方が寄り添って形成されたカーボンナノチューブ群5の正面図である。図13は、各カーボンナノチューブ1の端部の一方が寄り添って形成されたカーボンナノチューブ群5の上面図である。図12及び図13に示すように、各カーボンナノチューブ1を金で覆うことにより、一方の端部と他方の端部とでカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5が形成される。このように、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度を高くする処理を高密度化処理という。
また、上記第1実施形態の方法とともに本実施形態による方法を行ってもよい。すなわち、金属を用いて各カーボンナノチューブ1を覆うとともに、有機溶媒を含む樹脂を用いて各カーボンナノチューブ1を覆う。金属が各カーボンナノチューブ1の先端側に多く蒸着した場合、カーボンナノチューブ群5を有機溶媒を含む樹脂に浸漬させる。そのことにより、各カーボンナノチューブ1の端部の一方が互いに寄り添って形成されることを促進することが可能となる。一方の端部と他方の端部とでカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5は、例えば、フィールドエミッションの電子源等に利用することができる。
〈第3実施形態〉
本発明の第3実施形態を図14の図面に基づいて説明する。上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、一方の端部と他方の端部とでカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を形成する方法について説明した。カーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5は、端部の一方が互いに寄り添って形成されている。カーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5とは、一方の端部と他方の端部とでカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5をいう。
カーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5にはカーボンナノチューブ1が存在しない空間がある。すなわち、図14に示すように、Eの部分にカーボンナノチューブ1が存在しない空間がある。
本実施形態では、カーボンナノチューブ1が存在しない空間を利用する方法について説明する。本実施形態では、カーボンナノチューブ1が存在しない空間に誘電体膜を形成する。すわわち、図14のEの部分に誘電体膜を形成する。このように、カーボンナノチューブ1が存在しない空間に誘電体膜が形成されることにより、カーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を誘電体膜の強度補強財として利用することができる。例えば、誘電体膜として機能するナノポーラスシリカは、機械的強度が弱い。そこで、カーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を誘電体膜の強度補強財として利用することにより、誘電体膜の機械的強度を補強することが可能となる。
また、カーボンナノチューブ1が存在しない空間にメッキによる金属を形成してもよい。すなわち、カーボンナノチューブ1が存在しない空間に金属層を形成してもよい。さらには、カーボンナノチューブ1が存在しない空間に樹脂を充填してもよい。カーボンナノチューブ1が存在しない空間に充填する樹脂としては、例えば有機物質がある。また、カーボンナノチューブ1が存在しない空間にSiO2等の絶縁膜を形成してもよい。
このように、カーボンナノチューブ1が存在しない空間に誘電体膜、金属層、樹脂及び絶縁膜等が形成されることにより、デバイス特性の改善、放熱特性の改善、デバイス強度の改善が可能となる。
〈第4実施形態〉
本発明の第4実施形態を図15及び図16の図面に基づいて説明する。本実施形態では、第1実施形態又は第2実施形態によって形成された密度が異なるカーボンナノチューブ群5を組み合わせる方法について説明する。
まず、カーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を同一直線上に複数配置する。この場合、一方の端部よりも高密度である他方の端部が同じ方向となるように配置する。図15に示すように、カーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5は、同一直線上に複数配置されている。また、一方の端部よりもカーボンナノチューブ1の密度が高密度である他方の端部が同じ方向となるように配置されている。ここで、カーボンナノチューブ群5の端部のうち、一方の端部よりもカーボンナノチューブ1の密度が高密度である他方の端部を高密度の端部という。
次に、同一直線上に並んでいる複数のカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5の間に、カーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を更に配置する。この場合、既に並んでいる複数のカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5の高密度の端部に対して、高密度の端部が反対方向となるようにカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を更に配置する。すなわち、カーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を高密度の端部の方向が互い違いになるように同一直線上に複数配置する。図16は、高密度の端部の方向が互い違いになるように同一直線上にカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を複数配置した場合の正面図である。
カーボンナノチューブ1が存在しない空間にカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群5を更に配置することでカーボンナノチューブ群5の密度を増加させることができる。すなわち、高密度のカーボンナノチューブ群5の形成が可能となる。
〈第5実施形態〉
本発明の第5実施形態を図17から図25の図面に基づいて説明する。図17及び図18の図面を用いて、本実施形態のカーボンナノチューブ1の成長方法を説明する。まず、酸化膜付きシリコン基板7に触媒を堆積させる。この場合、微粒子化された触媒を用いてもよいし、スパッタ法によって堆積させた膜状の触媒を用いてもよい。
