JP5284868B2 - 路面状態推定方法とその装置、及び、車両制御方法 - Google Patents
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Description
また、高さの異なるセンシングブロック52H,52Lにそれぞれ貼り付けられた歪ゲージ53H,53Lで検出した歪レベルの差から路面摩擦係数を推定する方法では、路面と直接接するブロックに歪ゲージ53H,53Lなどのセンサーを取付ける構成であるため、センサーの耐久性の面で問題がある。
一般にタイヤのトレッドパターンは、タイヤ周方向に周期的な構造が設けられている。そこで、一般的なトレッドパターンを有するタイヤを用いて走行中のトレッド振動を検出して路面状態を推定する方法が望まれている。
すなわち、本発明は、走行中の路面の状態を推定する方法であって、タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤの振動を検出して回転次数比分析し、この回転次数比分析して得られたタイヤの振動の回転次数成分の大きさから走行中の路面状態を推定することを特徴とする。
タイヤの振動の回転次数成分(以下、回転次数成分という)は回転角度に対する周期成分の位相が固定されているので、時間単位で計測する周波数分析と比較して、振動成分を精度良く検出できる。したがって、タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤの回転次数成分の大きさから走行中の路面状態を推定するようにすれば、走行中の路面状態を精度よく推定することができる。
なお、タイヤは、ストレートリブのみを有するタイヤのような特別のタイヤを除いては、周期的なトレッドパターンを有するので、本願発明で用いられる「タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤ」としては、前記特許文献3に開示されているような特別な周期性をもつトレッドパターンを有するタイヤである必要はなく、ブロックパターンを有するタイヤやラグ溝を有するタイヤなどの、一般に使用されているタイヤであってよい。
また、本発明は、前記タイヤの振動を車両バネ下部にて検出するようにしたことを特徴とする。これにより、タイヤ部にセンサーを設けることなく、走行中の路面状態を精度よく推定することができる。また、タイヤへのセンサー取付けが不要になるので、タイヤの生産効率が向上する。また、タイヤ部にセンサーを装着した場合に比較してセンサーの耐久性を向上させることができるだけでなく、センサーの交換も容易となる。
また、本発明は、タイヤの回転速度を検出するとともに、前記タイヤの振動を、前記検出されたタイヤの回転速度に同期してサンプリングすることを特徴とする。これにより、簡単な構成でタイヤの振動の回転次数比分析を行うことができる。
路面状態推定装置10は、振動検出手段としての加速度センサー11と、回転速度検出手段としての車輪速センサー12と、回転信号生成手段13と、記憶手段14と、回転次数比分析手段15と、共振次数算出手段16と、回転次数成分抽出手段17と、路面状態推定手段18と、警報手段19とを備え、タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤ20に発生して車両バネ下部に伝達され、加速度センサー11にて検出されるタイヤの振動を回転次数比分析して、得られたタイヤの振動の回転次数成分の大きさから走行中の路面Rが低μ路面であるか否かを推定し、路面Rが低μ路面である場合には、運転者に音や光、表示などによる警報を発することができる。また、路面Rが低μ路面であるという情報を車両の走行状態を制御する車両制御手段40に出力して、ABSなどによる車両制御を行うことができる。
ナックル31は、タイヤ20を装着するホイール32とともに回転するホイールハブ33と軸受けを介して連結された車輪部30の非回転側部品(車両バネ下部品)で、このナックル31に図示しないブレーキ装置などが装着される。ナックル31はサスペンション部材34を備えた車両懸架装置の上下のアーム35,36と、ゴムブッシュなどの緩衝部材37,38を介して連結されている。
なお、加速度センサー11を、上下のアーム35,36などの、ホイール32と緩衝部材37,38を介して連結されている部材に取り付けると、緩衝部材37,38のダンパー効果によりトレッド21の振動の検出精度が低下する。したがって、加速度センサー11の取り付け箇所としては、車両バネ下部であっても、緩衝部材37,38よりもホイール32側に設置した方が当該タイヤ20から車両バネ下部に伝播される振動を精度良く検出することができる。
