JP5271566B2 - 省燃費型エンジン油組成物 - Google Patents

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本発明は、特定のジエステルを潤滑油基油と有機モリブデン化合物を含有する省燃費型エンジン油に関し、低蒸発性を示すことから環境に対する性能に優れ、かつ低温粘度特性に優れた省燃費型エンジン油に関する。
近年、地球温暖化防止のために自動車の燃費を向上させ、COの排出を抑制する要求が非常に高まっている。自動車の燃費を向上させるにはエンジンの効率化が重要であり、ガソリンエンジンにおいてはリーンバーン化や直噴化の技術が採用されている。一方、エンジンの摩擦を低減することも燃費向上に貢献できることから、摺動部品への低摩擦材料の使用や省燃費型エンジン油の採用が図られている。
省燃費型エンジン油としては、摩擦を低下させる添加剤(摩擦調整剤、以下FMと称することもある)としてモリブデンジチオカーバメイト(MoDTC)などの有機モリブデン系FMを配合すると共に、SAE(米国自動車技術会)J300に規定されている粘度分類で5W−20や0W−20という低粘度のエンジン油が有効であることが知られている(非特許文献1参照)。
しかしながら、更なる低粘度化は、例えば高温領域での低粘度化は摩耗の増加等の問題が生じることが知られており、一方、低温領域での低粘度化は基油の低粘度化をさらに進めることが必要となるため、エンジン油の蒸発損失が大きくなる。したがって、低粘度化しても蒸発性が悪化しないエンジン油、あるいは低蒸発性でありながら、粘度特性に優れたエンジン油が強く求められている。
K. Hoshino et al, Fuel Efficiency of SAE 5W-20 Friction Modified Gasoline Engine Oil, SAE Technical Paper 982506(1998)
本発明は、上記状況に鑑み、低蒸発性でありながら、低温粘度特性に優れた省燃費型エンジン油を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、エンジン油を構成するさまざまな潤滑油基材、潤滑油添加剤に関して鋭意研究を進めた結果、潤滑油基油として特定のジカルボン酸ジエステルと、特定の有機モリブデン化合物が特定量組み合わされて配合されたエンジン油が低蒸発性でありながら、優れた省燃費性を示すことを見出した。本発明はかかる知見に基づきなされたものである。
すなわち、本発明は、下記の一般式(1)で表される分子量400〜450のジカルボン酸ジエステルを30質量%以上含有する鉱油系及び/又は合成油系の潤滑油基油と、有機モリブデン化合物をモリブデン(Mo)量としてとして0.03質量%以上含有する内燃機関潤滑油組成物である。
Figure 0005271566
式中、R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜16の炭化水素基を示し、Rは炭素数6〜10の2価の炭化水素基を示す。
本発明において、ジカルボン酸ジエステルは、セバシン酸ジエステルであることが好ましく、有機モリブデン化合物は、モリブデンジチオカーバメイト(MoDTC)であることが好ましい。また、前記潤滑油基油は、100℃における動粘度が4.2mm/s以下であることが好ましい。本発明の省燃費型エンジン油組成物は、さらにアルキル化ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)をリン(P)量として0.01〜0.08質量%含有してもよい。
本発明の省燃費型エンジン油組成物は、前記のような構成としたことから、長い期間使用してもオイルの蒸発損失が少なく、さらに、低温粘度特性に優れているため、特に低温領域での省燃費性に優れている。したがって、環境を汚染することなく、良好な始動性及び始動直後の省燃費性を示す実用性能に優れたエンジン油として極めて有用である。
以下に、本発明の省燃費型エンジン油組成物を詳しく説明する。
本発明において使用されるジカルボン酸ジエステルは、下記の一般式(1)で表され、一般的には分子内にカルボキシル基を2個有するジカルボン酸と1価アルコールとをエステル化して得られる化合物であり、エンジン油を構成する1種の潤滑油基油である。
Figure 0005271566
一般式(1)において、R、Rは、前記1価アルコールの残基の相当する炭素数1〜16の炭化水素基を示し、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。Rは前記のジカルボン酸の主鎖を構成する炭化水素基に相当する炭素数6〜10の2価の炭化水素基を示す。Rの炭素数が6未満の場合、蒸発損失が大きくなる傾向があることから好ましくなく、また、Rの炭素数が10を超えると、低温粘度特性が悪化する。Rが炭素数6〜10の2価の炭化水素基の場合、ジカルボン酸としては炭素数8〜12のジカルボン酸が該当する。具体的には、スベリン酸ジエステル、アゼライン酸ジエステル、セバシン酸ジエステル、ウンデン二酸のジエステル及びドデカン二酸のジエステルが挙げられ、中でもセバシン酸ジエステルが最も好ましい。