本実施形態では、酸化膜付きシリコン基板7に堆積させる触媒として鉄を用いて説明する。また、本実施形態では、酸化膜付きシリコン基板7に鉄触媒を堆積させる方法として、スパッタ法を用いて説明する。酸化膜付きのシリコン基板7に厚さ1nmの鉄膜8をスパッタ法により堆積させ、フォトリソグラフィーを用いて、直径5μm程度の鉄膜8となるようにパターニングを行う。図17に、パターニング後の鉄膜8を示す。図17に示すように、酸化膜付きのシリコン基板7上に略円形の鉄膜8がパターニングにより形成される。鉄膜8の直径は例示であって、本発明はこれに限定されず、任意のサイズで鉄膜8のパターニングを行ってもよい。
パターニング後の鉄膜8が形成された酸化膜付きシリコン基板7を、通常の熱CVD炉内の過熱ステージ上に置き、真空排気を行う。そして、酸化膜付きシリコン基板7の温度が590℃になるまで酸化膜付きシリコン基板7を加熱する。その後、アルゴン(Ar)とアセチレン(C2H2)の混合ガスを熱CVD炉内に30間導入する。この場合、アルゴン(Ar)とアセチレン(C2H2)の混合ガスの圧力は1kPaとする。このようにして、酸化膜付きシリコン基板7にカーボンナノチューブ1を配向成長させる。
図18に、酸化膜付きシリコン基板7に配向成長したカーボンナノチューブ群5を示す。個々のカーボンナノチューブ1の直径は約10nmであり、長さは約20μmである。また、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度は約1011本/cm2である。直径5nmのカーボンナノチューブが最密充填の状態の密度は、約1012本/cm2程度であるので、カーボンナノチューブの占有率は10%程度に過ぎない。
つぎに、図19から図25の図面を用いて、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度を高密度化させる工程を説明する。まず、カーボンナノチューブ群5を溶媒9に浸漬する。カーボンナノチューブ群5を浸漬させる溶媒9は、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、ジクロロエタン、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等の有機溶媒や、水等の無機溶媒を用いる。
具体的には、酸化膜付きシリコン基板7を入れることができるサイズの容器10に、室温の溶媒9を入れる。そして、溶媒9が入った容器10に、酸化膜付きシリコン基板7を縦又は横にして入れることにより、カーボンナノチューブ群5を溶媒9に浸漬させる。
図19から図21は、カーボンナノチューブ群5に溶媒9を付着させる工程を示した図である。この工程では、溶媒9が入った容器10に、酸化膜付きシリコン基板7を横にして入れ、カーボンナノチューブ群5を溶媒9に浸漬させた後、溶媒9が入った容器10から酸化膜付きシリコン基板7を引き上げる。具体的には、図19に示すように、酸化膜付きシリコン基板7を横に配置する。そして、図20に示すように、溶媒9が入った容器10に酸化膜付きシリコン基板7を浸漬させる。この場合、カーボンナノチューブ群5の全体を溶媒9に浸漬させる。すなわち、カーボンナノチューブ群5の全体に溶媒9を付着させる。
次に、カーボンナノチューブ群5を溶媒9に約1分浸漬させた後、図21に示すように、カーボンナノチューブ群5を溶媒9から引き上げる。カーボンナノチューブ群5を溶媒9に浸漬させる時間は1分に限定されず、カーボンナノチューブ群5に対する溶媒9の付着状態により、浸漬時間を適宜調整する。
図22から図24は、カーボンナノチューブ群5に溶媒9を付着させる工程を示した図である。この工程では、溶媒9が入った容器10に、酸化膜付きシリコン基板7を縦にして入れ、カーボンナノチューブ群5を溶媒9に浸漬させた後、溶媒9が入った容器10から酸化膜付きシリコン基板7を引き上げる。具体的には、図22に示すように、酸化膜付きシリコン基板7を縦に配置する。そして、図23に示すように、溶媒9が入った容器10に酸化膜付きシリコン基板7を浸漬させる。この場合、カーボンナノチューブ群5の全体を溶媒9に浸漬させる。すなわち、カーボンナノチューブ群5の全体に溶媒9を付着させる。
次に、カーボンナノチューブ群5を溶媒9に約1分浸漬させた後、図24に示すように、カーボンナノチューブ群5を溶媒9から引き上げる。カーボンナノチューブ群5を溶媒9に浸漬させる時間は1分に限定されず、カーボンナノチューブ群5に対する溶媒9の付着状態により、浸漬時間を適宜調整する。
また、カーボンナノチューブ群5に対する溶媒9の付着状態が悪い場合、SDS(硫酸ドデシルナトリウム)のような界面活性剤又はピレン、ペリレン、アントラセン、ポルフィリン、フタロシアニン、DNAなどの機能性分子を溶媒9に加えることにより、カーボンナノチューブ群5に対する溶媒9の付着状態を良化させる。
本実施形態では、溶媒9が入った容器10に、酸化膜付きシリコン基板7を入れ、カーボンナノチューブ群5を溶媒9に浸漬させた後、溶媒9が入った容器10から酸化膜付きシリコン基板7を引き上げる方法を説明した。しかし、本発明は、これに限定されず、スピンコート法を用いて溶媒9をカーボンナノチューブ群5に滴下することにより、溶媒9をカーボンナノチューブ群5に付着させてもよい。
カーボンナノチューブ群5に溶媒9を付着させた後、カーボンナノチューブ群5を乾燥させる。カーボンナノチューブ群5を乾燥させる方法は、カーボンナノチューブ群5を自然乾燥させる方法でもよいし、酸化膜付きシリコン基板の温度を200℃程度に加熱して急速に乾燥させる方法でもよい。
カーボンナノチューブ群5を乾燥させる過程において、カーボンナノチューブ群5の先端部分(カーボンナノチューブ群5の端部のうち酸化膜付きシリコン基板7と接していない端部)のカーボンナノチューブ1は、毛菅力により各カーボンナノチューブ1がお互いに引き寄せられる。お互いに引き寄せられたカーボンナノチューブ1は、分子間力によってカーボンナノチューブ1同士が密着する。そのため、図25に示すように、カーボンナノチューブ群5の先端部分は、各カーボンナノチューブ1が寄り添った状態が形成される。すなわち、カーボンナノチューブ群5の先端部分のカーボンナノチューブ1の密度と、カーボンナノチューブ群5の根本部分(カーボンナノチューブ群5の端部のうち、酸化膜付きシリコン基板と接している端部)のカーボンナノチューブ1の密度とが異なるカーボンナノチューブ群5が形成される。
