JP4893992B2 - 水素分離複合体及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、多孔性基材と水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層との積層体から少なくとも構成される水素分離複合体及びその製造方法に関する。より詳しくは、高透過性、および極めて高い水素分離性を有し、ピンホールなどの欠陥が無く、前記金属あるいは合金からなる層の多孔性基材への浸透が実質的に無く、高水素透過性及び極めて高い水素透過分離能を有し、長期間に亘り安定性を保持できること特徴とする水素分離複合体およびその製造方法に関する。とくに、そのような特徴を有する水素分離薄膜およびその製造方法に関する。また、その複合体の製造のための積層体に関する。この水素分離複合体は実に多様の応用が可能であり、たとえば水素混合ガスからの水素分離、水素製造反応、シフト反応、水素化反応、脱水素化反応、燃料電池への応用に適している。
水素は軽量で豊富、環境に優しいことから、将来の主要なエネルギーと目されている。しかしながら、水や天然ガス、石炭、バイオマスなどの水素を含む資源から得られる水素には不純物が含まれるため、使用の前段階で分離・精製する必要がある。その分離・精製する方法として、深冷分離法や吸着法や分離膜による水素分離法など、幾多の技術が提案されている。
これらのなかで、分離膜による水素分離法は他の水素分離方法と比べて、より省エネルギーで、操作が簡便であり、しかも用いる機器の小型化が可能などの有利な点を有しているため、工業的に使用される可能性が大きい。とくに、パラジウムベースの複合金属膜は、高い水素透過率と優れた水素分離性を有するため、他の方法と比較すると、明らかに優位である。さらに、燃料電池や他の水素を消費するプロセスのために有用な純粋な水素を製造できることや、対象製品の収量を向上させるために水素化や脱水素化反応プロセスに使用できることなど、実に工業的価値が高い。
しかしながら、パラジウムは高価であるので、たとえばニッケル、銅あるいはバナジウムなど、より安価な金属であり、しかもパラジウムと同様の水素分離能を有する技術も盛んに研究されている。
これまで開発されてきたPd系膜は、その厚みが比較的大きいために、投入する原料に対して製造される水素の割合が低く、しかも付随する化学反応速度に要求される水素透過速度を達成するには至っておらず、大規模な産業応用の可能性を狭めている。したがって、薄いパラジウム層が多孔性基材上に形成されたパラジウムベースの複合薄膜は水素分離膜の分野における研究の焦点になっており、これまでに、下記のような技術情報が開示されている。
特許文献1(ガス分離用薄膜の製造技術)では、無電解メッキと電解メッキの組み合わせによって、11−33μmのパラジウム膜を多孔性のセラミック基材上に形成する方法を開示している。 しかし膜の厚さは大きく、基材中へのパラジウムの浸透は回避されていない。したがって、このパラジウム膜の水素選択性は良好であるが、水素透過速度は小さくなっている。
特許文献2(水素ガス分離膜)では、多孔性セラミクスや多孔質ガラス、多孔性陶器または金属製フィルタなどの無機多孔体を、シリカゲルやアルミナゲルあるいは、シリカ/アルミナゲルに浸積して、これらの細孔中にゲルを担持する方法が開示されている。シリカゲル等が担持されたこれら無機多孔体は、乾燥後、所望の温度で焼成された後、表面活性化過程と、これに次いで、無電解メッキや減圧蒸着法、イオンプレーティング法あるいは化学蒸着法によって、パラジウム膜が形成されている。しかしながら、このように微細孔の中間層を形成すると、水素透過抵抗が増大する可能性が高い。
特許文献3では、金属多孔基材の荒い表面を滑らかにするために、50μm厚のSiOやAlの中間層を形成し、次に2〜20μm厚のパラジウムあるいはパラジウム合金膜を製造する技術が開示されている。しかし、これら酸化物の中間層の存在によって、水素透過抵抗が増加する可能性がある。
特許文献4では、多孔質基体を処理することにより、多孔質基体の表面に付着する有機物等の不純物を除去した後に、多孔質基体にガス分離膜を被覆する技術が開示されている。ガス分離膜を被覆法としては、塩化パラジウムの塩酸水溶液と塩化錫の塩酸水溶液に基材を交互に打ち付け、熱処理して合金化した後に、無電解メッキを施す方法が開示されている。
特許文献5では、2.5-7 μm 厚さのパラジウム膜を、微細孔中間層なしで積層する技術が開示されている。薄膜にすることで製造コストは抑えられるが、多孔質基体の平均細孔径を水素分離膜の厚さに応じて最適化する操作が必要であり、多孔質基体に積層する分離膜の厚さが自由ではないという制限、および水素選択性が低下する傾向にあり、改善の余地が残されている。
特許文献6および特許文献7においては、多孔性基材上にパラジウム薄膜を形成するのに化学蒸着法が利用されている。この方法により確かにパラジウム薄膜が形成されるので有効であるといえるが、しかしながら、基材中の細孔への蒸着原料の過度な浸透と、その結果としての水素透過性の低下が不可避である。
特許文献8では、多孔質体表面にメッキ法によってパラジウム又はパラジウム合金の薄膜を形成し、次いで、該薄膜上に化学蒸着法でパラジウム化合物を蒸着することによって、パラジウム又はパラジウム合金製の薄膜を形成する技術が開示されている。また、多孔性基材の荒い表面を、粒子を含む水で満たすことによって改善し、この上にパラジウムメッキすることによって、パラジウム膜を形成する方法が開示されている。この方法は確かに薄膜の構造欠陥は解消されているといえるが、しかしながら、基材中へのパラジウムの過度な浸透は回避されているとはいえず、水素透過速度は低下傾向にあるといわざるをえない。そのうえ、基材表面での粒子残物の存在によって水素透過抵抗が増大する恐れが残る。
以上のように、既知の方法では、パラジウム薄膜の基となるパラジウム核を導入するための重要な工程が改良されておらず、ピンホール及び多孔性基材への浸透のない、高水素透過性及び高水素分離性を有する水素分離複合薄膜の製造方法が、未だ開発されていない状態である。
また、パラジウム以外の金属からなる水素分離膜に関する既知の方法でも、同様であり、パラジウム以外の金属からなる薄膜の基となる金属核を導入するための重要な工程がほとんどなされていないといえるのであり、ピンホール及び多孔性基材への浸透のない、高水素透過性及び高水素分離性を有する水素分離複合薄膜の製造方法が、未だ開発されていない状態である。
特開平1−4216号公報 特開平4−349926号公報 特開平5−285357号公報 特開平8−266876号公報 特開2000−317282号公報 特開2003−62438号公報 特開2003−135943号公報 特開2004−122006号公報
従って、本発明の課題は、これらの問題を解決する方法を提示することにある。すなわち、ピンホール及び多孔性基材への浸透のない、高水素透過性及び極めて高い水素分離性を有する水素分離複合体、およびその製造方法を提示することにあり、さらに長期間に亘り安定性を保持できる水素分離複合体、およびその製造方法を提示することにある。とくに、ピンホール及び多孔性基材への浸透のない、高水素透過性及び極めて高い水素分離性を有する水素分離複合薄膜、およびその製造方法を提示することにあり、さらに長期間に亘り安定性を保持できる水素分離複合薄膜、およびその製造方法を提示することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究し、その一環としてパラジウム薄膜の基となるパラジウム核を簡単な操作で導入する工程の開発に力を注ぐ最中、高分子中にパラジウム塩を共存させた層を多孔性基材表面に設けると、意外にも、その層の表面に無電解メッキ法でパラジウム層が容易かつ効率的に形成されると共に,その積層体を加熱処理し、高分子を焼失させると、高分子中に共存していたパラジウム塩が多孔質表面に残り、前記課題を解決することができるという知見を得た。本発明者らはその知見に基づきさらに研究を重ね、ついに本発明を完成させた。
