JP5283996B2 - 改質ペロブスカイト型複合酸化物、その製造方法及び複合誘電体材料 - Google Patents
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Description
本発明は、改質ペロブスカイト型複合酸化物、その製造方法及びそれを用いた複合誘電体材料に関するものである。
電子機器の小型化、薄型化及び高密度化のため、多層プリント配線板が多く使用されるようになってきた。この多層プリント配線板は、高誘電率材料からなる層を内層又は表層に設けて実装密度を向上させることにより、電子機器の更なる小型化、薄型化及び高密度化に対応可能となる。
従来、高誘電率材料としては、セラミック粉末を成形した後、これを焼成して得られるセラミック焼結体を用いているため、その寸法や形状は成形法により制約を受けた。また、焼結体は高硬度で脆性であるため、自由な加工が困難であり、任意の形状や複雑な形状を得るには困難を極めた。
従来、高誘電率材料としては、セラミック粉末を成形した後、これを焼成して得られるセラミック焼結体を用いているため、その寸法や形状は成形法により制約を受けた。また、焼結体は高硬度で脆性であるため、自由な加工が困難であり、任意の形状や複雑な形状を得るには困難を極めた。
このため、樹脂中に高誘電率の無機充填材を分散させた複合誘電体材料が、加工性に優れるため注目されている。ここで用いられる高誘電率の無機充填材としては、例えば、ペロブスカイト型複合酸化物が知られている(例えば、特許文献1を参照)。しかし、ペロブスカイト型複合酸化物は、比表面積が経時変化し、誘電特性を低下させるという問題があり、また、水と接触すると構造中のBa、Ca、Sr、Mg等のAサイト金属が溶出し、これに伴って樹脂と無機充填材との界面が剥離したり、イオンマイグレーションにより絶縁劣化が起こるという問題があった。
一方、特許文献2〜6に記載されるように、樹脂中における分散性を向上させる目的で、チタン酸バリウム等の高誘電率の無機充填材をカップリング剤で表面処理することが知られている。
一方、特許文献2〜6に記載されるように、樹脂中における分散性を向上させる目的で、チタン酸バリウム等の高誘電率の無機充填材をカップリング剤で表面処理することが知られている。
しかしながら、本発明者らが検討したところ、ペロブスカイト型複合酸化物の粒子表面をカップリング剤で単に処理しても、比表面積の経時変化やBa等のAサイト金属の溶出を十分に低減することができず、更には、処理後のペロブスカイト型複合酸化物粒子に通常の解砕処理を施したとしても処理前の粒度分布からは大きく外れたものとなるということが分かった。粒度分布が大きく変化してしまうと、樹脂への均質な充填性や樹脂との親和性が低下するといった問題が起こる。また、処理粒子の粒度分布を処理前の粒度分布に近づけようとしても、解砕時間が著しく掛かったり、粒子破壊により未処理表面が露出するといった問題が起こる。また、ペロブスカイト型複合酸化物を改質する被覆成分からの被覆成分の溶出という問題もある。
従って、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、誘電特性は改質前と同等以上で、ペロブスカイト型複合酸化物を改質する被覆成分からの被覆成分の溶出も実質的になく、ペロブスカイト型複合酸化物の比表面積の経時変化及びAサイト金属の溶出を効果的に抑制すると共に、解砕性の良好な改質ペロブスカイト型複合酸化物、その製造方法及びそれを用いた複合誘電体材料を提供することを目的とする。
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行なった結果、ペロブスカイト型複合酸化物の粒子表面を、加水分解性TiO2前駆体と特定のランタノイド元素の塩とを加水分解した後、焼成することにより生成される被覆層で覆った改質ペロブスカイト型複合酸化物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、ペロブスカイト型複合酸化物の粒子表面を、TiO2と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種とで被覆した改質ペロブスカイト型複合酸化物であって、前記被覆が、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種の塩とを加水分解した後、焼成することにより形成されたものであることを特徴とする改質ペロブスカイト型複合酸化物である。
上記被覆は、被覆されるペロブスカイト型複合酸化物に対して酸化物換算で0.05質量%〜20質量%の割合であることが好ましい。
被覆されるペロブスカイト型複合酸化物はABO3型であり、Aサイト元素がBa、Ca、Sr及びMgの群から選択される少なくとも1種であり、Bサイト元素がTi及びZrの群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
被覆されるペロブスカイト型複合酸化物のBET比表面積は、0.5m2/g〜12m2/gであることが好ましい。
即ち、本発明は、ペロブスカイト型複合酸化物の粒子表面を、TiO2と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種とで被覆した改質ペロブスカイト型複合酸化物であって、前記被覆が、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種の塩とを加水分解した後、焼成することにより形成されたものであることを特徴とする改質ペロブスカイト型複合酸化物である。
上記被覆は、被覆されるペロブスカイト型複合酸化物に対して酸化物換算で0.05質量%〜20質量%の割合であることが好ましい。
被覆されるペロブスカイト型複合酸化物はABO3型であり、Aサイト元素がBa、Ca、Sr及びMgの群から選択される少なくとも1種であり、Bサイト元素がTi及びZrの群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
被覆されるペロブスカイト型複合酸化物のBET比表面積は、0.5m2/g〜12m2/gであることが好ましい。
また、本発明は、(A1)ペロブスカイト型複合酸化物粒子を溶媒に分散させてスラリーを調製する工程と、(A2)前記(A1)で得られたスラリーに、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種の塩とを添加し、触媒の存在下に前記前駆体及び前記塩の加水分解反応を行った後、スラリーを乾燥させる工程と、(A3)前記(A2)で得られた乾燥物を焼成する工程とを含むことを特徴とする改質ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法である。
上記溶媒は親水性有機溶媒であり、且つ上記触媒は有機アルカリ類であることが好ましい。
上記溶媒は親水性有機溶媒であり、且つ上記触媒は有機アルカリ類であることが好ましい。
更に、本発明は、上記した改質ペロブスカイト型複合酸化物と高分子材料とを含むことを特徴とする複合誘電体材料である。
本発明によれば、誘電特性は改質前と同等以上で、ペロブスカイト型複合酸化物を改質する被覆成分からの被覆成分の溶出も実質的になく、ペロブスカイト型複合酸化物の比表面積の経時変化及びAサイト金属の溶出を効果的に抑制すると共に、解砕性の良好な改質ペロブスカイト型複合酸化物、その製造方法及びそれを用いた複合誘電体材料を提供することを目的とするができる。
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
(改質ペロブスカイト型複合酸化物)
本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物は、ペロブスカイト型複合酸化物の粒子表面を、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択されるランタノイド元素の少なくとも1種の塩とを加水分解した後、焼成することにより生成される被覆層で被覆したものである。
(改質ペロブスカイト型複合酸化物)
本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物は、ペロブスカイト型複合酸化物の粒子表面を、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択されるランタノイド元素の少なくとも1種の塩とを加水分解した後、焼成することにより生成される被覆層で被覆したものである。
改質対象となるペロブスカイト型複合酸化物は、特に制限されるものではないが、ABO3型ペロブスカイトでAサイトにCa、Ba、Sr及びMgの群から選択される少なくとも1種の金属元素が配置され、BサイトにTi及びZrの群から選択される少なくとも1種の金属元素が配置されたペロブスカイト型複合酸化物であることが好ましく、具体的な好ましい化合物を例示すると、BaTiO3、CaTiO3、SrTiO3、MgTiO3、BaxCa1-xTiO3(式中、xは0<x<1)、BaxSr1-xZrO3(式中、xは0<x<1)、BaTixZr1-xO3(式中、xは0<x<1)、BaxCa1-xTiyZr1-yO3(式中、xは0<x<1、yは0<y<1)等が挙げられる。これらのペロブスカイト型複合酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
