中空柱は、上述したように、側面開口から中空柱の内部に複数の補強用棒状部材を挿入されて補強されているが、このように補強用棒状部材で補強された中空柱であっても、その地際部分は、地中に埋設された地中部分における支持強度と地上部分における支持強度の強度差により曲がったり、折れ易く、例えばトラックなどの車両が中空柱に当ったりすると、その地際の部分から曲がり易いとともに、またこの地際部分には例えば犬などが好んでおしっこをかけることが多いため、他の部分に比較して腐食しやすく、この腐食した地際部分から倒壊するおそれがある。
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、中空柱の地際部分を更に強固に補強することができる中空柱の補強構造およびこの補強構造を用いた中空柱の補強方法を提供することにある。
上記課題を達成するため、請求項1記載の中空柱の補強構造は、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強構造であって、中空柱の長手方向に沿って中空柱の補強部分に配設される少なくとも1本のアラミドロッドを含む複数の補強用棒状部材と、前記複数の補強用棒状部材を中空柱の周方向に配設する複数の均等配置治具とを有する補強組立体と、前記複数の補強用棒状部材を該補強用棒状部材の長手方向の複数の箇所で前記複数の補強用棒状部材を周囲から締め付つけて結束する結束バンドとを有することを要旨とする。
請求項1記載の中空柱の補強構造では、補強組立体を構成する複数の補強用棒状部材の長手方向の複数の箇所において複数の補強用棒状部材の周囲を複数の結束バンドで取り囲み、周囲から締め付つけて結束し、該複数の補強用棒状部材を一体的に固定しているため、少なくとも1本のアラミドロッドを含む複数の補強用棒状部材が一体的に強固され、折れにくくなっている。
請求項2記載の中空柱の補強構造は、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強構造であって、中空柱の長手方向に沿って中空柱の補強部分に配設される少なくとも1本のアラミドロッドを含む複数の補強用棒状部材と、前記複数の補強用棒状部材を中空柱の周方向に配設する複数の均等配置治具とを有する補強組立体と、前記中空柱の補強部分において前記複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲むように中空柱の内周面に沿って配設され、かつ前記複数の補強用棒状部材の周囲を囲む円周の直径よりも大きい内径を有し、中空柱の内径よりも小さな外径を有する帯状金属体からなる補強環とを有することを要旨とする。
請求項2記載の中空柱の補強構造では、中空柱の補強部分において複数の補強環が少なくとも1本のアラミドロッドを含む複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲むように中空柱の内周面に沿って配設され、補強部分を中心とした所定の領域を覆うように互い密接に配設されるため、地際部分の補強用棒状部材を更に強固にして折れにくくするとともに、複数の補強環が地際部分の中空柱の内周面に近接して配設されることによりこの地際部分の中空柱の強度も増大し、全体として中空柱を非常に強固に補強することができる。
請求項3記載の中空柱の補強構造は、下部が地中に埋設されて地上に立設された中空柱を補強する中空柱の補強構造であって、中空柱の長手方向に沿って中空柱の補強部分に配設される少なくとも1本のアラミドロッドを含む複数の補強用棒状部材と、前記複数の補強用棒状部材を中空柱の周方向に配設する複数の均等配置治具とを有する補強組立体と、前記複数の補強用棒状部材を一体的に固定すべく該複数の補強用棒状部材の長手方向の複数の箇所で前記複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲み、周囲から締め付つけて結束する複数の結束バンドと、前記中空柱の補強部分において前記複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲むように中空柱の内周面に沿って配設され、かつ前記複数の補強用棒状部材の周囲を囲む円周の直径よりも大きい内径を有し、中空柱の内径よりも小さな外径を有する帯状金属体からなる補強環とを有することを要旨とする。