回転信号生成手段13は、車輪速センサー12の出力のゼロクロス点で立ち上がるパルス信号を生成して出力する。タイヤ1回転で生成されるパルス数は、ローターの歯車数もしくはリング多極マグネットの磁極数の2倍となる。したがって、パルス数を計数することで車輪速を検出することができるとともに、回転信号生成手段13から出力されるパルス信号をサンプリングクロックとして使用することができる。サンプリングクロックは、回転速度に同期しているので、このサンプリングクロックを用いて加速度センサー11で検出したタイヤ振動をサンプリングすれば、1回転あたりのサンプル数が車輪速に関わらず一定となる。但し、時間的にみると、サンプリング間隔は、車輪速が遅いほど狭く、車輪速が速くなると広がる。
回転次数比分析手段15は、ローパスフィルタ15aと、サンプリング手段15bと、分析手段15cとを備える。
ローパスフィルタ15aは、加速度センサー11で検出したタイヤ振動の高周波成分を除去するとともに、回転次数比分析におけるエリアジング現象(折り返し)の発生を抑制する。
サンプリング手段15bでは、まず、回転信号生成手段13から出力されるサンプリングクロックを用いて加速度センサー11で検出したタイヤ振動をサンプリングする。
分析手段15cは、このサンプリングし直されたタイヤ振動の振動波形をFFT処理して振動スペクトルを求める。時間間隔一定で計測された振動波形の振動スペクトル(周波数スペクトル)の横軸は周波数となるが、回転間隔一定で計測された振動波形の振動スペクトルの横軸は回転次数(Order)nとなる。
図4は、当該タイヤ20のトレッドパターンの設計図から求めた周期スペクトル(トレッドパターンの周期スペクトル)と、走行中のタイヤ20の振動を計測しこれを回転次数比分析して得られた回転次数スペクトルとを比較した図である。同図から明らかなように、計測した回転次数スペクトルとトレッドパターンの周期スペクトルとの間には、ピークに明確な対応が見られる。したがって、タイヤ振動の回転次数成分がトレッドパターンの周期成分と関係していることがわかる。
なお、加速度センサー11で検出したタイヤ振動を時間間隔一定でサンプリングした場合、速度変動のために、回転間隔は不均一になるが、Lomb-ScarglePeriodgram(Scargle, J.D. 1982, The Astrophysical
Journal, 263,835)に代表される、不均一間隔でサンプリングしたデータから振動スペクトルを推定する手法を用いれば、前記の回転間隔一定のサンプリングを行わなくとも、回転次数スペクトルを求めることができる。
回転次数成分抽出手段17は、回転次数比分析手段15で求めた回転次数スペクトルから、予め設定された複数個のピークの振動レベルを抽出する。本例では、回転次数nがそれぞれ、19次、27次、36次、54次の4つのピークの振動レベルを抽出する。
図3に示すように、回転次数スペクトルでは、10次未満の回転次数成分は路面の影響を受けやすい。一方、試験に用いたタイヤのブロック数は周上58個であるので、80次を超える周期の短い回転次数成分はタイヤの周期性を反映していない成分である。したがって、本例では、回転次数nが10次以上80次以下の範囲で、かつ、各々が互いに近づかないような位置を4つ(19次、27次、36次、54次)選択し、これらの回転次数成分の大きさを路面状態の推定に用いるようにしている。
タイヤの固有振動周波数frは、通常、200Hz付近にあることが知られている。周波数分析において用いられる周波数スペクトルでは、タイヤの固有振動に起因するタイヤ共振は車輪速に依存しないが、回転次数比分析により得られる回転次数スペクトルでは、タイヤ共振の回転次数である共振次数nrは、車輪速が速くなるほど小さくなる。換言すれば、回転次数スペクトルにおいては、タイヤ共振のピークが出現する共振次数nrの位置が車輪速の上昇に伴って低次数側に移動する。回転次数スペクトルにおける共振領域は、共振次数をnr、次数幅をΔnrとすると、nr−(Δnr/2)≦n≦nr+(Δnr/2)で表わせる。実験の結果、この共振領域ではピーク強度に信頼性がないことがわかった。すなわち、回転次数成分の大きさであるピーク高さは、路面摩擦係数μの低下に伴って低下するが、共振領域ではこれが逆転するケースがある。
なお、共振領域の幅である次数幅Δnrの大きさはタイヤ種により適宜決定されるもので、おおよその大きさとしては10〜15程度である。
回転次数成分抽出手段17では、路面状態の推定に用いる複数の回転次数(ここでは、19次、27次、36次、54次の4つの回転次数)を選択し、これらの回転次数の振動レベルである回転次数成分を抽出し、路面状態推定手段18に出力する。本例では、回転次数成分抽出手段17に、共振次数算出手段16で算出した共振次数nrと次数幅Δnrとが入力することで、共振領域[nr−(Δnr/2),nr+(Δnr/2)]にある次数については、回転次数成分の抽出を行わないようにしている。
データ蓄積手段18aは、回転次数成分抽出手段17から入力された複数の回転次数成分の大きさのデータを回転次数毎に保存する。データは1秒間のデータを1単位とし、ラベル付けされて蓄積される。
