以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、図面の説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明については省略することとする。
[液晶ポリエステル及びその合成方法]
まず、本発明の液晶ポリエステルの製造方法により製造する液晶ポリエステル及びその合成方法について説明する。
液晶ポリエステルは、上記一般式(i)で表される構造単位(以下、「(i)構造単位」という)、上記一般式(ii)で表される構造単位(以下、「(ii)構造単位」という)、及び上記一般式(iii)で表される構造単位(以下、「(iii)構造単位」という)を有し、好ましくは末端部を除く部分は全てこれらの構造単位の組み合わせにより構成されているものである。液晶ポリエステルにおいて、これらの構造単位は、規則的に配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。
ここで、(i)構造単位は、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構造単位であり、(ii)構造単位は、芳香族ジカルボン酸に由来する構造単位であり、(iii)構造単位は、芳香族ジオールに由来する構造単位である。
液晶ポリエステルは、上記(i)〜(iii)の構造単位がそれぞれ有しているAr1、Ar2及びAr3で表される基の合計を100モル%としたとき、これらのうちの40モル%が2,6−ナフタレンジイル基であるものである。なお、2,6−ナフタレンジイル基は、Ar1、Ar2及びAr3で表される基の全体に対して上記の条件を満たすように含まれていればよく、かかる条件が満たされる限り、例えば、Ar1、Ar2及びAr3で表される基のうちの1種又は2種は、2,6−ナフタレンジイル基を含まないものでもよい。
上記の条件を満たす構造を有することにより、液晶ポリエステルは、成形体としたときに低誘電正接なものとなり、電子部品の材料として優れた電気的特性を発揮し得る。このような特性を更に良好に得るためには、Ar1、Ar2及びAr3で表される基の合計100モル%中、2,6−ナフタレンジイル基が50モル%以上であると好ましく、65モル%以上であるとより好ましく、70モル%以上であると更に好ましい。ただし、2,6−ナフタレンジイル基の割合が大きすぎると、液晶ポリエステルの溶融粘度が過度に高くなり、後述する製造方法における重合容器(重合缶)からの取り出しが困難となって製造効率が低下するおそれがある。そこで、このような不都合を避けるため、全構造単位の合計100モル%中、2,6−ナフタレンジイル基の割合は、80モル%以下であることが好ましい。
また、液晶ポリエステル(i)〜(iii)の構造単位の合計を100モル%としたときに、(i)構造単位の合計が30〜80モル%であると好ましく、45〜60モル%であるとより好ましい。また、(ii)及び(iii)構造単位は、それぞれの合計が10〜35モル%であると好ましく、15〜30モル%であるとより好ましい。各構造単位の割合がこのような範囲を満たすと、液晶ポリエステルは実用的な温度で溶融できるものとなり、後述する製造方法において重合容器(重合缶)からの取出しが容易となって、液晶ポリエステルの製造効率が向上する傾向にある。
また、液晶ポリエステルは、上記の条件を満たすとともに、450℃以下の温度で溶融させたときに光学異方性を示すものであると好適である。このような液晶ポリエステルは、耐熱性、機械強度及び成形加工性という特性に優れている。
上記構造を有する液晶ポリエステルは、以下のような方法によって好適に合成することができる。
まず、上述した(i)〜(iii)の構造単位をそれぞれ形成するための原料モノマーを準備する。(i)構造単位を形成するための原料モノマーは、芳香族ヒドロキシカルボン酸である。芳香族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、p−ヒドロキシ安息香酸、4−(4−ヒドロキシフェニル)安息香酸等が挙げられる。これらのモノマーが有しているベンゼン環又はナフタレン環は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。2,6−ナフタレンジイル基は、これらのうち、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸から誘導される。
(ii)構造単位を形成するための原料モノマーは、芳香族ジカルボン酸である。芳香族ジカルボン酸としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸等が挙げられる。これらのモノマーが有しているベンゼン環又はナフタレン環は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。2,6−ナフタレンジイル基は、これらのうち、2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導される。
(iii)構造単位を形成するための原料モノマーは、芳香族ジオールである。芳香族ジオールとしては、2,6−ナフタレンジオール、ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。これらのモノマーが有しているベンゼン環又はナフタレン環は、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基で置換されていてもよい。2,6−ナフタレンジイル基は、これらのうち、2,6−ナフタレンジオールから誘導される。
