JP5273496B2 - 水素分離用金属細管及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、従来のものと比較して外径が極めて細く、しかも管厚も極めて薄い水素分離用金属細管及びその製造方法に関する。また、高い水素透過性及び高い水素分離性を有し、ピンホールなどの欠陥が無く、しかも管厚が極めて薄く、外径が極めて細い水素分離用金属細管及びその製造方法に関する。
従来、水素ガスは軽量で豊富、環境に優しいことから、将来の主要なエネルギーと目されており、天然ガス、ナフサ、またはメタノールなどの炭化水素を原料として水蒸気改質法や部分酸化法などで製造されており、また石炭のガス化や水電解などでも製造されている。上記方法で製造された水素含有ガスから水素を精製回収する方法としては、吸収法、吸着法、深冷分離法や、有機または無機の水素分離膜を用いる方法などが知られている。それらのなかでも水素分離膜を用いる方法は、他の水素分離方法と比べて、より省エネルギーで、操作が簡便であり、分離効率が良く、しかも用いる機器の小型化が可能などの有利な点を有しているため、工業的に使用される可能性が大きいなどの観点から注目されている。
その水素分離膜としては、ポリイミドやポリスルホンなどの有機高分子膜、多孔質ガラスや多孔質セラミックスなどの無機多孔質膜、およびパラジウムまたはパラジウム合金などの金属膜などが知られている。このうち、パラジウムまたはパラジウム合金膜においては極めて高純度の水素を得ることができるので注目されている。また、燃料電池や他の水素を消費するプロセス、あるいは、対象製品の収量を向上させるために水素化や脱水素化反応プロセスに使用できる可能性が高いことなどの点からも注目されており、幾多の技術が提案されている。
パラジウム系膜を形成する製法としていろいろな製法が報告されているが、多孔性セラミクスや多孔質ガラス、多孔性陶器または金属製フィルタなどの無機多孔体を用い、その無機多孔体表面にパラジウム系膜を形成させる製法に関する報告が多い(例えば、特許文献1)。
一方、水素ガス含有混合ガスから水素ガスを選択的に分離するために、中空糸状の多孔質体表面にPd系膜を担持させたPd膜系中空糸分離膜を数本から500本程度集束した中空糸束を束着管に収容した膜モジュールの状態で用いることが特許文献2の0004に記載されている。また、前記特許文献2の実施例では外径2mmの中空糸を束にした膜モジュールが示されている。この実施例で用いる中空糸はアルミナ多孔体中空糸であり、束にした中空糸の数は10本である。この実施例で用いた中空糸はセラミック多孔体を使用しているので、外径をこれ以上細くし、しかも、多孔体自体の耐熱応力性や耐振動性等、多孔体と水素分離層の界面に発生する耐応力特性等に劣るため、水素ガスの分離能を維持することができる中空糸を製造することは技術的に困難であるといえる。
多孔体を用いずに水素分離用金属細管を得る技術は当然ながら行われている。例えば、伝統的な技術を応用した手法により金属細管を製造する報告がある(非特許文献1)。この技術により得られる金属細管は一部実用化されているが、パラジウム表面の状態や延伸時等の応力残留、脆化、欠陥生成等に関して細心の注意が必要とされ、工程管理が複雑かつ厳格で、製造コストがかさばるという問題点が指摘されている。
その点、特許文献3には、外径3mmのフッ素樹脂チュ−ブを基体とし、その表面をサウンドペ−パで粗面化した後、水素分離膜を形成し、次いでフッ素樹脂チュ−ブを熱収縮させて除去し、パラジウム金属細管を得る技術が報告されており(とくに特許文献3の実施例)、前記問題点がかなり解消されているということができる。すなわち、この特許文献3に報告されているパラジウム金属細管は前記中空糸における多孔体に相当するものがないという点で意味のあるパラジウム金属細管であり、製造コストの点でも改善された。しかし、このパラジウム金属細管の外径(3mm程度以上)はかなり細くなっているものの、満足することが出来るほどの細さではない。また、水素透過性を上げるためには管厚を出来るだけ薄くする必要があり、機械的強度の理論から、細管の外径を細くするほど同じ圧力差に耐えうる管厚をより薄くできることが知られているにも関わらず、管の外径が1mm以下で、管厚が80μm未満である水素分離用金属細管は無かった。この大きな原因の一つとして、本来の水素選択透過特性を有する、無欠陥の水素分離用細管を効率よく製造する技術がこれまでは無かったことが挙げられる。
そのうえ、実用的な水素分離膜を形成させるためにフッ素樹脂チュ−ブ表面をサウンドペ−パで粗面化しまた、熱収縮後とはいえども水素分離膜層と部分的に接着しているフッ素樹脂チュ−ブを引き抜いて使い捨てにするという、操作上および資源上における問題が多く、水素分離層への物理的・化学的ダメージも大きい工程を必要とするという不都合さもある。そして、形成されたパラジウム分離膜がどの程度の水素透過能と水素選択能を有しているか記載されていないので、水素分離能は不明である。
特開平4−349926号公報 特開2004−181412号公報 特開2001−145825号公報 N. MITSUISHI, et al., Journal of the Less-Common Metals, 89 (1983)415 - 422
従って、本発明の課題は、外径が極めて細く、しかも管厚も極めて薄い水素分離用金属細管、及びその製造方法を提供することにある。さらに、高い水素透過性及び高い水素分離性を有する水素分離能を有する外径が極めて細く管厚も極めて薄い金属細管、及びその製造方法を提供することにある。また、操作上の点でも改善された方法で外径が極めて細く管厚も極めて薄い金属細管を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく、外径が極めて細い中空糸表面にパラジウム層を形成させるために鋭意研究を重ねる中、有機高分子中にパラジウム塩を共存させた層を中空糸表面に形成させ、その層の表面にパラジウム層を形成させようと試みると、意外にもパラジウム層が容易かつ効率的に形成されることを見出した。さらにそのパラジウム層が形成された中空糸を加熱させ、中空糸及び有機高分子を焼失させると、驚くべきことに極めて高い水素透過性及び極めて高い水素分離性を有する水素分離用金属細管が得られるという知見を得た。また、溶出可能な管状基材を用いても、極めて高い水素透過性及び極めて高い水素分離性を有する水素分離用金属細管が得られるという知見を得た。それらの知見に基づきさらに研究を重ね、ついに本発明を完成させた。