本発明においては、分子量400〜450のジカルボン酸ジエステルを用いるが、分子量は420〜430が好ましい。分子量が400未満では蒸発損失が大きくなり、一方、分子量450より大きい場合には良好な低温粘度特性が得られない。このような分子量が特定の範囲内であるジカルボン酸ジエステルは、上記のジカルボン酸と炭素数1〜16個の1価アルコール(残基がR、Rになる)とを適宜選択してエステル化することにより得ることができる。複数のジカルボン酸と複数の1価アルコールとをエステル化して得られたジカルボン酸ジエステル混合物は、分子量が400〜450の範囲外のものも含まれていることもある。このような場合、合成されたジエステル混合物を精製分離して分子量400〜450ジカルボン酸ジエステルを得てもよい。効率良く分子量400〜450ジカルボン酸ジエステルを得るためには炭素数が接近した1価アルコール混合物を用いることが好ましく、こうすることにより精製工程を簡素化することができる。1種類のみの1価アルコールを用いると、生成物の分子量にバラツキがないので、最も効率的といえる。例えば、セバシン酸とヘプタノール、オクタノール及びノナノールとでエステル化することにより得られるセバシン酸ジエステルは、分子量がほぼ400〜450であり、分子量の調整のために合成されたセバシン酸ジエステルを特に分離精製する必要がない。セバシン酸とオクタノールとで合成されたセバシン酸ジオクチルは分子量が426であり、本発明で最も好ましく用いることのできるジカルボン酸ジエステルの一つである。したがって、R、Rは、炭素数6〜12のアルキル基、アルケニル基などの炭化水素基が好ましく、なかでもヘプチル基、オクチル基、ノニル基、特にオクチル基が好ましい。炭化水素基は直鎖でも分岐していてもかまわないが、潤滑特性から直鎖がより好ましい。
本発明において、ジカルボン酸ジエステルの蒸発特性については任意であるが、NOACK蒸発量は18質量%以下が好ましく、17.5質量%以下がより好ましく、17質量%以下が特に好ましい。
本発明において、潤滑油基油は、上記の一般式(1)で規定する分子量400〜450のジカルボン酸ジエステルとその他の潤滑油基油とから構成される。その他の潤滑油基油としては、鉱油系基油、上記のジカルボン酸ジエステルを除くその他の合成油系基油が挙げられる。
鉱油系基油として、具体的には、原油を減圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいは精製工程で副生されたワックスの異性化油や、一酸化炭素と水素をフィッシャートロプシュ合成して得られるGTL(gas to liquid)ワックスの異性油等が例示できる。
その他の合成油系基油としては、一般式(1)で規定する分子量400〜450のジカルボン酸ジエステル以外のジエステル、脂肪酸エステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステル、ポリα―オレフィン、ポリブテンなどが挙げられる。
本発明では、上記鉱油系基油及びその他の合成油系基油は、単独で、あるいは、それぞれ複数種の基油の任意の割合の混合物を使用することができる。例えば、1種以上の鉱油系基油、1種以上の合成油系基油、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成油系基油との混合油等を用いることができる。中でも鉱油系基油、ポリα―オレフィン系基油を好ましく使用することができる。
本発明において、潤滑油基油は一般式(1)で表される分子量400〜450のジカルボン酸ジエステルを潤滑油基油全量基準で30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましく50質量%以上含有する。ジカルボン酸ジエステルの含有量が潤滑油基油全量基準で30質量%未満では、目標とする低温粘度特性、例えば―35℃におけるCCS粘度が4000mPa・s以下を満たすことができない。ジカルボン酸ジエステルの含有量の上限については特に制限はなく、100%でも良いが、シール材膨潤の観点から、潤滑油基油全量基準で80質量%以下とすることが好ましく、70質量%以下とすることがより好ましい。エステルの割合が多くなるとシール材に悪影響を及ぼす傾向は、上記のジカルボン酸ジエステル以外のエステルについても認められる。したがって、ジカルボン酸ジエステルを除くジエステル、ポリオールエステルのみとのブレンドは好ましくない。このような観点からも、上記のジカルボン酸ジエステルとともに用いる合成油系基油としては、ポリα―オレフィンが特に好ましい。
本発明で規定するジカルボン酸ジエステルを含有する潤滑油基油は、100℃の動粘度が4.2mm/s以下であることが好ましく、3.9mm/s以下であることがより好ましく、3.6mm/s以下であることが特に好ましい。潤滑油基油の100℃の動粘度が4.2mm/sより大きい場合には、良好な低温粘度特性を得ることができない。さらには潤滑油基油の粘度指数が120以上であることが好ましく、特には130以上であることが好ましい。潤滑油基油の粘度指数が120未満の場合には、良好な省燃費特性を得ることができない。
