以下、計算装置、計算方法、計算プログラム、および商品の取引方法にかかる発明を実施するための形態について説明する。
計算装置は、発注された商品の数量から発注金額を計算する発注金額計算手段と、前記発注金額から手数料を計算する手数料計算手段とを有するものである。
計算方法は、発注された商品の数量から発注金額を計算する発注金額計算ステップと、前記発注金額から手数料を計算する手数料計算ステップとを有する方法である。
計算プログラムは、計算装置を構成するコンピュータに実行させるための計算プログラムであって、前記コンピュータを、発注された商品の数量から発注金額を計算する発注金額計算手段と、前記発注金額から手数料を計算する手数料計算手段として機能させるものである。
商品の取引方法は、遊技場と業者の間、または2つの業者の間で採用する商品の取引方法であって、前記商品の取引方法で計算装置を用い、前記計算装置は発注された商品の数量から発注金額を計算する発注金額計算手段と、前記発注金額から手数料を計算する手数料計算手段とを有する。
商品の取引方法について説明する。
まず、従来の商品の取引方法について、図1を用いながら説明する。図1の遊技場1は、パチンコやスロットといった遊技機を取り揃えたパチンコホールを一例として挙げることができる。 遊技客2とは、遊技場1でパチンコやスロットを用いた遊技を行う顧客の事である。遊技場1における遊技の終了時、遊技客2は、手元に残ったパチンコ玉やスロットのメダルを、その多寡に応じてさまざまな賞品と交換することが可能である。遊技場1から遊技客2へ賞品が渡されるため、この流れを図中の矢印によって示した。
賞品には、菓子、タバコ、CD、時計、宝飾品など様々な種類のものがあり、その中のひとつとして、上述した一定商品が存在する。一定商品の例として、「人気」(登録商標、登録番号:第5031027号、権利者:ヒロユー株式会社)をもつものを挙げることができる。以下、この商品を、単に、「人気商品」と記述する。人気商品は、遊技場1から遊技客2へ渡される賞品の一種であり、通常の賞品とくらべると非常に流動性が高く、市中でも売買取引がおこなわれ、流通やリサイクル活動がおこなわれている。人気商品には、貴金属製の物品(メダル・ペン先・タイピン等)を挿入したカード型のものなど、種々の形状のものが存在するが、その取引額は挿入された貴金属製の物品の価値などに応じて変わり、例えば、「100円」,「500円」,「1,000円」,「5,000円」の4種がある。
市中に流通した人気商品は、遊技場とはまったく関係の無い、独立した第三者が経営するショップや流通業者によって取引が行われる。図2に、その一例を示す。図中の業者3とは、例えばショップであり、市中に流通した人気商品を売買する店舗のことである。業者4とは、例えば集荷業者であり、業者3から人気商品を買い取って集荷し、リサイクルを行う業者のことである。本図においては、話を簡単化するため、額面100円相当の人気商品の取引を図示している。業者3は人気商品を業者4へ売ることによって収益を得る。この例の業者3は、100円の人気商品に対してP円の手数料を上乗せし、(100+P)円で業者4へ売却している。換言すれば、業者3と業者4の間の取引価格は(100+P)円であり、前者から後者へと人気商品が流れ、逆向きにお金が流れる様子が図示されている。
また、図中の業者5とは、例えば配送業者であり、業者4から人気商品を買い取り、遊技場1へ配送する業者のことである。業者4は、業者3から買い取った人気商品を、業者5へ売ることによって収益を得る。この例では、業者4は、(100+P)円で買い取った人気商品に対し、(Q-P)円の手数料を上乗せし、(100+Q)円で売却している。換言すれば、業者4と業者5との間の取引価格は(100+Q)円であり、前者から後者へ人気商品が流れ、逆向きにお金が流れる様子が図示されている。
さて、業者5は、業者4から買い取った人気商品を、遊技場1へ売ることによって収益を得る。この例では、業者5は、(100+Q)円で買い取った人気商品に対し、(R-Q)円を上乗せし、(100+R)円で売却している。換言すれば、業者5と遊技場1の間の取引価格は(100+R)円であり、前者から後者へ人気商品が流れ、逆向きにお金が流れる様子が図示されている。
ここで、図1にもどれば、遊技場1は、業者5の手数料込みの(100+R)円で買い取った人気商品を、100円相当の人気商品として遊技客2へ渡す。遊技場1の立場から考えた場合、100円相当の人気商品をより割高の(100+R)円で仕入れていることになる。ただし、人気商品はすべての遊技客2に渡されるわけでは無く、遊技の結果、優秀な成績を収めた一部の遊技客2のみに渡される。したがって、遊技場1は、全遊技客2から得る収益によってこの手数料分を補填可能である。しかしながら、最近の大型化した遊技場1の支払う手数料は、従来の規模の遊技場1のそれと比べて莫大なものとなっており、これが経営圧迫の一因となっている。
つぎに、本発明の商品の取引方法について説明する。
上述のような欠点は、人気商品の取引手数料の割合が、遊技場1の売上規模に関わらず、一定であることに起因する。一方、一般的な商取引において、大量の商品をいちどに買う場合のボリューム・ディスカウントは、極めて自然な考え方である。現在の、人気商品の取引における欠点を改善するため、本発明においては、これまでの方式のような一律の手数料を廃し、売上規模に応じたよりリーズナブルな手数料を課すよう、逓減曲線を用いた計算をおこなう新方式を導入する。
大規模遊技場が増えてきた昨今、零細から超巨大遊技場までを含めたすべての遊技場の集合を考えると、その台数規模は、百台程度から二千台程度までの非常に幅広い分布を示す。これに呼応して、遊技場の一日あたりの売上も、零細店舗での数十万円程度の規模にはじまり、超大型店の数千万円程度の規模にいたるまで、非常に幅広い分布を示している。換言すれば、遊技場の規模に応じ、日々の売上には最大100倍程度の開きが既に生じている。
一方、遊技場の売上規模と、遊技場による人気商品の購入額は ほぼ比例すると考えられるため、人気商品の購入額についても、遊技場の規模に応じて、最大100倍程度の開きがあることが期待される。一方、遊技場が負担する人気商品100円あたりの手数料は、遊技場の売上規模に関わらず、一定の率で決められているのが現状である。たとえば、図2におけるRが 0.9円(90銭)のケースを考えよう。人気商品を業者5から仕入れる際、人気商品100円につき、手数料として90銭を遊技場1は支払うことになる。換言すれば、日々、10万円分の人気商品を仕入れている遊技場1は手数料900円を、日々1000万円の人気商品を仕入れている遊技場1は手数料90,000円を、それぞれ支払っていることになる。後者は、一ヶ月あたり270万円近い手数料を支払うことになり、これが経営圧迫への一因となっていることは想像に難くない。
このような状況を打破するため、本発明においては、売上規模に応じて順次手数料を逓減させる新方式を導入する。たとえば、日々の人気商品の仕入額が 100万円であれば、手数料を現在から1%減らし、500万円であれば5%減、1000万円であれば10%減といった具合に、取引金額が大きくなればなるほど手数料の負担率を小さくし、遊技場経営への一助とする。
本発明の商品の取引方法の一例について説明する。本発明の商品の取引方法においては、図1で説明した従来の商品の取引方法と基本的な流れは似ている。遊技場1における遊技の終了時、遊技客2は、手元に残ったパチンコ玉やスロットのメダルを、その多寡に応じてさまざまな賞品と交換することが可能である。遊技場1から遊技客2へ賞品が渡されるため、この流れを図中の矢印によって示した。
賞品の中のひとつとして、上述した人気商品が存在する。市中に流通した人気商品は、第三者が経営するショップや流通業者によって取引が行われる。図3に、その一例を示す。本図においては、額面100円相当の人気商品の取引を図示している。業者3は人気商品を業者4へ売ることによって収益を得る。この例の業者3は、100円の人気商品に対してP円の手数料を上乗せし、(100+P)円で業者4へ売却している。換言すれば、業者3と業者4の間の取引価格は(100+P)円であり、前者から後者へと人気商品が流れ、逆向きにお金が流れる様子が図示されている。
また、業者4は、業者3から買い取った人気商品を、業者5へ売ることによって収益を得る。この例では、業者4は、(100+P)円で買い取った人気商品に対し、(Q-P)円の手数料を上乗せし、(100+Q)円で売却している。換言すれば、業者4と業者5との間の取引価格は(100+Q)円であり、前者から後者へ人気商品が流れ、逆向きにお金が流れる様子が図示されている。
