JP5284668B2 - 光学式パイロメータ - Google Patents

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Description

本発明は、光ファイバの耐久性を向上させる光学式パイロメータに関する。
航空エンジンのタービンブレードの温度を測定するパイロメータには、タービンブレードから放射される赤外線を受光することによりタービンブレードの温度を測定する光学式パイロメータがある。
光学式パイロメータは、タービンブレードの放射光の光強度を検出するフォトダイオードを有する。フォトダイオードやその周辺の電気回路は航空エンジンの内部の温度に耐えられない。そこで、フォトダイオードは、航空エンジンの外部に設けられる。航空エンジンの外部から内部に光ファイバが挿入され、この光ファイバが航空エンジンの外部に設けられたハウジングまで布設される。ハウジングには、フォトダイオードやその周辺の電気回路が収容される。ハウジング内外における光結合には光ファイバ同士を突き合わせる光コネクタが用いられる。
タービンブレードからの放射光を光ファイバで伝送してフォトダイオードに入射させることにより、タービンブレードの温度を測定することができる。
特開平11−72390号公報 特開昭60−123805号公報
従来の光学式パイロメータについて、コスト分析として、部品ごと、アセンブリごとに、購入コスト、製作コスト、組み立てコストを網羅して順位付けしたところ、光コネクタの購入コストと組み立てコストが上位に順位付けされた。タービンブレードの温度を測定する光学式パイロメータが広い温度環境で使用されることから、光コネクタは、ジルコニアなどの使用温度範囲が広い部品を使用しているため、購入コストが高い。また、光コネクタは、ジルコニアで保持した光ファイバの端面を研磨してその端面同士を突き合わせるため、組み立てコストが高い。
コスト分析の手法によれば、順位が上位の部品をコスト改善対象にするとよい。したがって、光学式パイロメータは、光コネクタに関してコストを改善すれば、効果的にコストダウンできる。
本発明者は、ハウジングと光ファイバを一体化して光コネクタを廃止することで、効果的にコストダウンを実現できないかと考えた。
しかし、ハウジングと光ファイバを一体化すると、熱・曲げ応力による光ファイバ破断という新しい問題が生じる。光ファイバが布設される航空エンジンは温度が高く振動が大きい環境で温め、光ファイバをハウジングにリジッドに固定すると、熱や振動により光ファイバに生じる応力を逃がせないからである。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、光ファイバの耐久性を向上させる光学式パイロメータを提供することにある。
上記目的を達成するために本発明は、航空エンジンのタービンブレードの温度を検出するフォトダイオードと、該フォトダイオードを実装した基板を収容したハウジングと、前記フォトダイオードに固定されると共にハウジング外に延出されて前記タービンブレードに一端が臨み前記タービンブレードからの放射光を前記フォトダイオードに入射させる光ファイバとを有する光学式パイロメータにおいて、前記ハウジングの側面の片側端に該ハウジングの外部からハウジング内部へ前記光ファイバを非固定で挿入する非固定挿入口が設けられ、該非固定挿入口にフェルールが固定され、そのフェルールを通して前記ハウジングの内部へ光ファイバが非固定で挿入され、その光ファイバ先端部が、前記ハウジングの内部で前記非固定挿入口から前記フォトダイオードまで半径40mm以上の曲げを有して前記ハウジング内部で弛みを持たせて半円形に引き回されて前記ハウジングの前記側面に位置した前記フォトダイオードに固定されているものである。
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
(1)光ファイバの耐久性を向上させることができる。
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
図1に示されるように、本発明に係る光学式パイロメータ1は、航空エンジン(図3参照)のタービンブレードに一端を臨ませた光ファイバ2の他端がハウジング3に非固定で挿入され、ハウジング3の内部へ挿入された光ファイバ先端部2aがハウジング3の内部で弛みを持たせて引き回されてからフォトダイオード4に固定されたものである。
フォトダイオード4は、光ファイバ2の他端に臨みタービンブレードの光強度を検出するものである。このフォトダイオード4が実装された基板5がハウジング3に収容されている。基板5には、回路を構成する電子部品が実装される。
