JP5273376B2 - 燃料電池 - Google Patents

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Description

本発明は、セパレータを含むセル構成部材間に配置されたエキスパンドメタルによりガス流路が形成されたセル構造を有する燃料電池に関するものである。
燃料電池は、図4に示されるように、複数種類のセル構成部材が積層されることによって、セル(単セル)10が構成され、なおかつ、セル10が複数枚積層された燃料電池スタック11を構成することで、必要な電圧が確保されるものである。セル10の構造例としては、図5に示されるように、膜電極接合体12(Membrane Electrode Assembly:以下、「MEA」という。)がセル10の厚み方向の中心部に配置され、その両面に、ガス拡散層14(アノード側/カソード側のガス拡散層14A、14C)、ガス流路16(アノード側/カソード側のガス流路16A、16C)、セパレータ18が夫々配置された構造となっている。なお、MEA12とガス拡散層14とが一体となった形態を、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA:Membrane Electrode &Gas Diffusion Layer Assembly)と称することもある。
そして、図5のようにガス流路16がセパレータ18と別体構造をなすセル構造においては、ガス流路16を形成する構造物として、例えばエキスパンドメタルが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
ところで、セル10のガス流路16を形成する構造物として用いられるエキスパンドメタル20は、一般的には、既に説明した亀甲形のメッシュ22(図6、図8(c)参照)や、図8(a)に示されるような、菱形のメッシュ26が、いわゆる千鳥配置された連続構造をなしている。このエキスパンドメタル20は、平板材料を送りながら金型によって一段づつ切れ込みを入れることによってメッシュ22が形成されるという製造手順(後述する)に起因して、各メッシュ22が、材料送り方向〔(Materials)Forwarding Direction:以下、本説明において「FD方向」ともいう。〕に、階段状に連なった構造となっている。
メッシュ22、26は、図8に示されるように、その交差部をボンド部BO、メッシュのボンド部BO間をつなぐ部分をストランド部STという。又、ボンド部BOのTD方向の長さをボンド長さBOl、ストランド部STの厚みを刻み幅(送り幅)Wという。図中、符号tは素材の板厚、符号Dはエキスパンドメタルの全厚であり、この全厚Dが、セル構成部材間に配置された状態における、エキスパンドメタルの厚みとなる。なお、図6には、併せてFD方向(材料送り方向)、TD方向(ツール送り方向)及びWD方向(メッシュの刻み幅方向)を示している。
各部名称から明らかなように、亀甲形のメッシュ22は、ボンド部BOのボンド長さBOlの長いメッシュ形状であり、菱形のメッシュ26は、ボンド部BOのボンド長さBOlの短いメッシュ形状である。そして、菱形のメッシュ26のFD方向断面形状(A−A断面形状)と、亀甲形のメッシュ22のFD方向断面形状(A’−A’断面図)とは同一であることから、図6(b)に両者のFD方向断面形状を示している。
このエキスパンドメタル20の製造装置は、図9に示されるように、下刃38及び上刃40を含む金型を備えている。下刃38、上刃40は、いずれもFD方向と直交する方向〔Transverse Direction又はTool Direction:以下、本説明において「ツール送り方向」又は「TD方向」ともいう。〕にシフトし、かつ上刃40はWD方向(上下方向)に昇降するものである。又、上刃40の下面には、図示の例では台形状の凸部40aがTD方向に一定間隔を空けて形成され、下刃38の上面には、上刃40の台形状の凸部40aと噛合うように一定間隔を空けて、台形状の凹部38aが形成されている。なお、図9の例は亀甲形のメッシュ22を成形するものであるが、菱形のメッシュ26(図6(a))を成形する場合には、下刃38の凹部38a及び、上刃40の凸部40aを三角形に構成する。
そして、平板材料42は、ローラ等を備えた材料送り手段によって、所定の刻み幅Wで金型へと送り込まれ、この平板材料42の送り込みのタイミングに合わせて、上刃40及び下刃38が開閉する。この際、上刃40の台形状の凸部40aと、下刃38の台形状の凹部38aとによって、平板材料42は一定間隔に部分的にせん断され、下方向に突出する台形状の切り起しが形成される。
