JP5272450B2 - プラズマディスプレイ装置 - Google Patents

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Description

本発明は、表示デバイスとしてプラズマディスプレイパネルを用いたプラズマディスプレイ装置に関するものである。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、65インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPは従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上のハイディフィニションテレビへの適用が進んでいるとともに、環境問題に配慮して鉛成分を含まないPDPが要求されている。
PDPは、基本的には、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とで構成されている。一方、背面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のデータ電極と、データ電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
また、このPDPを用いたプラズマディスプレイ装置は、PDPのパネルを金属板からなるシャーシ部材の前面側に保持し、そのシャーシ部材の背面側にPDPを駆動させるための駆動回路ブロックを配置してPDPモジュールを構成し、このPDPモジュールをケース内に収容することにより構成されている(特許文献1参照)。
特開2007−121829号公報
近年、テレビは高精細化がすすんでおり、市場では低コスト・低消費電力・高輝度のフルHD(ハイ・ディフィニション)(1920×1080画素:プログレッシブ表示)PDPが要求されている。
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力で低価格のプラズマディスプレイ装置を実現することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明は、相対する両側端部に電極端子部を設けた複数の表示電極を有する前面板と前記表示電極に交差する方向に配列するとともに一方の端部に電極端子部を設けた複数のデータ電極を有する背面板とからなりかつ前記前面板と背面板とを間に放電空間を形成するように対向配置して構成したプラズマディスプレイパネルと、このプラズマディスプレイパネルを保持するシャーシ部材と、このシャーシ部材に配置されるとともに前記プラズマディスプレイパネルの表示電極の電極端子部に配線基板を介して接続され前記プラズマディスプレイパネルの表示電極に駆動電圧を印加するための駆動回路基板と、前記シャーシ部材において前記プラズマディスプレイパネルのデータ電極の電極端子部に近接した一方の端部に配置されるとともに前記プラズマディスプレイパネルのデータ電極の電極端子部に配線基板を介して接続されかつ前記データ電極に駆動電圧を印加するための複数のデータドライバーとを備え、かつ前記プラズマディスプレイパネルは、表示電極を覆う誘電体層上に下地膜を形成するとともに、その下地膜に酸化マグネシウムからなる結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子を全面に亘って離散的に分布するように複数個付着させることにより構成し、前記凝集粒子はMgO前駆体を焼成して生成され、前記結晶粒子の粒径が0.3〜2μmであることを特徴とする。
本発明は、電子放出特性が良好で高い電荷保持特性も持つPDPの特性を十分に発揮できる構成とすることにより、高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力で低価格のプラズマディスプレイ装置を実現することができる。
以下、本発明の一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態によるプラズマディスプレイ装置におけるPDPの構造を示す斜視図である。図1に示すように、前面ガラス基板などよりなる前面板1と、背面ガラス基板などよりなる背面板2とが対向して配置され、その外周部をガラスフリットなどからなる封着材によって気密封着されている。封着されたPDP内部の放電空間3には、NeおよびXeなどの放電ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入されている。
前面板2の前面ガラス基板上には、走査電極4および維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板上には表示電極6と遮光層7とを覆うようにコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその表面に酸化マグネシウム(MgO)などからなる保護層9が形成されている。
