JP2009214796A - 路面状態推定方法及び路面状態推定装置 - Google Patents

路面状態推定方法及び路面状態推定装置 Download PDF

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Abstract

【課題】タイヤにセンサを取付けることなく、走行中のタイヤの接地状態を精度よく推定することのできるタイヤの接地状態推定方法とその装置を提供する。
【解決手段】タイヤセンタから測って、タイヤトレッドの最大接地幅の±40%未満の位置よりもセンタ側にブロックの蹴り出し端が位置するブロックがタイヤ周方向に配列されている路面状態推定用タイヤを用い、ナックルに取り付けられた加速度センサ11により上記ナックルに伝播されたタイヤの振動波形を検出するとともに、この振動波形から、上記ブロックの蹴り出し時の振動に起因するタイヤトレッドの固有振動成分を抽出してその振動レベルを検出して、この検出された振動成分の大きさと予め設定された閾値とを比較し、上記振動レベルが上記閾値よりも大きい場合には路面が低摩擦路であると判定し、上記振動レベルが上記閾値以下の場合には路面が高摩擦路であると判定するようにした。
【選択図】図1

Description

本発明は、走行中の路面の状態を推定する方法とその装置に関するものである。
自動車の走行安定性を高めるため、タイヤと路面間の摩擦係数(路面摩擦係数)もしくはタイヤの接地状態を精度良く推定し、車両制御へフィードバックすることが求められている。予め上記路面摩擦係数やタイヤの接地状態を推定することができれば、制駆動や操舵といった危険回避の操作を起こす前に、例えば、ABSブレーキのより高度な制御等が可能になり、安全性が一段と高まることが予想される。
路面摩擦係数を推定する方法としては、例えば、車輪速を検出し、この検出された車輪速信号ωから外乱ΔTを受けたときの車輪速変動Δωを検出した後、上記Δωを満足するような車輪の伝達関数を最小二乗法で同定し、路面μの勾配を推定するとともに、この路面μの勾配と予め求めておいた車両の制動力とこの路面μの勾配との関係から車両の制動力を推定し、この制動力と上記路面μの勾配とから、スリップ率が零のときの路面μの勾配を推定する方法(例えば、特許文献1参照)や、図9に示すように、空気入りタイヤ50のタイヤトレッド部51にトレッド表面50Sよりも高さの高いセンシングブロック52Hと、トレッド表面50Sよりも高さの低いセンシングブロック52Lとを形成し、各センシングブロック52H,52Lのタイヤ周方向に平行な側面にそれぞれ歪ゲージ53H,53Lを貼り付けて、上記2つの歪ゲージ53H,53Lで検出した歪レベルの差と、予め求めておいた歪レベルの差と路面摩擦係数との関係を示すマップとから路面摩擦係数を推定する方法などが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−160620号公報 特開2002−36836号公報
しかしながら、上記車輪速に基づいて求めた路面μの勾配と推定した車両の制動力とからスリップ率が零のときの路面μの勾配を推定する方法では、タイヤ−路面間で発生している力の情報がないため、推定時間を必要とすることから、路面変化に対する追従性に限界があった。
また、高さの異なるセンシングブロック52H,52Lにそれぞれ貼り付けられた歪ゲージ53H,53Lで検出した歪レベルの差から路面摩擦係数を推定する方法では、路面と直接接するブロックに歪ゲージ53H,53Lなどのセンサを取付ける構成であるため、センサの耐久性の面で問題がある。
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、タイヤにセンサを取付けることなく、走行中の路面の状態を精度よく推定することのできる方法とその装置を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意検討の結果、走行中のタイヤでは、接地面内で変形したブロックの蹴り出し端が接地面から離れてその形が元に戻る際に振動が発生し、この振動の大きさが路面状態に依存することと、この振動が当該タイヤのタイヤトレッドの固有振動を励起し、かつ、この励起されたタイヤトレッドの固有振動の大きさが上記蹴り出し端の振動の大きさに依存することとから、上記タイヤからホイールやホイールハブあるいはナックルなどの車両バネ下部に伝達される上記タイヤトレッドの固有振動の大きさを検出すれば、タイヤにセンサを設けることなく、走行中の路面の状態を精度よく推定することができることを見出し、本発明に到ったものである。