さて、業者5は、業者4から買い取った人気商品を、遊技場1へ売ることによって収益を得る。この例では、業者5は、(100+Q)円で買い取った人気商品に対し、(X-Q)円を上乗せし、(100+X)円で売却している。換言すれば、業者5と遊技場1の間の取引価格は(100+X)円であり、前者から後者へ人気商品が流れ、逆向きにお金が流れる様子が図示されている。
図3において、業者5の手数料に対する修正結果が表現されている。遊技場1が負担する手数料が、図2の一律なR円から、遊技場1の売上規模に応じて逓減されるX円に変更となっている。このX円は、売上規模の小さい遊技場については、現行のR円とほぼ同じ、あるいは、若干小さい金額ではあるが、遊技場1の取引高に応じてより低い金額へと変化し、日々数千万円規模の巨大な遊技場1に対しては、R円よりも大幅に小さな金額へと修正される。
なお、個々の遊技場の売上げに応じて手数料を逓減させる場合、日々の取引における手数料の計算はかなり煩雑となることが予想される。図2や図3のような個々の業者間の取引は、通常一日単位で行われ、毎日納品書や伝票がそれぞれの取引に応じて発行されている。これまでは手数料の負担率は一律であったため、各業者間の個々の取引における手数料の算出はきわめて容易であった。しかしながら、新方式では、取引規模に応じて手数料を変更する必要が出てくる。図3においては、業者5は、各遊技場1との取引金額に応じ、手数料であるX円を、その都度計算しなおす必要が生ずるが、かなり煩雑となることが予想される。
これまでと変わらぬ円滑な取引を可能せしめるため、本発明では、手数料計算用の新しい計算装置6を開発・導入する。こうすることにより、図3の業者5は、遊技場の売上に応じた逓減手数料を簡単に計算することが可能となり、円滑な日々の取引が可能となる。なお、計算装置6については後に詳述する。
計算装置、計算方法、および計算プログラムについて説明する。
計算装置6のハードウェア構成について説明する。計算装置6は、装置本体10と、表示装置11と、入力装置12と、印刷装置22を有する。表示装置11は、例えば、液晶ディスプレイやCRTディスプレイ等の画像を表示する装置である。入力装置12は、例えば、マウス、キーボード等の計算装置6のオペレータからの入力を受け付けるための装置である。また、印刷装置22は、ドットインパクト・プリンター、インクジェット・プリンター、レーザー・プリンターなどである。
装置本体10において、CPU(Central Processing Unit)13と、ROM(Read Only Memory)14と、RAM(Random Access Memory)15と、ハードディスクドライブ16と、表示処理部17と、入力インターフェイス18と、コンボドライブ19と、外部インターフェイス20とがバス21を介して接続されている
ROM14は、ブートプログラムやバイオス等の基本プログラムを記憶する。RAM15は、プログラムやデータを記憶する領域として、或いは、CPU13による処理に使用しているデータを格納する作業領域として利用される。ハードディスクドライブ16は、OS(オペレーティングシステム)や、各種プログラムや、各種データベースを読み出し可能に記憶する。本実施形態では、ハードディスクドライブ16は、逓減曲線にもとづく手数料計算用のプログラム、業者や賞品に関するマスタデータ、日々の取引データなどを記憶する。
入力インターフェイス18は、入力装置12と接続可能であり、入力装置12からの信号をデータとして、CPU13、RAM15に渡す。コンボドライブ19は、複数種類の記録媒体からのデータ、プログラムの読み込み、記録媒体へのデータ等の書き込みを行う。記録媒体としては、例えば、CD−ROM、DVD−ROM、DVD−RAM等がある。外部インターフェイス20は、外部の装置とのデータのやりとりの仲介を行い、本実施形態では、伝票などの印刷装置22へ印刷データを送信する際に用いられる。
CPU13は、ROM14の基本プログラムやハードディスクドライブ16に格納されているOSやプログラムをRAM15に読み出して実行することにより各種処理を実行する。また、CPU13は、各部14〜22の動作を制御する。本実施形態では、CPU13が、ハードディスクドライブ16に格納されたOSおよび手数料計算プログラムを実行することにより、各処理部が構成される。
CPU13は、受付部10a、発注金額計算部10b、および手数料計算部10cを有する。
受付部10aは、本装置の利用者による、入力装置12を使った操作に応じた各種の指示を受け付ける。後述するように、本実施形態では、各遊技場の、人気商品の注文データの受付や帳票印刷の指示などを行う。
発注金額計算部10bは、受付部10aから受け取った各遊技場の、人気商品の注文データをもとに、各遊技場の、その日の発注金額を計算する。
手数料計算部10cは、発注金額計算部10bが計算した発注金額をもとに、逓減曲線を利用して、各遊技場の、その日の取引における手数料金額の計算を実施する。
計算プログラムおよび計算方法の一例について、図5を用いながら説明する。図5のフローチャートは、業者5が遊技場1との取引の際に利用する、手数料計算プログラムに関するものである。業者5と遊技場1との取引においては、通常、人気商品の種別ごとに、ケース単位での取引が実施される。通常、1ケースは人気商品100枚に対応する。
図5において、「各遊技場用の、人気商品の注文データを入力」S1について説明する。この計算プログラムに対しては、その日において、各遊技場から発注された人気商品の種別と数量をケース単位で入力する。具体的には、日時、遊技場名、人気商品の種別、人気商品のケース数を入力する。
入力装置12から入力されたデータは、受付部10aによって受け付けられ、RAM15上に一時的に蓄えられる。
表示装置11には、それぞれの入力項目の名称(「日時」、「遊技場名」、「人気商品の種別」、「人気商品のケース数」)と、それぞれの具体的な内容を入力するための入力欄が表示される。なお、入力方式としては、下記の2つが考えられる。
<方式1>:あらかじめ、データベースに登録された入力候補の一覧を表示し、その中から、利用者が該当する候補を選択する方法。
<方式2>:事前に入力候補を表示せず、利用者が、キーボードなどを操作して自由に入力を行う方法。
なお、本実施形態では、「日時」・「遊技場名」・「人気商品の種別」については、方式1を、「人気商品のケース数」については方式2を、それぞれ用いることを想定しているが、これに限るものではない。
「各遊技場からの、発注金額を計算」S2について説明する。発注金額は商品単位の金額と商品の数量から計算することができる。ここでは、マスタテーブルと照らし合わせ、各遊技場から発注された人気商品の発注金額(日販金額)を、人気商品の額面金額を用いて計算する。ここで、マスタテーブルとは、データベース内のテーブルの一種であり、あらかじめ、事前に定義された入力候補などに関するデータが格納される。たとえば、本実施形態においては、「遊技場名」・「人気商品の種別」・「人気商品の、各種別の金額」・「1ケースあたりの景品枚数」などは、マスタテーブルへ格納する。
RAM15上に蓄えられた入力データのうち、「人気商品の種別」をもとに、RAM15上のプログラムが、ハードディスクドライブ16に格納されたデータベースを検索する。プログラムは、「人気商品の、当該種別の金額」を見つけ出し、これをRAM15上へ一時的に格納する。そして、RAM15上のプログラムに内包される後述の計算式によって、発注金額が計算される。計算された発注金額は、一時的にRAM15上へ格納される。
遊技場からの発注金額(日販金額)の計算式は下記の通りである。
(遊技場からの発注金額(日販金額))=
Σ(人気商品の額面金額)×(その遊技場から発注されたケース数)×(1ケースあたりの景品枚数)
ただし、この総和記号Σは、人気商品のすべての種別に関する総和をあらわす。このように、商品単位の金額が異なる商品を取り扱うことができる。なお、1ケースあたりの景品枚数は通常100枚であるが、イレギュラーな取引形態として、ケース単位ではなく、バラバラの景品が1枚単位で売買されることがある。このような取引への対応策としては、たとえば、ケース数を整数値に制限せず、小数点値にも対応できるようなプログラム仕様が考えられる。例えば、1ケースあたりの景品枚数が100枚の場合、ケース数として、「0.01」を指定すれば、「1枚」だけの取引の際にも計算をおこなうことが可能となる。
「逓減曲線にもとづき、発注金額から、手数料を計算」S3について説明する。ここでは、各遊技場の発注金額(日販金額)から、各遊技場1が業者5へ支払うべき手数料を計算する。各遊技場1の発注金額(日販金額)が決まれば、これをもとに、手数料を計算することが可能である。
比較のため、従来の商品の取引方法での手数料計算式を以下に示す。
(遊技場の手数料)=(遊技場からの発注金額(日販金額))×R/(100+R)
ここで、Rは、図2であらわれた、人気商品100円あたりの手数料であり、発注金額によらず一定である。この式では、日販金額に線形に比例して、手数料が大きくなってしまう。
