本発明の実施の形態について、図面を用いて以下に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いることとする。また、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指すものとする。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の評価方法について、図1乃至4を参照して説明する。はじめに、図1及び2を参照して、半導体層に照射した参照光の反射率が半導体層の溶融状態に応じて変化する様子及びこの性質を利用した半導体層の評価方法について示す。なお、図1及び2における説明では簡単のため、レーザー光の照射時間や照射パルス数を一定にして、レーザー光の照射強度のみを変化させた場合について示す。
図1において、半導体層116は絶縁層112上に形成されており、絶縁層112はベース基板100上に形成されている。ベース基板100としては、例えば、ガラス基板を用いることができ、絶縁層112としては、例えば、酸化珪素からなる層を用いることができ、また、半導体層116としては、例えば、単結晶シリコン半導体層を用いることができる。なお、半導体層116を溶融させるためのレーザー光140は半導体層116の上方から照射される。
参照光150は、レーザー光140が照射される面とは反対の面、すなわち、図中下方から照射される。ここで、参照光150は半導体層116の溶融状態を判断するためのものであるから、少なくともその一部が半導体層116にまで到達する必要がある。すなわち、参照光150は、ベース基板100及び絶縁層112を透過する波長の光とする。具体的には、例えば、ベース基板としてガラス基板を用いる場合には、200nm以上の波長の光を選択することが好ましい。
図1(A)はレーザー光140の照射強度が小さく、半導体層116が非溶融状態にある場合を示している。参照光150が図中下方から照射されると、一部は半導体層116を透過し、他の一部は半導体層116などの界面において反射され、反射光152となる。そして、照射した参照光150の強度と、反射光152の強度の比から、反射率を算出することができる。なお、図1(A)においては簡単のため、半導体層116と絶縁層112との界面における反射のみを図示しているが、実際の反射光にはその他の界面等からの反射が含まれている。
図1(B)には、レーザー光140の照射強度が比較的大きく、半導体層116の一部が溶融状態となっている場合(部分溶融状態となっている場合)を示す。この場合には、参照光150の大部分が、溶融状態となっている半導体層116aと固体の(溶融していない)半導体層116bとの界面において反射されるため、図1(A)の場合と比較して反射光152の強度(反射率)は増大することになる。
ここで、参照光150の波長として、固体の半導体層116bに一定程度吸収される波長を選択した場合には、固体の半導体層116bの厚さに依存して反射光152の強度が変化することになる。例えば、半導体層116aが非常に薄い場合(半導体層116の表面のごく一部のみが溶融状態となっている場合)には、半導体層116aが厚い場合(半導体層の多くの部分が溶融状態となっている場合)と比較して半導体層116bにおける参照光150の吸収が大きくなるため、反射光152の強度は小さいものとなる。これは、半導体層116の溶融状態に依存して反射光152の強度が変化することを意味している。
上記の性質を利用することにより、部分溶融状態の詳細な評価が可能になる。この場合、参照光150の波長の選択が問題となるが、少なくとも一部が半導体層116bに吸収される波長であれば良いため、例えば、半導体層として単結晶シリコン半導体層を用いる場合には、800nm以下の波長を選択することができる。波長の下限は、光の侵入長と半導体層との膜厚を考慮して決定すればよいが、例えば、半導体層116の厚みが100nm程度であるならば、少なくとも300nm以上の波長を選択することが好ましいと言える。また、参照光150を用いて溶融状態を評価するのであるから、参照光150の強度は溶融状態に大きな影響を与えない(溶融状態を実質的に変化させない)程度とすることが重要である。
図2(A)には、レーザー光140の照射強度が十分に大きく、半導体層116全体が溶融状態となっている場合(完全溶融状態となっている場合)を示す。この場合には、図1(B)の場合のように、溶融していない半導体層(固体の半導体層)による吸収が存在しないため、反射光152の強度は図1(A)、(B)の場合と比較して大きくなる。なお、この状態においては、レーザー光140の照射強度の変化に対して、反射光152の強度の変化は極めて小さいと言える。
図2(B)に、レーザー光140の照射強度と、参照光150及び反射光152から算出した反射率との関係を模式的に示す。ここで、グラフの横軸はレーザー光140の照射強度であり、縦軸は反射率である。上述のように、レーザー光140の照射強度が小さい場合には、半導体層116は非溶融状態であるため、反射率は他の状態と比較して小さい(反射率:R0)。なお、非溶融状態では、反射率は、レーザー光140の照射強度にかかわらず概ね一定である。
レーザー光140の照射強度が徐々に大きくなり、I1で示される値に達した場合には、半導体層116の表面が溶融する。この際、溶融状態の半導体層116a表面(界面)での反射が生じるため、反射率は急激に増大する(反射率:R1)。さらに、レーザー光140の照射強度を大きくすると、半導体層116が溶融状態となる領域が大きくなり、非溶融状態である領域が小さくなるため、レーザー光140の照射強度に依存して反射率が増大することになる。そして、さらにレーザー光140の照射強度を大きくしていくと、I2で示される値において、反射率の増大が飽和する。
以上、まとめると次のようになる。
・半導体層のレーザー光が照射される面とは反対の面に参照光を照射して、その反射率を観測する。
・第1の反射率(R1)と第2の反射率(R2)を基準とする。
・第1の反射率(R1):レーザー光の照射強度と反射率との関係を示すグラフにおいて、反射率が急激に増大する反射率である。すなわち、半導体層の表面のみが溶融状態にある場合の反射率である。
・第2の反射率(R2):レーザー光の照射強度と反射率との関係を示すグラフにおいて、反射率の増大が飽和する反射率である。すなわち、半導体層の略全体(表面から裏面まで)が溶融状態にある場合の反射率である。
・反射率が第1の反射率未満である場合:半導体層が非溶融状態にあると判断される。
・反射率が第1の反射率以上、第2の反射率未満である場合:半導体層が部分溶融状態にあると判断される。
・反射率が第2の反射率以上である場合:半導体層が完全溶融状態にあると判断される。
このように、反射率を観測することにより、半導体層の溶融状態を評価することができる。本発明では反射率のみを観測すればよいため、きわめて簡便に半導体層の溶融状態を評価することができる。
次に、図3を用いて、パルス発振レーザー光により半導体層を溶融させる場合における溶融状態の評価方法を説明する。なお、ここでは説明の便宜上、パルス発振の発振周波数が極めて高く、パルス発振レーザー光を照射している間の半導体層の冷却について、実質的に無視することができる状況を想定して説明することとする。また、本実施の形態においてはパルス発振レーザー光を照射する場合の一例について説明するが、パルス発振レーザー光に代えて連続発振レーザー光を用いても良いことは言うまでもない。連続発振レーザー光を用いる場合には、パルス発振レーザー光のパルス幅を十分に長くした場合と同様に考えればよい。
図3(A)は、パルス発振レーザー光の強度と時間の関係を示す図である。図3(B)は、参照光の反射率と時間の関係を示す図である。図3(A)の時間軸と、図3(B)の時間軸は対応しており、時間t1、時間t2、時間t3、時間t4、時間t5においてパルス発振レーザー光の強度がピークを有している。