このようなペロブスカイト型複合酸化物の製造履歴は、特に制限されるものではなく、例えば、共沈法、加水分解法、水熱合成法等の湿式法、ゾル−ゲル法、固相法等の通常の方法で得られるものが使用される。これらペロブスカイト型複合酸化物の物性としては、特に制限されるものではないが、BET比表面積が好ましくは0.5m2/g〜12m2/g、より好ましくは1.5m2/g〜6m2/gのものがハンドリング性、分散性及び樹脂との密着性という点で好ましい。また、平均粒径が好ましくは0.1μm〜2μm、より好ましくは0.2μm〜1μmのものが、ハンドリング性や分散性が更に向上する点で特に好ましい。この平均粒径は、レーザー光散乱法により求められる。また、不純物含有量の少ないものが、高純度の製品を得る上で、特に好ましい。
また、改質対象となるペロブスカイト型複合酸化物は、副成分元素を含有するものであってもよい。このような副成分元素としては、ペロブスカイト型複合酸化物を構成するAサイト又はBサイト以外の原子番号3以上の金属元素、半金属元素、遷移金属元素及び希土類元素が挙げられ、中でも、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、V、Bi、Al、W、Mo、Nb及びSiの群から選択される少なくとも1種が好ましい。また、副成分元素の含有量は、ペロブスカイト型複合酸化物に対して好ましくは0.05モル%〜20モル%、より好ましくは0.5モル%〜5モル%である。
また、ペロブスカイト型複合酸化物の粒子形状は、特に制限されるものではなく、球状、粒状、板状、鱗片状、ウィスカー状、棒状、フィラメント状等の何れであってもよい。
本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物において、TiO2と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種とを含む被覆は、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種の塩とを加水分解した後、その加水分解生成物を焼成することにより形成されたものであることが特徴である。通常、未処理のペロブスカイト型複合酸化物は、粒子表面のpHが塩基性であるが、上記した被覆は、粒子表面のpHを中性乃至弱塩基性付近(pH7〜9、好ましくは7〜8)にすることができるため、チタン酸バリウム系酸化物では本来得られない表面電位を形成できることから、セラミックコンデンサー向けの用途だけでなく、無機充填材、トナーの外添剤等の他の用途への適用可能性が広がる。なお、粒子表面のpHの値は、改質ペロブスカイト型複合酸化物4gに純水100gを加え、25℃で60分間攪拌後、上澄み液のpHをpHメーターにより測定して求めたものである。
加水分解性TiO2前駆体としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン等のチタンアルコキシド、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルバイロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジ−トリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート、ポリジイソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ポリジノルマルブチルチタネート等のチタネート系カップリング剤が挙げられる。これらの加水分解性TiO2前駆体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
Nd、La、Ce、Pr及びSmの塩としては、例えば、酢酸塩、硝酸塩、塩化物、アルコキシド等が挙げられ、より具体的には、酢酸ネオジム1水和物、硝酸ネオジム6水和物、塩化ネオジム6水和物、トリイソプロポキシネオジム、酢酸ランタン1.5水和物、硝酸ランタン6水和物、トリイソプロポキシランタン、塩化ランタン7水和物、酢酸セリウム1水和物、硝酸セリウム6水和物、塩化セリウム7水和物、酢酸プラセオジム2水和物、硝酸プラセオジム6水和物、塩化プラセオジム7水和物、トリイソプロポキシプラセオジム、酢酸サマリウム4水和物、硝酸サマリウム6水和物、塩化サマリウム6水和物、トリイソプロポキシサマリウム等が挙げられる。これらの塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
被覆層を形成する際の焼成温度は、400℃以上であることが好ましく、600℃〜1200℃であることがより好ましい。焼成温度が低過ぎると、被覆成分中に有機物が残存し、また、被覆が十分に緻密化されないためAサイト金属の溶出低減効果が低く、場合によってはAサイト金属の溶出量が被覆前よりも増えたり比誘電率が低下することがある。一方、焼成温度が高過ぎると、粒子同士の融着や粒成長が顕著になり、解砕処理を施したとしても改質前の形状や粒度分布から大きく外れたものとなる傾向があるため、焼成温度は1200℃以下とすることが好ましい。また、焼成時間は、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間〜10時間である。
被覆の割合は、ペロブスカイト型複合酸化物に対して酸化物換算で0.05質量%〜20質量%とすることが好ましく、0.1質量%〜5質量%とすることがより好ましい。被覆の割合が0.05質量%未満であると、比表面積の経時変化抑制効果及び溶出低減効果が十分に得られない場合があり、一方、被覆の割合が20質量%を超えると、改質ペロブスカイト型複合酸化物の誘電特性が低下する場合がある。また、被膜中に含まれるランタノイド元素の量は、TiO2成分に対して化学量論的均質が保たれるという点で、酸化物換算で0.04質量%〜15質量%とすることが好ましく、0.08質量%〜3質量%とすることがより好ましい。
<改質ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法>
本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物は、下記工程:
(A1)ペロブスカイト型複合酸化物粒子を溶媒に分散させてスラリーを調製する工程と、
(A2)(A1)で得られたスラリーに、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種の塩とを添加し、触媒の存在下に前駆体及び塩の加水分解反応を行った後、スラリーを乾燥させる工程と、
(A3)(A2)で得られた乾燥物を焼成する工程と
を含む方法により製造することができる。
本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物は、下記工程:
(A1)ペロブスカイト型複合酸化物粒子を溶媒に分散させてスラリーを調製する工程と、
(A2)(A1)で得られたスラリーに、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種の塩とを添加し、触媒の存在下に前駆体及び塩の加水分解反応を行った後、スラリーを乾燥させる工程と、
(A3)(A2)で得られた乾燥物を焼成する工程と
を含む方法により製造することができる。
(A1)工程では、改質対象となるペロブスカイト型複合酸化物100質量部に対して溶媒を好ましくは100質量部〜900質量部、より好ましくは150質量部〜400質量部添加、撹拌し、ペロブスカイト型複合酸化物の各粒子が均一に分散したスラリーを調製する。
溶媒としては、水、親水性有機溶媒又はこれらの混合物を用いることができるが、水との接触によりBa、Ca、Sr、Mg等のAサイト金属がペロブスカイト型複合酸化物から溶出する恐れがある点や得られる改質ペロブスカイト型複合酸化物の解砕性をより向上させる点で、親水性有機溶媒を用いることが好ましい。
親水性有機溶媒としては、例えば、グリコール、アルコール等が挙げられる。グリコールの具体例としては、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。また、アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ペンタノール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの溶媒の中でも、ペロブスカイト型複合酸化物の分散性が良好であるという点で、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びn−ブタノールが特に好ましい。