すなわち、本願の請求項1に記載の発明は、走行中の路面の状態を推定する方法であって、車両に、タイヤトレッドの接地領域の幅が最大となるときのタイヤ幅方向の接地端部よりも中央側に形成された、複数の周方向溝と幅方向溝とにより区画されたブロック、もしくは、タイヤ周方向に連続する陸部からタイヤ幅方向に突出する擬似ブロックがタイヤ周方向に複数個配列されているトレッドパターンを有するタイヤを装着するとともに、車両バネ下部に振動検出手段を配置して、上記ブロックの蹴り出し端もしくは上記擬似ブロックの蹴り出し端が路面を離れるときに発生する振動により励起されて上記タイヤから車両バネ下部に伝播されるタイヤトレッドの固有振動を検出し、この検出された固有振動の大きさから走行中の路面状態を推定することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の路面状態推定方法において、上記タイヤとして、上記ブロックの蹴り出し端もしくは上記擬似ブロックの蹴り出し端が、タイヤトレッドのセンタから測って、タイヤトレッドの最大接地幅の±40%未満の位置に形成されているタイヤを用いたことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の路面状態推定方法において、上記タイヤとして、上記ブロックもしくは上記擬似ブロックのタイヤ周方向の長さがタイヤ接地長の20%以下であるタイヤを用いたことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の路面状態推定方法において、車輪部の非回転側部材で、かつ、車輪部の非回転側に設けられた緩衝部材よりもホイール側に位置する非回転側部材に伝播される上記振動を検出することを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、タイヤトレッドの接地領域の幅が最大となるときのタイヤ幅方向の接地端部よりも中央側に形成された、複数の周方向溝と幅方向溝とにより区画されたブロック、もしくは、タイヤ周方向に連続する陸部からタイヤ幅方向に突出する擬似ブロックがタイヤ周方向に複数個配列されているトレッドパターンを有するタイヤを装着した車両を用いて、走行中の路面状態を推定する装置であって、車両バネ下部に配置されて車両バネ下部の振動を検出する振動検出手段と、上記検出された車両バネ下部の振動からタイヤトレッドの固有振動成分の振動レベルを検出する振動レベル検出手段と、この振動レベル検出手段で検出された振動レベルの大きさから走行中の路面状態を推定する路面状態推定手段とを備えたことを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の路面状態推定装置において、上記振動検出手段を、車輪部の非回転側部材で、かつ、緩衝部材よりもホイール側に取付けたことを特徴とするものである。
本発明によれば、複数の周方向溝と幅方向溝とにより区画されたブロック、もしくは、タイヤ周方向に連続する陸部からタイヤ幅方向に突出する擬似ブロックが周方向に複数個配列されているタイヤを搭載した車両を用いるとともに、車両バネ下部に振動検出手段を配置して、上記ブロックもしくは疑似ブロックの蹴り出し時の振動により励起されるタイヤトレッド固有振動を、車両バネ下部にて検出し、この検出されたタイヤトレッドの固有振動の大きさから路面状態を推定するようにしたので、タイヤ部にセンサを設けることなく、走行中の路面状態を精度よく推定することができる。また、タイヤへのセンサ取付けが不要になるので、タイヤの生産効率が向上する。また、タイヤ部にセンサを装着した場合に比較してセンサの耐久性を向上させることができるだけでなく、センサの交換も容易となる。
路面状態を推定するために用いるタイヤとしては、タイヤ幅方向については、タイヤトレッドのセンタから測って、タイヤトレッドの最大接地幅の±40%未満の位置に上記ブロックの蹴り出し端もしくは擬似ブロックの蹴り出し端が形成されているタイヤが好ましく、これにより、上記タイヤトレッドの固有振動を有効に励起することができるので、路面状態を精度良く検出することができる。また、タイヤ周方向については、上記ブロックもしくは上記擬似ブロックのタイヤ周方向における長さがタイヤ接地長の20%以下であることが好ましく、これにより、上記固有振動を精度良く検出することができる。
