JP5285466B2 - 積層成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、高強力高弾性率であり、かつ高温域での機械的物性が改良された溶融異方性
ポリエステルアミド繊維を強化材として用いた積層成形体に関する。
繊維強化材とマトリックス樹脂からなるプラスチック系複合材料は、軽量かつ多種多様
な材料であるため、成形体等として機械、精密機械、電気・電子機器、建築資材、車両用
部品・部材、OA機器、AV機器、日用雑貨、スポーツ用品、医療器具、航空機、宇宙用
機器部品・部材などとして幅広く利用されてきている。
マトリックス樹脂単独と比べ、繊維で強化したプラスチック系複合材料は、強度、弾性
率、耐衝撃性等、様々な物性を向上することができる。そして、該プラスチック系複合材
料の強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維や、芳香族ポリアミド繊維
や芳香族ポリエステル繊維などの有機繊維が主に使用されている。その中で有機繊維は、
比重が小さく軽量であり、高強度と高弾性という機械的特性を有しており、さらに耐熱性
、寸法安定性、耐化学薬品性などの特性も有しているため、好適に使用されている。
一方、マトリックス樹脂には、高強度、高弾性率、破断時の伸びなどの特性が優れてい
ること、力学的、環境的な耐久性にも優れていること、強化材との親和性がよく、成形性
が優れていることなどが求められており、マトリックス樹脂として、熱硬化性樹脂および
熱可塑性樹脂が、目的や用途に応じて使い分けられている。
その中でも、熱可塑性樹脂による複合材料の製造は、熱硬化性樹脂と異なり、硬化反応
を伴うことなく加熱し溶融した後、加圧、圧縮して賦形、冷却というステップで完了でき
るため成形時間が短く、プリプレグ化も可能で、また使用済み後再溶融化が可能であるこ
とから、最近特に注目されている。
例えば、特許文献1(特開2005−52987号公報)では、有機繊維を強化材とし
、熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材料において、樹脂含浸性の向上及びボイドの
減少を目的に、有機繊維と熱可塑性樹脂繊維とを構成材料とする組紐、織物、編物、不織
布、繊維東あるいはこれらの組合せおよびこれらと熱可塑性樹脂フィルム、熱可塑性樹脂
繊維の織物、編物あるいは不織布との積層体のうちから選ばれる少なくとも一種を加熱下
で加圧成形することを提案している。
特開2005一52987号公報(特許請求の範囲)
しかしながら、特許文献1において、高融点の熱可塑性樹脂をマトリックス樹脂として
用いた場合、その樹脂を有機繊維強化材に十分含浸させるためには、そのマトリックス樹
脂の融点よりも更に高い温度で成形する必要がある。そのため、有機繊維強化材には、少
なくともこの成形温度以上の耐熱性が求められている。
さらに、このようなプラスチック系複合材料は、近年、厳しい環境での使用も増えてき
ている。特に、高温下での使用においては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂に関わらず、そ
の強度及び弾性率が室温での使用に比べ低下してしまうため、長期的耐熱性が求められる
このような耐熱性を有するマトリックス樹脂としては、例えば、長期的耐熱性が150
℃以上であるいわゆるスーパーエンプラと呼ばれる耐熱性プラスチックを用いることがで
きるが、高温下での使用に際しては、繊維強化材においても、高い耐熱性を有することが
望ましく、例えば、少なくとも150℃での強度、弾性率が高い繊維が求められる。
しかしながら、このような長期的耐熱性が150℃以上であるスーパーエンプラを補強
するために適した有機繊維は、未だ得られていない。
従って、本発明の目的は、溶融成形時にかかる温度に耐えるだけでなく、かつ高温下で
もその機械的特性の低下が少ない有機繊維を用いた、高性能の繊維強化積層成形体を提供
することにある。
本発明者等は上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、特定の紡糸原糸に対して、
紡糸原糸を構成するポリマーの融点に対する特定の温度領域で特定の加熱処理を行うこと
により、常温のみならず、高温下においても機械的物性に優れるポリエステルアミド繊維
が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、溶融異方性ポリエステルアミド繊維で少なくとも構成された布帛
を強化材とし、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする積層成形体で
あって、前記溶融異方性ポリエステルアミド繊維は、下記[A]、[B]、[C]、[D
]、[E]の反復構成単位からなる部分が90モル%以上であり、[A]:[B]:[C
]:[D]:[E]=100:1〜20:5〜100:2〜80:2〜20のモル比を有
する芳香族ポリエステルアミドから溶融紡糸され、150℃雰囲気下の強度(T150
が17cN/dtex以上であり、かつ150℃雰囲気下の弾性率(E150)が710
cN/dtex以上である溶融異方性ポリエステルアミド繊維である。
Figure 0005285466
前記ポリエステルアミド繊維において、その融点ピーク温度は370℃以上であっても
よい。また、本発明のポリエステルアミド繊維は、低温下においても優れた機械的強度を