そして、上刃40の上昇の都度、上刃40及び下刃38がTD方向にシフトすることで、台形状の切起こしが千鳥状に一段づつ成形され、階段状のメッシュを有するラスカットメタル20’が形成されるものである。
その後、階段状のメッシュを有するラスカットメタル20’が、図10に示される圧延ローラ43によって圧延されることにより、必要な全厚D(図6(b)参照)のエキスパンドメタル20が成形される。このとき、図11に示されるように、エキスパンドメタル20のメッシュ22には、セパレータ18との接触面Csが形成される。
このようにして製造されるエキスパンドメタル20は、図7に示されるように、メッシュ22がガス拡散層14とセパレータ18との間に傾斜面を構成するようにして配置されることで、千鳥配置されたメッシュ22と、ガス拡散層14表面及びセパレータ18表面との間に、空間24が千鳥状に構成される。従って、ガス流路16を流れるガスは、千鳥状に配置された空間24を順に伝ってFD方向へと流れ、この際、ガス流GFは、微視的には図6に示されるようにTD方向に揺動し、ターンを繰り返す態様の流れとなって、巨視的にはガス流路16のガス流入端GF−Inからガス流出端GF−Outへ向かって流れる。
特開2008−146947号公報
ところで、図12(a)に示されるように、メッシュ22の素材の板厚tに起因して、セパレータ18及びエキスパンドメタル22、26の接点部分(楕円で囲んだ部分)には、くさび状の狭空間NSが形成される。そして、くさび状の狭空間NSの毛管吸引力がガス流GFによる排水力を上回り、図12(a)〜(c)に示されるように、メッシュ22のセパレータ18との接触面Csの近傍に生成水100が滞留することとなる。その結果、排水性が悪化し、ガス流路16におけるガスの圧損の上昇、濃度過電圧の増加を招くこととなる。又、必要なガス流を確保するために、エアコンプレッサーや水素循環ポンプ等に求められる性能値も必然的に高くなり、これら補機の大型化、ひいては燃料電池システムの大型化を来たすこととなる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、セパレータ及びエキスパンドメタルの接点部分に生成水が滞留することに起因する、セルのガス流路におけるガスの圧損の増大及び濃度過電圧の増加を防ぎ、燃料電池システムの小型化、出力向上、電圧安定性の確保等を図ることにある。
上記課題を解決するための、本発明に係る燃料電池は、セパレータを含むセル構成部材間に配置されたエキスパンドメタルによりガス流路が形成されたセル構造を有する燃料電池であって、前記セパレータ及び前記エキスパンドメタルの接点部分の接触面積を減少させるための、排水溝を備えるものであり、前記セパレータ及び前記エキスパンドメタルの接点部分に形成されるくさび状の狭空間に滞留する生成水の排水性を高めるものである。
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
(1)セパレータを含むセル構成部材間に配置されたエキスパンドメタルによりガス流路が形成されたセル構造を有する燃料電池であって、前記セパレータ及び前記エキスパンドメタルのうち、少なくとも前記セパレータ側に、前記セパレータ及び前記エキスパンドメタルの接点部分に形成されるくさび状の狭空間に開口する排水溝が形成されていることを特徴とする燃料電池(請求項1)。
本項に記載の燃料電池は、セパレータ及びエキスパンドメタルのうち、少なくともセパレータ側に形成された、セパレータ及びエキスパンドメタルの接点部分の、くさび状の狭空間に開口する排水溝により、この狭空間から生成水の排水を促すものである。
(2)上記(1)項において、前記排水溝は、前記セパレータの表面に形成された、前記ガス流路の巨視的なガス流れ方向に対し直交しない方向に延びる溝である燃料電池燃料電池(請求項2)。
本項に記載の燃料電池は、セパレータの表面に形成された溝によって、セパレータ及びエキスパンドメタルの接点部分に形成されるくさび状の狭空間からの、生成水の排水を促すものである。しかも、この溝がガス流路の巨視的なガス流れ方向に対し直交しない方向に延びるように形成されていることから、ガス流路を流れるガス流の圧力が効果的にかかる狭空間に作用して、排水を促すものである。
(3)上記(2)項において、前記セパレータの表面の溝が、前記セパレータ及び前記エキスパンドメタルの、隣接する接点を結ぶ位置に形成されている燃料電池(請求項3)。
本項に記載の燃料電池は、セパレータの表面の溝が、セパレータ及びエキスパンドメタルの、隣接する接点を結ぶ位置に形成されていることにより、隣接する接点に各々形成されるくさび状の狭空間における排水の連鎖を起こさせ、排水効率を高めるものである。