すなわち、請求項1の発明は、多孔性基材の表面に、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層を形成する工程A、前記層の表面に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層する工程B、および前記積層体を加熱処理して易焼失性高分子を焼失させる工程Cから少なくともなることを特徴とする水素分離複合体の製造方法に関する。ここで、「金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物」(以下、金属の化合物ということがある)とは、「金属の化合物であって、その金属は水素分離層を構成する金属」を意味する。また、「金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層」とは、「金属の化合物および易焼失性高分子を必須成分として含有する層であって、所期の目的を達成できる範囲で他の成分が共存してもよい層」という意味である。
請求項2の発明は、多孔性基材の表面に、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層を形成する工程A、前記層の表面に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層する工程B、前記積層体を加熱処理して易焼失性高分子を焼失させる工程C、および前記加熱処理して得られた積層体の表面に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を形成する工程Dから少なくともなることを特徴とする水素分離複合体の製造方法に関する。
請求項3の発明は、請求項1および2の発明において、工程Aで得た層が形成された基材を熱処理する工程Eをさらに含むことを特徴とし、請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、工程Aが、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物、易焼失性高分子、および有機溶媒から構成される金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する溶液を多孔性基材に塗布・含侵することから実質的になることを特徴とする。ここで、「金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物、易焼失性高分子、および有機溶媒から構成される金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する溶液を多孔性基材に塗布・含侵する」とは、金属の化合物、易焼失性高分子、および有機溶媒から構成される金属の化合物を含有する溶液を多孔性基材に塗布すること、および、金属の化合物、易焼失性高分子、および有機溶媒から構成される金属の化合物を含有する溶液を多孔性基材に含侵することのどちらか一方、あるいは両方を意味する。
請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれかの発明において、工程Bが、工程Aでの層の表面に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる無電解メッキ層を積層する工程であることを特徴とする。
請求項6の発明は、多孔性基材K、基材Kの表面に配置され金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子からなる層L、層Lの表面に配置され水素分離機能を有する金属あるいはパラジウム合金からなる層Mから少なくともなることを特徴とし、水素分離複合体の製造のための積層体に関する。
請求項7の発明は、請求項6の発明において、層Mが、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる無電解メッキ層である発明である。請求項8の発明は、請求項6または7記載の積層体を加熱処理して得る水素分離複合体に関する。この請求項6または7記載の積層体の加熱により、積層体の内部に存在する易焼失性高分子は焼失する。
請求項9の発明は、請求項8の水素分離複合体の表面に、さらに水素分離機能を有する金属あるいは合金からなるNを形成したことを特徴とする水素分離複合体に関する。
請求項10の発明は、請求項9の発明において、層Nが、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる無電解メッキ層である発明である。
請求項11の発明は、請求項8〜10のいずれか記載の水素分離複合体において、層Mの厚みが0.5〜5μmであることを特徴とする。この発明では、水素分離複合体は水素分離複合膜ということができる。
請求項12の発明は、請求項6〜10のいずれか記載の水素分離複合体において、層Nの厚みが0.5〜10μmであることを特徴とする。この発明では、水素分離複合体は水素分離複合膜ということができる。すなわち、本発明の水素分離複合体は、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層の厚み、つまり層Mと層Nの厚みが1〜15μmであることを特徴とする。

請求項13の発明は、多孔性基材と水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層から少なくとも構成される積層体であって、しかも水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層の多孔性基材への浸透が実質的に無く、かつ前記多孔性基材と前記水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層との間に実質的に厚さ0.1〜1μmの空間層を保持することを特徴とする水素分離複合体に関する。ここで、「水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層の多孔性基材への浸透が実質的に無い」とは、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層の多孔性基材への浸透が全く無いか、あるいは僅かに観察されるが水素透過性や水素透過分離能には影響がほとんどないときを意味する。また、「前記多孔性基材と前記水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層との間に実質的に厚さ0.1〜1μmの空間層を保持する」とは、前記多孔性基材と前記水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層との間に空間層が保持されるが、あるいは僅かに一部だけ空間層を観察されにくい部分があるものの水素透過性、水素透過分離能、機械的安定性などの本発明の特徴には影響がほとんどないときを意味する。この空間層は実質的にバッファー層の役割を果たす。なお、この発明は、多孔性基材と水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層から少なくとも構成される積層体であって、しかも前記多孔性基材と前記水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層との間に実質的に空間層を保持することを特徴とする請求項6〜12のいずれか記載の水素分離複合体も含まれる。
本発明の水素分離複合体は、ピンホールなどの構造的欠陥が無く、しかも水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層の多孔性基材の細孔内への進入が実質的に無ないことが特徴のひとつであり、優れた水素透過性、極めて高い水素分離性、長期安定性を有することもひとつの特徴である。また、本発明の水素分離複合体は、薄膜であり、しかも、多孔性基材と水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層とが実質的にバッファー層の役割を果たす空間薄層を隔てて存在しているため、水素吸脱着や熱サイクルに伴う熱膨張・収縮が直接的に影響せず、機械的強度、長期安定性に優れている。さらに、空間層は例えば0,1〜1μm程度の厚さであり、表面積が大幅に向上し手居るという特徴もある。