示してもよく、例えば、−70℃雰囲気下で、強度が16cN/dtex以上かつ弾性率
が700cN/dtex以上であってもよい。
さらに前記ポリエステルアミド繊維では、動的粘弾性測定により得られるガラス転移点
(Tg)が81℃以上であってもよい。
また、前記ポリエステルアミド繊維では、25℃雰囲気下で動的粘弾性から測定した貯
蔵弾性率(E’25)と、150℃雰囲気下で動的粘弾性から測定した貯蔵弾性率(E’
150)との比が、E’150/E’25=0.50以上であってもよい。
本発明のポリエステルアミド繊維は、高温下での強度および弾性率の低下を有効に防止
することができ、例えば、150℃雰囲気下の強度(T150)と、25℃雰囲気下の強
度(T25)との比が、T150/T25=0.70以上であってもよく、また150℃
雰囲気下の弾性率(E150)と、25℃雰囲気下の弾性率(E25)との比が、E15
/E25=0.85以上であってもよい。
さらに、前記ポリエステルアミド繊維では、広角X線回折測定により得られる2θ=2
9°に現れる回折ピーク強度の半価幅より算出した結晶サイズが7nm〜11nm程度で
あってもよい。
さらに、前記布帛は、一方向性織物、二方向性織物、三軸織物、多軸織物、およびノン
クリンプドファブリックからなる群から選択される少なくとも一種であってもよく、また
目付が50〜500g/m程度であってもよく、さらに厚みが0.05〜2mm程度で
あってもよい。
本発明で用いられている特定の溶融異方性ポリエステルアミド繊維は、加熱成形時の損
傷を受けにくいため、幅広い範囲のマトリックス樹脂に対する補強材として用いられ、成
形時に受ける損傷を低減することにより、成形体の機械的性能を向上することができる。
また、このような補強繊維を用いた布帛により補強された熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹
脂は、耐熱性能に優れ、常温下だけでなく高温下においても優れた機械的性能を達成する
ことができる。
本発明で用いられる強化材は、溶融異方性ポリエステルアミド繊維(または、芳香族ポ
リエステルアミド繊維)で少なくとも構成された布帛であり、前記芳香族ポリエステルア
ミド繊維(単に、ポリエステルアミド繊維と称する場合がある)は、下記に記載する芳香
族ポリエステルアミドから溶融紡糸されている。
(芳香族ポリエステルアミド)
芳香族ポリエステルアミドは、下記式に示す[A]、[B]、[C]、[D]、[E]
の反復構成単位からなる部分が90モル%以上であり、[A]:[B]:[C]:[D]
:[E]=100:1〜20:5〜100:2〜80:2〜20のモル比、好ましくは、
[A]:[B]:[C]:[D]:[E]のモル比が100:3〜10:15〜60:1
0〜45:5〜15のモル比を有する。
Figure 0005285466

なお、ここで、[A]:[B]:[C]:[D]:[E]=100:1〜20:5〜1
00:2〜80:2〜20とは、反復構成単位[A]に対する、それ以外の構成単位[B
]〜[E]の比を表している。
特に、紡糸性、強度、弾性率、耐疲労性、耐切創性、非吸水性等の観点から、化2に示
す反復構成単位の中で構成単位[A]が40〜80モル%、また構成単位[D]がn=2
である芳香族ポリエステルアミドが好ましい。
本発明の効果が損なわれない程度に、芳香族ポリエステルアミドは、構成単位として、
他の芳香族、脂環族、脂肪族のジオ−ル、ジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、ジアミ
ン、ヒドロキシアミン等を含んでいてもよい。具体的には、イソフタル酸、ナフチレンジ
カルボン酸、ジオキシナフタレン、べンゼンジアミン等が挙げられる。しかしながら、こ
れらのモノマ−が10モル%を越えると本発明の効果は損なわれる虞がある。
なお本発明にいう溶融異方性とは、溶融相において光学的異方性を示すことである。例
えば試料をホットステ−ジにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を観察する
ことにより認定できる。
溶融異方性ポリマ−は分解開始温度(Td)と融点(Tm)の温度差が40℃以上であ
ることが好ましい。溶融紡糸は紡糸機を融点以上に加温して行うのだが、設定温度に対し
てある程度の幅をもって温度が変化するため、設定温度よりも高温になることがある。も
し溶融異方性ポリマ−の分解開始温度(Td)と融点(Tm)の温度差が40℃未満であ
れば、ポリマ−が配管を滞留中、温度が融点を越えて分解温度に達し、ポリマ−に分解が
生じ、紡糸ノズル付近でビス即ち断糸が発生する。
ビスが生じない場合でも、繊維中に分解ガスと考えられる気泡が発生し、力学的性能が
低下する。ここで述べる分解開始温度(Td)とはTG曲線(熱重量曲線)における減量
開始温度であり、ここで述べるTmとは、示差走査熱量(DSC:例えばmetler
社製、TA3000)で観察される主吸熱ピ−クのピ−クトップ温度であり、以下、融点
ピーク温度と称する場合がある(JIS K 7121)。
(溶融異方性ポリエステルアミド繊維の製造方法)
次に本発明で用いられるポリエステルアミド繊維の製造方法について以下説明する。該
繊維は、常法によりポリマーを溶融紡糸して得られるが、該芳香族ポリエステルアミドの
融点よりさらに10℃以上高い紡糸温度(かつ溶融液晶を形成している温度範囲内)で、
