JP2009009879A - ガス拡散部材を用いた燃料電池及びガス拡散部材の製造方法 - Google Patents

ガス拡散部材を用いた燃料電池及びガス拡散部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】排水性を向上させたガス拡散部材を提供する。
【解決手段】ガス拡散部材は、一方向に沿った複数の貫通孔からなる列を複数並列させて形成された基材であって、一方向に沿った複数の貫通孔からなる列の少なくとも一列の各貫通孔24の径が、一方向に向かって減少し、また一方向に沿った複数の貫通孔からなる列の少なくとも他の一列の貫通孔22の径は、一方向に向かって一定の径を保っている。燃料電池において、上記ガス拡散部材は、フラットセパレータとガス拡散層との間に配置される多孔体流路層またはガス拡散層として用いることができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、ガス拡散部材、ガス拡散部材を用いた燃料電池及びガス拡散部材の製造方法、特に、燃料電池において、発電中に生成する生成水を排除し易くし、ガス拡散性を向上することで、燃料電池の発電効率を維持安定化させるためのガス拡散部材の改良に関する。
例えば、固体高分子型燃料電池は、図10に示すように、固体高分子膜からなる電解質膜62を燃料極60と空気極64との2枚の電極で挟んだ接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を、さらに2枚のセパレータ70に挟持してなるセルを最小単位とし、通常、このセルを複数積み重ねて燃料電池スタック(FCスタック)とし、高圧電圧を得るようにしている。
固体高分子型燃料電池の発電の仕組みは、一般に、燃料極(アノード側電極)60に燃料ガス、例えば水素含有ガスが、一方、空気極(カソード側電極)64には酸化剤ガス、例えば主に酸素(O2)を含有するガスあるいは空気が供給される。水素含有ガスは、燃料ガス流路を通って燃料極60に供給され、電極の触媒の作用により電子と水素イオン(H+)に分解される。電子は外部回路を通って、燃料極60から空気極64に移動し、電流を作り出す。一方、水素イオン(H+)は電解質膜62を通過して空気極64に達し、酸素および外部回路を通ってきた電子と結合し、反応水(H2O)になる。水素(H2)と酸素(O2)および電子の結合反応と同時に発生する熱は、冷却水によって回収される。また、空気極64のあるカソード側に生成した水(以下「生成水」という)は、カソード側から排出される。
図10に示すように、燃料電池の運転中(発電中)において、生成水は空気極64の表面の電解質膜62に接する部分に発生する。そして、燃料電池の運転に伴い、この生成水を燃料電池系外に効率よく排出できない場合には、空気極64の拡散層とセパレータ70との間の空間に生成水が滞留し、その結果、反応ガス、特に酸化剤ガスの拡散が阻害され、いわゆるフラッティング現象が生じてしまう。かかる場合、燃料電池の発電効率が低下する傾向が見られた。
一方、従来より、燃料電池内のセパレータと燃料極との間およびセパレータと空気極との間の燃料ガス、酸化剤ガスとのガス流路内におけるガス流通性の工夫がなされている。
例えば、特許文献1には、セパレータ本体と燃料電池の電極構造体を構成する電極層との間に燃料ガスと酸化剤ガスとをそれぞれ供給するガス流路を形成しかつ前記電極構造体により発電された電気を集電するガス流路形成部材が、セパレータ本体の窪みに配置された燃料電池セパレータが提案されており、上記ガス流路形成部材は、1枚板のエキスパンドメタルに筋状凹凸形成されている。
また、特許文献2には、開口率の異なるエキスパンドメタルを交互に積層させてガス流路形成部材を製造することが提案されている。
特開2005−310633号公報 特開2007−26812号公報