図3において、一パルスの強度は、部分溶融となる強度I1を僅かに下回っており、最初のパルスが照射される時間t1において、半導体層は溶融しない。このため、時間t1においては、反射率はR0から変化しない。その後、2番目のパルスが照射される時間t2において半導体層は溶融(部分溶融)し、反射率がR1を超えることになる。そして3番目のパルスが照射される時間t3において、さらに溶融が進行し、残存する非溶融状態の半導体層が減少する。
4番目のパルスが照射される時間t4において、半導体層は完全溶融し、反射率がR2に達する。その後、5番目のパルスが照射される時間t5においては反射率の増加は飽和しており、反射率はR2から変化しない。なお、ここでは冷却(固化)による反射率の変化については示していないが、これはあくまで模式図であり、実際には冷却による反射率の変化を伴う。
なお、図3において、パルス発振レーザー光の強度はI1を僅かに下回っているが、これは説明の便宜のためであり、パルス発振レーザー光の強度は任意で構わない。例えば、パルス発振レーザー光の強度をI1以上としても全く問題はない。パルス発振レーザー光の強度はその目的にあわせて適宜設定することができる。
以上、まとめると次のようになる。
・半導体層のレーザー光が照射される面とは反対の面に参照光を照射して、その反射率の経時変化を観測する。
・反射率が変化しない段階:半導体層が非溶融状態にあると判断される。
・反射率が変化する段階:半導体層が部分溶融状態にあると判断される。
・反射率の変化が飽和した段階:半導体層が完全溶融状態にあると判断される。
なお、パルス発振レーザー光の強度をI1より大きく設定した場合には、最初のパルスが照射された段階で半導体層が部分溶融状態となるため、上記の「反射率が変化しない段階」は存在しないことになる。また、パルス発振レーザー光の強度をI2より大きく設定した場合には、最初のパルスが照射された段階で半導体層が完全溶融状態となるため、上記の「反射率が変化しない段階」及び「反射率が変化する段階」は存在しないことになる。したがって、これらの場合を考慮して半導体層の溶融状態を評価すればよい。
このように、反射率を観測することにより、半導体層の溶融状態を評価することができる。本発明では反射率のみを観測すればよいため、きわめて簡便に半導体層の溶融状態を評価することができる。
なお、現実には、図3(A)のように一定の強度を安定してパルス発振させることは難しい。したがって、パルス発振レーザー光を照射しながら、半導体層が所望の溶融状態であるか否かによって照射パルス数、照射時間、照射強度などを適宜調節することが好ましいと言える。
次に、図4を用いて、パルス発振レーザー光により半導体層を溶融させる場合における評価方法の別の例について説明する。なお、ここではパルス発振の発振周波数が低く、一パルスの照射により加熱された半導体層が、次の一パルスを照射するまでの間に冷却されてしまう状況、すなわち、熱の蓄積がない状況を想定して説明することとする。
図4(A)は、パルス発振レーザー光の強度と時間の関係を示す図である。図4(B)は、参照光の反射率と時間の関係を示す図である。図4(A)の時間軸と、図4(B)の時間軸は対応しており、時間t1’、時間t2’においてパルス発振レーザー光の強度がピークを有している。
図4(A)において、目的のパルス発振レーザー光の強度をI’にて示す。上述のように、現実のパルス発振レーザー光ではその強度を安定させることは困難であるから、目的のパルス発振レーザー光の強度I’が決定している場合であっても、目的のパルス発振レーザー光の強度I’に対して現実のパルス発振レーザー光の強度が小さくなる場合や大きくなる場合が生じ得る。例えば、時間t1’においては、現実のパルスレーザー光の強度は目的のパルス発振レーザー光の強度I’を下回っている。
このように、所望の強度が得られていない場合には、半導体層も所望の溶融状態には達していないと考えられるから、このままでは欠陥の低減が不十分であり、半導体層の特性は低いものとなってしまう。この問題を解消するための一例としては、多数のパルス発振レーザー光を半導体層に照射して、パルス毎の強度ぶれの影響を低減する方法がある。しかしながら、この方法は最初の一パルスにて所望の溶融状態が得られた場合であっても一律に多数のパルス発振レーザー光を照射することになるから、スループットの面で問題がある。また、多数のパルスを無駄に発振することになるから、レーザー発振器の寿命という点からも好ましくない。
ここでは、上記の問題を解消するために、半導体層の溶融状態を評価する。より具体的には、パルス発振レーザー光の照射毎に所望の溶融状態に達したか否かを評価する。これにより、半導体層の溶融状態の評価にあわせてレーザー光の照射処理の継続の要否を決定することができるため、スループットを向上させることができる。また、レーザー発振器の寿命を延ばすことにもつながる。
具体的な評価方法は以下の通りである。
はじめに、目的の溶融状態を決定し、目的の溶融状態に対応する「目的の反射率(R’)」を決定する。当該決定の際には、上述した評価方法を用いることもできる。
次に、パルス発振レーザー光を照射した際の反射率の経時変化を測定する。例えば、図4において、最初のパルスが照射される時間t1’における反射率(最大値)は、目的の反射率(R’)未満となっている。この場合には、所望の溶融状態には達していないものと判断する。その後、2番目のパルスが照射される時間t1’における反射率(最大値)が目的の反射率(R’)に達している、この場合には所望の溶融状態に達していると判断する。なお、目的の反射率(R’)以上となる一定範囲では、所望の溶融状態に達していると判断しても構わない。一定範囲の具体例としては、例えば、「目的の反射率(R’)以上第2の反射率(R2)以下」とすることができる。
なお、図4においては示していないが、反射率が上記の一定範囲を超えた場合には、所望の溶融状態を超えたものと判断することができる。例えば、一定範囲を「目的の反射率(R’)以上第2の反射率(R2)以下」とした場合には、所望の溶融状態を超えたものと判断することができる。なお、第2の反射率(R2)を超える状況では微結晶化が進行し、単結晶半導体としては好ましくない。
以上、まとめると次のようになる。
・半導体層のレーザー光が照射される面とは反対の面に参照光を照射して、その反射率の経時変化を観測する。
・目的の反射率(R’)を基準とする。
・目的の反射率(R’):目的の強度のレーザー光が照射された場合の反射率(の最大値)である。
・反射率の最大値が目的の反射率未満である場合:半導体層が所望の溶融状態に達していないと判断される。
・反射率の最大値が目的の反射率以上の一定範囲にある場合:半導体層が所望の溶融状態に達したと判断される。
・反射率の最大値が一定範囲を超えた場合:半導体層が所望の溶融状態を超える溶融状態に達したと判断される。
なお、所望の溶融状態に達したと判断された場合には、該当する照射領域におけるレーザー光の照射処理は完了したものとみなすことができる。したがって、その後、基板又は光学系を移動させて別の領域に対してレーザー光を照射しても良いし、他にレーザー光の照射処理を施す必要がない場合などにはレーザー光の発振を停止しても良い。また、所望の溶融状態を超える溶融状態に達したと判断された場合には、該当する領域の半導体層を半導体素子等に使用しない構成とすると良い。なお、該当する領域を修復する手段がある場合には、修復させて利用する構成としても良い。