このように形成されたカーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度は、カーボンナノチューブ群5の先端部分と根本部分とで異なる。すなわち、カーボンナノチューブ群5の一方の端部と他方の端部とでカーボンナノチューブ1の密度が異なるカーボンナノチューブ群が形成される。カーボンナノチューブ群5の先端部分のカーボンナノチューブ1の密度は、カーボンナノチューブ群5の根本部分のカーボンナノチューブ1の密度よりも高密度になる。したがって、図25に示すカーボンナノチューブ群5は、カーボンナノチューブ群5の先端部分のカーボンナノチューブ1が最密充填程度の高密度となる。
〈第6実施形態〉
本発明の第6実施形態を図26から図33の図面に基づいて説明する。第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態において説明した方法によって形成されたカーボンナノチューブ群5は、カーボンナノチューブ群5の端部のうち、一方の端部のカーボンナノチューブ1の密度が高密度となる。本実施形態では、カーボンナノチューブ群5の両方の端部のカーボンナノチューブ1の密度を高密度化させる方法について説明する。すなわち、カーボンナノチューブ群5の両方の端部のカーボンナノチューブ1が寄り添って形成され、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1が全体として寄り添った状態を形成する方法について説明する。
まず、カーボンナノチューブ群5を成長させた基板20を用意する。本実施形態では、第1実施形態及び第2実施形態で示したシリコン基板2又は第5実施形態で示した酸化膜付きシリコン基板7を基板20として使用する。ここで、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態において説明したカーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度を高くする処理を高密度化処理という。また、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度が高密度となったカーボンナノチューブ群5を、高密度化されたカーボンナノチューブ群5という。基板20に成長させたカーボンナノチューブ群5に対して、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態において説明した高密度化処理を行い、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度を高密度化する。図26に、高密度化されたカーボンナノチューブ群5及び基板20を示す。
次に、図27に示すように、カーボンナノチューブ群5を成長させた基板20と同じサイズの基板21を用意する。そして、基板21の表面に、はんだやインジウム等の低融点金属膜22を堆積する。基板21の表面に堆積させる低融点金属膜22の厚さは数μmとする。このように、基板21の表面に低融点金属膜22を堆積させると、低融点金属膜付きの基板23が作製される。
そして、図28に示すように、カーボンナノチューブ群5を挟むように、低融点金属膜付きの基板23と基板20とを重ね合わせる。具体的には、基板21の表面に堆積した低融点金属膜22と、カーボンナノチューブ群5の端部(カーボンナノチューブ群5のうち基板20と接していない端部)とが接触するように、低融点金属膜付きの基板23と基板20とを重ね合わせる。
そして、低融点金属膜付きの基板23の温度が、低融点金属膜22の融点以上となるように低融点金属膜付きの基板23を加熱した後、低融点金属膜付きの基板23を冷却する。低融点金属膜付きの基板23を冷却した後、低融点金属膜付きの基板23と基板20とを引き離す。低融点金属膜付きの基板23と基板20とを引き離した場合、カーボンナノチューブ群5と低融点金属膜付きの基板23とが密着された状態となる。すなわち、カーボンナノチューブ群5は、基板20から引き剥がされ、カーボンナノチューブ群5は、低融点金属膜付きの基板23に密着する。図29に示すように、基板20からカーボンナノチューブ群5が引き剥がされ、低融点金属膜付きの基板23にカーボンナノチューブ群5が密着している。
基板20とカーボンナノチューブ群5との密着が強い場合、カーボンナノチューブ群5は、基板20から引き剥がされず、カーボンナノチューブ群5は、低融点金属膜付きの基板23に密着しない。第1実施形態、第2実施形態及び第5実施形態では、シリコン基板2又は酸化膜付きシリコン基板7の上に極めて薄い触媒膜(数nm以下の触媒膜)を堆積させた後、カーボンナノチューブ群5を成長させている。本実施形態では、シリコン基板2又は酸化膜付きシリコン基板7を基板20として使用している。したがって、基板20の上に極めて薄い触媒膜を堆積させた場合、基板20とカーボンナノチューブ群5との密着力は弱い。そのため、カーボンナノチューブ群5が、基板20から引き剥がされないという問題は生じない。
図29に示すように、低融点金属膜付きの基板23に密着したカーボンナノチューブ群5の端部のうち低融点金属膜付きの基板23に接している端部は、他方の端部(カーボンナノチューブ群5の端部のうち低融点金属膜付きの基板23に接していない端部)よりもカーボンナノチューブ1の密度が高い。カーボンナノチューブ群5は、低融点金属膜付きの基板23から距離が遠くなるにつれて、カーボンナノチューブ群5の横幅が広くなる。すなわち、カーボンナノチューブ群5は、低融点金属膜付きの基板23から距離が遠くなるにつれて、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度が低くなる。
カーボンナノチューブ群5の両端部のうち、カーボンナノチューブ1の密度が高い端部を密着させた低融点金属膜付きの基板23に対して、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態で説明した高密度化処理を行う。すなわち、カーボンナノチューブ群5の両端部のうち、カーボンナノチューブ1の密度が低い端部に対して、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態で説明した高密度化処理を行う。
カーボンナノチューブ群5の両端部のうち、カーボンナノチューブ1の密度が低い端部に対して、高密度化処理を行った場合、カーボンナノチューブ群5の両端部のカーボンナノチューブ1が高密度となるカーボンナノチューブ群5が形成される。
図30は、低融点金属膜付きの基板23に密着したカーボンナノチューブ群5を溶媒9が入った容器10に浸漬させている工程を示している。図31は、低融点金属膜付きの基板23に密着したカーボンナノチューブ群5を溶媒9が入った容器から引き上げる工程を示している。図31に示すカーボンナノチューブ群5は、両端部のカーボンナノチューブ1が最密充填に近い高密度となる。