ハウジング3の外部から内部へ光ファイバ2を非固定で挿入するために、ハウジング3には非固定挿入口6が設けられる。この非固定挿入口6からハウジング3の内部へ挿入された光ファイバ先端部2aがハウジング3の内部で、非固定挿入口6からフォトダイオード4まで所定の半径以上の曲げを有する弛みを持たせて引き回されている。図示例では、光ファイバ先端部2aが半径Rの半円形に引き回されているが、これに限定されず、U字状、ループ状など所定の半径以上の曲げを有する弛みがあればよい。
ハウジング3は、外形が直方体状に形成された箱であり、上面視で長辺にあたる側面に非固定挿入口6が設けられている。本実施形態では、複数基(図示例は2基)の光学式パイロメータ1が積み重ねられて使用される。このために、航空エンジンの外壁に取り付けられる基礎プレート7が設けられ、この基礎プレート7の上に2基の光学式パイロメータ1が積み重ねられ、これら光学式パイロメータ1がボルトで一括して基礎プレート7に固定されている。
上段の光学式パイロメータ1は、非固定挿入口6が長辺の片側端に近い位置に設けられ、これとほぼ対称に、フォトダイオード4が長辺の反対側端に近い位置に設けられている。一方、下段の光学式パイロメータ1は、非固定挿入口6が長辺の反対側端に近い位置に設けられ、これとほぼ対称に、フォトダイオード4が長辺の片側端に近い位置に設けられている。
ここで、図2(a)に示されるように、光ファイバ2は、フェルール21に挿入されて提供される。フェルール21は、コンジットと呼ばれる金属管22とその金属管22内に長手方向運動自在に収容された樹脂製の保護チューブ23とから構成される。その保護チューブ23内に光ファイバ2が長手方向運動自在に収容される。金属管22の一部が除去されて保護チューブ23の一部が露出され、その保護チューブ23の一部が除去されて光ファイバ2の一部が露出される。
光ファイバ2が布設される航空エンジン近傍の環境では、温度が−54℃〜+200℃の変化を有する。金属管22、保護チューブ23、光ファイバ2はそれぞれ熱膨張率が異なる。温度の変化により金属管22から露出している部分の長さが変化する。図2(b)、図2(c)のように、金属管22の先端から光ファイバ2の先端までの長さをdL1とし、保護チューブ23の先端から光ファイバ2の先端までの長さをdL2とする。金属管22の全長は常温で770.5mmとする。−54℃〜+200℃においてdL1は−2.5mm変化し、dL2は+21.9mm変化する。
図1に示されるように、光ファイバ2は、ハウジング3の外部ではフェルール21に挿入されている。フェルール21の先端は、ハウジング3の非固定挿入口6に設けられた口金8に固定されている。ハウジング3の内部には、フェルール21の先端から露出された保護チューブ23が所定の長さ突きだしている。その保護チューブ23の先端から露出された光ファイバ先端部2aが前述のように半径Rの半円形に引き回されている。光ファイバ先端部2aの端面は、フォトダイオード4の受光面に当接され、接着、溶着などにより固定されている。
このようにして、ハウジング3にフェルール21が固定され、フェルール21内の光ファイバ2はハウジング3に固定されることなく非固定挿入口6からハウジング3内に挿入され、ハウジング3内で光ファイバ先端部2aが弛みを持たせて引き回されフォトダイオード4に固定されている。
本実施形態では、このような2基の光学式パイロメータ1と基礎プレート7を一体にした光学式パイロメータアレイアセンブリが提供される。2基の光学式パイロメータ1からは、それぞれフェルール21が伸びており、それぞれの光ファイバ2の一端がタービンブレードの異なるスポットに臨ませて設置される。
図3に示されるように、本発明に係る光学式パイロメータ1は、光ファイバ2の一端にはセンサヘッド部31が設けられる。センサヘッド部31は、航空エンジン32の外部から航空エンジン32の内部に挿入されている。センサヘッド部31は、航空エンジン32の内部でタービンブレード(図示せず)に光ファイバ2の一端を臨ませた状態で固定されている。
次に、本発明の光学式パイロメータ1の作用を説明する。
本発明の光学式パイロメータ1は、タービンブレードに一端を臨ませた光ファイバ2の他端がそのまま連続的に(継ぎ目無く)フォトダイオード4に接続されている。これにより、従来はコスト要因の上位に順位付けされていた光コネクタが除去され、光学式パイロメータ1が大幅にコストダウンできる。