このように、反射率を観測することにより、半導体層の溶融状態を評価することができる。本発明では反射率のみを観測すればよいため、きわめて簡便に半導体層の溶融状態を評価することができる。また、半導体層の評価にあわせてレーザー光の照射処理の継続の要否を決定することができるため、半導体層の特性を向上しつつ、スループットを向上させることができる。また、レーザー発振器の寿命を延ばすことにつながるため、結果として良好な半導体層を低いコストで作製することができるようになる。
なお、本実施の形態においては、評価の目的やレーザー光の照射条件が異なる場合などにあわせていくつかの評価方法を提案したが、本発明の評価方法はこれに限定されない。上記評価方法を適宜組み合わせて用いることもできる。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の評価方法を用いた半導体基板の作製方法について、図5及び6を参照して説明する。具体的には、図5を用いてSOI基板の製造方法について説明し、図6を用いて半導体基板の作製方法に用いることができる装置について説明する。
まず、SOI基板の作製方法について図5を参照して説明する。
はじめに、ベース基板100を用意する(図5(A)参照)。ベース基板100には、液晶表示装置などに使用されている透光性を有するガラス基板を用いることができる。ガラス基板としては、歪み点が580℃以上680℃以下(好ましくは、600℃以上680℃以下)であるものを用いると良い。また、ガラス基板は無アルカリガラス基板であることが好ましい。無アルカリガラス基板には、例えば、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスなどのガラス材料が用いられている。
なお、ベース基板100としては、ガラス基板の他、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などの絶縁体でなる基板、珪素などの半導体でなる基板、金属やステンレスなどの導電体でなる基板などを用いることもできる。
本実施の形態においては示さないが、ベース基板100の表面に絶縁層を形成しても良い。該絶縁層を設けることにより、ベース基板100に不純物(アルカリ金属やアルカリ土類金属など)が含まれている場合には、当該不純物が半導体層へ拡散することを防止できる。絶縁層は単層構造でも良いし積層構造でも良い。絶縁層を構成する材料としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素などを挙げることができる。
なお、本明細書において、酸化窒化物とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い物質であり、また、窒化酸化物とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い物質をいう。例えば、酸化窒化珪素とは、酸素が55原子%以上65原子%以下、窒素が1原子%以上20原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が0.1原子%以上10原子%以下の範囲で含まれる物質とする。また、窒化酸化珪素とは、酸素が15原子%以上30原子%以下、窒素が20原子%以上35原子%以下、珪素が25原子%以上35原子%以下、水素が15原子%以上25原子%以下の範囲で含まれる物質とする。
次に、半導体基板110を用意する。半導体基板110としては、例えば、シリコン、ゲルマニウム、シリコンゲルマニウム、炭化シリコンなどの第4属元素でなる単結晶半導体基板を用いることができる。もちろん、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体でなる基板を用いてもよい。本実施の形態においては、半導体基板110として、単結晶シリコン基板を用いることとする。半導体基板110の形状やサイズに制限は無いが、例えば、8インチ(200mm)、12インチ(300mm)、18インチ(450mm)といった円形の半導体基板を、矩形に加工して用いることができる。なお、本明細書において、単結晶とは、結晶構造が一定の規則性を持って形成されており、どの部分においても結晶軸が同じ方向を向いているものをいう。つまり、欠陥の多少については問わないものとする。
半導体基板110を洗浄した後、半導体基板110表面に絶縁層を形成する。絶縁層を設けない構成とすることもできるが、後のイオン打ち込みの際の半導体基板110の汚染及び表面の損傷を防ぐためには、絶縁層を設けることが好ましい。
次に、上記絶縁層を介して、電界で加速されたイオンでなるイオンビームを半導体基板110に照射し、半導体基板110の表面から所定の深さの領域に、損傷領域114を形成する。損傷領域114が形成される領域の深さは、イオンビームの加速エネルギーとイオンビームの入射角によって制御することができる。ここで、損傷領域114は、イオンの平均侵入深さと同程度の深さの領域に形成されることになる。
上述の損傷領域114が形成される深さにより、半導体基板110から分離される半導体層の厚さが決定される。損傷領域114が形成される深さは、半導体基板110の表面から50nm以上500nm以下であり、好ましくは50nm以上200nm以下である。
イオンを半導体基板110に打ち込む際には、イオン注入装置又はイオンドーピング装置を用いることができる。イオン注入装置では、ソースガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離して、所定の質量を有するイオン種を被処理物に注入する。イオンドーピング装置は、プロセスガスを励起してイオン種を生成し、生成されたイオン種を質量分離せずに被処理物に打ち込む。なお、質量分離装置を備えているイオンドーピング装置では、イオン注入装置と同様に、質量分離を伴うイオンの注入を行うこともできる。本明細書において、イオン注入装置又はイオンドーピング装置のいずれか一方を特に用いる必要がある場合にのみそれを明記し、特に明記しないときは、いずれの装置を用いてイオンの打ち込みを行っても良いこととする。
イオンドーピング装置を用いる場合のイオンの打ち込み工程は、例えば、以下の条件で行うことができる。
・加速電圧 10kV以上100kV以下(好ましくは30kV以上80kV以下)
・ドーズ量 1×1016/cm2以上4×1016/cm2以下
・ビーム電流密度 2μA/cm2以上(好ましくは5μA/cm2以上、より好ましくは10μA/cm2以上)
イオンドーピング装置を用いる場合、イオンの打ち込み工程のソースガスには水素を含むガスを用いることができる。該ガスを用いることによりイオン種としてH+、H2 +、H3 +を生成することができる。該ガスをソースガスとして用いる場合には、H3 +を多く打ち込むことが好ましい。具体的には、イオンビームに、H+、H2 +、H3 +の総量に対してH3 +イオンが70%以上含まれるようにすることが好ましい。また、H3 +イオンの割合を80%以上とすることがより好ましい。このようにH3 +の割合を高めておくことで、損傷領域114に1×1020atoms/cm3以上の濃度で水素を含ませることが可能である。これにより、損傷領域114からの剥離が容易になる。また、H3 +イオンを多く打ち込むことで、H+、H2 +を打ち込むよりもイオンの打ち込み効率が向上する。つまり、打ち込みにかかる時間を短縮することができる。
イオン注入装置を用いる場合には、質量分離により、H3 +イオンが注入されるようにすることが好ましい。もちろん、H2 +を注入してもよい。ただし、イオン注入装置を用いる場合には、イオン種を選択して注入するため、イオンドーピング装置を用いる場合と比較して、イオン打ち込みの効率が低下する場合がある。
上記の損傷領域114を形成した後、絶縁層を除去し、新たに絶縁層112を形成する(図5(B)参照)。ここで、絶縁層を除去するのは、上記のイオン打ち込みの際に、絶縁層が損傷している可能性が高いためである。なお、絶縁層の損傷が問題とならない場合には絶縁層を除去する必要はない。
