JP5271239B2 - 炉 - Google Patents

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Description

本発明は、KO及びNaOを合計で2質量%以上含む炉内容物と接しうる部位に不定形耐火物を施工した炉に関する。
本明細書において、不定形耐火物とは、施工に必要な液体を添加する前の粉体組成物全体を指す概念とする。
不定形耐火物を、粒度の観点から、粒径1mm以上の粗粒域と、粒径1mm未満の微粒域とに分けて考える。微粒域を構成する粒子は小さく、侵食を受けやすい。このため、不定形耐火物に耐食性を付与するうえで、微粒域の構成の検討が特に重要となる。
特許文献1〜3に開示されるように、微粒域の大部分、具体的には75質量%以上を焼結アルミナ等のアルミナ質原料で構成し、かつ微粒域の1質量%以上は粒径10μm未満のシリカ超微粉で構成した不定形耐火物が知られている。
この不定形耐火物は、使用中の高温下、シリカ超微粉に由来する液相の存在で、微粒域からなるマトリックスを緻密化し、耐スラグ浸透性を高めることを意図したものである。マトリックスの大部分をなすアルミナ質原料が耐熱性及び耐食性に優れるため、上記効果がいかんなく発揮される。
しかし、上記不定形耐火物は、製鉄プロセスで使用される溶鉄容器の内張りには適当であるものの、例えば、廃棄物処理炉の内張りとしては満足に使用することができない。なぜならば、廃棄物処理炉の炉内容物が、アルカリ塩を多く含むからである。
具体的には、製鉄プロセスで生成するスラグは、CaO/SiOの質量比(以下、C/Sと記す)が1〜5程度、CaO以外のアルカリ塩の含有量が0.1質量%未満であるのに対し、廃棄物処理炉の炉内容物は、C/Sは0.3〜1.5程度であるが、CaO以外のアルカリ塩、具体的にはKO及びNaOを合計で2〜10質量%と多く含む。
このため、廃棄物処理炉に上記不定形耐火物を適用しても、酸性原料であるシリカ超微粉が、アルカリ塩のアタックによって早々に炉内容物中に溶出するため、液相によってマトリックスを緻密化するという上記効果を奏しがたい。
特許文献4は、廃棄物処理炉用不定形耐火物として、微粒域における結合剤以外の残部のすべてをアルミナ質原料で構成したものを提案するとともに、微粒域にシリカ超微粉を少量配合したものを比較例として挙げ(特許文献4の比較例6参照)、廃棄物処理炉用途においては、シリカ超微粉を含まない方がよい旨示唆している。
特許文献5に開示されるように、廃棄物処理炉用不定形耐火物においても、アルミナ質のマトリックスを液相で緻密化する技術思想を適用した例がみられるが、液相が早々に溶出することを抑えるために、二酸化スズ質原料の併用を必須としている。
特開昭59−97576号公報 特開平9−87044号公報 特開平2−208260号公報 特開2004−217517号公報 特開2004−299929号公報 特開2001−335373号公報
特許文献4の廃棄物処理炉用不定形耐火物は、使用中の高温下でマトリックスを緻密化する作用を殆ど示さないため、耐食性の点でさらなる改善が望まれる。
特許文献5の廃棄物処理炉用不定形耐火物は、使用中の高温下でマトリックスを緻密化する作用を示すが、二酸化スズ質原料が耐食性低下の原因ともなるため、耐食性の向上を図ることが難しい。二酸化スズ質原料を使用しないか、又は多量に使用することなくマトリックスを緻密化できる技術が望まれる。
なお、特許文献1〜3の不定形耐火物において、上記シリカ超微粉に代えて、もう少し粒度の粗いシリカ質原料を用いれば、これが早々に溶出する問題を緩和できるようにみえる。しかし、その場合、シリカ質原料がマトリックスに留まることとなるため、アルカリ膨張による組織崩壊という別の問題を招きかねない。