これに対し、本発明の商品の取引方法では、発注金額により負担率を計算し、前記負担率を用いて手数料を計算することができる。
最初に、手数料の負担率Xを逓減曲線から導く方法について説明する。あらかじめ定義された逓減曲線を用い、遊技場の日販金額から対応する手数料の負担率をまず計算する。人気商品は日々取引されているが、具体的な、手数料の逓減方法の例を示す。図6には、業者5の手数料に関する逓減曲線が示されている。この図の横軸には、人気商品の遊技場からの発注金額(日販金額)が、縦軸には、人気商品 100円あたりの手数料(手数料の負担率)が記されている。
従来の商品の取引方法では、業者5の手数料の負担率は、遊技場1の日販金額によらず定率である。話を具体化するため、 人気商品100円につき、日販金額に一切関係なく、いつでも90銭という一定の負担率に固定されているものと仮定する。
逓減曲線を用いた、本発明の商品の取引方法においては、この90銭という一定の負担率を、図6のように逓減させる。逓減曲線にはさまざまな形のものが考えられるが、この例では、日販金額が250万円の場合に手数料が87銭程度、600万の場合には85銭程度、1000万円では80銭程度といった具合に徐々に手数料が減少していき、トップクラスの遊技場に対応する日販金額2000万円では、57銭近くにまで手数料が大きく逓減されている。このように、手数料の負担率は発注金額の増加に伴い逓減させることができる。
なお、図6で示された逓減曲線はあくまで一つの事例に過ぎず、他にも様々な形状の逓減曲線が考えられる。
また、逓減曲線の定義法は、下記のような2つの方法が考えられる。
<逓減曲線の定義方法1:計算式としての定義>
仮に、逓減曲線が厳密な計算式として定義されている場合には、これにもとづき、計算プログラムは手数料の負担率や手数料金額を計算することになる。この場合、計算式は、データベースではなく、計算プログラム中のサブルーチンとして、プログラミングによって定義されるか、あるいは、プログラミングとデータの組み合わせによって定義される。前者においては、たとえば、高次多項式・指数関数・対数関数・ガウス曲線・その他の関数などを複数個重ね合わせ、重ねあわせのパラメータを調整しながら滑らかな逓減曲線を構成することが可能である。また、場合によっては、フーリエ基底やウェーブレット基底などの基底関数を流用し、それらの複数個の重ね合わせから新しい逓減曲線を構成することも可能である。このように逓減曲線のカーブをあらわす数式がプログラミングによって定義されている場合には、手数料の負担率は、入力された日販金額の値から、計算プログラムによって直接計算される。また、後者においては、たとえば、基本的な逓減曲線の関数形が固定され、運用に応じて、関数中のパラメータを変えながら逓減曲線の定義式を修正し、運用をおこなうようなケースに対応する。この場合、関数中のパラメータはデータベースに保存されるため、手数料の負担率は、プログラムとデータベースを併用することによって計算される。この方式のメリットは、必要に応じてデータベースのパラメータの値を変えることにより、プログラム本体を書き換えなくても、ある程度逓減曲線の修正が可能となる点にある。なお、逓減曲線は、市場の変化とともに、その形が変わっていくことが予想される。上記いずれの場合においても、計算プログラムの運用コストをさげるため、逓減曲線の定義プログラムを、手数料計算プログラムの本体と分離し、個別にメンテナンスできるような設計を行うことができる。
RAM15に格納された、各遊技場の「発注金額」にもとづき、RAM15上の「逓減曲線の計算プログラム(サブルーチン)」が、手数料の負担率Rを計算し、これをRAM15に一時的に格納する。
手数料負担率の計算結果は、遊技場ごとに、日販金額とともに、表示装置11上に表示される。
<逓減曲線の定義方法2:離散的なデータによる定義>
一方、逓減曲線を定義する際、0〜3000万円程度の範囲の日販金額に対し、10万円程度の金額刻みで、逐一、離散的に手数料の負担率、あるいは、手数料を定義する方法が考えられる。たとえば、「日販金額10万円の際の手数料は、人気商品100円あたり90銭」、「日販20万円の際の手数料は、人気商品100円あたり89.5銭」、‥‥、「日販100万円の際の手数料は、人気商品100円あたり89銭」、‥‥、「日販300万円の際の手数料は、人気商品100円あたり87銭」、‥‥、「日販1000万円の際の手数料は、人気商品100円あたり80銭」、‥‥といった具合である。図6の逓減曲線では、人気商品100円あたりの手数料に関し、その一階差分、あるいは、二階差分の値を日販金額10万円ごとに細かく調整し、滑らかな曲線を近似的に構成している。もちろん、さらに高次の差分を調整すれば、より滑らかな曲線を近似的に構成することも可能である。
このように、離散的なデータとして定義された逓減曲線は、今回作成する計算プログラムと接続されるハードディスクドライブ16内のデータベースに、あらかじめ格納しておくこととする。そして、日々の発注金額が確定された際には、これを上記定義の日販金額とみなし、計算プログラムは、このデータベースから該当する手数料数値を読み取るものとする。
なお、上記のように、10万円刻みで定義された場合、その刻みの中間に属する日販金額の値が与えられた場合には、適宜計算プログラムが補完計算を行い、手数料の負担率を算出するものとする。まず、与えられた遊技場の日販金額に近い2つの金額に対する手数料負担率X1,X2を、データベースからプログラムが探し出す。そして、適切な按分式(区間における比例按分など)によって、この2つの手数料負担率X1,X2を按分し、最終的な手数料負担率Xが求められる。たとえば、日販金額として105万円が与えられ、なおかつ、データベースには10万円刻みの定義しか保存されていない場合を考えよう。この場合には、データベース上の、日販金額100万円の際の手数料負担率と、日販金額110万円の際の手数料負担率から、線形補完によって日販金額105万円の際の手数料負担率を求めることが可能である。補完方法は線形に限らず、より高次の補完方法を用いて計算を行うよう、計算プログラムを設計・製作することも容易である。
RAM15に格納された、各遊技場の「発注金額(日販金額)」にもとづき、RAM15上のプログラムが、まず、ハードディスクドライブ16に格納されたデータベースを検索する。そして、データベースに格納された、当該「日販金額」に近い2つ、もしくは、それ以上の近似的な「日販金額」値に対する「手数料の負担率」を探し出し、これらを、RAM15に格納する。つぎに、RAM15上の「補完計算プログラム(サブルーチン)」が、RAM15上に呼び出された近似的な「日販金額」の値と「手数料の負担率」をもとに、正確な「日販金額」に対する「手数料の負担率」Xを、補完計算によって求める。この負担率Xは、RAM15上に格納される。
「手数料の負担率」の計算結果は、遊技場ごとに、日販金額とともに、表示装置11上に表示される。
なお、遊技場業界をとりまく市場の情勢は、昨今、きわめてその変化が激しいため、逓減曲線は一度策定してもそれが恒久的に有効だというわけではなく、その定期的な見直しと、修正作業は必須である。このような見直しに際しては、人気商品の取引対象となる遊技場群に対し、過去の取引実績から日販金額の分布をおおよそ把握した上、日販金額規模が大きい遊技場の負担率を適切に減少させるような運用が望ましいであろう。
つぎに、手数料の負担率Xから手数料金額を計算する方法について説明する。
(遊技場の手数料)=(遊技場からの発注金額(日販金額))×X/(100+X)
この式自体は、従来の商品の取引方法の計算式と類似しているが、Xが日販金額によって変化する点が異なっている。
RAM15上に格納された、各遊技場の手数料の負担率Xをもとに、前述の手数料計算式にもとづいた「手数料計算プログラム(サブルーチン)」が「手数料金額」を計算し、これをRAM15に一時的に格納する。
「手数料金額」の計算結果は、遊技場ごとに、日販金額や手数料の負担率とともに、表示装置11上に表示される。
このように逓減された手数料の負担率を、実際の取引の際に支払われる手数料金額に換算すると、図7のようなものになる。この図7では、横軸には人気商品の日販金額が、縦軸には日々の取引における手数料金額が記されている。日販金額が1000万円以下の場合には、ほぼ線形に手数料金額が上昇しているが、それより大きな日販金額においては手数料金額が大きなカーブを描いている。従来の商品の取引方法では、どんなに日販金額に大きくても、直線的に手数料金額が大きくなっているため、本発明の商品の取引方法では大幅に手数料が減額されていることが分かる。