各構造単位を形成するための原料モノマーにおいては、上記のように、これらが有するベンゼン環やナフタレン環が、所定の置換基を有していてもよい。これらの置換基が、液晶ポリエステルにおいて、(i)〜(iii)構造単位が有しているAr1、Ar2及びAr3で表される基の置換基として導入される。置換基としては、より具体的には次のような基が好ましい。
まず、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられ、直鎖状又は分岐状の基のいずれであってもよく、また、脂環基であってもよい。炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
(i)、(ii)及び(iii)構造単位を有する液晶ポリエステルの製造方法としては、公知の液晶ポリエステルの製造方法を適用することができ、例えば、これらの各構造単位に誘導される原料モノマーを、それぞれ所望のモル比率が得られるように配合して重合させる方法が挙げられる。この場合、液晶ポリエステルにおいて、上述した好適な2,6−ナフタレンジイル基配合率が得られるように、(i)、(ii)及び(iii)の各構造単位に誘導される原料モノマー中の、2,6−ナフタレンジイル基を有する構造単位に誘導されるモノマーの割合を調整する。
特に液晶ポリエステルの製造方法としては、上述したような(i)、(ii)及び(iii)の各構造単位に誘導されるモノマーを、エステル形成性誘導体に転換した後、重合させる方法が好適である。これにより、重合が容易化され、液晶ポリエステルの形成が促進される。以下、このようなエステル形成性誘導体を経る液晶ポリエステルの製造方法について説明する。
まず、液晶ポリエステルを形成するための原料モノマーの少なくとも一部を、エステル形成性誘導体に転換する反応を行う(第1反応)。ここで、エステル形成性誘導体とは、エステル生成反応を促進するような基を有する化合物を意味する。例えば、カルボキシル基を有するモノマーにおいて、そのカルボキシル基を酸ハロゲン化物や酸無水物に転換したものが、エステル形成性誘導体に該当する。また、水酸基を有するモノマーにおいて、その水酸基を低級カルボン酸を用いてエステル化したものがエステル形成性誘導体に該当する。
第1反応としては、例えば、原料モノマー中の水酸基に、低級カルボン酸を反応させてエステルに転換する(アシル化)方法が挙げられる。より具体的には、(i)構造単位及び(iii)構造単位にそれぞれ誘導される原料モノマーである芳香族ヒドロキシカルボン酸及び芳香族ジオールの水酸基をアシル基に転換(アシル化)することが好ましい。アシル化は、上記モノマー中の水酸基に、無水酢酸を反応させることが行うことができる。
このようにして、原料モノマーの少なくとも一部をエステル形成性誘導体に変換した後、かかるエステル形成性誘導体を含む原料モノマーを重合させ(第2反応)、これにより液晶ポリエステルが得られる。第2反応では、上記の(i)及び(iii)構造単位の原料モノマーからそれぞれ誘導されたエステル形成性誘導体が、(ii)構造単位に誘導されるモノマーである芳香族ジカルボン酸と脱酢酸重縮合を生じることができるため、容易に液晶ポリエステルが生じる。
上記のようなエステル形成性誘導体を用いた液晶ポリエステルの製造方法としては、例えば、特開2002−146003号公報に記載された方法を適用することができる。
[液晶ポリエステルの製造方法]
次に、液晶ポリエステルを製造する方法の好適な実施形態について説明する。ここでは、上述のような、原料モノマーの少なくとも一部を、エステル形成性誘導体に転換する反応(第1反応)を行った後に重合させる(第2反応)、液晶ポリエステルの製造方法について説明する。
図1は、本実施形態の液晶ポリエステルの製造に用いる製造装置の構成を模式的に示す断面図である。図1に示すように、製造装置100は、原料モノマーの一部をエステル形成性誘導体に変化させる反応(第1反応)を行う反応缶10と、反応缶10で得られたエステル形成性誘導体を含む原料モノマーの重合反応(第2反応)を行う重合缶30(重合容器)とを有している。
反応缶10は、内部に原料モノマー混合物50を収容し、これを内部に備えられた攪拌機12によって攪拌等することができる。この反応缶10の下部には、第1反応後の原料モノマー混合物60を取り出す連結管20が接続されている。反応缶10には、図示しないが、内部の原料モノマー混合物50,60を加熱できるような装置が設けられていてもよい。このような装置としては、例えば、内部の原料モノマー混合物50,60と接触して加熱する熱電対や、反応缶10の外壁内やその外側に熱媒を流通させて内部を加熱する構造等が挙げられる。
反応缶10の下部に接続された連結管20の他端部は、重合缶30の上方に引き回されており、重合缶30の上方から内部に挿入されている。第1反応後の反応缶10内の原料モノマー混合物60は、この連結管20を通って重合缶30に輸送される。
重合缶30は、内部に第1反応後の原料モノマー混合物60を収容し、これを内部に備えられた攪拌機32によって攪拌等することができる。攪拌機32は、攪拌中、内部の収容物(原料モノマー混合物60等)の上面が外側に行くほど低くなる、すなわち、掻き下げにできるようなものであると好適である。こうすると、攪拌時の内容物の壁面への付着を最小限とすることができ、得られる液晶ポリエステルの回収効率を向上させることができる。このような観点からは、攪拌機32は、攪拌部分にヘリカル翼を備えたものであると好適である。