また、上記振動を車輪部の非回転側部材で、かつ、緩衝部材よりもホイール側にて検出するようにすれば、スリップリングや無線装置などを用いることなく、センサから車体側にデータを伝達することができるので、装置を簡易化することができるとともに、データの劣化を防ぐことができる。
以下、本発明の最良の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本最良の形態に係る路面状態推定装置10の機能ブロック図で、図2は本発明に係る路面状態推定用タイヤ20を示す図、図3は路面状態推定用タイヤ20から伝播されるタイヤトレッドの振動を検出する振動検出手段である加速度センサ11の取付け位置の一例を示す図である。本発明では、上記路面状態推定用タイヤ20を車両に装着するとともに、車両バネ下部に加速度センサ11を備えた路面状態推定装置10を搭載して、走行中の路面の状態を推定する。
路面状態推定装置10は、上記の加速度センサ11と、この加速度センサ11の検出したタイヤトレッドの振動の振動波形からタイヤトレッドの固有振動成分を検出する固有振動抽出手段12と、上記固有振動抽出手段12で抽出したタイヤトレッドの固有振動成分の大きさを検出する振動レベル検出手段13と、上記振動レベル検出手段13で検出された振動レベルの大きさから路面接地状態を推定する路面状態推定手段14とを備えている。上記路面状態推定手段14は、詳細には、閾値設定部14aと比較判定部14bとを有し、閾値設定部14aで設置した閾値と振動レベル検出手段13で検出されたタイヤトレッドの固有振動成分の振動レベルの大きさとを比較判定部14bにて比較し、上記振動レベルが上記閾値を超えた場合には路面が低摩擦路であると判定し、上記振動レベルが上記閾値以下の場合には路面が高摩擦路であると判定する。なお、上記固有振動抽出手段12と振動レベル検出手段13と路面状態推定手段14とにより、本路面状態推定装置10の演算部15を構成する。
路面状態推定用タイヤ20は、図2に示すように、複数本の周方向溝21によりそれぞれ区画された2つの中央陸部22と、上記周方向溝21と横溝23とにより区画されタイヤ周方向に配列された複数のブロック24a,24bと、複数のショルダーブロック25a,25bとを有するタイヤトレッド20Tを備えている。
上記路面状態推定用タイヤ20では、上記周方向に配列されたブロック24a,24bの少なくとも一部(ここでは、全部)が、タイヤの接地時には、タイヤトレッドの接地領域の幅が最大となるときのタイヤ幅方向の接地端部a,bよりも中央側で、タイヤトレッドのセンタCLから測って、同図のWで示す、タイヤトレッド20Tの最大接地幅の±40%未満の位置に形成されている。換言すると、上記ブロック24a,24bのセンタCL寄りの端部が、同図のwで示す、当該タイヤ20の最大接地幅の80%の範囲(中心はセンタCL)よりもタイヤ幅方向内側に位置している。
一方、上記ショルダーブロック25a,25bは、タイヤの接地時には、そのタイヤ幅方向内側部分が接地するので、同図のWで示す当該タイヤ20の最大接地幅の範囲内にはあるが、そのタイヤ幅方向内側の端部は、同図のwで示す当該タイヤ20の最大接地幅の80%の範囲よりもタイヤ幅方向外側に位置している。また、上記ブロック24a,24b及びショルダーブロック25a,25bのタイヤ周方向の長さは、いずれも、タイヤ接地長の20%以下である。
上記加速度センサ11は、図3に示すように、車輪部に設けられたナックル33に取付けられている。上記ナックル33は、路面状態推定用タイヤ20を装着するホイール31とともに回転するホイールハブ32と軸受けを介して連結された車輪部の非回転側の部品(車両バネ下部品)で、このナックル33に図示しないブレーキ装置などが装着される。上記ナックル33は図示しないサスペンション部材を備えた車両懸架装置の上下のアーム34,35と、ゴムブッシュなどの緩衝部材36を介して連結されている。
したがって、上記加速度センサ11はタイヤトレッド20Tに励起され、ホイール31、ホイールハブ32を介してナックル33に伝播されるタイヤトレッド20Tの振動を検出することができる。なお、同じ車両バネ下部であっても、上記加速度センサ11を車両懸架装置の上下のアーム34,35などの、ホイール31と緩衝部材36を介して連結されている部材に取付けると、上記緩衝部材36のダンパー効果により上記タイヤ20の振動の検出精度が低下するので、加速度センサ11の取付け箇所としては、上記緩衝部材36よりもホイール31側に設置した方が当該タイヤ20から車両バネ下部に伝播されるタイヤトレッド20Tの振動を精度良く検出することができる。