さらに、本発明は、そのような水素分離複合体を調製する方法によって特徴付けられ、とくに、新規触媒技術を利用した多孔性基材の活性化過程と、金属薄膜層の形成過程に特徴付けられる。すなわち、(1)易焼失性高分子中に金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する層を多孔性基材に形成し、金属からなる水素分離層の下地となる金属核を基材表面に形成する点、(2)易焼失性高分子、金属の化合物、および溶媒から少なくとも構成される溶液を一回の被覆操作によって、多孔性基材表面に比較的多量の金属の化合物が均一に分散され、均一な厚みの層を形成させることができるので、金属からなる水素分離層の下地となる金属核の分散が均一で量も多く、そのうえ、水素分離膜の製造に必要な時間も短く、コストも低減化される点、(3)易焼失性高分子を含有する層の表面に、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を形成できるので、その層は薄く、欠陥の無い層となるので、水素透過能や水素分離能に優れる点、などで特徴付けられる。
従来から行なわれている水素分離体及びその製造方法と比較すると、本発明の水素分離複合体及びその製造方法は極めて優れていることがわかる。
すなわち、従来から行なわれている電解メッキ法により水素分離体を製造する方法では、多孔性基材を、水素分離機能を有する金属を含む各溶液に浸漬後、熱処理する工程を10回程度繰り返して、水素分離機能を有する金属メッキの下地となる金属核を基材表面に形成させていた。これは、メッキ膜である水素分離層の厚膜化を招き、必然的に水素透過能が小さくなる。さらに、金属核の分布が不均一となりがちであり、水素分離層の厚さは不均一であり、欠陥の出来やすい膜厚1μm以下の場所が混在する恐れもある。また、水素分離層の形成に時間がかかり、コストは高い。それらの点を回避するために、前記熱処理する工程を数回程度に減少すると、金属からなる水素分離層の下地となる金属核の量は少なく、しかも分散が不均一である。
さらに、従来から行なわれている製造方法で得られる水素分離体は、その基材と金属からなる水素分離層とが密着しているため、水素吸脱着や熱サイクルに伴う熱膨張・収縮が直接的に影響し、機械的強度、長期安定性に劣る。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の複合体を構成する多孔質基材は、この分野で使用される多孔質基材を採用すればよいのであり、とくに制限されない。例えば、平面及び曲面を包含する形状の基材、あるいは断面が円形や楕円形の中空糸やチューブなど管状の基材を採用することができる。
この基材は3次元状に連続した多数の微細な細孔を有するのであり、その細孔径ができるだけ均一に揃っていることが好ましい。多孔質基体の厚さは、使用環境において十分な機械強度を保持できればよく、とくに制限されない。例えば、50μm〜5mm程度の基材を使用することができる。多孔質基材の細孔は本発明の所期の目的を達成することができるのであればとくに制限されないのであり、たとえば0.001μm〜100μm程度の孔径を有する基材を使用できるが、0.05μm〜10μm程度の孔径を有する基材がより好ましい。また、基材の気孔率は、20〜60%であることが好ましい。また、用いる多孔質基材の内径は200μm〜20mm程度であることが好ましい。
これら基材は無機質からなることが好ましく、上記細孔内を通過する原料ガスと反応しない材質であることが有利である。具体的には、ステンレス、アルミナ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、炭素、炭化珪素、またはガラス等を例示できる。
これら基材を前処理せずに水素分離複合体の製造に用いてもよいが、洗浄処理、乾燥処理など前処理を施しておくことが有利である。具体的には、酸、塩基、各種アルコール、水などから選ばれる一種あるいは複数で基材を洗浄処理し、次いで乾燥処理する前処理が好ましい。洗浄処理では、1−60分間程度超音波処理するなどの物理的処理を併用するとさらに有利である。より詳細には、希薄酸、希薄塩基、エタノール、蒸留水で順番に超音波洗浄し、50−200℃、オーブンで30分−3時間程度乾燥させる前処理が好適である。
上記多孔性基材に、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層を設けることが、本発明の数ある特徴の中の一つである。例えば、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物および易焼失性高分子を含有する溶液あるいは分散液を調製し、その溶液あるいは分散液を上記基材に塗布し、あるいは含侵させ、ついで加熱処理して、上記多孔性基材に、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子からなる層を設けることができる。上記溶液あるいは分散液の組成は、用いる金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物および易焼失性高分子の種類により変動するので一概に規定できないが、好ましい溶液組成としては、0.001-5wt%の金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物、0.5〜20wt%の易焼失性高分子、75〜99wt%の有機溶媒から構成されるのであるが、本発明ではこの組成範囲に限定されない。
上記金属からなる水素分離層を構成する金属は、すでに水素分離能を持つ金属として知られている金属であり、例えば、パラジウム、ニッケル、白金、銅、銀、バナジウム、金、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、ニオビウム、タンタル、ハフニウム、チタン、およびジルコニウムからなる群から選ばれる一種または二種以上である。
金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物としては、たとえばパラジウムの化合物としては、酢酸パラジウム、パラジウムアセチルアセトナート、パラジウム塩化アンモニウム、臭化パラジウム、塩化パラジウム、パラジウム硝酸ジアミン、硝酸パラジウム、水酸化パラジウム、パラジウムエチレンジアミン硝酸塩、硝酸パラジウム水和物、パラジウムオキサレート、硫酸パラジウム水和物、およびパラジウムテトラアミン二硝酸塩からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
ニッケルの化合物としては、酢酸ニッケル、ニッケルアセチルアセトナート、ニッケル塩化アンモニウム、臭化ニッケル、炭酸ニッケル、塩化ニッケル、ニッケル硝酸ジアミン、硝酸ニッケル、ニッケルエチレンジアミン硝酸塩、硝酸ニッケル水和物、シュウ酸ニッケル、水酸化ニッケル、硫酸ニッケル水和物、およびニッケルテトラアミン二硝酸塩からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
白金の化合物としては、白金アセチルアセトナート、塩化白金、ジニトロアンミン白金、テトラニトロ白金酸カリウムからなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
銅の化合物としては、酢酸銅、酢酸銅水和物、銅アセチルアセトナート、臭化銅、炭酸銅、塩化銅、塩化銅水和物、クエン酸銅、酪酸銅、塩化2アンモニウム銅水和物、燐酸銅水和物、フッ化銅、グルコン酸銅、ヨウ化銅、ナフテン酸銅、硝酸銅水和物、オレイン酸銅、フタル酸銅、硫酸銅、テレフタル酸銅水和物、およびチオシアン酸銅からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