また、重合缶30は、その外壁内に熱媒Tを導入できる構造となっており、これによって内部の原料モノマー混合物60を加熱できるようになっている。なお、重合缶30は、このような熱媒Tによる方法以外に、内部に熱電対を備えたり、また外部から加熱したりすることによって、内部の原料モノマー混合物60を加熱できるものであってもよい。さらに、重合缶30には、ガス導入装置36が取り付けられており、このガス導入装置36からガス導入部38を通って重合缶30内にガスを導入することができるようになっている。
重合缶30の下部には、第2反応後に得られた液晶ポリエステル70を取り出すための吐出管40が接続されている。この吐出管40には、開閉可能なコック44が設けられている。このコック44を開くことで、重合缶30内で生成した液晶ポリエステル70を、吐出管40を通って吐出口40aから吐出させることができる。
吐出管40には、コック44よりも先の部分に、周囲を覆うように加熱装置42が設けられている。この加熱装置42により、吐出管40を加熱することができる。この加熱装置42としては、図示のように、吐出管40を覆う形態を有し、内部に熱媒が導入される熱媒ジャケットが挙げられる。また、加熱装置42は、このような形態に限られず、吐出管40を加熱できる外部ヒータであってもよく、吐出管40の内部に挿入され、液晶ポリエステルと直接接触して加熱する熱電対であってもよい。なお、吐出管40は、放熱を防ぐために断熱されていることが好ましい。
また、吐出管40は、その内径が5〜200mmであると好ましく、10〜80mmであるとより好ましく、20〜70mmであると更に好ましい。この内径が5mmよりも小さい場合、液晶ポリエステル70による閉塞が生じ易くなる場合がある。一方、200mmを超えると、吐出時の液晶ポリエステルの流量が多くなりすぎ、吐出口40aにおいて液晶ポリエステルが飛散しやすくなって、回収が困難となる場合がある。
このような製造装置100を用いた液晶ポリエステルの製造においては、まず、(i)〜(iii)の構造単位をそれぞれ形成するための原料モノマーを準備する。この際、上述した2,6−ナフタレンジイル基の好適な配合率(少なくとも40モル%以上)が得られるように、これらの原料モノマーのうち、2,6−ナフタレンジイル基を有する構造単位に誘導されるものを、好適な配合率が得られるような割合で含有させる。
このように準備した原料モノマーを、反応缶10内に投入して混合し、原料モノマー混合物50とする。また、原料モノマーの一部に第1反応を生じさせるため、例えば無水酢酸等の低級カルボン酸を投入する。そして、これらを必要に応じて加熱、攪拌することにより反応させて、原料モノマーの一部がエステル形成性誘導体に誘導された原料モノマー混合物60を得る。かかる混合は、室温(23℃)程度でも十分に実施することが可能であり、100℃以下の温度に保持して行うことが好ましい。混合時間は、好ましくは1分〜3時間の範囲で選択される。混合温度や混合時間は、良好な生産性を得る観点からは、約60℃で1時間程度とすることが好ましい。
次に、第1反応後の原料モノマー混合物60を、反応缶10から連結管20を通して重合缶30に移動させる。かかる移動は、反応缶10内の原料モノマー混合物60の自重によって生じさせたり、反応缶10内をガスにより加圧して原料モノマー混合物60を押し出したり、原料モノマー混合物60を直接押し出したりして行うことができる。
原料モノマー混合物60を重合缶30内に移動させた後には、この原料モノマー混合物60を加熱、攪拌等することによって溶融重合させる(第2反応)ことにより、液晶ポリエステルを得る(合成工程)。この際、加熱は、重合缶30における所定の加熱手段(本実施形態では、熱媒Tによる重合缶30の外壁の加熱)を用いて行うことができ、攪拌は、攪拌機32を回転させることによって行うことができる。
重合缶30内での溶融重合は、少なくとも原料モノマー混合物60及びこれにより得られる液晶ポリエステル70が、溶融状態を維持できる温度で行うことが好ましい。例えば、次のような条件で実施することが好適である。すなわち、溶融重合は、130〜330℃の温度範囲で0.1〜50℃/分の割合で昇温させながら行うことが好ましく、150〜320℃の温度範囲で0.3〜5℃/分の割合で昇温させながら行うことが好ましい。なお、第1反応において原料モノマー混合物60が十分に加熱されていなかった場合は、上記下限値よりも低い温度から反応を開始してもよい。反応温度が330℃を超えると、液晶ポリエステル70の高溶融粘度化や高融点化が促進され、重合缶30からの液晶ポリエステル70の取出しが困難となるおそれがある。
なお、かかる第2反応では、エステル形成性誘導体(アシル化された芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジオール)のアシル基と、アシル化された芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸のカルボキシル基とが反応し、エステル結合が形成されるとともに脂肪酸が副生する。第2反応では、このように副生する脂肪酸は、効率的な第2反応の進行を妨げる要因となり得るため、蒸発させるなどして反応系外に除去することが好ましい。この場合、除去した脂肪酸の一部を還流させて重合缶30に戻すことで、脂肪酸とともに蒸発又は昇華した原料モノマーを凝縮、逆昇華等により原料モノマー混合物60に戻して再び反応に供することができる。例えば、脂肪酸の除去とともに析出し易いカルボン酸(芳香族ヒドロキシカルボン酸や芳香族ジカルボン酸)を、反応に戻すことが可能となる。