また、融点の異なる低融点金属(合金)を利用した場合、高密度化されたカーボンナノチューブ群5を、さらに高密度化することができる。図32及び図33を参照して、カーボンナノチューブ群5の両端部のカーボンナノチューブ1が高密度化されたカーボンナノチューブ群5を、さらに高密度化する方法について説明する。
図32に示すように、カーボンナノチューブ群5の両端部のカーボンナノチューブ1が高密度化されたカーボンナノチューブ群5が密着した低融点金属膜付きの基板23と、低融点金属膜付きの基板30とを用意する。低融点金属膜付きの基板23と低融点金属膜付きの基板30とは同じサイズである。低融点金属膜付きの基板30は、基板31の表面に、はんだやインジウム等の低融点金属膜32を堆積させたものである。この場合、低融点金属膜付きの基板23に堆積させた低融点金属膜22の融点よりも融点が高い低融点金属膜32を基板31の表面に堆積させる。また、基板31の表面に堆積させる低融点金属膜32の厚さは数μmとする。
次に、図33に示すように、低融点金属膜付きの基板23と低融点金属膜付きの基板30とを重ね合わせる。具体的には、カーボンナノチューブ群5の端部(カーボンナノチューブ群5の端部のうち低融点金属膜付きの基板23に接していない端部)と、基板31の表面に堆積した低融点金属膜32とが接触するように、低融点金属膜付きの基板23と低融点金属膜付きの基板30とを重ね合わせる。
そして、低融点金属膜付きの基板23の温度及び低融点金属膜付きの基板30の温度が、低融点金属膜32の融点以上となるように、低融点金属膜付きの基板23及び低融点金属膜付きの基板30を加熱する。その後、低融点金属膜付きの基板23及び低融点金属膜付きの基板30を冷却する。この場合、低融点金属膜付きの基板23の温度及び低融点金属膜付きの基板30の温度が、低融点金属膜22の融点以上であって、低融点金属膜32の融点以下となるように冷却する。
そして、低融点金属膜付きの基板23と低融点金属膜付きの基板30とを引き離す。低融点金属膜付きの基板23と低融点金属膜付きの基板30とを引き離した場合、カーボンナノチューブ群5と低融点金属膜付きの基板30とが密着された状態となる。すなわち、カーボンナノチューブ群5は、低融点金属膜付きの基板23から引き剥がされ、低融点金属膜付きの基板30に密着する。
低融点金属膜22の融点以上であって、低融点金属膜32の融点以下の温度の場合、低融点金属膜付きの基板23に堆積した低融点金属膜22は、溶融状態である。そのため、カーボンナノチューブ群5と低融点金属膜付きの基板30との密着の方が、カーボンナノチューブ群5と低融点金属膜付きの基板23との密着よりも強い。したがって、カーボンナノチューブ群5は、低融点金属膜付きの基板23から引き剥がされ、低融点金属膜付きの基板30に密着する。
そして、低融点金属膜付きの基板30に接着したカーボンナノチューブ群5に対して、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態で説明した高密度化処理を行うことにより、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度をさらに高密度化させることができる。このような処理を複数回繰り返すことも可能であり、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度をより高密度化することができる。
本実施形態によれば、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の密度を、カーボンナノチューブ群5の全体で高密度とすることができる。
〈第7実施形態〉
本発明の第7実施形態を図34から図43の図面に基づいて説明する。本実施形態では、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態で説明した高密度化処理によって高密度化されたカーボンナノチューブ群5を、放熱バンプに応用する方法について説明する。
従来、高出力トランジスタチップ40をパッケージ41に直接接合するフェイスアップ構造を用いていた。図34に、従来のトランジスタ実装を示す。高出力トランジスタチップ40とパッケージ41とは、ワイヤボンディングにより接続される。すなわち、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42とパッケージ41に形成された電極(図示せず)とを金線等のワイヤで接続する。図34に示すトランジスタ実装は、フェイスアップ構造を用いており、高出力トランジスタチップ40を通して熱を逃がすことで放熱性を確保する。
また、高出力トランジスタチップ40を裏返し、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42とパッケージ41の電極とをカーボンナノチューブバンプ43で接続するフリップチップ実装がある。図35に示すように、フリップチップ実装は、高出力トランジスタチップ40をひっくり返すことにより、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42と、パッケージ41に形成された電極(図示せず)とを接続させる。すなわち、高出力トランジスタチップ40の表面をパッケージ41の方向に向けて、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42とパッケージ41に形成された電極とを接続する。ここで、バンプは、突起状に形成された端子である。カーボンナノチューブバンプ43は、カーボンナノチューブ群5を突起上に形成した端子である。
図36に示すように、カーボンナノチューブバンプ43は、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42とパッケージ41に形成された電極とを接続する。図36では、高出力トランジスタチップ40は裏返しになっており、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42はパッケージ41の方向に向いている。また、カーボンナノチューブバンプ43は、高出力トランジスタチップ40が発生する熱を放熱させるための放熱の経路としての役割を持つ。高出力トランジスタチップ40が発生する熱の放熱を十分に行うためには、カーボンナノチューブバンプ43のカーボンナノチューブ1の密度を高める必要がある。しかし、従来のカーボンナノチューブバンプ43のカーボンナノチューブ1の占有率は10%程度であり、従来のカーボンナノチューブバンプ43のカーボンナノチューブ1の密度を高めることが望まれていた。