上述した従来のエキスパンドメタルの構造は、その厚みが均一であり、圧力損失(圧損)を考慮してエキスパンドメタルの貫通孔の径(すなわち、気孔径)も均一である。したがって、従来のエキスパンドメタルからなるガス流路部材は、ガス流通性を向上させることができる。しかしながら、上述の構造を有するエキスパンドメタルは、その貫通孔の径が均一であるため、流速が小さくなり易い。一方、例えば、燃料電池が低負荷時には少量の生成水しか生成しないため、少流量の生成水では、エキスパンドメタルの貫通孔を通過しにくくなり、場合によっては生成水由来の水膜が貫通孔に形成されるおそれがある。また、一旦貫通孔に水膜が形成されると、エキスパンドメタルにおける水抜け性が低下し、生成水が滞留し、排水性が悪化してしまう。その結果、ガス拡散層の酸化剤ガスの拡散性が阻害され、いわゆるフラッティング現象が生じてしまい、燃料電池の発電効率が低下する可能性がある。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、燃料電池からの生成水排出を良好に行い、運転効率を維持安定化させた燃料電池を提供する。
上記目的を達成するために、本発明の燃料電池は以下の特徴を有する。
(1)一方向に沿った複数の貫通孔からなる列を複数並列させて形成された基材であって、一方向に沿った複数の貫通孔からなる列の少なくとも一列の各貫通孔の径が、一方向に向かって減少しているガス拡散部材である。
上記少なくとも一列の複数の貫通孔の径が一方向に向かって段階的に小さくなっているので、この列の複数の貫通孔により毛管力が働く。これにより、上記ガス拡散部材を燃料電池に用いた場合、燃料電池の低負荷時において生成する生成水が少流量であっても、ガス拡散部材中に滞留することなく、一方向に向かって効率よく排水される。
(2)上記(1)に記載のガス拡散部材において、さらに、一方向に沿った複数の貫通孔からなる列の少なくとも他の一列の貫通孔の径は、一方向に向かって不変であるガス拡散部材である。
ガス拡散部材の貫通孔径を変化させると、ガス拡散部材の厚みが変化してしまうが、上記少なくとも他の一列の貫通孔の径を一方向に向かって一定に保つことにより、ガス拡散部材の厚みを一定にすることができ、これにより、低圧損を確保することができる。
(3)上記(1)または(2)に記載のガス拡散部材において、前記一方向が、ガス拡散方向であるガス拡散部材である。
ガス拡散方向に向かって、上記少なくとも一列の複数の貫通孔の径が段階的に小さくなっているので、この列の複数の貫通孔により毛管力が働き、ガスの出口側に向かって生成水を円滑に排水することができる。
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載のガス拡散部材において、前記基材は、ラスカットメタルまたはエキスパンドメタルであるガス拡散部材である。
前記ガス拡散部材をラスカットメタルまたはエキスパンドメタルとすることにより、貫通孔を網目状に形成することができ、且つ集電体としても機能させることができる。
(5)電解質膜に燃料極と空気極を有する接合体と、前記接合体を挟持する一対のセパレータとから構成されるセルを積層してなる燃料電池であって、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載のガス拡散部材を、前記のセパレータと接合体との間に配置する燃料電池である。
上記少なくとも一列の複数の貫通孔の径が一方向に向かって段階的に小さくなっているので、この列の複数の貫通孔により毛管力が働き、これにより、燃料電池の低負荷時において生成する生成水が少流量であっても、ガス拡散部材中に滞留することなく、一方向に向かって効率よく排水される。したがって、特に燃料電池内の特にカソード側の排水性が向上し、ガス拡散性が阻害されず、燃料電池の運転効率が維持安定化する。
(6)上記(5)に記載の燃料電池において、前記セパレータは、前記接合体側表面が平滑面であるフラットセパレータであり、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載のガス拡散部材と前記フラットセパレータとは隣接している燃料電池である。