請求項3記載の中空柱の補強構造では、補強組立体を構成する複数の補強用棒状部材の長手方向の複数の箇所において少なくとも1本のアラミドロッドを含む複数の補強用棒状部材の周囲を複数の結束バンドで取り囲んで周囲から締め付つけて結束し、該複数の補強用棒状部材を一体的に固定するとともに、中空柱の補強部分において複数の補強環が複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲むように中空柱の内周面に沿って配設され、補強部分を中心とした所定の領域を覆うように互い密接に配設されるため、複数の補強用棒状部材が結束バンドと補強環とにより一体的に強固され、折れにくくなっているとともに、複数の補強環が地際部分の中空柱の内周面に近接して配設されることによりこの地際部分の中空柱の強度も増大し、全体として中空柱を非常に強固に補強することができる。
請求項4記載の中空柱の補強構造は、前記補強環は、外周面を補強用シートで巻回されていることを要旨とする。
請求項4記載の中空柱の補強構造では、前記補強環は、外周面を補強用シートで、たとえば一重乃至三重に卷回されている。
請求項5記載の中空柱の補強構造は、前記結束バンドが、ステンレススチール製バンドまたはビニールバンドであることを要旨とする。
請求項5記載の中空柱の補強構造では、結束バンドがステンレススチール製バンドまたはビニールバンドである。
請求項6記載の中空柱の補強構造は、前記補強用シートは、アラミドシート若しくは炭素繊維シートであることを要旨とする。
請求項6記載の中空柱の補強構造では、補強部分において補強用シートとしてアラミドシート若しくは炭素繊維シートを用いて、当該部分の複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲こみ、補強用棒状部材の外周方向への屈曲を防止している。
請求項7記載の中空柱の補強構造は、前記複数の補強用棒状部材が、複数のアラミドロッドと複数のPC鋼線とを有し、この複数のアラミドロッドと複数のPC鋼線は、中空柱の周方向に交互に配設されることを要旨とする。
請求項7記載の中空柱の補強構造では、複数の補強用棒状部材が複数のアラミドロッドと複数のPC鋼線であり、この複数のアラミドロッドと複数のPC鋼線は中空柱の周方向に交互に配設されている。
請求項8記載の中空柱の補強構造は、前記中空柱の補強部分が、中空柱の地中に埋設された地中部分と中空柱の地上に立設された地上部分との境の地際を中心とした部分であることを要旨とする。
請求項8記載の中空柱の補強構造では、中空柱の補強部分は中空柱の地中に埋設された地中部分と中空柱の地上に立設された地上部分との境の地際を中心とした部分であり、この構造的に弱い地際部分を補強している。
請求項9記載の中空柱の補強方法は、請求項3記載の中空柱の補強構造を用いた中空柱の補強方法であって、前記補強組立体を中空柱内でガイド棒に沿って上下動して、補強組立体の複数の補強用棒状部材の長手方向の所望の各部を地上に比較的近い中空柱の側部に形成された側部開口に対して順次露出し、この側部開口から結束バンドを挿入し、側部開口に露出した複数の補強用棒状部材の各部を結束バンドで順次結束し、バンドで各部を結束された複数の補強用棒状部材を含む補強組立体を中空柱内で側部開口よりも上方に引き上げて一時的に固定し、複数の補強環の一つを最下部の補強環としてこの最下部の補強環にワイヤを固定し、この最下部の補強環に対して前記ワイヤで他の複数の補強環を順次連結し、この連結された複数の補強環のうちの最下部の補強環を中空柱の側部開口から中空柱内に挿入して、前記ワイヤで吊りながら中空柱内の補強部分の少し下方に下降させ、複数の補強環のうちの残りの補強環を一つずつ中空柱の側部開口から中空柱内に順次挿入し、前記ワイヤで吊りながら中空柱内を下方に下降させ、最下部の補強環の上に順次積み重ね、この積み重ねた複数の補強環をその中間の補強環が中空柱内の補強部分のほぼ中央に位置するように配置し、前記上方に引き上げて一時的に固定されている補強組立体を中空柱内で前記複数の補強環を貫通させながら下降させ、前記中空柱の補強部分を保護し得る所定の位置で固定することを要旨とする。
請求項9記載の中空柱の補強方法では、補強組立体を上下動して、補強用棒状部材の各部を側部開口に順次露出し、補強用棒状部材の各部を結束バンドで順次結束し、補強組立体を上方に引き上げて一時的に固定し、ワイヤで連結された複数の補強環を中空柱内に順次挿入し、ワイヤで吊りながら下降させ、中空柱内の補強部分に配置し、上方に引き上げていた補強組立体を複数の補強環を貫通させながら下降させ、補強部分で固定するため、複数の補強用棒状部材が結束バンドと補強環とにより一体的にして強固され、折れにくくなっているとともに、複数の補強環が地際部分の中空柱の内周面に近接して配設されることによりこの地際部分の中空柱の強度も増大し、全体として中空柱を非常に強固に補強することができる。