絶縁層112は、貼り合わせにおけるボンディングを形成する層であるから、その表面は、高い平坦性を有していることが好ましい。このような絶縁層112としては、例えば、有機シランガスを用いて化学気相成長法により形成される酸化珪素膜を用いることができる。なお、本実施の形態においては絶縁層112を単層構造としたが、2層以上の積層構造としても良い。
その後、上記のベース基板100と半導体基板110とを貼り合わせる(図5(C)参照)。具体的には、ベース基板100及び絶縁層112の表面を超音波洗浄などの方法で洗浄した後、ベース基板100の表面と絶縁層112の表面とが接触するように配置し、ベース基板100の表面と絶縁層112の表面とでボンディングが形成されるように加圧処理を施す。ボンディングの形成には、ファン・デル・ワールス力や水素結合が関与しているもの考えられている。
なお、ボンディングを形成する前に、ベース基板100又は絶縁層112の表面を酸素プラズマ処理又はオゾン処理して、その表面を親水性にしても良い。この処理によって、ベース基板100又は絶縁層112の表面に水酸基が付加されるため、水素結合を効率よく形成することができる。
次に、貼り合わせられたベース基板100及び半導体基板110に対して加熱処理を施して、貼り合わせを強固なものとする。この際の加熱温度は、損傷領域114における分離が進行しない温度とする必要がある。例えば、400℃未満、好ましくは300℃以下とすることができる。加熱処理時間については特に限定されず、処理速度と貼り合わせ強度との関係から最適な条件を適宜設定すればよい。本実施の形態においては、200℃、2時間の加熱処理を施すこととする。ここで、貼り合わせに係る領域のみにマイクロ波を照射して、局所的に加熱することも可能である。なお、貼り合わせ強度に問題がない場合は、上記加熱処理を省略しても良い。
次に、半導体基板110を、損傷領域114にて、半導体層116と半導体基板118とに分離する(図5(D)参照)。半導体基板110の分離は、加熱処理により行う。該加熱処理の温度は、ベース基板100の耐熱温度を目安にすることができる。例えば、ベース基板100としてガラス基板を用いる場合には、加熱温度は400℃以上650℃以下とすることが好ましい。ただし、短時間であれば、400℃以上700℃以下の加熱処理を行っても良い。なお、本実施の形態においては、600℃、2時間の加熱処理を施すこととする。
上述のような加熱処理を行うことにより、損傷領域114に形成された微小な空孔の体積変化が生じ、損傷領域114に亀裂が生ずる。その結果、損傷領域114に沿って半導体基板110が劈開する。絶縁層112はベース基板100と貼り合わせられているので、ベース基板100上には半導体基板110から分離された半導体層116が残存することになる。また、この加熱処理で、ベース基板100と絶縁層112の貼り合わせに係る界面が加熱されるため、貼り合わせに係る界面に共有結合が形成され、ベース基板100と絶縁層112の結合力が一層向上する。
その後、半導体層116の欠陥の低減などを目的として、半導体層116にレーザー光140を照射する(図5(E)参照)。ここで、レーザー光140の照射条件を最適化するために、本発明の評価方法を用いることができる。詳細については後に説明する。
上記レーザー光140の照射には、パルス発振レーザーを用いることが好ましい。これは、瞬間的に高エネルギーのパルスレーザー光を発振することができ、部分溶融状態を作り出すことが容易となるためである。発振周波数は、1Hz以上10MHz以下程度とすることが好ましい。より好ましくは、10Hz以上1MHz以下である。上述のパルス発振レーザーとしては、Arレーザー、Krレーザー、エキシマ(ArF、KrF、XeCl)レーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、GdVO4レーザー、Y2O3レーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、銅蒸気レーザー、金蒸気レーザー等を用いることができる。なお、上記レーザー光140の照射にはパルス発振レーザーを用いることが好ましいが、これに限定して解釈されるものではない。すなわち、連続発振レーザーの使用を除外するものではない。なお、連続発振レーザーとしては、Arレーザー、Krレーザー、CO2レーザー、YAGレーザー、YVO4レーザー、YLFレーザー、YAlO3レーザー、GdVO4レーザー、Y2O3レーザー、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、Ti:サファイアレーザー、ヘリウムカドミウムレーザー等がある。
レーザー光140の波長は、半導体層116に吸収される波長とする必要がある。その波長は、レーザー光の侵入長などを考慮して決定すればよい。例えば、半導体層116が単結晶シリコン層である場合には、200nm以上700nm以下の範囲とすることができる。また、レーザー光140のエネルギー密度は、レーザー光140の波長、半導体層116の材料、半導体層116の膜厚などを考慮して決定することができる。レーザー光140のエネルギー密度は、例えば、300mJ/cm2以上800mJ/cm2以下の範囲とすることができる。これらの条件についても、本発明の評価方法を用いて最適化することができる。
レーザー光140の照射は、大気雰囲気のような酸素を含む雰囲気、または窒素雰囲気のような不活性雰囲気で行うことができる。不活性雰囲気中でレーザー光140を照射するには、気密性のあるチャンバー内でレーザー光140を照射し、このチャンバー内の雰囲気を制御すればよい。チャンバーを用いない場合は、レーザー光140の被照射面に窒素ガスなどの不活性ガスを吹き付けることで、窒素雰囲気を形成することもできる。その他、レーザー光140の照射は真空中で行っても良い。
上述のようにレーザー光140を照射した後には、半導体層116の膜厚を小さくする薄膜化工程を行っても良い。半導体層116の薄膜化には、ドライエッチングまたはウエットエッチングの一方、または双方を組み合わせたエッチング処理(エッチバック処理)を適用すればよい。例えば、半導体層116がシリコン材料からなる層である場合、SF6と02をプロセスガスに用いたドライエッチング処理で、半導体層116を薄くすることができる。
なお、本実施の形態においては、レーザー光の照射により平坦化等した後でエッチング処理を行う例を挙げたが、本発明はこれに限定して解釈されるものではない。例えば、レーザー光の照射前にエッチング処理を行ってもよい。この場合には、エッチング処理により半導体層表面の凹凸や欠陥をある程度低減することができる。また、レーザー光の照射前及び照射後の両方に上記処理を適用しても良い。また、レーザー光の照射と上記処理を交互に繰り返しても良い。このように、レーザー光の照射とエッチング処理を組み合わせて用いることにより、半導体層表面の凹凸、欠陥等を著しく低減することができる。もちろん、上述のエッチング処理や加熱処理などを常に用いる必要はない。
以上により、表面の平坦性が向上し、欠陥が低減された半導体層120(単結晶シリコン半導体層)を有するSOI基板を作製することができる(図5(F)参照)。
次に、上記レーザー光を照射する際の詳細について、図6を参照して説明する。図6には、半導体層が設けられた基板600に照射するレーザー光の照射条件を最適化するための装置を示す。該装置は、基板600を配置するステージ602、ステージ602の位置を制御する駆動部604、レーザー発振器606、光学系608(ミラー等)、光学系610(レンズ等)、参照光の光源612、光学系614(ハーフミラー等)、光学系616(レンズ等)、検出器618、検出器620、検出器618及び検出器620からのデータをもとに各種演算、各種制御を行う演算制御装置622などを有している。