本発明の省燃費型エンジン油組成物は、有機モリブデン化合物をモリブデン(Mo)量として0.03質量%以上含有する。0.03%質量%未満では、十分な省燃費持続性を得ることができない。有機モリブデン化合物として、具体的には、モリブデンジチオカーバメイト(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP)、Moアミンコンプレックスなどが挙げられる。この中で、MoDTCが最も好ましく、MoDTPはリンが排ガス浄化の三元触媒を被毒するためあまり好ましくない。
本発明において、MoDTCとしては、下記の一般式(2)で表されるものを好ましく使用することができる。
Figure 0005271566
式中、R〜Rは、炭素数4〜18個を有する直鎖及び/又は分岐のアルキル基及び/又はアルケニル基を表し、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、その酸素原子と硫黄原子との比は1/3〜3/1である。R〜Rは、好ましくはアルキル基であり、特に好ましくは炭素数8〜14の分岐のアルキル基であり、具体的にはブチル基、2−エチルヘキシル基、イソトリデシル基、ステアリル基等が挙げられる。1分子中に存在する4個のR〜Rは、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、R〜Rの異なるMoDTCを2種以上混合して用いることもできる。
本発明の省燃費型エンジン油組成物は、さらにアルキル化ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)をリン(P)量として0.01〜0.08質量%含有することが好ましい。このようなZnDTPとしては、下記の一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0005271566
上記の一般式(3)において、R、R、R10、およびR11は、それぞれ独立して、炭素数1〜24の炭化水素基を示す。これら炭化水素基は、炭素数1〜24の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数3〜24の直鎖状又は分枝状のアルケニル基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基又は直鎖状若しくは分枝状のアルキルアリール基である。また、アルキル基やアルケニル基は、第1級、第2級及び第3級のいずれであってもよい。
少なくともZnDTPの含有量は、エンジン油全重量に対して、ZnDTPに含まれるリン(P)金属元素重量で0.01〜0.08質量%であり、特には0.05〜0.08質量%が好ましい。エンジン油全重量に対するZnDTPに含まれるリン金属元素重量が0.01質量%未満では十分な摩耗防止性能を得ることができず、0.08質量%より大きい場合では自動車の排ガス浄化触媒に与える被毒の影響が大きくなる。
本発明の省燃費型エンジン油組成物は、一般式(1)で表される分子量400〜450のジカルボン酸ジエステル、その他の潤滑油基油(鉱油系基油及びその他の合成油系基油)、有機モリブデン化合物、さらにはアルキル化ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、及び公知のその他の各種潤滑油用添加剤をブレンドして調製される。これらの配合基材の配合方法は特に限定されず、均一な性状のエンジン油組成物が得られるどのような方法で行ってもよい。
一般式(1)で表される分子量400〜450のジカルボン酸ジエステルとその他の潤滑油基油でジカルボン酸ジエステルを30質量%以上含有する潤滑油基油を調製し、該潤滑油基油に有機モリブデン化合物、アルキル化ジチオリン酸亜鉛、及びその他の各種潤滑油用添加剤を所定量添加混合して均一な性状のエンジン油組成物を調製することができる。潤滑油基油は必ずしも実際に調製する必要はなく、一般式(1)で表される分子量400〜450のジカルボン酸ジエステルが30質量%以上、その他の潤滑油基油が70質量%以下の割合で、省燃費型エンジン油組成物に含有されていればよい。添加剤の配合量は、添加量が比較的多い粘度指数向上剤を10質量%程度とすると、17、8質量%から22、3質量%程度であるから、潤滑油基油の占める割合は約77質量%から82質量%となる。したがって、一般式(1)で表される分子量400〜450のジカルボン酸ジエステルは、省燃費型エンジン油組成物に対しては約25質量%以上含有されるように配合してもよい。
本発明の省燃費型エンジン油組成物は、潤滑油としての性能をバランスよく確保するために上記以外の各種の添加剤を配合することができる。特には優れた清浄性及びスラッジ分散性を確保するために、金属系清浄剤や無灰分散剤を含有することが好ましい。金属系清浄剤としては、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリシレートから選ばれる少なくとも1種のアルカリ土類金属清浄剤を用いることが好ましい。