上記ガス拡散部材を、セパレータとガス拡散層との間の多孔体流路層として用いることにより、特にカソード側のガス拡散層より露出してくる生成水を速やかにセパレータ側に移動させることができ、これによりセパレータより生成水が系外に排出される。したがって、セパレータとガス拡散層との間の排水性が向上し、ガス拡散性は維持され、燃料電池の運転効率は安定維持される。
(7)上記(5)に記載の燃料電池において、前記セパレータは、前記接合体側表面が平滑面であるフラットセパレータであり、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載のガス拡散部材は、前記燃料極と空気極のそれぞれ設けられているガス拡散層の少なくとも一方と前記フラットセパレータとの間に配置される多孔体流路層である燃料電池である。
(8)電解質膜に燃料極と空気極を有する接合体と、前記接合体を挟持する一対のセパレータとから構成されるセルを積層してなる燃料電池であって、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載のガス拡散部材を、前記燃料極と空気極のそれぞれ設けられているガス拡散層として用いる燃料電池である。
上記ガス拡散部材をガス拡散層に用いることにより、上記接合体内で生成する生成水が、仮に上記ガス拡散部材に水膜を形成したとしても、ガス拡散部材に表面改質処理または1つ以上の溝が形成されているため、隣接する貫通孔に形成された水膜同士が繋がり、生成水の排出性が向上し、且つガス拡散層内のガス拡散性も維持される。
(9)金属板に対しラスカットを施す工程と、ラスカットが施された金属板を延伸加工する工程とを有するガス拡散部材の製造方法であって、前記ラスカットを施す工程では、複数のラスカットの列を複数並列に形成し、且つ一列を形成する各ラスカットの切り込み量を一方向に向かって変化させた列と各ラスカットの切り込み量を一定に保った列とを交互に形成したガス拡散部材の製造方法である。
一列を形成する各ラスカットの切り込み量を一方向に向かって変化させた列と各ラスカットの切り込み量を一定に保った列とを交互に形成することによって、上記少なくとも一列の複数の貫通孔の径が一方向に向かって段階的に小さくなる。そして、この列の複数の貫通孔により毛管力が働き、上記ガス拡散部材を燃料電池に用いた場合、燃料電池の低負荷時において生成する生成水が少流量であっても、ガス拡散部材中に滞留することなく、一方向に向かって排水される。また、他の一列の貫通孔の径を一方向に向かって一定に保つことにより、ガス拡散部材の厚みを一定にすることができ、これにより、低圧損を確保することができる。
本発明によれば、発電の際に生成した生成水が燃料電池系外に効率よく排出されるため、フラッティング現象が生じ難く、燃料電池の出力特性を維持安定させることができる。
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1には、本実施の形態の燃料電池に用いられるセパレータ10とこのセパレータの発電領域部分に配置されるガス拡散部材20の一例が示されている。図1に示すように、セパレータ10の両端には、それぞれ、連通孔が設けられ、例えば、図1に示すセパレータが、カソード側の場合、セパレータ10の一端側には、冷却水を供給する冷却水供給連通孔12a、燃料ガスを供給する燃料ガス供給連通孔14aおよび酸化剤ガスが排出される酸化ガス排出連通孔16bが設けられ、一方セパレータ10の他端側には、冷却水が排出される冷却水排出連通孔12b、燃料ガスが排出される燃料ガス排出連通孔14bおよび酸化剤ガスが供給される酸化ガス供給連通孔16aが設けられている。したがって、図1に示すカソード側では、ガス拡散部材20における酸化剤ガスの拡散方向は、白抜き矢印方向である。
[ガス拡散部材および燃料電池]
図1に示すガス拡散部材20は、図2に示すように、一方向に沿った複数の貫通孔からなる列を複数並列させて形成された基材であって、一方向に沿った複数の貫通孔からなる列の少なくとも一列の各貫通孔24の径が、一方向に向かって減少している。さらに、一方向に沿った複数の貫通孔からなる列の少なくとも他の一列の貫通孔22の径は、一方向に向かって一定の径を保っている。