剪断速度10sec−1以上、紡糸ドラフト20以上の条件で紡糸するのが好ましい。
かかる剪断速度および紡糸ドラフトで紡糸することにより、分子の配向化が進行し優れた
強度等の性能を得ることができる。剪断速度(γ)は、ノズル半径をr(cm)、単孔当
たりのポリマ−と吐出量をQ(cm/sec)とするときr=4Q/πrで計算され
る。ノズル横断面が円でない場合には、横断面積と同値の面積を有する円の半径をrとす
る。
繊維化を行う際、単繊維繊度は0.1〜50dtexであることが好ましく、更には1
〜20dtexであることが好ましい。単繊維繊度が0.ldtex未満である場合、熱
可塑性樹脂との加熱混合潰搾中に繊維形態が損傷を受けて繊維が切断する場合がみられ、
樹脂補強性に問題が発生する恐れがある。また単繊維繊度が50dtexを超えると、樹
脂との接着性が不足して樹脂補強性が低下する場合がある。
本発明で用いられるポリエステルアミド繊維を得るためには、強度、弾性率、耐熱性或
いは樹脂との接着性を向上させるために、紡糸原糸を熱処理及び/あるいは延伸熱処理す
る必要がある。熱処理は、不活性雰囲気のみで行っても良いし、途中から活性雰囲気化で
熱処理を行なっても良い。
なお、不活性雰囲気下とは、窒素、アルゴン等の不活性ガス中あるいは減圧下を意味し
、酸素等の活性ガスが0.1体積%以下であることをいう。また活性雰囲気下とは、酸素
等の活性ガスを1%以上含んでいる雰囲気を言い、好ましくは10%以上の酸素含有気体
であり、コスト的には空気を用いることが好ましい。水分が存在すると加水分解反応も併
行して進行するので、露点が−20℃以下,好ましくは−40℃以下の乾燥気体を使用す
る。
好ましい熱処理の温度条件は、溶融紡糸前のポリマ−の融点Tm対して、Tm−35℃
からTm−2℃の温度範囲であり、このような温度条件で加熱することにより高温下にお
いて高い強度をおよび弾性率を実現できる高強力高弾性率ポリエステルアミド繊維を得る
ことができる。また、加熱処理は、一定の温度で行っても良いし、加熱により漸進的に上
昇する繊維の融点にあわせて、順次昇温してもよい。
また、熱処理条件は、単繊維繊度(dtex)あたりに加熱された、(融点との温度差
:℃)と(加熱時間:時間)との積によって表わすことも可能であり、この場合、50≦
(融点との温度差)×(加熱時間)/(単繊維繊度)≦100程度の熱処理により、本発
明で規定する特定の高強度高弾性率ポリエステルアミド繊維を得ることが可能となる。
熱の供給は、気体等の媒体によって行う場合、加熱板、赤外ヒ−タ−等による輻射を利
用する方法、熱ロ−ラ−、プレ−ト等に接触させて行う方法、高周波等を利用した内部加
熱方法等があり、目的により、緊張下あるいは無緊張下で行われる。熱処理は、フィラメ
ント糸を、カセ状、またはチ−ズ状にして、または、トウ状にしてバッチ式で行うか、あ
るいは、フィラメントをロ−ラ−上を走行させながら連続式で行うことが出来る。また、
繊維をカットファイバ−にして、金網等にのせて熱処理を行っても良い。
さらに、本発明において用いられるポリエステルアミド繊維は、必要に応じて酸化チタ
ン、カオリン、シリカ、酸化バリウム等の無機物、カ−ボンブラック、染料や顔料等の着
色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤や、各種樹脂を含んでいても良い
上記した製造方法で得られる前記ポリエステルアミド繊維は、150℃雰囲気下の強度
(T150)が17cN/dtex以上(例えば、17.5〜40cN/dtex程度)
である必要がある。一般に高強力有機繊維は、室温下での強度は高いものの、高温下では
その強度は低下するため、繊維補強積層体においても高温環境で使用するには制限がある
。特に、スーパーエンプラと呼ばれる耐熱性プラスチックは、その長期的耐熱性が150
℃以上であり、これらをも補強するためには少なくとも150℃での強度が高い繊維でな
ければならないのである。好ましくは18cN/dtex以上(例えば、18.5〜38
cN/dtex程度)であってもよい。
また前記ポリエステルアミド繊維は、室温下(例えば25℃)の強度(T25)が、1
8cN/dtex以上(例えば、18.5〜45cN/dtex程度)、好ましくは20
cN/dtex以上(例えば、20.5〜40cN/dtex程度)を示してもよい。当
然、成形体の使用環境は室温下の場合も想定されるため、該領域でも補強性の高い積層体
を供することができれば好ましい。
また、前記ポリエステルアミド繊維は、高温下と低温下での強度の変化が少ないため、
例えば、150℃雰囲気下の強度(T150)と、25℃雰囲気下の強度(T25)との
比が、T150/T25=0.70以上(例えば、0.71〜1.0程度)、好ましくは
0.73以上(例えば、0.74〜0.95程度)であってもよい。
さらに、前記ポリエステルアミド繊維は、低温下(例えば−70℃)で、強度16cN
/dtex以上(例えば、16〜40cN/dtex程度)、好ましくは18cN/dt
ex以上(例えば、18〜38cN/dtex程度)であってもよい。当然、成形体の使
用環境は低温下の場合も想定されるため、該領域でも補強性の高い積層体を供することが
できれば好ましい。
さらにまた、前記ポリエステルアミド繊維は、例えば、150℃雰囲気下の強度(T
50)と、−70℃雰囲気下の強度(T−70)との比が、T150/T−70=0.6