なお、演算部15の設置箇所については、上記加速度センサ11と一体の基板に設けて上記ナックル33に取付けてもよいし、車体側に設けて、これをケーブル等で上記加速度センサ11と接続するようにしてもよい。また、上記加速度センサ11としては、圧電式加速度センサ、半導体歪ゲージ式加速度センサなどが挙げられるが、小型でかつ周波数特性に優れた圧電式を用いることが好ましい。
次に、本最良の形態に係る路面状態の推定方法について説明する。
路面状態推定用タイヤ20を走行させると、接地面内においては、図4に示すように、ブロック24は蹴り出しに向かって変形量が大きくなるが、蹴り出し時にはその形が元に戻るため、周方向(タイヤ回転方向)に振動する。タイヤの走行している路面の路面摩擦係数μが高い場合には、上記ブロック24は蹴り出し直前まで路面40に拘束されるが、路面摩擦係数μが低い場合にはその拘束が小さいため、ブロック24は踏み込みから蹴り出しに向かう途中で滑り領域に入り、ブロック24は滑り出す。その結果、ブロック24の振動も路面摩擦係数μが高い場合に比べて大きくなる。すなわち、乾燥アスファルト路のような、路面摩擦係数μが高い路面では、ブロック24の蹴り出し後の振動波形の振幅が小さく、路面摩擦係数μが低い路面では上記振動波形の振幅が大きくなる。なお、ショルダーブロック25のタイヤ接地幅内にある部分も同様に振動する。
一方、タイヤトレッド20Tは、その大きさやトレッドパターン、及び、ゴムの弾性定数などにより決まる固有振動周波数を有し、例えば、タイヤトレッド20Tの表面をハンマーなどで叩くと、特定の周波数でタイヤトレッド20Tが大きく振動することが知られている。図5は、タイヤトレッド20Tをハンマリングしたときに、ナックル33に伝播された振動の波形をナックル33に設置された加速度センサ11により検出し、その検出した振動波形を周波数分析した結果を示す図である。この図からもわかるように、ナックル33に伝播されたタイヤトレッド20Tの振動スペクトルには、特定の周波数(ここでは、210Hz近傍)に鋭く大きなピークが出現する。この周波数がタイヤトレッド20Tの固有振動周波数である。
ナックル33に伝播されるタイヤトレッド20Tの固有振動は、上記ブロック24の振動によっても励起され、その大きさは上記ブロック24の振動の大きさが大きい程大きい。したがって、ナックル33に加速度センサ11を設置して上記路面状態推定用タイヤ20から伝播されるタイヤトレッド20Tの振動波形を検出し、この検出された振動波形からタイヤトレッド20Tの固有振動成分を検出してその振動レベルを求めれば、路面摩擦係数μを推定することができる。
本発明の路面状態推定装置10では、加速度センサ11によりナックル33に伝播された路面状態推定用タイヤ20の振動波形を検出し、固有振動抽出手段12により、上記振動波形からタイヤトレッド20Tの固有振動周波数成分を抽出する。この固有振動抽出手段12としては、例えば、周波数分析装置を用いることができる。すなわち、周波数分析装置で周波数分析して得られた上記振動の周波数スペクトルから、タイヤの固有振動成分(例えば、210Hz近傍の振動成分)を抽出すればよい。あるいは、固有振動抽出手段12として、バンドパスフィルタを用い、上記加速度センサ11で検出された振動波形からタイヤトレッドの固有振動周波数近傍の成分のみを抽出してもよい。
振動レベル検出手段13では、上記固有振動抽出手段12で抽出したタイヤの固有振動周波数成分の大きさを検出する。路面状態推定手段14では、閾値設定部14aで設置した閾値と上記振動レベル検出手段13で検出された振動成分の大きさとを比較判定部14bにて比較し、上記振動レベルが上記閾値よりも大きい場合には路面が低摩擦路であると判定し、上記振動レベルが上記閾値以下の場合には路面が高摩擦路であると判定することにより、走行中の路面の状態を推定する。
路面状態推定用タイヤとしては、上記タイヤ20のように、タイヤトレッド20Tの最大接地幅の±40%未満の位置(以下、タイヤトレッドの最大接地幅の80%未満の領域という)よりもセンタ側にブロックの蹴り出し端が位置するブロック24a,24bのようなブロックがタイヤ周方向に配列されているタイヤが望ましく、特に、トレッドセンタにブロックの蹴り出し端が形成されているブロック列を備えたトレッドパターンを有するタイヤの方がタイヤトレッドの固有振動を励起しやすい。逆に、タイヤトレッドの最大接地幅の80%未満の領域よりも内側にブロックの蹴り出し端のないようなブロック列しかないトレッドパターンを有するタイヤでは、ブロック24の振動自体が小さくなるため、タイヤトレッドの固有振動の増加を検出することが困難である。