また、背面板2の背面ガラス基板上には、前面板1の走査電極4および維持電極5と交差する方向に、複数の帯状のデータ電極10が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層11が被覆している。さらに、データ電極10間の下地誘電体層11上には放電空間3を区切る所定の高さの隔壁12が形成されている。隔壁12間の溝にデータ電極10毎に、紫外線によって赤色、緑色および青色にそれぞれ発光する蛍光体層13を順次塗布して形成されている。走査電極4および維持電極5とデータ電極10とが交差する位置に放電セルが形成され、表示電極6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層13を有する放電セルがカラー表示のための画素になる。
図2は、PDPの電極配列図である。PDPには、行方向に延長されたn本(本実施の形態においては、n=1080)の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極4)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極5)が配列され、列方向に延長されたm本(本実施の形態においては、m=5760)のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極10)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
図3はこのPDPを用いたプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。このプラズマディスプレイ装置は、PDP14、画像信号処理回路15、データ電極駆動回路16、走査電極駆動回路17、維持電極駆動回路18、タイミング発生回路19および電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路15は、画像信号sigをサブフィールド毎の画像データに変換する。データ電極駆動回路16はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し、各データ電極D1〜Dmを駆動する。タイミング発生回路19は水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vをもとにして各種のタイミング信号を発生し、各駆動回路ブロックに供給している。走査電極駆動回路17はタイミング信号にもとづいて走査電極SC1〜SCnに駆動電圧波形を供給し、維持電極駆動回路18はタイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnに駆動電圧波形を供給する。
次に、PDPを駆動するための駆動電圧波形とその動作について図4を用いて説明する。図4はPDPの各電極に印加する駆動電圧波形を示す図である。
本実施の形態によるプラズマディスプレイ装置においては、1フィールドを複数のサブフィールドに分割し、それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間、維持期間を有している。
第1サブフィールドの初期化期間では、データ電極D1〜Dmおよび維持電極SU1〜SUnを0(V)に保持し、走査電極SC1〜SCnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi1(V)から放電開始電圧を超える電圧Vi2(V)に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて1回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上に負の壁電圧が蓄えられるとともに維持電極SU1〜SUn上およびデータ電極D1〜Dm上に正の壁電圧が蓄えられる。ここで、電極上の壁電圧とは電極を覆う誘電体層や蛍光体層上等に蓄積した壁電荷により生じる電圧を指す。
その後、維持電極SU1〜SUnを正の電圧Vh(V)に保ち、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3(V)から電圧Vi4(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて2回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。
続く書込み期間では、走査電極SC1〜SCnを一旦Vc(V)に保持する。次に、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Va(V)を印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に表示すべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vd(V)を印加する。このときデータ電極Dkと走査電極SC1との交差部の電圧は、外部印加電圧(Vd−Va)(V)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、この放電セルの走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に表示すべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vd(V)を印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