3以上(例えば、0.64〜1.0程度)、好ましくは0.65以上(例えば、0.66
〜0.95程度)であってもよい。
(ポリエステルアミド繊維の弾性率)
また、上記した製造方法で得られるポリエステルアミド繊維は、150℃雰囲気下の弾
性率(E150)が710cN/dtex以上(例えば、720〜1500cN/dte
x程度)である必要がある。一般に高強力有機繊維は、室温下での弾性率は高いものの、
高温下ではその強度は低下するため、繊維補強樹脂やその成形体を高温環境で使用するこ
とができない。特に、スーパーエンプラと呼ばれる耐熱性プラスチックは、その長期的耐
熱性が150℃以上であり、これらをも補強するためには少なくとも150℃での弾性率
が高い繊維でなければならない。弾性率(E150)は、好ましくは730cN/dte
x以上(例えば、740〜1400cN/dtex程度)であってもよい。
また前記ポリエステルアミド繊維は、室温下(例えば25℃)の弾性率(E25)が、
750cN/dtex以上(例えば、755〜1500cN/dtex程度)、好ましく
は760cN/dtex以上(例えば、765〜1300cN/dtex程度)であって
もよい。当然、成形体の使用環境は室温下の場合も想定されるため、該領域でも補強性の
高い積層体を供することができれば好ましい。
また、前記ポリエステルアミド繊維は、高温下と低温下での弾性率の変化も少ないため
、例えば、150℃雰囲気下の弾性率(E150)と、25℃雰囲気下の弾性率(E25
)との比が、E150/E25=0.85以上(例えば、0.86〜1.0程度)、好ま
しくは0.87以上(例えば、0.88〜0.98程度)であってもよい。
さらに前記ポリエステルアミド繊維は、低温下(例えば−70℃)の弾性率(E−70
)が、700cN/dtex以上(例えば、705〜1400cN/dtex程度)、好
ましくは710cN/dtex以上(例えば、715〜1300cN/dtex程度)で
あってもよい。当然、成形体の使用環境は低温下の場合も想定されるため、該領域でも補
強性の高い積層体を供することができれば好ましい。
さらにまた、前記ポリエステルアミド繊維は、例えば、150℃雰囲気下の弾性率(E
150)と、−70℃雰囲気下の弾性率(E−70)との比が、E150/E−70=0
.61以上(例えば、0.62〜1.0程度)、好ましくは0.63以上(例えば、0.
64〜0.95程度)であってもよい。
(ポリエステルアミド繊維の耐熱老化性)
前記ポリエステルアミド繊維は、高温下での耐疲労性、特に長時間高温に曝した場合の
耐疲労性に優れており、25℃雰囲気の強度(T25)と、サンプルを250℃雰囲気下
、100hr暴露させた後に取り出して25℃雰囲気で測定した時の強度(T250)と
の比(これを耐熱老化性と称する)、T250/T25が、例えば、0.80以上(例え
ば、0.82〜0.99程度)、好ましくは0.83以上(例えば、0.85〜0.98
程度)、さらに好ましくは0.87以上(例えば、0.88〜0.97程度)であっても
よい。なお、本発明でいう耐熱老化性とは、実施例に記載された耐熱老化性試験により求
められる値であり、その測定方法については、以下の実施例に詳細に記載されている。
(ポリエステルアミド繊維の融点)
また、エンプラ等の高融点熱可塑性樹脂の成形温度における耐久性の観点から、本発明
のポリエステルアミド繊維の融点ピーク温度は、370℃以上(例えば、375〜450
℃程度)、好ましくは380℃以上(例えば、385〜440℃程度)であってもよい。
なお、融点ピーク温度の測定方法については、以下の実施例に詳細に記載されている。
(ポリエステルアミド繊維の動的粘弾性)
前記ポリエステルアミド繊維は、高温下でも低温下でも優れた貯蔵弾性率(または動的
弾性率)を示すため、25℃雰囲気下において、動的粘弾性から測定した貯蔵弾性率(E
25)と、150℃雰囲気下において、動的粘弾性から測定した貯蔵弾性率(E’15
)との比が、E’150/E’25=0.50以上(例えば、0.51〜1.0)であ
り、好ましくは0.52以上(例えば、0.53〜0.90程度)であってもよい。この
ような貯蔵弾性率を有するポリエステルアミド繊維は、室温(例えば25℃雰囲気下)及
び高温下(例えば150℃雰囲気下)での物性変化を低減することができる。
また、前記ポリエステルアミド繊維では、動的粘弾性測定により得られるガラス転移点
(Tg)が81℃以上(例えば、81〜118℃程度)であってもよく、好ましくは83
℃以上(例えば、84〜110℃程度)であってもよい。このようなガラス転移点を有す
るポリエステルアミド繊維は、室温の場合とほぼ同じ物性を示すことができる。なお、本
発明の貯蔵弾性率およびガラス転移点の測定方法については、以下の実施例に詳細に記載
されている。
(ポリエステルアミド繊維の結晶サイズ)
前記ポリエステルアミド繊維では、高温下で高い強力および弾性率を発現する観点から
、高融点の結晶構造を分子構造の中に有さなければならない。その結晶に関しては、広角
X線回折測定により得られる2θ=29°に現れる回折ピーク強度の半価幅より、その結
晶サイズを算出することができ、例えば、そのような結晶サイズとしては、7nm〜11
nm程度であってもよく、好ましくは8nm〜10nm程度であってもよい。なお、具体
的な測定方法については、以下の実施例に詳細に記載されている。
[ポリエステルアミド繊維強化積層体の製造方法]