また、低摩擦路面では、上記のように、接地蹴り出し端近傍が滑り域になるので、タイヤ周方向の長さが短いブロックは全体が蹴り出し時に滑って振動するため、タイヤの固有振動を励起しやすい。逆に、タイヤ周方向の長さが長いブロックでは、後端が蹴り出していても前端が固着域にあるため振動が小さくなり、タイヤトレッドの固有振動を励起することが困難となる。具体的には、ブロック24のタイヤ周方向の長さがタイヤ接地長の20%よりも大きくなると、タイヤの固有振動を励起することが困難となる。
このように本最良の形態では、タイヤセンタCLから測って、タイヤトレッド20Tの最大接地幅の±40%未満の位置よりもセンタ側にブロックの蹴り出し端が位置するブロック24a,24bがタイヤ周方向に配列されている路面状態推定用タイヤ20を用い、ナックル33に取付けられた加速度センサ11により上記ナックル33に伝播されたタイヤ20の振動波形を検出するとともに、この振動波形から、上記ブロック24a,24bの蹴り出し時の振動に起因するタイヤトレッド20Tの固有振動周波数成分を抽出してその振動レベルを検出して、この検出された振動成分の大きさと予め設定された閾値とを比較し、上記振動レベルが上記閾値よりも大きい場合には路面が低摩擦路であると判定し、上記振動レベルが上記閾値以下の場合には路面が高摩擦路であると判定するようにしたので、タイヤ部にセンサを設けることなく、走行中の路面状態を精度よく推定できる。
また、本発明の路面状態推定装置10と、この路面状態推定装置10で推定したタイヤの接地状態に基づいて車両の走行状態を制御する制御手段とを備えた車両制御装置を構成して車両の走行状態を制御すれば、車両の安全性を更に向上させることができる。
なお、上記最良の形態では、路面状態推定用タイヤ20として、周方向に連続する中央陸部22と、ブロック24a,24b及びショルダーブロック25a,25bを備えたトレッドパターンを有する路面状態推定用タイヤ20を用いたが、上記ブロック24a,24bに代えて、例えば、上記中央陸部22からタイヤ幅方向に突出する擬似ブロックがタイヤ周方向に配列されたトレッドパターンを有するタイヤであってもよい。但し、この場合にも、走行中の路面状態の推定精度を高めるためには、上記疑似ブロックの少なくとも一部が、タイヤの接地時には、タイヤトレッド20Tの当該タイヤ20の最大接地幅80%の範囲よりもタイヤ幅方向内側に位置していることが好ましい。また、上記疑似ブロックのタイヤ周方向の長さについても、タイヤ接地長の20%以下とすることが好ましい。
[実施例]
タイヤサイズが225/45R17の乗用車用タイヤで、図6(a)〜(c)に示すような、トレッドパターンを有する3種類のタイヤを作製し、これらのタイヤを装着した車両に本発明による路面状態推定装置を搭載し、アスファルト路(μ≒1.0)から路面摩擦係数μ0.2程度の低摩擦路に進入させた。
(a)図に示すタイヤ1は、センタにブロックを配置したタイヤである。
(b)図に示すタイヤ2は、最大接地幅の75%の位置の外側にブロックを配置したタイヤである。
(c)図に示すタイヤ3は、最大接地幅の80%の位置の外側にブロックを配置したタイヤである。
なお、走行速度は20km/hrで速度変動幅は2km/hrである。
また、上記各タイヤ1,2,3について、トレッドをハンマリングしてナックルにて振動を計測した結果、タイヤの固有振動のピークは210Hz付近にあることを確認した。
図7(a)〜(c)は、上記各タイヤ1,2,3からナックルに伝播されるタイヤ振動の周波数スペクトルを示す図で、タイヤ1,2ではタイヤトレッドの固有振動のピークは、低摩擦路を走行したときの方がアスファルト路を走行したときよりも大きくなっていることがわかる。一方、タイヤ3では、低摩擦路ではアスファルト路もタイヤトレッドの固有振動のピークが若干は高いものの明らかな差は見られなかった。
これにより、最大接地幅の80%の位置よりも内側にブロックを配置することにより、路面状態を精度よく推定できることが確認された。