続く維持期間では、走査電極SC1〜SCnには第1の電圧として正の維持パルス電圧Vs(V)を、維持電極SU1〜SUnには第2の電圧として接地電位、すなわち0(V)をそれぞれ印加する。このとき書込み放電を起こした放電セルにおいては、走査電極SCi上と維持電極SUi上との間の電圧は維持パルス電圧Vs(V)に走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。このときデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。
書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは、維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保持される。続いて、走査電極SC1〜SCnには第2の電圧である0(V)を、維持電極SU1〜SUnには第1の電圧である維持パルス電圧Vs(V)をそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との間の電圧が放電開始電圧を超えるので、再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。
以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加することにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。こうして維持期間における維持動作が終了する。
続くサブフィールドにおける初期化期間、書込み期間、維持期間の動作も第1サブフィールドにおける動作とほぼ同様のため、説明を省略する。
図5に上記で説明した構造のPDPを組み込んだプラズマディスプレイ装置の全体構成の一例を示し、図6に背面側から見たPDPモジュールの駆動回路ブロックの配置の一例を示し、図7にPDPを背面板側および前面板側から見た平面図を示し、図8に背面側から見たPDPモジュールの要部を示している。
図5において、20は金属製の放熱板を兼ねた保持板としてのシャーシ部材で、このシャーシ部材20の前面側には、PDP14がシャーシ部材20との間に放熱シート21を介在させて接着材などにより接着することにより、保持されている。また、シャーシ部材20の背面側には、図5に示すように、PDP14を表示駆動させるための複数の駆動回路ブロック22が配置され、これによりPDPモジュールが構成されている。なお、シャーシ部材20に設けたピン20aには、駆動回路ブロック22がビスなどにより取り付けられている。
このような構造のPDPモジュールは、図5に示すように、前記PDP14の前面側に配置される前面保護カバー23と、前記シャーシ部材20の背面側に配置される金属製のバックカバー24とを有する筐体内に収容され、これによりプラズマディスプレイ装置が完成する。前記バックカバー24には、モジュールで発生した熱を外部に放出するための複数の通気孔24aが設けられている。
次に、PDPのパネル部およびPDPモジュールについて、図6、図7、図8により詳しく説明する。
まず、PDP14は、図7に示すように、前面板1の相対する両側端部には、複数の表示電極6を構成する走査電極4および維持電極5に接続された電極端子部14a、14bが設けられ、また背面板2の一方の端部である下端部には、複数のデータ電極10に接続された電極端子部14cが設けられている。
そして、図6に示すように、PDP14の両側端部には、走査電極3および維持電極4の電極端子部14a、14bに接続された表示電極用の配線基板としてのフレキシブル配線板25が設けられ、シャーシ部材20の外周部を通して背面側に引き回され、走査電極駆動回路17の駆動回路基板26および維持電極駆動回路18の駆動回路基板27にコネクタを介して接続されている。
一方、PDP14の下端部には、図8に示すように、データ電極10の電極端子部14cに接続されたデータ電極用配線基板としての複数のフレキシブル配線板28が設けられ、そしてそのフレキシブル配線板28は、シャーシ部材20の外周部を通して背面側に引き回され、データ電極10に駆動電圧を印加するためのデータ電極駆動回路16の複数のデータドライバー29それぞれに電気的に接続されるとともに、前記シャーシ部材20の背面側の下部位置に配置されたデータ電極駆動回路16の駆動回路基板30に電気的に接続されている。なお、図8において、データドライバー29は、放熱板上に半導体チップを配置するとともに、その半導体チップの複数の電極パッドそれぞれをフレキシブル配線板28の配線パターンに接続した構造である。また、駆動回路基板30には、フレキシブル配線板28を接続するためのコネクタ30aが設けられている。
制御回路基板31は、テレビジョンチューナ等の外部機器に接続するための接続ケーブルが着脱可能に接続される入力端子部を備えた入力信号回路ブロック32から送られる映像信号に基づき、画像データをPDP14の画素数に応じた画像データ信号に変換してデータ電極駆動回路16の駆動回路基板30に供給すると共に、放電制御タイミング信号を発生し、各々走査電極駆動回路17の駆動回路基板26および維持電極駆動回路18の駆動回路基板27に供給し、階調制御等の表示駆動制御を行うもので、シャーシ部材20のほぼ中央部に配置されている。