すなわち、請求項1の発明は、水素分離機能を有する金属層を構成する金属の金属核前駆体を含む混合物から焼失性管状基材を形成する工程A、工程Aの基材表面に水素分離機能を有す金属層を形成させる工程B、及び工程Bの管状物から前記焼失性材料を焼失させる工程Cを少なくとも有することを特徴とする水素分離用金属細管の製造方法である。
求項の発明は、水素分離機能を有する金属層を構成する金属の金属核前駆体を含む混合物から溶出性管状基材を形成する工程A、工程Aの基材表面に水素分離機能を有す金属層を形成させる工程B、及び工程Bの管状物から前記溶出性材料を溶出せる工程Cを少なくとも有することを特徴とする水素分離用金属細管の製造方法である。
請求項の発明は、焼失性管状基材表面に焼失性材料と水素分離機能を有する金属層を構成する金属の金属核前駆体を含む混合物の層を形成する工程D、工程Dの層の表面に水素分離機能を有する金属層を形成させて管状物を得る工程E、及び工程Eの管状物から前記管状基材及び焼失性材料を焼失させる工程Fを少なくとも有することを特徴とする水素分離用金属細管の製造方法である。
請求項の発明は、溶出性管状基材表面に溶出性材料と水素分離機能を有する金属層を構成する金属の金属核前駆体を含む混合物の層を形成する工程D、工程Dの層の表面に水素分離機能を有する金属層を形成させて管状物を得る工程E、及び工程Eの管状物から前記管状基材及び溶出性材料を溶出させる工程Fを少なくとも有することを特徴とする水素分離用金属細管の製造方法である。
請求項の発明は、金属核前駆体含有層の形成後、表面に水素分離機能を有する金属層を形成させる前に、金属核前駆体含有層が形成された管状基材に対し熱処理及び/又は還元処理を施すことを特徴とする請求項又はに記載の水素分離用金属細管の製造方法である。
請求項の発明は、請求項のいずれか1項に記載の製造方法により製造された水素分離用金属細管であって、管の外径が1mm以下で、管厚が80μm未満であることを特徴とする水素分離用金属細管である。
請求項の発明は、水素のヘリウムに対する分離係数αが1000以上であることを特徴とする請求項に記載の水素分離用金属細管である。
本発明の水素分離用金属細管は、優れた水素透過性、及び優れた水素分離性を有することもひとつの特徴である。また、本発明の水素分離用金属細管は、とくに、新規触媒技術を利用した管状基材表面の活性化過程と、金属薄膜層の形成過程に特徴付けられる方法によって製造される点に特徴がある。すなわち、例えば次のような金属細管の製法がある。
(1)水素分離機能を有する金属層を構成する金属の金属核前駆体を含む管状基材を形成させ、金属からなる水素分離層の下地となる金属核を基材表面に形成させる点、
(2)その表面に、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を形成させる点、及び
(3)管状基材を除去する点
からなる方法に特徴がある。例えば、管状とすることができる焼失性材料を選び、その焼失性材料と金属核前駆体とを含む混合物から、金属核前駆体を含む焼失性管状基材を形成するので、金属核前駆体が均一に分散され、しかも操作上の簡便さの点でも有利である。そのうえ、水素分離層の製造に必要な時間も短く、コストも低減化されることになる。しかも、その分離層は水素分離性を損なわない範囲内で薄く、欠陥の無い緻密な層となるので、水素透過能や水素分離能が優れた層が形成できる点、などで特徴付けられる。
また、次のような金属細管の製法がある。
(1)管状基材表面に金属核前駆体を含有する層を形成させ、金属からなる水素分離層の下地となる金属核を基材表面に形成させる点、
(2)その層の表面に、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を形成させる点、及び
(3)管状基材を除去する点
からなる方法に特徴がある。例えば、焼失性管状基材を選び、その管状基材に焼失性材料、金属核前駆体、および溶媒から少なくとも構成される溶液を被覆操作することによって、管状基材表面に比較的多量の金属核前駆体が均一に分散され、均一な厚みの層を形成させることができるので、金属からなる水素分離層の下地となる金属核の分散が均一で量も多く、そのうえ、水素分離層の製造に必要な時間も短く、コストも低減化されることになる。しかも、その分離層は水素分離性を損なわない範囲内で薄く、欠陥の無い緻密な層となるので、水素透過能や水素分離能が優れた層が形成できる点、などで特徴付けられる。
また、溶出性管状基材を選び、その管状基材に溶出性材料、金属核前駆体、および溶媒から少なくとも構成される溶液を用い、上記焼失性材料を用いた場合と同様な操作を施し、上記焼失性材料を用いた場合と同様な特徴のある優れた水素分離用金属細管を得ることができる。なお(1)において、管状基材には中空管状基材が好ましいが、中実管状基材でも使用可能である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の金属細管は、その管の外径が1mm以下で、管厚が80μm未満である。管の外径が0.9mm以下で、管厚が80μm以下である金属細管でも、高い水素透過能及び高い水素分離能を有する。さらに、管の外径が0.7mm以下で、管厚が50μm以下である金属細管でも、高い水素透過能及び高い水素分離能を有する。本発明では、管の外径が0.7mm以下で、管厚が30μm以下である金属細管でも、高い水素透過能及び高い水素分離能を有する。
金属細管の長さは特に制限されないのであり、本発明の金属細管の出発原料である中空糸あるいは中実糸の長さに依存することになる。本発明は、数cmから数m程度の金属細管とすることができる。
