以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の一実施形態にかかる3次元形状測定方法を実施可能な3次元形状測定装置は、特許文献1に記載の3次元形状測定装置を改良したものであって、基本的な構造及び動作は当該特許文献1に記載の3次元形状測定装置と類似するため、簡単にそれらの説明を行なったのち、前記実施形態にかかる3次元形状測定方法について説明する。
図1に、本発明の前記実施形態にかかる3次元形状測定方法を実施可能な3次元形状測定装置100Gの構成を示す。
前記3次元形状測定装置100Gは、従来、精度良く測定できなかった穴や外形、任意形状の側面形状をナノメートルオーダーの高い精度で、さらに低測定力で短時間で測定可能とする装置である。測定対象物としては、例えば、極めて高精度が必要とされるモータの軸受け、インクジェットプリンタにおけるノズル、及び自動車エンジンにおける燃料噴射ノズル等における穴形状であり、又、流体軸受けに形成され潤滑剤を収容する溝部の形状、さらには、3次元形状測定装置に備わるマイクロエアスライドの内径、円筒度等である。又、半導体回路パターンにおけるトレンチ部分も測定対象に含めることができる。又、前記3次元形状測定装置用プローブを備えた3次元形状測定装置にて測定可能な被測定面は、該被測定面における接線方向と垂直方向との交差角度θにて0度から最大で約30度までの間の角度にてなる面である。
図2Aに前記3次元測定装置100Gの測定点情報決定部80Gの構成を示す。
まず、3次元形状測定装置用プローブ102Gについて説明する。図1に示す3次元形状測定装置用プローブ102Gは、前記3次元形状測定装置100Gに備わりかつ測定対象となる被測定物200Gの被測定面200Gaに接触する部分を有する物であって、プローブ102Gでは、X,Y軸方向を問わず、いずれの方向にもアーム122を傾斜可能とする構成を有する。プローブ102Gは、取付用部材110と、測定面接触部としての機能を果たす一例に相当する揺動部材120と、スタイラス103Gと、連結機構130とを備えて、スタイラス103Gを鉛直方向に対して任意の方向に傾く事が可能としている。
取付用部材110は、3次元形状測定装置100Gに固定され、又は着脱可能に取り付けられるブロック部材であり、揺動部材120が揺動するのに対し不動の部分であり、3次元形状測定装置100Gのレーザ光源101Gから照射される測定用レーザ光(例えば、発振周波数安定化He−Neレーザ光)LL1を通過可能とし、当該取付用部材110を貫通するレーザ光用開口111を中央部に有する。
揺動部材120は、被測定物200Gの被測定面200Gaに接触するスタイラス103Gを下向きに立設し、かつ取付用部材110を通過した測定用レーザ光LL1を反射するミラー105Gをスタイラス103Gの上端に設け、被測定面200Gaの形状に応じたスタイラス103Gの変位に対応して取付用部材110に対して揺動する部材である。スタイラス103Gの先端(図3では下端)には、真球度の高い球体(スタイラス先端球)104Gが取付けられており、この部分が被測定物200Gの被測定面200Gaに接触する。
尚、本実施形態では、スタイラス103Gのスタイラス先端球104Gは、例えば、約0.3mm〜約2mmの直径を有する球状体であり、アーム122は、太さが一例として約0.7mmで、揺動部材120の下面からスタイラス先端球104Gの中心までは、一例として約10mmの長さLにてなる棒状体である。これらの値は、被測定面200Gaの形状により適宜変更される。又、揺動部材120の形状も円板状に限定するものではない。
連結機構130は、ミラー105Gに照射される前記測定用レーザ光LL1の光軸211aに対して交差するいずれの方向にも揺動部材120を傾斜させて揺動可能にして揺動部材120を取付用部材110に支持する機構である。このような機能を有する限り、連結機構130の形態は限定されないが、本実施形態では、連結部材131と支点用部材132とを有して構成している。尚、本実施形態では、前記光軸211aは、鉛直方向であるZ軸方向に一致する。
連結部材131は、取付用部材110に対向して揺動部材120を、部材を用いて若しくは用いずに、例えば吊り下げるような形態にて支持する棒状の部材であり、前記スタイラス103Gを被測定物200Gの被測定面200Gaに押圧する押圧力を生じさせる力であって揺動部材120が傾斜しておらず前記光軸211aに直交する初期状態の中立位置へ揺動部材120を復元させる復元力を生じさせる部材である。このような連結部材131の一例としては、伸縮可能で弾力性のある材料にてなる懸吊部材であり、例えばコイルバネを使用することができる。コイルバネを使用した場合、測定力等との関係で、一実施例として、バネ定数は40μN/mm、測定力は0.2mN、揺動部材120の質量は60mgとすることができる。例えば、コイルバネの上端が取付用部材110に、下端が揺動部材120に取り付けるようにすればよい。又、複数のコイルバネが使用され、各コイルバネの下端部分は、揺動部材120の周縁部分に等間隔にて取り付けられるようにしてもよい。本実施形態では、一例として、光軸211a回りに大略等間隔に配置された3本のコイルバネを使用するが、4本以上設けても良い。又、各コイルバネにおける前記復元力は、同一であることが好ましい。
又、連結部材131は、上述したコイルバネのような、伸縮可能で弾力性のある材料にてなる部材に限定されない。上述したような復元力を生じさせる部材であればよい。
支点用部材132は、取付用部材110と揺動部材120とに挟まれて配置されコイルバネの前記復元力により取付用部材110及び揺動部材120に接触し、前記光軸211aに対して揺動部材120が傾斜したとき揺動部材120の揺動の支点となる部材である。本実施形態では、支点用部材132は、三角形状の断面を有するリング状の部材であり、取付用部材110の下面及び揺動部材120の上面のいずれか一方の面に固定されるとともに、揺動部材120が傾斜したとき取付用部材110の下面及び揺動部材120の上面のいずれか他方の面と点接触する尖端を有して、該尖端で揺動部材120の揺動の支点となる支点部を構成する。尖端の高さは、支点用部材132のリング状の部材の全周にわたり一定であることが好ましい。
このように、本実施形態では、揺動部材120の上面に支点用部材132を固定し、尖端が取付用部材110の下面に接触するように配置している。又、支点用部材132は、その中心点と、ミラー105Gの中心点とを一致させるように、揺動部材120の上面に固定される。又、本実施形態では、支点用部材132は、一例として、その尖端が、一周連続して支点部として構成されているが、揺動部材120がいずれの方向にも自由に傾斜可能という機能を満足する限り、前記連続形成に限定されず、複数の尖端の集合から支点部を構成するようにしてもよい。