次に本発明の積層成形体(またはポリエステルアミド繊維強化積層体)の製造方法につ
いて説明する。本発明の積層成形体は、例えば、前述したポリエステルアミド繊維で少な
くとも構成された布帛と、マトリックス樹脂として用いられる熱硬化性樹脂及び/または
熱可塑性樹脂とを加熱圧縮させて製造されうる。
なお、本発明において、ポリエステルアミド繊維は、必要に応じて、その他の繊維(例
えば、金属繊維、無機繊維、有機繊維など)との複合糸としてもよい。前記有機繊維とし
ては、例えば、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリオレフィン、ポリカ−ボネ−ト、ポリ
アリレ−ト、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエ−テルエステルケトン、
ポリウレタン、フッソ樹脂等の熱可塑性ポリマ−から形成された繊維などが挙げられる。
これらの繊維は、単独でまたは組み合わせて用いてもよい。
ポリエステルアミド繊維を用いた布帛の構造は、該繊維に関して、一方向性織物、二方
向性織物、三軸織物、多軸織物、ノンクリンプドファブリックなどのいずれであってもよ
い。これらのうち、軽量化と耐衝撃性とを両立させる観点から、一方向性織物、二方向性
織物およびノンクリンプドファブリックが好ましい。また、布帛は、ポリエステルアミド
繊維のみを織糸として形成してもよいし、ポリエステルアミド繊維と上述したその他の繊
維とをそれぞれ織糸として形成してもよい。これらの布帛は、公知又は慣用の方法で形成
することができる。
例えば、一方向性織物および二方向性織物である場合、織物密度としては、緯糸密度お
よび/または経糸密度が、8〜50本/2.5cm程度、10〜45本/2.5cm程度
であってもよい。
また、該繊維で形成した布帛の目付は、例えば、50〜500g/m程度であっても
よく、100〜400g/m程度が好ましい。また、高強力繊維布帛の厚みは、例えば
、0.05〜2mm程度であってもよく、0.1〜1.5mm程度が好ましい。
また、本発明で用いられる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂(ビスフェノ
ールA型、ノボラック型、臭素化型、脂環式型など)、ビニルエステル系樹脂(ビスフェ
ノールA型、ノボラック型、臭素化型など)、不飽和ポリエステル樹脂、架橋メタクリル
系樹脂、フェノール系樹脂(ノボラック型、レゾール型)、尿素樹脂、メラミン樹脂、ジ
アリルフタレート樹脂、フラン樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂
は、単独で、または二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの熱硬化性樹脂のうち
、繊維との接着性の点から、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹
脂などが好ましい。
熱硬化性樹脂による積層体の製造方法としては、例えば、ハンドレイアップ怯、スプレ
イアップ怯、SMC法、BMC法、RTM怯、プレス法などが挙げられる。これらのうち
、硬質補強繊維で形成した基材に対して、熱硬化性樹脂を含浸させるSMC法、RTM法
などが好ましく用いられる。
一方、本発明で用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプ
ロピレン樹脂、ポリブチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;ポリメチルメタクリレート
樹脂等のメタクリル系樹脂;ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AS樹脂等のポリスチレン
系樹脂;ポリエチレンテレフクレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(P
BT)樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN
)樹脂、ポリ1,4−シクロへキシルジメチレンテレフタレート(PCT)樹脂等のポリ
エステル系樹脂;6−ナイロン樹脂、6,6−ナイロン樹脂、PA9T等のポリアミド(
PA)樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネー
ト(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、変性ポリフェニレンエー
テル(PPE)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリスルホン(PSF)樹脂
、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート(PAR)樹
脂、ポリエーテルニトリル(PEN)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエ
ーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、
ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、フッ素(F)樹脂;液晶ポ
リエステル樹脂等の液晶ポリマー樹脂;ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタ
ン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、ポリイソプレン系又はフッ素
系等の熱可塑性エラストマー;又はこれらの共重合体樹脂や変性樹脂等が挙げられる。こ
れらの熱可塑性樹脂は、単独でまたは組み合わせて用いてもよい。
これらのうち、熱可塑性樹脂は、UL746Bで定義された長期耐熱温度指数が150
℃以上(例えば、150〜250℃程度)である耐熱性樹脂であるのが好ましく、このよ
うな樹脂としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリサルフ
ォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテル
エーテルケトン、液晶ポリエステルなどが挙げられる。
また、熱可塑性樹脂による積層体の製造方法としては、溶融または溶解した熱可塑性樹
脂にポリエステルアミド繊維からなる布帛を含浸することにより複合化してもよいし、該
布帛と、布帛状またはシート状の熱可塑性樹脂とを積層し、加熱して複合化してもよいし
、または熱可塑性樹脂を含むエマルジョンを該布帛に含浸、乾燥後、積層して加熱により
複合化してもよい。簡便に積層体を製造するためには、布帛状またはシート状の熱可塑性
樹脂を用いるのが好ましい。
また、繊維積層体において、樹脂100重量部に対する強化材の割合は、補強繊維の形
状に応じて30重量部〜300重量部程度の幅広い範囲から選択でき、50重量部〜20
0重量部程度が好ましい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定され
るものではない。
[融点ピーク温度]
DSC装置(metler社製TA3000)にサンプルを10〜20mgとり、アル
ミ製パンへ封入した後、キャリヤ−ガスとしてNを100cc/分流し、昇温速度20
℃/分で測定し、吸熱ピ−クの位置の示す温度を測定した。
[強度および弾性率]
JIS L 1013に準じ、各温度雰囲気下において、試長20cm、初荷重0.1
g/d、引張速度10cm/minの条件で破断強伸度及び弾性率(初期引張抵抗度)を
求め、5点以上の平均値を採用した。
[結晶サイズ]
広角X線回折測定装置として、ブルカー社製、「D8 Discover with
GADDS」を用いて、カメラ距離10cm、露光時間:600秒、電流110mA、電
圧:45kV、コリメータ径0.3mmにより繊維の赤道方向における広角X線回折図を
得た。次いで、2θが29°に現れる回折ピーク強度の半価幅より次式を用いて、結晶サ
イズ(C)を算出した。
Figure 0005285466
ここで、Bは回折ピーク強度の半価幅、θは回折角、λはX線の波長(1.54178
オングストローム)を表わす。
[動的粘弾性による貯蔵弾性率、損失弾性率およびガラス転移点]
レオロジー社製「DVEレオスペクトラー」を使用して、昇温速度10℃/分、周波数
10Hz、自動静荷重方式にて測定を行ない、貯蔵弾性率(E’)と損失弾性率(E”)
との比からtanδ=E”/E’を算出した。次いで、各温度について、横軸を温度とし
、縦軸をtanδとする温度(℃)−tanδ曲線を作図し、tanδの変曲点(ピーク
温度)をガラス転移点とした。また、25℃雰囲気下の貯蔵弾性率(E’25)と150
℃雰囲気下の貯蔵弾性率(E’150)との比をE’150/E’25として算出した。
[耐熱老化性]
JIS L 1013に準じ、25℃雰囲気下、試長20cm、初荷重0.1g/d、
引っ張り速度10cm/minの条件で破断強度(5点以上の平均値を採用)を求め、こ
れをT25とする。
次にサンプルを熱風乾燥機の中で250℃雰囲気下、100hr暴露させた後に取り出
して、常温25℃雰囲気で同様にJIS L 1013に準じて測定した時の破断強度を
250としたとき、耐熱老化性を、T250/T25により求める。
[FRP成形品の曲げ強度及び曲げ弾性率N/mm
株式会社島津製作所製オートグラフAG/Rを用い、JIS K7171試験法に準拠し
て測定した。この積層体の曲げ試験を25℃下及び150℃下で実施し、25℃下の曲げ
強度に対する、150℃下の曲げ強度の保持率を、50%以上を0、30〜50%を△、
30%未満を×として表記した。同様に、25℃下の曲げ弾性率に対する、150℃下の
曲げ弾性率の保持率を、50%以上を○、30〜50%を△、30%未満を×として表記
した。
<実施例1>
(1)p−アセトキシ安息香酸[A]60モル、6−アセトキシ−2−ナフトエ酸[B]
4モル、テレフタル酸[C]18モル、4−4’−ビスフェノ−ル[D]14モル、およ
びp−アミノフェノ−ル[E]4モルから溶融異方性芳香族ポリエステルアミドを得た。
このポリマ−の融点は340℃であった。該ポリマ−を、ノズル径0.1mmφ、ホ−ル
数600個の口金より、紡糸温度360℃、紡糸速度1000m/min,剪断速度55
200sec−1、ドラフト30で溶融紡糸し、1670dtex/600fのフィラメ
ントを得た。この紡糸原糸を310℃で8時間熱処理した。得られた熱処理糸は繊維間膠
着がほとんどなかった。該熱処理糸(以下、紡糸原糸を熱処理したものをポリエステルア
ミドフィラメントと称する場合がある)の性能を表1に示す。
(2)このフィラメントを用いて、緯糸密度12本/2.5cm、経糸密度12本/2.