本例では、回転次数成分の大きさを回転次数スペクトルにおけるピーク高さの絶対値ではなく、ピーク形状としての高さを用いている。例えば、27次の回転次数成分の大きさとして、回転次数スペクトルの27次のピーク値と27.4次のスペクトル値との差を27次のピーク高さとしている。
図5は、データ蓄積手段18aに蓄積された1秒ごとに求めた27次の振動ピークの高さの分布を示すヒストグラムで、白抜きの棒が高μ路面(μ≒1.0)走行時の振動ピークの高さの分布で、編み目模様の棒が低μ路面(μ≒0.24)走行時の振動ピークの高さの分布である。本例で用いられているタイヤ20のような一般的なタイヤでは、トレッドパターンに起因するロードノイズ(パターンノイズ)を抑制するため、ラグ溝のピッチを2ピッチバリエーションあるいは3ピッチバリエーションにするなど、タイヤ周方向の周期性をなるべくなくすようにしている。そのため、回転次数成分の大きさは、図5に示すような分布を持つ。
図6はその一例を示す図で、同図の実線が高μ路面(μ≒1.0)を走行した時の回転次数成分の大きさの分布曲線で、破線が低μ路面(μ≒0.24)を走行した時の回転次数成分の大きさの分布曲線である。図6において、横軸は振動ピークの高さで縦軸はその出現確率を示す。この分布曲線におけるピークの高さ、すなわち、出現確率が最も高い振動ピークの高さがピーク値(回転次数成分の大きさ)である。
路面推定手段18cでは、ピーク値演算手段18bで演算された回転次数成分のピーク値Pj(j=1〜4)のうち、閾値Kj(j=1〜4)よりも小さいものが2つ以上あった場合に、走行中の路面が低μ路面であると推定する。
走行中の路面が低μ路面であると推定された場合には、路面状態推定手段18は警報手段19に、路面が低μ路面であるという信号を出力する。
警報手段19は、運転席近傍に設置されて、路面が低μ路面であるという信号が入力されたときに、警報用のLEDを点灯もしくは点滅させるなどしてドライバーに路面が低μ路面であることを認識させる。なお、警報用のブザーを駆動し、警報音により、ドライバーに路面が低μ路面であることを認識させるようにしてもよいし、警報用のブザーとLEDとを併用してもよい。
まず、加速度センサー11によりナックル31に伝播されたタイヤ20の振動波形を検出するとともに、車輪速センサー12により車輪速を検出する。
次に、タイヤ20の振動波形を回転次数比分析手段15にて回転次数比分析し、図3に示すような、横軸を回転次数とする回転次数スペクトルを求める。
回転次数スペクトルは、加速度センサー11で検出したタイヤ振動を、車輪速センサー12から出力される車輪速と回転信号生成手段13から出力されるパルス信号とに基づいてサンプリングした後、FFT処理して求められる。
そして、回転次数スペクトルから、回転次数が10次以上80次以下の複数個の回転次数成分を抽出する。なお、当該タイヤ20の固有振動周波数fr及び固有振動の帯域幅Δfrとから、当該タイヤ20の共振領域を求めるとともに、共振領域にある回転次数成分については抽出しないようにしてもよい。
路面状態の推定は、回転次数スペクトルから求めた、複数の回転次数成分の大きさと予め設定された閾値Kとを比較し、走行中の路面が低μ路面であるか否かを推定する。このとき、回転次数成分の大きさを蓄積したデータから、振動ピークの高さの分布曲線を求め、この分布曲線から回転次数成分の大きさであるピーク値を求め、このピーク値を回転次数成分の大きさとすることにより、回転次数成分の大きさを安定してかつ確実に求めることができる。
走行中の路面が低μ路面であると推定された場合には、警報用のLEDを点灯もしくは点滅させるなどしてドライバーに路面が低μ路面であることを認識させるとともに、路面が低μ路面であるという情報を車両制御手段40に出力して、ABSなどによる車両制御を行う。
また、本発明の路面状態推定装置10は路面の実効的な摩擦係数を推定できるので、本推定結果を、例えば、制御余裕の目安(例としては路面摩擦係数が低くグリップ状態が悪ければ、過大な制動力を加えられない)などの車両挙動の制御に用いることができる。
したがって、本発明の路面状態推定装置10で推定された路面状態の情報を車両制御手段40に出力して、車両の走行状態を制御するようにすれば、ABSブレーキのより高度な制御等が可能になり、車両の安全性を更に高めることができる。
また、上記例では、共振領域[nr−(Δnr/2),nr+(Δnr/2)]にある次数については、回転次数成分の抽出を行わないようにしたが、路面を推定する判定基準が、例えば、回転次数成分のピーク値のうち、閾値Kよりも小さいものが2つ以上あったときに走行中の路面が低μ路面であるとした場合には、共振次数算出手段16を省略し、4つの回転次数の回転次数成分を路面状態推定手段18に出力するようにしてもよい。