又、本実施形態では、支点用部材132の支点部が接触する取付用部材110の下面には、揺動部材120が水平方向に位置ずれするのを防止するための位置ずれ防止部112が形成されている。位置ずれ防止部112は、本実施形態では、取付用部材110の下面に形成された凹部形状にてなり、前記レーザ光用開口111が形成された平坦面112aと、凹部の側壁に相当し前記光軸211aを中心とした円錐形状の斜面112bにて形成され、支点用部材132の尖端は、平坦面112aに対向して配置される。よって、斜面112bが障壁となることから、位置ずれ防止部112は、前記光軸211aを常にミラー105Gの定点、例えば中心点に位置させるように機能し、支点用部材132が水平方向にずれるのを防止できる。又、平坦面112aにおける支点用部材132の位置ずれ量を最小にするには、平坦面112aと斜面112bとの境界部に支点用部材132の尖端が位置するよう構成するとよい。又、揺動部材120の自由な揺動を妨げないように、支点用部材132において尖端を形成する支点用部材132の斜面の傾斜角度に比べて、斜面112bの傾斜角度をより緩やかにすればよい。尚、位置ずれ防止部112の形成は、任意であり、形成しなくても良い。
このように構成される、本実施形態の3次元形状測定装置におけるプローブ102Gは、以下のように動作可能としている。
即ち、取付用部材110からコイルバネの連結部材131にて吊り下げられている揺動部材120は、コイルバネの復元力により取付用部材110側へ引っ張られている。よって、揺動部材120に固定された支点用部材132は、取付用部材110の下面と揺動部材120の上面との間に挟まれ、支点用部材132の尖端が取付用部材110の下面に接触している。上述のように各コイルバネにおける復元力は、同一であることから、取付用部材110に対して揺動部材120が傾斜していない状態、つまり前記初期状態に揺動部材120があるとき、支点用部材132の全周において尖端が取付用部材110の下面に接触している。又、この初期状態のとき、本実施形態では、揺動部材120に備わるアーム122は、鉛直方向に沿って位置する。
一方、後述するように被測定物200Gの被測定面200Gaの3次元形状測定は、揺動部材120に取り付けられているスタイラス103Gを被測定面200Gaに所定の押圧力にて押しつけて行われる。該押圧力は、スタイラス103Gの先端球104Gを被測定面200Gaに接触させた状態で取付用部材110を被測定物200G側へ僅かに移動させることで、図3に示すように揺動部材120は傾斜する。該傾斜により、揺動部材120には連結部材131であるコイルバネの復元力が作用し、その結果、スタイラス103Gは被測定面200Gaに所定の押圧力つまり概略一定の測定力にて押圧されることになる。揺動部材120が傾斜するとき、支点用部材132の全周の内の一点にて尖端が取付用部材110の下面と接触し、該尖端が支点となり揺動部材120の傾斜を可能とする。よって、支点となる部分以外の尖端は、取付用部材110の下面とは接触していない。又、スタイラス103Gに作用する力の向きに従い、支点となる位置は、各連結部材131のコイルバネの復元力により、支点用部材132の全周上を自在に移動可能である。よって、スタイラス103G及びアーム122は、取付用部材110の下面に接触している尖端を支点として、ジョイスティックのように首振り運動可能であり、つまり360度のいずれの方向にも揺動及び回動可能である。又、このような揺動部材120の揺動に起因して、前記光軸211aがミラー105G上の定点から水平方向にずれるように揺動部材120が位置ずれしたときでも、本実施形態では前記位置ずれ防止部112を形成していることから、自動的に、前記光軸211aがミラー105G上の定点に戻るように揺動部材120の位置修正が行われる。
また、被測定物200Gは定盤292上に固定されている。一方、平面上で互いに直交するX軸及びY軸方向にそれぞれ独立して可動であるX軸ステージ112G及びY軸ステージ113Gを定盤292上に設置し、Y軸ステージ113G上にレーザ光源101Gと測定点情報決定部80GとZ軸ステージ114Gとを配置している。また、Z軸ステージ114Gの下部に前記プローブ102Gを設けることにより、前記プローブ102GをX軸、Y軸、及びZ軸の全方向にそれぞれ独立して移動させることができるようにしている。X軸ステージ112GとY軸ステージ113GとZ軸ステージ114Gとは制御装置111Gにより駆動制御されるようにしている。よって、定盤292上に固定された被測定物200Gに対して、プローブ102Gのスタイラス103Gを、X軸ステージ112GでX軸方向に進退させ、Y軸ステージ113GでY軸方向に進退させるとともに、Z軸ステージ114GでZ軸方向に進退させるように、制御装置111Gにより駆動制御されるようにしている。
このような構成の3次元形状測定装置100Gにおいては、被測定物200Gの側面である被測定面200Gaに、プローブ102Gの先端に取付けられるスタイラス103Gを概略一定の測定力となるように接触させるための追従制御及び、測定方向(走査方向)への走査を行うための位置決め制御を、制御装置111Gの制御下で、X軸ステージ112G、Y軸ステージ113G及びZ軸ステージ114Gをそれぞれ独立して駆動することにより行うことができる。このとき、制御装置111Gは、被測定物200Gの被測定面200Gaをプローブ102Gで走査するとき、プローブ102Gにおける揺動部材120を特定方向にのみ傾斜させず、いずれの方向にも揺動させるように、X軸ステージ112GとY軸ステージ113GとZ軸ステージ114Gとをそれぞれ独立して駆動制御して、プローブ102GのX、Y、Z軸方向の移動量をそれぞれ制御することができる。
また、レーザ光源101Gより発生される測定用レーザ光と参照ミラー115G(Z軸参照ミラー(Z軸方向における基準面を有する基準ミラー)とを用いて示している。(XY軸についても同様。)を用いて、スタイラス103Gの相対的な位置座標を測長するようにしている。
測定点情報決定部80Gは、レーザ光発生部210にて発生したレーザ光211を用いて被測定物200Gの被測定面200Gaにおける測定点(接触点)200Gbの位置情報を得るための光学系90Gと、並びにX軸、Y軸、Z軸方向の各基準面からのレーザ光と前記測定点200Gbからのレーザ光との干渉に基づき測長を行うレーザ測長部とを有するように構成されている。このレーザ測長部は、一例として、位置座標測定部108Gと角度検出部106Gとで構成されている。