即ち、廃棄物処理炉用不定形耐火物においては、シリカ質原料とアルミナ質原料とが併存した場合、それらと炉内容物中のRO(但し、RはK又はNa)とによってカルサイト(RO・Al・2SiO)等のアルカリ化合物が形成され、その形成に伴う組織膨張で崩壊に至る問題が知られている(特許文献6の段落0004等参照)。
このため、廃棄物処理炉用途においては、単にシリカ質原料を粗めの粒度で使用することのみによっては耐食性の向上を図ることができず、かつシリカ質原料を粗い粒度で使用する試みが行われがたい。
以上の問題は、特に廃棄物処理炉用不定形耐火物に限らず、KO及びNaOを合計で2質量%以上含む炉内容物と接しうる部位に施工される不定形耐火物一般にあてはまるものと考えられる。
本発明の目的は、KO及びNaOを合計で2質量%以上含む炉内容物によって侵食されにくい不定形耐火物を施工した炉を提供することである。
本発明の一観点によれば、KO及びNaOを合計で2質量%以上含む炉内容物と接しうる部位に粒径1mm未満の微粒域の75質量%以上がアルミナ質原料で構成されており、そのアルミナ質原料のうち前記微粒域に占める割合で30質量%以上が粒径75μm以上の球状化処理された粒子であり、かつ前記微粒域の1質量%以上は粒径22μm以上のシリカ質原料で構成された不定形耐火物を施工した炉が提供される。
上記シリカ質原料は、粒径が22μm以上であることで、早々に溶出しにくく、マトリックスに留まることができる。この結果、上記シリカ質原料の一部は、アルミナ質原料及びROと共に、マトリックスにカルサイト等のアルカリ化合物を形成する。
アルカリ化合物の形成には膨張が伴うが、その膨張による応力を球状化処理された粒子が緩和する。即ち、球状化処理された粒子は、粒径が75μm以上であることで焼結しにくく、また一般的な粉砕品よりも表面が平滑に近づけられているため、本耐火物使用中もマトリックスを形成する粒子間の摩擦を軽減する効果をもつ。
このため、本耐火物使用中も変位しうる状態にある粒子がマトリックス中に存在することとなり、アルカリ化合物の形成で生じる膨張応力がこの粒子の変位によって緩和される。これにより、従来好ましくない現象とされてきたアルカリ膨張を意図的に利用してマトリックスを緻密化することが可能となり、耐食性の向上を図ることができる。
(a)は球状化処理された粒子の像をスケッチした線図であり、(b)は粉砕品である粒子の像をスケッチした線図である。
本不定形耐火物は、粒径1mm以上の粗粒域と、粒径1mm未満の微粒域とを有する。粗粒域/微粒域の質量比は特に限定しないが、当業者の技術常識により自ずと制限されることは自明であろう。粗粒域/微粒域の質量比は、典型的には0.3〜3、作業性等の観点から、0.7〜2.5が好ましい。
本明細書において、粒子の粒径がd以上とは、粒子がJIS‐Z8801に規定する目開きdの篩上に残る粒度であることを意味し、粒子の粒径がd未満とは、粒子が同篩を通過する粒度であることを意味する。
まず、微粒域の構成について説明する。
微粒域100質量%中、1質量%以上は、粒径22μm以上のシリカ質原料(以下、シリカ微粉という)で構成する。シリカ微粉は、粒径が22μm以上であることで早々に溶出しにくく、マトリックスに留まることができる。この結果、シリカ微粉の一部は、炉内容物中のRO及びアルミナ質原料と共に、マトリックスにカルサイト等のアルカリ化合物を形成し、アルカリ膨張をもたらす。
また、シリカ微粉の他の一部は、マトリックスを形成する粒子間に液相状態で存在しうる。この液相分は、粒子間の摩擦を軽減し、粒子が動きやすい状態を作り出す潤滑剤として作用することで、アルカリ膨張に伴う応力を緩和することに貢献する。この効果を高めるために、シリカ微粉の粒径は75μm未満が好ましく、45μm未満がより好ましい。