請求項10記載の中空柱の補強方法は、ガイド棒が挿通されるように構成される中心部と、この中心部から中空柱の内周面に向かって当接するように中空柱の周方向に等角度で均等に伸長したり、中空柱の内周面から離隔してガイド棒にほぼ平行になるように縮退する複数の縮退自在アームとを有する保護アーム組立体を設け、前記補強組立体を中空柱内で側部開口よりも上方に引き上げて一時的に固定した後であって、前記補強環を中空柱の側部開口から中空柱内に挿入する前において、前記保護アーム組立体の複数の縮退自在アームを縮退させた状態で中空柱の側部開口から中空柱内に挿入し、この保護アーム組立体の中心部にガイド棒を挿通させながら、縮退自在アームを縮退した状態でガイド棒に沿って中空柱内を所望の下方まで下降させて、所望の下方位置で固定し、この固定した位置において保護アーム組立体の縮退自在アームを中空柱の内周面に向かって伸長させることを要旨とする。
請求項10記載の中空柱の補強方法では、補強組立体を上方に引き上げて一時的に固定した後であって、補強環を中空柱内に挿入する前において、保護アーム組立体の複数の縮退自在アームを縮退させて中空柱内に挿入して下方まで下降させて、所望の下方位置で固定し、縮退自在アームを中空柱の内周面に向かって伸長させるため、この後に補強環を中空柱内に挿入し、補強環を下降させる場合に、仮に補強環が落下しても、縮退自在アームに引っ掛かって保護することができるとともに、この縮退自在アームに引っ掛かった補強環を簡単に取り戻すことができる。
本発明によれば、補強組立体を構成する複数の補強用棒状部材の長手方向の複数の箇所において少なくとも1本のアラミドロッドを含む複数の補強用棒状部材の周囲を複数の結束バンドで取り囲んで結束し、該複数の補強用棒状部材を一体的に固定しているので、複数の補強用棒状部材が一体的に強固され、折れにくくなっている。
また、本発明によれば、中空柱の補強部分において少なくとも1本のアラミドロッドを含む複数の補強環が複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲むように中空柱の内周面に沿って配設され、補強部分を中心とした所定の領域を覆うように互い密接に配設されるので、地際部分の補強用棒状部材を更に強固にして折れにくくするとともに、複数の補強環が地際部分の中空柱の内周面に近接して配設されることによりこの地際部分の中空柱の強度も増大し、全体として中空柱を非常に強固に補強することができる。
更に、本発明によれば、補強組立体を構成する複数の補強用棒状部材の長手方向の複数の箇所において少なくとも1本のアラミドロッドを含む複数の補強用棒状部材の周囲を複数の結束バンドで取り囲んで結束し、該複数の補強用棒状部材を一体的に固定するとともに、中空柱の補強部分において複数の補強環が複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲むように中空柱の内周面に沿って配設され、補強部分を中心とした所定の領域を覆うように互い密接に配設されるので、複数の補強用棒状部材が結束バンドと補強環とにより一体的に強固され、折れにくくなっているとともに、複数の補強環が地際部分の中空柱の内周面に近接して配設されることによりこの地際部分の中空柱の強度も増大し、全体として中空柱を非常に強固に補強することができる。
本発明によれば、補強組立体を上方に引き上げて一時的に固定した後であって、補強環を中空柱内に挿入する前において、保護アーム組立体の複数の縮退自在アームを縮退させて中空柱内に挿入して下方まで下降させて固定し、縮退自在アームを中空柱の内周面に向かって伸長させるので、この後に補強環を中空柱内に挿入し、補強環を下降させる場合に、仮に補強環が落下しても、縮退自在アームに引っ掛かって保護することができるとともに、この縮退自在アームに引っ掛かった補強環を簡単に取り戻すことができる。
以下、図面を用いて、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する)を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係わる中空柱の補強構造を適用した中空柱の内部構造を示す断面図である。同図に示す補強構造は、中空柱1として例えば鋼管柱に適用した場合を示しているが、鋼管柱に限らず、コンクリート製電柱などにも適用できることは勿論である。なお、図1、図2、図5、図9、図10は、各構成要素の機能的構成を示すことを重点としていて、全体的大きさや相互の距離や大小関係はある程度無視して図示され、特に縦方向の寸法は縮小されて描かれているものであることを理解されたい。