このような第2反応における溶融重合は、液晶ポリマー70が、好ましくは250℃以上300℃以下、より好ましくは255℃以上290℃以下、さらに好ましくは260℃以上280℃以下となるまで行うことが好適である。流動開始温度がこのような範囲であると、液晶ポリエステルの重合缶30からの取出しが容易となる傾向にある。液晶ポリエステル70の流動開始温度が250℃を下回ると、たとえ吐出後の液晶ポリエステル70に対して後述するような固相重合を行い、高分子量化させたとしても、十分な耐熱性を有する液晶ポリエステルが得られ難くなる傾向にある。
ここで、流動開始温度とは、内径1mm、長さ10mmのダイスを取り付けた毛細管型レオメーターを用い、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重をかけた状態で、昇温速度4℃/分で液晶ポリエステルをノズルから押出すときに、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示す温度を意味する。流動開始温度は、例えば、株式会社島津製作所社製の流動特性評価装置「フローテスターCFT−500D」を用いて測定することができる。この流動開始温度は、液晶ポリエステルの分子量の指標となる値である(小出直之編、「液晶性ポリマー合成・成形・応用」、95〜105頁、シーエムシー、1987年6月5日発行を参照)。
上記のような流動開始温度を有する液晶ポリエステル70を得るためには、例えば、溶融重合反応中、温度を300〜320℃に保った状態で、反応中の混合物の一部を取り出し、その流動開始温度を測定することが好ましい。この測定により所望の流動開始温度が得られた時点で反応を停止してもよく、また、複数回の測定結果から所望の流動開始温度が得られるまでの反応時間を予測し、これに基づいて反応を停止してもよい。
なお、第1反応や第2反応(溶融重合反応)は、触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、ポリエステル製造に用いる公知の重合用触媒を適用することができる。例えば、酢酸マグネシウム、酢酸第1錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン等の金属塩触媒、N,N−ジメチルアミノピリジン、1−メチルイミダゾール等の有機化合物触媒等が挙げられる。
触媒を用いる場合、触媒は、第1反応時にのみ添加してもよく、第2反応時にのみ添加してもよく、第1反応時に添加し、そのまま除去せずに第2反応を行ってもよい。触媒としては、上述したなかでも、N,N−ジメチルアミノピリジン、1−メチルイミダゾール等の窒素原子を2個以上含む複素環状有機塩基化合物が好ましい。これらを用いると、液晶ポリエステルの製造がより効率よく進行する傾向にある。このような触媒を用いた液晶ポリエステルの製造は、例えば、特開2002−146003号に記載の方法に準じて好適に行うことができる。
上述した第2反応(溶融重合)後には、コック44を開き、反応により得られた重合缶30内の液晶ポリエステル70を吐出管40を通して吐出口40aから吐出させ、これにより重合缶30の外部に取り出す(吐出工程)。この吐出工程では、吐出管40に設けられた加熱装置42により、吐出管40内の液晶ポリエステルを加熱する。この加熱は、液晶ポリエステル70が溶融状態を維持できるような温度で行うことが好ましく、具体的には、液晶ポリエステル70の流動開始温度(Tf(℃))を基準にして、Tf(℃)以上Tf+100(℃)以下の範囲とすることが好ましく、Tf(℃)以上Tf+70(℃)以下の範囲とすることがより好ましい。
また、吐出工程では、重合缶30内の液晶ポリエステルも加熱することが好ましい。かかる加熱も、液晶ポリエステルの溶融状態が維持される温度であると好適である。液晶ポリエステル70は、生成後、重合缶30内であっても吐出させるまでの間に流動性の低下を生じる可能性があるため、このような重合缶30の加熱を行うことによって、重合缶30から吐出管40への流動も良好に生じさせることができる。
重合缶30内の液晶ポリエステル70を加熱する場合、その温度は、液晶ポリエステル70の流動開始温度(Tf(℃))以上とすることが好ましい。吐出工程での液晶ポリエステル70のTfは、上述の如く、好適な場合は250℃以上300℃以下である。重合缶30内の液晶ポリエステル70の温度をT1(℃)とすると、T1(℃)をTf(℃)以上に維持することが好ましい。
重合缶30に残存する液晶ポリエステル70の量を少なくする観点からは、T1(℃)をTf(℃)以上Tf+100(℃)以下とすることが好ましく、Tf(℃)以上Tf+70(℃)以下とすることがより好ましい。本実施形態の液晶ポリエステルの製造においては、多くの場合、T1を280℃以上とすることが好ましく、280℃以上400℃以下とすることがより好ましく、290℃以上360℃以下とすることが更に好ましく、305℃以上350℃以下とすることが好ましい傾向にある。
特に、本発明者らの検討によると、本実施形態のような、Ar1、Ar2及びAr3の合計100モル%のうちの2,6−ナフタレンジイル基の割合が40モル%以上である液晶ポリエステル70の場合、ある一定温度以上でその溶融粘度が著しく低下する傾向にあることが判明した。そこで、T1を、その液晶ポリエステルにおける「溶融粘度が著しく低下する温度」以上とすることで、液晶ポリエステル70の吐出管40からの吐出が一層容易となる傾向にある。例えば、この「溶融粘度が著しく低下する温度」が305℃である場合、T1を305℃以上とすることが好ましい。
なお、本実施形態における液晶ポリエステルは、400℃を超えると熱劣化し易い傾向にあるため、上述の如く、T1は400℃以下とすることが好ましい。液晶ポリエステル70が熱劣化してしまうと、その劣化物が残存し、次回の溶融重合時に混入して反応を阻害する場合がある。またこのような異物が多くなると、吐出管40等を閉塞したり、所望の特性の液晶ポリエステルが得られなくなったりするおそれがある。
