JP5273569B2 - レンジ検出装置 - Google Patents

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Description

本発明は、自動変速機のレンジ検出装置に関する。
従来、自動変速機のシフトレンジを検出するレンジ検出装置として、レンジの選択に応じて往復移動する可動部の移動位置に基づいてレンジを検出するものが知られている。例えば特許文献1に記載のレンジ検出装置は、可動部の摺動を案内する案内部の摺動面に付着した異物を排出するための孔部を設け、可動部と摺動面との間に異物が噛み込んで可動部の作動不良を起こすことを防止している。
また、従来、レンジの検出は、可動部の移動位置によって複数のスイッチから出力されるオンオフ信号の組合せパターンを判断して行われる。例えば特許文献2に記載のレンジポジションスイッチは、複数のスイッチに接続される信号線のいずれか1本が断線した場合でも各レンジに対応するオンオフ信号の組合せパターンが互いに一致しないように設定することで、レンジ誤判別による車の挙動への悪影響を防止している。
特開2006−118643号公報 特開2000−179660号公報
特許文献1のレンジ検出装置においては、異物が完全に除去されない場合など、可動部の作動不良が生じる場合があり得る。この場合、運転者が無理矢理シフトレバーを操作しようとすると、シフトレバーの操作力を伝達するレバーケーブルが伸びたり、可動部に突出して設けられ操作力が入力される連結ピン(特許文献1の「入力軸」に相当)が破損したりするおそれがある。その結果、可動部の位置が不安定になりレンジ検出の位置ずれが生じるおそれがある。最悪の場合、連結ピンが折損して可動部と分離すると、レンジ検出が全くできない状態となる。
このように連結ピンが折損して可動部と分離した場合、車両の加速減速時もしくは旋回時の慣性力または重力等によって可動部が正常可動範囲を超えて移動する可能性がある。特許文献2のレンジポジションスイッチは、このような「過移動異常」時のオンオフ信号の組合せパターンの設定については一切考慮しておらず、過移動異常の発生を判断することができない。仮に、過移動異常の場合に正常可動範囲のいずれかのレンジと同一のオンオフ信号の組合せパターンが検出されるとすると、運転者の意図に反した車両の制御がされるおそれがある。その結果、車両の運転が不可能となるなど、重大な影響を及ぼすおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、可動部が正常可動範囲を超えて移動する過移動異常を判断するレンジ検出装置を提供することにある。
請求項1に記載のレンジ検出装置は、固定部、可動部、連結部材、位置信号出力手段、信号検出手段およびレンジ判断手段を備える。
固定部は、自動変速機に固定される。可動部は、固定部に沿って所定の正常可動範囲を前進および後退可能である。連結部材は、自動変速機のレンジの選択に応じた操作力を伝達する伝達手段と可動部とを連結する。
位置信号出力手段は、可動部の移動位置に応じてオンオフ信号を出力する複数のスイッチから構成され、複数のオンオフ信号を組み合わせたオンオフパターンを出力する。
信号検出手段は、位置信号出力手段が出力したオンオフパターンを検出する。
レンジ判断手段は、信号検出手段が検出したオンオフパターンの検出信号に基づいてレンジを判断する。
可動部が正常可動範囲を超えて正常可動範囲の前進側の前進禁止域または正常可動範囲の後退側の後退禁止域に進入したとき、位置信号出力手段は、可動部が正常可動範囲にあるときに出力するいずれのオンオフパターンとも異なるオンオフパターンを出力する。また、レンジ判断手段は、可動部の位置が異常であると判断する。
これにより、レンジ判断手段は、可動部が正常可動範囲を超えて前進禁止域または後退禁止域に進入する過移動異常を判断することができる。
請求項2に記載の発明によると、可動部が前進禁止域にあるときに位置信号出力手段が出力するオンオフパターンは1とおりであり、かつ、可動部が後退禁止域にあるときに位置信号出力手段が出力するオンオフパターンは1とおりである。
可動部が前進禁止域のどこにあっても一律のオンオフパターンが出力され、また、可動部が後退禁止域のどこにあっても一律のオンオフパターンが出力される。すなわち、前進禁止域および後退禁止域の範囲内にオンオフパターンが変化する境界域が存在しないため、境界域でのわずかな誤検出を回避できる。よって、信号検出手段によるオンオフパターンの検出が単純で正確になる。
請求項3に記載の発明において、前記複数のスイッチに接続される信号線のいずれか1つが断線し、断線した信号線に対応するスイッチからの出力が可動部の移動位置にかかわらずオフ信号となる場合を「一重断線故障」という。また、前記複数のスイッチに接続される信号線のいずれか1つが短絡し、短絡した信号線に対応するスイッチからの出力が可動部の移動位置にかかわらずオン信号となる場合を「一重短絡故障」という。
請求項3に記載の発明によると、可動部の過移動異常時におけるオンオフパターンは、可動部が正常可動範囲にあって信号線の一重断線故障または一重短絡故障が生じたときのいずれのオンオフパターンとも異なる。
レンジ検出装置の故障モード影響解析(FMEA)によれば、いずれか1つの信号線の断線または短絡故障が起こる確率は、可動部の過移動異常が発生する確率よりも高いと考えられる。また、2つ以上の信号線の断線または短絡故障が同時に起こる確率は極めて低いと考えられる。一方、信号線の断線短絡故障の影響度は比較的軽微であるのに対し、可動部の過移動異常の影響度は重大である。
本請求項に係る発明では、可動部が正常可動範囲にあるときに出力されるオンオフパターンの「いずれか1つのオン信号をオフ信号に置き換えた場合」および「いずれか1つのオフ信号をオン信号に置き換えた場合」においても過移動異常時のオンオフパターンと異なるようにする。これにより、一重断線故障または一重短絡故障による信号検出手段の誤検出の可能性を排除し、さらに、レンジ判断手段による過移動異常の判断精度を高めることができる。
請求項4に記載のレンジ検出装置は、断線短絡信号出力回路を備える。断線短絡信号出力回路は、複数のスイッチに接続される信号線のいずれか1つ以上が断線または短絡する断線短絡故障を示す出力信号を出力する。