図1に示す中空柱1は、上部が省略されて図示されていないが、その最下端から所定長の下部が地中部分として地中に埋設されて立設され、地上には残りの部分が地上部分として現れ、その内部構造は空洞、すなわち中空の筒状体となっていて、その地中部分と地上部分との境の地際を補強するために、地際を挟んで中空柱1内に長手方向に沿って挿入された複数の補強用棒状部材であるアラミドロッド3とPC鋼線5で補強されている。
中空柱1は、地際から例えば地上約900mmの側面に幅55mm、長さ400mm程度の側部開口1aが中空柱1の長手方向に沿って形成され、この側部開口1aから前記アラミドロッド3とPC鋼線5などの複数の補強用棒状部材が中空柱1内に入れられて中空柱1を補強している。
また、アラミドロッド3およびPC鋼線5からなる複数の補強用棒状部材は、中空柱1の周方向に等角度で均等に配設され得るように均等配置治具である複数のロッド配置用スペーサ7で保持されている。この複数のロッド配置用スペーサ7は、所定の間隔をあけて複数の補強用棒状部材を一体的に保持するように配設されている。なお、この複数のロッド配置用スペーサ7、および該複数のロッド配置用スペーサ7で一体的に保持された複数の補強用棒状部材は、補強組立体を構成するものである。更に、複数の補強用棒状部材を構成する複数のアラミドロッドと複数のPC鋼線は、中空柱1の周方向に交互に配設されている。
上述したように、所定の間隔をあけて配設された複数のロッド配置用スペーサ7の間においては、この間の複数の補強用棒状部材を更に一体的に固定すべく複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲んで結束するように結束バンドであるビニールバンド9が複数の補強用棒状部材を締め付けるように配設されている。
図2は、図1に示す中空柱1の一部を切り取って、上述したロッド配置用スペーサ7と、このロッド配置用スペーサ7で一体的に保持されたアラミドロッド3とPC鋼線5からなる複数の補強用棒状部材と、ロッド配置用スペーサ7の間の複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲んで結束しているビニールバンド9とを拡大して示す断面図である。
図2からよく分かるように、2個のロッド配置用スペーサ7の間において複数の補強用棒状部材を結束しているビニールバンド9は、図2では6本あり、この6本のビニールバンド9は、複数の補強用棒状部材の周囲に巻かれた後、結束ガンで締め付けられてから切断されるが、この切断された結束部は、図2では符号9aで示す箇所である。また、図2においては、ロッド配置用スペーサ7に複数のいもねじ7aが螺合していることが分かるが、このいもねじ7aにより各補強用棒状部材をロッド配置用スペーサ7に固定的に保持しているものである。
更に、図1に示すように、中空柱1の内部の地際を中心として上下に所定の長さの範囲には、具体的には、地際を中心に上下に約150mmの範囲(全体で約300mmの範囲)には、複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲むように中空柱1の内周面に沿って複数の、本実施形態では6個の補強環11が連結されて配設されている。すなわち、この複数の補強環11は、本実施形態の補強したい部分である地際を中心とした所定の領域である前記範囲を覆うように互い密接に配設されている。
図3は、この補強環11の1つを示す斜視図であり、図4は、補強環11を6個連結して示す斜視図である。両図から分かるように、補強環11の内周面には、3つのスリーブ11aが円周方向に等角度で溶接などにより取り付けられている。このスリーブ11aに対して図4に示すように3本のステンレスワイヤ21を挿通して6個の補強環11を連結する。更に詳しくは、図4において、6個の補強環11のうちの最下部の補強環11のスリーブ11aに挿通したステンレスワイヤ21の下端部を係止させるため、ステンレスワイヤ21の下端部を挿通された最下部の補強環11のスリーブ11aをつぶすなどして、ステンレスワイヤ21の下端部がスリーブ11aから抜けないように係止し、これにより3本のステンレスワイヤ21で6個の補強環11を吊るすことができるようにする。
なお、補強環11は、アルミニウムまたはステンレススチールで環状体に形成され、このアルミニウムまたはステンレススチールで形成された環状体の外周にアラミドシートが一重乃至三重に卷回されて形成されている。また、アルミニウムまたはステンレススチールで形成される環状体である補強環の板厚は、例えば0.6mm乃至2.0補強構造であり、幅は例えば50mmである。