シリカ微粉の素材としては、例えば、SiO含有量が70質量%以上のもの、具体的には、珪石、珪砂、蝋石、珪藻土、蛋白石、溶融シリカ、及びこれらの少なくともいずれかを主成分とする使用済み耐火物から選択される一種以上を用いることができる。中でもα石英からなる結晶構造を含むもの、具体的には、珪石、珪砂、又は蝋石が好ましい。これらはアルカリ膨張に加えて、結晶構造の転移による膨張も奏しうるため、さらなる組織の緻密化が期待される。
なお、微粒域は、シリカ微粉よりも粒度の細かいシリカ質原料を含んでもよい。粒径22μm未満のシリカ質原料は、本耐火物の施工時に少ない液分で流動性を付与する効果をもつ。また、粒径22μm未満のシリカ質原料は、本耐火物使用中、炉内に面する表層部に位置するものは早々に溶出しやすいが、内部に位置するものは上記潤滑剤としての効果を奏しうる。
粒径22μm未満のシリカ質原料としては、例えば、揮発シリカ等のシリカ超微粉やシリカゾルが挙げられる。なお、揮発シリカは、シリカフラワー、シリカヒューム、又はマイクロシリカ等の商品名で知られる。粒径22μm未満のシリカ質原料の添加量は、上記効果と耐食性との兼ね合いから、微粒域に占める割合で1.5質量%以上10質量%未満が好ましい。
微粒域100質量%中、75質量%以上は、アルミナ質原料で構成する。アルミナ質原料は、耐熱性に優れた原料である。また、アルミナ質原料は中性原料であるため、廃棄物処理炉用途においては、炉内容物に含まれる酸及びアルカリの双方に対して耐食性を示すことができるという意義をもつ。このため、微粒域の75質量%以上をアルミナ質原料とすることで、アルミナ質原料のこの特性がいかんなく発揮され、上記シリカ微粉の作用効果と相まって、廃棄物処理炉用途において優れた耐食性を示すことができる。
アルミナ質原料としては、例えば、Al含有量が70質量%以上のもの、具体的には、焼結アルミナ、電融アルミナ、仮焼アルミナ、ボーキサイト、ダイアスポア、鋼玉、及びこれらの少なくともいずれかを主成分とする使用済み耐火物から選択される一種以上を用いることができる。
上記アルミナ質原料のうち、微粒域に占める割合で30質量%以上は、粒径75μm以上の球状化処理された粒子とする。
球状化処理としては、例えば、転動法、加圧成形法、及び高速気流衝撃法等が公知であるが、粒子の形状を球に近づける処理であればこれらに制限されない。
転動法とは、対象粒子を転動させることで球に近づける処理をいう。転動に伴って、粒径が大きくなる成長方式でもよいし、次第に粒子が研磨されて粒径が小さくなる研磨方式でもよい。本手法は、例えば、ロータリーキルン、回転ドラム、回転パン、回転水平円盤等を用いて行うことができる。
加圧成形法とは、対象粒子を加圧成形することで球に近づける処理をいう。本手法は、例えば、ペレタイザやブリケッタを用いて行うことができる。
高速気流衝撃法とは、高速気流中で対象粒子に衝撃を付与することで球に近づける処理をいう。本手法は、例えば、奈良機械製作所社製の衝撃処理装置(例えば、型式NHSシリーズ)を用いて行うことができる。
球状化処理された粒子は、その球形度が0.7以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましい。
球形度は、実体顕微鏡(例えば、ニコン社製SMZ−10)や走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子社製JXA−8600M)で撮影した試料粒子の像を、画像解析装置(例えば、日本アビオニクス社製)に取り込み、次の要領で求める。試料粒子の像から試料粒子の投影面積Sと、周囲長Lとを測定する。円周Lの真円の面積をSとすると、試料粒子の球形度はS/Sと定義される。