上述の装置を用いる場合、レーザー発振器606から発振されたレーザー光が、光学系608、光学系610を介して基板600の上部に照射される。このとき、光源612からの光は、光学系614、光学系616を介して基板600の下部に照射され、その反射光が検出器620に入射する。同時に、光源612からの光は、その一部が光学系614によって反射され、検出器618に入射する。検出器618及び検出器620によって得られたデータは演算制御装置622に送られ、演算制御装置622はこのデータをもとに半導体層の溶融状態を評価する。なお、該評価方法には、基準となる反射率と実際の反射率の比較を行う方法や、反射率の経時変化を評価する方法などがある。詳細については実施の形態1において説明した評価方法を参照すればよい。
演算制御装置622は、上述の評価を行った後、評価結果をフィードバックする。例えば、レーザー光の強度が最適になるようにレーザー発振器606を制御することができる。また、レーザー光の照射パルス数が最適になるようにレーザー発振器606及び駆動部604を制御しても良い。
なお、半導体層にレーザー光を照射する際には基板600を加熱する構成としても良い。基板600を加熱することにより、比較的低い強度のレーザー光を用いる場合であっても、欠陥の低減を効果的に進めることができる。この場合、上述の装置には加熱手段が設けられることになる。
レーザー光の照射により単結晶半導体層の欠陥を低減させる場合には、部分溶融状態、又は、部分溶融状態と完全溶融状態の境界付近の状態(以下、「初期の完全溶融状態」と呼ぶ。)とすることが好ましい。「初期の完全溶融状態」以外の完全溶融状態とした場合には、液相となった後の無秩序な核発生により微結晶化し、結晶性が低下する可能性が高いためである。
一方で、部分溶融状態とした場合には、溶融されていない固体の領域から結晶成長が進行するため、結晶性を保ったまま欠陥を低減することができる。また、「初期の完全溶融状態」とした場合には、下方への熱の拡散により、単結晶半導体層と下部絶縁層との界面付近から固化し、これを種結晶として、再度の単結晶化を進行させることができる。「初期の完全溶融状態」においては、原子の配列が完全にランダムになっているわけではなく、特に、温度上昇が小さい下部絶縁層との界面付近においては、原子配列は固体状態の単結晶半導体層のものと相違がない。このため、下部絶縁層との界面付近からの固化により、結晶性を低下させることなく欠陥を低減することができるものと考えられる。または、下部絶縁層との界面付近において、溶融していない固体が、わずかに残存しており、これを種結晶として結晶成長が進行している可能性もある。
以上を鑑みれば、上述のSOI基板における単結晶半導体層の欠陥を低減させるという目的においては、パルス発振レーザー光の強度はI2以下とすることが好ましい(図2(B)参照)。I2を大きく上回る場合には、一パルスで完全溶融状態となってしまい、微結晶化してしまう可能性が高いためである。
また、パルス発振レーザー光の強度が小さすぎる場合や、発振周波数が低い場合には、次のパルスが照射されるまでに半導体層が冷却されてしまい、部分溶融状態を形成することができない。したがって、パルス発振レーザー光の強度はI1以上、すなわち一パルスで部分溶融状態を形成することができる強度とすることが好ましいと言える(図2(B)参照)。
本実施の形態は、実施の形態1と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態3)
本実施の形態では、図7乃至9を参照して、上述の半導体基板を用いた半導体装置の作製方法について説明する。ここでは、半導体装置の一例として複数のトランジスタからなる半導体装置の作製方法について説明することとする。なお、以下において示すトランジスタを組み合わせて用いることで、様々な半導体装置を形成することができる。
図7(A)は、実施の形態2により作製した半導体基板の断面図である。ただし、本実施の形態においては、実施の形態2における絶縁層112を2層構造とした場合について示すこととする。
半導体層120には、TFTのしきい値電圧を制御するために、硼素、アルミニウム、ガリウムなどのp型不純物、若しくはリン、砒素などのn型不純物を添加しても良い。不純物を添加する領域、および添加する不純物の種類は、適宜変更することができる。例えば、nチャネル型TFTの形成領域にはp型不純物を添加し、pチャネル型TFTの形成領域にn型不純物を添加することができる。上述の不純物を添加する際には、ドーズ量が1×1015/cm2以上1×1017/cm2以下程度となるように行えばよい。その後、半導体層120を島状に分離して、半導体層702、及び半導体層704を形成する(図7(B)参照)。
次に、半導体層702と半導体層704を覆うように、ゲート絶縁層706を形成する(図7(C)参照)。ここでは、プラズマCVD法を用いて、酸化珪素膜を単層で形成することとする。その他にも、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化珪素、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化タンタル等を含む膜を、単層構造又は積層構造で形成することによりゲート絶縁層706としても良い。
プラズマCVD法以外の作製方法としては、スパッタリング法や、高密度プラズマ処理による酸化または窒化による方法が挙げられる。高密度プラズマ処理は、例えば、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンなどの希ガスと、酸素、酸化窒素、アンモニア、窒素、水素などガスの混合ガスを用いて行う。この場合、プラズマの励起をマイクロ波の導入により行うことで、低電子温度で高密度のプラズマを生成することができる。このような高密度のプラズマで生成された酸素ラジカル(OHラジカルを含む場合もある)や窒素ラジカル(NHラジカルを含む場合もある)によって、半導体層の表面を酸化または窒化することにより、1nm以上20nm以下、望ましくは2nm以上10nm以下の絶縁層を半導体層に接するように形成する。
上述した高密度プラズマ処理による半導体層の酸化または窒化は固相反応であるため、ゲート絶縁層706と半導体層702及び半導体層704との界面準位密度をきわめて低くすることができる。また、高密度プラズマ処理により半導体層を直接酸化または窒化することで、形成される絶縁層の厚さのばらつきを抑えることが出来る。また、半導体層が結晶性を有するため、高密度プラズマ処理を用いて半導体層の表面を固相反応で酸化させる場合であっても、結晶粒界における不均一な酸化を抑え、均一性が良く、界面準位密度の低いゲート絶縁層を形成することができる。このように、高密度プラズマ処理により形成された絶縁層をトランジスタのゲート絶縁層の一部または全部に用いることで、特性のばらつきを抑制することができる。
プラズマ処理による絶縁層の作製方法のより具体的な一例について説明する。亜酸化窒素(N2O)を、アルゴン(Ar)を用いて1倍以上3倍以下(流量比)に希釈し、10Pa以上30Pa以下の圧力下で3kW以上5kW以下のマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して、半導体層702と半導体層704の表面を酸化または窒化させる。この処理により1nm以上10nm以下(好ましくは2nm以上6nm以下)のゲート絶縁層706の下層を形成する。さらに、亜酸化窒素(N2O)とシラン(SiH4)を導入し、10Pa以上30Pa以下の圧力下で3kW以上5kW以下のマイクロ波(2.45GHz)電力を印加して気相成長法により酸化窒化シリコン膜を形成し、ゲート絶縁層706の上層とする。このように、固相反応と気相成長法を組み合わせてゲート絶縁層706を形成することにより界面準位密度が低く絶縁耐圧の優れたゲート絶縁層706を形成することができる。なお、この場合においてゲート絶縁層706は2層構造となる。