アルカリ土類金属スルホネートとしては、分子量300〜1,500、特に好ましくは400〜700のアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩であり、カルシウム塩が好ましく用いられる。
アルカリ土類金属フェネートとしては、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応物のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が挙げられ、例えば下記の一般式(4)〜(6)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0005271566
Figure 0005271566
Figure 0005271566
上記一般式(4)〜(6)中、R11〜R17は、それぞれ独立して、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖又は分枝のアルキル基を示し、M、M及びMはそれぞれアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを示し、xは1又は2を示す。
アルカリ土類金属サリシレートとしては、アルキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩、特に好ましくは、マグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が挙げられ、例えば下記の一般式(7)で表されるものを挙げることができる。
Figure 0005271566
上記一般式(7)中、R18は炭素数1〜30、好ましくは6〜18の直鎖又は分枝のアルキル基を示し、pは1〜4の整数、好ましくは1又は2を示し、Mはアルカリ土類金属、好ましくはカルシウム及び/又はマグネシウムを示す。
本発明の省燃費型エンジン油組成物における金属系清浄剤の含有量は任意であるが、省燃費型エンジン油組成物全重量に対して、金属量で0.05〜0.22質量%、好ましくは0.1〜0.2重量%含有することが望ましい。
また、無灰分散剤としては、ポリオレフィンから誘導されるアルケニルコハク酸イミド、アルキルコハク酸イミド及びそれらの誘導体が挙げられる。代表的なコハク酸イミドは、高分子量のアルケニル基もしくはアルキル基で置換されたコハク酸無水物と、1分子当たり平均4〜10個(好ましくは5〜7個)の窒素原子を含むポリアルキレンポリアミンとの反応により得ることができる。高分子量のアルケニル基もしくはアルキル基は、数平均分子量が700〜5000のポリイソブテン、特に数平均分子量が900〜3000のポリイソブテンがより好ましい。
本発明の省燃費型エンジン油組成物に好ましく使用できるポリブテニルコハク酸イミドとしては下記の一般式(8)又は(9)で表される化合物が挙げられる。
Figure 0005271566
Figure 0005271566
式(8)及び式(9)において、R19〜R21はポリブテニル基を示し、高純度イソブテンあるいは1−ブテンとイソブテンの混合物をフッ化ホウ素系触媒あるいは塩化アルミニウム系触媒で重合させて得られるポリブテンから得られるものであり、ポリブテン末端にビニリデン構造を有するものが通常5〜100mol%含有される。nは優れたスラッジ抑制効果を得る観点から2〜5の整数、特には3〜4の整数であることが好ましい。
また、ポリブテニルコハク酸イミドの誘導体としては、上記式(8)又は(9)で表される化合物に、ホウ酸等のホウ素化合物や、アルコール、アルデヒド、ケトン、アルキルフェノール、環状カーボネート、有機酸等の含酸素有機化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和又はアミド化した、いわゆる変性コハク酸イミドとして用いることができる。特に、ホウ酸等のホウ素化合物との反応で得られるホウ素含有アルケニル(もしくはアルキル)コハク酸イミドは、熱・酸化安定性の面で有利である。
本発明における無灰分散剤の含有量は任意であるが、省燃費型エンジン油組成物全重量に対して、0.5〜15質量%含有することが望ましい。
本発明のエンジン油には、所望により、無灰系の酸化防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、金属不活性化剤、防錆剤や消泡剤等の添加剤を添加することができる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。
鉱油系基油として、重質油の水素化分解で得られた生成油を水素化脱ロウして得られた100℃における動粘度が4.3mm/sである基油を用いた。