そして、信号検出手段が、断線短絡信号出力回路の出力信号に基づいて断線短絡故障を検出せず、かつ、可動部が前進禁止域または後退禁止域にあるときに位置信号出力手段が出力するオンオフパターンを検出したときに限り、レンジ判断手段は、可動部の位置が異常であると判断する。
本請求項に係る発明では、断線短絡信号出力回路の出力信号に基づいて信号検出手段が信号線の断線短絡故障を独立して検出することで、レンジ判断手段は、断線短絡故障の場合を排除した上で、より重大な可動部の過移動異常を判断することができる。
また、2つ以上の信号線が同時に断線または短絡する多重断線故障および多重短絡故障を検出することができる。さらに、請求項3に係る発明に比べ、位置信号出力手段が出力するオンオフパターンが単純になるため、複数のスイッチの数を削減可能な場合がある。
請求項5に記載のレンジ検出装置は、前進限規制手段または後退限規制手段の少なくとも一方を備える。前進限規制手段は、可動部の前進禁止域での前進を限界前進位置で規制する。後退限規制手段は、可動部の後退禁止域での後退を限界後退位置で規制する。
これにより、前進禁止域または後退禁止域での可動部の可動範囲を有限とし、可動部の過移動異常を有限の範囲内で確実に判断することができる。
請求項6に記載のレンジ検出装置は、さらに前進付勢手段または後退付勢手段のいずれか一方を備える。可動部と伝達手段との連結が解除されたとき、前進付勢手段は可動部を限界前進位置まで前進させ、後退付勢手段は可動部を限界後退位置まで後退させるように付勢する。
例えば連結部材の破損によって可動部と伝達手段との連結が解除されると、可動部は、車両の加速減速時もしくは旋回時の慣性力などによって自由に動き、位置が定まらない。
したがって、例えばスプリングなどの前進付勢手段または後退付勢手段を設けることで、可動部を限界前進位置または限界後退位置に保持することができ、可動部の過移動異常を確実に判断することができる。
請求項7に記載のレンジ検出装置は、可動部の移動方向が鉛直方向または傾斜する方向になるように設置される。そして、前進付勢手段または前記後退付勢手段は重力である。
これにより、伝達手段との連結が解除された可動部は、重力によって限界前進位置または限界後退移動位置まで移動することができる。したがって、スプリング等の付勢手段を設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。また、付勢手段が破損する可能性を無くすことができる。
請求項8に記載のレンジ検出装置は、始動決定手段を備える。始動決定手段は、自動変速機の入力軸に入力される駆動力を発生する原動機の始動または不始動を決定する。レンジ判断手段が可動部の位置が異常であると判断したとき、始動決定手段は、原動機の不始動を決定する。
原動機は、例えば車両のエンジンである。可動部の過移動異常が判断されたとき、始動決定手段は、エンジンの不始動を決定する。すなわち、エンジンの始動を禁止するため、車両は、原則として停止する。
例えば連結部材が折損した状態で運転を継続しようとすると、運転者の意図に反して車両が制御されるおそれがある。そこで、フェールセーフの原則にしたがって強制的に車両を停止させることで、運転者の危険を回避することができる。
請求項9に記載のレンジ検出装置は、変速制御手段を備える。変速制御手段は、複数の摩擦要素の係合または開放によって、自動変速機の入力軸に入力される駆動力を自動変速機の出力軸に伝達し、または伝達しないように制御する。レンジ判断手段が可動部の位置が異常であると判断したとき、変速制御手段は、駆動力を出力軸に伝達しないように制御する。
変速制御手段は、例えば、自動変速用の油圧制御弁をすべて低圧にするように設定し、自動変速機の入力軸と出力軸とを連結しないニュートラル状態とするため、車両は、原則として停止する。よって、請求項8に記載の発明と同様、フェールセーフの原則にしたがって強制的に車両を停止させることで、運転者の危険を回避することができる。
本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置の(a)断面図、(b)正面図、(c)(a)のIc−Ic断面図である。 本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置が適用される自動変速機の断面図である。 本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置が適用される自動変速機の要部分解斜視図である。 本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置の正常可動範囲での作動を説明するための説明図である。 本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置の前進禁止域および後退禁止域での作動を説明するための説明図である。 本発明の第1実施形態による複数のスイッチ(固定要素)を示す部分断面図である。 本発明の第1実施形態による複数のスイッチ(可動要素)を示す断面模式図である。 本発明の第1実施形態による複数のスイッチ、TCU等のブロック図である。 図8の断線短絡信号出力回路の作用を説明する説明図である。 本発明の第1実施形態による信号検出手段が検出するオンオフパターン表である。 本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置において過移動異常を判断するフローを示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態による複数のスイッチ(固定要素)を示す部分断面図である。 本発明の第2実施形態による複数のスイッチ(可動要素)を示す断面模式図である。 本発明の第2実施形態による複数のスイッチ、TCU等のブロック図である。 本発明の第2実施形態による信号検出手段が検出する一重断線故障時のオンオフパターン表である。 本発明の第2実施形態による信号検出手段が検出する一重短絡故障時のオンオフパターン表である。 本発明の第3実施形態による複数のスイッチ(可動要素)を示す(a)背面図、(b)(a)のXVIIb−XVIIb断面図である。 本発明の第3実施形態による複数のスイッチ(固定要素)を示す部分断面模式図である。 本発明の第3実施形態による複数のスイッチ、TCU等のブロック図である。 本発明の第4実施形態によるレンジ検出装置の斜視図である。