電源ブロック33は、前記各回路ブロックに電圧を供給するもので、前記制御回路基板31と同様、シャーシ部材20のほぼ中央部に配置され、電源ケーブル(図示せず)が装着されるコネクタを通して商用電源電圧が供給される。また、前記駆動回路基板の近傍には、冷却ファン(図示せず)がアングルに保持されて配置されており、この冷却ファンから送られる風により駆動回路基板が冷却されるように構成されている。
次に本発明で用いるPDPの構成について、さらに詳細に説明する。
図9は本発明におけるPDP14の前面板1の構成を示す断面図であり、図9に示すように、フロート法などにより製造された前面ガラス基板に、走査電極4と維持電極5よりなる表示電極6と遮光層7がパターン形成されている。走査電極4と維持電極5はそれぞれインジウムスズ酸化物(ITO)や酸化スズ(SnO2)などからなる透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に形成された金属バス電極4b、5bとにより構成されている。金属バス電極4b、5bは透明電極4a、5aの長手方向に導電性を付与する目的として用いられ、銀(Ag)材料を主成分とする導電性材料によって形成されている。
誘電体層8は、前面ガラス基板3上に形成されたこれらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bと遮光層7を覆って設けた第1誘電体層81と、第1誘電体層81上に形成された第2誘電体層82の少なくとも2層構成とし、さらに第2誘電体層82上に保護層9を形成している。
ここで、前面板1の誘電体層8を構成する第1誘電体層81と第2誘電体層82について詳細に説明する。
まず、第1誘電体層81の誘電体材料は、次の材料組成より構成されている。すなわち、酸化ビスマス(Bi23)を20重量%〜40重量%含み、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも1種を0.5重量%〜12重量%含み、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化マンガン(MnO2)から選ばれる少なくとも1種を0.1重量%〜7重量%含んでいる。
なお、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化マンガン(MnO2)に代えて、酸化銅(CuO)、酸化クロム(Cr23)、酸化コバルト(Co23)、酸化バナジウム(V27)、酸化アンチモン(Sb23)から選ばれる少なくとも1種を0.1重量%〜7重量%含ませてもよい。
また、上記以外の成分として、酸化亜鉛(ZnO)を0重量%〜40重量%、酸化硼素(B23)を0重量%〜35重量%、酸化硅素(SiO2)を0重量%〜15重量%、酸化アルミニウム(Al23)を0重量%〜10重量%など、鉛成分を含まない材料組成が含まれていてもよく、これらの材料組成の含有量に特に限定はなく、従来技術程度の材料組成の含有量範囲である。
これらの組成成分からなる誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒径が0.5μm〜2.5μmとなるように粉砕して誘電体材料粉末を作製する。次にこの誘電体材料粉末55重量%〜70重量%と、バインダ成分30重量%〜45重量%とを三本ロールでよく混練してダイコート用、または印刷用の第1誘電体層用ペーストを作製する。
バインダ成分はエチルセルロース、またはアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むターピネオール、またはブチルカルビトールアセテートである。また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加して印刷性を向上させてもよい。
この第1誘電体層用ペーストを用い、表示電極6を覆うように前面ガラス基板にダイコート法あるいはスクリーン印刷法で印刷して乾燥させ、その後、誘電体材料の軟化点より少し高い温度の575℃〜590℃で焼成する。
次に、第2誘電体層82について説明する。第2誘電体層82の誘電体材料は、次の材料組成より構成されている。すなわち、酸化ビスマス(Bi23)を11重量%〜20重量%含み、さらに、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも1種を1.6重量%〜21重量%含み、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)から選ばれる少なくとも1種を0.1重量%〜7重量%含んでいる。
なお、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)に代えて、酸化銅(CuO)、酸化クロム(Cr23)、酸化コバルト(Co23)、酸化バナジウム(V27)、酸化アンチモン(Sb23)、酸化マンガン(MnO2)から選ばれる少なくとも1種を0.1重量%〜7重量%含ませてもよい。
また、上記以外の成分として、酸化亜鉛(ZnO)を0重量%〜40重量%、酸化硼素(B23)を0重量%〜35重量%、酸化硅素(SiO2)を0重量%〜15重量%、酸化アルミニウム(Al23)を0重量%〜10重量%など、鉛成分を含まない材料組成が含まれていてもよく、これらの材料組成の含有量に特に限定はなく、従来技術程度の材料組成の含有量範囲である。