銀の化合物としては、酢酸銀、銀アセチルアセトナート、臭化銀、炭酸銀、塩化銀、硝酸銀、亜硝酸銀、硫酸銀、およびチオシアン酸銀からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
バナジウムの化合物としては、無水バナジン酸、塩化バナジウム、ナフテン酸バナジウム、酸化硫酸バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、酸化バナジウムアセチルアセトナート、およびシュウ酸バナジル水和物からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
金の化合物としては、シアン化カリウム金、シアン化金(1)ナトリウム、シアン化金(I)、ジシアノ金(I)酸カリウム、ジシアノ金(I)酸ナトリウム、テトラクロロ金(3)酸カリウム、テトラクロロ金(3)酸カリウム水和物、テトラクロロ金(3)酸四水和物[塩化金(3)酸;塩化金酸]、テトラクロロ金(III)酸ナトリウム二水和物、テトラクロロ金(III)酸三水和物、テトラクロロ白金(2)酸カリウム、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、ビス(ベンゾニトリル)白金(II)クロリド、ヘキサクロロ白金(4)酸カリウム、ヘキサクロロ白金(4)酸ナトリウム 、ヘキサクロロ白金(4)酸六水和物[塩化白金(IV)酸六水和物] 、ヘキサクロロ白金(4)酸六水和物[塩化白金(IV)酸六水和物] 、キサクロロ白金(IV)酸アンモニウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物、ヘキサシアノ白金(IV)酸カリウム、塩化ナトリウム金(3)二水和物、塩化金(3)ナトリウム、塩化金(3)酸四水和物、塩化金酸n水和物、塩化白金(2)[塩化第一白金]からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
コバルトの化合物としては、2-エチルヘキサン酸コバルト(2)、アミド硫酸コバルト(II)四水和物、エチレンジアミンテトラサクサンジナトリウムコバルト 、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムコバルト(2) 、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムコバルト塩四水和物 、オレイン酸コバルト、ギ酸コバルト(2)二水和物、クエン酸コバルト(II)、コバルト(2)アセチルアセトナート、コバルト(2)アセチルアセトナート二水和物、シアン化コバルト(3)カリウム、シクロヘキサン酪酸コバルト、シュウ酸コバルト(II)二水和物、ステアリン酸コバルト、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(3) 、ナフテンサンコバルト、リン酸コバルト(2) 、亜硝酸コバルト(3)ナトリウムからなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
ロジウムの化合物としては、(アセチルアセトナト)(η-シクロオクタ-1,5-ジエン)ロジウム(I)、(アセチルアセトナト)ジカルボニルロジウム(I) 、カルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)ヒドリド、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I) 、テトラキス(N-フタロイル-(S)-フェニルアラニナト)ジロジウム,サクエチフカブツ、トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムクロリド、ノルボルナジエンロジウムクロリド 、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ジクロロジロジウム、塩化ロジウム(III)(無水) 、硝酸ロジウム(3)からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら化合物に限定されない。
有機溶媒としては、メタノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、四塩化炭素、プロパノール、ブタノール、クロロホルム、エタノール、アセトン、ベンゼン、酢酸、およびトルエンからなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら溶媒に限定されない。
本発明でいう易焼失性高分子は、多孔質基材表面に皮膜が形成されうること、後の加熱処理により焼失される高分子であると共に共存する上記水素分離層を構成する金属の化合物を分散させることができる機能を有する高分子であれば、とくに制限されない。その易焼失性高分子としては、有機性高分子が好適であり、具体的には、ポリ(ビニールアルコール)、ポリ(ビニールブチラール)、ポリ(ビニールピロリドン) 、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(2,6−ジメチル−4−フェニレンオキサイド) 、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(エーテルスルホン) 、ポリオレフィン、およびポリスチレン からなる群から選ばれた一種または二種以上を使用することが好ましいが、これら高分子に限定されない。
上記金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を、20-100℃の有機溶媒中に溶解し、あるいは分散させた後、上記易焼失性高分子を、この金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物溶液に溶解し、あるいは分散することによって、均一な金属の化合物含有易焼失性高分子の活性化用溶液あるいは分散液が調製される。
かくして調製された金属の化合物含有易焼失性高分子溶液あるいは分散液を上記多孔性基材に塗布する方法はとくに制限されない。例えば、上記多孔性基材に該金属の化合物含有易焼失性高分子溶液を、浸透ブラッシング、スピンコーティング、減圧ディップコーティング、減圧含浸、減圧ブラッシング、減圧スピンコーティング、超音波ディップコーティング、超音波−減圧ディップコーティング、超音波含浸、超音波−減圧含浸のうちから選ばれる方法によって塗布することができる。とくに、洗浄済み多孔性基材に上記方法でパラジウム塩含有易焼失性高分子溶液を1−10回程度、好ましくは1−数回程度、塗布することが好ましい。なお、1回の塗布・含侵でもよい。
上記記載の塗布・含侵法は公知の方法であり、それらの方法を実際に適用するときには、とくに制限されない。具体的には、たとえば、多孔性基材を上記溶液に1-600秒間ディップした後、急速に引き上げることが望ましい。
引き続いて、その多孔性基材を加熱処理し、多孔性基材表面に金属の化合物含有高分子層が形成される。加熱処理も多孔性基材表面に金属の化合物含有高分子層が形成される限り、とくに限定されない。
これらの操作により、金属の化合物含有高分子薄膜の多孔性基材表面への積層、金属の化合物含有高分子の細孔への適度な進入、あるいは、この両者によって多孔性基材表面に金属の化合物含有高分子層が形成されることになる。
金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層の形成後、パラジウム無電解メッキ法など各種の公知の方法により金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層を形成してもよいが、その前に、金属の化合物含有高分子薄膜層が形成された多孔性基材を熱処理を施すことが有利である。この熱処理により、金属の化合物がその後の核成長が容易な金属核に変換すると推測される。熱処理の具体的条件の一例を挙げると、その多孔性基材を、0.1〜10時間アルゴン、ヘリウム、空気、水蒸気、静止空気などの雰囲気下において、100〜600℃にて加熱する条件がある。