或いは、半導体層702と半導体層704を熱酸化させることで、ゲート絶縁層706を形成するようにしても良い。このような熱酸化を用いる場合には、耐熱性の比較的高いベース基板を用いることが好ましい。
なお、水素を含むゲート絶縁層706を形成し、その後、350℃以上450℃以下の温度による加熱処理を行うことで、ゲート絶縁層706中に含まれる水素を半導体層702及び半導体層704中に拡散させるようにしても良い。この場合、ゲート絶縁層706として、プラズマCVD法を用いた窒化シリコン又は窒化酸化シリコンを用いることができる。なお、プロセス温度は350℃以下とすると良い。このように、半導体層702及び半導体層704に水素を供給することで、半導体層702中、半導体層704中、ゲート絶縁層706と半導体層702の界面、及びゲート絶縁層706と半導体層704の界面における欠陥を効果的に低減することができる。
次に、ゲート絶縁層706上に導電層を形成した後、該導電層を所定の形状に加工(パターニング)することで、半導体層702と半導体層704の上方に電極708を形成する(図7(D)参照)。導電層の形成にはCVD法、スパッタリング法等を用いることができる。導電層は、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等の材料を用いて形成することができる。また、上記金属を主成分とする合金材料を用いても良いし、上記金属を含む化合物を用いても良い。または、半導体に導電性を付与する不純物元素をドーピングした多結晶珪素など、半導体材料を用いて形成しても良い。
本実施の形態では電極708を単層の導電層で形成しているが、本発明の半導体装置は該構成に限定されない。電極708は積層された複数の導電層で形成されていても良い。2層構造とする場合には、例えば、モリブデン膜、チタン膜、窒化チタン膜等を下層に用い、上層にはアルミニウム膜などを用いればよい。3層構造の場合には、モリブデン膜とアルミニウム膜とモリブデン膜の積層構造や、チタン膜とアルミニウム膜とチタン膜の積層構造などを採用するとよい。
なお、電極708を形成する際に用いるマスクは、酸化珪素や窒化酸化珪素等の材料を用いて形成してもよい。この場合、酸化珪素膜や窒化酸化珪素膜等をパターニングしてマスクを形成する工程が加わるが、レジスト材料と比較して、エッチング時におけるマスクの膜減りが少ないため、より正確な形状の電極708を形成することができる。また、マスクを用いずに、液滴吐出法を用いて選択的に電極708を形成しても良い。ここで、液滴吐出法とは、所定の組成物を含む液滴を吐出または噴出することで所定のパターンを形成する方法を意味し、インクジェット法などがその範疇に含まれる。
また、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用い、エッチング条件(コイル型の電極層に印加される電力量、基板側の電極層に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節し、所望のテーパー形状を有するように導電層をエッチングすることで、電極708を形成することもできる。また、テーパー形状は、マスクの形状によって制御することもできる。なお、エッチング用ガスとしては、塩素、塩化硼素、塩化珪素もしくは四塩化炭素などの塩素系ガス、四弗化炭素、弗化硫黄もしくは弗化窒素などのフッ素系ガス又は酸素などを適宜用いることができる。
次に、電極708をマスクとして、一導電型を付与する不純物元素を半導体層702、半導体層704に添加する(図8(A)参照)。本実施の形態では、半導体層702にn型を付与する不純物元素(例えばリンまたはヒ素)を、半導体層704にp型を付与する不純物元素(例えばボロン)を添加する。なお、n型を付与する不純物元素を半導体層702に添加する際には、p型の不純物が添加される半導体層704はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。また、p型を付与する不純物元素を半導体層704に添加する際には、n型の不純物が添加される半導体層702はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。又は、半導体層702及び半導体層704に、p型を付与する不純物元素又はn型を付与する不純物元素の一方を添加した後、一方の半導体層のみに、より高い濃度でp型を付与する不純物元素又はn型を付与する不純物元素の他方を添加するようにしても良い。上記不純物の添加により、半導体層702に不純物領域710、半導体層704に不純物領域712が形成される。
次に、電極708の側面にサイドウォール714を形成する(図8(B)参照)。サイドウォール714は、例えば、ゲート絶縁層706及び電極708を覆うように新たに絶縁層を形成し、垂直方向を主体とした異方性エッチングにより、該絶縁層を部分的にエッチングすることで形成することができる。なお、上記の異方性エッチングにより、ゲート絶縁層706を部分的にエッチングしても良い。サイドウォール714を形成するための絶縁層としては、プラズマCVD法やスパッタリング法等により、珪素、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、有機材料などを含む膜を、単層構造又は積層構造で形成すれば良い。本実施の形態では、膜厚100nmの酸化珪素膜をプラズマCVD法によって形成する。また、エッチングガスとしては、CHF3とヘリウムの混合ガスを用いることができる。なお、サイドウォール714を形成する工程は、これらに限定されるものではない。
次に、ゲート絶縁層706、電極708及びサイドウォール714をマスクとして、半導体層702、半導体層704に一導電型を付与する不純物元素を添加する(図8(C)参照)。なお、半導体層702、半導体層704には、それぞれ先の工程で添加した不純物元素と同じ導電型の不純物元素をより高い濃度で添加する。なお、n型を付与する不純物元素を半導体層702に添加する際には、p型の不純物が添加される半導体層704はマスク等で覆い、n型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。また、p型を付与する不純物元素を半導体層704に添加する際には、n型の不純物が添加される半導体層702はマスク等で覆い、p型を付与する不純物元素の添加が選択的に行われるようにする。
上記不純物元素の添加により、半導体層702に、一対の高濃度不純物領域716と、一対の低濃度不純物領域718と、チャネル形成領域720とが形成される。また、上記不純物元素の添加により、半導体層704に、一対の高濃度不純物領域722と、一対の低濃度不純物領域724と、チャネル形成領域726とが形成される。高濃度不純物領域716、高濃度不純物領域722はソース又はドレインとして機能し、低濃度不純物領域718、低濃度不純物領域724はLDD(Lightly Doped Drain)領域として機能する。