前記光学系90Gは、反射ミラー91Gや半透過ミラー92Gで構成される。レーザ光源101Gより発生する測定用レーザ光LL1を、前記光学系90Gを使用して、スタイラス103Gの基端(図3では上端)に取付けられたミラー105Gに照射し、反射光LL2を光学系90Gを使用して位置座標測定部108Gでスタイラス103Gの相対位置を測長して、スタイラス位置データを取得する。また、スタイラス103Gは、前記したように外力により支点(回転中心を意味する)を中心として任意方向に傾く事が可能であり、前述の反射光LL2の一部を光学系90Gの半透過ミラー92Gによりスタイラス傾き角度検出部106Gに入射させ、スタイラス傾き角度検出部106Gの表面におけるレーザ光のスポット中心位置の変位(変位量)からスタイラス103Gの傾きの変化(変化量)を検出する。前記スタイラス傾き角度検出部106Gで検出されたスタイラス103Gの傾きの変化(変化量)を用いて、制御装置111GがX軸ステージ112GとY軸ステージ113GとZ軸ステージ114Gとを駆動制御するようにしている。
スタイラス103Gの先端球104Gを被測定物200Gの被測定面200Gaに接触させた際のスタイラス103Gの傾き角度検出方法について図3を参照しながら、以下に説明する。図3では、理解を容易とするために、図2Aの光学系90Gの構成にミラー116Gを追加している。図3では煩雑な表記を避けるためレーザ光軸のみを記述している。スタイラス103Gが傾いていない場合には、反射光LL2の光スポット中心が角度検出部106Gの中心位置300Gaに一致する。これに対し、スタイラス103Gの先端がX軸+方向(図3の右方向)に押された場合は、反射光LL2の光スポット中心である反射光LL2の照射位置が、中心位置300Gaから左側に外れた、位置300Gbに移動する。
同様に、スタイラス103Gが任意の方向に傾く事により、図4に示すように、その傾きの方向及び大きさに合わせて、反射光LL2の光スポット中心位置が2次元的に変化する。位置301GbはX軸+側に向けてスタイラス103Gの先端球104Gを被測定物200Gに接触させた状態、位置301GcはX軸−側に向けてスタイラス103Gの先端球104Gを被測定物200Gに接触させた状態、位置301GdはY軸+側に向けてスタイラス103Gの先端球104Gを被測定物200Gに接触させた状態、位置301GeはY軸−側に向けてスタイラス103Gの先端球104Gを被測定物200Gに接触させた状態をそれぞれ示している。角度検出部106Gにおいて、前記光スポット中心位置の変位量を検出する事により、スタイラス103Gの傾きを取得する事ができる。角度検出部106Gには、例えば4分割フォトダイオードや2次元PSDなど、光スポット中心位置を2次元で検出できるものであれば適用可能である。以降では、角度検出部106Gに適用されるセンサを総称して「角度検出器」と呼ぶ。
また、スタイラス103Gの測定力を概略一定とするために、制御装置111Gにより、事前に決定された追従目標値に対する光スポット中心位置の差を基に、X軸ステージ112GとY軸ステージ113GとZ軸ステージ114Gとを駆動制御することにより、従来技術と同様な追従制御を行うことができる。例えば、図3に示すように、X軸方向のスタイラス103Gの傾きが概略一定値θxとなるように、X軸ステージ112Gが制御装置111Gにより駆動制御される。この制御は、測定用レーザ光LL1が、傾いたスタイラス103Gの基端にあるミラー105Gに反射されて反射光LL2となり、その反射光LL2が角度検出器106Gの受光面に照射されるときの、その光スポット中心が受光面の中心から距離Xtだけ離れた位置300Gbの直線上に追従するように制御系を構成する事で実現される。
ここで、前記したように光スポット中心が受光面の中心から距離Xtだけ離れた位置300Gbの直線上に追従するために、前記制御系は、以下のように構成している。
まず、被測定物200Gの被測定面200Gaにスタイラス103Gが接触した状態を初期状態と考える。このとき、X軸ステージ112G又はY軸ステージ113Gが微小移動したとすると、スタイラス103Gの傾きが、X軸ステージ112G又はY軸ステージ113Gの移動量に従って微小変化すると同時に、スタイラス上端のミラー105Gも同様に傾く。ミラー105Gの傾きが変化すると、ミラー105Gによる反射光の方向も微小変化し、角度検出器106G上のスポット中心位置が微小変化する。スポット中心位置は、角度検出器106Gからの出力(電圧値)で検出する事が可能であり、スポット中心位置と、事前に設定された追従目標位置(図3における直線119G)に相当する電圧値とを制御装置111Gにより比較する事が可能である。この比較した結果から、スポット中心位置300Gbが目標位置119Gに対して角度検出器106Gの原点Oよりも離れている場合には、原点Oに向かう方向にX軸ステージ112G又はY軸ステージ1132Gを移動する。逆の場合も同様である。この動作を繰り返すことにより、スポット中心位置が目標位置119に追従する事になる。
ここで、前記距離Xtに相当する、角度検出器106G上の目標値Xtは、測長座標系におけるスタイラス103Gの傾き目標値θxに対応する。
また、前記位置座標測定部108Gと角度検出部106Gとに接続された演算処理部109Gでは、前記位置座標測定部108Gで求めたスタイラス103Gの相対位置座標データと、角度検出部106Gで求めたスタイラス103G、の傾きデータとを用いて、前記スタイラス103Gと被測定物200Gとの接触点位置座標データを算出する。
前記演算処理部109Gの構成について図2Bを参照して説明する。位置座標測定部108Gで求めたスタイラス103Gの相対位置座標データ及び角度検出部106Gで求めたスタイラス103Gの傾きデータは、それぞれ、記憶部400及び401に記憶される。記憶部401に記憶された前記傾きデータは、スタイラス先端変位演算部403において、記憶部402に記憶された後述の角度検出器106Gの取付角度誤差γを用いて補正され、傾き補正データが算出される。記憶部400に記憶された前記相対位置座標データ及びスタイラス先端変位演算部403で求められた傾き補正データは、加算部404で加算され、スタイラス103Gと被測定物200の接触点位置座標データが算出される。比較部406では、第1及び第2実施形態においては、第1の走査方向に走査して前記したように加算部404などで算出される第1接触点位置座標データと第2の走査方向に走査して前記したように加算部404などで算出される第2接触点位置座標データを比較して、両者の誤差データを算出する事も可能であるし、本発明の第3実施形態においては、事前に入力装置(例えば、キーボード、タッチパネル、マウス、音声入力装置など)411により入力されて記憶部405で記憶された既知形状データと前記したように加算部404などで算出される前記接触点位置座標データとを比較し、誤差データを算出する事も可能である。前記誤差データは、記憶部407に記憶され、表示装置413に出力されて表示装置413で表示される。また、角度検出器106Gの取付角度誤差γを校正する場合には、記憶部407に記憶された前記誤差データと、事前に入力装置411で比較部407Hに入力された校正完了の判定値とを比較部407Hにおいて比較し、校正が完了していない場合においては、γ校正部407Gにおいて角度検出器406Gの取付角度誤差γを校正する。なお、前記スタイラス先端変位演算部403で使用する、角度検出器106Gの取付角度誤差γは、事前に入力装置411で記憶部402に入力された値又はγ校正部407Gで算出されて記憶部402に記憶された値である。