以下、本発明の実施形態によるレンジ検出装置を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置を図1〜図11に示す。
本実施形態のレンジ検出装置は、自動車等の自動変速機に適用される。図2に示すように、自動変速機2は、変速機ケース3、オイルパン4、油圧制御装置20、ディテント機構10およびレンジ検出装置30を備えている。
変速機ケース3内には、油圧制御装置20から供給される油圧に応じて係合または開放される複数の摩擦要素が収容されており、各摩擦要素の係合または開放の組み合わせに従ってレンジが切り換わる。本実施形態では、P、R、N、Dの各レンジが切り換わる。Pはパーキング、Rはリバース、Nはニュートラル、Dはドライブを示す。
オイルパン4は、自動変速機2で使用する作動油を内部に蓄える。オイルパン4内には油圧制御装置20およびレンジ検出装置30が収容されている。
図2、図3に示すように、油圧制御装置20は、マニュアルバルブ5等の複数のバルブ、及び、複数の油路からなる油圧回路を有している。マニュアルバルブ5は、変速機ケース3に固定されるバルブボディ6のスプール孔6aにスプール7が往復移動可能に嵌入されることにより構成されている。マニュアルバルブ5は、スプール7の移動位置に応じて油圧回路の油路が切り換わることにより、各摩擦要素への供給油圧を制御する。その結果、自動変速機のレンジが切り換わる。本実施形態では、スプール7が図3の「+X」方向に移動するに従ってレンジがP、R、N、Dの順で切り換わる。また、スプール7が図3の「−X」方向に移動するに従ってレンジがD、N、R、Pの順で切り換わる。
ディテント機構10は、ディテントプレート12、ディテントスプリング13、回動軸14、ディテントレバー16、係合ピン18等を含む。ディテントプレート12とディテントレバー16とは回動軸14によって連結される。レバーケーブル11は、図示しないシフトレバーとディテントレバー16とを接続している。図示しないシフトレバーの操作に応じてレバーケーブル11が往復移動すると、ディテントレバー16が回動軸14を中心に回転し、それに伴ってディテントプレート12が回動する。
ディテントプレート12の外縁には、ディテントプレート12の回転方向に複数の溝12aが形成されている。ディテントプレート12の回動位置に応じてディテントスプリング13がいずれかの溝12aに嵌合することで、シフトレバーの非操作時にディテントプレート12の回動が規制される。
係合ピン18は、一端がディテントプレート12に固定され、他端がスプール7の溝7aと係合している。この結果、ディテントプレート12の回転運動がスプール7の直線運動に変換され、シフトレバーの操作に応じてスプール7が軸方向に往復移動する。
レバーケーブル11、ディテント機構10およびスプール7は、特許請求の範囲に記載の「伝達手段」に相当する。
図1に示すように、レンジ検出装置30は、「固定部」としてのハウジング31、「可動部」としてのスライダ51、「連結部材」としての連結ピン52、「前進付勢手段」としてのスプリング49、及び、TCU(トランスミッションコントロールユニット)75等から構成される。
略直方体のハウジング31は、バルブボディ6に固定される。ハウジング31は、耐油性の樹脂材料、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)で成形される。あるいは、耐摩耗性を向上するため、PPSにガラス繊維を入れた樹脂で成形される。
ハウジング31は、ベース部33、及び、ベース部33の長手方向の両辺に沿って設けられる案内レール351、352を設けている。案内レール351、352は、スライダ51を摺動可能に支持する。詳しく言えば、スライダ51の摺動面561、562が案内レール351、352の内壁361、362に沿って摺動する。
ハウジング31のベース部33は、スライダ51が摺動する側にベース面34を有している。ハウジング31は、ベース面34がスプール7の移動方向と略平行になるように設置される。
ベース面34の「−X」側の端部には突出部34aが形成されており、突出部34aには後退ストッパ37が設けられている。また、ベース面34の「+X」側の端部には前進ストッパ38が形成されている。前進ストッパ38および案内レール351、352は、ベース面34上に「コの字」の枠状に形成されている。前進ストッパ38には、スプリング係止ピン39が設けられている。
後退ストッパ37は、特許請求の範囲に記載の「後退限規制手段」に相当し、前進ストッパ38は、特許請求の範囲に記載の「前進限規制手段」に相当する。
また、ベース部33は、ベース面34と反対側に、外壁33aに囲まれる基板収容室32を有している。基板収容室32には、複数のスイッチ70の固定要素71であるホール素子H1〜H4、TCU75の回路基板等が収容される。
スライダ51は、連結ピン52の一端が固定される露出面53、露出面53と反対側のセンサ面54、案内レール351、352の内壁361、362に沿って摺動可能な摺動面561、562、及び、移動方向の「−X」側に向く後端面57、移動方向の「+X」側に向く前端面58の6面から構成されている。
露出面53の前端面58寄りには、スプリング係止ピン59が設けられている。
スライダ51の内部には、複数のスイッチ70の可動要素72である磁石M1〜M4が設けられている。具体的には、スライダ51は、例えば、PPSに鉄粉を混合したプラスチックマグネットで成形されることで、磁石M1〜M4を内包することができる。
連結ピン52は、一端がスライダ51に固定され、他端がスプール7の溝7bに嵌合する(図3参照)ことで、スプール7とスライダ51とを連結する。そして、スライダ51は、スプール7の往復移動に追従して摺動する。これにより、図4に示すように、スライダ51は、正常可動範囲Znにおいて、P、R、N、Dの各レンジの選択に応じた位置に移動する。スライダ51がPレンジ側からDレンジ側へ移動することを「前進」といい、スライダ51がDレンジ側からPレンジ側へ移動することを「後退」という。