親水性有機溶媒としては、例えば、グリコール、アルコール等が挙げられる。グリコールの具体例としては、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。また、アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ペンタノール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの溶媒の中でも、ペロブスカイト型複合酸化物の分散性が良好であるという点で、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びn−ブタノールが特に好ましい。
また、(A1)工程において、ペロブスカイト型複合酸化物を溶媒に均一分散させるため、必要に応じて、高速攪拌、コロイドミル、ホモジナイザー等の分散装置を用いてもよく、また、必要に応じて、スラリーに常用の分散剤を添加してもよい。
(A2)工程では、(A1)工程で調製したスラリーに、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択されるランタノイド元素の少なくとも1種の塩と、触媒とを添加し、加水分解反応を行って、ペロブスカイト型複合酸化物の粒子表面に均一に加水分解生成物を析出させる。
加水分解性TiO2前駆体及びランタノイド元素の塩の合計添加量は、上述した好ましい被覆割合となるように、溶媒あるいは希釈媒への溶解度、反応収率等を考慮して適宜決定すればよい。
触媒としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ類、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機アルカリ塩類、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピリジン、アニリン、コリン、グアニジン、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等の有機アルカリ類、蟻酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、蟻酸モノメチルアミン、酢酸ジメチルアミン、乳酸ピリジン、グアニジノ酢酸、酢酸アニリン等の有機酸アルカリ塩を用いることができる。これらの中でも、溶媒として親水性有機溶媒を用いる場合には、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム等の有機アルカリ類が望ましい。
触媒の添加量は、加水分解性TiO2前駆体及びランタノイド元素の塩の合計に対するモル比で好ましくは0.2〜10、より好ましくは0.5〜5である。なお、触媒は水に溶解した溶液としてスラリーに加えることが望ましい。
加水分解反応の条件は、反応温度が好ましくは40℃〜120℃、より好ましくは50℃〜90℃であり、反応時間が好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間〜10時間である。なお、加水分解反応は攪拌下に行うことが好ましい。
加水分解反応終了後、常法に従って固液分離し、必要により洗浄して加水分解生成物で被覆されたペロブスカイト型複合酸化物を回収後、乾燥し、必要に応じて軽度の解砕を行う。回収方法は特に制限されるものではなく、噴霧乾燥等の手段を用いてもよい。
また、乾燥処理の条件は、乾燥温度が好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃〜120℃であり、乾燥時間が好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間〜10時間である。さらに、真空ポンプ等を併用して減圧状態のもとに乾燥してもよい。
(A3)工程は、(A2)工程で得られた乾燥物(加水分解生成物で被覆されたペロブスカイト型複合酸化物)を好ましくは400℃以上、より好ましくは600℃〜1200℃で焼成することにより、被覆を形成する。
本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法において、加水分解生成物で被覆されたペロブスカイト型複合酸化物を焼成することにより、Aサイト金属の溶出をより顕著に低減させることができる。焼成温度が低過ぎると、被覆成分中に有機物が残存し、また、被覆が十分に緻密化されないためAサイト金属の溶出低減効果が低く、場合によってはペロブスカイト型複合酸化物を改質する被覆成分からの被覆成分の溶出が多くなったり、Aサイト金属の溶出量が被覆前よりも増えたり比誘電率が低下することがある。一方、焼成温度が高過ぎると、粒子同士の融着や粒成長が顕著になり、解砕処理を施したとしても改質前の形状や粒度分布から大きく外れたものとなる傾向があるため、焼成温度は1200℃以下とすることが好ましい。また、焼成時間は、好ましくは2時間以上、より好ましくは3時間〜10時間である。
焼成後、適宜冷却し、解砕処理を行うことにより、粒子表面が、TiO2と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種とを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物を得ることができる。本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物は、解砕性が良好であるため、解砕処理は、通常、少スケールではフードミキサーやコーヒーミル、工業的にはヘンシェルミキサー等の常用の混合機で行えば十分である。
焼成後、適宜冷却し、解砕処理を行うことにより、粒子表面が、TiO2と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種とを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物を得ることができる。本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物は、解砕性が良好であるため、解砕処理は、通常、少スケールではフードミキサーやコーヒーミル、工業的にはヘンシェルミキサー等の常用の混合機で行えば十分である。
このようにして得られる本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物は、誘電特性は改質前と同等以上で、ペロブスカイト型複合酸化物を改質する被覆成分からの被覆成分の溶出も実質的になく、比表面積の経時変化を抑制すると共に、水分等との接触により溶出するBa、Ca、Sr、Mg等のAサイト金属の溶出を顕著に低減したものであり、更に、軽度の解砕処理を施すだけで処理前の粒度分布に近い粒度分布にすることができる、即ち、解砕性の良好なものである。また、本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物の粒子表面をシランカップリング剤等で更に表面改質する場合、解砕性が良好であることから、元のペロブスカイト型複合酸化物の粒度分布に近い粒度分布を維持した状態で均一に行うことが可能となり、後述する高分子材料との親和性が向上する。
そのため、本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物は、特に熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光感光性樹脂等の高分子材料と無機充填材とからなる複合誘電体材料用の無機充填材として好適に用いることができる他、トナーの外添剤等の用途にも適用可能である。
そのため、本発明の改質ペロブスカイト型複合酸化物は、特に熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光感光性樹脂等の高分子材料と無機充填材とからなる複合誘電体材料用の無機充填材として好適に用いることができる他、トナーの外添剤等の用途にも適用可能である。
次いで、本発明の複合誘電体材料について説明する。
本発明の複合誘電体材料は、高分子材料と無機充填材としての上記改質ペロブスカイト型複合酸化物とを含有するものである。
本発明の複合誘電体材料は、後述する高分子材料に上記改質ペロブスカイト型複合酸化物を好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%〜90質量%含有させることで好ましくは15以上、より好ましくは20以上の比誘電率を有する材料であることが望ましい。
本発明の複合誘電体材料は、高分子材料と無機充填材としての上記改質ペロブスカイト型複合酸化物とを含有するものである。
本発明の複合誘電体材料は、後述する高分子材料に上記改質ペロブスカイト型複合酸化物を好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%〜90質量%含有させることで好ましくは15以上、より好ましくは20以上の比誘電率を有する材料であることが望ましい。