なお、上述したように、複数の補強用棒状部材を結束している結束バンドは、中空柱1の補強したい部分であり、前記6個の補強環11で囲まれた部分において複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲んで結束するバンドとしては、ビニールバンド9の代わりにステンレススチール製バンドを使用して、当該部分の複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲んで結束し、一体的に固定し、この補強部分の補強強度を増大することが好ましい。
中空柱1の中心軸には、図1に示すように、中空柱1の底の最下端から側部開口1aの真横までガイド棒13が延出して配設されている。そして、このガイド棒13の下端部には、ガイド棒固定用治具15が取り付けられている。このガイド棒固定用治具15は、ガイド棒13を中空柱1の中心軸に固定的に設定するためのものであって、このガイド棒固定用治具15をガイド棒13の下端部に取り付けてから中空柱1内に挿入することにより、ガイド棒13が中空柱1の底部において中空柱1の中心軸に固定されるようになっている。
ガイド棒3のガイド棒固定用治具15が取り付けられている上方には、短パイプ状のストッパー17が固定的に取り付けられているが、このストッパー17は、前記複数の補強用棒状部材を保持している複数のロッド配置用スペーサ7のうちの一番下のロッド配置用スペーサ7をこの位置に固定的に支持し、この位置において複数のロッド配置用スペーサ7とこのロッド配置用スペーサ7で保持された複数の補強用棒状部材からなる補強組立体の全体を支持するようになっている。
更に、図1に示すように、側部開口1cの近傍には別のガイド棒固定用治具19が設けられ、このガイド棒固定用治具19の中心にはガイド棒13が挿入され、これによりガイド棒13を側部開口1cの近辺においても中空柱1の中心軸に合わせるようになっている。なお、ガイド棒13は、このガイド棒固定用治具19に挿入されることにより中空柱1の中心軸に合わされて固定されるとともに、複数のロッド配置用スペーサ7の中心穴も挿通して、ロッド配置用スペーサ7の中心穴を中空柱1の中心軸に合わせるようになっている。
図5は、上述したように、複数のロッド配置用スペーサ7とこの複数のロッド配置用スペーサ7で保持された複数の補強用棒状部材からなる補強組立体の一番上のロッド配置用スペーサ7に2本のビニールロープ25をループ状に取り付け、この2本のビニールロープ25の上端に2本のステンレスワイヤ27をそれぞれ結び、この2本のステンレスワイヤ27を中空柱1の上方に形成した2個のワイヤ通線孔29に通して中空柱1の内部から外部に取り出し、この外部に取り出した2本のステンレスワイヤ27を外部で矢印100で示す方向に引っ張ることにより補強組立体の全体を側部開口1cよりも上方に引き上げた状態を示しているものである。
なお、補強組立体の全体を上方に引き上げたステンレスワイヤ27の先端は、例えば図示しないビニールロープを取り付けられ、このビニールロープを図示しない固定部、例えば中空柱1の下部に巻き付けたりまたは締め付けるなどして固定されたフック部などのような固定部に結ぶなどして一時的に固定し、これにより補強組立体の全体を図5のように側部開口1cよりも上方に引き上げた状態で一時的に固定することができる。
このように補強組立体の全体を側部開口1cよりも上方に引き上げて一時的に固定した状態において、中空柱1の側部開口1cよりも下方の空いた空間のガイド棒13に対して図5のように保護アーム組立体31を取り付ける。
この保護アーム組立体31は、図6および図7に拡大して示すように、ガイド棒13が挿通され、上下に分離した2個の中心部31a、31bと、この中心部31a、31bから中空柱1の内周面に向かって当接するように中空柱1の周方向に等角度で均等に図6のように伸長したり、中空柱1の内周面から離隔してガイド棒13にほぼ平行になるように図7のように縮退する複数の、本実施形態では3本の縮退自在アーム33とから構成されている。