なお、シフトレバーの非操作時にディテントプレート12の回動が規制されるため、スライダ51は、各レンジの選択に応じた位置で移動が規制される。
次に、スライダ51とハウジング31との組み付け手順を説明する。
最初、ハウジング31の突出部34aに後退ストッパ37が設けられていない状態で、スライダ51をハウジング31の「−X」側から案内レール351、352に挿入する。その後、後退ストッパ37を突出部34aに取り付ける。
また、スプリング49の一端をハウジング31のスプリング係止ピン39に係止させ、他端をスライダ51のスプリング係止ピン39に係止させる。これにより、スライダ51は前進側に付勢される。よって、スライダ51が自由に移動可能であるときは前端面58が前進ストッパ38に当接する。
連結ピン52がスプール7の溝7bに嵌合し、スライダ51とスプール7とを連結することにより、スライダ51の可動範囲は、図4等に示す正常可動範囲Znに制限される。
しかし、仮に、連結ピン52の折損等によりスライダ51とスプール7との連結が解除されると、スライダ51は、スプリング49の付勢力により正常可動範囲Znの前進側の前進禁止域Zfに進入する。このときのスライダ51の移動位置を、図5(b)に示すように「超Dレンジ」と表す。また、スプリング49に代えて、スライダ51を後退側へ付勢する後退付勢手段を設けた場合は、スライダ51は、正常可動範囲Znの後退側の後退禁止域Zrに進入する。このときのスライダ51の移動位置を、図5(a)に示すように「超Pレンジ」と表す。前進ストッパ38は前進限界位置Lfを決め、後退ストッパ37は前進限界位置Lrを決める。
次に、レンジ検出装置の位置信号出力手段、信号検出手段、レンジ判断手段等について図6〜図11に基づいて説明する。位置信号出力手段としての「複数のスイッチ70」は、ハウジング31に設けられる複数の固定要素71(図6参照)、及び、スライダ51に設けられる複数の可動要素72(図7参照)から構成される。本実施形態では、可動要素72は磁石である。固定要素71は、磁石が発生する磁界の変化を検出する磁気検出素子であり、具体的にはホール素子である。磁石とホール素子とは、非接触式の位置信号出力手段を構成する。
図6に示すように、4つのホール素子H1〜H4は、ハウジング31のベース部33に埋設されている。ホール素子H1〜H4は、スライダ51の移動方向と直交する方向に互いに間隔をあけて配列されている。ホール素子H1〜H4を結ぶ仮想線は、検出ラインUを構成する。
図7に示すように、4つの磁石M1〜M4は、スライダ51の後端面57および前端面58と平行な方向に互いに間隔をあけてスライダ51に埋設されている。磁石M1〜M4の位置は、ハウジング31のホール素子H1〜H4の位置に対応している。磁石M1〜M4は、摺動面561、562の方向に延び、それぞれS極およびN極が異なるパターンで形成されている。
P、R、N、Dの各レンジに対応するスライダ51の正常可動範囲Znにおける各移動位置(図4参照)において固定要素71の検出ラインUに重なる仮想線を「被検出ラインVp、Vr、Vn、Vd」と表す。また、P、R、N、Dレンジの各中間位置に対応する仮想線を「被検出ラインVp−r、Vr−n、Vn−d」と表す。さらに、前進禁止域Zf(図5参照)に対応する仮想線を「被検出ラインV超d」、後退禁止域Zr(図5参照)に対応する仮想線を「被検出ラインV超p」と表す。これら9つの被検出ライン上では、磁石M1〜M4のS極またはN極の組合せがそれぞれ異なる。
ホール素子H1〜H4は、検出ラインUがS極と重なるときオン信号を出力し、検出ラインUがN極と重なるときオフ信号を出力する。その結果、スライダ51の移動位置に応じて、図10に示すように、オンオフ信号の組合せのオンオフパターンが出力される。これらのオンオフパターンは、レンジ位置と一対一に対応する。
図8に示すように、TCU75は、信号検出手段76、レンジ判断手段77、始動決定手段78、変速制御手段79から構成される。
信号検出手段76は、位置信号出力手段としての4つのホール素子H1〜H4から出力されるオンオフパターンの信号S1〜S4を検出する。また、信号検出手段76は、信号S1〜S4を検出することで、断線短絡信号出力回路74の出力信号に基づき、ホール素子H1〜H4に接続される信号線73の断線または短絡を検出する。
レンジ判断手段77は、信号検出手段76が検出した信号S1〜S4に基づき図10のパターン表にしたがってレンジを判断する。
始動決定手段78は、自動変速機2の入力軸に入力される駆動力を発生する原動機の始動または不始動を決定する。「原動機」は例えば車両のエンジンである。レンジ判断手段77がスライド51の「過移動異常」を判断したとき、始動決定手段77は、原動機の不始動を決定する。すなわち、原動機としてのエンジンの始動を禁止する。
変速制御手段79は、複数の摩擦要素の係合または開放によって、自動変速機2の入力軸に入力される駆動力を自動変速機2の出力軸に伝達し、または伝達しないように制御する。レンジ判断手段77がスライド51の「過移動異常」を判断したとき、変速制御手段79は、駆動力を出力軸に伝達しないように制御する。例えば、自動変速用の油圧制御弁をすべて低圧にするように設定し、自動変速機2の入力軸と出力軸とを連結しないニュートラル状態とする。
次に、断線短絡信号出力回路74の出力信号に基づく信号線73の断線または短絡の検出原理について、図9を参照して説明する。ここでは、ホール素子H1に対応する断線短絡信号出力回路74を代表として説明する。
断線短絡信号出力回路74は、5つの抵抗R1、R2、R3、R4およびRcから構成され、接続点Cの電圧Vcを出力する。抵抗R1は、5Vの電源電圧と接続点Cとの間に接続されている。抵抗R2は、一端が接続点Cに接続され、他端が接地されている。抵抗R3は、ホール素子H1と接続点Cとの間に接続されている。抵抗R4は、一端がホール素子H1に接続され、他端が接地されている。信号検出手段76は、抵抗Rcを介して、接続点Cの電圧Vcを信号S1として検出する。
以下、抵抗R1〜R4の数値例を次のように設定し、計算例を示す。
R1:7.5kΩ、R2:150kΩ、R3:0.33kΩ、R4:75kΩ。