本発明において用いることができる高分子材料としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は光感光性樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シアネート樹脂類、ビスマレイミド類、ビスマレイミド類とジアミンとの付加重合物、多官能性シアン酸エステル樹脂、二重結合付加ポリフェニレンオキサイド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルベンジルエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、フマレート樹脂等の公知のものが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これら熱硬化性樹脂の中でも、耐熱性、加工性、価格等のバランスからエポキシ樹脂及びポリビニルベンジルエーテル樹脂が好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂、シアネート樹脂類、ビスマレイミド類、ビスマレイミド類とジアミンとの付加重合物、多官能性シアン酸エステル樹脂、二重結合付加ポリフェニレンオキサイド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリビニルベンジルエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、フマレート樹脂等の公知のものが挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これら熱硬化性樹脂の中でも、耐熱性、加工性、価格等のバランスからエポキシ樹脂及びポリビニルベンジルエーテル樹脂が好ましい。
本発明で用いるエポキシ樹脂とは、1分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールF、ビスフェノールS、アルキル置換又は非置換のビフェノール等のジグリシジルエーテル、フェノール類とジシクロペンタジエンやテルペン類との付加物または重付加物をエポキシ化したもの、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エポキシ樹脂硬化剤としては、当業者において公知のものはすべて用いることができるが、特に、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のC2〜C20の直鎖脂肪族ジアミン、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パラキシレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルプロパン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4'−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアノジアミド等のアミン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、tert−ブチルフェノールノボラック樹脂、ノニルフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、ポリパラオキシスチレン等のポリオキシスチレン、フェノールアラルキル樹脂、ナフトール系アラルキル樹脂等の、ベンゼン環やナフタリン環その他の芳香族性の環に結合する水素原子が水酸基で置換されたフェノール化合物と、カルボニル化合物との共縮合によって得られるフェノール樹脂や、酸無水物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エポキシ樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂に対して、当量比で好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.7〜1.3の範囲である。
エポキシ樹脂硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂に対して、当量比で好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.7〜1.3の範囲である。
また、本発明においてエポキシ樹脂の硬化反応を促進させる目的で公知の硬化促進剤を用いることができる。硬化促進剤としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、ホスホニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で用いるポリビニルベンジルエーテル樹脂とは、ポリビニルベンジルエーテル化合物から得られるものである。ポリビニルベンジルエーテル化合物は、下記一般式(1)で示される化合物が好ましい。
一般式(1)の式中、R1はメチル基又はエチル基を示す。R2は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を示す。R2で表される炭化水素基は、置換基を有していてもよいアルキル基、アラルキル基、アリール基等である。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、例えば、ベンジル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。R3は水素原子又はビニルベンジル基を示す。なお、R3の水素原子は一般式(1)の化合物を合成する場合の出発化合物に由来し、水素原子とビニルベンジル基とのモル比が60:40〜0:100であると硬化反応を十分に進行させることができ、また、本発明の複合誘電体材料において、十分な誘電特性が得られる点で好ましい。nは2〜4の整数を示す。
ポリビニルベンジルエーテル化合物は、それのみを樹脂材料として重合して用いてもよく、他のモノマーと共重合させて用いてもよい。共重合可能なモノマーとしてはスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ジビニルベンジルエーテル、アリルフェノール、アリルオキシベンゼン、ジアリルフタレート、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピロリドン、これらの変性物等が挙げられる。これらのモノマーの配合割合は、ポリビニルベンジルエーテル化合物に対して2質量%〜50質量%である。
ポリビニルベンジルエーテル化合物の重合及び硬化は、公知の方法で行うことができる。硬化は、硬化剤の存在下又は不存在下の何れでも可能である。硬化剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキシド、ジクミルパーオキシド、t−ブチルパーベンゾエート等の公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。使用量は、ポリビニルベンジルエーテル化合物100質量部に対して0質量部〜10質量部である。硬化温度は、硬化剤の使用の有無及び硬化剤の種類によっても異なるが、十分に硬化させるためには、好ましくは20℃〜250℃、より好ましくは50℃〜250℃である。
また、硬化の調整のために、ハイドロキノン、ベンゾキノン、銅塩等を配合してもよい。
また、硬化の調整のために、ハイドロキノン、ベンゾキノン、銅塩等を配合してもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ヒドロキシスチレン樹脂、ノボラック樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ナイロン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等の公知のものが挙げられる。
感光性樹脂としては、例えば、光重合性樹脂、光架橋性樹脂等の公知のものが挙げられる。
本発明で用いる光重合性樹脂としては、例えば、エチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体(感光性オリゴマー)と光重合性化合物(感光性モノマー)と光重合開始剤を含むもの、エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤とを含むもの等が挙げられる。感光性オリゴマーとしては、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加したもの、それをさらに酸無水物と反応させたものやグリシジル基を有する(メタ)アクリルモノマーを含む共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させたもの、さらにそれに酸無水物を反応したもの、水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーを含む共重合体に(メタ)アクリル酸グリシジルを反応させたもの、さらにそれに酸無水物を反応したもの、無水マレイン酸を含む共重合体に水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーあるいはグリシジル基を有する(メタ)アクリルモノマーを反応させたもの等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