(4)上記(2)項において、前記セパレータの表面の溝が、前記セパレータ及び前記エキスパンドメタルの、最も近い接点を結ぶ位置に形成されている請求項2記載の燃料電池(請求項4)。
本項に記載の燃料電池は、各接点に各々形成されるくさび状の狭空間における排水の連鎖を起こさせ、排水効率を高めるものである。しかも、セパレータの表面の溝が、セパレータ及びエキスパンドメタルの、最も近い接点を結ぶ位置に形成されていることにより、排水の連鎖を最も頻繁に発生させ、最も排水効率を高めるものである。
(5)上記(1)から(4)項において、記排水溝には、前記エキスパンドメタルのメッシュを構成するボンド部の、前記セパレータとの接触端側に面して形成された切り欠きが含まれる燃料電池(請求項5)。
本項に記載の燃料電池は、エキスパンドメタルのメッシュを構成するボンド部の、セパレータとの接触端側に面して形成された切り欠きによっても、セパレータ及びエキスパンドメタルの接点部分に形成されるくさび状の狭空間から、生成水の排水を促すものである。
本発明はこのように構成したので、セパレータ及びエキスパンドメタルの接点部分に生成水が滞留することに起因する、セルのガス流路におけるガスの圧損の増大及び濃度過電圧の増加を防ぎ、燃料電池システムの小型化、出力向上、電圧安定性の確保等を図ることが可能となる。
本発明の実施の形態に係る燃料電池のセルの断面図であり、(a)はTD方向視断面図、(b)は(a)の矢視B図、(c)は(b)の別例、(d)は(a)の矢視C図である。 本発明の実施の形態に係る燃料電池のセルの別例に係るものであり、(a)は、エキスパンドメタルのボンド部の拡大図、(b)は当該燃料電池のセルのTD方向視断面図、(c)は(a)の矢視B図、(d)は(a)の矢視C図である。 本発明の実施の形態に係る燃料電池セルの単体図である。 従来の燃料電池スタックの立体模式図である。 図4に示される燃料電池スタックを構成するセルの、構成部材を示す模式図である。 図6に示されるセルのガス流路を形成するエキスパンドメタルの平面図である。 図6に示されるエキスパンドメタルを用いたガス流路のTD方向視断面図である。 エキスパンドメタルの各部名称の説明図であり、(a)は菱形のメッシュの平面図、(b)はA−AおよびA’−A’線における断面図、(c)は亀甲形のメッシュの平面図である。 燃料電池用エキスパンドメタルの製造装置を構成する金型の立体模式図である。 燃料電池用エキスパンドメタルの製造装置を構成する、圧延ローラの模式図である。 図10の圧延ローラによりエキスパンドメタルのメッシュに形成される、セパレータとの接触面を示す斜視図である。 (a)は、従来のセル構成部材間に配置されたエキスパンドメタルによりガス流路が形成されたセル構造を有する燃料電池において、エキスパンドメタルのメッシュの素材の板厚に起因して、セパレータ及びエキスパンドメタルの接点部分に形成されるくさび状の狭空間とここに滞留する生成水を示すものであり、(b)は(a)の矢視B図、(c)は(a)の矢視C図である。
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、従来技術と同一部分若しくは相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る燃料電池は、図1に示されるように、セパレータ18(フラットタイプセパレータ)の表面に、セパレータ18及びエキスパンドメタル22の接点部分に形成されるくさび状の狭空間NSに開口する、排水溝28が形成されている。排水溝28の設置方向は、ガス流路16の巨視的なガス流れ方向に対し直交しない方向に延びるものであれば良く、好ましくは、セパレータ18及びエキスパンドメタル22の、最も近い接点(メッシュ22のセパレータ18との接触面Csで示す。)を結ぶ位置に形成されている。例えば、セパレータ18及びエキスパンドメタル22の接点位置に応じ、図1(b)に示されるようにエキスパンドメタル22のFD方向に対し斜めに、又は、図1(c)に示されるようにFD方向と平行に形成されるものである。又、図1(b)、(c)の排水溝を組み合わせることも可能である。
なお、排水溝28は、エキスパンドメタル22の形状に応じ、幅・深さが0.1μm〜10μmの範囲で適宜設定される。この範囲よりも大きい排水溝は、想定外のガス抜けが生じるおそれがあり、この範囲よりも小さい排水溝は、生成水の排水に支障を来たすおそれがある。
又、図1に示される例では、排水溝38は平行な三本が一組となり、この三本がメッシュ22の接触面Csを横切るように形成されているが、一組をなす本数についても、エキスパンドメタル22の形状に応じ適宜設定される。なお、セパレータ18表面への排水溝38の形成方法は、エッチング、プレス成形、ローラ成形等の方法が用いられる。