また、図5乃至図7に示すように、保護アーム組立体31の下側の中心部31bの下には六角形の高ナット35がガイド棒13を挿通されて取り付けられ、上側の中心部31aの上には六角形の高ナットなどからなる重り37がガイド棒13を挿通されて取り付けられ、この重り37の上方には六角形の高ナット39がガイド棒13を挿通されて取り付けられている。なお、この高ナット39には、いもねじ41が螺合し得るようになっていて、このいもねじ41を螺合して締め付けることにより高ナット39をガイド棒13に固定し得るようになっている。なお、重り37は、この重り37の重量を上側の中心部31aにかけることにより、縮退自在アーム33を中空柱1の内周面に向かって図6のように伸長させるためのものである。
そして、保護アーム組立体31の中心部31bの下の高ナット35には、ワイヤ43の下端が取り付けられ、このワイヤ43の上端は、上方に高ナット39に取り付けられている。また、保護アーム組立体31の中心部31aにも、別のワイヤ45の下端が取り付けられ、このワイヤ45の上端はループ状に形成されて、高ナット39の上方に突出したガイド棒13に引っ掛けられている。なお、ワイヤ45を上方に引っ張ることにより重り37の重量に抗して上側の中心部31aを上方に引き上げることにより縮退自在アーム33を図7のように縮退させることができる。
図3で説明した補強環11は、図4に示すように6個連結して、図1に示すように中空柱1の補強したい部分である地際において複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲むように中空柱1の内周面に沿って配設されるものであるが、このように複数の補強用棒状部材の周囲を取り囲むように中空柱1の内部に入れるためには、まずロッド配置用スペーサ7と複数の補強用棒状部材からなる補強組立体を図5で説明したように上方に引き上げて一時的に固定し、側部開口1cよりも下方から補強組立体を除去した状態において図8に示すように補強環11を立てながら側部開口1cから中空柱1内に一つずつ順次挿入する。
しかしながら、このように側部開口1cから中空柱1内に挿入された補強環11が中空柱1内で下方に落下する恐れがあるため、このような補強環11の落下を防止するために、図5に示したようにガイド棒13に保護アーム組立体31を取り付け、この保護アーム組立体31を補強部分である地際よりも下方に図5のように設定し、この下方の位置において縮退自在アーム33を中空柱1の内周面に向かって当接するように中空柱1の周方向に図6のように伸長させる。このように縮退自在アーム33を伸長状態に設定することにより、縮退自在アーム33が中空柱1の内周面に向かって全体的に開き、中空柱1の内部を全体的に覆うため、上述したように補強環11を側部開口1cから中空柱1内に挿入した場合に、補強環11が下方に落下したとしても、この伸長状態に設定された縮退自在アーム33により落下した補強環11を受け止め、補強環11のこれ以上の落下を防止することができる。
図9は、上述したように、保護アーム組立体31の縮退自在アーム33を伸長状態で中空柱1の下方に設定した後、補強環11を中空柱1内に順次挿入する様子を示す図である。中空柱1内に挿入する6個の補強環11は、図4で説明したように、3本のステンレスワイヤ21で連結され吊るすことができるように設定されるが、このステンレスワイヤ21による6個の補強環11の連結は、中空柱1内に挿入される前に中空柱1の外部で行われる。
このように中空柱1の外部において3本のステンレスワイヤ21で連結された6個の補強環11は、図9に一部を示すように、空柱1の側部開口1cの真横などの近傍に設定される。このように側部開口1cの近傍に設定された6個の補強環11は、まず最初に最下部となる補強環11が図8に示すように立てながら側部開口1cから中空柱1内に挿入される。なお、この時、この最下部の補強環11には、3本のステンレスワイヤ21が取り付けられているが、この3本のステンレスワイヤ21を引っ張るようにしながら中空柱1内への挿入が行われる。
このようにして側部開口1cから中空柱1内に挿入された最下部の補強環11は、中空柱1内で水平に戻され、ガイド棒13を中にして、3本のステンレスワイヤ21で吊られながら中空柱1内を下降させられ、中空柱1内の補強したい部分である地際の少し下方まで下降し、図9に示すように保護アーム組立体31の少し上で一時的に固定される。なお、この固定は、ステンレスワイヤ21により補強環11を吊るようにして行われる。
上述したように、補強環11を側部開口1cから中空柱1内に挿入し、ステンレスワイヤ21で吊りながら下降させる場合において、側部開口1cよりも下方に縮退自在アーム33が伸長状態の保護アーム組立体31を配設しておくことにより、下降させる補強環11が仮に落下したとしても、この落下した補強環11を保護アーム組立体31の縮退自在アーム33で受け止めることができる。