光重合性化合物(感光性モノマー)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルフォリン、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインとそのアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類、アントラキノン類、キサントン類、チオキサントン類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、これらの光重合開始剤は、安息香酸系、第三アミン系等の公知慣用の光重合促進剤と併用することができる。光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ブレンステッド酸の鉄芳香族化合物塩(チバ・ガイギー社、CG24−061)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
光カチオン重合開始剤によってエポキシ樹脂が開環重合するが、光重合性は通常のグリシジルエステル系エポキシ樹脂よりも脂環エポキシ樹脂の方が反応速度が速いのでより好ましい。脂環エポキシ樹脂とグリシジルエステル系エポキシ樹脂とを併用することもできる。脂環エポキシ樹脂としては、例えば、ビニルシクロヘキセンジエポキサイド、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシアジペート、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート、ダイセル化学工業(株)製、EHPE−3150等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
光架橋性樹脂としては、例えば、水溶性ポリマー重クロム酸塩系、ポリケイ皮酸ビニル(コダックKPR)、環化ゴムアジド系(コダックKTFR)等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの感光性樹脂の誘電率は一般に2.5〜4.0と低い。従って、バインダーの誘電率を上げるために、感光性樹脂の感光特性を損なわない範囲で、より高誘電性のポリマー(例えば、住友化学のSDP−E(ε:15<)、信越化学のシアノレジン(ε:18<))や高誘電性液体(例えば、住友化学のSDP−S(ε:40<))を添加することもできる。
本発明において、上記した高分子材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の複合誘電体材料において、改質ペロブスカイト型複合酸化物の配合量は、樹脂との複合時に占める割合として、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%〜90質量%である。この理由は60質量%未満では十分な比誘電率が得られない傾向があり、一方、90質量%を越えると粘度が増加し分散性が悪くなる傾向があるとともに、複合物の固形時に十分な強度が得られない等の懸念があるためである。上記配合により好ましくは15以上、より好ましくは20以上の比誘電率を有する材料であることが望ましい。
本発明の複合誘電体材料において、改質ペロブスカイト型複合酸化物の配合量は、樹脂との複合時に占める割合として、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%〜90質量%である。この理由は60質量%未満では十分な比誘電率が得られない傾向があり、一方、90質量%を越えると粘度が増加し分散性が悪くなる傾向があるとともに、複合物の固形時に十分な強度が得られない等の懸念があるためである。上記配合により好ましくは15以上、より好ましくは20以上の比誘電率を有する材料であることが望ましい。
また、本発明の複合誘電体材料は、本発明の効果を損なわない範囲の添加量で他の充填剤を含有することができる。他の充填剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボン微粉、黒鉛微粉、炭化ケイ素等が挙げられる。
また、本発明の複合誘電体材料には、本発明の効果を損なわない範囲で、硬化剤、ガラス粉末、カップリング剤、高分子添加剤、反応性希釈剤、重合禁止剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機系充填剤、防カビ剤、調湿剤、染料溶解剤、緩衝剤、キレート剤、難燃剤、シランカップリング剤(インテグラルブレンド法)等を添加してもよい。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の複合誘電体材料は、複合誘電体ペーストを調製し、有機溶剤の除去、硬化反応又は重合反応を行うことにより製造することができる。
複合誘電体ペーストは、樹脂成分、改質ペロブスカイト型複合酸化物、必要により添加される添加剤及び有機溶剤を含有するものである。
複合誘電体ペーストに含有される樹脂成分は、熱硬化性樹脂の重合性化合物、熱可塑性樹脂の重合体及び感光性樹脂の重合性化合物である。なお、これらの樹脂成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ここで、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物を示し、例えば、完全硬化前の前駆体重合体、重合性オリゴマー及び単量体を含む。また、重合体とは、実質的に重合反応が完了した化合物を示す。
必要により添加される有機溶剤としては、用いる樹脂成分により異なり、樹脂成分を溶解できるものであれば特に制限されるものではないが、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、エーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐のアルキル基を有するモノアルコールのエチルグリコールエーテル、プロピレングリコールエーテル、ブチルグリコールエーテル、ケトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エステル、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチレングリコールアセテート、メトキシプロピルアセテート、メトキシプロパノール、その他ハロゲン化炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン及びジキシレンが好ましい。
本発明において、複合誘電体ペーストは、所望の粘度に調製して使用される。複合誘電体ペーストの粘度は、通常、1,000mPa・s〜1,000,000mPa・s(25℃)であり、複合誘電体ペーストの塗布性を考慮すると、好ましくは10,000mPa・s〜600,000mPa・s(25℃)である。
本発明の複合誘電体材料は、フィルム状、バルク状又は所定形状の成形体として加工して用いることができ、特に薄膜形状の高誘電体フィルムとして用いることができる。
本発明の複合誘電材料を用いて複合誘電体フィルムを製造するには、例えば、従来公知の複合誘電体ペーストの使用方法に従って製造すればよく、下記にその一例を示す。
複合誘電体ペーストを基材上に塗布した後、乾燥することによりフィルム状に成形することができる。基材としては、例えば、表面に剥離処理がなされたプラスチックフィルムを用いることができる。剥離処理が施されたプラスチックフィルム上に塗布してフィルム状に成形した場合、一般には成形後、フィルムから基材を剥離して用いることが好ましい。基材として用いることができるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、アラミド、カプトン、ポリメチルペンテン等のフィルムを挙げることができる。また、基材として用いるプラスチックフィルムの厚みとしては、1μm〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは1μm〜40μmである。また、基材表面上に施す離型処理としては、シリコーン、ワックス、フッ素樹脂等を表面に塗布する離型処理が好ましく用いられる。
複合誘電体ペーストを基材上に塗布した後、乾燥することによりフィルム状に成形することができる。基材としては、例えば、表面に剥離処理がなされたプラスチックフィルムを用いることができる。剥離処理が施されたプラスチックフィルム上に塗布してフィルム状に成形した場合、一般には成形後、フィルムから基材を剥離して用いることが好ましい。基材として用いることができるプラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、アラミド、カプトン、ポリメチルペンテン等のフィルムを挙げることができる。また、基材として用いるプラスチックフィルムの厚みとしては、1μm〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは1μm〜40μmである。また、基材表面上に施す離型処理としては、シリコーン、ワックス、フッ素樹脂等を表面に塗布する離型処理が好ましく用いられる。