本発明が用いる管状基材は、外径が1mm以下の断面が円形や楕円形、多面体などの中空糸や中実糸、チューブなど管状基材が好適である。管状基材が多孔性基材であってもよく、また、焼失性材料あるいは溶出性材料で製造されたものが好適である。本発明が用いる管状基材の形状は直管状(線状)のほかに、例えば多面体状やコイル状等の管状物であってもよい。この管状基材の形状によって、本発明の金属細管の形状が左右されることになる。
前記焼失性材料としては、管状物を形成することが出来、しかも管状物を加熱処理すると焼失され、除去される材料であれば特に制限されないのであり、例えば、有機高分子系材料が挙げられるがそれに限定されない。その有機高分子としては、具体的には、ポリ(ビニールアルコール)、ポリ(ビニールブチラール)、ポリ(ビニールピロリドン) 、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(2,6−ジメチル−4−フェニレンオキサイド) 、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(エーテルスルホン) 、ポリオレフィン、およびポリスチレン からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら高分子に限定されない。
前記溶出性材料としては、管状物を形成することが出来、しかも管状物を溶出処理して溶出除去される材料であれば特に制限されないのであり、例えば、溶出性無機セラミックス、溶出性無機高分子あるいは溶出性有機高分子が挙げられるがそれに限定されない。
その溶出性無機セラミックス、溶出性無機高分子あるいは溶出性有機高分子としては、具体的には、シリカ、多成分ガラス、ポリカルボシラン、ポリメチルシラン、ポリ(ビニールアルコール)、ポリ(ビニールブチラール)、ポリ(ビニールピロリドン) 、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(2,6−ジメチル−4−フェニレンオキサイド) 、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(エーテルスルホン) 、ポリオレフィン、およびポリスチレン からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら無機セラミックス、無機高分子あるいは有機高分子に限定されない。
これら管状基材を前処理せずに水素分離複合体の製造に用いてもよいが、洗浄処理、乾燥処理など前処理を施してもよい。具体的には、酸、塩基、各種アルコール、水などから選ばれる一種あるいは複数で基材を洗浄処理し、次いで乾燥処理する前処理が挙げられる。洗浄処理では、1−60分間程度超音波処理するなどの物理的処理を併用することもできる。より詳細には、希薄酸、希薄塩基、エタノール、蒸留水で順番に超音波洗浄し、50−200℃、オーブンで30分−3時間程度乾燥させる前処理を例示することができる。
上記管状基材に、水素分離機能を有する金属層を構成する金属の金属核前駆体を含有する層を設けることが、本発明の数ある特徴の中の一つである。すなわち、前記金属核前駆体における金属とは、水素分離層を構成する金属を意味する。また、前記金属核前駆体は、水素分離層を構成する金属を含有する化合物を言い、加熱処理により金属核が残ることが出来る化合物を意味する。
例えば、金属核前駆体および焼失性材料を含有する溶液あるいは分散液を調製し、その溶液あるいは分散液を上記基材に塗布し、あるいは含侵させ、ついで加熱処理して、上記基材に、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性材料からなる層を設けることができる。前記焼失性材料の具体例は前記例示されたものの中から選択すればよい。
また、金属核前駆体および焼失性材料を含有する溶液あるいは分散液の代わりに、金属核前駆体および溶出性材料を含有する溶液あるいは分散液を用いてもよい。その溶出性材料の具体例は前記例示されたものの中から選択すればよい。
上記金属核前駆体での金属は、すでに水素分離能を持つ金属として知られている金属であり、例えば、パラジウム、ニッケル、白金、銅、銀、金、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、バナジウム、ニオビウム、タンタル、ハフニウム、チタン、およびジルコニウムからなる群から選ばれる一種または二種以上である。
金属核前駆体としては、たとえばパラジウムの化合物としては、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、パラジウム塩化アンモニウム、臭化パラジウム、塩化パラジウム、パラジウム硝酸ジアミン、硝酸パラジウム、水酸化パラジウム、パラジウムエチレンジアミン硝酸塩、硝酸パラジウム水和物、パラジウムオキサレート、硫酸パラジウム水和物、およびパラジウムテトラアミン二硝酸塩からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
ニッケルの化合物としては、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、ニッケル塩化アンモニウム、臭化ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、ニッケル硝酸ジアミン、硝酸ニッケル、ニッケルエチレンジアミン硝酸塩、硝酸ニッケル水和物、シュウ酸ニッケル、水酸化ニッケル、硫酸ニッケル水和物、およびニッケルテトラアミン二硝酸塩からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
白金の化合物としては、白金アセチルアセトナートまたは塩化白金のいずれか一つ、あるいは両方が好ましいが、これら化合物に限定されない。