以降では、被測定物200Gの被測定面200Gaを測定する際の、被測定物200Gとスタイラス103Gの位置関係及び角度検出器106Gと光スポット中心位置の関係について説明する。
以降の説明を容易にするため、簡易的な表記を図7A及び図7Bに示す。図7Aは被測定物200Gにスタイラス103Gの先端球104Gを押込み量が目標値120Gとなるように接触させている状態の上面図と正面図を含む説明図、図7Bはスタイラス103Gの傾きに対する角度検出器106Gと光スポット中心302G及び制御目標値119Gを示している。図7Aの上面図においては、被測定物200G、スタイラス103Gの支点117G及び接触点118Gのみを三角形の印及び星印でそれぞれ示し、スタイラス103Gについては省略している。以下では、図7Aの上面図及び図7Bの表記を用いて説明を行う。
スタイラス103Gの先端球104Gを被測定物200GのX軸+側に概略一定の測定力で接触させつつ、Y軸方向(例えば、相反する2方向であるY軸+方向とY軸−方向)に走査するときのスタイラス103Gの支点117G及び接触点118Gの位置関係を図8A〜図8Fに示す。図8A〜図8Cは、スタイラス103GがY軸方向に対して静止している状態からY軸+側に相対移動し始めるまでの状態を示しており、図8D〜図8Fはスタイラス103GがY軸方向に対して静止している状態からY軸−側に相対移動し始めるまでの状態を示している。また、図8A〜図8Fにおいて上側の図は被測定物200Gとスタイラス103Gの先端球104Gが接触する際のスタイラス103Gの支点117Gと接触点118Gの位置関係を示しており、下側の図は角度検出器106Gにおける光スポット中心303Ga〜303Gfの位置関係を示している。
スタイラス103GがY軸方向に静止している図8Aの状態では、スタイラス103Gの支点117Gと接触点118Gを結ぶベクトルはX軸に平行となり、スタイラス103GにはY軸方向の傾きは発生しない。次に、スタイラス103GがY軸+方向に移動し始めた瞬間の状態である図8Bの状態では、被測定物200Gからの抗力がスタイラス103Gの接触点118Gに働くため、走査方向に対して摩擦力が発生する。スタイラス103Gの傾き方向のモーメントよりも静摩擦力が大きい場合においては、スタイラス103Gの接触点118Gがその場に留まろうとするため、スタイラス103Gの支点117GのみがY軸+方向へ変位する事になる。そして、スタイラス103Gの支点117Gと接触点118GのY軸方向の相対距離が大きくなり、スタイラス103Gの傾き方向のモーメントが静摩擦力よりも大きくなる瞬間に、スタイラス103Gの接触点118Gが移動し始めて、静摩擦力から動摩擦力に切り替わる。この状態を図8Cに示す。動摩擦力≦静摩擦力となるため、X軸方向のスタイラス103Gの傾きが一定である場合には、接触点118Gが一度移動し始めた後は、スタイラス103Gの支点117Gと接触点118GのY軸方向の相対距離が一定となるようにスタイラス103Gが傾いて移動していく事になる。このとき、角度検出器106Gと光スポット中心303Gcの位置関係が図8Cの下側の図に示すようになる。スタイラス103GがY軸−側に走査するときの状態の推移を示す図8D〜図8Fについては、前述の内容と同様に説明できるため省略する。
最後に、被測定物200Gの被測定面200Gaである側面にスタイラス103Gの先端球104Gを接触させ、スタイラス103Gが任意の方向に傾いた状態において被測定物200Gとスタイラス103Gの先端球104Gの接触点118Gの座標値を取得する技術について説明する。
まず、簡単のため、図5Aに示すように被測定物200Gにスタイラス103Gの先端球104Gを接触させて測定する際に、スタイラス103Gを傾かせないで測定できるものと仮定する。この仮定においては、従来の3次元測定技術を使用して、スタイラス先端位置の相対位置座標データ(X,Y,Z)が取得できる。
次に、図5B〜図5Dに示すように、スタイラス103Gが、図5Aの支点117Gを中心として鉛直方向より傾いて測定された場合を仮定する。ここでは、スタイラス103Gの鉛直方向に対するX軸上の傾きθxとY軸上の傾きθyは、誤差を含むことなく、スタイラス傾き角度検出部106Gで検出できると仮定する。前述と同様に、スタイラス103Gが傾いていないと仮定した場合のスタイラス103Gの先端位置104Gaの相対位置座標データ(X,Y,Z)が、従来の3次元測定技術を使用して位置座標測定部108Gで取得することができる。
実際には、スタイラス103Gが傾いているため、前記相対位置座標データ(X,Y,Z)は、被測定物200Gとスタイラス103Gの先端球104Gの接触点104Gbの接触点位置座標データ(X’,Y’,Z’)を示すものではない事がわかる。このため、相対位置座標データ(X,Y,Z)とスタイラス103Gの傾きデータ(θx,θy)を用いて、接触点118Gの接触点位置座標データ(X’,Y’,Z’)を位置座標測定部108Gで求めることが必要となる。なお、スタイラス103Gの先端球104Gと被測定物200Gの接触点118Gとは、スタイラス103Gの先端球104Gと被測定物200Gが接触した状態におけるスタイラス先端球104Gの中心点を指す。スタイラス103Gが鉛直方向に静止していた初期状態より(θx,θy)だけ傾くと、スタイラス103Gの先端球104Gは相対位置座標データ(X,Y,Z)に対し下記の計算式(数4)で得られる(δx,δy,δz)だけ変位することになる。
上式において、変数Lはスタイラス103Gの支点117Gからスタイラス先端球104Gの中心までの長さを表す。
以上より、相対位置座標データ(X,Y,Z)にスタイラス103Gの傾きによるスタイラス先端の変位量(δx,δy,δz)を加算部404で加える事により、接触点位置座標データ(X’,Y’,Z’)が加算部404で求まる。
ここまでは、スタイラス103Gの基端のミラー105Gから反射されたレーザ光LL2を角度検出器106Gに照射することによりスタイラス103Gの傾きが期待通りに求まる事を前提としたものであるが、サブミクロンの測定精度を実現するためには、前記したように、測長座標系と角度検出器106Gの成す角度(以下、「取付角度誤差」と呼ぶ)が無視できない課題であり、この課題を前記実施形態にかかる3次元形状測定方法により解決するものである。
前述のとおり、接触点位置座標データ(X’,Y’,Z’)を高精度に求める際には、測長座標系における高精度な相対位置座標データ(X,Y,Z)と測長座標系におけるスタイラス103Gの高精度な傾きデータ(θx,θy)が必要となる。