図8は、タイヤとして、タイヤ1またはタイヤ2を用いて、ナックルに伝播されるタイヤトレッドの固有振動ピーク付近の振動レベルを連続的にモニターした結果を示す図で、上記振動レベルは、アスファルト路から低摩擦路に侵入後大きくなることがわかる。したがって、同図の破線で示すように、閾値を設けて、走行中の路面がアスファルト路か低摩擦路かを判定するようにすれば、走行中の路面状態を精度よく推定することができることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、タイヤにセンサを設けることなく、走行中のタイヤの接地状態を精度よく推定することができるので、車両の走行安全性を向上させることができる。
本発明の最良の形態に係る路面状態推定装置の構成を示す機能ブロック図である。 本発明の路面状態推定用タイヤのトレッドパターンの一例を示す図である。 加速度センサの取付け位置の一例を示す図である。 タイヤ転動時のブロックの変形状態を示す図である。 ナックルで検出した振動の周波数スペクトルを示す図である。 実施例で使用したタイヤのトレッドパターンを示す図である。 各タイヤで検出した高摩擦路と低摩擦路における振動の周波数スペクトルを示す図である。 車両が高摩擦路から低摩擦路に進入したときの振動レベルの変化を示す図である。 従来の路面摩擦係数の推定方法を示す図である。
符号の説明
10 路面状態推定装置、11 加速度センサ、12 固有振動抽出手段、
13 振動レベル検出手段、14 路面状態推定手段、14a 閾値設定部、
14b 比較判定部、15 演算部、20 路面状態推定用タイヤ、21 周方向溝、
22 中央陸部、23 横溝、24,24a,24b ブロック、
25a,25b ショルダーブロック、31 ホイール、32 ホイールハブ、
33 ナックル、34 上アーム、35 下アーム、36 緩衝部材、40 路面。

Claims (6)

  1. 車両に、タイヤトレッドの接地領域の幅が最大となるときのタイヤ幅方向の接地端部よりも中央側に形成された、複数の周方向溝と幅方向溝とにより区画されたブロック、もしくは、タイヤ周方向に連続する陸部からタイヤ幅方向に突出する擬似ブロックがタイヤ周方向に複数個配列されているトレッドパターンを有するタイヤを装着するとともに、車両バネ下部に振動検出手段を配置して、上記ブロックの蹴り出し端もしくは上記擬似ブロックの蹴り出し端が路面を離れるときに発生する振動により励起されて上記タイヤから車両バネ下部に伝播されるタイヤトレッドの固有振動を検出し、この検出された固有振動の大きさから走行中の路面状態を推定することを特徴とする路面状態推定方法。
  2. 上記タイヤとして、上記ブロックの蹴り出し端もしくは上記擬似ブロックの蹴り出し端が、タイヤトレッドのセンタから測って、タイヤトレッドの最大接地幅の±40%未満の位置に形成されているタイヤを用いたことを特徴とする請求項1に記載の路面状態推定方法。
  3. 上記タイヤとして、上記ブロックもしくは上記擬似ブロックのタイヤ周方向の長さがタイヤ接地長の20%以下であるタイヤを用いたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の路面状態推定方法。
  4. 車輪部の非回転側部材で、かつ、車輪部の非回転側に設けられた緩衝部材よりもホイール側に位置する非回転側部材に伝播される上記振動を検出することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の路面状態推定方法。
  5. タイヤトレッドの接地領域の幅が最大となるときのタイヤ幅方向の接地端部よりも中央側に形成された、複数の周方向溝と幅方向溝とにより区画されたブロック、もしくは、タイヤ周方向に連続する陸部からタイヤ幅方向に突出する擬似ブロックがタイヤ周方向に複数個配列されているトレッドパターンを有するタイヤを装着した車両を用いて、走行中の路面状態を推定する装置であって、車両バネ下部に配置されて車両バネ下部の振動を検出する振動検出手段と、上記検出された車両バネ下部の振動からタイヤトレッドの固有振動成分の振動レベルを検出する振動レベル検出手段と、この振動レベル検出手段で検出された振動レベルの大きさから走行中の路面状態を推定する路面状態推定手段とを備えたことを特徴とする路面状態推定装置。
  6. 上記振動検出手段を、車輪部の非回転側部材で、かつ、緩衝部材よりもホイール側に取付けたことを特徴とする請求項5に記載の路面状態推定装置。
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