図5において、「取引伝票を印刷」S4について説明する。このように計算された手数料金額をもとに、計算プログラムは納品書や伝票などの関係書類を印刷する。この納品書や伝票には、通常、「遊技場名」・「人気商品の種別」・「単価と手数料」・「数量」・「合計金額」などが記載される。プログラムはこれらの情報を、所定のレイアウトにそった帳票イメージに整形し、利用者からの指示にしたがって印刷する。これにより、業者5は、遊技場1との円滑な取引を実行することが可能となる。
RAM15上に格納された、各遊技場の「人気商品の種別」、「単価」、「手数料」、「数量」、「合計金額」を利用して、プログラムは、印刷装置用にデータを整形し、専用のイメージデータを生成する。利用者からの印刷指示があった場合、生成されたイメージデータは、RAM15から、バス21と外部インターフェイス20を介して、印刷装置22へ送信され、印刷が行われる。
表示装置11上には、「印刷」ボタンが表示される。これを、利用者は、マウスなどの入力装置12を用いて押下することにより、印刷の指示を出すことができる。印刷の指示が出された後、表示装置11上には、「伝票」あるいは「納品書」の印刷イメージと「OK」ボタン、「キャンセル」ボタンが表示される。利用者が、マウスなどの入力装置12を用いて「OK」ボタンを押下することにより、印刷装置22によって「伝票」あるいは「納品書」が印刷される。
「取引結果を、データベースに保存」S5について説明する。ここで、取引結果とは、当該業者のその日の取引内容に関するデータのことである。具体的には、「日時」・「遊技場名」・「人気商品の種別」・「人気商品の数量」・「人気商品の、種別ごとの合計金額」・「人気商品全種別の合計金額」・「手数料の負担率」・「手数料金額」などのことである。
RAM15上に格納された「日時」・「遊技場名」・「人気商品の種別」・「人気商品の数量」・「人気商品の、種別ごとの合計金額」・「人気商品全種別の合計金額」・「手数料負担率」・「手数料金額」などは、プログラムによって、ハードディスクドライブ16上のデータベースに書き込まれ、保存される。
最後に補足事項となるが、上記フローチャートにおいては、手数料の負担率を定義し、これをもとに、手数料の金額を計算している。その理由は、今回の発明におけるボリューム・ディスカウントの対象が手数料の負担率であることに起因しているが、計算プログラムの開発と実装方法は、これに限るものではない。たとえば、手数料の負担率に代わり、手数料の金額そのものを、上記のような<計算式としての定義>あるいは、<離散的なデータによる定義>によって定義し、そこから、「負担率」を逆算するような実装ももちろん可能である。この場合、「発注金額(日販金額)」から「手数料金額」をまず計算し、しかるのち、「手数料の負担率」を計算するような流れとなる。運用上、「手数料の負担率」よりも「手数料金額」そのものを用いたほうが、関係者間の調整がスムーズにいくようなケースにおいては、このような実装のほうが、長期的な運用は楽になる可能性がある。どちらの実装を選択するかは、長期的な逓減曲線の改修と運用の見込みなどを考慮し、ケースに応じて決めていけばよい。
さて、これまでの記述においては、逓減曲線を用いた新しい手数料金額の計算方法を、業者5と遊技場1の間の取引に対して適用する事例を用いてきた。一方、同様な考え方は、他の業者間の取引にも応用することが可能である。実際、取引量の増加に応じ、手数料の負担率をボリューム・ディスカウントするような考え方は、商取引上、それほど受け入れにくいものとは思われない。図3にあるように、業者3と業者4、業者4と業者5の間の取引においても、今回のような方式の取引を実施することは可能である。その際、手数料の負担率は、それぞれの業者間によって異なっていることが想定されるため、新方式の逓減曲線も、それぞれの業者間の取引に応じて別途作成する必要がある。ただし、どの取引においても、逓減曲線の定義と関連する計算プログラムの開発は、本発明をもとに遂行することが可能である。また、手数料の負担率等を計算するために、手数料計算用の本発明の計算装置を導入することが可能である。
なお、上記の一連の記述においては、3つの業者が登場する事例を用いているが、業者の数はこれに限るものではない。たとえば、より複雑な流通がおこなわれている場合、4つないしは、それ以上の業者が関与するケース、あるいは、よりシンプルに2つ以下の業者が関与するケースに対しても、本発明は適用可能である。
また、逓減曲線は、連続な形状に限るものではない。たとえば、区分連続的な、階段状の形などでもよい。逓減曲線は、あたえられた日販金額に対し、手数料の負担率、あるいは手数料金額を一意に定められるものであれば何でも良く、その形状を問わない。
以上のことから、本発明を実施するための形態によれば、遊技場業界の興隆に貢献している大規模遊技場に対し、人気商品の仕入れに関する手数料金額を軽減することができる。特に、トップクラスの店舗においては、従来の商品の取引方法における月間数百万円規模の負担額を、大幅に軽減することができる。本発明は、すでに厳しい市場環境におかれている遊技場の経営負担を軽減せしめ、継続的かつ健全な業界発展に大きく寄与することができる。
なお、本発明は上述の発明を実施するための形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
つぎに、商品の取引方法に用いられる商品及び商品読取装置について説明する。
商品は、商品読取装置により読取可能な所定の識別情報を格納した商品であって、前記商品は、重ね合わせ可能な形状の本体と、前記本体に内蔵され、前記識別情報を格納する記憶手段と、前記本体に内蔵され、前記商品読取装置から無線送信される所定の照合情報を無線受信する商品用受信手段と、前記本体に内蔵され、前記商品読取装置に前記識別情報を無線送信する商品用送信手段と、前記照合情報と前記識別情報とを比較して一致していると判断したときに前記識別情報を無線送信する商品用制御手段とを備えたものである。
商品読取装置は、商品に格納された所定の識別情報を読み取り可能な商品読取装置であって、前記商品読取装置は、前記商品を1又は2以上重ね合わせて搭載可能な商品搭載手段と、該商品搭載手段に搭載された1又は2枚以上の前記商品の高さを超音波により検出する超音波検出手段と、前記商品搭載手段に搭載された1又は2枚以上の前記商品に所定の照合情報を無線送信する装置用送信手段と、前記商品搭載手段に搭載された1又は2枚以上の前記商品から前記識別情報を無線受信する装置用受信手段と、前記超音波検出手段により検出した前記商品の高さから前記商品の枚数を求めると共に、前記装置用受信手段により無線受信した前記識別情報の受信カウント数から前記商品の枚数を求め、前記商品の高さから求めた前記商品の枚数と、前記受信カウント数から求めた前記商品の枚数とが一致するときは、次の処理を行う装置用制御手段とを備えたものである。
図8の遊技場1は、パチンコやスロットといった遊技機を取り揃えたパチンコホールを一例として挙げることができる。遊技客2とは、遊技場1でパチンコやスロットを用いた遊技を行う顧客の事である。遊技場1における遊技の終了時、遊技客2は、手元に残ったパチンコ玉やスロットのメダルを、その多寡に応じてさまざまな賞品と交換することが可能である。遊技場1から遊技客2へ賞品が渡されるため、この流れを図中の矢印によって示した。
賞品には、菓子、タバコ、CD、時計、宝飾品など様々な種類のものがあり、その中の1つとして、上述した一定商品が存在する。一定商品の例として、「人気商品」を挙げることができる。人気商品は、遊技場1から遊技客2へ渡される賞品の一種であり、通常の賞品とくらべると非常に流動性が高く、市中でも売買取引がおこなわれ、流通やリサイクル活動がおこなわれている。人気商品には、貴金属製の物品(メダル・ペン先・タイピン等)を挿入したカード型のものなど、種々の形状のものが存在するが、その取引額は挿入された貴金属製の物品の価値などに応じて変わり、例えば、「100円」,「500円」,「1,000円」,「5,000円」の4種がある。
市中に流通した人気商品は、遊技場とはまったく関係の無い、独立した第三者が経営するショップや流通業者によって取引が行われる。図9に、その一例を示す。図中の業者3とは、例えばショップであり、市中に流通した人気商品を売買する店舗のことである。業者4とは、例えば集荷業者であり、業者3から人気商品を買い取って集荷し、リサイクルを行う業者のことである。本図においては、話を簡単化するため、額面100円相当の人気商品の取引を図示している。業者3は人気商品を業者4へ売ることによって収益を得る。この例の業者3は、100円の人気商品に対してP円の手数料を上乗せし、(100+P)円で業者4へ売却している。換言すれば、業者3と業者4の間の取引価格は(100+P)円であり、前者から後者へと人気商品が流れ、逆向きにお金が流れる様子が図示されている。