具体的には、予め車輪速毎に抽出する回転次数成分を決めておき、回転次数成分抽出手段17では、車輪速センサー12で検出された車輪速に応じて、回転次数スペクトルから抽出する回転次数成分を決定すればよい。なお、車輪速毎に抽出する回転次数成分は、車輪速毎に予測される共振領域にはない回転次数成分とすることは言うまでもない。
また、上記例では、回転次数毎に予め閾値Kを設けて、路面が低μ路面であるか否かを推定したが、予め高μ路面走行時の回転次数スペクトルを求めてこれをマスターデータとして記憶しておき、このマスターデータと回転次数成分抽出手段17から入力された複数の回転次数成分の大きさ、もしくは、ピーク値演算手段18bで演算したピーク値とを比較して、路面が低μ路面であるか否かを推定してもよい。
[実施例]
なお、加速度センサーは、左前輪のナックルに、検出方向が車両前後方向になるよう取り付けた。
また、この路面状態推定装置で推定された路面状態に基づいて車両の走行状態を制御するようにすれば、車両の走行安全性を向上させることができる。
13 回転信号生成手段、14 記憶手段、15 回転次数比分析手段、
15a ローパスフィルタ、15b サンプリング手段、15c 分析手段、
16 共振次数算出手段、17 回転次数成分抽出手段、18 路面状態推定手段、
18a データ蓄積手段、18b ピーク値演算手段、18c 路面推定手段、
20 タイヤ、21 トレッド、22〜24 周方向溝、25 ラグ溝、
26 センターブロック、27 ショルダーブロック、
30 車輪部、31 ナックル、32 ホイール、33 ホイールハブ、
34 サスペンション部材、35 上アーム、36 下アーム、37,38 緩衝部材、
40 車両制御手段、R 路面。
Claims (9)
- タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤの振動を検出して回転次数比分析し、この回転次数比分析して得られたタイヤの振動の回転次数成分の大きさから走行中の路面状態を推定することを特徴とする路面状態推定方法。
- 前記回転次数成分が、10次以上80次以下の回転次数成分であることを特徴とする請求項1に記載の路面状態推定方法。
- 前記回転次数成分を複数個としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の路面状態推定方法。
- 前記タイヤの回転速度を検出し、この回転速度を用いて、予め求めておいた前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数を算出するとともに、前記路面状態を推定する際に用いる回転次数成分から、前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数成分を除外することを特徴とする請求項3に記載の路面状態推定方法。
- 前記タイヤの振動を車両バネ下部にて検出するようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の路面状態推定方法。
- 前記タイヤの回転速度を検出するとともに、前記タイヤの振動を、前記検出されたタイヤの回転速度に同期してサンプリングすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の路面状態推定方法。
- 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の路面状態推定方法により推定した路面状態に基づいて車両の走行状態を制御することを特徴とする車両制御方法。
- タイヤ周方向に沿って周期的なトレッドパターンを有するタイヤと、
車両バネ下部に設置されて車両バネ下部に伝播されるタイヤの振動を検出する振動検出手段と、
前記タイヤの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記振動検出手段で検出されたタイヤの振動を、前記回転速度検出手段により検出されたタイヤの回転速度のデータを用いてサンプリングして、回転次数比分析する回転次数比分析手段と、
前記回転次数比分析手段で得られた回転次数成分から複数の回転次数成分を抽出する回転次数成分抽出手段と、
前記抽出された複数の回転次数成分の大きさに基づいて路面状態を推定する路面状態推定手段とを備えたことを特徴とする路面状態推定装置。 - 前記回転速度検出手段で検出した回転速度を用いて、予め求めておいた前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数を算出する共振次数算出手段を設けるとともに、
前記回転次数成分抽出手段は、路面状態を推定する際に用いる回転次数成分から、前記タイヤの共振周波数に相当する回転次数成分を除外することを特徴とする請求項8に記載の路面状態推定装置。
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