また、吐出管40内の液晶ポリエステル70の加熱は、液晶ポリエステル70が溶融状態を維持できるような温度となるように行うことが好ましい。そのために、吐出工程では、重合缶30内の液晶ポリエステルの温度(T1(℃))と、吐出管40内の液晶ポリエステルの温度(T2(℃))とが、次のような関係を満たすようにする。すなわち、T1(℃)−T2(℃)は、15(℃)以下であり、10℃以下であると好ましく、5℃以下であるとより好ましい。このような温度範囲とすると、重合缶30内と吐出管40内での液晶ポリエステルの粘度の差が小さくなり、吐出管40による吐出を更に行い易くなる。
例えば、上記のように重合缶30内の液晶ポリエステル70の温度が305℃以上となるように加熱する場合は、吐出管40内の液晶ポリエステル70の温度は、290℃以上とし、295℃以上とすることが好ましく、300℃以上とすることがより好ましい。
吐出工程においては、ガス導入装置36によりガス導入部38から重合缶30内にガスを導入することで、重合缶30内の圧力を高め、これにより液晶ポリエステル70を押し出すようにしてもよい。このガスとしては、空気や不活性ガスを適用できるが、液晶ポリエステルの劣化を抑制する観点からは、窒素やアルゴン等の不活性ガスを適用することが好ましい。なかでも、経済性の観点から、窒素ガスが好適である。なお、液晶ポリエステル70が、それ自体の重量により自然に押し出される場合は、このようなガスによる加圧は必ずしも行わなくてもよい。
吐出管40から液晶ポリエステル70を吐出する際には、吐出管40中を流動する液晶ポリエステル70の線速度が、0.1〜3m/秒となる条件を満たすようにすることが好ましく、0.2〜2.0m/秒となる条件を満たすようにすることがより好ましい。このような吐出の速度は、例えば、上記のようなガスによる圧力を調節することで得ることができる。
上記の線速度の条件を満たすようにして液晶ポリエステル70を吐出させることで、吐出管40内で液晶ポリエステル70が偏流することを抑制しつつ、効率よく液晶ポリエステル70を取り出すことができる。そして、このような条件で液晶ポリエステル70を吐出させると、上述した温度条件、特にT1(℃)−T2(℃)を15(℃)以下とした条件において、吐出管40内での液晶ポリエステル70の閉塞が極めて生じ難くなる傾向にある。
上述した吐出工程により、重合缶30内の液晶ポリエステル70を良好に吐出させ、効率よく回収できるようになる。ただし、重合缶30内にはなお、壁面等に付着した液晶ポリエステル70が残存する場合もある。そこで、このような残存ポリエステル70を更に吐出させて回収効率を高める観点からは、吐出工程後、重合缶30内を再び加圧することで、重合缶30内に残存した液晶ポリエステル70を更に吐出させる再吐出工程を実施してもよい。なお、再吐出工程を行う場合、最初の吐出において、液晶ポリエステルが一度吐出されなくなるまでが吐出工程に該当し、その後に生じる液晶ポリエステルの吐出が、再吐出工程となる。例えば、吐出工程で加圧を行う場合は、吐出工程での吐出が見られなくなってからいったん加圧をやめるまでが吐出工程となり、その後、再度の加圧を行って吐出させる工程が再吐出工程となる。
このような再吐出工程においては、重合缶30内を吐出工程と同じかそれよりも高い圧力となるように加圧することが好ましい。これにより、残存している液晶ポリエステル70を重合缶30から吐出させ易くなる。具体的には、再吐出工程においては、重合缶30内の圧力を、0.02MPaG以上に加圧することが好ましい。
かかる再吐出工程により、重合缶30内に残存する液晶ポリエステル70を極めて少なくすることができ、例えば、次回の液晶ポリエステルの製造時に、残存液晶ポリエステルに由来する異物が殆どなくなるため、所望の特性を備えた液晶ポリエステルを安定して得ることが可能となる。
再吐出工程により重合缶30内の液晶ポリエステルを殆ど吐出できているため、一回の製造ごとに重合缶30内を洗浄する必要がなくなり、液晶ポリエステルの生産性も向上する傾向にある。ただし、このような再吐出工程を行った場合であっても、例えば、異物が詰まりやすい吐出管40だけを洗浄してもよい。この場合、吐出管40を重合缶30から取り外し、吐出管40内に付着している液晶ポリエステル等を洗浄して除去する。この場合、吐出管40の洗浄は、重合缶30内で次回の反応を行っている間に行うことができ、反応終了に併せて、洗浄・乾燥した吐出管40を重合缶30に再び取り付ければよい。こうすれば、液晶ポリエステルの生産性を向上させつつ、液晶ポリエステルの品質を安定化することも可能となる。
このようにして重合缶30から吐出管40により取り出した液晶ポリエステル70には、重合度を高める目的で更に重合反応を生じさせてもよい。例えば、液晶ポリエステル70を固体化した後、固相重合を生じさせる方法が挙げられる。このような固相重合を併用することで、重合缶30内では吐出が可能な程度の粘度を有する分子量の液晶ポリエステル70を合成し、取り出した後に更なる高分子量化が可能となるため、所望とする液晶ポリエステルが高分子量のものであっても、重合缶30からの取り出しを容易に行うことができる。
このような固相重合は、液晶ポリエステル70を粉末とした後、この粉末状の液晶ポリエステル70を加熱することによって生じさせることができる。液晶ポリエステル70を粉末とするには、吐出後の液晶ポリエステル70を冷却固化した後、これを公知の粉砕手段によって粉砕すればよい。固相重合を行う際の液晶ポリエステル70粉末の平均粒子径は、0.05〜3mmであると好ましい。特に、この平均粒子径が0.05〜1.5mmであると、液晶ポリエステルの高分子量化が促進され、特に0.05〜1mmの範囲であると、粒子間のシンタリングを生じることが無くなり、更なる高分子量化が促進される傾向にある。