この熱処理を行うときには、前記段落番号0023で説明した加熱処理を行なわなくともよい。
本発明では、熱処理した後にさらに還元処理を施すことが好ましい。しかし、前記熱処理を施さずに前記還元処理を施しても有利な結果が得られる。前記還元処理は金属の化合物に由来する金属核を還元する条件であれば、その手段や条件は制限されない。具体的には、水素気流中での還元処理が好ましい。
かくして調製できた金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層が形成された多孔性基材の積層体に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層する。金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層としては、パラジウム塩を含有する易焼失性高分子から実質的になる層が好ましい。
金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層が形成された多孔性基材の積層体に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層する方法は、所期の目的を達成できる範囲内である限りとくに制限されない。具体的には、CVD法やスパッタリング法、電解メッキ法、無電解メッキ法等によって積層することができる。それらの方法の中では無電解メッキ法が好ましい。
これらの方法を用いて水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層する方法は高知の方法を適用すればよく、とくに制限されない。
金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層は、均一な厚さの層であり、しかも操作性も改善された。また、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層も均一な厚さの層である。
以下、好ましい無電解メッキ法について説明する。なお、以下の説明は、水素分離機能を有する金属あるいは合金として、パラジウム又はパラジウム合金を選び、説明する。
該多孔質体表面のパラジウム含有高分子薄膜層上にパラジウム又はパラジウム合金の薄膜を形成するために採用する前無電解メッキ方法については、特に制限されないのであり、この分野で使用される方法を適宜利用することができる。使用する孔質性基材の種類、形状、希望する性能等に応じて適宜選択すればよい。また、無電解メッキ法に他の方法、たとえば電気メッキ法と組み合わせて適用してもよい。
具体的なメッキ条件についても、特に制限されないのであり、目的とするパラジウム又はパラジウム合金の薄膜を形成可能な公知のメッキ浴を使用して、公知の条件に従ってメッキを行えばよい。非導電性の多孔質基材を用いる場合には、例えば、公知の方法に従って無電解メッキ用の触媒を付与した後、無電解メッキ法によってパラジウム又はパラジウム合金の薄膜を形成すればよい。
形成されるメッキ膜の密着性を向上させるよう、メッキ膜を形成する際に、メッキ液を多孔質体の片方の面から細孔に圧入する方法等を採用することができる。
具体的には、メッキ温度20〜80℃、メッキ時間0.05〜3時間の条件下において、pHが3〜12の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、(株)奥野工業)を用いる方法を例示できる。
メッキ膜は、多孔質基材の全面に形成してもよいが、水素分離体として使用する際に導入する原料としての水素含有ガスと接触する面に形成させてもよい。中空管状の多孔質基材を用いる場合には、例えば、外側の面にメッキ膜を形成させてもよい。
前無電解メッキ法によって形成される水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層の厚さについては、0.5〜20μm程度であることが好ましく、0.5〜10μm程度であることがより好ましい。該薄膜の膜厚が薄すぎると水素の選択分離性能が不十分となり、一方、膜厚が厚すぎると経済性が失われるので好ましくない。
分離複合体でのパラジウム合金としては、パラジウムと、銀、金、銅、白金、ニッケル及びコバルトからなる群から選ばれる一種または二種以上の貴金属との合金が好ましい。この様なパラジウム合金中におけるパラジウムの割合は、約55重量%以上であることが好ましい。
この金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層前無電解メッキ処理を施した積層体を、加熱処理することも、本発明特徴のひとつである。この加熱処理により、前記積層体から易焼失性高分子は焼失し、除去され、水素分離複合体が製造できる。
この水素分離複合体の形状は、用いる多孔性基材、前無電解メッキ法により形成されたメッキ膜の厚さなどにより変動するが、パラジウムあるいはパラジウム合金を含む層はピンホールが存在するという構造的な欠陥がなく、優れた水素分離機能を有する。
上記加熱処理条件は、用いる多孔性基材、パラジウム塩、易焼失性高分子などにより変動 するので一概に規定できないが、具体的な加熱処理条件として、上記積層体を、空気気流中あるいは、静止空気中、純酸素、酸素窒素混合物存在下において、昇温速度毎分0.2〜20℃で300〜1100℃まで昇温し、その温度で0.1〜20時間保持することによって熱処理を施し、次いで、降温速度毎分0.2〜20℃で室温まで降温条件を例示できる。
このようにして得た水素分離複合体は、優れた水素分離能を示す。例えば、水素分離係数が1000以上を示す。ここで、水素分離係数は次式に基づいて得た値である。
水素分離係数=PH2/PHe
式中、PH2は水素の透過速度を示し、PHeはヘリウムの透過速度を示す。前記水素の透過速度は分離膜の一方の面から、所定圧力の水素を供給し、他方の面から透過してくる水素の透過速度を測定する。続いて、測定系内をヘリウムガスで洗浄した後、同条件下で、ヘリウムを供給し、他方の面から透過してくるヘリウムの透過速度を測定する。
このようにして得た金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層から含有易焼失性高分子層を除去した水素分離複合体に再度水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を形成し施し、さらに水素分離機能などの特性が優れた水素分離複合体を得ることができる。
ここで、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を形成する方法は、上記のとおり公知の方法を利用できるのであるが、その中でも無電解メッキ法が好ましい。無電解メッキ処理を施す条件は前記と同様の方法を適用できる。
水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層、とくに無電解メッキ法によって形成されるパラジウム又はパラジウム合金の薄膜の厚さについては、0.5〜20μm程度であることが好ましく、0.5〜10μm程度であることがより好ましく、1〜10μm程度であることがさらに好ましい。
具体的な条件は、メッキ温度20〜80℃、メッキ時間0.1〜20時間の条件下において、pHが3〜12の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、(株)奥野工業)にディップし、次いで、得られたパラジウム複合膜を50〜300℃で0.5〜20時間、静止空気中で乾燥する条件を例示できる。