また、図中の業者5とは、例えば配送業者であり、業者4から人気商品を買い取り、遊技場1へ配送する業者のことである。業者4は、業者3から買い取った人気商品を、業者5へ売ることによって収益を得る。この例では、業者4は、(100+P)円で買い取った人気商品に対し、(Q-P)円の手数料を上乗せし、(100+Q)円で売却している。換言すれば、業者4と業者5との間の取引価格は(100+Q)円であり、前者から後者へ人気商品が流れ、逆向きにお金が流れる様子が図示されている。
さて、業者5は、業者4から買い取った人気商品を、遊技場1へ売ることによって収益を得る。この例では、業者5は、(100+Q)円で買い取った人気商品に対し、(R-Q)円を上乗せし、(100+R)円で売却している。換言すれば、業者5と遊技場1の間の取引価格は(100+R)円であり、前者から後者へ人気商品が流れ、逆向きにお金が流れる様子が図示されている。
業者3、すなわちショップでは、遊技客2から持ち込まれた人気商品を売買することになるため、人気商品に格納された所定の識別情報を読み取り可能な商品読取装置が使用されることになる。なお、商品読取装置は、業者3のみならず、業者4、業者5、または遊技場1においても使用可能である。以下に図10から図12を参照して本実施形態の商品読取装置30及び人気商品40について説明する。
図10及び図12に示すように、本実施形態の商品読取装置30は、装置用制御部31、表示部32、操作部33、モデム34、メモリ35、プリンタ部36、装置用送受信部37、アンテナ板38aを有する商品搭載部38、超音波センサ部39等を備えている。
装置用制御部31では、予め格納されているプログラムにより、商品読取装置30全体の制御が行われる。
表示部32は、液晶ディスプレイ等からなり、この表示部32には、商品読取装置30における例えば、人気商品40の識別情報の処理内容や処理結果(換金金額等)等の所定の情報が文字、数字等で画面表示される。
操作部33は、読取開始用の開始スイッチ33a、読取終了用の終了スイッチ33b、読取取消用の取消スイッチ33c、テンキー33d等の入力キーを備え、この操作部33では、ユーザにより商品読取装置30の動作に必要となる各種の操作が行われる。
モデム34では、外部の装置、例えばホストコンピュータ等との通信が行われる。
メモリ35には、人気商品40にて所定の識別情報と対比、照合される所定の照合情報や二度読みデータ、例えば、二度読み件数(例えば、0〜5000枚)及び二度読み時間(例えば、0〜900秒)等が格納される。この照合情報としては、例えば、大分類データ(例えば、地域コード)、小分類データ(例えば、店番号)、金種データ(例えば、5000円、1000円、500円、100円等)等がある。
プリンタ部36は、熱転写プリンタ等からなり、このプリンタ部36では、商品読取装置30における例えば、人気商品40の識別情報の処理内容や処理結果(換金金額等)等の所定の情報が文字、数字等で紙印刷される。
装置用送受信部37では、商品搭載部38のアンテナ板38aを介して人気商品40との間で信号が無線で送受信される。
商品搭載部38には、人気商品40を1又は2枚以上積み重ねて搭載可能であり、搭載した人気商品40の背面側に人気商品40との間で信号を無線で送受信するアンテナ板38aが備えられている。このように商品搭載部38に搭載した人気商品40の背面側に全人気商品40に沿うようにアンテナ板38aを配置しているので、商品搭載部38に例えば30枚の人気商品40を積み重ねて搭載しても全人気商品40と同一の近距離で通信を確実に行うことができる。
なお、アンテナ板を大きくしたり、アンテナ板の個数を複数にすることにより、100枚以上の人気商品と通信可能になる。
超音波センサ部39は、商品搭載部38に搭載した人気商品40の上方に配置されており、超音波(例えば230KHz)を出射し反射してきた超音波を入射することができる。
図11に示すように、本実施形態の人気商品40は、プラスチック樹脂等で形成された重ね合わせ可能なカード形状をなす本体41を有しており、本体41内部には、RFID(Radio Frequency Identification)チップと送受信アンテナ等が樹脂やガラスで封止されたRFタグ42が埋め込まれている。ここで、RFタグ42は、無線通信により人気商品40の認証等を可能とするもので、商品読取装置30側と非接触型であるために接点等の磨耗の心配もなく、また電池が不要であるため常時使用可能となる。
図12に示すように、RFタグ42は、商品用制御部43、電源供給部44、メモリ45、商品用送受信部46、アンテナ47、LED(発光体)48等を備えている。
商品用制御部43では、予め格納されているプログラムにより、RFタグ42全体の制御が行われる。
電源供給部44は、RFタグ42の各部に電源を供給するものである。RFタグ42は、それ自体電源を持たないが、商品読取装置30との通信可能なエリア内に位置する場合に、商品読取装置30から電源供給部44に電源供給信号が与えられ、これによりRFタグ42の各部が制御される。
メモリ45は、例えば、EEPROM(電気的に書き換え可能なROM)からなり、このメモリ45には、所定の識別情報が格納されている。この識別情報としては、例えば、大分類データ(例えば、地域コード)、小分類データ(例えば、店番号)、金種データ(例えば、5000円、1000円、500円、100円等)、連番等がある。
商品用送受信部46では、アンテナ47を介して商品読取装置30との間で信号が無線で送受信される。
LED48は、図11に示すように、外部から視認可能なように本体41の平行な2つの側面の中央枠内に設けられている。本例ではLED48を1つの側面に1箇所設けたが、複数箇所設けてもよく、また、側面の中央枠内に設けたが、側面の左右どちらかにずれた位置の枠内に設けてもよく、また、LED以外の発光体であってもよい。このようにLED48を本体41の側面の枠内に設けているので、商品読取装置30の商品搭載部38に複数の人気商品40を重ね合わせたときでも相互の光干渉を防止することができる。すなわち、側面の枠内のみの発光なので上下面に光が漏れず、重なり合った人気商品40でも光干渉を防止できる。また、人気商品40をいずれの向きに重ね合わせても、各人気商品40のLED48を一直線状に揃えることができ、LED48の状態を迅速かつ明確に識別できる。
次に、以上のような構成からなる本実施形態の商品読取装置30及び人気所品40の動作について図13及び図14のフローチャートを参照して説明する。先ず、図13に示すように、商品読取装置30の超音波センサ部39に対するティーチング処理を行う。すなわち、ユーザにより開始スイッチ33aが押されると、装置用制御部31は、超音波センサ部39から超音波を出射させる。この超音波は、人気商品40が搭載されていない商品搭載部38の底面で反射されて超音波センサ部39に入射する。これにより、人気商品40の搭載枚数が0枚のときの超音波センサ部39から商品搭載部38の底面までの距離Doを計測することができ、装置用制御部31は、該計測距離Doをメモリ35へ記録する(ステップS1,S2)。
そして、ユーザによりX枚の人気商品40が商品搭載部38に搭載され、開始スイッチ33aが押されると、装置用制御部31は、超音波センサ部39から超音波を出射させる。この超音波は、商品搭載部38に搭載された最上部の人気商品40で反射されて超音波センサ部39に入射する。これにより、人気商品40の搭載枚数がX枚のときの超音波センサ部39から最上部の人気商品40までの距離Dxを計測することができ、装置用制御部31は、該計測距離Dxをメモリ35へ記録する(ステップS3,S4)。
そして、装置用制御部31は、メモリ35から計測距離Doと計測距離Dxとを読み出し、計測距離Doと計測距離Dxとを減算して枚数Xにより徐算することにより、1枚の人気商品40の高さ(厚さ)tを求めてメモリ35へ記録する(ステップS5)。以上によりティーチング処理が完了する。なお、このティーチング処理は、商品読取装置30を最初に使用するとき、人気商品40の厚さが変わったときなど、必要に応じていつでも行うことができる。
次に、図14に示すように、商品読取装置30の読取処理を行う。すなわち、ユーザにより任意枚数の人気商品40が商品搭載部38に搭載され、開始スイッチ33aが押されると、装置用制御部31は、超音波センサ部39により最上部の人気商品40までの距離Dmを計測させる(ステップS11)。なお、この距離Dmの計測時には、コールドスタート時における超音波センサ部39の出力電圧の補正をするとともに、超音波センサ部39近くの温度を測定して超音波の音速の補正をすることにより、距離Dmに対し補正演算を行う。そして、装置用制御部31は、メモリ35から計測距離Doと人気商品40の高さtを読み出し、計測距離Doと計測距離Dmとを減算して人気商品40の高さtにより徐算することにより、人気商品40の枚数Mを求めてメモリ35へ記録する(ステップS12)。そして、装置用制御部31は、メモリ35から各人気商品40の照合情報のうち大分類データを読み出し、装置用送受信部37を介して各人気商品40に大分類データを無線送信する。