固相重合は、次のような条件で行うことが好ましい。すなわち、まず、第1段階目の昇温として、室温から液晶ポリエステル70の流動開始温度よりも20℃以上低い温度まで昇温する。この際の昇温速度は、反応時間を短縮させる観点からは、1時間以内とすることが好ましい。
次に、第2段階目の昇温として、第1段階目の昇温が完了した温度から280℃以上の温度となるまで更に昇温する。この際、昇温は、0.3℃/分以下の昇温速度で行うことが好ましく、0.1〜0.15℃/分の昇温速度で行うことがより好ましい。この段階での昇温速度が0.3℃/分以下であると、粉末の粒子間のシンタリングが生じ難くなり、より高重合度の液晶ポリエステルが得られ易くなる。
第2段階目の昇温が完了した後には、液晶ポリエステルの重合度を更に大きくするため、280℃以上の温度で、好ましくは280〜400℃の温度範囲で30分以上加熱して固相重合させることがより好ましい。特に、液晶ポリエステルの熱安定性を高める観点からは、280〜350℃で30分〜30時間固相重合させることが更に好ましく、285〜340℃で30分〜20時間固相重合させることが一層好ましい。なお、このような加熱を行う場合の条件は、液晶ポリエステルの製造に用いた原料モノマーの種類等に応じて適宜設定することができる。
以上のような製造方法によって、2,6−ナフタレンジイル基を好適な割合で含み、優れた耐熱性、機械強度や電気特性等の特性を有する液晶ポリエステルを、バッチ式製造法においても効率よく製造することが可能となる。
なお、本発明の液晶ポリエステルの製造方法は、必ずしも上述した実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
例えば、上記実施形態では、液晶ポリエステルの合成における第1反応及び第2反応を、反応缶10及び重合缶30という2つの反応容器を用いて行ったが、これに限定されず、例えば、上述したような重合缶30内で2段階の反応を続けて生じさせてもよい。この場合、重合缶30が、本発明における重合容器に該当する。
また、反応缶10と重合缶30とで別々に反応を生じさせる場合であっても、必ずしもこれらが連結管20によって接続されている必要はなく、反応缶10内で生じた原料モノマー混合物60は、連結管20以外の手段(例えば、移動用の容器に移す等)によって重合缶30に移動させてもよい。ただし、製造効率の観点からは、反応缶10と重合缶30とは連結管20によって接続されていることが好ましい。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[溶融開始温度の測定]
以下の各実施例及び比較例では、液晶ポリエステルの溶融開始温度を次の測定方法により測定した。すなわち、まず、フローテスター(島津製作所社製、CFT−500型)を用い、内径1mm、長さ10mmのダイスを取り付けた毛細管型レオメーターに、液晶ポリエステルの試料約2gを充填した。次いで、9.8MPa(100kg/cm2)の荷重下、昇温速度4℃/分の条件で液晶ポリエステルをノズルから押出し、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポイズ)を示したときの温度を流動開始温度(℃)とした。
[溶融粘度の測定]
また、液晶ポリエステルの溶融粘度は、Bohlin Instrument社製コントロールストレスレオメータCVOにより、295℃、300℃、305℃及び310℃から選ばれる所定の温度条件で、下記の測定条件にしたがって測定を行うことにより求めた。
雰囲気 :窒素200ml/min
溶融粘度 :試料が測定温度に到達してから30秒後の温度
ジオメトリー :コンプレート5.4°/25φ
測定周波数 :1Hz
Pre−Shear :OFF
Target Strain :0.01
Mode :Auto
[液晶ポリエステルの作製並びにその流動開始温度及び溶融粘度の測定]
(参考例1)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸1034.99g(5.5モル)、ヒドロキノン272.52g(2.475モル、0.225モル過剰仕込み)、2,6−ナフタレンジカルボン酸378.33g(1.75モル)、テレフタル酸83.07g(0.5モル)、無水酢酸1226.87g(12.0モル)及び触媒である1−メチルイミダゾール0.17gを加え、室温で15分間攪拌した後、更に攪拌しながら昇温した。反応器内の温度が145℃となった時点で昇温を止め、同温度を保持したまま1時間攪拌させた。
次いで、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、反応器内の内容物を3時間30分で145℃から310℃まで昇温した。そして、同温度で3時間保持して、液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルを室温まで冷却し、これを粉砕機で粉砕して、粒子径が0.1〜1mmである液晶ポリエステルの粉末を得た。
得られた液晶ポリエステルの流動開始温度を測定した。また、各温度(300℃、305℃及び310℃)での溶融粘度を測定した。得られた結果を表1に示す。
(参考例2)
液晶ポリエステルの製造において、310℃での保持時間を3時間45分としたこと以外は、参考例1と同様にして液晶ポリエステルの粉末を得た。そして、得られた液晶ポリエステルの流動開始温度及び溶融粘度を参考例1と同様に測定した。得られた結果を表1に示す。