抵抗R2と抵抗R3との並列合成抵抗をRα、抵抗R3と抵抗R4との直列抵抗と抵抗R2との並列合成抵抗をRβとすると、Rα、Rβは下式(1)、(2)で示される。
Rα=1/{(1/R2)+(1/R3)} ・・・式(1)
Rβ=1/[(1/R2)+{1/(R3+R4)}] ・・・式(2)
上記の抵抗の数値例によると、Rα、Rβの値は以下のようになる。
Rα:約0.33kΩ、Rβ:約50kΩ。
図9(a)は、信号線73が正常でホール素子H1がオン信号を出力した場合を示す。
このとき、電圧Vcは、5Vに対する抵抗R1と並列合成抵抗Rαとの分圧比から下式(3)のように求められる。
Vc=5*Rα/(R1+Rα)≒0.2V ・・・式(3)
図9(b)は、信号線73が正常でホール素子H1がオフ信号を出力した場合を示す。
このとき、電圧Vcは、5Vに対する抵抗R1と並列合成抵抗Rβとの分圧比から下式(4)のように求められる。
Vc=5*Rβ/(R1+Rβ)≒4.4V ・・・式(4)
図9(c)は、信号線73が断線した場合を示す。
このとき、電圧Vcは、5Vに対する抵抗R1と抵抗R2との分圧比から下式(5)のように求められる。
Vc=5*R2/(R1+R2)≒4.8V ・・・式(5)
図9(d)は、信号線73がバッテリ電源に短絡した場合を示す。
このとき、電圧Vcは、5V以上となる。
図9(e)は、信号線73が地絡(アース短絡)した場合を示す。
このとき、電圧Vcは、0Vとなる。
以上の説明によると、0.2V<Vc<4.4Vのとき信号線73は正常であり、Vc≒0.2Vならばオン信号、Vc≒4.4Vならばオフ信号を検出することができる。また、Vc<0.2Vまたは4.4V<Vcのとき信号線73の断線または短絡を検出することができる。なお、実際の検出では、部品誤差や測定誤差等を考慮して閾値を決定することで、検出精度の向上を図ることができる。
(作用)
次に、本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置30の作用を説明する。
シフトレバーによりレンジが選択されると、レバーケーブル11およびディテント機構10を介して、油圧制御装置20のバルブボディ6のスプール孔6aに嵌入されたスプール7が往復移動する。これにより油圧制御装置20が各摩擦要素への供給油圧を制御するとともに、連結ピン52によってスプール7と連結されたスライダ51が、スプール7の往復移動に追従して、ハウジング31に沿って前進または後退する。
このとき、スライダ51の摺動面561、562がハウジング31の案内レール351、352の内壁361、362に沿って正常可動範囲Znを摺動する。また、ハウジング31とスライダ51とに係止されるスプリング49は、スライダ51がPレンジ側からDレンジ側へ前進するとき縮み、スライダ51がDレンジ側からPレンジ側へ後退するとき伸びる。
位置信号出力手段としての複数のスイッチ70は、スライダ51の移動位置に応じたオンオフパターンを出力する。TCU75の信号検出手段76は、オンオフパターンを検出する。TCU75のレンジ判断手段77は、検出したオンオフパターンに基づいて、選択されたレンジを判断する。
ここで、スライダ51の摺動面561、562と案内レール351、352の内壁361、362との間に異物が噛み込んでスライダ51が摺動不良となり、さらに運転者が無理矢理シフトレバーを操作しようとしたため連結ピン52が折損した場合を仮定する。連結ピン52が折損したことにより、スライダ51は、スプール7との連結が解除される。
すると、スライダ51は、スプリング49の付勢力によって、前端面58がハウジング31の前進ストッパ38に当接する限界前進位置Lfまで前進する。すなわち、正常可動範囲Znを超えて前進禁止域Zfに進入する。この場合、複数のスイッチ70は、「超Dレンジ」のオンオフパターンを出力する。
次に、レンジ検出装置30が、「断線短絡故障」を検出し、また、「過移動異常」を判断するフローについて、図11のフローチャートを参照して説明する。ここで、「断線短絡故障」は、ホール素子H1〜H4に接続される信号線73のいずれか1つ以上が断線または短絡する故障である。また、「過移動異常」は、スライダ51が正常可動範囲Znを超えて移動する異常である。
以下のフローチャートの説明で記号Sは「ステップ」を示す。
S10では、信号検出手段76が、断線短絡信号出力回路74の出力信号により、各ホール素子H1〜H4に対応する信号線73の断線短絡故障を検出したか否かを判断する。YESの場合、S15にて、信号線73の断線短絡故障をランプ等で表示して警告する。
S10でNOの場合、S20に移行し、信号検出手段76が検出するオンオフパターンが「超P」または「超D」のオンオフパターンであるか否かを判断する。NOの場合、S25にて、正常作動を継続する。
S20でYESの場合とは、例えば上述のように連結ピン52が折損した場合である。このとき、信号検出手段76は、「超Dレンジ」のオンオフパターンを検出する。よって、S30に移行し、レンジ判断手段77がスライダ51の「過移動異常」を判断する。
続くS40では、始動決定手段78がエンジン始動を禁止し、かつ、変速制御手段79が自動変速機2をニュートラル状態とする。
(効果)
次に、本発明の第1実施形態によるレンジ検出装置30の効果を説明する。
(1)図10に示すように、スライダ51が前進禁止域Zfに進入したときに出力される「超Dレンジ」のオンオフパターン、及び、スライダ51が後退禁止域Zrに進入したときに出力される「超Pレンジ」のオンオフパターンは、スライダ51が正常可動範囲Znにあるときに出力される「Pレンジ」から「Dレンジ」までのオンオフパターンのいずれとも異なる。
これにより、レンジ判断手段77は、スライダ51が正常可動範囲Znを超えて前進禁止域Zfまたは後退禁止域Zrに進入する「過移動異常」を判断することができる。
(2)「超Pレンジ」のオンオフパターンおよび「超Dレンジ」のオンオフパターンは、それぞれ1とおりである。すなわち、前進禁止域Zfおよび後退禁止域Zrの範囲内にオンオフパターンが変化する境界域が存在しないため、境界域でのわずかな誤検出を回避できる。よって、信号検出手段76によるオンオフパターンの検出が単純で正確になる。