なお、半導体層702上に形成されたサイドウォール714と、半導体層704上に形成されたサイドウォール714は、キャリアが移動する方向(いわゆるチャネル長に平行な方向)の長さが同じになるように形成しても良いが、異なるように形成しても良い。pチャネル型トランジスタとなる半導体層704上のサイドウォール714の長さは、nチャネル型トランジスタとなる半導体層702上のサイドウォール714の長さよりも大きくすると良い。なぜならば、pチャネル型トランジスタにおいてソース及びドレインを形成するために注入されるボロンは拡散しやすく、短チャネル効果を誘起しやすいためである。pチャネル型トランジスタにおいて、サイドウォール714の長さをより大きくすることで、ソース及びドレインに高濃度のボロンを添加することが可能となり、ソース及びドレインを低抵抗化することができる。
ソース及びドレインをさらに低抵抗化するために、半導体層702及び半導体層704の一部をシリサイド化したシリサイド層を形成しても良い。シリサイド化は、半導体層に金属を接触させ、加熱処理(例えば、GRTA法、LRTA法等)により、半導体層中の珪素と金属とを反応させて行う。シリサイド層としては、コバルトシリサイド又はニッケルシリサイドを用いれば良い。半導体層702や半導体層704が薄い場合には、半導体層702、半導体層704の底部までシリサイド反応を進めても良い。シリサイド化に用いることができる金属材料としては、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、Ha(ハフニウム)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ネオジム(Nb)、クロム(Cr)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等が挙げられる。また、レーザー光の照射などによってもシリサイド層を形成することができる。
上述の工程により、nチャネル型トランジスタ728及びpチャネル型トランジスタ730が形成される。なお、図8(C)に示す段階では、ソース電極又はドレイン電極として機能する導電層は形成されていないが、これらのソース電極又はドレイン電極として機能する導電層を含めてトランジスタと呼ぶこともある。
次に、nチャネル型トランジスタ728、pチャネル型トランジスタ730を覆うように絶縁層732を形成する(図8(D)参照)。絶縁層732は必ずしも設ける必要はないが、絶縁層732を形成することで、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物がnチャネル型トランジスタ728、pチャネル型トランジスタ730に侵入することを防止できる。具体的には、絶縁層732を、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなどの材料を用いて形成するのが望ましい。本実施の形態では、膜厚600nm程度の窒化酸化珪素膜を、絶縁層732として用いる。この場合、上述の水素化の工程は、該窒化酸化珪素膜形成後に行っても良い。なお、本実施の形態においては、絶縁層732を単層構造としているが、積層構造としても良いことはいうまでもない。例えば、2層構造とする場合には、酸化窒化珪素膜と窒化酸化珪素膜との積層構造とすることができる。
次に、nチャネル型トランジスタ728、pチャネル型トランジスタ730を覆うように、絶縁層732上に絶縁層734を形成する。絶縁層734は、ポリイミド、アクリル、ポリイミド、ベンゾシクロブテン、ポリアミド、エポキシ等の、耐熱性を有する有機材料を用いて形成するとよい。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)、アルミナ等を用いることもできる。ここで、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は、置換基に水素の他、フッ素、アルキル基、芳香族炭化水素から選ばれる一を有していても良い。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層734を形成しても良い。
絶縁層734の形成には、その材料に応じて、CVD法、スパッタ法、SOG法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法、スクリーン印刷、オフセット印刷等)、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等を用いることができる。
次に、半導体層702と半導体層704の一部が露出するように絶縁層732及び絶縁層734にコンタクトホールを形成する。そして、該コンタクトホールを介して半導体層702と半導体層704に接する導電層736、導電層738を形成する(図9(A)参照)。導電層736及び導電層738は、トランジスタのソース電極又はドレイン電極として機能する。なお、本実施の形態においては、コンタクトホール開口時のエッチングに用いるガスとしてCHF3とHeの混合ガスを用いたが、これに限定されるものではない。
導電層736、導電層738は、CVD法やスパッタリング法等により形成することができる。具体的には、導電層736、導電層738として、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)、炭素(C)、珪素(Si)等を用いることができる。また、上記材料を主成分とする合金を用いても良いし、上記材料を含む化合物を用いても良い。また、導電層736、導電層738は、単層構造としても良いし、積層構造としても良い。
アルミニウムを主成分とする合金の例としては、アルミニウムを主成分として、ニッケルを含むものを挙げることができる。また、アルミニウムを主成分とし、ニッケルと、炭素または珪素の一方または両方を含むものを挙げることができる。アルミニウムやアルミニウムシリコン(Al−Si)は抵抗値が低く、安価であるため、導電層736、導電層738を形成する材料として適している。特に、アルミニウムシリコンは、パターニングの際のレジストベークによるヒロックの発生を抑制することができるため好ましい。また、珪素の代わりに、アルミニウムに0.5%程度のCuを混入させた材料を用いても良い。
導電層736、導電層738を積層構造とする場合には、例えば、バリア膜とアルミニウムシリコン膜とバリア膜の積層構造、バリア膜とアルミニウムシリコン膜と窒化チタン膜とバリア膜の積層構造などを採用するとよい。なお、バリア膜とは、チタン、チタンの窒化物、モリブデンまたはモリブデンの窒化物などを用いて形成された膜である。バリア膜の間にアルミニウムシリコン膜を挟むように導電層を形成すると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生をより一層防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンを用いてバリア膜を形成すると、半導体層702と半導体層704上に薄い酸化膜が形成されていたとしても、バリア膜に含まれるチタンが該酸化膜を還元し、導電層736と半導体層702、及び導電層738と半導体層704のコンタクトを良好なものとすることができる。また、バリア膜を複数積層するようにして用いても良い。その場合、例えば、導電層736、導電層738を、下層からチタン、窒化チタン、アルミニウムシリコン、チタン、窒化チタンのように、5層構造又はそれ以上の積層構造とすることもできる。
また、導電層736、導電層738として、WF6ガスとSiH4ガスから化学気相成長法で形成したタングステンシリサイドを用いても良い。また、WF6を水素還元して形成したタングステンを、導電層736、導電層738として用いても良い。
なお、導電層736はnチャネル型トランジスタ728の高濃度不純物領域716に接続されている。導電層738はpチャネル型トランジスタ730の高濃度不純物領域722に接続されている。
図9(B)に、図9(A)に示したnチャネル型トランジスタ728及びpチャネル型トランジスタ730の平面図を示す。ここで、図9(B)のA−Bにおける断面が図9(A)に対応している。ただし、図9(B)においては、簡単のため、導電層736、導電層738、絶縁層732、絶縁層734等を省略している。