したがって、図3に示すように、一方向に沿った複数の貫通孔24の列では、貫通孔24の径が徐々に小さくなっているので、この列複数の貫通孔24により毛管力が働き、上記ガス拡散部材を燃料電池に用いた場合、燃料電池の低負荷時において生成する生成水が少流量であっても、ガス拡散部材中に滞留することなく、一方向に向かって排水される。一方、他の一列の貫通孔22の径を一方向に向かって一定に保つことにより、図4に示すように、ガス拡散部材20の厚みを一定にすることができ、これにより、低圧損を確保することができる。
また、本実施の形態において、複数の貫通孔24の列は、ガス拡散方向に向かって、貫通孔24の径が徐々に小さくなっている。これにより、この列の複数の貫通孔24によって上述した毛管力が働き、ガスの出口側に向かって生成水を円滑に排水することができる。
また、上述したように、図3に示す本実施の形態のガス拡散部材20において、毛管力が働く列を構成する各貫通孔24の径は、ガス拡散方向に向かって徐々に小さくなっている。そして、貫通孔24の径の減少率は、毛管力が発生する程度であれば如何なる減少率でもよいが、ガス拡散部材20を用いる燃料電池の容量および発電効率などの条件によって、適宜選択することが好ましい。本実施の形態では、例えば、貫通孔24の径の減少率が、上記列の隣接する貫通孔24の径に対して0.1%から1.0%であることが好ましい。
また、本実施の形態のガス拡散部材20の基材の形態が、ラスカットメタルまたはエキスパンドメタルのいずれかの形態であることが好ましい。
ここで、本実施の形態において、「ラスカットメタル」とは、平板状の薄肉金属板に対して、順次千鳥配置の切れ目を加工するとともに加工した切れ目を押し曲げることによって、網目状の小径の貫通孔が形成されたものである。また、「エキスパンドメタル」とは、平板状の薄肉金属板に対して、順次千鳥配置の切れ目を加工するとともに加工した切れ目を押し曲げることによって網目状の小径の貫通孔が形成され、さらに、圧延加工されて略平板状とされたものである。エキスパンドメタルは略平板状に成形されるため、例えば、最終成形後の製品において不必要な曲がりや凹凸などを除去するための工程を設ける必要がなく、製造コストを低減することができる。
また、本実施の形態のガス拡散部材20において、集電体を兼ねる場合には、金属セパレータに用いる金属材料であればいかなるものでも用いることができるが、燃料電池の製造時に上述したセルを積層圧縮する際の圧力に抗し所定のガス流通を可能とするある程度の剛性を有する材料が好ましく、例えば、チタン、ステンレス材、アルミニウムが好ましい。なお、ステンレス材やアルミニウム材を用いる場合には、後述する溝加工、ラスカット加工の後に表面処理を行い、表面に導電性を付与することが好ましい。
<多孔体流路層>
図5には、本実施の形態のガス拡散部材を、燃料電池に適用する際に、ガス拡散層とセパレータ30との間に配置して、多孔体流路層として用いた場合の一例が示されている。
さらに詳細に説明すると、図5に示すように、固体高分子膜からなる電解質膜を燃料極と空気極との2枚の電極で挟んだ接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)32を、さらに2枚のセパレータ30にて挟持し、さらにシール36によりシールしてなるセルを最小単位とし、通常、このセルを複数積み重ねてスタック状にした燃料電池において、上記セルの接合体32とフラットセパレータであるセパレータ30との間に、図2から図4に示すガス拡散部材20を多孔体流路層34として用いた構成の一例が示されている。上記フラットセパレータであるセパレータ30は、接合体32側表面が平滑面である。