なお、充分に均一に混合された対象粉体を上記画像解析装置に取り込み、画像上で隣り合う任意の100個の粒子につき球形度を測定し、その平均値が0.7以上である場合、その対象粉体は球状化処理された粒子からなるとみなす。
図1は、アルミナ質原料からなる粒子の像をスケッチした線図を示す。図1(a)は球形度0.8以上の球状化処理された粒子からなる粉体を示し、図1(b)は粉砕品である粒子からなる粉体を示す。球状化処理された粒子の表面は、一般的な粉砕品よりも平滑に近づけられていることが分かる。
球状化処理された粒子は、アルミナ質原料であることで耐熱性に優れ、かつ粒径が75μm以上であることで焼結しにくく、一般的な粉砕品よりも表面が平滑に近づけられているため、本耐火物使用中もマトリックスを形成する粒子間の摩擦を軽減する効果をもつ。加えて、上述したように、マトリックスを形成する粒子間にはシリカ質原料に由来する液相が存在しうる。
この結果、本耐火物使用中も変位しうる状態にある粒子がマトリックス中に存在することとなり、アルカリ膨張に伴う応力がこの粒子の変位によって緩和される。これにより、従来好ましくない現象とされてきたアルカリ膨張を意図的に利用してマトリックスを緻密化することが可能となり、耐食性の向上を図ることができる。
球状化処理された粒子がもつ粒子間の摩擦を軽減する効果を高めるためには、球状化処理された粒子の粒径は、212μm以上が好ましく、300μm以上がより好ましい。
ここで、球状化処理された粒子の粒径はXμm以上が好ましいとは、粒径Xμm未満の球状化処理された粒子を含んでもよいが、アルミナ質原料のうち微粒域に占める割合で30質量%以上は、粒径Xμm以上の球状化処理された粒子であることが好ましいことを意味する。
なお、施工時における流動性の付与や施工体の緻密化の観点から、アルミナ質原料として、粒径75μm未満の粒子、例えば平均粒径10μm未満の仮焼アルミナを含んでもよい。この場合、粒径75μm以上のアルミナ質原料/粒径75μm未満のアルミナ質原料の質量比は、例えば5〜25程度が好ましい。ここで、粒径75μm以上のアルミナ質原料は、そのすべてが上記球状化処理された粒子であることが好ましい。粒径75μm未満のアルミナ質原料を用いる場合、アルミナ質原料に占める上記球状化処理された粒子の割合は、96質量%以下が好ましい。
また、微粒域は、シリカ質原料及びアルミナ質原料以外の耐火原料、例えば、ジルコニア質原料、ジルコン質原料、イットリア質原料、マグネシア質原料、カルシア質原料、ドロマイト質原料、チタニア質原料、スピネル質原料、アルミナ‐シリカ質原料(例:粘土やバーミキュライト)、炭化珪素質原料、炭素質原料、及びこれらの少なくともいずれかを主成分とする使用済み耐火物等から選択される一種以上を含んでもよい。
結合剤、分散剤、及び硬化時間調整剤等の添加剤を使用する場合、それらも微粒域に配合される。
結合剤としては、例えば、アルミナセメント、水硬性遷移アルミナ、ポルトランドセメント、マグネシアセメント、ケイ酸塩、リン酸塩、及びレジン等から選択される一種以上を用いることができる。結合剤を使用する場合、耐食性の観点から、その配合量は微粒域に占める割合で、例えば20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
分散剤としては、例えば、トリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ、ウルトラポリリン酸ソーダ等のアルカリ金属リン酸塩、ポリカルボン酸ソーダ等のポリカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、芳香族スルホン酸塩、ポリアクリル酸ソーダ、及びスルホン酸ソーダ等から選択される一種以上を用いることができる。分散剤を使用する場合、その配合量は、微粒域に占める割合で、例えば1質量%以下が好ましい。