人気商品40において商品用制御部43は、メモリ45から識別情報のうち大分類データを読み出し、商品用送受信部46を介して無線受信した大分類データと、メモリ45から読み出した大分類データとを比較、照合して一致しているか否かを判断する。そして、商品用制御部43は、大分類データが一致していると判断したときは、商品読取装置30に識別情報のうち小分類データ及び金種データを無線送信すると共にLED48を点灯させる(ステップS13)。このように、商品読取装置30にて所定の照合情報を人気商品40に無線送信する1回の動作のみで、全ての人気商品40にて自己判断により所定の識別情報を商品読取装置30に無線送信する。よって、人気商品40に掛かる読取時間を大幅に短縮させることができる。
なお、装置用制御部31は各人気商品40に大分類データを無線送信し、人気商品40は無線受信した大分類データと、メモリ45から読み出した大分類データとを比較、照合することを説明したが、データは大分類データに限定されるものではなく、他のデータを含めてもよいことはもちろんである。場合によっては、人気商品40の良否判定にかかわるすべての情報(大分類データ、小分類データなど)を、商品読取装置30から人気商品40へ無線送信し、これらをすべて商品用制御部43で自己判断させるような方式も可能である。
装置用制御部31は、装置用送受信部37を介して無線受信した小分類データ及び金種データの受信カウント数から人気商品40の枚数Nを求めてメモリ35へ記録する(ステップS14)。そして、装置用制御部31は、各人気商品40が正常であるか否か判断する。すなわち、メモリ35から小分類データ、金種データ及び二度読みデータを読み出し、装置用送受信部37を介して無線受信した小分類データと、メモリ35から読み出した小分類データとを比較、照合して一致しているか否かを判断する(ステップS15)。装置用制御部31は、小分類データが一致していないときは、該当する人気商品40のLED48を消灯させる信号を装置用送受信部37を介して該当する人気商品40に無線送信すると共に、小分類データエラーとして表示部32にその旨を表示する(ステップS16)。人気商品40において商品用制御部43は、商品用送受信部46を介してLED48を消灯させる信号を無線受信したら、点灯しているLED48を消灯する。このときはユーザにより取消スイッチ33cが押され、LED48が点灯していない人気商品40が商品搭載部38から取り出され、開始スイッチ33aが再度押されて上述の処理が行われる。
装置用制御部31は、小分類データが一致しているときは、装置用送受信部37を介して無線受信した金種データと、メモリ35から読み出した金種データとを比較、照合して、無線受信した金種データがメモリ35から読み出した金種データのいずれかと一致しているか否かを判断する(ステップS15)。装置用制御部31は、金種データが一致していないときは、該当する人気商品40のLED48を消灯させる信号を装置用送受信部37を介して該当する人気商品40に無線送信すると共に、金種データエラーとして表示部32にその旨を表示する(ステップS16)。人気商品40において商品用制御部43は、商品用送受信部46を介してLED48を消灯させる信号を無線受信したら、点灯しているLED48を消灯する。このときはユーザにより取消スイッチ33cが押され、LED48が点灯していない人気商品40が商品搭載部38から取り出され、開始スイッチ33aが再度押されて上述の処理が行われる。
装置用制御部31は、金種データが一致しているときは、メモリ35から読み出した二度読みデータに基づいて、人気商品40が二度読み商品であるか否かを判断する。具体的には、該人気商品40が、二度読み件数と二度読み時間内に買取されていたときは二度読み商品であると判断する(ステップS15)。そして、装置用制御部31は、該当する人気商品40のLED48を消灯させる信号を装置用送受信部37を介して該当する人気商品40に無線送信すると共に、二度読みデータエラーとして表示部32にその旨を表示する(ステップS16)。人気商品40において商品用制御部43は、商品用送受信部46を介してLED48を消灯させる信号を無線受信したら、点灯しているLED48を消灯する。このときはユーザにより取消スイッチ33cが押され、LED48が点灯していない人気商品40が商品搭載部38から取り出され、開始スイッチ33aが再度押されて上述の処理が行われる。なお、過去に読み取った人気商品40のデータは全てメモリ35に記録されている。
二度読み件数及び二度読み時間を設定することにより、正常なサイクルで業者間を経由してきた人気商品を二度読みと判断してしまうことを防止できる等、状況に応じて二度読み判断の過誤を防止できる。また、二度読み件数を0枚、二度読み時間を0秒と設定することにより二度読みチェック機能を無効とすることができる。また、小分類チェック及び二度読みチェックは省略してもよい。
装置用制御部31は、人気商品40が二度読み商品でないときは、人気商品40の高さtから求めた人気商品40の枚数Mと受信カウント数から求めた人気商品40の枚数Nとをメモリ45から読み出して両者が一致しているか否かを判断し(ステップS17)、枚数M,Nが一致していないときは枚数エラーとして表示部32にその旨を表示する(ステップS18)。このときはユーザにより取消スイッチ33cが押され、LED48が点灯していない人気商品40が商品搭載部38から取り出され、開始スイッチ33aが再度押されて上述の処理が行われる。複数の人気商品40を重ね合わせたときでも相互の光干渉を防止することができるので、LED48が点灯しているか消灯しているかを確実に視認することができる。よって、LED48が点灯していない人気商品40のみをユーザは確実に視認して取り除くことができる。
一方、枚数M,Nが一致したときは次の処理として表示部32に人気商品40の高さtから求めた人気商品40の枚数Mと受信カウント数から求めた人気商品40の枚数Nを表示部32に表示すると共に、金種毎の枚数や合計金額等を表示部32に表示する(ステップS19)。そして、ユーザにより人気商品40が商品搭載部38から取り出され、読取処理を続行するときは開始スイッチ33aが再度押されるのでステップS11に戻って上述の処理を繰り返し、読取処理を取り消すときは取消スイッチ33cが押され、読取処理を終了するときは終了スイッチ33bが押されるので表示部32に読み取った全人気商品40の枚数を表示してメモリ35へ記録し(ステップS20,S21)、読取処理を終了する。そして、ユーザは、表示部32の表示結果に基づいて換金処理等を行う。
以上のように、超音波と信号により人気商品40の枚数をダブルチェックしてそれらの枚数が一致するときのみ識別情報を読み取って処理している。よって、全ての人気商品40を確実に処理することができる。また、商品搭載部38の背面に1枚毎の人気商品40の高さ(厚さ)をスケール表示すると共に数字表示しておくことにより、人気商品40の枚数をトリプルチェックすることができ、全ての人気商品40をさらに確実に処理することができる。なお、商品枚数の計測には、超音波だけでなく、レーザー等を利用する距離測定装置を用いてもよい。
人気商品に掛かる読取時間について、本発明の方法と従来の方法を比較した。
本発明の方法は、上述したとおりである。すなわち、装置用制御部31は、メモリ35から各人気商品40の照合情報のうち大分類データを読み出し、装置用送受信部37を介して各人気商品40に大分類データを無線送信する。人気商品40において商品用制御部43は、メモリ45から識別情報のうち大分類データを読み出し、商品用送受信部46を介して無線受信した大分類データと、メモリ45から読み出した大分類データとを比較、照合して一致しているか否かを判断する。そして、商品用制御部43は、大分類データが一致していると判断したときは、LED48を点灯させる。
従来の方法としては次のようにした。すなわち、個々の人気商品40の商品用制御部43は、メモリ45から各人気商品40の識別情報のうち大分類データを読み出し、商品用送受信部46を介して商品読取装置30に大分類データを無線送信する。商品読取装置30において装置用制御部31は、メモリ35から照合情報のうち大分類データを読み出し、装置用送受信部37を介して無線受信した大分類データと、メモリ35から読み出した大分類データとを比較、照合して一致しているか否かを判断する。そして、装置用制御部31は、大分類データが一致していると判断したときは、該当する人気商品40のLED48を点灯させる信号を装置用送受信部37を介して該当する人気商品40に無線送信する。人気商品40において商品用制御部43は、商品用送受信部46を介してLED48を点灯させる信号を無線受信したら、LED48を点灯する。