ここで、燃料電池のセパレータとして、耐久性の観点から金属セパレータが用いられるようになってきているが、この金属セパレータは耐蝕性および帯電性の両立が必須となる。この上記耐蝕性および帯電性を両立させるものとしてチタン製のセパレータが候補に挙げられている。しかし、チタンは、剛性が高く、ステンレスのようにプレス加工が容易でないため、流路をプレス以外の方法で形成する必要が生じる。そこで、チタン製セパレータをフラットセパレータとし、このフラットセパレータとガス拡散層との間に多孔体により流路を形成する構成を案出し、この多孔体流路として、上述した本実施の形態のガス拡散部材を用いた擬似的多孔体流路層として用いる構成について、以下に説明する。ここで、「フラットセパレータ」とは、後述する固体高分子膜からなる電解質膜を燃料極と空気極との2枚の電極で挟んだ接合体の側の表面が平滑面であるセパレータをいう。
上記ガス拡散部材を多孔体流路層34としても用いることにより、燃料電池の発電時に生成する生成水が仮にガス拡散部材の貫通孔に水膜を形成したとしても、一連の貫通孔24(図2)による毛管量により、生成水を速やかにセパレータ30(フラットセパレータ)を介して系外に排出することができ、上述したように、特に生成水の生成するカソード側の酸化剤ガスの拡散性を維持することができ、いわゆるフラッティング現象を抑制し、燃料電池の発電効率を維持安定化させることができる。
図5には、上述したように、フラットセパレータ30を用い、このフラットセパレータ30とセルの接合体32との間に、それぞれ多孔体流路層34として基材10が配置された構成になっている。ここで、上記接合体32は、燃料ガス拡散層−燃料極触媒層−電解質膜−空気極触媒層−酸化剤ガス拡散層からなる構成であっても、また、燃料極触媒層−電解質膜−空気極触媒層から構成されていてもよい。したがって、上記接合体32が燃料ガス拡散層−燃料極触媒層−電解質膜−空気極触媒層−酸化剤ガス拡散層からなる場合には、フラットセパレータ30とガス拡散層との間に、それぞれ多孔体流路層34としたガス拡散部材20(図2から図4に示す)が配置される。一方、上記接合体32が燃料極触媒層−電解質膜−空気極触媒層からなる場合には、フラットセパレータ30と燃料極触媒層および空気極触媒層との間に、それぞれ多孔体流路層34とした基材10が配置される。すなわち、後者の構成の場合には、多孔体流路層34に設けられたガス拡散部材20(図2から図4に)は、流路のみならずガス拡散層としても機能し、したがって、従来のガス拡散層が不要となり、セルの厚みをより薄くすることが可能である。その結果、燃料電池をより小型化することも可能となる。なお、後者の場合、触媒層に接触するエキスパンドメタル形態のガス拡散部材20(図2から図4に)の面には例えば疎水剤等が塗布され、この疎水コーティングによって疎水化されると共に、燃料電池製造時の圧縮における触媒層への損傷が抑制される。
<ガス拡散層>
図6には、複数のセルからなる燃料電池において、電解質膜40、触媒層42とガス拡散層44からなる空気極および燃料極に挟まれてなる接合体を、さらにガス供給溝46を有するセパレータ48によって教示してなるセルの構造の一例が示されて、ガス拡散層44として、図2から図4に示したガス拡散部材20を用いる構成について以下に説明する。
ガス拡散層は、流路から供給されるガスを電極触媒層へ拡散供給する層であり、上述した多孔体流路層ほどセパレータ面に沿った方向へのガス流通が必要ではないため、基材10(図1)を拡散層として用いる場合には、上記多孔体流路層に用いる場合に比べ比較的小さめの貫通孔に形成するようにラスカットされていることが望ましい。さらに、燃料電池発電時の変形を吸収するように多少変形に追従可能な程度の剛性のやや低いものを用いることが好ましく、ガス拡散層に用いられるエキスパンドメタル形態のガス拡散部材20(図2から図4に示す)は、例えばステンレス材で形成することが望ましい。
図6では、ガス拡散層44として、図2から図4に示したガス拡散部材20を用いることにより、燃料電池の発電時に、特にカソード側の空気極の触媒層42から生成する生成水を効率よくセパレータ48側に移行させることができ、上述同様、カソード側の酸化剤ガスの拡散性を維持することができ、いわゆるフラッティング現象を抑制し、燃料電池の発電効率を維持安定化させることができる。また、ガス拡散部材20の一連の貫通孔22,24から、燃料極触媒層および空気極触媒層にそれぞれ燃料ガスおよび酸化剤ガスを供給することができる。