(3)レンジ検出装置の故障モード影響解析(FMEA)によれば、いずれかの信号線73の断線または短絡故障が起こる確率は、スライダ51の過移動異常が発生する確率よりも高いと考えられる。一方、信号線73の断線短絡故障の影響度は比較的軽微であるのに対し、スライダ51の過移動異常の影響度は重大である。
そこで、断線短絡信号出力回路74の出力信号に基づいて信号検出手段76が信号線73の断線短絡故障を独立して検出することで、レンジ判断手段77は、断線短絡故障の場合を排除した上で、より重大なスライダ51の過移動異常を判断することができる。
また、2つ以上の信号線73が同時に断線または短絡する多重断線故障および多重短絡故障を検出することができる。さらに、後述の第2実施形態では位置信号出力手段のスイッチ数を5つに増やす必要があるのに対し、本実施形態のスイッチ数は4つでよい。
(4)ハウジング31に設けられる後退ストッパ37は、後退禁止域Zrでのスライダ51の限界後退位置Lrを決める。また、ハウジング31に設けられる前進ストッパ38は、前進禁止域Zfでのスライダ51の限界前進位置Lfを決める。
これにより、スライダ51の可動範囲を有限とし、スライダ51の過移動異常を有限の範囲内で確実に判断することができる。
(5)スプリング49を設けることで、連結ピン52が折損した場合にスライダ51が自由に動くことを防ぎ、スライダ51を限界前進位置Lfに保持することができる。よって、スライダ51の過移動異常を確実に判断することができる。
(6)レンジ判断手段77によってスライダ51の過移動異常が判断されたとき、始動決定手段78は、エンジンの始動を禁止する。また、変速制御手段79は、例えば、自動変速用の油圧制御弁をすべて低圧にするように設定し、自動変速機の入力軸と出力軸とを連結しないニュートラル状態とする。これにより、車両は、原則として停止する。
例えば連結ピン52が折損した状態で運転を継続しようとすると、運転者の意図に反して車両が制御されるおそれがある。そこで、フェールセーフの原則にしたがって強制的に車両を停止させることで、運転者の危険を回避することができる。
(第2実施形態)
続いて、本発明の第2実施形態を図12〜図16に基づいて説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対し、断線短絡信号出力回路を備えておらず、また、位置信号出力手段として5つのホール素子および5つの磁石からなる5つのスイッチを設けている点が異なる。第1実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
図12に示すように、5つのホール素子H1〜H5は、ハウジング31のベース部33に埋設されている。また、図13に示すように、5つの磁石M1〜M5は、スライダ51に埋設されている。ホール素子における検出ラインU、及び、磁石における被検出ラインVp〜Vd等についての説明は、第1実施形態と同様である。
図14に示すTCU75の構成は、第1実施形態と同様である。ただし、第2実施形態では、断線短絡信号出力回路74を備えていない。よって、信号検出手段76は、ホール素子H1〜H5に接続される信号線73の断線または短絡を独立して検出しない。
その代わり、第2実施形態では、信号検出手段76が検出するオンオフパターンに特徴を有する。すなわち、スライダ51が正常可動範囲Znでいずれか1つの信号線73が断線または短絡した場合のオンオフパターンは、スライダ51が「超Pレンジ」または「超Dレンジ」に進入したときのオンオフパターンと異なる。
まず、信号S1〜S5のいずれか1つに対応する信号線73が断線する「一重断線故障」の場合を説明する。図15(a)は正常時のオンオフパターン表を示し、図15(b)〜(f)は「一重断線故障」時のオンオフパターン表を示す。信号線73が断線するとスライダ51の移動位置にかかわらずオフ信号が検出される。
例えば図15(b)にて、信号S1に対応する信号線73の断線により、Pレンジでは「正常時にあり得ないパターンX1」が表出する。また、PレンジとRレンジの中間位置でのオンオフパターンは、隣接するRレンジのオンオフパターンと一致する。この場合、隣接するレンジとの間で誤判別が生じることにより、誤判別による影響が最小限となるようにしている。ここで、PレンジからDレンジまでの7つのオンオフパターンは、いずれも超Pレンジまたは超Dレンジのオンオフパターンとは異なる。
同様に、図15(c)〜(f)にて、PレンジからDレンジまでの7つのオンオフパターンは、いずれも超Pレンジまたは超Dレンジのオンオフパターンとは異なる。よって、レンジ判断手段77は、信号検出手段76が検出するオンオフパターンに基づいて、「一重断線故障」とスライダ51の過移動異常とを確実に識別することができる。
次に、信号S1〜S5のいずれか1つに対応する信号線73が短絡する「一重短絡故障」の場合を説明する。図16(a)は正常時のオンオフパターン表を示し、図16(b)〜(f)は「一重短絡故障」時のオンオフパターン表を示す。信号線73が短絡するとスライダ51の移動位置にかかわらずオン信号が検出される。
例えば図16(b)にて、信号S1に対応する信号線73の短絡により、RレンジとNレンジとの中間位置、Nレンジ、NレンジとDレンジとの中間位置、Dレンジの4箇所で「正常時にあり得ないパターンX2〜X5」が表出する。また、Rレンジのオンオフパターンは、隣接する「PレンジとRレンジの中間位置」でのオンオフパターンと一致する。この場合、隣接するレンジとの間で誤判別が生じることにより、誤判別による影響が最小限となるようにしている。ここで、PレンジからDレンジまでの7つのオンオフパターンは、いずれも超Pレンジまたは超Dレンジのオンオフパターンとは異なる。
同様に、図16(c)〜(f)にて、PレンジからDレンジまでの7つのオンオフパターンは、いずれも超Pレンジまたは超Dレンジのオンオフパターンとは異なる。よって、レンジ判断手段77は、信号検出手段76が検出するオンオフパターンに基づいて、「一重短絡故障」とスライダ51の過移動異常とを確実に識別することができる。
なお、比較のため、図10に示す第1実施形態のオンオフパターンでは、例えば、信号S1に対応する信号線73の断線により、Pレンジのオンオフパターンが超Pレンジのオンオフパターンと一致する。この場合、実際には過移動異常が発生していないにもかかわらず、信号検出手段76の検出信号に基づいてレンジ判断手段77が過移動異常を誤判断する可能性がある。