前記測長座標系におけるスタイラス103Gの傾き(θx,θy)を角度検出器106G上で光スポット中心位置の変位量から算出するためには、図3に示すように角度検出器106Gの座標軸θx、θyが測長座標系に平行となる事が必要となる。しかし、実際には、図6に示すように角度検出器106Gの座標軸θx、θyは測長座標系に対して平行になるとは限らず、角度検出器106Gの原点を中心に回転して角度検出器106Gが測長座標系に取付けられることになる。このため、この角度検出器106Gから検出されるスタイラス103Gの傾き(θx’,θy’)と、本来求めるべき測長座標系におけるスタイラス103Gの傾き(θx,θy)が一致しない事は明らかである。また、測長座標系が光学的に構成される事を考慮すると、測長座標系に対して角度検出器106Gの取付角度を調整する事は非常に困難となる。
次に、図5Bを例として被測定物200Gとスタイラス103Gの先端球104Gとの接触点118Gを取得する際の角度検出器106Gの取付角度誤差の影響について説明する。スタイラス103Gの先端球104Gが被測定物200Gに接触している状態において、測長座標系におけるスタイラス103Gの傾きが(θx,θy)であるとする。
今、角度検出器106Gが測長座標系に対して角度γだけ誤差(取付角度誤差)を含んで取付られているとする。このとき、角度検出器106Gから検出された傾きデータ(θx’,θy’)は、測長座標系におけるスタイラス103Gの傾きデータ(θx,θy)に対して下記の(数5)の式の関係となる。
また、(θx’,θy’)から推定されるスタイラス103Gの先端球104Gの変位量(δx’,δy’,δz’)は下式((数6)の式)となる。
つまり、相対位置座標データ(X,Y,Z)から接触点位置座標データ(X’,Y’,Z’)を求める際に、本来のスタイラス103Gの傾き(θx,θy)を用いる場合と角度検出器106Gから検出された傾きデータ(θx’,θy’)を用いる場合において、(δx’−δx,δy−δy’,δz−δz’)の誤差が生じる事がわかる。
前述の誤差は、例えば、スタイラス103Gの長さL=20mm、角度検出器106Gの取付角度誤差γ=1°とし、被測定物200Gにスタイラス103Gの先端球104Gを押込む量をδx=10μmとし、δy=0μmとするときには、δx’=9.998μm,δy’=0.175μmとなり、サブミクロンの測定精度を得るためには無視できない事が明らかである。
次に、角度検出器106Gが取付角度誤差γを持つ場合において、従来技術を用いて、測定力を概略一定にする追従制御について説明する。
図6は、角度検出器106Gが取付角度誤差γのズレを含んでいる状態を示している。前述と同様に、角度検出器106Gの目標位置119Gに光スポット中心300Gcを位置合わせするようにX軸ステージ112Gを制御する。このとき、角度検出器106Gが取付角度誤差γだけ傾いているため、スタイラス103Gの傾きは本来の目標角度θxではなく、少しずれた角度θx’で概略一定となるような制御結果となる。
この追従制御を行いつつ、スタイラス103Gを被測定物200Gに対して相対的にY軸上を走査するときの、スタイラス103Gの支点117Gと接触点118Gの位置関係及び、角度検出器106Gと光スポット中心304Ga〜304Ghの位置関係を図9A〜図9Hに示す。
図9A〜図9Dは、スタイラス103GがY軸方向に対して静止している状態からY軸+側に相対移動し始めるまでの状態を示しており、図9E〜図9Hはスタイラス103GがY軸方向に対して静止している状態からY軸−側に相対移動し始めるまでの状態を示している。スタイラス103GがY軸方向に静止している図9Aの状態では、スタイラス103Gの支点117Gと接触点118Gを結ぶベクトルはX軸に平行となり、スタイラス103GにY軸方向の傾きは発生しない。次に、スタイラス103GがY軸+方向に移動し始めた瞬間の状態を図9Bに示す。被測定物200Gからの抗力がスタイラス103Gの接触点118Gに働き、走査方向に対して摩擦力が発生する。スタイラス103Gの傾き方向のモーメントよりも静摩擦力が大きい場合においては、スタイラス103Gの接触点118Gがその場に留まろうとするため、スタイラス103Gの支点117GのみがY軸+方向へ変位し、結果的にスタイラス103GがY軸方向にも傾くことになる。このとき、Y軸方向の光スポット中心が変位する。ところが、角度検出器106Gの取付角度誤差が含まれる事により、角度検出器106G上のX軸方向の制御目標位置119Gからの誤差が発生する。このとき、図9Cに示すように、X軸方向の追従制御により、角度検出器106Gの目標位置へ追従するため、X軸方向のスタイラス103Gの支点117Gが、スタイラス103Gの先端球104Gの押込みを減らす方向に移動する。スタイラス103Gの傾き方向のモーメントが静摩擦力よりも大きくなる瞬間に、スタイラス103Gの接触点118Gが移動し始めて、静摩擦力から動摩擦力に切り替わる。この状態を図9Dに示す。接触点118Gが一度移動し始めた後は、スタイラス103Gの支点117Gと接触点118GのY軸方向の相対距離が一定となるように、傾いて移動していく事になる。このとき、角度検出器106Gと光スポット中心304Gdの位置関係が図9Dの下側の図に示すようになる。スタイラス103GがY軸方向に静止している状態からY軸−側に走査するときの状態の推移を示す図9E〜図9Hについては、前述の内容と基本的に同様であるが、Y軸方向の走査による摩擦力の発生方向が逆転するため、スタイラス103Gの支点117Gが、スタイラス103Gの先端球104Gをより押込ませる方向に変位する事になる。
前述の現象が測定結果に与える影響を説明する。被測定物200Gの被測定面200Gaをスタイラス103GがY軸+方向に走査して、少なくとも2箇所以上で取得した第1相対位置座標データ(X,Y,Z)と第1傾きデータ(θx,θy)と、前記測定位置と概略一致する位置をスタイラス103GがY軸−方向に走査して、少なくとも2箇所以上で取得した第2相対位置座標データ(X,Y,Z)と第2傾きデータ(θx,θy)とを用いて、スタイラス103GのY軸+方向走査時の被測定物200Gとスタイラス103Gの先端球104Gの接触点位置座標データと、スタイラス103GのY軸−方向走査時の被測定物200Gとスタイラス103Gの先端球104Gの接触点位置座標データとを算出した結果を図10Aに示す。図10Aにおいて、被測定物200Gに対するY軸+方向走査時の接触点推定結果である接触点位置座標データ121aとY軸−方向走査時の接触点推定結果である接触点位置座標データ121bは一致しない。
これが、角度検出器106Gの取付角度誤差に起因する測定誤差であり、スタイラス103Gが測長座標系のX軸、Y軸方向に傾いているにも関わらず、測長座標系に対して傾いている角度検出器106Gの検出結果を用いて接触点を算出した結果に他ならない。