また、図2から図4に示すガス拡散部材20を多積層することによって、複数積層のガス拡散部材を製造してもよい。なお、積層数は、使用される空間の大きさに応じて適宜選択することが望ましい。
[ガス拡散部材の製造方法]
図7に示すように、金属板26に対しラスカット21,23を施す工程(S102)と、ラスカット21,23が施された金属板を延伸加工する工程(S104)とを有するガス拡散部材の製造方法である。さらに、本実施の形態のガス拡散部材の製造方法において、上記ラスカットを施す工程では、複数のラスカット21,23の列を複数並列に形成し、且つ一列を形成する各ラスカット23の切り込み量を一方向に向かって変化させた列Iと、各ラスカット21の切り込み量を一定に保った列IIとを交互に形成されている。
一列を形成する各ラスカット23の切り込み量を一方向に向かって変化させた列Iと、各ラスカット21の切り込み量を一定に保った列IIとを交互に形成することによって、列Iのラスカット23により構成される複数の貫通孔24の径が一方向(例えば、ガス拡散方向)に向かって段階的に小さくなる。また、列IIのラスカット21により構成される複数の貫通孔22の径を一方向(例えば、ガス拡散方向)に向かって一定に保つことができ、これによりガス拡散部材20の厚みを一定にすることができる。
また、図8に示すように、本実施の形態のガス拡散部材の製造方法に用いるラスカット装置50は、ラスカットを施す金属板26が送られる端部側に、上下稼働する切り込み用ラスカット刃52aと固定刃52bとからなるラスカット刃52が設けられている。また、固定刃52bは、ラスカット装置50の金属板26が送られる端部側に固定され、さらに固定刃52bの外側には、切り込み用ラスカット刃52aと噛み合う形状の受け部54が形成されている。したがって、切り込み用ラスカット刃52aの降下量を調整することによって、図7に示すように、切り込み量を変化させることができ、これにより、径の大きさが変化した貫通孔24を形成することができる。
上述の製造方法により、厚み一定で且つ一方向に向かって貫通孔の径が減少したガス拡散部材を得ることができる。さらに、以下のように、切り込み量に対して金属板26(図8)の送り量を変化させることによって、ガス拡散部材の平面度を確保することができる。
平面度を確保するためには、例えば、図9に示すように、板厚0.1mmのチタン板を金属板26として用いた場合、貫通孔24(図7)を形成するための切り込み量z,yに応じ、金属板26の送り量xを調整する。ラスカットメタル又はエキスパンドメタルの端部に対して、上記板厚で平面度を保つためには、例えば角度θを32°にすることが好ましい。かかる場合、貫通孔24の径の減少率に応じて、切り込み量z,yを制御し、さらに以下の式1に基づいて、送り量xを調整する。
x=(z−y)/tan32° … (式1)
ここで、図9では、例えば、最初の送り量は0.3mmであって、均一径の貫通孔22の径は0.3mmとなっている。
図9では、角度θを32°としたがこれに限るものでなく、金属板26の厚みに応じて、平面度に適した角度θを選択することが好ましい。また、毛管力を得るための貫通孔24の径の減少率に応じて、切り込み量z,yを選定することが望ましい。
上記図9に示すように切り込み量z,yを変化させ、さらに送り量xを変えることにより製造された貫通孔24(図2)の径の大きさが一方向に変化してなるガス拡散部材20は、全て均一な貫通孔を有する従来のエキスパンドメタルからなるガス拡散部材に比べ、燃料電池の低負荷時における発電効率が3%向上した。
本発明のガス拡散部材は、燃料電池を用いる用途であれば、いかなる用途にも有効であるが、ガス拡散部材として特に排水性を併せて要求される用途に好適である。