この水素分離複合体の形状は、用いる多孔性基材、無電解メッキ法により形成されたメッキ膜の厚さなどにより変動するが、パラジウムあるいはパラジウム合金を含む層はピンホールが存在するという構造的な欠陥がなく、多孔性基材への浸透も適度であり、優れた水素分離機能を有するなど、極めて優れた特性を有する。
このようにして製造された水素分離複合体の水素透過特性を、測定温度200−900℃、より好ましくは300−600℃、差圧0−1000kPa、より好ましくは0−200KPaの条件下で測定した。
本発明の水素分離複合体は広い範囲にわたって応用が可能であり、水素混合ガスからの水素分離、水素製造反応、シフト反応、水素化反応、脱水素化反応、燃料電池への応用などに適している。より具体的には、改質ガスの精製用に応用でき、純度の高い水素燃料を家庭用燃料として供給できるし、あるいは車載用燃料電池への応用が可能である。また、水素透過めく反応器を用いた、水素化反応や脱水素化反応への応用が可能である。さらには、水素に関連した種々の合成化学、石油精製、金属精錬等への応用も可能である。
本発明により、ピンホールなどの欠陥が無く、パラジウムあるいはパラジウム合金に代表される水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層の多孔性基材への浸透が無く、高水素透過性及び極めて高い水素透過分離能を有し、長期間に亘り安定性を保持できること特徴とする。とくに、多孔性基材と水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層とが空間薄層(バッファー層)を隔てて存在しているため、水素吸脱着や熱サイクルに伴う熱膨張・収縮が直接的に影響しないので、機械的強度や長期安定性に優れた水素分離複合体が得られる。そのうえ、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層も均一となり、しかも短時間で形成されるので、コストも低減されるという特徴もある。
この水素分離体は、水素混合ガスからの水素分離、水素製造反応、シフト反応、水素化反応、脱水素化反応、燃料電池への応用に適している。
図6に基づいて、本発明における水素分離複合体の調製プロセスを示す。
本発明の水素分離複合体の一例の断面構造(右側の二つ)、およびその水素分離複合体を調製する原料として位置づけられる複合体断面構造(左側の三つ)を示す。図6の五つの断面構造を左側から順次(1)、(2)、(3)、(4)および(5)と番号付けすると、(1)は基材の断面構造であり、その表面に金属の化合物と容易焼失性高分子から実質的になる層(活性化層)を形成した(工程A)ときの断面構造が(2)で示され、(2)の表面に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層した(工程B)ときの断面構造が(3)で示され、(3)を加熱処理した断面構造が(4)で示され、さらに(4)の表面に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層した断面構造が(5)で示される。断面構造(4)および(5)で示される水素分離複合体はきわめて薄い応力緩和層が形成され、しかも欠陥ピンホールがないという特徴を有する。
本プロセスによって、高透過性、および極めて高い水素分離性を有し、ピンホールなどの欠陥が無く、前記金属あるいは合金からなる層の多孔性基材への浸透が実質的に無く、高水素透過性及び極めて高い水素透過分離能を有し、長期間に亘り安定性を保持できること特徴とする水素分離複合体の製造が可能であることがわかる。なお、本プロセスによれば、上記の中空糸状多孔基材の他にチューブ状基材、多孔性円板等の様々な形態の基材の上面、裏面あるいは局所的にあるいは全面に、上記特徴を有する水素分離複合体の製造が可能である。
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(a)(パラジウム含有高分子の活性化用溶液の調製)
クロロホルム100mLにポリ(2,6−ジメチル−4−フェニレンオキサイド)(PPO)5.4g加えて室温下攪拌した後、酢酸パラジウム1.2g加え攪拌し、パラジウム含有高分子を含む活性化用溶液を調製した。
(b)(水素分離複合体の製造原料の調製)
中空糸状で、内径2.2mm、外径2.9mm、膜厚350μm、平均細孔径0.15μm、気孔率52%のα−Al多孔性基材を希薄酸、希薄塩基、エタノール、蒸留水で、室温において各々5分ずつ順番に超音波洗浄し、100℃、2時間、オーブンで乾燥させた。薄膜層を形成するために、洗浄済みの中空糸状α−Al多孔性基材を実施例1(a)の活性化用溶液に5秒間ディップした後、急速に引き上げた。次いで、その製膜済み中空糸を、2時間、静止空気中で乾燥させた後、昇温速度毎分5℃で350℃まで昇温し、その温度で3時間保持することによって、熱処理を施した。前無電解メッキ処理は、メッキ温度40℃、メッキ時間1時間の条件下において、pHが約7の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、(株)奥野工業)を用いて行い、水素分離複合体の製造原料であるパラジウム複合膜を得た。
(c)(水素分離複合体の調製)
実施例1(b)で得た前無電解メッキ処理を施されたパラジウム複合膜を、静止空気中において、昇温速度毎分2℃で700℃まで昇温し、その温度で5時間保持することによって熱処理を施した。次いで、降温速度毎分5℃で室温まで降温し、水素分離複合体を得た。
(実施例2)水素分離複合体の調製
実施例1cで得た水素分離複合体を、再度、メッキ温度40℃、メッキ時間2時間の条件下において、pHが約7の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、(株)奥野工業)にディップした。最後に、得られたパラジウム複合膜を100℃で3時間、静止空気中で乾燥させ、水素分離複合体(パラジウム複合膜)を得た。
パラジウム複合膜の形態を図1aとbで示す。 明らかに、約5μmの均質厚みのピンホールの無いパラジウム層が調製されたことがわかる。そのうえ、基材の細孔へのパラジウムの浸透が無いこともわかる。表面がスムースで緻密な高分子膜層のおかげで、これを除去することによって、ピンホールおよび浸透の無いパラジウム薄膜がマクロ細孔の基材上に直接メッキされていることがわかる。
(試験例1)パラジウム複合膜の水素透過流束と水素圧力差の関係
パラジウム複合膜の水素透過流束と水素圧力差の関係を図2で示す。 水素圧力差の増加に応じて水素透過流束が顕著に増加していることがわかる。600℃における200kPaの水素圧力差で、0.82mol/(s m2)という高い水素透過流束が得られた。
(試験例2)パラジウム複合膜の水素透過流束と運転温度の関係
パラジウム複合膜の水素透過流束と運転温度の関係を図3に示す。 水素圧力差を保持しながら運転温度を増加させると水素透過流束が顕著に増加することがわかる。
(試験例3)パラジウム複合膜の安定性と稼働時間
パラジウム複合膜の安定性と稼働時間の関係を図4に示す。100kPaの圧力差で500℃の条件において、水素透過流束が200時間の運転の間、およそ0.34mol/(s m2)と安定していることがわかる。
(試験例4)パラジウム複合膜の水素とヘリウム交換サイクル数に対する水素透過の安定性
パラジウム複合膜の水素とヘリウム交換サイクル数に対する水素透過の安定性を図5に示す。サイクル数を40と増やしても、水素透過流束が安定していることがわかる。
膜安定性の試験後においても、ヘリウムリーク値は圧力差として300kPaをかけても、無視できるほど小さかった。すなわち、本方法によって作製したパラジウム複合膜は、無限大の水素選択性を有するといえる。
実施例3
(a)(銅メッキ浴の調製)
4mg/Lの2,2−ビピリジル溶液1.8mL、16mg/LのTritonX-100溶液0.8mL、硫酸銅2g、Na2EDTA10g、水酸化ナトリウム10g、ホルムアルデヒド7mLを混合攪拌し、1Lの銅メッキ用溶液を調製した。
(b)(水素分離複合体の製造原料の調製)