本実施形態では、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態で説明した高密度化処理によって高密度化されたカーボンナノチューブ群5をカーボンナノチューブバンプ43に利用する。すなわち、高密度化されたカーボンナノチューブ群5をカーボンナノチューブバンプ43として用いることにより、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42とパッケージ41に形成された電極とを接続する。また、本実施形態では、カーボンナノチューブ1を成長させるための基板として窒化アルミニウム基板50を使用する。窒化アルミニウム基板50は、パッケージ41を作製するための材料として使用される。ただし、カーボンナノチューブ1を成長させるための基板として使用する窒化アルミニウム基板50は、例示であって、本発明はこれに限定されない。
図37に示すように、窒化アルミニウム基板50上に金などの金属で電極51を形成する。電極51上に、5nmの厚さのアルミニウムを堆積させる。そして、電極51上に堆積させたアルミニウムの上に、1nmの厚さの鉄を堆積させる。この場合、アルミニウム及び鉄は、カーボンナノチューブ1を成長させる触媒として使用する。
電極51上に堆積させたアルミニウム及びそのアルミニウム上に堆積させた鉄に対してパターニングを行う。この場合、パターニングによって形成されるアルミニウム及び鉄の形状が、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42の形状と同じ形状となるようにする。また、パターニングによって形成されるアルミニウム及び鉄の中心位置が、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42の中心位置と同じ位置になるようにする。パターニングによって形成されるアルミニウム及び鉄の大きさは、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42の大きさと同じでもよいし、数倍の大きさになってもよい。
次に、第1実施形態又は第5実施形態で説明した方法を用いて、窒化アルミニウム基板50上に20μm以上の長さのカーボンナノチューブ群5を成長させる。図38に、窒化アルミニウム基板50上に成長したカーボンナノチューブ群5を示す。図38に示すカーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1の占有率は10%程度である。
そして、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態で説明した高密度化処理を用いて、窒化アルミニウム基板50と接していないカーボンナノチューブ群5の端部のカーボンナノチューブ1の密度を高密度化させる。この場合、カーボンナノチューブ群5の端部のうちカーボンナノチューブ1の密度が高密度である端部の直径のサイズが、高出力トランジスタチップ40の電極42のサイズと同じか、高出力トランジスタチップ40の電極42のサイズよりも小さくなるように、カーボンナノチューブ群5を成長させる。
窒化アルミニウム基板50に堆積する触媒の大きさを変えることにより、カーボンナノチューブ群5の端部のうちカーボンナノチューブ1の密度が高密度である端部の直径のサイズを変えることができる。したがって、カーボンナノチューブ群5を成長させる窒化アルミニウム基板50に堆積した触媒に対してパターニングを行う際、高出力トランジスタチップ40の電極42のサイズを考慮して触媒の大きさを変更する。窒化アルミニウム基板50に堆積する触媒の大きさと、カーボンナノチューブ群5の端部のうちカーボンナノチューブ1の密度が高密度である端部の直径のサイズとの関係は、実験又はシミュレーションによって求めておけばよい。
図39に、高密度化されたカーボンナノチューブ群5及び窒化アルミニウム基板50を示す。第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態で説明した方法によって形成されたカーボンナノチューブ群5は、カーボンナノチューブ1の長さがそれぞれ異なる。すなわち、カーボンナノチューブ群5は、各カーボンナノチューブ1の長さが不ぞろいとなって成長する可能性が高い。カーボンナノチューブ群5の各カーボンナノチューブ1の長さの不ぞろいの程度が大きい場合、カーボンナノチューブ群5の各カーボンナノチューブ1の長さを均一にする処理を行う。
図40から図43を参照して、カーボンナノチューブ群5の各カーボンナノチューブ1の長さを均一にする処理について説明する。図40に示すように、窒化アルミニウム基板50に成長したカーボンナノチューブ群5は、各カーボンナノチューブ1の長さが均一になっていない。図40に示すカーボンナノチューブ群5は、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態で説明した高密度化処理が行われている。
まず、カーボンナノチューブ群5を覆うように、窒化アルミニウム基板50上に層間絶縁膜60を堆積させる。層間絶縁膜60として、ポーラスシリカ膜やSOG(spin on glass)膜等を用いる。窒化アルミニウム基板50上に層間絶縁膜60を堆積させた後、加熱処理を行い、層間絶縁膜60を固化させる。図41は、カーボンナノチューブ群5を覆うように、層間絶縁膜60を堆積させた窒化アルミニウム基板50の構造を示す図である。
窒化アルミニウム基板50上に層間絶縁膜60を堆積させ、加熱処理を行うと、カーボンナノチューブ群5は層間絶縁膜60とともに固まる。カーボンナノチューブ群5が層間絶縁膜60とともに固まった後、化学機械研磨(CMP)処理により、カーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜60を研磨する。この場合、カーボンナノチューブ群5の各カーボンナノチューブ1の長さが均一となるまで、カーボンナノチューブ群5と層間絶縁膜60とを研磨する。図42に、カーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜60が研磨された後の窒化アルミニウム基板50を示す。
その後、窒化アルミニウム基板50上に堆積させた層間絶縁膜60を取り除く。ただし、窒化アルミニウム基板50上に堆積させた層間絶縁膜60を取り除く必要性がない場合、窒化アルミニウム基板50上に堆積させた層間絶縁膜60は取り除かなくてもよい。
このように、カーボンナノチューブ群5の各カーボンナノチューブ1の長さを均一にすることにより、カーボンナノチューブ群5を高出力トランジスタチップ40に安定して接着させることが可能となる。
次に、カーボンナノチューブ群5をカーボンナノチューブバンプ43として用いることにより、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42とパッケージ41上に形成された電極とを接続する方法について説明する。