5cmの平織物を作製した。この織物の目付は、200g/mであった。
(3)一方で、極限粘度0.8dl/gのPA6を溶融混練し、メルトブロー法により積
層することにより、目付44g/mの不織布を作成した。
(4)上記(2)で作成したポリエステルアミド繊維よりなる平織物と、上記(3)で作
製したPA6製不織布を、最外層を不織布として、平織物/不織布=1枚/2枚の割合で
交互に積層し、総積層量を平織物/不織布=8枚/18枚とした。これを、300℃で3
分間予熱後、40kgf/cm下の圧力で、300℃×5分間保持して、PA6製不織
布を溶融することで積層一体化させ、厚み2.lmm、目付2390g/mの積層体を
得た。この積層体の曲げ試験結果を表2に示す。
<実施例2>
実施例1(3)において、樹脂をPPS(ポリプラスチックス株式会社製、「フォート
ロン0220A9」)に変更し、また実施例1(4)においてプレス温度を320℃とす
る以外は、実施例1と同様に試験を行い、厚み2.0mm、目付2386g/mの積層
体を得た。この積層体の曲げ試験結果を表2に示す。
<実施例3>
実施例1(3)において、樹脂をLCP(ポリプラスチックス株式会社製、「べクトラ
Al30」)に変更し、また実施例1(4)においてプレス温度を320℃とする以外は
、実施例1と同様に試験を行い、厚み2.lmm、目付2392g/mの積層体を得た
。この積層体の曲げ試験結果を表2に示す。
<実施例4>
実施例1(3)以降を以下に変更する以外は、実施例1と同様に試験を行った。
(3)一方で、多官能エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「YL6046B8
0」)130質量部と、ノボラック型硬化剤(ジャパンエポキシレジン社製、「YLH1
29B65」)70質量部と、イミダゾール型硬化促進剤(ジャパンエポキシレジン社製
、「EMI24」)0.3質量部、およびメチルエチルケトン130質量部を混合し、マ
トリックス樹脂(ワニス)を調製した後、(2)で得られた平織物に対して、上記ワニス
を含浸させ、110℃で乾燥しプリプレグを作製した。このプリプレグを8枚重ね、40
kgf/cm下の圧力で、170℃×60分間保持して、熱プレスし積層一体化させた
。得られた積層体は厚み2.7mm、目付3682g/mであった。この積層体の曲げ
試験結果を表2に示す。
<比較例1>
実施例1において、(1)(2)で製造する平織物を使用せず、PA6製不織布を54
枚のみ積層する以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。得られた積層体は厚み
1.9mm、目付2360g/mであった。この積層体の曲げ試験結果を表2に示す。
<比較例2>
実施例1(1)で製造するフィラメントを、市販のポリアリレート繊維((株)クラレ
製、「べクトランHT」)とする以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。得ら
れた積層体は厚み2.0mm、目付2382g/mであった。この積層体の曲げ試験結
果を表2に示す。
<比較例3>
実施例1(1)で製造するフィラメントを、市販のアラミド繊維(東レデュポン(株)
製、「ケブラー49」)とする以外は、実施例1と同様して積層体を作製した。得られた
積層体は厚み2.lmm、目付2388g/mであった。この積層体の曲げ試験結果を
表2に示す。
<参考例1および2>
実施例1と同様の方法で紡糸し、得られた紡糸原糸を、290℃で8時間(参考例1)
あるいは、330℃で8時間(参考例2)で行なう以外、実施例1と同様に熱処理を行な
った。得られた熱処理糸の性能を表1に示す。
<参考例3>
実施例1とは異なるホール数(200)を有する口金で紡糸する以外は、実施例1と同
様に紡糸して、1670/200fのフィラメントを得た。そしてこのフィラメントを3
10℃で8時間熱処理した。
<参考例4>
実施例1と同様の方法で紡糸し、得られた紡糸原糸を、310℃で16時間で熱処理を
行なう以外、実施例1と同様に熱処理を行なった。得られた熱処理糸の性能を表1に示す
Figure 0005285466
(熱処理糸の性質)
実施例1では、低温から高温に亘って、高い強度と弾性率を有する繊維が得られている
。特に、実施例1では、室温下でも高い弾性率を有するだけでなく、高温下でも高い弾性
率を保持することができた。また、実施例1では、融点ピーク温度が参考例1〜3と比べ
て高いだけでなく、動的粘弾性から得られるガラス転移点温度も参考例1〜4と比べて高
かった。また、25℃と150℃での貯蔵弾性率の比E’150/E’25は、参考例2
と比べると特に高かった。また、結晶サイズは、参考例3の2倍以上もの大きな値を示し
た。
さらに、実施例1では、耐熱老化性にも優れていた。
(積層体の性質)
表1から明らかなように、実施例1のポリエステルアミド繊維は、−70℃〜150℃
のすべての温度下で、参考例1〜4と比べ、高い強度および弾性率を示しているため、積
層体は、ポリエステルアミド繊維の性能に由来して、−70℃〜150℃のすべての温度
下で、強度および弾性率に優れる。
さらに、実施例1の積層体は、融点ピーク温度だけでなく、動的粘弾性から得られるガ
ラス転移点温度も高く、さらに耐熱老化性にも優れる繊維から形成された布帛を用いてい
るため、積層体の溶融成形時にかかる高温に耐えることができるだけでなく、高温雰囲気
下の使用に際しても、その機械的特性の低下を低減することができる。