(参考例3)
液晶ポリエステルの製造において、310℃での保持時間を4時間としたこと以外は、参考例1と同様にして液晶ポリエステルの粉末を得た。そして、得られた液晶ポリエステルの流動開始温度及び溶融粘度を参考例1と同様に測定した。得られた結果を表1に示す。
(参考例4)
液晶ポリエステルの製造において、310℃での保持時間を4時間30分としたこと以外は、参考例1と同様にして液晶ポリエステルの粉末を得た。そして、得られた液晶ポリエステルの流動開始温度及び溶融粘度を参考例1と同様に測定した。得られた結果を表1に示す。
(参考例5)
液晶ポリエステルの製造において、310℃での保持時間を5時間としたこと以外は、参考例1と同様にして液晶ポリエステルの粉末を得た。そして、得られた液晶ポリエステルの流動開始温度及び溶融粘度を参考例1と同様に測定した。得られた結果を表1に示す。
(参考例6)
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計及び還流冷却器を備えた反応器に、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸987.95g(5.25モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル486.47g(2.612モル、0.237モル過剰仕込み)、2,6−ナフタレンジカルボン酸513.45g(2.375モル)、無水酢酸1174.04g(11.5モル)及び触媒である1−メチルイミダゾール0.194gを加え、室温で15分間攪拌した後、更に攪拌しながら昇温した。反応器内の温度が145℃となった時点で昇温を止め、同温度を保持したまま1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール5.83gをさらに添加した。
次いで、留出する副生酢酸及び未反応の無水酢酸を留去しながら、反応器内の内容物を145℃から310℃まで3時間30分かけて昇温した。そして、同温度で2時間保温して、液晶ポリエステルを得た。この液晶ポリエステルを室温まで冷却し、粉砕機で粉砕して、粒子径が約0.1〜1mmである液晶ポリエステルの粉末を得た。
得られた液晶ポリエステルの流動開始温度及び溶融粘度を参考例1と同様に測定した。得られた結果を表1に示す。
表1に示すように、溶融重合の条件を変化させることで、液晶ポリエステルの流動開始温度が変わることが確認された。そして、参考例1〜6の液晶ポリエステルは、それぞれ所定の温度以上で溶融粘度が著しく低下することが判明した。
[液晶ポリエステルの作製並びにその吐出性の評価]
(実施例1)
図1に示すのと同様の製造装置を用いて、上述した参考例1〜5に相当する構造を有する液晶ポリエステルを製造した。すなわち、まず、攪拌機12、窒素ガス導入装置(図示せず)、温度計(図示せず)及び還流冷却器(図示せず)を備えた200Lの反応缶10に、窒素雰囲気下で、無水酢酸33.1kg(0.322kmol)を仕込んだ後、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸27.9kg(0.148kmol)、ヒドロキノン7.4kg(0.067kmol)、テレフタル酸2.2kg(0.013kmol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸10.2kg(0.047kmol)、アセチル化触媒である1−メチルイミダゾール4.8gを加えた。これらを、窒素ガス気流下で140℃まで昇温し、温度を保持して1時間還流させた。
次に、攪拌機32及び加熱装置42を有する吐出管40(配管径44.6mm)が取り付けられ、加熱用のジャケットを有する100Lの重合缶30に、反応缶10内の原料モノマー混合物を、反応缶10内を窒素で0.1MPaに加圧することにより連結管20を通して移動させた。その後、原料モノマー混合物を4時間かけて305℃まで昇温し、同温度で140分間反応(溶融重合)させた。この際、反応中に生じた酢酸及び未反応の無水酢酸は、反応系外に留去した。
反応後、吐出管40の温度(T2)が305℃であることを確認してから、ガス導入装置36により窒素ガスを重合缶30内に導入し、これにより重合缶30内を0.05MPaまで加圧することにより、反応により得られた溶融状態の液晶ポリエステルを、吐出管40から吐出した。この際、重合缶30の温度(T1)は305℃に維持した。また、吐出速度(平均線速度)は、0.5m/秒の条件とした。
上記の条件で液晶ポリエステルが吐出されなくなったら、さらに重合缶30内を窒素により0.05MPaまで再度加圧(再加圧)し、重合缶30内に残存した液晶ポリエステルを更に吐出させた。その後、重合缶30内を大気圧に戻した。
そして、得られた液晶ポリエステルの流動開始温度を測定した。また、吐出管40を重合缶30から取り外し、吐出口40aが閉塞しているかどうかを確認した。さらに、吐出後、吐出管40内に付着していた液晶ポリマーの重量を、使用後の吐出管40の重量から、使用前の吐出管40の重量を引くことにより算出した。また、重合缶30から吐出管40を経て外部に取り出すことができた液晶ポリエステルの重量を測定した。この重量には、吐出管40内に付着していた液晶ポリエステルの重量は含まれていない。
その後、吐出管40内に固化付着した液晶ポリエステルを取り除き、また、ジャケットに水を流すことで重合缶30内の温度を150℃まで冷却し、上記と同様の原料を反応缶10に加えた後、溶融重合の反応時間を変えたこと以外は、上記と同様にして2バッチ目の液晶ポリエステルの製造を行った。同様にして、それぞれ溶融重合の反応時間、吐出時の圧力及び平均線速度が異なる3バッチ目、4バッチ目及び5バッチ目の液晶ポリエステルの製造を行った。