まず、パッケージ41の作製に利用する窒化アルミニウム基板50を用意する。第1実施形態又は第2実施形態で説明したカーボンナノチューブ群5の成長方法によって、窒化アルミニウム基板50上にカーボンナノチューブ群5を成長させる。窒化アルミニウム基板50上に形成されたカーボンナノチューブ群5は、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態で説明した高密度化処理が行われている。また、窒化アルミニウム基板50上に形成されたカーボンナノチューブ群5は、各カーボンナノチューブ1の長さを均一化する処理が行われたものであってもよい。
次に、窒化アルミニウム基板50上に形成されたカーボンナノチューブ群5に1μmの厚さの金を堆積させる。ただし、カーボンナノチューブ群5に堆積させる金の厚さは例示であって、本発明はこれに限定されない。また、窒化アルミニウム基板50上に形成されたカーボンナノチューブ群5のうち、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42に接着させたい部分に金を堆積させてもよい。
そして、通常のフリップチップボンダーを使用して、金を堆積させたカーボンナノチューブ群5と高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42とを接着させる。カーボンナノチューブ群5と高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42とを接着するために使用する圧力は6kg/cm2であり、温度は345℃である。ただし、圧力及び温度は例示であって、本発明はこれらに限定されない。
図43は、高出力トランジスタチップ40を備え付けた窒化アルミニウム基板50の構造を示す図である。図43では、カーボンナノチューブ群5をカーボンナノチューブバンプ43として使用している。カーボンナノチューブ群5を介して、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42と窒化アルミニウム基板50上の電極51とが接続される。カーボンナノチューブ群5の端部のうち、高出力トランジスタチップ40に接着している端部のカーボンナノチューブ1の密度は、高出力トランジスタチップ40に接着していない端部のカーボンナノチューブ1の密度の10倍程度である。そのため、従来のカーボンナノチューブバンプ43に比べて高い放熱性を有する。カーボンナノチューブ群5の端部のうちカーボンナノチューブ1の密度が高密度である端部と、高出力トランジスタチップ40に形成された電極42とが接着されることにより、高出力トランジスタチップ40の熱がカーボンナノチューブ群5を介して放熱される。
また、カーボンナノチューブ1の密度が全体的に高密度であるカーボンナノチューブ群5を用いて、高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極42と窒化アルミニウム基板50上の電極51とを接続することもできる。カーボンナノチューブ1の密度が全体的に高密度であるカーボンナノチューブ群5は、第6実施形態で説明した方法により作製することができる。カーボンナノチューブ1の密度が全体的に高密度であるカーボンナノチューブ群5を用いることにより、配線用の基板のデザインの自由度を広げることが可能となる。
〈第8実施形態〉
本発明の第8実施形態を図44から図51の図面に基づいて説明する。現在、LSIの配線は、10層あるいはそれ以上の層による多層配線になっており、配線材料として銅が通常用いられている。しかし、LSIの配線幅の減少に伴う電流密度の増加により、エレクトロマイグレーションによる断線が懸念される。そのため、LSIの縦配線(ビア配線)を、より高い電流密度に耐えられるカーボンナノチューブ1に置き換える試みが行われている。図44に、LSI70の構造を示す。図44に示すように、LSI70は、銅配線71を挟む絶縁膜72、銅配線71と他の銅配線71とを電気的に接続するビア73から構成されている。
本実施形態では、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態で説明した高密度化処理によって高密度化されたカーボンナノチューブ群5を、LSI配線に応用する方法について説明する。本実施形態では、図44に示すLSI70を構成するビア73を高密度化されたカーボンナノチューブ群5で置き替える。以下、図45から図51の図面を参照して、LSI70を構成するビア73を高密度化されたカーボンナノチューブ群5で置き替える方法について説明する。
まず、図45に示すように、カーボンナノチューブ群5を成長させた基板74を用意する。この場合、基板74として、シリコン基板2又は酸化膜付きシリコン基板7を用いてもよいし、他の基板を用いてもよい。第1実施形態又は第5実施形態に示すカーボンナノチューブ1の成長方法を用いて、カーボンナノチューブ群5を基板74に成長させておく。さらに、第1実施形態、第2実施形態又は第5実施形態に示す高密度化処理を用いて、カーボンナノチューブ群5を高密度化させておく。本実施形態では、基板74にカーボンナノチューブ群5を成長させるための触媒として、コバルト、鉄その他の金属を使用する。
LSI70を構成するビア73の位置にカーボンナノチューブ群5を配置できるように、基板74にカーボンナノチューブ群5を成長させる必要がある。そのため、本実施形態では、LSI70を構成するビア70の位置にカーボンナノチューブ群5を配置できるように、触媒に対してパターニングを行い、基板74にカーボンナノチューブ群5を成長させる。
次に、LSI基板75の電極76上に、コバルト膜77を5nmの厚さで堆積させ、コバルト膜77の上にタンタル膜78を5nmの厚さで堆積させ、タンタル膜78の上にチタン膜79を5nmの厚さで堆積させる。なお、コバルト膜77に替えて、鉄、ニッケル等の膜を使用してもよい。また、コバルト膜77に替えて、コバルト合金、鉄合金又はニッケル合金等の膜を使用してもよい。
コバルト膜77、タンタル膜78及びチタン膜79を堆積させたLSI基板75と、基板74とを重ね合わせる。具体的には、図46に示すように、カーボンナノチューブ群5の端部(カーボンナノチューブ群5の端部のうち基板74と接触していない端部)が、LSI基板75の電極76に接触するように、基板74とLSI基板75とを重ね合わせる。この場合、LSI基板75の長手方向に対して、基板74の長手方向が略平行方向となるように、基板74とLSI基板75とを重ね合わせる。また、光学的位置合わせにより、カーボンナノチューブ群5の端部とLSI基板75の電極76とが接触するように、基板74とLSI基板75とを重ね合わせる。