本実施形態にかかる3次元形状測定方法では、この取付角度誤差を以下の手順で補正することにより、前記測定誤差を低減させるものである。
前記補正処理は、スタイラス先端変位演算部403で実施される。
まず、図11Aに示すような取付角度誤差の無い角度検出器106Gの座標軸をθx軸とθy軸と、図11Bに示すような前記角度検出器106Gの原点Oを中心に取付角度誤差γだけ回転したときの角度検出器106Gの座標軸をθx’軸とθy’軸を仮定する。
今、光スポット中心305Gが図11A及び図11Bに示す位置に照射されていると仮定する。これは、角度検出器106Gの取付状態が、図11Bに示す場合においては角度検出結果がθx’θy’座標において第1象限で検出されるが、図11Aに示す取付角度誤差の無い理想的な角度検出結果としてはθx軸上に存在する事になる。角度検出器106Gの2次元空間の等方性が得られれば、下式(数7)に示すような座標変換をスタイラス先端変位演算部403により行う事により、角度検出結果を図11Bで示されるθx’θy’座標から図11Aで示されるθxθy座標に変換する事が可能となる。
この変換を実現するためには角度検出器106Gの取付角度誤差γが必要となる。
前記取付角度誤差γは以下のようにして算出する。まず、スタイラス103Gを第1の方向に走査して、少なくとも2箇所以上の位置で、位置座標測定部108Gと角度検出部106Gとでそれぞれ第1相対位置座標データ(X,Y,Z)と第1傾きデータ(θx’,θy’)を求める。また、スタイラス103Gを第1の方向と相反する第2の方向に走査して、前記第1相対位置座標データ及び傾きデータを求めた位置と概略一致する位置で、位置座標測定部108Gと角度検出部106Gとでそれぞれ第2相対位置座標データ(X,Y,Z)と第2傾きデータ(θx’,θy’)とを求める。また、事前に入力装置411から取付角度誤差γの初期値を入力しておく事で(数7)で示される座標変換式が実現される。前記座標変換式はスタイラス先端変位演算部403に実装される。前記第1傾きデータ(θx’,θy’)と前記第2傾きデータ(θx’,θy’)を前記スタイラス先端変位演算部の座標変換式により、スタイラス先端変位演算部403にて第1傾き補正データ(θx,θy)と第2傾き補正データ(θx,θy)を得る。次いで、前記それぞれ求められた第1相対位置座標データ(X,Y,Z)と第1傾きデータ(θx’,θy’)、及び、第2相対位置座標データ(X,Y,Z)と第2傾きデータ(θx’,θy’)と、前記変換後の第1傾き補正データ(θx,θy)と第2傾き補正データ(θx,θy)とを加算部404を用いて加算する事により、スタイラス103Gと被測定物200Gの第1接触点位置座標データ(X’,Y’,Z’)と第2接触点位置座標データ(X’,Y’,Z’)を算出する。そして、最適な取付角度誤差γをγ校正部407Gで探索する事で、角度検出器106Gの取付角度誤差を校正する。以下では、角度検出器106Gの取付角度誤差を演算処理部109Gで校正する方法を説明する。
先に述べたように、被測定物200Gの被測定面200Ga上をスタイラス103Gにより、前記相反する2方向(例えば、Y軸+方向とY軸−方向)へ走査する事で得られる接触点位置座標データ121aと接触点位置座標データ121bは、角度検出器106Gの取付誤差が存在する場合には、図10Aのように、双方の接触点位置座標データ121aと接触点位置座標データ121bが一致しない。しかし、角度検出器106の取付角度誤差が小さくなると、図10Bに示すように前記接触点位置座標データ121aと接触点位置座標データ121bの差は小さくなり、角度検出器106Gの取付角度誤差が存在しない場合には、図10Cに示すように、前記接触点位置座標データ121aと接触点位置座標データ121bは測定精度の範囲で一致する。
そこで、前記最適な取付角度誤差γをγ校正部407Gにより探索するための1つの指標を、以下のように、γ校正部407Gで定義する。
図10A〜図10Cにおいて、スタイラス103Gを相反する2方向(例えば、Y軸+方向とY軸−方向)へ走査する事で得られる接触点位置座標データ121aと接触点位置座標データ121bの差を表す指標として、本発明の第1及び第2実施形態においては第1の走査方向に対する接触点推定データ(Xa'[i],Ya'[i],Za'[i])と、第2の走査方向に対する接触点位置座標データ(Xb'[i],Yb'[i],Zb'[i])とするとき、以下の(数8)の最初の3行に示すように比較部406で比較し、最終行の距離dをγ校正部407Gで定義する。ただし、添字iは、データ数をN(任意の整数)とするとき、i=1,2,・・・,Nである。
また、本発明の第3実施形態においては被測定物200Gが既知形状である場合においては、前記最適な取付角度誤差γをγ校正部407Gにより探索するための以下に示す別の指標を、γ校正部407Gで定義する。第1の走査方向に対する第1接触点位置座標データ(Xa'[i],Ya'[i],Za'[i])と第1既知形状データ(XDa'[i],YDa'[i],ZDa'[i])、及び第2の走査方向に対する第2接触点位置座標データ(Xb'[i],Yb'[i],Zb'[i])と第2既知形状データ(XDb'[i],YDb'[i],ZDb'[i])とするとき、両接触点位置座標データの差を表す指標として(数9)の最終行の距離dをγ校正部407Gで定義する。なお、(数9)の最終行以外の項目は比較部406で実現する。なお、前記第1及び第2既知形状データは入力装置411により入力されるものとし、多数の3次元座標データ群であっても良いし、例えば既知形状が球体であれば半径値を入力する事により接触点位置座標データに対応する既知形状データを算出する事も可能である。
前記(数8)の最終行の距離d及び(数9)の最終行の距離dの2つの指標がそれぞれ事前に入力装置で入力された校正完了のための判定値よりも小さくなるような角度γを演算処理部109Gにより探索する事により校正し、スタイラス先端変位演算部403において前記角度検出器106Gの取付角度誤差を前記校正された角度γとする事により、スタイラス先端変位演算部403で、角度検出器106Gの取付角度誤差γの補正が可能となる。なお、前記校正された取付角度誤差γは、校正後に任意の方向に走査して求めたスタイラス103Gの第3相対位置座標データ及び第3傾きデータに対しても適用可能であり、演算処理部109Gにおいて前記第3相対位置座標データ及び第3傾きデータからスタイラス103Gと被測定物200Gの接触点位置座標データを算出する事ができる。
また、被測定物200Gが既知形状でありかつその既知形状データを使用することができ、接触点位置座標データと既知形状データの誤差を指標とする場合においては、演算処理部109Gに、接触点位置座標データを既知形状データへ位置合わせする処理部を追加する事により比較部406で前記既知形状データへ位置合わせした接触点位置座標データと前記既知形状データの誤差を算出する事が好ましい。この位置合わせ方法の一例として、接触点推定データと既知形状データの差の自乗総和平均を最小にする座標変換量を求めた後に、前記接触点推定データを前記座標変換量を用いて座標変換すれば良い。