中空糸状で、内径2.2mm、外径2.9mm、膜厚350μm、平均細孔径0.15μm、気孔率52%のα−Al多孔性基材を希薄酸、希薄塩基、エタノール、蒸留水で、室温において各々5分ずつ順番に超音波洗浄し、100℃、2時間、オーブンで乾燥させた。薄膜層を形成するために、洗浄済みの中空糸状α−Al多孔性基材を実施例1(a)の活性化用溶液に5秒間ディップした後、引き上げた。次いで、その製膜済み中空糸を、2時間、静止空気中で乾燥させた後、昇温速度毎分5℃で350℃まで昇温し、その温度で3時間保持することによって、熱処理を施した。前無電解メッキ処理は、メッキ温度60℃、メッキ時間20分の条件下において、pHが約7の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、株式会社野工業)を用いて行い、水素分離複合体の製造原料であるパラジウム複合膜を得た。
(c)( 水素分離複合体の調製)
上記前無電解メッキ処理を施されたパラジウム複合膜に、メッキ温度60℃、メッキ時間20分の条件下において、実施例3(a)の銅メッキ浴を用いて無電解銅メッキ処理を施した。得られたパラジウム−銅複層膜を100℃で3時間、静止空気中で乾燥後、静止空気中において、昇温速度毎分2℃で450℃まで昇温し、その温度で3時間保持することによって熱処理を施した。次いで、降温速度毎分5℃で室温まで降温し、水素分離複合体を得た。
実施例4 (水素分離複合体の調製)
このようにして高分子層を除去した後、得られたパラジウム−銅複層膜を600℃で4時間、水素気流中で処理することによって、合金化と還元処理を施し、水素分離複合体(パラジウム−銅複合合金膜)を得た。
パラジウム−銅複合合金膜のX線回折プロファイルを図7に示す。 明らかに、不純物層を含まないパラジウム−銅複合合金膜が調製されたことがわかる。
パラジウム−銅複合合金膜の内部構造を図8に示す。約8μmの均質厚みのピンホールの無いパラジウム−銅複合合金層が調製されたことがわかる。そのうえ、基材の細孔へのパラジウム−銅複合合金の浸透が無いこともわかる。表面がスムースで緻密な高分子膜層のおかげで、これを除去することによって、ピンホールおよび浸透の無いパラジウム−銅複合合金薄膜がマクロ細孔の基材上に直接メッキされていることがわかる。なお、写真そのものは極めて鮮明であるのだが、図面での写真は画像変換処理が円滑に進まず、鮮明なものではない。この図8の上方(下から2/3程度上の部分)に横一線に空間部が形成されていることが分かる。
(試験例7)パラジウム−銅複合合金膜の水素透過流束と水素圧力差の関係
このパラジウム−銅複合合金膜の水素透過流束は、水素圧力差の増加に応じて増加し、400℃における300kPaの水素圧力差で、0.48mol/(s m2)という高い水素透過流束および、高い水素/窒素分離性1420が得られた。また、水素圧力差を保持しながら運転温度を増加させると水素透過流束が顕著に増加した。
(試験例8)パラジウム−銅複合合金膜の安定性
パラジウム−銅複合合金膜の水素、Heフラックスの水素-Heガス交換回数依存性を図9に示す。サイクル数を増やしても、水素およびHeの透過流束ならびに水素分離性が安定していることがわかる。すなわち、本方法はパラジウム単独膜だけではなく、パラジウム−銅複合合金膜のようなパラジウム系合金膜の作製法としても優れているといえる。
実施例5
(a)(銀メッキ浴の調製)
硝酸銀53.5mg、Na2EDTA・2H2O4.0g、NH4OH20ml、ホルムアルデヒド2mlに蒸留水を混合・攪拌し、100mLの銀メッキ用溶液を調製した。
(b)水素分離複合体の製造原料の調製
中空糸状で、内径2.2mm、外径2.9mm、膜厚350μm、平均細孔径0.15μm、気孔率52%のα−Al多孔性基材を希薄酸、希薄塩基、エタノール、蒸留水で、室温において各々5分ずつ順番に超音波洗浄し、100℃、2時間、オーブンで乾燥させた。薄膜層を形成するために、洗浄済みの中空糸状α−Al多孔性基材を実施例1(a)の活性化用溶液に5秒間ディップした後、急速に引き上げた。次いで、その製膜済み中空糸を、2時間、静止空気中で乾燥させた後、昇温速度毎分5℃で350℃まで昇温し、その温度で3時間保持することによって、熱処理を施した。前無電解メッキ処理は、メッキ温度60℃、メッキ時間20分の条件下において、pHが約7の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、株式会社奥野工業)を用いて行い、水素分離複合体の製造原料であるパラジウム複合膜を得た。
(c)(水素分離複合体の調製)
上記前無電解メッキ処理を施されたパラジウム複合膜に、メッキ温度60℃、メッキ時間20分の条件下において、実施例5(a)の銀メッキ浴を用いて無電解銀メッキ処理を施した。得られたパラジウム−銀複層膜を100℃で3時間、静止空気中で乾燥後、静止空気中において、昇温速度毎分2℃で450℃まで昇温し、その温度で3時間保持することによって熱処理を施した。次いで、降温速度毎分5℃で室温まで降温し、高分子層を除去した水素分離複合体を得た。
実施例6(水素分離複合体の調製)
上記パラジウム−銀複層膜を500℃で4時間、水素気流中で処理することによって、合金化と還元処理を施し、水素分離複合体(パラジウム−銀複合合金膜)を得た。
パラジウム−銀複合合金膜のX線回折プロファイルより、不純物層を含まないパラジウム−銀複合合金膜が調製されており、パラジウム−銀複合合金膜の形態観察より、均質厚みのピンホールの無いパラジウム−銀複合合金層が調製されたことがわかった。そのうえ、基材の細孔へのパラジウム−銀複合合金の浸透が無かった。表面がスムースで緻密な高分子膜層のおかげで、これを除去することによって、ピンホールおよび浸透の無いパラジウム−銀複合合金薄膜がマクロ細孔の基材上に直接メッキされていることがわかった。
(試験例9)パラジウム−銀複合合金膜の水素透過流束と水素圧力差の関係
このパラジウム−銀複合合金膜の水素透過流束は、水素圧力差の増加に応じて増加し、400℃における200kPaの水素圧力差で、0.39mol/(s m2)という高い水素透過流束および、高い水素/He分離性700が得られた。また、水素圧力差を保持しながら運転温度を増加させると水素透過流束が顕著に増加した。
(試験例10)パラジウム−銀複合合金膜の安定性
パラジウム−銀複合合金膜の水素、Heフラックスの水素-Heガス交換回数依存性から、サイクル数を増やしても、水素およびHeの透過流束ならびに水素分離性が安定していることがわかった。すなわち、本方法はパラジウム単独膜だけではなく、パラジウム−銀複合合金膜のようなパラジウム系合金膜の作製法としても優れているといえる。
比較例1 (パラジウム複合体の製造原料の調製)
中空糸状で、内径2.2mm、外径2.9mm、膜厚350μm、平均細孔径0.15μm、気孔率52%のα−Al多孔性基材を希薄酸、希薄塩基、エタノール、蒸留水で、室温において各々5分ずつ順番に超音波洗浄し、100℃、2時間、オーブンで乾燥させた。薄膜層を形成するために、洗浄済みの中空糸状α−Al多孔性基材を、市販のパラジウム活性化用溶液(インデューサー、クリスター、株式会社奥野工業)を用いて、定法により活性化処理を施した。次いで、その活性化処理済み中空糸を、2時間、静止空気中で乾燥させた後、メッキ温度60℃、メッキ時間4時間の条件下において、pHが約7の市販パラジウムメッキ浴(パラトップ、株式かい者奥野工業)を用いて、定法の無電解メッキ処理を行うことによって、定法の水素分離体(定法のパラジウム複合膜)を得た。
(試験例11)定法のパラジウム複合膜の水素透過性能
上記パラジウム複合膜の水素透過流束は、500℃における200kPaの水素圧力差で、0.06mol/(s m2)と低かった。その上、運転初期に得られた無限大に近い水素分離性は、測定を開始して3時間後には、水素/ヘリウム分離係数が数十まで激減してしまった。すなわち、従来法による無電解メッキで作製したパラジウム系複合膜は、本発明によるパラジウム系複合膜と比較して、水素透過性ならびに水素分離の長期安定性が劣る傾向にあるといえる。