銅の化合物としては、酢酸銅、酢酸銅水和物、銅アセチルアセトナート、臭化銅、炭酸銅、塩化銅、塩化銅水和物、クエン酸銅、酪酸銅、塩化2アンモニウム銅水和物、燐酸銅水和物、フッ化銅、グルコン酸銅、ヨウ化銅、ナフテン酸銅、硝酸銅水和物、オレイン酸銅、フタル酸銅、硫酸銅、テレフタル酸銅水和物、およびチオシアン酸銅からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
銀の化合物としては、酢酸銀、銀アセチルアセトナート、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、硝酸銀、亜硝酸銀、硫酸銀、およびチオシアン酸銀からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
バナジウムの化合物としては、無水バナジン酸、塩化バナジウム、ナフテン酸バナジウム、酸化硫酸バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、酸化バナジウムアセチルアセトナート、およびシュウ酸バナジル水和物からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
有機溶媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア、メタノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、四塩化炭素、プロパノール、ブタノール、クロロホルム、エタノール、アセトン、ベンゼン、酢酸、およびトルエンからなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら溶媒に限定されない。
上記金属核前駆体を、有機溶媒中に溶解し、あるいは分散させた後、上記焼失性材料又は上記溶出性材料を加え、攪拌混合し、溶解あるいは分散することによって、均一な金属核前駆体含有焼失性材料の溶液あるいは分散液が調製される。前記溶液あるいは分散液を、金属核前駆体含有焼失性材料の活性化用溶液あるいは分散液ということもできる。なお、前記焼失性材料として、焼失性高分子の前駆体または出発原料を用いることもできる。
上記溶液あるいは分散液の組成は、用いる金属核前駆体および焼失性材料又は溶出性材料等の種類やその量により変動するので一概に規定できないが、好ましい溶液組成としては、0.001-5wt%の金属核前駆体、0.5-20wt%の焼失性材料又は溶出性材料、75-99wt%の有機溶媒から構成されるのであるが、本発明ではこの組成範囲に限定されない。ここで、焼失性材料が焼失性高分子の前駆体あるいは出発原料でもよい。
上記溶液としては、とくに粘度が1〜20センチポアズの溶液を用いると、表面が滑らかで均一厚さの塗布層を剥離することなく得ることができるので好ましい。さらに2〜10センチポアズの溶液を用いることが好ましい。
かくして調製された金属核前駆体含有溶液あるいは分散液を上記管状基材表面に塗布する方法はとくに制限されない。例えば、上記管状基材に金属核前駆体含有溶液を、浸透ブラッシング、スピンコーティング、減圧ディップコーティング、減圧含浸、減圧ブラッシング、減圧スピンコーティング、超音波ディップコーティング、超音波−減圧ディップコーティング、超音波含浸、超音波−減圧含浸のうちから選ばれる方法によって塗布することができる。とくに、洗浄済み管状基材に上記方法でパラジウム塩含有溶液を1−10回程度、好ましくは1−数回程度、塗布することが好ましい。なお、1回の塗布・含侵でもよい。
上記記載の塗布・含侵法は公知の方法であり、それらの方法を実際に適用するときには、とくに制限されない。具体的には、たとえば、管状基材を上記溶液に1-600秒間ディップした後、定速(0.1〜10cm/秒)で引き上げることが望ましい。
引き続いて、その管状基材を加熱処理し、管状基材表面に金属核前駆体含層が形成される。加熱処理も管状基材表面に金属核前駆体含層が形成される限り、とくに限定されない。
金属核前駆体含有層の形成後、パラジウム無電解メッキ法など各種の公知の方法により金属からなる水素分離層を構成する金属の層を形成してもよいが、その前に、焼失性材料と金属核前駆体含有層が形成された管状基材に熱処理を施すことが有利である。この熱処理により、金属核前駆体に由来する金属がその後の核成長が容易な金属核に変換すると推測される。熱処理の具体的条件の一例を挙げると、その管状基材を、0.1-10時間アルゴン、ヘリウム、空気、水蒸気、静止空気などの雰囲気下において、100-600℃にて加熱する条件がある。
本発明では、熱処理した後にさらに還元処理を施すことが好ましい。しかし、前記熱処理を施さずに前記還元処理を施しても有利な結果が得られる。前記還元処理は金属核前駆体に由来する金属核を還元する条件であれば、その手段や条件は制限されない。具体的には、水蒸気流中での還元処理が好ましい。
かくして調製できた均一に分散された金属核前駆体を含む管状基材、あるいは実質的に金属核前駆体からなる層が形成された管状基材に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層する。金属核前駆体としては、上記説明のとおりであるが、とくにパラジウムの化合物が好ましい。
前記管状基材に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層する方法は、所期の目的を達成できる範囲内である限りとくに制限されない。具体的には、CVD法やスパッタリング法、電解メッキ法、無電解メッキ法等によって積層することができる。それらの方法の中では無電解メッキ法が好ましい。
これらの方法を用いて水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層する方法は公知の方法を適用すればよく、とくに制限されない。
実質的に金属核前駆体化合物を含有する層は、均一な厚さの層であり、しかも操作性も改善された。また、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層も均一な厚さの層である。