さらに、本発明の第3実施形態においては(数9)の最終行に示す距離dを指標として前記γ校正部407Gで使用する場合においては、第1誤差データがdxa=dya=dza=0かつ第2誤差データがdxb=dyb=dzb=0となるときに、距離d=0が保証される。つまり、前記γ校正部407Gで下式(数10)の指標に拡張する事により、第1の走査方向に走査してスタイラス103Gの相対位置座標データを求める測定位置と第2の走査方向に走査してスタイラス103Gの相対位置座標データを求める測定位置は一致する必要が無い上に、両者の測定データ数が異なっても前記取付角度誤差の校正を前記γ校正部407Gで行なうことができる事になる。
この状態を図10D〜図10Fに示す。図10Dにおいて、スタイラス103GをY軸+側へ走査したときの接触点位置座標データを(Xda[i],Yda[i],Zda[i])、前記接触点位置座標データに対応する既知形状データを(XDda[i],YDda[i],ZDda[i])とする。添字iはi=1,2,・・・,5である。同様に、スタイラス103GをY軸−側へ走査したときの接触点位置座標データを(Xdb[j],Ydb[j],Zdb[j])、前記接触点位置座標データに対応する既知形状データを(XDdb[j],YDdb[j],ZDdb[j])とする。添字jはj=1,2,3である。図10Dにおける指標ddは下記のように(数11)により前記γ校正部407Gでで求まる。
同様に図10Eについても同様に、スタイラス103GをY軸+側へ走査したときの接触点位置座標データを(Xea[i],Yea[i],Zea[i])、前記接触点位置座標データに対応する既知形状データを(XDea[i],YDea[i],ZDea[i])、スタイラス103GをY軸−側へ走査したときの接触点位置座標データを(Xeb[j],Yeb[j],Zeb[j])、前記接触点位置座標データに対応する既知形状データを(XDeb[j],YDeb[j],ZDeb[j])とする。このとき、指標deが(数12)のように前記γ校正部407Gでで求まる。
同様に図10Fについても同様に、スタイラス103GをY軸+側へ走査したときの接触点位置座標データを(Xfa[i],Yfa[i],Zfa[i])、前記接触点位置座標データに対応する既知形状データを(XDfa[i],YDfa[i],ZDfa[i])、スタイラス103GをY軸−側へ走査したときの接触点位置座標データを(Xfb[j],Yfb[j],Zfb[j])、前記接触点位置座標データに対応する既知形状データを(XDfb[j],YDfb[j],ZDfb[j])とする。このとき、指標dfが(数13)のように前記γ校正部407Gでで求まる。
図10D〜図10Fに示す接触点位置座標データと前記接触点位置座標データに対応する既知形状データの関係からも明らかなように、下式(数14)が成立する。
最後に、本発明の前記実施形態にかかる3次元形状測定方法のフローを、図12Aに示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、ステップS1において、制御装置111Gの制御の下に、校正に用いる被測定物200Gの被測定面200Gaを第1の方向にスタイラス103Gを走査させて、少なくとも2点以上の位置での第1相対位置座標データと第1傾きデータを前記位置座標測定部108Gと前記角度検出部106Gとでそれぞれ求める。具体的には、被測定物200Gの被測定面200Gaにスタイラス103Gのスタイラス先端球104Gを概略一定の測定力で接触させつつ、第1の方向に走査して、第1相対位置座標データと第1傾きデータを、それぞれ2点以上、前記位置座標測定部108Gと前記角度検出部106Gとでそれぞれ求めて、記憶部400,401にそれぞれ記憶させる。
次いで、ステップS2において、制御装置111Gの制御の下に、前記校正に用いる被測定物200Gの被測定面200Gaを、第1の方向と相反する第2の方向にスタイラス103Gを走査させて、前記第1相対位置座標データ及び前記第1傾きデータを求めた位置と概略一致する位置での第2相対位置座標データと第2傾きデータを前記位置座標測定部108Gと前記角度検出部106Gとでそれぞれ求める。具体的には、被測定物200Gの被測定面200Gaにスタイラス103Gを概略一定の測定力で接触させつつ、第1の方向に相反する第2の方向に走査して、第2相対位置座標データと第2傾きデータを、それぞれ前記第1相対位置座標データ及び前記第1傾きデータを求めた位置と概略一致する位置において、前記位置座標測定部108Gと前記角度検出部106Gとでそれぞれ求めて、記憶部400,401にそれぞれ記憶させる。
次に、ステップS3において、記憶部401に記憶された第1傾きデータからスタイラス先端変位演算部403で前記傾き量に対応するスタイラス先端変位を求め、記憶部400に記憶された第1相対位置座標データと前記スタイラス先端変位を加算部404で加算し第1接触点位置座標データを算出する。同様にステップS4において、第2相対位置座標データ及び第2傾きデータから第2接触点位置座標データを算出する。
次に、ステップS5において前記第1接触点位置座標データと前記第2接触点位置座標データを比較部406により比較して、誤差データを算出する。前記誤差データは、記憶部407に記憶され、表示装置413に出力されて表示装置413で表示される。また、角度検出器106Gの取付角度誤差γを校正する場合には、記憶部407に記憶された前記誤差データと、事前に入力装置411で比較部407Hに入力された校正完了の判定値とを比較部407Hにおいて比較し、校正が完了していない場合においては、角度検出器106Gの取付角度誤差γを校正部407Gにより校正する。前記校正に関するフローは後に説明する。
次に、ステップS6において、測定対象を実際に測定すべき任意の被測定物に置き換えて、前記スタイラスの相対位置を任意の方向に移動させる事により、第3相対位置座標データ及び第3傾きデータを前記位置座標測定部108Gと前記角度検出部106Gにより求めて、記憶部400,401にそれぞれ記憶させる。
次に、ステップS7において、記憶部401に記憶された前記第3傾きデータに含まれる角度検出器106Gの取付角度誤差を、校正部407Gで前記校正された取付角度誤差γを用いてスタイラス先端変位演算部403により補正する事により、第3傾き補正データを算出する。
次に、前記第3相対位置座標データ及び前記第3傾き補正データから、前記被測定物200Gと前記スタイラス103Gの第3接触点位置座標データを加算部404により算出する。