本発明を次のように記載することができる。
(1)多孔性基材K、パラジウム塩を含有する易焼失性高分子からなる層L、パラジウムあるいはパラジウム合金からなる無電解メッキ層Mから少なくともなる積層体であって、しかもその積層体を加熱処理して得たことを特徴とするパイプ型水素分離体。
(2)多孔性基材K、パラジウム塩を含有する易焼失性高分子からなる層L、パラジウムあるいはパラジウム合金からなる無電解メッキ層Mから少なくともなる積層体であって、しかもその積層体を加熱処理して得たことを特徴とするパイプ型水素分離体。(2)上記(1)の水素分離膜の表面に、さらにパラジウムあるいはパラジウム合金からなる無電解メッキ層Nを形成したことを特徴とするパイプ型水素分離体。
(3)多孔性基材の表面にパラジウム塩を含有する易焼失性高分子から実質的になる層を形成する工程A、前記層の表面に少なくともパラジウムあるいはパラジウム合金からなる無電解メッキ層を積層する工程B、および前記積層体を加熱処理して易焼失性高分子を焼失させる工程Cから少なくともなることを特徴とする水素分離複合体の製造方法
(4)多孔性基材とパラジウムあるいはパラジウム合金からなる無電解メッキ層から少なくとも構成される積層体であって、しかも無電解メッキ層の多孔性基材への過度の浸透が無いことを特徴とする水素分離複合体。
(5)多孔性基材と水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層から少なくとも構成される積層体であって、しかも水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層の多孔性基材への浸透が実質的に無いことを特徴とする水素分離複合体。
(6)多孔性基材とパラジウムあるいはパラジウム合金からなる無電解メッキ層から少なくとも構成される積層体であって、しかも無電解メッキ層の多孔性基材への過度の浸透が実質的に無く、かつ前記多孔性基材と前記水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層との間に実質的に空間層を保持することを特徴とする水素分離複合体。
(7)多孔性基材の表面に、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層を形成する工程Aを含む水素分離複合体の製造方法において、工程Aが、多孔性基材の表面に、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層を形成し、次いで該層中の金属の化合物に由来する金属核を還元処理する工程であることを特徴とする水素分離複合体の製造方法。
本発明の水素分離複合体の形態及び構造を示す写真である。 パラジウム複合膜の水素透過流束と水素圧力差の関係を示す。 パラジウム複合膜の水素透過流束と運転温度の関係を示す。 パラジウム複合膜の安定性と稼働時間の関係を示す。 パラジウム複合膜の水素とヘリウム交換サイクル数に対する水素透過の安定性を示す。 本発明における水素分離複合体の調製プロセスを示す。 パラジウム−銅複合合金膜のX線回折プロファイルを示す。 本発明の水素分離複合体の構造を示す写真である。 水素、Heフラックスの水素-Heガス交換回数依存性を示す。

Claims (14)

  1. 多孔性基材の表面に、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子から実質的になる層を形成する工程A、前記層の表面に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を積層する工程B、および前記積層体から前記易焼失性高分子を焼失させる工程Cから少なくともなることを特徴とする水素分離複合体の製造方法。
  2. 多孔性基材の表面に、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失
    性高分子から実質的になる層を形成する工程A、前記層の表面に水素分離機能を有する金
    属あるいは合金からなる層を積層する工程B、前記積層体から前記易焼失性高分子を焼失させる工程C、および前記処理して得られた積層体の表面に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層を形成する工程Dから少なくともなることを特徴とする水素分離複合体の製造方法。
  3. 工程Aで得た層が形成された基材を熱処理する工程Eをさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の水素分離複合体の製造方法。
  4. 工程Aが、金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物、易焼失性高分子、および有機溶媒から構成される溶液を多孔性基材に塗布・含侵することから実質的になることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の水素分離複合体の製造方法。
  5. 工程Bが、工程Aでの層の表面に水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる無電解メッキ層を積層する工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の水素分離複合体の製造方法。
  6. 多孔性基材K、基材Kの表面に配置され金属からなる水素分離層を構成する金属の化合物を含有する易焼失性高分子からなる層L、層Lの表面に配置され水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層Mから少なくともなることを特徴とする水素分離複合体の製造のための積層体。
  7. 層Mが、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる無電解メッキ層である請求項6記載の水素分離複合体の製造のための積層体。
  8. 多孔性基材と水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層から少なくとも構成される積層体であって、しかも請求項6または7記載の積層体を加熱処理して得たことを特徴とする水素分離複合体。
  9. 請求項8の水素分離複合体の表面に、さらに水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層Nを形成したことを特徴とする水素分離複合体。
  10. 層Nが、水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる無電解メッキ層である請求項9記載の水素分離複合体。
  11. 水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層Mの厚みが0.5〜5μmである請求項8〜10のいずれか記載の水素分離複合体。
  12. 水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層Nの厚みが0.5〜10μmである請求項9または10記載の水素分離複合体。
  13. 多孔性基材と水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層から少なくとも構成される積層体であって、しかも水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層の多孔性基材への浸透が実質的に無く、かつ前記多孔性基材と前記水素分離機能を有する金属あるいは合金からなる層との間に実質的に厚さ0.1〜1μmの空間層を保持することを特徴とする水素分離複合体。
  14. 厚さ0.1〜1μmの空間層が実質的に連続した空間層である請求項13記載の水素分離複合体。
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