また、基材として金属箔を用い、金属箔の上に誘電体フィルムを形成してもよい。このような場合、基材として用いた金属箔をコンデンサーの電極として用いることができる。
基材上に前記複合誘電体ペーストを塗布する方法としては、特に限定されるものではなく、一般的な塗布方法を用いることができる。例えば、ローラー法、スプレー法、シルクスクリーン法等により塗布することができる。
このような誘電体フィルムは、プリント基板等の基板に組み込んだ後、加熱して熱硬化することができる。また、感光性樹脂を用いた場合には、選択的に露光することによりパターニングすることができる。
また、例えば、カレンダー法等により、本発明の複合誘電体材料を押出成形して、フィルム状に成形してもよい。
押出成形した誘電体フィルムは、上記の基材上に押し出されるように成形されてもよい。また、基材として、金属箔を用いる場合、金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル、鉄等を材料とする箔の他、これらの合金の箔、複合箔等を用いることができる。金属箔には、必要時に応じて表面粗面化の処理や、接着剤の塗布等の処理を施しておいてもよい。
押出成形した誘電体フィルムは、上記の基材上に押し出されるように成形されてもよい。また、基材として、金属箔を用いる場合、金属箔としては、銅、アルミニウム、真鍮、ニッケル、鉄等を材料とする箔の他、これらの合金の箔、複合箔等を用いることができる。金属箔には、必要時に応じて表面粗面化の処理や、接着剤の塗布等の処理を施しておいてもよい。
また、金属箔の間に誘電体フィルムを形成してもよい。この場合、金属箔上に複合誘電体ペーストを塗布した後、この上に金属箔を載せ、金属箔の間に複合誘電体ペーストを挟んだ状態で乾燥させることにより、金属箔の間に挟まれた状態の誘電体フィルムを形成してもよい。また、金属箔の間に挟まれるように押出成形することにより、金属箔の間に設けられた誘電体フィルムを形成してもよい。
また、本発明の複合誘電体材料は、前述した有機溶媒を用いてワニスとした後、これにクロス又は不織布を含浸し、乾燥を行うことによりプリプレグとして用いてもよい。用いることができるクロスや不織布の種類は、特に制限されるものではなく、公知のものを使用することができる。クロスとしては、ガラスクロス、アラミドクロス、カーボンクロス、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。また、不織布としては、アラミド不織布、ガラスペーパー等が挙げられる。プリプレグは、回路基板等の電子部品に積層した後、硬化することにより、電子部品に絶縁層を導入することができる。
本発明の複合誘電体材料は、高い比誘電率を有することから電子部品、特にプリント回路基板、半導体パッケージ、コンデンサー、高周波用アンテナ、無機EL等の電子部品の誘電体層として好適に用いることができる。
本発明の複合誘電体材料を用いて多層プリント配線板を製造するには、当該技術分野で公知の方法を用いて製造することがでる(例えば、特開2003−192768号公報、特開2005−29700号公報、特開2002−226816号公報、特開2003−327827号公報等参照。)。なお、以下に示す一例は、複合誘電体材料の高分子材料として熱硬化性樹脂を用いた場合の例示である。
本発明の複合誘電体材料を前述した誘電体フィルムとし、誘電体フィルムの樹脂面で回路基板に加圧、加熱するか、或いは真空ラミネーターを使用してラミネートする。ラミネート後、フィルムから基材を剥離して露出された樹脂層上に、更に金属箔をラミネートし、樹脂を加熱硬化させる。
また、本発明の複合誘電体材料をプリプレグとしたものの回路基板へのラミネートは、真空プレスにより行うことができる。具体的にはプリプレグの片面を回路基板に接触させ、他面に金属箔をのせてプレスを行うことが望ましい。
また、本発明の複合誘電体材料をワニスとして用い、回路基板に、スクリーン印刷、カーテンコート、ロールコート、スプレーコート等を用いて塗布・乾燥することにより多層プリント配線板の中間絶縁層を形成することができる。
本発明において、絶縁層を最外層に持つプリント配線板の場合は、スルーホール及びバイアホール部をドリルまたはレーザーで穴開けを行い、絶縁層表面を粗化剤処理し微細な凹凸を形成する。絶縁層の粗化方法としては、絶縁樹脂層が形成された基板を酸化剤等の溶液中に浸漬する方法や、酸化剤等の溶液をスプレーする方法等の仕様に応じて、実施することができる。粗化処理剤の具体例としては、重クロム酸塩、過マンガン酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等の酸化剤、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、メトキシプロパノール等の有機溶剤、また苛性ソーダ、苛性カリ等のアルカリ性水溶液、硫酸、塩酸等の酸性水溶液、又は各種プラズマ処理等を用いることができる。また、これらの処理は併用して用いてもよい。上記のように、絶縁層が粗化されたプリント配線板上は、次いで蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の乾式めっき、もしくは無電解・電解めっき等の湿式めっきにより導体層を形成する。このとき、導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解めっきのみで導体層を形成してもよい。このように導体層が形成された後、アニール処理することにより、熱硬化性樹脂の硬化が進行し導体層のピール強度をさらに向上させることもできる。このようにして、最外層に導体層を形成することができる。
また、中間絶縁層を形成した金属箔は、真空プレスで積層することにより、多層化できる。中間絶縁層を形成した金属箔は、内層回路が形成されたプリント配線板上に、真空プレスで積層することにより、最外層が導体層のプリント配線板にすることができる。また、本発明の複合誘電体材料を用いたプリプレグは、金属箔と供に、内層回路が形成されたプリント配線板上に、真空プレスで積層することにより、最外層が導体層のプリント配線板にすることができる。コンホーマル工法等で所定のスルーホール及びバイアホール部をドリルまたはレーザーで穴開けを行い、スルーホール及びバイアホール内をデスミア処理し、微細な凹凸を形成する。次に、無電解・電解めっき等の湿式めっきにより、層間の導通を取る。
さらに、必要に応じてこれらの工程を数回繰り返し、更に、最外層の回路形成が終了した後、ソルダーレジストを、スクリーン印刷法によるパターン印刷・熱硬化、又はカーテンコート・ロールコート・スプレーコートによる全面印刷・熱硬化後レーザーでパターンを形成することにより、所望の多層プリント配線板を得る。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<ペロブスカイト型複合酸化物試料>
改質対象となるペロブスカイト型複合酸化物試料として、固相法により得られた市販の(Ba0.92Ca0.08)(Ti0.71Zr0.29)O3(平均粒径0.76μm、BET比表面積2.17m2/g)を用いた。なお、平均粒径はレーザー光散乱法により求めた。また、ペロブスカイト型複合酸化物4gを純水100mlに分散させて4質量%スラリーを調製し、25℃で1時間100rpmで攪拌後、pHメーターにて上澄み液のpHを測定した結果、pHは9.22であった。
<ペロブスカイト型複合酸化物試料>
改質対象となるペロブスカイト型複合酸化物試料として、固相法により得られた市販の(Ba0.92Ca0.08)(Ti0.71Zr0.29)O3(平均粒径0.76μm、BET比表面積2.17m2/g)を用いた。なお、平均粒径はレーザー光散乱法により求めた。また、ペロブスカイト型複合酸化物4gを純水100mlに分散させて4質量%スラリーを調製し、25℃で1時間100rpmで攪拌後、pHメーターにて上澄み液のpHを測定した結果、pHは9.22であった。
<実施例1:TiO2・Nd被覆ペロブスカイト型複合酸化物>
(A1工程)
n−ブタノール150質量部に、ペロブスカイト型複合酸化物試料100質量部を添加し、十分に分散を行ないスラリーを調製した。
(A2工程)
A1工程で得られたスラリーにテトラ−n−ブトキシチタン(加水分解性TiO2前駆体)を1.7質量部、酢酸ネオジム1水和物(Ndの塩)を0.9質量部となるように攪拌下に添加し、次いで20質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液3質量部を添加して90℃で3時間加水分解反応を行った。加水分解反応終了後、常法に従って固液分離後、更に得られた分離ケーキをエタノール300質量部に分散し、1時間攪拌した後再度固液分離し、80℃で20時間乾燥し、解砕を行って、粒子表面に加水分解生成物が析出したペロブスカイト型複合酸化物を得た。
(A3工程)