そして、それぞれのバッチ後に、上記と同様にして、液晶ポリエステルの流動開始温度、吐出管40の閉塞の有無、吐出管40内に付着していた液晶ポリマーの重量、及び、取り出すことができた液晶ポリエステルの重量を測定した。これらの結果及び各バッチでの製造条件を、まとめて表2に示す。
(比較例1)
実施例1と同様にして溶融重合まで行った後、吐出管40が280℃に加熱されていることを確認してから、ガス導入装置36により窒素ガスを重合缶30内に導入し、これにより重合缶30内を0.05MPaまで加圧して、反応により得られた溶融状態の液晶ポリエステルを、吐出速度(平均線速度)は、0.5m/秒で吐出管40から吐出しようとしたが、吐出中に液晶ポリエステルが吐出管40内で固化してしまい、液晶ポリエステルを吐出することはできなかった。
そこで、加圧条件を変え(最大0.20MPaまで加圧)、液晶ポリエステルの吐出を試みたが、吐出はできなかった。液晶ポリエステルを重合缶30から直接取り出し、流動開始温度を測定したところ、266℃であった。
吐出管40を重合缶30から取り外したところ、吐出口40aが完全に閉塞していた。そのため、実施例1とは異なり2バッチ目以降を行うことは困難であった。1バッチ目後の吐出管40内に付着していた液晶ポリマーの重量、及び、取り出すことができた液晶ポリエステルの重量を、実施例1と同様にして測定した。得られた結果及び製造条件を表2に示す。
表2に示すように、吐出管40を加熱しながら液晶ポリエステルを取り出した実施例1では、吐出管40の閉塞は起きず、高効率で重合缶30から液晶ポリエステルを取り出すことができた。そのため、2〜5バッチ目も良好に行うことができ、いずれの場合も、効率よく液晶ポリエステルの取り出しを行うことが可能であることが判明した。一方、比較例1では、1バッチ目で吐出管40の閉塞が生じてしまい、液晶ポリエステルを効率よく取り出すことができず、2バッチ目以降を行うことが困難であった。
(実施例2)
図1に示すのと同様の製造装置を用いて、上述した参考例6に相当する構造を有する液晶ポリエステルを製造した。すなわち、まず、攪拌機12、窒素ガス導入装置(図示せず)、温度計(図示せず)及び還流冷却器(図示せず)を備えた200Lの反応缶10に、窒素雰囲気下で、無水酢酸31.4kg(0.308kmol)を仕込んだ後、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸25.2kg(0.135kmol)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル12.4kg(0.067kmol)、2,6−ナフタレンジカルボン酸13.09kg(0.061kmol)、アセチル化触媒である1−メチルイミダゾール5.6gを加えた。これらを、窒素ガス気流下で140℃まで昇温し、温度を保持して1時間攪拌し、触媒である1−メチルイミダゾール168gをさらに添加した。
次に、攪拌機32及び加熱装置42を有する吐出管40(配管径44.6mm)が取り付けられ、加熱用のジャケットを有する100Lの重合缶30に、反応缶10内の原料モノマー混合物を、反応缶10内を窒素で0.1MPaに加圧することにより連結管20を通して移動させた。その後、原料モノマー混合物を4時間40分かけて310℃まで昇温し、同温度で140分間反応(溶融重合)させた。この際、反応中に生じた酢酸及び未反応の無水酢酸は、反応系外に留去した。
反応後、吐出管40の温度(T2)が310℃であることを確認してから、ガス導入装置36により窒素ガスを重合缶30内に導入し、これにより重合缶30内を0.05MPaまで加圧することにより、反応により得られた溶融状態の液晶ポリエステルを、吐出管40から吐出した。この際、重合缶30の温度(T1)は310℃に維持した。また、吐出速度(平均線速度)は、0.5m/秒の条件とした。
上記の条件で液晶ポリエステルが吐出されなくなったら、さらに重合缶30内を窒素により0.05MPaまで再度加圧(再加圧)し、重合缶30内に残存した液晶ポリエステルを更に吐出させた。その後、重合缶30内を大気圧に戻した。
そして、得られた液晶ポリエステルの流動開始温度を測定した。また、吐出管40を重合缶30から取り外し、吐出口40aが閉塞しているかどうかを確認した。さらに、吐出後、吐出管40内に付着していた液晶ポリマーの重量を、使用後の吐出管40の重量から、使用前の吐出管40の重量を引くことにより算出した。また、重合缶30から吐出管40を経て外部に取り出すことができた液晶ポリエステルの重量を測定した。この重量には、吐出管40内に付着していた液晶ポリエステルの重量は含まれていない。
その後、吐出管40内に固化付着した液晶ポリエステルを取り除き、また、ジャケットに水を流すことで重合缶30内の温度を150℃まで冷却し、上記と同様の原料を反応缶10に加えた後、溶融重合の反応時間及び吐出管40の温度(T2)を変えたこと以外は、上記と同様にして2バッチ目の液晶ポリエステルの製造を行った。
そして、それぞれのバッチ後に、上記と同様にして、液晶ポリエステルの流動開始温度、吐出管40の閉塞の有無、吐出管40内に付着していた液晶ポリマーの重量、及び、取り出すことができた液晶ポリエステルの重量を測定した。これらの結果及び各バッチでの製造条件を、まとめて表3に示す。
表3に示すように、実施例2においても、吐出管40の閉塞は起きず、高効率で重合缶30から液晶ポリエステルを取り出すことができた。そのため、2バッチ目も良好に行うことができ、効率よく液晶ポリエステルの取り出しを行うことが可能であることが判明した。