一般式(1)で表される分子量400〜450のジカルボン酸ジエステル(以下、本発明のジエステルという。)として、100℃における動粘度が3.2mm/s、分子量が426であるセバシン酸ジオクチルを用いた。
また、本発明のジエステルを満足しない、比較用のジエステルなどとして、100℃における動粘度が3.6mm/s、分子量が426であるアジピン酸ジイソデシル、100℃における動粘度が2.3mm/s、分子量が370であるアジピン酸ジオクチル、及び100℃における動粘度が3.4mm/sであるトリメチロールプロパン(TMP)のヘプタン酸エステルを用いた。
添加剤としては次のものを用いた。
MoDTC:一般式(2)で表され、置換基R〜Rが2エチルヘキシル基とイソトリデシル基との混合物で、酸素原子と硫黄原子との比Xが1/1のものを用いた。
ZnDTP:一般式(3)で表され、炭化水素置換基R〜R11がプライマリーC8アルキル基であるZnDTPと、セカンダリーC4/C5のZnDTPとの混合ZnDTP(混合重量=58/32)を用いた。
Caスルホネート:中性カルシウムスルホネート及び過塩基性カルシウムスルホネート
アルケニルコハク酸イミド:高分子量コハク酸イミド及びホウ素変性コハク酸イミド
粘度指数向上剤: 分子量約30万のポリメタクリレート
その他の添加剤:酸化防止剤(アルキル化ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール)及び消泡剤からなる添加剤混合物を用いた。なお、この配合量は、実施例及び比較例とも全て同じ量配合した。
本発明のジエステル、比較例のジエステル、TMPヘプタン酸エステル、及び鉱油系基油を表1上部の潤滑油基油の欄に示す割合で混合して潤滑油基油を調製した。得られた潤滑油基油に、MoDTC、ZnDTP、Caスルホネート、アルケニルコハク酸イミド、粘度指数向上剤、及びいわゆるパッケージ添加剤であるその他の添加剤を表1記載の割合で添加して均一に混合した。なお、添加剤は、粘度指数向上剤を除いて、実施例及び比較例全部に共通して同じ添加量を添加した。粘度指数向上剤は、150℃におけるTBS粘度が2.6mPa・sになるように添加量を調整した。なお、TBS粘度は、エンジン油の評価に用いられる高温高せん断粘度である。ASTM D4683に準じて、温度150℃、せん断速度1×10−1におけるエンジン油の粘度抵抗によって発生するロータートルクを測定し、標準油から求めた検量線により算出する。TBSは、Tapered Bearing Simulatorの略である。
Figure 0005271566
上記のようにして調製した実施例1〜2及び比較例1〜5のエンジン油それぞれについて、−35℃におけるCCS粘度をASTM D5293に準拠して測定し、さらに、NOACK試験をASTM D5800に準拠して実施して、250℃における1時間後のエンジン油の蒸発損失を測定した。それらの結果を表1下部に示す。
なお、SAE(米国自動車技術会)J300で定めた低温粘度分類の0Wグレードでは、−35℃におけるCCS粘度は6200mPa・s以下と規定している。また、日米の自動車工業会によるエンジン油の国際標準規格を制定・認証することを目的とした委員会であるILSACは、GF−4規格において、NOACK試験による蒸発性の合格基準を15質量%以下と規定している。
表1に示すとおり、実施例1及び2のエンジン油組成物は、NOACK蒸発性がILSAC GF−4規格の15質量%以下を満たすと共に、−35℃におけるCCS粘度が3150mPa・s及び2470mPa・sと、SAEの0Wグレードの規定値である6200mPa・s以下をはるかに下回る4000mP・s以下の低い値を有していることがわかる。したがって、特に低温領域において優れた省燃費性を発揮することが見込まれる。
一方、本発明で規定するジカルボン酸ジエステルを用いない比較例1では、NOACK蒸発性はILSAC GF−4規格を満足するものの低温粘度特性が劣っていることが分かる。また、エステル基油の配合量が少ない比較例2も−35℃におけるCCS粘度が4000mPa・s以下を満たすことができない。分子量の範囲は満足するが、ジカルボン酸としてアジピン酸を用いた比較例3では低温特性が劣り、NOACK蒸発性にも劣る。低分子量のエステルを用いた比較例4ではNOACK蒸発性が劣り、高分子量のポリオールエステルを用いた比較例5では低温特性が劣ることが分かる。

Claims (2)

  1. セバシン酸ジオクチル40質量%以上70質量%以下含有する、100℃における動粘度が4.2mm 2 /s以下の鉱油系及び/又は合成油系の潤滑油基油と、モリブデンジチオカーバメイト(MoDTC)をモリブデン(Mo)量として0.03質量%以上含有することを特徴とする省燃費型エンジン油組成物
  2. さらにアルキル化ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)をリン(P)量として0.01〜0.08質量%含有する請求項1に記載の省燃費型エンジン油組成物。
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