これらの組成成分からなる誘電体材料を、湿式ジェットミルやボールミルで平均粒径が0.5μm〜2.5μmとなるように粉砕して誘電体材料粉末を作製する。次にこの誘電体材料粉末55重量%〜70重量%と、バインダ成分30重量%〜45重量%とを三本ロールでよく混練してダイコート用、または印刷用の第2誘電体層用ペーストを作製する。バインダ成分はエチルセルロース、またはアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むターピネオール、またはブチルカルビトールアセテートである。また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加して印刷性を向上させてもよい。
この第2誘電体層用ペーストを用いて第1誘電体層81上にスクリーン印刷法であるいはダイコート法で印刷して乾燥させ、その後、誘電体材料の軟化点より少し高い温度の550℃〜590℃で焼成する。
なお、誘電体層8の膜厚については、第1誘電体層81と第2誘電体層82とを合わせ、可視光透過率を確保するためには41μm以下が好ましい。第1誘電体層81は、金属バス電極4b、5bの銀(Ag)との反応を抑制するために酸化ビスマス(Bi23)の含有量を第2誘電体層82の酸化ビスマス(Bi23)の含有量よりも多くし、20重量%〜40重量%としている。そのため、第1誘電体層81の可視光透過率が第2誘電体層82の可視光透過率よりも低くなるので、第1誘電体層81の膜厚を第2誘電体層82の膜厚よりも薄くしている。
なお、第2誘電体層82において酸化ビスマス(Bi23)が11重量%以下であると着色は生じにくくなるが、第2誘電体層82中に気泡が発生しやすく好ましくない。また、40重量%を超えると着色が生じやすくなり透過率を上げる目的には好ましくない。
また、誘電体層8の膜厚が小さいほどパネル輝度の向上と放電電圧を低減するという効果は顕著になるので、絶縁耐圧が低下しない範囲内であればできるだけ膜厚を小さく設定するのが望ましい。このような観点から、本発明の実施の形態では、誘電体層8の膜厚を41μm以下に設定し、第1誘電体層81を5μm〜15μm、第2誘電体層82を20μm〜36μmとしている。
このようにして製造されたPDPは、表示電極6に銀(Ag)材料を用いても、前面ガラス基板3の着色現象(黄変)が少なくて、なおかつ、誘電体層8中に気泡の発生などがなく、絶縁耐圧性能に優れた誘電体層8を実現することができる。
すなわち、本発明におけるPDP14の誘電体層8は、銀(Ag)材料よりなる金属バス電極4b、5bと接する第1誘電体層81では黄変現象と気泡発生を抑制し、第1誘電体層81上に設けた第2誘電体層82によって高い光透過率を実現している。その結果、誘電体層8全体として、気泡や黄変の発生が極めて少なく透過率の高いPDPを実現することが可能となる。
次に、本発明におけるPDP14の保護層の構成および製造方法について説明する。
本発明によるPDPにおいては、図9に示すように、保護層9は、前記誘電体層8上に、Alを不純物として含有するMgOからなる下地膜91を形成するとともに、その下地膜91上に、金属酸化物であるMgOの結晶粒子92aが数個凝集した凝集粒子92を離散的に散布させ、全面に亘ってほぼ均一に分布するように複数個付着させることにより構成している。
ここで、凝集粒子92とは、図10に示すように、所定の一次粒径の結晶粒子92aが凝集またはネッキングした状態のもので、固体として大きな結合力を持って結合しているのではなく、静電気やファンデルワールス力などによって複数の一次粒子が集合体の体をなしているもので、超音波などの外的刺激により、その一部または全部が一次粒子の状態になる程度で結合しているものである。凝集粒子92の粒径としては、約1μm程度のもので、結晶粒子92aとしては、14面体や12面体などの7面以上の面を持つ多面体形状を有するのが望ましい。
また、このMgOの結晶粒子92aの一次粒子の粒径は、結晶粒子92aの生成条件によって制御できる。例えば、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムなどのMgO前駆体を焼成して生成する場合、焼成温度や焼成雰囲気を制御することで、粒径を制御できる。一般的に、焼成温度は700度程度から1500度程度の範囲で選択できるが、焼成温度が比較的高い1000度以上にすることで、一次粒径を0.3〜2μm程度に制御可能である。さらに、結晶粒子92aをMgO前駆体を加熱することにより得ることにより、生成過程において、複数個の一次粒子同士が凝集またはネッキングと呼ばれる現象により結合した凝集粒子92を得ることができる。
図11は、本発明によるPDPの効果を確認するために、電子放出性能と電荷保持性能を調べた実験結果を示す図である。図11において、試作品1は、MgOによる保護層のみを形成したPDP、試作品2は、Al,Siなどの不純物をドープしたMgOによる保護層を形成したPDP、試作品3は本発明品で、MgOによる下地膜上に、MgOの単結晶粒子を凝集させた結晶粒子を全面に亘ってほぼ均一に分布するように付着させたPDPである。なお、試作品3において、下地膜上に付着させた結晶粒子について、カソードルミネッセンスを測定したところ、図12に示すような特性を有していた。