以下、好ましい無電解メッキ法について説明する。以下の説明は、水素分離機能を有する金属あるいは合金として、パラジウム又はパラジウム合金を選び、説明する。なお、本発明ではパラジウムになんら限定されないのであり、無電解メッキ法でメッキすることができる金属であれば特に制限されない。合金についても同様であり、パラジウム合金以外のほかの金属の合金も無電解メッキ法でメッキすることができる合金であれば特に制限されない。
該管状基材表面のパラジウム含有高分子薄膜層上にパラジウム又はパラジウム合金の薄膜層を形成するために採用する前無電解メッキ方法については、特に制限されないのであり、この分野で使用される方法を適宜利用することができる。使用する管状基材の種類、形状、希望する性能等に応じて適宜選択すればよい。また、無電解メッキ法に他の方法、たとえば電気メッキ法と組み合わせて適用してもよい。
具体的なメッキ条件についても、特に制限されないのであり、目的とするパラジウム又はパラジウム合金の薄膜層を形成可能な公知のメッキ浴を使用して、公知の条件に従ってメッキを行えばよい。非導電性の管状基材を用いる場合には、例えば、公知の方法に従って無電解メッキ用の触媒を付与した後、無電解メッキ法によってパラジウム又はパラジウム合金の薄膜層を形成すればよい。
形成されるメッキ膜層の密着性を向上させるよう、メッキ膜層を形成する際に、メッキ液を多孔質体の片方の面から細孔に圧入する方法等を採用することができる。
具体的には、メッキ温度20-80℃、メッキ時間0.05-3時間の条件下において、pHが3-12の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、(株)奥野工業)を用いる方法を例示できる。
メッキ膜層は、管状基材の全面に形成してもよいが、水素分離体として使用する際に導入する原料としての水素含有ガスと接触する面に形成させてもよい。中空管状の管状基材を用いる場合には、例えば、外側の面にメッキ膜層を形成させてもよい。
前無電解メッキ法によって形成される水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層の厚さについては、10〜80μm程度であることが好ましく、10〜30μm程度であることがより好ましい。該薄膜の膜厚が薄すぎると水素の選択分離性能が不十分となり、自立性の点でも不安が残る。一方、膜厚が厚すぎると水素透過性が低くそれだけ膜面積が必要になり、原料コストなどの面で経済性が失われるので好ましくない。
分離複合体でのパラジウム合金としては、パラジウムと、銀、金、銅、白金、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる一種または二種以上の貴金属との合金が好ましい。この様なパラジウム合金中におけるパラジウムの割合は、約55重量%以上であることが好ましい。
前記均一に分散された金属核前駆体を含有する焼失性管状基材、その表面に水素分離層を構成する金属層を形成させた管状物を加熱処理することも、本発明特徴のひとつである。また、前記焼失性材料からなる管状基材、金属核前駆体を含有する焼失性材料からなる層、その層表面に水素分離層を構成する金属層を形成させた管状の積層体を、加熱処理することも、本発明特徴のひとつである。この加熱処理により、前記積層体から焼失性材料は焼失し、除去され、水素分離複合体が製造できる。
さらに、前記均一に分散された金属核前駆体を含有する溶出性管状基材、その表面に水素分離層を構成する金属層を形成させた管状物を溶出処理することも、本発明特徴のひとつである。また、前記溶出性材料からなる管状基材、金属核前駆体を含有する溶出性材料からなる層、その層表面に水素分離層を構成する金属層を形成させた管状の積層体を、溶出処理することも、本発明特徴のひとつである。この溶出処理により、前記積層体から溶出性材料は溶出し、除去され、水素分離複合体が製造できる。
この水素分離複合体の形状は、用いる管状基材、前無電解メッキ法により形成されたメッキ膜層の厚さなどにより変動するが、パラジウムあるいはパラジウム合金を含む層はピンホールが存在するという構造的な欠陥がなく、優れた水素分離機能を有する。
上記加熱処理は、積層体中の焼失性材料が焼失されるかぎり、特に制限されない。具体的には、用いる管状基材、パラジウム塩、焼失させる焼失性材料などにより変動するので一概に規定できないが、具体的な加熱処理条件として、上記積層体を空気気流中、あるいは静止空気中、純酸素、酸素窒素混合ガス共存下、0.2〜20℃/分で300〜1100℃まで昇温し、その温度で0.1〜20時間保持することによって熱処理を施す条件を示すことが出来る。なお、前記温度で所定時間保持後、0.2〜20℃/分で室温まで降温することが好ましい。
上記溶出処理は、積層体中の溶出性材料が溶出されるかぎり、特に制限されない。具体的には、積層体を溶出溶媒に浸漬することが好ましい。前記溶出溶媒は、積層体中の溶出性材料が溶出されることができる限り、特に制限されない。溶出溶媒は積層体中に存在し、溶出させようとする溶出性材料によって変動するが、具体的には、NaOH水溶液、KOH水溶液、アンモニア水、などのアルカリ、硫酸、塩酸、HF等の酸などが挙げられる。
上記溶出処理条件は、用いる管状基材、パラジウム塩、溶出させる可溶出性無機セラミックス、可溶出性無機高分子あるいは可溶出性有機高分子などにより変動するので一概に規定できないが、具体的な溶出処理条件として、上記積層体を、溶出溶媒中に1〜120時間程度浸漬することが挙げられる。そのときの浸漬温度は25−100℃が好適である。また、溶出圧力は通常は常圧であるが、1気圧以上の加圧条件下で処理することも出来る。
このようにして得た水素分離金属細管は、優れた水素分離能を示す。例えば、測定温度600℃、差圧100kPaにおける水素透過流束が0.02 mol/(m2 sec)以上であるが、0.1mol/(m2 sec)以上の水素透過速度を示す金属細管をも得られる。また、水素のヘリウムに対する分離係数αが1000以上であるが、5000以上を示す金属細管をも得られる。ここでいう水素分離係数αは、次式に基づいて得た値、すなわち透過流束の比のことである。