なお、本実施の形態においては、nチャネル型トランジスタ728とpチャネル型トランジスタ730が、それぞれゲート電極として機能する電極708を1つずつ有する場合を例示しているが、本発明は該構成に限定されない。本発明で作製されるトランジスタは、ゲート電極として機能する電極を複数有し、なおかつ該複数の電極が電気的に接続されているマルチゲート構造を有していても良い。
本実施の形態では、機械的な研磨処理などを行う代わりに、レーザー光を照射して、単結晶半導体層の欠陥や表面凹凸を低減している。さらに、本発明の評価方法を用いることにより、極めて簡便な方法によりレーザー光照射条件の最適化を実現している。これにより、欠陥が十分に低減された平坦性の高いSOI基板を提供することができ、且つ、その提供にかかるコストを抑えることができる。また、該SOI基板を用いることにより、高速動作が可能で、サブスレッショルド値が低く、電界効果移動度が高く、低電圧で駆動可能なトランジスタを低いコストで作製することができる。
本実施の形態は、実施の形態1又は2と適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態4)
本実施の形態では、実施の形態3において作製した半導体装置、特に表示装置を用いた電子機器について、図10及び11を参照して説明する。
半導体装置(特に表示装置)を用いて作製される電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Disc(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。
図10(A)はテレビ受像器又はパーソナルコンピュータのモニタである。筺体1001、支持台1002、表示部1003、スピーカー部1004、ビデオ入力端子1005等を含む。表示部1003には、本発明の半導体装置が用いられている。本発明により、信頼性が高く高性能なテレビ受像器又はパーソナルコンピュータのモニタを低価格で提供することができる。
図10(B)はデジタルカメラである。本体1011の正面部分には受像部1013が設けられており、本体1011の上面部分にはシャッターボタン1016が設けられている。また、本体1011の背面部分には、表示部1012、操作キー1014、及び外部接続ポート1015が設けられている。表示部1012には、本発明の半導体装置が用いられている。本発明により、信頼性が高く高性能なデジタルカメラを低価格で提供することができる。
図10(C)はノート型パーソナルコンピュータである。本体1021には、キーボード1024、外部接続ポート1025、ポインティングデバイス1026が設けられている。また、本体1021には、表示部1023を有する筐体1022が取り付けられている。表示部1023には、本発明の半導体装置が用いられている。本発明により、信頼性が高く高性能なノート型パーソナルコンピュータを低価格で提供することができる。
図10(D)はモバイルコンピュータであり、本体1031、表示部1032、スイッチ1033、操作キー1034、赤外線ポート1035等を含む。表示部1032にはアクティブマトリクス表示装置が設けられている。表示部1032には、本発明の半導体装置が用いられている。本発明により、信頼性が高く高性能なモバイルコンピュータを低価格で提供することができる。
図10(E)は画像再生装置である。本体1041には、表示部B1044、記録媒体読み込み部1045及び操作キー1046が設けられている。また、本体1041には、スピーカー部1047及び表示部A1043それぞれを有する筐体1042が取り付けられている。表示部A1043及び表示部B1044それぞれには、本発明の半導体装置が用いられている。本発明により、信頼性が高く高性能な画像再生装置を低価格で提供することができる。
図10(F)は電子書籍である。本体1051には操作キー1053が設けられている。また、本体1051には複数の表示部1052が取り付けられている。表示部1052には、本発明の半導体装置が用いられている。本発明により、信頼性が高く高性能な電子書籍を低価格で提供することができる。
図10(G)はビデオカメラであり、本体1061には外部接続ポート1064、リモコン受信部1065、受像部1066、バッテリー1067、音声入力部1068、操作キー1069が設けられている、また、本体1061には、表示部1062を有する筐体1063が取り付けられている。表示部1062には、本発明の半導体装置が用いられている。本発明により、信頼性が高く高性能なビデオカメラを低価格で提供することができる。
図10(H)は携帯電話であり、本体1071、筐体1072、表示部1073、音声入力部1074、音声出力部1075、操作キー1076、外部接続ポート1077、アンテナ1078等を含む。表示部1073には、本発明の半導体装置が用いられている。本発明により、信頼性が高く高性能な携帯電話を低価格で提供することができる。
図11は、電話としての機能と、情報端末としての機能を併せ持った携帯電子機器1100の構成の一例である。ここで、図11(A)は正面図、図11(B)は背面図、図11(C)は展開図である。携帯電子機器1100は、電話と情報端末の双方の機能を備えており、音声通話以外にも様々なデータ処理が可能な、いわゆるスマートフォンと呼ばれる電子機器である。
携帯電子機器1100は、筐体1101及び筐体1102で構成されている。筐体1101は、表示部1111、スピーカー1112、マイクロフォン1113、操作キー1114、ポインティングデバイス1115、カメラ用レンズ1116、外部接続端子1117等を備え、筐体1102は、キーボード1121、外部メモリスロット1122、カメラ用レンズ1123、ライト1124、イヤフォン端子1125等を備えている。また、アンテナは筐体1101内部に内蔵されている。上記構成に加えて、非接触ICチップ、小型記録装置等を内蔵していてもよい。
表示部1111には、本発明の半導体装置が組み込まれている。なお、表示部1111に表示される映像(及びその表示方向)は、携帯電子機器1100の使用形態に応じて様々に変化する。また、表示部1111と同一面にカメラ用レンズ1116を備えているため、映像を伴う音声通話(いわゆるテレビ電話)が可能である。なお、スピーカー1112及びマイクロフォン1113は音声通話に限らず、録音、再生等に用いることが可能である。カメラ用レンズ1123(及び、ライト1124)を用いて静止画及び動画の撮影を行う場合には、表示部1111はファインダーとして用いられることになる。操作キー1114は、電話の発信・着信、電子メール等の簡単な情報入力、画面のスクロール、カーソル移動等に用いられる。
重なり合った筐体1101と筐体1102(図11(A))は、スライドし、図11(C)のように展開し、情報端末として使用できる。この場合には、キーボード1121、ポインティングデバイス1115を用いた円滑な操作が可能である。外部接続端子1117はACアダプタやUSBケーブル等の各種ケーブルと接続可能であり、充電やコンピュータ等とのデータ通信を可能にしている。また、外部メモリスロット1122に記録媒体を挿入し、より大容量のデータの保存及び移動に対応できる。上記機能に加えて、赤外線などの電磁波を用いた無線通信機能や、テレビ受信機能等を有していても良い。本発明により、信頼性が高く高性能な携帯電子機器を低価格で提供することができる。
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。なお、本実施の形態は、実施の形態1乃至3と適宜組み合わせて用いることができる。