最下部の補強環11が上述したように地際の少し下方まで下降し、保護アーム組立体31の少し上で一時的に固定された後、次に2番目の補強環11を同様に中空柱1内に挿入し、この2番目の補強環11を最下部の補強環11の上に図9に示すように設定する。次に、同様に、3番目の補強環11を中空柱1内に挿入するが、図9は、この3番目の補強環11を立てながら側部開口1cから挿入しようとする状態を示しているものであり、残りの3個の補強環11がまだ中空柱1の外部にある状態を示している。
図10は、上述した動作を繰り返して、6個の補強環11を側部開口1cから中空柱1内に挿入し、それから保護アーム組立体31を中空柱1内から取り除き、6個の補強環11を3本のステンレスワイヤ21で吊りながらその高さ方向の位置を調整し、中空柱1の補強したい部分である地際を中心に設定した状態を示している。すなわち、この6個の補強環11は、その中間が中空柱1内の補強部分のほぼ中心である地際に位置するように配置されている。なお、保護アーム組立体31を中空柱1内から取り除く処理は、6個の補強環11が所定の地際位置に配置された後でもよい。
また、図10に示すように配置された6個の補強環11を連結して吊り下げている3本のステンレスワイヤ21のうちの1本は、中空柱1の側部開口1cの真向かいの周壁に形成されたビス孔1hになべ小ねじ51で固定され、これにより6個の補強環11が上述した地際の位置に固定されるようになっている。なお、3本のステンレスワイヤ21のうち他の2本のステンレスワイヤ21は、図1に示すように補強組立体を戻した後、この補強組立体の一番上のロッド配置用スペーサ7に取り付けられるものである。
すなわち、図10に示すように、6個の補強環11を補強したい地際に固定した後、図5で説明したように、ステンレスワイヤ27で上方に引き上げた補強組立体、すなわち複数のロッド配置用スペーサ7と複数の補強用棒状部材からなる補強組立体を図10において矢印150で示す方向に下降させるために、ステンレスワイヤ27を矢印200で示す方向にゆるめながら戻すと、補強組立体は下降しながら、その下端部が6個の連結した補強環11の中を貫通し、中空柱1の下方に至り、補強組立体の一番下のロッド配置用スペーサ7の中心部がガイド棒13上のストッパー17に当接し、この当接位置で補強組立体の下降は停止し、補強組立体は図1に示す位置で固定される。
上述したように、中空柱1は、複数のロッド配置用スペーサ7とこの複数のロッド配置用スペーサ7で一体的に保持された複数の補強用棒状部材からなる補強組立体で補強されることに加えて、本実施形態の中空柱の補強構造では、複数の結束バンドであるビニールバンド9で補強組立体の複数の補強用棒状部材を結束し、複数の補強用棒状部材を一体的にして強固にし、折れにくくするとともに、連結された複数の補強環11を中空柱1の補強したい部分である地際を中心に配設することにより、この地際部分の補強用棒状部材を更に強固にして折れにくくするとともに、またこの連結された複数の補強環11が地際部分の中空柱1の内周面に近接して配設されることによりこの地際部分の中空柱1の強度も増大し、全体として中空柱1を非常に強固に補強しているものである。bb
次に、上述した中空柱1の補強構造を用いた中空柱1の補強方法の手順について説明する。
まず、図1において複数のビニールバンド9と複数の補強環11を除く、複数のロッド配置用スペーサ7とこの複数のロッド配置用スペーサ7で一体的に保持された複数の補強用棒状部材からなる補強組立体は、既に構成され、中空柱1内に存在するものとするとともに、またガイド棒13もその下端部にガイド棒固定用治具15を取り付けられて中空柱1の下部に設定されているものとする。
そして、中空柱1内に既に設けられている補強組立体を例えば図5で説明したようにステンレスワイヤ27で吊りあげて、補強組立体の複数の補強用棒状部材を保持しているロッド配置用スペーサ7の間の補強用棒状部材の各部が側部開口1cの真横に位置するようにガイド棒13に沿って上下動する。そして、ロッド配置用スペーサ7の間の複数の補強用棒状部材が側部開口1cの真横に位置した場合、その位置で上下動を一時的に停止し、側部開口1cからビニールバンド9を中空柱1内に挿入し、このビニールバンド9を複数の補強用棒状部材の周囲に回し込んで補強用棒状部材を囲み、この補強用棒状部材を囲んだビニールバンド9を結束ガンで結ぶように締め付けてから切断し、これによりビニールバンド9で複数の補強用棒状部材を一体的に結束する。