α=PH2/PHe
式中、PH2は水素の透過流束を示し、PHeはヘリウムの透過流束を示す。なお、最も分子サイズの小さなヘリウムの透過流束は、通常、窒素の数倍程度大きいため、水素の窒素に対する分離係数は、ここに示した水素のヘリウムに対する分離係数の数倍程度になる。前記水素の透過流束は金属細管の一方の面から、所定温度、所定差圧の水素を供給し、他方の面から透過してくる水素の透過流束を測定する。続いて、水素を完全に系内から排除した後に水素以外のガス例えば、上述のヘリウムや窒素を導入し、同様の条件下で測定する。
このようにして得た水素分離用金属細管に再度水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を形成させ、水素分離機能などの特性が優れた水素分離用金属細管を得ることができる。
ここで、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を形成する方法は、上記のとおり公知の方法を利用できるのであるが、その中でも無電解メッキ法が好ましい。無電解メッキ処理を施す条件は前記と同様の方法を適用できる。
水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層、とくに無電解メッキ法によって形成されるパラジウム又はパラジウム合金の管厚については、10〜80μm程度であることが好ましく、10〜50μm程度であることがより好ましく、10〜30μm程度であることがさらに好ましい。
具体的な条件は、メッキ温度20-80℃、メッキ時間0.1-20時間の条件下において、pHが3-12の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、(株)奥野工業)にディップし、次いで、得られたパラジウム細管を50-300℃で0.5-20時間、静止空気中で乾燥する条件を例示できる。
本発明では、水素分離機能を有する金属の合金として、上記パラジウム合金以外に、水素分離能のある金属の合金を用いてもよい。
このようにして製造された水素分離用金属細管の水素透過特性を、測定温度200−900℃、より好ましくは300−600℃、差圧0−1000kPa、より好ましくは0−300KPaの条件下で測定した。
本発明の水素分離用金属細管は広い範囲にわたって応用が可能であり、水素混合ガスからの水素分離、水素製造反応、シフト反応、水素化反応、脱水素化反応、燃料電池への応用などに適している。より具体的には、改質ガスの精製用に応用でき、純度の高い水素燃料を家庭用燃料として供給できるし、あるいは車載用燃料電池への応用が可能である。また、水素透過めく反応器を用いた、水素化反応や脱水素化反応への応用が可能である。さらには、水素に関連した種々の合成化学、石油精製、金属精錬等への応用も可能である。
本発明により、外径が極めて細く、管厚も極めて薄い水素分離用金属細管が得られる。さらに、高い水素透過性及び高い水素分離性を有する水素分離能を有する外径が極めて細く、管厚も薄い金属細管が得られる。しかも、機械的強度や長期安定性に優れた水素分離用金属細管が得られる。そのうえ、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層も均一となり、しかも短時間で形成されるので、コストも低減されるという特徴もある。
この水素分離体は、水素混合ガスからの水素分離、水素製造反応、シフト反応、水素化反応、脱水素化反応、燃料電池への応用に適している。
従来から行なわれている水素分離体及びその製造方法と比較すると、本発明の水素分離用金属細管及びその製造方法は極めて優れていることがわかる。すなわち、従来から行なわれている電解メッキ法により水素分離体を製造する方法では、管状基材を、水素分離機能を有する金属を含む各溶液に浸漬後、熱処理する工程を10回程度繰り返して、水素分離機能を有する金属メッキの下地となる金属核を基材表面に形成させていた。これは、メッキ膜である水素分離層の厚膜化を招き、必然的に水素透過能が小さくなる。さらに、金属核の分布が不均一となりがちであり、水素分離層の厚さは不均一であり、欠陥の出来やすい恐れもある。また、水素分離層の形成に時間がかかり、コストは高い。それらの点を回避するために、前記熱処理する工程を数回程度に減少すると、金属からなる水素分離層の下地となる金属核の量は少なく、しかも分散が不均一である。
ところが、本発明ではそれらの問題点が解消され、均一な厚みを有する水素分離用金属細管が得られる。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
参考例1
パラジウム含有高分子溶液の調製
酢酸パラジウム、ポリ(2,6−ジメチル−4−フェニレンオキサイド)(PPO)及びクロロホルムのそれぞれを所定量秤量し、一部のクロロホルム中に酢酸パラジウム及びPPOを加え、攪拌・混合し、次いで残部のクロロホルムを加え、0.5wt%の酢酸パラジウム、15wt%のPPO、74.5wt%のクロロホルムから構成されるパラジウム含有高分子溶液を調製した。
(実施例1a)水素分離用金属細管の製造原料の調製
外径0.6mm、膜厚80μmのポリイミド中空糸を蒸留水で洗浄・乾燥後、この中空糸を参考例1の活性化用溶液に5秒間ディップした後、急速に引き上げた。その表面に薄膜が付着した中空糸を、室温下2時間、静止空気中で乾燥させた後、昇温速度毎分5℃で300℃まで昇温し、その温度で0.5時間保持することによって、熱安定化処理を施した。その処理を施した中空糸を、メッキ温度60℃、メッキ時間6時間の条件下において、pHが約7の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、(株)奥野工業)を用いて前無電解メッキ処理し、水素分離用金属細管の製造原料を得た。
(実施例1b)金属細管の調製