この従来の方法による人気商品に掛かる読取時間を、本発明の方法による人気商品に掛かる読取時間を比較すると、従来の方法では1枚の人気商品に対して約0.2秒かかるのに対して、本発明の方法では約0.1秒であった。このように、従来の方法に比較して本発明の方法では、人気商品に掛かる読取時間を大幅に短縮することができる。
同一の業者が前述した商品及び商品読取装置、ならびに、前述した計算装置を併用する場合、下記のような効果が得られる。いま、仮に、ショップが商品読取装置と、計算装置とを併用するケースを考えよう。現在の営業形態では、ホールの閉店時間は23時ごろの場合が多いが、これに呼応して、ショップも23時ごろまで営業を行うケースが多い。したがって、ショップの商品の最終集荷も23時以降の遅い時間帯に行われるケースがままある。一方、前述のように、商品には何らかの貴金属製品が埋め込まれており、それ自体の商品価値が相応に高い。よって、安全性の観点からは、閉店後の商品の運送作業は、すこしでも迅速に行われることがのぞましい。さて、ショップへの商品読取機の導入により、商品の真贋チェック、枚数チェックが自動化される。また、これによって、日々の総読取枚数もリアルタイムで集計されていくため、ショップの閉店作業も効率化され、スムーズな閉店が可能となる。加えて、商品読取装置による集計結果を、計算装置に転送することにより、閉店後の最終集荷の際、集荷業者に渡す伝票の発行もスムーズにおこなわれることになる。このように、ショップにおける閉店時の業務の効率化と、それにともなう安全性の確保が可能となることが、本発明における商品読取装置と計算装置を併用した場合の効果の一例である。
前述のショップだけでなく、他の業者、例えば集荷業者や配送業者が前述した商品及び商品読取装置、ならびに、前述した計算装置を併用する場合も同様な効果が得られる。すなわち、商品読取機の導入により、商品の真贋チェック、枚数チェックが自動化され、また、これによって、日々の総読取枚数もリアルタイムで集計されていくため、作業が効率化される。加えて、商品読取装置による集計結果を、計算装置に転送することにより、配送業者やホールに渡す伝票の発行もスムーズにおこなわれることになる。このように、集荷業者や配送業者の業務の効率化と、それにともなう安全性の確保が可能となる。
なお、商品読取装置による集計結果を計算装置に転送する方法は、無線または有線いずれでもよい。また、商品読取装置と計算装置を一つの装置として一体化してもよい。
また、ある業者が商品読取装置を、別の業者が計算装置を使う場合については、下記のような効果が得られる。いま、集荷業者から、配送業者が商品を仕入れるケースを考えよう。通常、配送業者は、一日に一回、集荷業者から商品を仕入れ、これをホールへ配送している。ただし、時折、ホールにおける商品の在庫が不足し、一日に二回、配送を行う必要が生じるケースがある。通常、配送業者は、必要最低限の商品のみを集荷業者から仕入れるため、このようなイレギュラー・ケースの場合、配送業者は、集荷業者から再度、商品を仕入れる必要が生じる。また、このようなイレギュラー・ケースにおいては、ホールへなるべく迅速に商品を卸す必要性をともなうことが多い。さて、逓減曲線にもとづく新しい手数料方式が導入された場合、もしも、計算装置や読取装置が導入されなければ、下記のような必要性から、オペレーションのコストが かなり高くなってしまう。すなわち、商品を卸す集荷業者においては、人手によって、逓減曲線に応じた手数料を計算し、伝票を発行する必要がある。また、商品を仕入れる配送業者においては、商品の受け入れ時、人手によって商品のチェックを行う必要がある。
よって、前述のようなイレギュラー・ケースの場合などにおいて、迅速な商品配送が困難になる可能性がある。これに対し、仮に、集荷業者が計算装置を、配送業者が読み取り装置をそれぞれ導入するケースを考えよう。集荷業者は、計算装置を用いることにより、スムーズな伝票発行が可能となる。また、配送業者は集荷業者から仕入れる商品の受け入れ時、伝票に記載された内容と、入荷した商品に差異がないかどうか、チェックを行うことが容易になる。結果として、両装置の導入により、ホールへの、より迅速な商品の配達が可能となる。また、同時に、業務の効率化が行われることになり、各業者の余剰人員のカットが可能となる。これが、計算装置と商品読取装置の、別々の業者への導入効果の一例である。以上のような効果によって、ホールの遊技客へ景品を迅速に届けることが可能となり、また、効率化によって浮かせた人件費を、周辺設備の充実などに転用することも可能となるため、最終的には、遊技客の満足度向上やホール業界の顧客増加へと、本発明が寄与するであろうことが期待される。
集荷業者から配送業者が商品を仕入れるケースだけでなく、他のケース、例えばショップから集荷業者が商品を仕入れるケース、または、配送業者からホールが商品を仕入れるケースにおいて、ショップ(または配送業者)が計算装置を導入し、集荷業者(またはホール)が商品読取装置を導入する場合も同様な効果が得られる。すなわち、ショップ(または配送業者)は、計算装置を用いることにより、スムーズな伝票発行が可能となる。また、集荷業者(またはホール)はショップ(または配送業者)から仕入れる商品の受け入れ時、伝票に記載された内容と、入荷した商品に差異がないかどうか、チェックを行うことが容易になる。結果として、両装置の導入により、より迅速な商品の流通が可能となる。また、同時に、業務の効率化を図ることができる。
なお、本発明は上述の発明を実施するための形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
つぎに、商品読取装置に用いられる距離測定装置について説明する。
距離測定装置は、コールドスタート時に1次遅れを有し、対象物までの距離を測定し、測定値を出力する超音波センサと、前記超音波センサの1次遅れを補正するためのステップ応答における過渡値を出力する補正手段と、前記超音波センサからの測定値と、前記補正手段からの過渡値とから補正値を算出し、該測定値に該補正値を加算して、補正測定値を出力する演算手段とを備えるものである。
以下、距離測定装置の一実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図15は、距離測定装置の具体的な構成を示すブロック図である。
距離測定装置50は、例えば図15に示すように超音波検出手段からなり、対象物51までの距離Lを計測あるいは測定し、測定値をアナログの電圧V1として出力する超音波センサ60と、超音波センサ60の1次遅れを補正するためのアナログの電圧V2を出力する補正回路70と、超音波センサ60からの電圧V1及び補正回路70からの電圧V2が供給され、補正値Cを算出して、合成電圧を出力するマイクロコンピュータ(以下、マイコンという。)80とを備える。
超音波センサは、その用途に応じて様々な種類のものがあり、距離測定装置50で用いられる超音波センサ60は、例えば、送波器及び受波器として圧電セラミックを用いたものである。そして、超音波センサ60は、空気を媒体として、超音波の発信から受信までに要した時間と音速により、距離Lに応じたアナログの電圧V1を出力する。具体的には、超音波センサ60は、例えば図16に示すように、最大検出距離Lmax及び最小検出距離Lmin(すなわち不感帯)を調整することができ、不感帯が100mmである。そして、超音波センサ60は、所謂エージングの後には、最小検出距離Lmin〜最大検出距離Lmaxの範囲内で、距離Lに比例した電圧V1を出力する。
一方、長時間の電源オフから電源をオンにする所謂コールドスタート時には、超音波センサ60は、例えば図17に示すように、測定距離Lに対する正常な電圧を出力するまでに約15分かかる。図17のコールドスタート特性は、対象物までの距離Lを固定して測定した出力電圧V1を示している。このように、本発明の一実施の形態で用いた超音波センサ60は、例えば1次遅れを有し、その出力電圧V1は、所謂CR回路のステップ応答に近似することができ、所定の初期電圧Viから開始し、定常状態に向かって単調に増加する。したがって、この超音波センサ60を用いた距離測定装置50では、コールドスタート時の測定誤差を補正するために、図18に示すように、超音波センサ60の出力電圧V1に、後述する補正回路70で発生したCR回路のステップ応答における過渡応答の値(以下、過渡値という。)を有する電圧V2を合成する。実際には、後述する定常状態の値(以下、定常値という。)から過渡値を減算し、この減算結果に係数を乗算して、出力電圧V1に加算する。なお、超音波センサの種類によって、初期電圧Vi及びステップ応答の時定数(T=RC)は異なることは、言うまでもない。