以上の構成により、第2実施形態では、第1実施形態の効果(1)、(2)、(4)、(5)、(6)と同様の効果が得られる。また、第1実施形態の効果(3)は以下のように置き換えることができる。
(3)レンジ検出装置の故障モード影響解析(FMEA)によれば、いずれか1つの信号線73の断線または短絡故障が起こる確率は、スライダ51の過移動異常が発生する確率よりも高いと考えられる。また、2つ以上の信号線の断線または短絡故障が同時に起こる確率は極めて低いと考えられる。一方、信号線73の断線短絡故障の影響度は比較的軽微であるのに対し、スライダ51の過移動異常の影響度は重大である。
そこで、スライダ51が正常可動範囲Znにあるときに出力されるオンオフパターンの「いずれか1つのオン信号をオフ信号に置き換えた場合」および「いずれか1つのオフ信号をオン信号に置き換えた場合」においても過移動異常時のオンオフパターンと異なるようにする。これにより、一重断線故障または一重短絡故障による信号検出手段76の誤検出の可能性を排除し、さらに、レンジ判断手段77による過移動異常の判断精度を高めることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図17〜図19に基づいて説明する。第3実施形態は、位置信号出力手段の構成が第1実施形態と異なる。第3実施形態では、ハウジング41に設けられる複数の固定要素81(図18参照)は、電極プレートである。また、スライダ61に設けられる複数の可動要素82(図17参照)は、電極プレートに接触する接点を有するターミナルである。電極プレートとターミナルとは、接触式の位置信号出力手段としての「複数のスイッチ80」(図19参照)を構成する。
図17に示すように、ハウジング41のベース面44と対向するスライダ61のセンサ面64に5つのターミナルT1〜T5が装着されている。ターミナルT1〜T5は、スライダ61のセンサ面64に基端部が固定され、後端面67および前端面68と平行な方向に互いに間隔をあけて配列されている。ターミナルT1〜T5は、可動要素82を構成する。ターミナルT1〜T5の先端部を結ぶ仮想線は、検出ラインUを構成する。
図18に示すように、5つの電極プレートE1〜E5は、ハウジング41のベース部43に埋設されている。電極プレートE1〜E5は、スライダ61の移動方向と直交する方向に互いに間隔をあけて配列されている。電極プレートE1〜E5の位置は、スライダ61のターミナルT1〜T5の位置に対応している。電極プレートE1〜E5は、スライダ61の移動方向に延びている。電極プレートE1〜E4は、それぞれ導通部Cおよび絶縁部Iが異なるパターンで形成されている。電極プレートE5は、導通部Cのみから構成され、図19に示すように接地されている。
P、R、N、Dの各レンジに対応するスライダ61の正常可動範囲Znにおける各移動位置において可動要素82の検出ラインUが重なる仮想線を「被検出ラインVp、Vr、Vn、Vd」と表す。また、P、R、N、Dレンジの各中間位置に対応する仮想線を「被検出ラインVp−r、Vr−n、Vn−d」と表す。さらに、前進禁止域Zfに対応する仮想線を「被検出ラインV超d」、後退禁止域Zrに対応する仮想線を「被検出ラインV超p」と表す。これら9つの被検出ライン上では、電極プレートE1〜E5の導通部Cまたは絶縁部Iの組合せがそれぞれ異なる。
ターミナルT1〜T5の先端部は、電極プレートE1〜E5に接触している。ターミナルT1〜T5の先端部すなわち検出ラインUが電極プレートE1〜E5の導通部Cと接触するときオン信号が出力され、検出ラインUが電極プレートE1〜E5の絶縁部Iと接触するときオフ信号が出力される。その結果、スライダ61の移動位置に応じて、第1実施形態のオンオフパターン(図10参照)と同様のオンオフパターンが出力される。
図19に示すTCU75および断線短絡信号出力回路74の構成、作用は、第1実施形態と同様である(図8参照)。
第3実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態を図20に基づいて説明する。第4実施形態のレンジ検出装置は、例えば、ハウジング30がオイルパン4の側壁4a(図2参照)に固定され、ハウジング30のベース面34が略鉛直方向に設置される。
この場合、仮にスライダ51の連結ピン52が折損すると、スライダ51は重力で落下し、前端面58が前進ストッパ38に当接するまで前進する。そして、限界前進位置Lfで保持される。
これにより、第1実施形態に対し前進付勢手段としてのスプリングを設けることなく、第1実施形態の効果(5)と同様の効果を得ることができる。よって、部品点数を削減することができる。また、前進付勢手段が破損する可能性を無くすことができる。
(その他の実施形態)
(ア)上記の実施形態では、選択されるレンジは、P、R、N、Dの4レンジである。しかし、これに限らず、例えば「2」、「L」等のレンジが追加されてもよい。また、Pレンジ側とDレンジ側のどちらを「前進側」および「後退側」としてもかまわない。
(イ)上記の実施形態では、スライダの摺動部がハウジングの案内レールの内壁に沿って摺動する。しかし、可動部が固定部に沿って往復移動する方式はこれに限定されない。
(ウ)上記の実施形態では、スライダの過移動異常の主な原因として連結ピンの折損を想定している。これ以外に、スライダの過移動異常の原因としてレバーケーブルの異常伸長、ディテント機構の構造部またはスプールの破損なども想定し得る。
(エ)上記の実施形態において、始動決定手段または変速制御手段は無くてもよい。
(オ)上記の第1実施形態等において、複数のスイッチの固定要素を構成する磁気検出素子として、ホール素子の代わりに磁気抵抗素子を使用してもよい。
(カ)上記の第4実施形態では、ハウジングのベース面が略鉛直方向に設置される。しかし、ベース面は、スライダが重力で移動可能な程度に傾斜して設置されてもよい。
また、後退ストッパ側に重力が作用するように設置し、重力を「後退付勢手段」として使用してもよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
2 ・・・自動変速機
6 ・・・バルブボディ