又、図2に示されるように、エキスパンドメタル20のメッシュ22を構成するボンド部BOの、セパレータ18との接触端側に面して形成された切り欠き30が、排水溝の構成要素として含まれるものであっても良い。切り欠き30は、エキスパンドメタル20の成形時に打ち抜かれるものである。又、切り欠き30自体がくさび状の狭空間NSの排水手段として機能し得るものであるが、図1に示される排水溝28と共に用いられることがより望ましい。
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、セパレータ18及びエキスパンドメタル22のうち、少なくともセパレータ側に形成された、セパレータ18及びエキスパンドメタル22の接点部分に形成されるくさび状の狭空間NSに開口する排水溝28により、この狭空間NSから生成水100の排水を促すことができる。
又、排水溝28は、セパレータ18の表面に形成されており、しかも、この排水溝28がガス流路の巨視的なガス流れ方向に対し直交しない方向に延びるように形成されていることから、ガス流路16を流れるガス流GFの圧力が効果的に、くさび状の狭空間NSに作用し、狭空間NSからの排水を促すことができる。
又、セパレータ18の表面に形成された排水溝28が、図1(b)、(c)に示されるように、セパレータ18及びエキスパンドメタル22の、隣接する接点を結ぶ位置に形成されていることにより、隣接する接点(Cs)に各々形成されるくさび状の狭空間NSにおける排水の連鎖を起こさせ、排水効率を高めるものである。
しかも、セパレータ18の表面に形成された排水溝28が、セパレータ18及びエキスパンドメタル22の、最も近い接点を結ぶ位置に形成されていることにより、排水の連鎖を最も頻繁に発生させ、最も排水効率を高めることができる。
更に、本発明の実施の形態では、図2に示されるように、エキスパンドメタル20のメッシュ22を構成するボンド部BOの、セパレータ18との接触端側に面して形成された切り欠き30によっても、セパレータ18及びエキスパンドメタル22の接点部分に形成されるくさび状の狭空間NSから、生成水100の排水を促すことができる。
なお、排水溝38又は切り欠き30は、セパレータ18のメッシュ22との接触範囲の全体に形成されるものであっても良いが、図3に示されるように、セル10の、特に生成水の滞留が生じやすいカソード出口CA−Out近傍(楕円で囲んだ領域)に形成することで、効率的に生成水100の排水効果を高めることが可能となる。
又、図1、図2では、亀甲形のメッシュ22を例示して説明したが、これに限定されることなく、菱形のメッシュ26(図8(a)参照)及びその他の形状のメッシュにも適応可能である。
10:セル、12:MEA、14:ガス拡散層、16:ガス流路、18:セパレータ、20:エキスパンドメタル、22:亀甲形のメッシュ、26:菱形のメッシュ、28:排水溝、30:切り欠き、100:生成水、BO:ボンド部、Cs:メッシュのセパレータとの接触面、NS:くさび状の狭空間

Claims (5)

  1. セパレータを含むセル構成部材間に配置されたエキスパンドメタルによりガス流路が形成されたセル構造を有する燃料電池であって、
    前記セパレータ及び前記エキスパンドメタルのうち、少なくとも前記セパレータ側に、前記セパレータ及び前記エキスパンドメタルの接点部分に形成されるくさび状の狭空間に開口する排水溝が形成されていることを特徴とする燃料電池。
  2. 前記排水溝は、前記セパレータの表面に形成された、前記ガス流路の巨視的なガス流れ方向に対し直交しない方向に延びる溝であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池。
  3. 前記セパレータの表面の溝が、前記セパレータ及び前記エキスパンドメタルの、隣接する接点を結ぶ位置に形成されていることを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
  4. 前記セパレータの表面の溝が、前記セパレータ及び前記エキスパンドメタルの、最も近い接点を結ぶ位置に形成されていることを特徴とする請求項2記載の燃料電池。
  5. 前記排水溝には、前記エキスパンドメタルのメッシュを構成するボンド部の、前記セパレータとの接触端側に面して形成された切り欠きが含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の燃料電池
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