このように1本のビニールバンド9の結束が終了したら、同様に補強組立体をステンレスワイヤ27で上下動し、次にビニールバンド9で結束する補強用棒状部材の位置を側部開口1cの真横に移動し、この位置で側部開口1cからビニールバンド9を中空柱1内に挿入し、上述したと同様に、この位置で複数の補強用棒状部材を囲うようにビニールバンド9を結束ガンで締め付け切断し、この位置における複数の補強用棒状部材をビニールバンド9で一体的に結束する。上記動作を補強組立体の全体に繰り返し、これにより補強組立体の全体を複数のビニールバンド9で一体的に結束し、強固に折れにくくする。
次に、図5に示すように、保護アーム組立体31を中空柱1内に設定する。この保護アーム組立体31の中空柱1内への設定は、図5乃至図7で説明したように、まずビニールバンド9で結束された補強組立体をステンレスワイヤ27で上方に引き上げて一時的に固定し、中空柱1の側部開口1cよりも下方の部分を空き状態にする。そして、この空き状態の中空柱1の中に側部開口1cから図7のように縮退自在アーム33が縮退状態の保護アーム組立体31を挿入し、保護アーム組立体31の中心部にガイド棒13を挿通しながら縮退自在アーム33を縮退状態でガイド棒13に沿って所望の下方まで下降させ、所望の下方位置で固定し、この固定した位置で保護アーム組立体31の縮退自在アーム33を図6に示す様に伸長させ、図5に示すように中空柱1内の下方に一時的に設定する。
保護アーム組立体31が図5に示すように中空柱1内の下方に設定されると、次に図4に示すように、複数、すなわち6個の補強環11を3本のステンレスワイヤ21で上述したように連結し、それからこの6個の補強環11のうちの最下部の補強環11を中空柱1内に中空柱1側部開口1cから図8に示すように挿入する。この挿入された最下部の補強環11を例えば図9に示すようにステンレスワイヤ21で吊りながら中空柱1内の補強したい部分である地際の少し下方に下降させ、この位置で一時的に設定する。
最下部の補強環11が中空柱1内の下方に位置に設定されると、次に下から二番目の補強環11を同様に側部開口1cから中空柱1内に挿入するという動作を図9に示すように順次繰り返し、6個のすべての補強環11を中空柱1内に挿入する。それから、この中空柱1内に挿入された6個の補強環11の高さ方向の位置をステンレスワイヤ21で吊りながら調整し、中空柱1の補強したい部分である地際を中心に設定する。
それから、保護アーム組立体31を中空柱1内から取り除くことにより、図10に示すような状態に6個の補強環11は設定される。この6個の補強環11をこの状態で固定するために、6個の補強環11を連結して吊り上げていた3本のステンレスワイヤ21のうちの1本を図10に示すように中空柱1の側部開口1cの真向かいの周壁に形成されたビス孔1hになべ小ねじ51で固定する。
6個の補強環11が上述したように固定された後、上述したようにステンレスワイヤ27で上方に引き上げた複数のロッド配置用スペーサ7と複数の補強用棒状部材からなる補強組立体を図10において矢印150で示す方向に下降させるために、ステンレスワイヤ27を矢印200で示す方向にゆるめながら戻すと、補強組立体は下降しながら、その下端部が6個の連結した補強環11の中を貫通し、中空柱1の下方に至り、補強組立体の一番下のロッド配置用スペーサ7の中心部がガイド棒13上のストッパー17に図1に示すように当接し、この当接位置で補強組立体の下降は停止し、補強組立体は図1に示す位置で固定される。このようにして、6個の補強環11は、中空柱1の補強したい部分である地際部分の中空柱1の内周面に近接して配設されることになり、この地際部分の補強用棒状部材を更に強固にして折れにくくするとともに、また地際部分の中空柱1の強度も増大し、全体として中空柱1を非常に強固に補強することができる。
図11は、本発明の他の実施形態に係る補強環の別の例を示す斜視図である。同図に示す補強環110は、図3に示した補強環11において3本のスリーブ11aの各々の代わりに2個の丸型圧着端子110a、110bを用いた点が異なるものであり、他の構成や寸法は図3の補強環11と同じである。
このようにスリーブ11aの代わりに丸型圧着端子110a、110bを用いた補強環110でも、図12に示すように3本のステンレスワイヤ21で6個の補強環110を連結し、この3本のステンレスワイヤ21で吊り下げることができる。なお、この場合、6個の補強環110のうち最下部の補強環110の丸型圧着端子110a、110bにステンレスワイヤ21の下端部を挿通した後、この丸型圧着端子110a、110bをつぶして、ステンレスワイヤ21の下端部を丸型圧着端子110a、110bから抜けないように係止し、これにより3本のステンレスワイヤ21で6個の補強環110を吊るすことができるようにする。