本発明の燃料電池のセルにおけるカソード側のセパレータと多孔体流路層との構成の一例を説明する平面図である。 本発明の燃料電池に用いるガス拡散部材の構造の一例を示す斜視図である。 図2に示すガス拡散部材のB視図である。 図2に示すガス拡散部材のA視図である。 本発明のガス拡散部材を燃料電池のセルの多孔体流路層として用いた一態様を説明する模式断面図である。 本発明のガス拡散部材を燃料電池のセルのガス拡散層として用いた一態様を説明する一部模式断面図である。 本発明のガス拡散部材の製造方法の一例を説明する図である。 ガス拡散部材の製造方法におけるラスカットを施す装置構成の概略図である。 本発明におけるガス拡散部材の製造の一例を説明する図である。 燃料電池のセルの構成および発電時のメカニズムを説明する図である。
符号の説明
10 基材、12a 冷却水供給連通孔、12b 冷却水排出連通孔、14a 燃料ガス供給連通孔、14b 燃料ガス排出連通孔、16a 酸化ガス供給連通孔、16b 酸化ガス排出連通孔、20 ガス拡散部材、22,24 貫通孔、21,23 ラスカット、26 金属板、30 フラットセパレータ、32 接合体、34 多孔体流路層、36 シール、40 電解質膜、42 触媒層、44 ガス拡散層、46 ガス供給溝、48 セパレータ、60 燃料極、62 電解質膜、64 空気極。

Claims (9)

  1. 一方向に沿った複数の貫通孔からなる列を複数並列させて形成された基材であって、
    一方向に沿った複数の貫通孔からなる列の少なくとも一列の各貫通孔の径が、一方向に向かって減少していることを特徴とするガス拡散部材。
  2. 請求項1に記載のガス拡散部材において、
    さらに、一方向に沿った複数の貫通孔からなる列の少なくとも他の一列の貫通孔の径は、一方向に向かって不変であることを特徴とするガス拡散部材。
  3. 請求項1または請求項2に記載のガス拡散部材において、
    前記一方向が、ガス拡散方向であることを特徴とするガス拡散部材。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガス拡散部材において、
    前記基材は、ラスカットメタルまたはエキスパンドメタルであることを特徴とするガス拡散部材。
  5. 電解質膜に燃料極と空気極を有する接合体と、前記接合体を挟持する一対のセパレータとから構成されるセルを積層してなる燃料電池であって、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガス拡散部材を、前記のセパレータと接合体との間に配置することを特徴とする燃料電池。
  6. 請求項5に記載の燃料電池において、
    前記セパレータは、前記接合体側表面が平滑面であるフラットセパレータであり、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガス拡散部材と前記フラットセパレータとは隣接していることを特徴とする燃料電池。
  7. 請求項5に記載の燃料電池において、
    前記セパレータは、前記接合体側表面が平滑面であるフラットセパレータであり、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガス拡散部材は、前記燃料極と空気極のそれぞれ設けられているガス拡散層の少なくとも一方と前記フラットセパレータとの間に配置される多孔体流路層であることを特徴とする燃料電池。
  8. 電解質膜に燃料極と空気極を有する接合体と、前記接合体を挟持する一対のセパレータとから構成されるセルを積層してなる燃料電池であって、
    請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガス拡散部材を、前記燃料極と空気極のそれぞれ設けられているガス拡散層として用いることを特徴とする燃料電池。
  9. 金属板に対しラスカットを施す工程と、ラスカットが施された金属板を延伸加工する工程と、を有するガス拡散部材の製造方法であって、
    前記ラスカットを施す工程では、複数のラスカットの列を複数並列に形成し、且つ一列を形成する各ラスカットの切り込み量を一方向に向かって変化させた列と各ラスカットの切り込み量を一定に保った列とを交互に形成したことを特徴とするガス拡散部材の製造方法。
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