A2工程で得られたペロブスカイト型複合酸化物を大気中1000℃で4時間焼成を行い、粒子表面がTiO2及びNdを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物を得た。得られ改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料4gを純水100mlに分散させて4質量%スラリーを調製し、25℃で1時間100rpmで攪拌後、pHメーターにて上澄み液のpHを測定した結果、pHは7.40であった。
(A1工程)
n−ブタノール150質量部に、ペロブスカイト型複合酸化物試料100質量部を添加し、十分に分散を行ないスラリーを調製した。
(A2工程)
A1工程で得られたスラリーにテトラ−n−ブトキシチタン(加水分解性TiO2前駆体)を1.7質量部、酢酸ネオジム1水和物(Ndの塩)を0.9質量部となるように攪拌下に添加し、次いで20質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液3質量部を添加して90℃で3時間加水分解反応を行った。加水分解反応終了後、常法に従って固液分離後、更に得られた分離ケーキをエタノール300質量部に分散し、1時間攪拌した後再度固液分離し、80℃で20時間乾燥し、解砕を行って、粒子表面に加水分解生成物が析出したペロブスカイト型複合酸化物を得た。
(A3工程)
A2工程で得られたペロブスカイト型複合酸化物を大気中1000℃で4時間焼成を行い、粒子表面がTiO2及びNdを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物を得た。得られ改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料4gを純水100mlに分散させて4質量%スラリーを調製し、25℃で1時間100rpmで攪拌後、pHメーターにて上澄み液のpHを測定した結果、pHは7.40であった。
<実施例2:TiO2・La被覆ペロブスカイト型複合酸化物>
酢酸ネオジム1水和物(Ndの塩)の代わりに、酢酸ランタン1.5水和物(Laの塩)を用いた以外は実施例1と同様にして、TiO2及びLaを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られた改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは7.46であった。
酢酸ネオジム1水和物(Ndの塩)の代わりに、酢酸ランタン1.5水和物(Laの塩)を用いた以外は実施例1と同様にして、TiO2及びLaを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られた改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは7.46であった。
<実施例3:TiO2・Ce被覆ペロブスカイト型複合酸化物>
酢酸ネオジム1水和物(Ndの塩)の代わりに、酢酸セリウム1水和物(Ceの塩)を用いた以外は実施例1と同様にして、TiO2及びCeを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られた改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは7.23であった。
酢酸ネオジム1水和物(Ndの塩)の代わりに、酢酸セリウム1水和物(Ceの塩)を用いた以外は実施例1と同様にして、TiO2及びCeを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られた改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは7.23であった。
<実施例4:TiO2・Pr被覆ペロブスカイト型複合酸化物>
酢酸ネオジム1水和物(Ndの塩)の代わりに、酢酸プラセオジム2水和物(Prの塩)を用いた以外は実施例1と同様にして、TiO2及びPrを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られた改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは7.51であった。
酢酸ネオジム1水和物(Ndの塩)の代わりに、酢酸プラセオジム2水和物(Prの塩)を用いた以外は実施例1と同様にして、TiO2及びPrを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られた改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは7.51であった。
<実施例5:TiO2・Sm被覆ペロブスカイト型複合酸化物>
酢酸ネオジム1水和物(Ndの塩)の代わりに、酢酸サマリウム4水和物(Smの塩)を用いた以外は実施例1と同様にして、TiO2及びSmを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られた改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは7.34であった。
酢酸ネオジム1水和物(Ndの塩)の代わりに、酢酸サマリウム4水和物(Smの塩)を用いた以外は実施例1と同様にして、TiO2及びSmを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られた改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは7.34であった。
<実施例6:TiO2・Nd被覆ペロブスカイト型複合酸化物>
焼成温度を650℃に変えた以外は実施例1と同様にして、TiO2及びNdを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られた改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは7.43であった。
焼成温度を650℃に変えた以外は実施例1と同様にして、TiO2及びNdを含む被覆層で被覆された改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られた改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、この改質ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは7.43であった。
<比較例1:シランカップリング剤処理ペロブスカイト型複合酸化物>
ペロブスカイト型複合酸化物試料100質量部をコーヒーミルに仕込み、撹拌しながらシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製;商品名 KBM−403)1.2質量部を1分間かけて添加し、更に2分間攪拌した後、処理した粉末を取り出し、再度コーヒーミルに仕込み2分間攪拌して処理粉末を取り出した。これによりシランカップリング剤の乾燥工程後の固着濃度は0.73質量%と計算される。この処理粉末を80℃にて20時間静置乾燥した。乾燥時にシランカップリング剤は加水分解、脱水縮合工程を経てシランカップリング剤で処理したペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られたシランカップリング剤処理ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、このシランカップリング剤処理ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは5.73であった。
ペロブスカイト型複合酸化物試料100質量部をコーヒーミルに仕込み、撹拌しながらシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製;商品名 KBM−403)1.2質量部を1分間かけて添加し、更に2分間攪拌した後、処理した粉末を取り出し、再度コーヒーミルに仕込み2分間攪拌して処理粉末を取り出した。これによりシランカップリング剤の乾燥工程後の固着濃度は0.73質量%と計算される。この処理粉末を80℃にて20時間静置乾燥した。乾燥時にシランカップリング剤は加水分解、脱水縮合工程を経てシランカップリング剤で処理したペロブスカイト型複合酸化物試料を得た。得られたシランカップリング剤処理ペロブスカイト型複合酸化物試料の諸物性を表1に示した。なお、このシランカップリング剤処理ペロブスカイト型複合酸化物試料のpHを実施例1と同様に測定した結果、pHは5.73であった。
<誘電特性>
実施例1〜6の改質ペロブスカイト型複合酸化物試料及び無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料の各9gと、熱硬化性のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート815、分子量約330、比重1.1、25℃での公称粘度9〜12P)3gと、硬化促進剤(1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、25℃での公称粘度4〜12P)0.24gとを、脱泡機能を備えた攪拌機(THINKY社製、商品名:泡取り練太郎)を用いて混練し、エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、混練条件は、撹拌運転5分、脱泡運転5分とした。