超音波センサ60の出力電圧(アナログ電圧)V1は、マイコン80に供給される。マイコン80は、少なくとも2つのアナログ/デジタル変換器(以下、A/D変換器という。)、少なくとも1つのD/A変換器、メモリ等を内蔵しており、超音波センサ60からの電圧V1をデジタル信号に変換する。ここで、マイコン80に内蔵されたA/D変換器によって変換された後のコールドスタート特性の実測値を、距離Lを変えて測定した結果を図19に示す。この図19に示すように、約15分経過した後の定常状態の値(定常値)が1000となる長い距離Llにおいては、電源をオンしたときの初期値が974であり、約7〜8分経過したときの過渡値が987であった。一方、約15分経過した後の定常値が124となる短い距離Lsにおいては、電源をオンしたときの初期値が111であり、約7〜8分経過したときの過渡値が118であった。
このように、コールドスタートの場合、長い距離Llにおいては、電源オン時の測定誤差が26(=1000-974)であり、約7〜8分経過後の測定誤差が13(=1000-987)でる。一方、短い距離Lsでは電源オン時の測定誤差が13(=124-111)であり、約7〜8分経過後の測定誤差が6(=124-118)である。更に、距離Lを様々に変化させて、測定誤差を測定した結果、電源を投入してから同じ経過時間においては、測定誤差は、測定距離L、すなわち超音波センサ60の出力電圧V1の1次関数で表されることが分かった。
そこで、本発明を適用した距離測定装置50では、以下に示す式(2)により、補正値Cを求め、
C=((V1/2048)+0.5)×(512−V2)/A・・・(2)
この補正値Cを、測定された電圧V1に加算する。ここで、超音波センサ60からの電圧V1は、例えば0〜1024(A/D変換後)であり、補正回路70からの電圧V2は、例えば0〜512であり、係数Aは、例えば20である。したがって、((V1/2048)+0.5)は、上述した1次関数に対応した項であり、(512-V2)/Aは、上述した定常値から過渡値を減算し、係数を乗算した項に対応するものである。
次に、補正回路70の具体的な構成について説明する。補正回路70は、図15に示すように、第1の端子が接地されたコンデンサ71と、電源とコンデンサ71の第2の端子間に挿入され、第1のダイオード72と直列に接続された第1の抵抗73と、コンデンサ71の第2の端子とアース間に挿入され、第2のダイオード74と直列に接続された第2の抵抗75と、コンデンサ71の第2の端子が非反転端子に接続された演算増幅器76とを備える。また、演算増幅器76の反転端子には、その出力が供給され、全負帰還がかかっている。
そして、距離測定装置50の電源がオンにされると、コンデンサ71(その容量をCとする)には、電源から第1のダイオード72を介して、第1の抵抗73(その抵抗値をR1とする)により電荷の充電が開始され、演算増幅器76は、時定数がCR1のステップ応答電圧、例えば図20に示すように、初期値が0(A/D変換後)であり、定常値が512であり、それらの間の過渡応答が、指数関数的に増加する電圧V2を出力する。一方、電源をオンにしてから十分な時間、すなわち、コールドスタートが完了し、超音波センサ60及びその測定環境の温度が上昇して安定し、正しい測定電圧V1が得られる状態において、電源をオフにすると、コンデンサ71の充電電荷は、第2のダイオード74を介して、第2の抵抗75(その抵抗値をR2とする)により放電され、演算増幅器76は、時定数がCR2のステップ応答電圧、例えば図21に示すように、初期値が512であり、定常値が0であり、それらの間の過渡応答が、指数関数的に減少する電圧V2を出力する。そして、補正回路70は、以上のようにして発生した電圧V2をマイコン80に出力する。なお、補正回路70は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の他の実施の形態として、例えばマイコン80のA/D変換器の入力インピーダンスが十分に高い場合には、演算増幅器76は設けなくてもよい。
マイコン80は、その内部又は外部にROMを備え、ROMには、上述の式(2)に示す演算を実行するためのプログラムが記憶されている。そして、マイコン80は、超音波センサ60からの電圧V1と、補正回路70からの電圧V2とを、それぞれ内蔵のA/D変換によってデジタル信号に変換した後、式(2)に示す演算を行い、補正値Cを生成する。そして、マイコン80は、この補正値Cを電圧V1に加算した後、内蔵のD/A変換器によって、アナログ信号に変換し、補正後のアナログ電圧(以下、補正電圧という。)V1として出力する。
このように、本発明を適用した距離測定装置50では、超音波センサ60のコールドスタート特性に合わせて、補正値Cを算出することができ、例えば下記表1に示すように、長い距離Llの場合、補正電圧V1として、電源オン時に998.4(=974(補正前V1)+24.4(補正値C))を出力し、約7〜8分経過後に999.6(=987+12.6)を出力し、約15分経過した後の定常状態において1000.6(=1000+0.6)を出力することができる。また、短い距離Lsの場合、補正電圧V1として、電源オン時に124.9(=111+13.9)を出力し、約7〜8分経過後に125.1(=118+7.1)を出力し、約15分経過した後の定常状態において124.3(=124+0.3)を出力することができる。換言すると、距離測定装置50では、長い距離Llにおいても、短い距離Lsにおいても、更にはそれらの間の距離においても、電源をオンにしてから後の全ての時間において、すなわちコールドスタートの直後から、定常状態に近い補正電圧V1を出力することができる。
また、上述したように、補正回路70に、第2のダイオード74と第2の抵抗75からなる放電回路を設けることにより、例えば、電源をオフにしてから、5分後又は10分後に再び電源をオンにした場合、すなわち、超音波センサ60が完全に冷え切る前に電源をオンにした場合、補正回路70は、コンデンサ71が完全に放電されていない状態から、再び充電を開始する。この結果、補正回路70は、電源をオフにしていた時間に対応した、すなわちオフにしていた時間分放電され、そこから充電が開始されたときの電圧V2を出力することができる。換言すると、この距離測定装置50では、コールドスタートのみだけではなく、例えば電源を短い時間にオフしてから(例えば15分以内に)電源を再びオンにしたり、コールドスタートを短い時間中断して、再び開始したときにも、定常状態に近い補正電圧V1を出力することができる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他の実施の形態として、マイコン80は、アナログの電圧V2に代えてあるいは追加して、デジタルの電圧V2を他の装置に出力し、又は表示器に出力して表示するようにしてもよい。
また、例えば測定台52の上に置いた板状の製品の枚数を計測する本発明の更なる他の実施の形態では、マイコン80に製品1枚の厚さtを予め記憶あるいは登録しておくとともに、図15に示す対象物51が測定台52上にない状態における測定台52までの距離L0を測定し、その値も登録しておく。そして、対象物51として、ある個数の製品を積み重ねて測定台52の上に置き、その最上段の表面までの距離Lxを測定し、マイコン80によって、製品の個数Xを、下記式(3)によって、算出するようにしてもよい。
X=(L0−Lx)/t・・・(3)
また、本発明の更なる他の実施の形態において、測定台52の近傍の温度を温度センサで測定して、マイコン80に取り込み、測定環境の温度の変化に基づく音速を、上述した式(1)によって求め、測定精度を高めるようにしてもよい。
また、本発明の他の実施の形態として、超音波センサ60からのアナログ電圧V1及び補正回路70からのアナログ電圧V2をデジタル信号に変換するA/D変換器は、上述した実施の形態ではマイコン80に内蔵されているものとしたが、独立したディスクリートのA/D変換器としてもよい。あるいは、超音波センサ60内に組み込むようにしてもよい。
また、上述の実施の形態では、式(2)の演算をマイコン80を用いて行っているが、所謂DSP(デジタルシグナルプロセッサ)で行ってもよい。更には、デジタル信号に変換することなく、演算増幅器等のアナログ回路を用いて行ってよい。
さらにまた、補正回路70の代わりに、ステップ応答における過渡値、すなわち電圧V2の時間経過に基づく値を、所謂ルックアップテーブルとしてマイコン80のROM内に予め記憶しておき、このルックアップテーブルから、コールドスタート開始からの経過時間をエントリとして、電圧V2の値を読み出してもよい。
なお、本発明は上述の発明を実施するための形態に限らず本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。