基板74とLSI基板75とを重ね合わせた状態で、CVD炉内に搬送する。CVD炉内において、真空排気を行った後、基板74及びLSI基板75を置いたステージを加熱する。そして、CVD炉内の温度が安定した後、CVD炉内にプロセスガス(混合ガス)を1kPaで導入する。本実施形態では、プロセスガスとして、アルゴン及びアセチレン(C2H2)を使用する。また、アルゴン及びアセチレン(C2H2)のプロセスガスにメタン(CH4)、エチレン(C2H4)等の炭化水素系ガス又はアルコールを加えてもよい。また、プロセスガス中のアセチレン(C2H2)に替えて、メタン(CH4)、エチレン(C2H4)等の炭化水素系ガス又はアルコールを用いてもよい。また、プロセスガスは、複数種類の炭化水素系ガスから構成されてもよいし、複数種類の炭化水素系ガス及びアルコールから構成されてもよい。
プロセスガスをCVD炉内に導入することにより、LSI基板75の電極76上に堆積させたコバルト膜77は、溶融状態となる。そのため、カーボンナノチューブ群5とLSI基板75の電極76とは、強固に結合する。
CVD炉内のステージの温度は、コバルト膜77とプロセスガスとは反応するが、カーボンナノチューブ群5のカーボンナノチューブ1が成長しない程度の温度(例えば、350℃程度の温度)にすることが望ましい。なお、CVD炉内のステージの温度は、プロセスガスの種類、LSI基板75に堆積させる膜の厚さによって変動し得る。
カーボンナノチューブ群5とLSI基板75の電極76とを結合させた後、基板74及びLSI基板75をCVD炉内から取り出す。そして、基板74とLSI基板75とを引き離す。基板74とLSI基板75とを引き離した場合、カーボンナノチューブ群5とLSI基板75の電極76とが密着された状態となる。すなわち、カーボンナノチューブ群5は、基板74から引き剥がされ、LSI基板75の電極76に密着する。
本実施形態では、第1実施形態又は第5実施形態で説明したカーボンナノチューブ1の成長方法を用いて、基板74にカーボンナノチューブ群5を成長させている。すなわち、基板74の上に極めて薄い触媒膜(数nm以下の触媒膜)を堆積させた後、カーボンナノチューブ群5を成長させている。基板74の上に極めて薄い触媒膜を堆積させているため、基板74とカーボンナノチューブ群5との密着力は弱い。そのため、カーボンナノチューブ群5が、基板74から引き剥がされないという問題は生じない。
また、図47に示すように、基板74とLSI基板75との間の隙間を、SOG膜又はポーラスシリカ膜等の層間絶縁膜80で埋めた後に、基板74とLSI基板75とを引き離してもよい。この場合、層間絶縁膜80を適当な溶媒に溶かして、層間絶縁膜80を液状にしておく。
そして、基板74とLSI基板75とを、液状の層間絶縁膜80に浸漬させることにより、基板74とLSI基板75との間の隙間を層間絶縁膜80で埋める。また、これに代えて、基板74とLSI基板75との間の隙間に、液状の層間絶縁膜80を注入することにより、基板74とLSI基板75との間の隙間を層間絶縁膜80で埋めてもよい。
そして、基板74及びLSI基板75に対して熱処理を行うことにより、層間絶縁膜80が固化し、基板74とLSI基板75との間に層間絶縁膜80が形成される。
基板74とLSI基板75との間の隙間に層間絶縁膜80を形成する前に、基板74とLSI基板75とを引き離した場合、カーボンナノチューブ群5が密着したLSI基板75に対して層間絶縁膜80を形成する。具体的には、スピンコート等を利用して、液状の層間絶縁膜80をカーボンナノチューブ群5が密着したLSI基板75に塗布することにより、LSI基板75に対して層間絶縁膜80を形成する。
また、基板74に層間絶縁膜80を形成した後、基板74とLSI基板75とを重ね合わせてもよい。すなわち、既に層間絶縁膜80が形成された基板74を使用して、基板74とLSI基板75とを重ね合わせる。この場合、以下の方法により、基板74に層間絶縁膜80を形成させる。
まず、カーボンナノチューブ群5を覆うように、基板74上に層間絶縁膜80を堆積させる。基板74上に層間絶縁膜80を堆積させた後、加熱処理を行い、層間絶縁膜80を固化させる。図48は、カーボンナノチューブ群5を覆うように、層間絶縁膜80を堆積させた基板74の構造を示す図である。基板74上に層間絶縁膜80を堆積させ、加熱処理を行うと、カーボンナノチューブ群5は層間絶縁膜80とともに固まる。このように、基板74に層間絶縁膜80を形成する。
また、カーボンナノチューブ群5が層間絶縁膜80とともに固まった後、化学機械研磨(CMP)処理により、層間絶縁膜80を研磨する。この場合、カーボンナノチューブ群5の先端が露出するように、層間絶縁膜80を研磨する。さらに、カーボンナノチューブ群5の各カーボンナノチューブ1の長さが均一でない場合、カーボンナノチューブ群5の各カーボンナノチューブ1の長さが均一となるまで、カーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80を研磨してもよい。
また、既に層間絶縁膜80が形成された基板74を使用して、基板74とLSI基板75とを重ね合わせる場合、カーボンナノチューブ群5の先端を突出させてもよい。すなわち、図49に示すように、基板74に形成された層間絶縁膜80の厚さ方向の長さよりもカーボンナノチューブ群5の長さを長くする。具体的には、層間絶縁膜80に対して、ウエットエッチング又はドライエッチングを行い、層間絶縁膜80のみを削る。層間絶縁膜80のみが削られることにより、カーボンナノチューブ群5の先端を突出させることができる。
本実施形態におけるウエットエッチングは、液体又は気体の希フッ化水素を使用する。層間絶縁膜80としてポーラスシリカ膜を使用する場合、ウエットエッチングを行うと、層間絶縁膜80のみがエッチングされる。そのため、カーボンナノチューブ群5の先端を突出させることができる。ドライエッチングで層間絶縁膜80を削る場合、スパッタリング法でアルゴンイオンを層間絶縁膜80にぶつける。ドライエッチングを行うと、層間絶縁膜80のみがエッチングされる。そのため、カーボンナノチューブ群5の先端を突出させることができる。
このようにして基板74に層間絶縁膜80を形成した後、基板74とLSI基板75とを重ね合わせ、基板74とLSI基板75とを引き離すことにより、LSI基板75には、層間絶縁膜80が形成され、かつカーボンナノチューブ群5が密着した状態となる。
次に、層間絶縁膜80が形成されたLSI基板75に対して、化学機械研磨(CMP)の処理を行い、カーボンナノチューブ群5の長さ及び層間絶縁膜80の厚さが所望の範囲になるまで、カーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80を研磨する。層間絶縁膜80が形成されたLSI基板75は、基板74とLSI基板75とを引き離した後に層間絶縁膜80を形成したLSI基板75であってもよいし、基板74とLSI基板75とを引き離す前に層間絶縁膜80を形成したLSI基板75であってもよい。図50に、カーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80が研磨された後のLSI基板75を示す。