得られたエポキシ樹脂組成物それぞれを120℃、30分で硬化させて複合誘電体試料を作製し、常法に従って誘電特性を評価した。
実施例1〜6の改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を用いた複合誘電体試料の誘電特性は、無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料を用いたものと比べて、同等かそれ以上であることが確認された。
実施例1〜6の改質ペロブスカイト型複合酸化物試料及び無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料の各9gと、熱硬化性のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:エピコート815、分子量約330、比重1.1、25℃での公称粘度9〜12P)3gと、硬化促進剤(1−イソブチル−2−メチルイミダゾール、25℃での公称粘度4〜12P)0.24gとを、脱泡機能を備えた攪拌機(THINKY社製、商品名:泡取り練太郎)を用いて混練し、エポキシ樹脂組成物を調製した。なお、混練条件は、撹拌運転5分、脱泡運転5分とした。
得られたエポキシ樹脂組成物それぞれを120℃、30分で硬化させて複合誘電体試料を作製し、常法に従って誘電特性を評価した。
実施例1〜6の改質ペロブスカイト型複合酸化物試料を用いた複合誘電体試料の誘電特性は、無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料を用いたものと比べて、同等かそれ以上であることが確認された。
<溶出試験>
実施例1〜6及び比較例1の改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の各4gを純水100mlに分散させて4質量%スラリーを調製し、25℃で1時間100rpmで攪拌後、次いで、ろ過分離し、ろ液中のBa及びCaの濃度と被覆成分に由来するTi、Nd、La、Ce、Pr、Sm、Siの濃度をICP−AESで計測し、試料からの溶出分として定量した。結果を表2に示した。また、無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料を比較例2として表2に併記した。
実施例1〜6及び比較例1の改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の各4gを純水100mlに分散させて4質量%スラリーを調製し、25℃で1時間100rpmで攪拌後、次いで、ろ過分離し、ろ液中のBa及びCaの濃度と被覆成分に由来するTi、Nd、La、Ce、Pr、Sm、Siの濃度をICP−AESで計測し、試料からの溶出分として定量した。結果を表2に示した。また、無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料を比較例2として表2に併記した。
<解砕性評価>
実施例1〜6及び比較例1の改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の各250gをフードミキサーに仕込み、10分間の解砕処理を施した。解砕処理後の試料の平均粒径をレーザー光散乱法により求め、無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料の平均粒径を基準として、平均粒径の増加割合が50%以下のものを解砕性◎と評価し、50%を超え100%以下のものを解砕性○と評価し、100%を超え200%以下のものを解砕性△と評価し、200%を超えるものを×と評価した。結果を表2に示した。
実施例1〜6及び比較例1の改質ペロブスカイト型複合酸化物試料の各250gをフードミキサーに仕込み、10分間の解砕処理を施した。解砕処理後の試料の平均粒径をレーザー光散乱法により求め、無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料の平均粒径を基準として、平均粒径の増加割合が50%以下のものを解砕性◎と評価し、50%を超え100%以下のものを解砕性○と評価し、100%を超え200%以下のものを解砕性△と評価し、200%を超えるものを×と評価した。結果を表2に示した。
<比表面積の経時変化>
実施例1〜6、比較例1〜2の改質ペロブスカイト型複合酸化物試料及び無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料それぞれを、温度40℃及び湿度90%の環境下に24時間曝露した後、試料のBET比表面積を測定した。なお、無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料を比較例3とする。曝露前のBET比表面積をS1とし、曝露後のBET比表面積をS2として、比表面積の変化率[%]を式:(S2−S1)/S1×100により求めた。比表面積の変化率が2%以下のものを◎と評価し、2%を超え5%以下のものを○と評価し、5%を超え10%以下のものを△と評価し、10%を超えるものを×と評価した。結果を表2に示した。なお、BET比表面積は、株式会社マウンテック社製Macsorb HM−1201を用いて秤量試料の全表面積を計測し、試料秤量値で規格化したものである。
実施例1〜6、比較例1〜2の改質ペロブスカイト型複合酸化物試料及び無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料それぞれを、温度40℃及び湿度90%の環境下に24時間曝露した後、試料のBET比表面積を測定した。なお、無処理のペロブスカイト型複合酸化物試料を比較例3とする。曝露前のBET比表面積をS1とし、曝露後のBET比表面積をS2として、比表面積の変化率[%]を式:(S2−S1)/S1×100により求めた。比表面積の変化率が2%以下のものを◎と評価し、2%を超え5%以下のものを○と評価し、5%を超え10%以下のものを△と評価し、10%を超えるものを×と評価した。結果を表2に示した。なお、BET比表面積は、株式会社マウンテック社製Macsorb HM−1201を用いて秤量試料の全表面積を計測し、試料秤量値で規格化したものである。
以上の結果から分かるように、実施例1〜6の改質ペロブスカイト型複合酸化物では、誘電特性は改質前と同等以上であるにも関わらず、Ba及びCaの溶出が効果的に抑制されており、なおかつ被覆成分からの被覆成分の溶出も抑制されていた。更には、比表面積の経時変化が少なく、解砕性も良好であった。
Claims (7)
- ペロブスカイト型複合酸化物の粒子表面を、TiO2と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種とで被覆した改質ペロブスカイト型複合酸化物であって、前記被覆が、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種の塩とを加水分解した後、焼成することにより形成されたものであることを特徴とする改質ペロブスカイト型複合酸化物。
- 前記被覆は、前記ペロブスカイト型複合酸化物に対して酸化物換算で0.05質量%〜20質量%の割合であることを特徴とする請求項1に記載の改質ペロブスカイト型複合酸化物。
- 前記ペロブスカイト型複合酸化物がABO3型であり、Aサイト元素がBa、Ca、Sr及びMgの群から選択される少なくとも1種であり、Bサイト元素がTi及びZrの群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の改質ペロブスカイト型複合酸化物。
- 前記ペロブスカイト型複合酸化物のBET比表面積が、0.5m2/g〜12m2/gであることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の改質ペロブスカイト型複合酸化物。
- (A1)ペロブスカイト型複合酸化物粒子を溶媒に分散させてスラリーを調製する工程と、
(A2)前記(A1)で得られたスラリーに、加水分解性TiO2前駆体と、Nd、La、Ce、Pr及びSmの群から選択される少なくとも1種の塩とを添加し、触媒の存在下に前記前駆体及び前記塩の加水分解反応を行った後、スラリーを乾燥させる工程と、
(A3)前記(A2)で得られた乾燥物を焼成する工程と
を含むことを特徴とする改質ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法。 - 前記溶媒が親水性有機溶媒であり、且つ前記触媒が有機アルカリ類であることを特徴とする請求項5に記載の改質ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載の改質ペロブスカイト型複合酸化物と高分子材料とを含むことを特徴とする複合誘電体材料。
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