Figure 0005285466
表2から明らかなように、実施例1〜4の積層体は、さまざまな高耐熱性樹脂をマトリ
ックス樹脂として用いることができるだけでなく、これらの積層体は、高温下であっても
曲げ強度および曲げ弾性率を保持することができた。一方、ポリアリレートやポリアラミ
ドなどの耐熱性繊維布帛を強化材として用いた場合、繊維の耐熱性が十分でなく、得られ
た積層体では、高温(150℃)雰囲気下における曲げ強度および曲げ弾性率が、室温(
25℃)雰囲気下の半分以下となった。
本発明の複合材料は、公知の方法等を適用して加工することにより、種々の成形体とす
ることができる。本発明の複合材料による成形体は、補強材料として、耐熱性、耐摩耗性
、耐衝撃性が求められる用途の全てに用いることができる。例えば、機械要素部品でプレ
ート、軸受、ギヤー、カム、パイプ、棒材など、ブッシュ、座金、ガイド、プーリー、フ
ェーシング、インシュレーター、ロッド、ベアリング保持器等、電気・電子部品でコネク
タ、プラグ、アーム、ソケット、キャップ、ロータ、モータ部品等、AV・OA機器部品
でスピーカコーン、筐体、軸受、ロッド、ガイド、ギヤー等、建築用の部品・部材、建具
や建材用のストッパー、ガイド、戸車、アングル等、その他にへルメット、プラモデル部
品、タイヤ用の中子材料、釣具用リール部品、シール類、パッキン類、グランドパッキン
等を挙げることができる。
以上のとおり、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲
で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含ま
れる。

Claims (8)

  1. 下記(1)および(2)を満たす溶融異方性ポリエステルアミド繊維で少なくとも構成された布帛を強化材とし、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂とする積層成形体であって、前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオキシメチレン(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリスルホン(PSF)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリエーテルニトリル(PEN)樹脂、ポリエーテルケトン(PEK)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、液晶ポリマー樹脂、および熱可塑性エラストマーからなる群から選択された少なくとも一種である積層成形体
    1)下記[A]、[B]、[C]、[D]、[E]の反復構成単位からなる部分が90モル%以上であり、[A]:[B]:[C]:[D]:[E]=100:1〜20:5〜100:2〜80:2〜20のモル比を有する芳香族ポリエステルアミドから溶融紡糸されること、
    2)150℃雰囲気下の強度(T150)が17cN/dtex以上であり、かつ150℃雰囲気下の弾性率(E150)が710cN/dtex以上である溶融異方性ポリエステルアミド繊維であること。
    Figure 0005285466
  2. 請求項1において、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の融点ピーク温度が370℃以上である積層成形体。
  3. 請求項1または2において、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の、動的粘弾性測定により得られるガラス転移点(Tg)が81℃以上である積層成形体。
  4. 請求項1から3のいずれか一項において、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の、25℃雰囲気下で動的粘弾性から測定した貯蔵弾性率(E’25)と、150℃雰囲気下で動的粘弾性から測定した貯蔵弾性率(E’150)との比が、E’150/E’25=0.50以上である積層成形体。
  5. 請求項1から4のいずれか一項において、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の、150℃雰囲気下の強度(T150)と、25℃雰囲気下の強度(T25)との比が、T150/T25=0.70以上であるとともに、150℃雰囲気下の弾性率(E150)と、25℃雰囲気下の弾性率(E25)との比が、E150/E25=0.85以上である積層成形体。
  6. 請求項1から5のいずれか一項において、溶融異方性ポリエステルアミド繊維の、広角X線回折測定により得られる2θ=29°に現れる回折ピーク強度の半価幅より算出した結晶サイズが7nm〜11nmである積層成形体。
  7. 請求項1から6のいずれか一項において、熱可塑性樹脂が、UL746Bで規定される長期耐熱温度指数150℃以上を有する積層成形体。
  8. 請求項1から7のいずれか一項において、布帛が、一方向性織物、二方向性織物、三軸織物、多軸織物、およびノンクリンプドファブリックからなる群から選択される少なくとも一種であり、目付が50〜500g/mであり、かつ厚みが0.05〜2mmである積層成形体。
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