次に、LSI基板75に銅配線71を形成する。具体的には、LSI基板75に密着したカーボンナノチューブ群5の上に銅を堆積させ、LSI基板75に形成された層間絶縁膜80の上に銅を堆積させる。そして、堆積させた銅に対してパターニングを行い、LSI基板75に銅配線71を形成する。銅配線71と他の銅配線71との間には、層間絶縁膜80を形成する。ただし、この層間絶縁膜80の形成はこの段階で行わなくてもよい。図51に、銅配線71を形成した後のLSI基板75を示す。
LSI基板75にカーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80を形成し、カーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80の上に銅配線71を形成する工程を第1の配線工程という。第1の配線工程を行った後、LSI基板75に対して、カーボンナノチューブ群5をさらに形成する。すなわち、銅配線71上にカーボンナノチューブ群5を形成し、LSI基板75を多層化する。銅配線71上にカーボンナノチューブ群5を形成する工程を以下に説明する。
図52に示すように、カーボンナノチューブ群5を成長させた基板74を用意する。基板74に成長させたカーボンナノチューブ群5を高密度化させておくことは、第1の配線工程と同様である。また、LSI70を構成するビア70の位置にカーボンナノチューブ群5を配置できるように、触媒に対してパターニングを行い、基板74にカーボンナノチューブ群5を成長させることは、第1の配線工程と同様である。さらに、LSI70を構成するビア70の位置にカーボンナノチューブ群5を配置できるように、触媒に対してパターニングを行い、基板74にカーボンナノチューブ群5を成長させることは、第1の配線工程と同様である。
次に、銅配線71上に、コバルト膜77を5nmの厚さで堆積させ、コバルト膜77の上にタンタル膜78を5nmの厚さで堆積させ、タンタル膜78の上にチタン膜79を5nmの厚さで堆積させる。なお、コバルト膜77の代わりに、鉄、ニッケル等の膜を使用してもよい。
そして、銅配線71を形成したLSI基板75と基板74とを重ね合わせる。具体的には、図53に示すように、基板74と接触していないカーボンナノチューブ群5の端部が、銅配線71に接触するように、基板74とLSI基板75とを重ね合わせる。この場合、LSI基板75の長手方向に対して、基板74の長手方向が略平行方向となるように、基板74とLSI基板75とを重ね合わせる。また、光学的位置合わせにより、カーボンナノチューブ群5の端部とLSI基板75の電極76とが接触するように、基板74とLSI基板75とを重ね合わせる。
ここで、カーボンナノチューブ群5の端部(カーボンナノチューブ群5のうち基板74と接していない端部)を銅配線71に結合させる方法は、第1の配線工程におけるカーボンナノチューブ群5の端部を電極76に結合させる方法と同様である。
そして、基板74と銅配線71との間の隙間を層間絶縁膜80で埋めた後に、基板74とLSI基板75とを引き離す。基板74とLSI基板75とを引き離した場合、カーボンナノチューブ群5と銅配線71とが密着された状態となる。すなわち、カーボンナノチューブ群5は、基板74から引き剥がされ、銅配線71に密着する。図54に、基板74からカーボンナノチューブ群5が引き剥がされ、LSI基板75に形成された銅配線71にカーボンナノチューブ群5が密着した状態を示す。
次に、層間絶縁膜80が形成されたLSI基板75に対して、化学機械研磨(CMP)の処理を行い、カーボンナノチューブ群5の長さ及び層間絶縁膜80の厚さが所望の範囲になるまで、カーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80を研磨する。図55に、カーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80が研磨された後のLSI基板75を示す。
そして、LSI基板75に銅配線71を形成する。LSI基板に銅配線71を形成する方法は、第1の配線工程と同様である。銅配線71の上にカーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80を形成し、さらに銅配線71を形成する工程を第2の配線工程という。第1の配線工程で使用する材料及び方法は、第2の配線工程において使用することができる。
本実施形態では、LSI基板75にカーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80を形成し、カーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80の上に銅配線71を形成する第1の配線工程を行う。そして、本実施形態では、銅配線71の上にカーボンナノチューブ群5及び層間絶縁膜80を形成し、さらに銅配線71を形成する第2の配線工程を行う。第2の配線工程を繰り返すことにより、カーボンナノチューブ群5を利用した多層配線のLSIが形成される。
また、本実施形態のコバルト膜77、タンタル膜78及びチタン膜79を用いて、カーボンナノチューブ群5を電極76又は銅配線71に接着させる方法は、第7実施形態に利用することも可能である。すなわち、本実施形態におけるカーボンナノチューブ群5と電極76との接着方法を用いて、第7実施形態におけるカーボンナノチューブ群5と高出力トランジスタチップ40の表面に形成された電極とを接着してもよい。
本実施形態によれば、LSI70を構成するビア73を高密度化されたカーボンナノチューブ群5で置き替えることにより、エレクトロマイグレーションによる断線の可能性を低減させることができる。すなわち、LSI70を構成する電極76と銅配線71との間の断線の可能性を低減させることができる。
〈変形例〉
本発明の第1実施形態から第8実施形態において、カーボンナノチューブ1に代えてカーボンナノファイバーを用いてもよい。カーボンナノファイバーの成長方法は、カーボンナノチューブ1の成長方法と同様であり、ここではその説明を省略する。また、本発明の第1実施形態から第8実施形態の構造及び方法は、カーボンナノチューブ1やカーボンファイバーのような細線状の物質に適用できる。さらに、本発明の第1実施形態から第8実施形態の構造及び方法は、炭素系繊維に適用できる。また、本発明の第1実施形態から第8実施形態の構造及び方法は、中空状の炭素系繊維及び中空状でない炭素系繊維に適用できる。