実施例1aで得た前無電解メッキ処理を施された水素分離用金属細管の製造原料を、水素透過測定用の治具にガラスからなるシール材とともに取り付け、静止空気中において、昇温速度毎分5℃で800℃まで昇温し、その温度で0.5時間保持することによって熱焼失処理を施した。次いで、降温速度毎分5℃で室温まで降温し、金属細管を得た。
(実施例1c)水素分離用金属細管の調製
実施例1bで得た金属細管を、再度、メッキ温度60℃において、pHが約7の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、(株)奥野工業)にディップし、10分メッキ処理した後、引き上げ、金属細管を得た。得られたパラジウム金属細管を80℃で3時間、静止空気中で乾燥させ、水素分離用金属細管(パラジウム金属細管)を得た。
パラジウム金属細管の形態を図1、図2(断面SEM写真)で示す。 明らかに、外径約0.7mm、約23μmの均質厚みのピンホールの無いパラジウム自立細管が調製されたことがわかる。なお、この図1、及び図2の断面SEM写真を取るためには、作製した金属細管をカッターで切り取り標本を作製する。その際、金属細管に応力が作用し、金属細管の実際の形を変形させることがある(例えば、図1の管断面部分、図2の管厚表面の左側の部分など)(以下、同様)。
(試験例1)水素分離用金属細管の水素選択透過特性
パラジウム金属細管の水素選択透過特性を測定温度600℃、水素圧力差100kPaで評価した。その結果、例えば、測定温度600℃、水素圧力差100kPaにおいて、水素透過流束は0.108mol/(m2 s)で、水素以外のガス、例えば、ヘリウムは測定限界以下であり、水素のヘリウムに対する分離係数αは少なくとも5000以上で、非常に高い水素選択透過性を有していることがわかった。
(実施例2a)水素分離用金属細管の製造原料の調製
外径0.4mm、膜厚80μmのポリイミド中空糸を外径5mmのチューブ上に巻き付けた他は実施例1aと同様な操作を行い、コイル状水素分離用金属細管の製造原料を得た。
(実施例2b)コイル状金属細管の調製
実施例2aで得た前無電解メッキ処理を施された水素分離用コイル状金属細管の製造原料を、水素透過測定用の治具にガラスからなるシール材とともに取り付け、静止空気中において、昇温速度毎分5℃で800℃まで昇温し、その温度で0.5時間保持することによって熱焼失処理を施した。次いで、降温速度毎分5℃で室温まで降温し、コイル状金属細管を得た。
(実施例2c)水素分離用コイル状金属細管の調製
実施例2bで得た金属細管を、再度、メッキ温度60℃において、pHが約7の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、(株)奥野工業)にディップし、10分メッキ処理した後、引き上げ、金属細管を得た。得られたパラジウム金属細管を80℃で3時間、静止空気中で乾燥させ、水素分離用コイル状金属細管(パラジウム金属細管)を得た。
コイル状パラジウム金属細管の形態を図3(外観写真)と図4、図5(断面SEM写真)で示す。 明らかに、外径約0.5mm、約26μmの均質厚みのピンホールの無いコイル状パラジウム自立細管が調製されたことがわかる。
(試験例2)水素分離用コイル状金属細管の水素選択透過特性
コイル状パラジウム金属細管の水素選択透過特性を測定温度400−600℃、水素圧力差0−300kPaで評価した。その結果、例えば、測定温度600℃、水素圧力差100kPaにおいて、水素透過流束は0.095mol/(m2 s)で、水素以外のガス、例えば、ヘリウムは測定限界以下であり、水素のヘリウムに対する分離係数αは少なくとも5000以上で、非常に高い水素選択透過性を有していることがわかった。
(比較例1a)水素分離用金属細管の製造原料の調製
外径1.8mmの熱収縮性テフロンチューブを基材として用いて、実施例1aと同様な操作を行ったに、昇温速度毎分5℃で350℃まで昇温し、その温度で0.5時間保持することによってテフロンチューブ基材を熱収縮させ、引き抜くことによって水素分離用金属細管の製造原料を得た。
(比較例1b)金属細管の調製
比較例1aで得た前無電解メッキ処理を施された水素分離用金属細管の製造原料を、水素透過測定用の治具にガラスからなるシール材とともに取り付け、静止空気中において、昇温速度毎分5℃で800℃まで昇温し、その温度で0.5時間保持することによって熱処理を施した。次いで、降温速度毎分5℃で室温まで降温し、金属細管を得た。
(比較例1c)水素分離用金属細管の調製
比較例1bで得た金属細管を、再度、メッキ温度60℃において、pHが約7の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、(株)奥野工業)にディップし、10分メッキ処理した後、引き上げ、金属細管を得た。得られたパラジウム金属細管を80℃で3時間、静止空気中で乾燥させ、水素分離用金属細管(パラジウム金属細管)を得た。その管は外径約1.8mm、約37μm厚みであり、断面構造の疎なパラジウム自立細管であった
(試験例3)水素分離用金属細管の水素選択透過特性
パラジウム金属細管の水素選択透過特性を測定温度600℃、水素圧力差100kPaで評価した。その結果、水素透過流束は0.032mol/(m2 s)であったが、水素のヘリウムに対する分離係数αは91と、水素選択透過性は低いことがわかった。なお、熱収縮性テフロンチューブを用いて同様な操作を行うことによって水素分離用金属細管を多数作製したが、いずれも、水素のヘリウムに対する分離係数αが100以下と水素選択透過性は低かった。
パラジウム金属細管の形態を図6(外観写真)と図7(断面SEM写真)で示す。 外径約1.8mm、約37μm厚みであり、断面構造内に多数の空洞が存在し、引き抜いた際のダメージと考えられる内表面構造の疎なパラジウム自立細管が調製されており、このために水素選択透過性を高めることが困難であったと考えられた。
本発明を次のように記載することができる。
(1)管の外径が1mm以下で、管厚が80μm未満であることを特徴とする金属細管。
(2)管の外径が1mm以下で、管厚が80μm未満であることを特徴とするパラジウム基金属細管。