7 ・・・スプール(伝達手段)
10 ・・・ディテント機構(伝達手段)
11 ・・・レバーケーブル(伝達手段)
20 ・・・油圧制御装置
30 ・・・レンジ検出装置
31、41 ・・・ハウジング(固定部)
351、352、451、452・・・案内レール
37 ・・・後退ストッパ(後退限規制手段)
38 ・・・前進ストッパ(前進限規制手段)
49 ・・・スプリング(前進付勢手段)
51、61 ・・・スライダ(可動部)
52、62 ・・・連結ピン(連結部材)
561、562、661、662・・・摺動面
57、67 ・・・後端面
58、68 ・・・前端面
70、80 ・・・(複数の)スイッチ(位置信号出力手段)
71、81 ・・・固定要素
72、82 ・・・可動要素
73 ・・・信号線
74 ・・・断線短絡信号出力回路
75 ・・・TCU
76 ・・・信号検出手段
77 ・・・レンジ判断手段
78 ・・・始動決定手段
79 ・・・変速制御手段
H1、H2、H3、H4、H5 ・・・ホール素子(磁気検出素子)
M1、M2、M3、M4、M5 ・・・磁石
T1、T2、T3、T4、T5 ・・・ターミナル
E1、E2、E3、E4、E5 ・・・電極プレート
S1、S2、S3、S4、S5 ・・・信号
U ・・・検出ライン
Vp、Vr、Vn、Vd ・・・被検出ライン
Zn ・・・正常可動範囲
Zf ・・・前進禁止域
Zr ・・・後退禁止域
Lf ・・・限界前進位置
Lr ・・・限界後退位置

Claims (9)

  1. 自動変速機に固定される固定部と、
    前記固定部に沿って所定の正常可動範囲を前進および後退可能な可動部と、
    自動変速機のレンジの選択に応じた操作力を伝達する伝達手段と前記可動部とを連結する連結部材と、
    前記可動部の移動位置に応じてオンオフ信号を出力する複数のスイッチから構成され、複数のオンオフ信号を組み合わせたオンオフパターンを出力する位置信号出力手段と、
    前記位置信号出力手段が出力したオンオフパターンを検出する信号検出手段と、
    前記信号検出手段が検出したオンオフパターンの検出信号に基づいてレンジを判断するレンジ判断手段と、
    を備え、
    前記可動部が前記正常可動範囲を超えて前記正常可動範囲の前進側の前進禁止域または前記正常可動範囲の後退側の後退禁止域に進入したとき、
    前記位置信号出力手段は、前記可動部が前記正常可動範囲にあるときに出力するいずれのオンオフパターンとも異なるオンオフパターンを出力し、
    前記レンジ判断手段は、前記可動部の位置が異常であると判断することを特徴とするレンジ検出装置。
  2. 前記可動部が前記前進禁止域にあるときに前記位置信号出力手段が出力するオンオフパターンは1とおりであり、かつ、前記可動部が前記後退禁止域にあるときに前記位置信号出力手段が出力するオンオフパターンは1とおりであることを特徴とする請求項1に記載のレンジ検出装置。
  3. 前記複数のスイッチに接続される信号線のいずれか1つが断線し、断線した信号線に対応するスイッチからの出力が前記可動部の移動位置にかかわらずオフ信号となる場合、
    あるいは、
    前記複数のスイッチに接続される信号線のいずれか1つが短絡し、短絡した信号線に対応するスイッチからの出力が前記可動部の移動位置にかかわらずオン信号となる場合において、
    前記可動部が前記前進禁止域または前記後退禁止域にあるときに前記信号検出手段が検出するオンオフパターンは、
    前記可動部が前記正常可動範囲にあるときに前記信号検出手段が検出するいずれのオンオフパターンとも異なることを特徴とする請求項1または2に記載のレンジ検出装置。
  4. 前記複数のスイッチに接続される信号線のいずれか1つ以上が断線または短絡する断線短絡故障を示す出力信号を出力する断線短絡信号出力回路を備え、
    前記信号検出手段が、前記断線短絡信号出力回路の出力信号に基づいて断線短絡故障を検出せず、かつ、前記可動部が前記前進禁止域または前記後退禁止域にあるときに前記位置信号出力手段が出力するオンオフパターンを検出したときに限り、
    前記レンジ判断手段は、前記可動部の位置が異常であると判断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のレンジ検出装置。
  5. 前記可動部の前記前進禁止域での前進を限界前進位置で規制する前進限規制手段、または、前記可動部の前記後退禁止域での後退を限界後退位置で規制する後退限規制手段の少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のレンジ検出装置。
  6. 前記可動部と前記伝達手段との連結が解除されたとき前記可動部を前記限界前進位置まで前進させるように付勢する前進付勢手段、または、前記可動部と前記伝達手段との連結が解除されたとき前記可動部を前記限界後退位置まで後退させるように付勢する後退付勢手段のいずれか一方を備えることを特徴とする請求項5に記載のレンジ検出装置。
  7. 前記可動部の移動方向が鉛直方向または傾斜する方向になるように設置され、
    前記前進付勢手段または前記後退付勢手段は重力であることを特徴とする請求項6に記載のレンジ検出装置。
  8. 自動変速機の入力軸に入力される駆動力を発生する原動機の始動または不始動を決定する始動決定手段を備え、
    前記レンジ判断手段が前記可動部の位置が異常であると判断したとき、前記始動決定手段は、前記原動機の不始動を決定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のレンジ検出装置。
  9. 複数の摩擦要素の係合または開放によって、自動変速機の入力軸に入力される駆動力を自動変速機の出力軸に伝達し、または伝達しないように制御する変速制御手段を備え、
    前記レンジ判断手段が前記可動部の位置が異常であると判断したとき、前記変速制御手段は、前記駆動力を前記出力軸に伝達しないように制御することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のレンジ検出装置。
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