また図11において、電子放出性能は、大きいほど電子放出量が多いことを示す数値で、放電の表面状態およびガス種とその状態によって定まる初期電子放出量をもって表現する。初期電子放出量については表面にイオン、あるいは電子ビームを照射して表面から放出される電子電流量を測定する方法で測定できるが、PDPの前面板表面の評価を非破壊で実施することは困難を伴う。そこで、特開2007−48733号公報に記載されているように、放電時の遅れ時間のうち、統計遅れ時間と呼ばれる放電の発生しやすさの目安となる数値を測定し、その逆数を積分することで、初期電子の放出量と線形に対応する数値になるため、ここではこの数値を用いて評価している。この放電時の遅れ時間とは、パルスの立ち上がりから放電が遅れて行われる放電遅れの時間を意味し、放電遅れは、放電が開始される際にトリガーとなる初期電子が保護層表面から放電空間中に放出されにくいことが主要な要因として考えられている。
電荷保持性能は、その指標として、PDPとして作成した場合に電荷放出現象を抑えるために必要とする、走査電極に印加する電圧(以下Vscn点灯電圧と呼称する)の電圧値を用いた。すなわち、Vscn点灯電圧の低い方が電荷保持能力が高いことを示す。このことは、PDPのパネル設計上でも低電圧で駆動できるため、電源や各電気部品として、耐圧および容量の小さい部品を使用することが可能となる。現状の製品において、走査電圧を順次パネルに印加するためのMOSFETなどの半導体スイッチング素子には、耐圧150V程度の素子が使用されており、Vscn点灯電圧としては、温度による変動を考慮し、120V以下に抑えるのが望ましい。
図11から明らかなように、MgOによる下地膜上にMgOの単結晶粒子を凝集させた結晶粒子を散布し、全面に亘ってほぼ均一に分布するように複数個付着させた本発明による試作品3は、電荷保持性能の評価において、Vscn点灯電圧を120V以下にすることができ、しかも電子放出性能は6以上の良好な特性を得ることができる。
このように本発明によるPDP14は、電子放出能力が6以上の特性で、電荷保持能力としてのVscn点灯電圧が120V以下のものとすることができ、これにより高精細化により走査線数が増加し、かつセルサイズが小さくなっても、所定の書込み期間内で、各放電セルに十分な壁電圧を蓄積することができるため、図6、図7に示すように、データ電極に駆動電圧を印加するためのデータドライバーを下端部側のみに配置した駆動回路構成とすることができ、データドライバーの個数を少なくすることができるため、装置全体の消費電力を低減させることができるとともに、コストの削減を実現することができる。
ここで、結晶粒子の粒径について説明する。なお、以下の説明において、粒径とは平均粒径を意味し、平均粒径とは、体積累積平均径(D50)のことを意味している。
図13は、上記図11で説明した本発明のPDP14において、MgOの結晶粒子の粒径を変化させて電子放出性能を調べた実験結果を示すものである。なお、図13において、MgOの結晶粒子の粒径は、結晶粒子をSEM観察することで測長した。
この図13に示すように、粒径が0.3μm程度に小さくなると、電子放出性能が低くなり、ほぼ0.9μm以上であれば、高い電子放出性能が得られることがわかる。
ところで、放電セル内での電子放出数を増加させるためには、保護層上の単位面積あたりの結晶粒子数は多い方が望ましいが、本発明者らの実験によれば、前面板の保護膜と密接に接触する背面板の隔壁の頂部に相当する部分に結晶粒子が存在することで、隔壁の頂部を破損させ、その材料が蛍光体の上に乗るなどによって、該当するセルが正常に点灯消灯しなくなる現象が発生することがわかった。この隔壁破損の現象は、結晶粒子が隔壁頂部に対応する部分に存在しなければ発生しにくいことから、付着させる結晶粒子数が多くなれば、隔壁の破損発生確率が高くなる。図14は、単位面積当たりに粒径の異なる同じ数の結晶粒子を散布し、隔壁破損の関係を実験した結果を示す図である。
この図14から明らかなように、結晶粒子径が2.5μm程度に大きくなると、隔壁破損の確率が急激に高くなるが、2.5μmより小さい結晶粒子径であれば、隔壁破損の確率は比較的小さく抑えることができることがわかる。
以上の結果に基づくと、本発明におけるPDP14の結晶粒子としては、粒径が0.9μm以上2.5μm以下のものが望ましいと考えられるが、PDPとして実際に量産する場合には、結晶粒子の製造上でのばらつきや保護層を形成する場合の製造上でのばらつきを考慮する必要がある。このような製造上でのばらつきなどの要因を考慮するために、粒径分布の異なる結晶粒子を用いて実験を行った結果、図15に示すように、平均粒径が0.9μm〜2μmの範囲にある凝集粒子を使用すれば、上述した本発明の効果を安定的に得られることがわかった。
なお、以上の説明では、保護層として、MgOを例に挙げたが、下地に要求される性能はあくまでイオン衝撃から誘電体を守るための高い耐スパッタ性能を有することであり、高い電荷保持能力、すなわちあまり電子放出性能が高くなくてもよい。従来のPDPでは、一定以上の電子放出性能と耐スパッタ性能という二つを両立させるため、MgOを主成分とした保護層を形成する場合が非常に多かったのであるが、電子放出性能が金属酸化物単結晶粒子によって支配的に制御される構成を取るため、MgOである必要は全くなく、Al23等の耐衝撃性に優れる他の材料を用いても全く構わない。