(3)管の外径が0.7mm以下で、管厚が80μm未満であることを特徴とする水素分離用金属細管。
(4)均一に分散された金属核前駆体を含む焼失性管状基材表面に水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を焼失させて得ることを特徴とする上記(1)記載の金属細管。
(5)均一に分散された金属核前駆体を含む焼失性管状基材表面に水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を焼失させて得ることを特徴とする上記(2)記載のパラジウム基金属細管。
(6)均一に分散された金属核前駆体を含む焼失性管状基材表面に水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を焼失させて得ることを特徴とする上記(3)記載の水素分離用金属細管。
(7)均一に分散された金属核前駆体を含む溶出性管状基材表面に水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を溶出させて得ることを特徴とする上記(1)記載の金属細管。
(8)均一に分散された金属核前駆体を含む溶出性管状基材表面に水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を溶出させて得ることを特徴とする上記(2)記載のパラジウム基金属細管。
(9)均一に分散された金属核前駆体を含む溶出性管状基材表面に水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を溶出させて得ることを特徴とする上記(3)記載の水素分離用金属細管。
(10)金属核前駆体を含む層を表面に形成した焼失性管状基材表面に、水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を焼失させて得ることを特徴とする上記(1)記載の金属細管。
(11)金属核前駆体を含む層を表面に形成した焼失性管状基材表面に、水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を焼失させて得ることを特徴とする上記(2)記載のパラジウム基金属細管。
(12)金属核前駆体を含む層を表面に形成した焼失性管状基材表面に、水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を焼失させて得ることを特徴とする上記(3)記載の水素分離用金属細管。
(13)金属核前駆体を含む層を表面に形成した溶出性管状基材表面に、水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を溶出させて得ることを特徴とする上記(1)記載の金属細管。
(14)金属核前駆体を含む層を表面に形成した溶出性管状基材表面に、水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を溶出させて得ることを特徴とする上記(2)記載のパラジウム基金属細管。
(15)金属核前駆体を含む層を表面に形成した溶出性管状基材表面に、水素分離機能を有する金属層を形成させ、次いで管状基材を溶出させて得ることを特徴とする上記(3)記載の水素分離用金属細管。
本発明の水素分離用パラジウム金属細管の断面SEM写真(低倍率)を示す。 本発明の水素分離用パラジウム金属細管の断面SEM写真(高倍率)を示す。 本発明の水素分離用パラジウム金属細管(コイル状)の外観写真を示す。 本発明の水素分離用パラジウム金属細管(コイル状)の断面SEM写真(低倍率)を示す。 本発明の水素分離用パラジウム金属細管(コイル状)の断面SEM写真(高倍率)を示す。 比較例である熱収縮法による水素分離用パラジウム金属細管の外観写真を示す。 比較例である熱収縮法による水素分離用パラジウム金属細管の断面SEM写真(高倍率)を示す。

Claims (7)

  1. 水素分離機能を有する金属層を構成する金属の金属核前駆体を含む混合物から焼失性管状基材を形成する工程A、工程Aの基材表面に水素分離機能を有す金属層を形成させる工程B、及び工程Bの管状物から前記焼失性材料を焼失させる工程Cを少なくとも有することを特徴とする水素分離用金属細管の製造方法。
  2. 水素分離機能を有する金属層を構成する金属の金属核前駆体を含む混合物から溶出性管状基材を形成する工程A、工程Aの基材表面に水素分離機能を有す金属層を形成させる工程B、及び工程Bの管状物から前記溶出性材料を溶出せる工程Cを少なくとも有することを特徴とする水素分離用金属細管の製造方法。
  3. 焼失性管状基材表面に焼失性材料と水素分離機能を有する金属層を構成する金属の金属核前駆体を含む混合物の層を形成する工程D、工程Dの層の表面に水素分離機能を有する金属層を形成させて管状物を得る工程E、及び工程Eの管状物から前記管状基材及び焼失性材料を焼失させる工程Fを少なくとも有することを特徴とする水素分離用金属細管の製造方法。
  4. 溶出性管状基材表面に溶出性材料と水素分離機能を有する金属層を構成する金属の金属核前駆体を含む混合物の層を形成する工程D、工程Dの層の表面に水素分離機能を有する金属層を形成させて管状物を得る工程E、及び工程Eの管状物から前記管状基材及び溶出性材料を溶出させる工程Fを少なくとも有することを特徴とする水素分離用金属細管の製造方法。
  5. 金属核前駆体含有層の形成後、表面に水素分離機能を有する金属層を形成させる前に、金属核前駆体含有層が形成された管状基材に対し熱処理及び/又は還元処理を施すことを特徴とする請求項又はに記載の水素分離用金属細管の製造方法。
  6. 請求項のいずれか1項に記載の製造方法により製造された水素分離用金属細管であって、管の外径が1mm以下で、管厚が80μm未満であることを特徴とする水素分離用金属細管。
  7. 水素のヘリウムに対する分離係数αが1000以上であることを特徴とする請求項に記載の水素分離用金属細管。
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