最後に、事前に入力装置411で入力された前記被測定物の既知形状データと前記第3接触点位置座標データを比較部406で比較し、第3の形状誤差データを算出し、記憶部407で記憶した後に表示装置413に表示する。
本発明の第2実施形態の前記角度検出器106Gの取付角度誤差γを校正する動作に関するフローを図12Bに示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、ステップS11において、前記角度検出器106Gの取付角度誤差γを繰返し処理により求めるための初期値γ’と、繰返し処理による校正完了を判定するための判定値を、入力装置411から比較部407に入力し設定する。
次に、ステップS12では、スタイラス先端変位演算部403において、前記校正に用いる、被測定物200Gを測定して求めた前記第1傾きデータに含まれる前記角度検出器106Gの取付角度誤差を、角度γ’を用いて補正する事により、第1傾き補正データを算出する。同様に、ステップS13では、スタイラス先端変位演算部403において、前記校正に用いる、被測定物200Gを測定して求めた前記第2傾きデータに含まれる前記角度検出器106Gの取付角度誤差を、角度γ’を用いて補正する事により、第2傾き補正データを算出する。
次に、ステップS14において、前記第1傾き補正データから第1スタイラス先端変位量をスタイラス先端変位演算部403により算出した後に、前記校正に用いる、被測定物200Gを測定して求めた前記第1相対位置座標データと前記求められた第1スタイラス先端変位量とを加算部404で加算する事により、第1接触点位置座標データを算出する。同様に、ステップS15において、前記第2傾き補正データから第2スタイラス先端変位量をスタイラス先端変位演算部403により算出した後に、前記校正に用いる、被測定物200Gを測定して求めた前記第2相対位置座標データと前記求められた第2スタイラス先端変位量とを加算部404で加算する事により、第2接触点位置座標データを算出する。
次に、ステップS16において、前記第1接触点位置座標データと前記第2接触点位置座標データを比較部406で比較し、その差がステップS11で設定した判定値よりも小さくなっているか比較部407Hにて判定する。これは、前記ステップS12及びS13で使用した角度γ’が実際の取付角度誤差γを適切に表していない場合には、前記比較結果に差が現れる事を利用している。
ステップS16において、前記比較結果が前記判定値よりも小さい場合には、ステップS18に示すようにそのときの角度γ’が実際の角度検出器106Gの取付角度誤差γとなる。逆に、前記比較結果が前記判定値よりも大きい場合には、角度γ’と実際の取付角度には差が発生している事になるので、ステップS17において角度γ’に微小量δγを校正部407Gで加えた後に、ステップS12〜S16を繰り返す事により角度γ’の最適化を行う。なお、最適化の際に必要となる微小変化量δγの決定には、2分法等を適用すれば良い。
本発明の第3実施形態の前記角度検出器106Gの取付角度誤差γを校正する動作に関するフローを図12Cに示すフローチャートを参照しながら説明する。
まず、ステップS21において、前記角度検出器106Gの取付角度誤差γを繰返し処理により求めるための初期値γ’と、繰返し処理による校正完了を判定するための判定値と、校正に用いる被測定物200Gが既知形状である事より既知形状データを入力装置から入力し設定する。
次に、ステップS22では、スタイラス先端変位演算部403において、前記校正に用いる被測定物200Gを測定して求めた前記第1傾きデータに含まれる前記角度検出器106Gの取付角度誤差を、角度γ’を用いて補正する事により、第1傾き補正データを算出する。同様に、ステップS23では、スタイラス先端変位演算部403において、前記校正に用いる被測定物200Gを測定して求めた前記第2傾きデータに含まれる前記角度検出器106Gの取付角度誤差を、角度γ’を用いて補正する事により、第2傾き補正データを算出する。
次に、ステップS24において、前記第1傾き補正データから第1スタイラス先端変位量をスタイラス先端変位演算部403により算出した後に、算出した第1スタイラス先端変位量と、前記校正に用いる、被測定物200Gを測定して求めた前記第1相対位置座標データとを加算部404により加算する事により、第1接触点位置座標データを算出する。同様に、ステップS25において、前記第2傾き補正データから第2スタイラス先端変位量をスタイラス先端変位演算部403により算出した後に、算出した第2スタイラス先端変位量と、前記校正に用いる被測定物200Gを測定して求めた前記第2相対位置座標データとを加算部404により加算する事により、第2接触点位置座標データを算出する。
次に、ステップS26において、前記第1接触位置座標データと対応する前記既知形状データを比較部406で比較する事により第1誤差データを算出して、記憶部407に記憶する。同様に、ステップS27において、前記第2接触位置座標データと対応する前記既知形状データを比較部406で比較する事により第2誤差データを算出して、記憶部407に記憶する。
次に、ステップS28において、記憶部407に記憶された前記第1誤差データと前記第2誤差データから求まる評価指標がステップS21で設定した判定値よりも小さくなっているか否かを比較部407Hで比較して判定する。これは、前記ステップS22及びS23で使用した角度γ’が実際の取付角度誤差γを適切に表していない場合には、前記比較結果に差が現れる事を利用している。
ステップS28において、前記比較結果が前記判定値よりも小さい場合には、ステップS30に示すようにそのときの角度γ’が実際の角度検出器106Gの取付角度誤差γとなる。逆に、前記比較結果が前記判定値よりも大きい場合には、角度γ’と実際の取付角度には差が発生している事になるので、ステップS29において角度γ’に微小量δγを校正部407Gで加えた後に、ステップS22〜S28を繰り返す事により角度γ’の最適化を行う。
最後に、相対位置座標データ(X,Y,Z)と傾きデータ(θx’,θy’)から、スタイラス103Gと被測定物200Gの接触点を加算部404により算出する計算式を以下の(数15)にまとめる。ここで、角度検出器106Gの取付角度誤差はγとし、スタイラス103Gの支点から先端球104Gの中心までの距離をLとする。
以上のように、本発明の形状測定方法によれば、角度検出器106Gの取付角度誤差を容易に校正することができ、前記角度検出器106Gの取付角度誤差による測定誤差を低減させる事が可能となる。また、角度検出器106Gの取付角度を繰返して調整する事も不要となる。
また、前述のように第1接触点位置座標データと第2接触点位置座標データを直接比較する場合においては、被測定物の形状が既知である必要がなくなるため、未知形状の被測定物を用いる事も可能である。
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。