また、本実施の形態では、単結晶粒子としてMgO粒子を用いて説明したが、この他の単結晶粒子でも、MgO同様に高い電子放出性能を持つSr,Ca,Ba,Al等の金属の酸化物による結晶粒子を用いても同様の効果を得ることができるため、粒子種としてはMgOに限定されるものではない。
以上説明したように本発明によるプラズマディスプレイ装置は、PDP14として、表示電極6を覆う誘電体層8上に下地膜91を形成するとともに、その下地膜91に金属酸化物からなる凝集粒子92を全面に亘って分布するように複数個付着させた構成とし、かつPDP14を保持するシャーシ部材20と、このシャーシ部材20に配置されるとともに前記PDP14の表示電極6の電極端子部14a、14bにフレキシブル配線板25を介して接続され前記PDP14の表示電極6に駆動電圧を印加するための駆動回路基板26、27と、前記シャーシ部材20において前記PDP14のデータ電極10の電極端子部14cに近接した一方の端部に配置されるとともに前記PDP14のデータ電極10の電極端子部14cにフレキシブル配線板28を介して接続されかつ前記データ電極10に駆動電圧を印加するための複数のデータドライバー29とを備えた構成としたもので、高精細化により走査線数が増加し、かつセルサイズが小さくなっても、所定の書込み期間内で、各放電セルに十分な壁電圧を蓄積することができるため、データ電極に駆動電圧を印加するためのデータドライバーを下端部側のみに配置した駆動回路構成とすることができ、データドライバーの個数を少なくすることができるため、装置全体の消費電力を低減させることができるとともに、コストの削減を実現することができる。
以上のように本発明は、高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力のプラズマディスプレイ装置を実現する上で有用な発明である。
本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるPDPの構造を示す斜視図 同PDPの電極配列図 本発明のプラズマディスプレイ装置のブロック回路図 同装置の駆動電圧波形図 本発明のプラズマディスプレイ装置の全体構成を示す分解斜視図 同装置のPDPモジュール部分を背面側から見た平面図 同PDPモジュールのPDPを背面側および前面側から見た平面図 同PDPモジュールの要部を拡大して示す平面図 本発明のプラズマディスプレイ装置のPDPの前面板の構成を示す断面図 同PDPの保護層において、凝集粒子を説明するための拡大図 本発明による効果を説明するために行った実験結果において、PDPにおける電子放出特性とVscn点灯電圧の検討結果を示す特性図 結晶粒子のカソードルミネッセンス測定結果を示す特性図 結晶粒子の粒径と電子放出特性の関係を示す特性図 結晶粒子の粒径と隔壁の破損の発生率との関係を示す特性図 本発明によるPDPにおいて、凝集粒子の粒度分布の一例を示す特性図
符号の説明
1 前面板
2 背面板
3 放電空間
4 走査電極
5 維持電極
6 表示電極
8 誘電体層
9 保護層
91 下地膜
92 凝集粒子
92a 結晶粒子
10 データ電極
14 PDP
14a、14b、14c 電極端子部
16 データ電極駆動回路
17 走査電極駆動回路
18 維持電極駆動回路
20 シャーシ部材
25、28 フレキシブル配線板
26、27、30 駆動回路基板
29 データドライバー

Claims (2)

  1. 相対する両側端部に電極端子部を設けた複数の表示電極を有する前面板と前記表示電極に交差する方向に配列するとともに一方の端部に電極端子部を設けた複数のデータ電極を有する背面板とからなりかつ前記前面板と背面板とを間に放電空間を形成するように対向配置して構成したプラズマディスプレイパネルと、このプラズマディスプレイパネルを保持するシャーシ部材と、このシャーシ部材に配置されるとともに前記プラズマディスプレイパネルの表示電極の電極端子部に配線基板を介して接続され前記プラズマディスプレイパネルの表示電極に駆動電圧を印加するための駆動回路基板と、前記シャーシ部材において前記プラズマディスプレイパネルのデータ電極の電極端子部に近接した一方の端部に配置されるとともに前記プラズマディスプレイパネルのデータ電極の電極端子部に配線基板を介して接続されかつ前記データ電極に駆動電圧を印加するための複数のデータドライバーとを備え、かつ前記プラズマディスプレイパネルは、表示電極を覆う誘電体層上に下地膜を形成するとともに、その下地膜に酸化マグネシウムからなる結晶粒子が複数個凝集した凝集粒子を全面に亘って離散的に分布するように複数個付着させることにより構成し、前記凝集粒子はMgO前駆体を焼成して生成され、前記結晶粒子の粒径が0.3〜2μmであることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
  2. 前記下地膜上に、全面に亘ってほぼ均一に分布するように前記凝集粒子を複数個付着させたことを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
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