また、本発明の光学式パイロメータ1は、光ファイバ2をハウジング3にリジッドに固定するのではなく、非固定挿入口6を介して光ファイバ2をハウジング3に非固定で挿入し、光ファイバ先端部2aをハウジング3の内部で弛みを持たせて引き回してからフォトダイオード4に固定した。航空エンジンのような温度が高く振動が大きい環境では、金属管22、保護チューブ23、光ファイバ2の熱膨張率の違いにより、温度に応じて光ファイバ先端部2aの長さが相対的に変化する。しかし、本発明では、弛みが光ファイバ先端部2aの長さの変化を吸収するので、光ファイバ2に破断が生じるような応力は加わらない。
また、本発明の光学式パイロメータ1は、光ファイバ先端部2aがハウジング3の内部で、非固定挿入口6からフォトダイオード4まで所定の半径以上の曲げを有する弛みを持たせて引き回されている。一般に、光ファイバは、曲げを加えると、その曲げの大きさ(半径の小ささ)に応じて伝送損失が増加するが、本発明では光ファイバ先端部2aが所定の半径以上の曲げを有するので、伝送損失の増加は招かない。よって、温度測定の精度が向上する。
本発明の光学式パイロメータ1は、タービンブレードに一端を臨ませた光ファイバ2の他端がそのまま連続的に(継ぎ目無く)フォトダイオード4に接続されている。このため、光コネクタのように継ぎ目がある場合に生じる接続損失がない。よって、温度測定の精度が向上する。
本発明の光学式パイロメータ1に用いる光ファイバ2について曲率半径と伝送損失の関係を評価した。
図4に示されるように、ファイバ径400μmの光ファイバ2において、曲率半径が小さくなるほど伝送損失が大きくなる。曲率半径R=40mmのとき、伝送損失が2.5%であった。光学式パイロメータ1において伝送損失2.5%は許容できる。よって、曲率半径Rは、40mmかそれ以上であれば良い。
次に、温度サイクル試験を行った。
温度サイクル−55℃〜125℃で300h(3h×100サイクル)、+71℃〜125℃で120h(1.5h×80サイクル)の合計420hの熱ストレスを光学式パイロメータ1に印加した。この結果、光ファイバ2に劣化、破断がないことが確認された。
次に、振動試験を行った。
MIL−HDBK−781AFig65の振動プロファイル(図5)により、加振レベル0.01g2/Hzのランダム加振を光学式パイロメータ1に印加した。この結果、光ファイバ2に折損等の異常が発生しないことが確認された。
以上のように、本発明の光学式パイロメータ1は、部品を削減して購入コストや組み立てコストを削減できただけでなく、伝送損失を低く抑えることができると共に温度ストレス試験や振動ストレス試験にも合格した。
本発明の一実施形態を示す光学式パイロメータの図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。 (a)は本発明に用いる光ファイバの構造図、(b)は使用環境の最低温度における光ファイバの構造図、(c)は使用環境の最高温度における光ファイバの構造図である。 図1の光学式パイロメータを取り付けた航空エンジンの中心線の片側を示した側面図である。 本発明の光学式パイロメータに用いる光ファイバの曲率半径対伝送損失特性グラフである。 振動試験に用いる振動プロファイルの図である。
符号の説明
1 光学式パイロメータ
2 光ファイバ
2a 光ファイバ先端部
3 ハウジング
4 フォトダイオード
5 基板
6 非固定挿入口
7 基礎プレート

Claims (1)

  1. 航空エンジンのタービンブレードの温度を検出するフォトダイオードと、該フォトダイオードを実装した基板を収容したハウジングと、前記フォトダイオードに固定されると共にハウジング外に延出されて前記タービンブレードに一端が臨み前記タービンブレードからの放射光を前記フォトダイオードに入射させる光ファイバとを有する光学式パイロメータにおいて、前記ハウジングの側面の片側端に該ハウジングの外部からハウジング内部へ前記光ファイバを非固定で挿入する非固定挿入口が設けられ、該非固定挿入口にフェルールが固定され、そのフェルールを通して前記ハウジングの内部へ光ファイバが非固定で挿入され、その光ファイバ先端部が、前記ハウジングの内部で前記非固定挿入口から前記フォトダイオードまで半径40mm以上の曲げを有して前記ハウジング内部で弛みを持たせて半円形に引き回されて前記ハウジングの前記側面に位置した前記フォトダイオードに固定されていることを特徴とする光学式パイロメータ。
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