硬化時間調整剤には、硬化促進剤と硬化遅延剤とがあり、硬化促進剤として、例えば、消石灰、塩化カルシウム、アルミン酸ソーダ、及び炭酸リチウム等から選択される一種以上を用いることができ、硬化遅延剤として、例えば、硼酸、クエン酸、炭酸ソーダ、及び砂糖等から選択される一種以上を用いることができる。硬化時間調整剤を使用する場合、その配合量は、微粒域に占める割合で、例えば2質量%以下が好ましい。
次に、粗粒域の構成について説明する。
粗粒域は、微粒域に比べて粒子が大きいため、侵食を受けにくい。そこで、粗粒域を構成する耐火原料は特に限定されず、慣用のもの、例えば、アルミナ質原料、ジルコニア質原料、ジルコン質原料、イットリア質原料、マグネシア質原料、カルシア質原料、ドロマイト質原料、チタニア質原料、スピネル質原料、シリカ質原料、アルミナ‐シリカ質原料、炭化珪素質原料、炭素質原料、及びこれらの少なくともいずれかを主成分とする使用済み耐火物等から選択される一種以上を用いることができる。
但し、微粒域はその殆どをアルミナ質原料で構成するため、耐火物組織の一体性ないし連続性を高め、強度向上ひいては耐食性向上を図る観点から、粗粒域もその殆ど、具体的には75質量%以上をアルミナ質原料で構成することが好ましい。
本不定形耐火物は、粗粒域と微粒域とからなる粉体組成物以外に、粉体以外のもの、例えば、繊維を含んでもよい。繊維としては、例えば、ビニロン繊維やポリプロピレン繊維等の有機繊維や、金属繊維やセラミック繊維等の無機繊維が挙げられる。不定形耐火物に粉体以外のものを含める場合、その添加量は、粉体組成物に対する外かけで10質量%以下が好ましい。
本不定形耐火物の施工法は、特に限定されず、例えば、型枠への流し込み、ポンプ圧送、湿式吹付け、乾式吹付け等の公知の手法を用いることができる。いずれの方法を採るにしても施工に際し、本不定形耐火物に液体、典型的には水が添加される。その添加量は、本不定形耐火物に対する外かけで、例えば、2〜15質量%が好ましい。
湿式又は乾式吹付け施工法を用いる場合は、被施工面からのだれ落ち防止のために、例えば、アルミン酸塩、炭酸塩、及び硫酸塩等から選択される一種以上の急結剤を、上記添加剤として使用することが好ましい。
本不定形耐火物は、KO及びNaOを合計で2質量%以上含有する炉内容物と接しうる部位に施工される。本不定形耐火物は、KO及びNaOを合計で2質量%以上含有する炉内容物と接してはじめて、アルカリ膨張による組織の緻密化の効果を奏する。KO及びNaOを殆ど含まない炉内容物、例えば製鉄スラグと接する条件下では、本不定形耐火物の効果が奏されない。
本明細書において、炉内容物とは、例えば、焼却灰やクリンカー等の固形物、廃棄物スラグ等の溶融物、及びアルカリ塩からなる蒸気等の気化物を含む概念とする。
本不定形耐火物は、特に廃棄物処理炉の内張りに適する。廃棄物処理炉の炉内容物は、例えば、SiO:15〜45質量%、Al:5〜20質量%、CaO:5〜45質量%、NaO:2〜15質量%、及びKO:2〜15質量%を含む。廃棄物処理炉の炉内容物はKO及びNaOを合計で4質量%以上、たいていの場合、5質量%以上含む。
表1に、不定形耐火物の具体例と耐食性の評価結果を示す。
Figure 0005271239
焼結アルミナAは、転動法で球形度0.8以上に球状化処理されたもので、その80質量%が粒径300μm以上である。焼結アルミナBは、焼結アルミナAと同様の粒度構成をもつが、球状化処理されていない通常の粉砕品である。シリカ微粉の粒径は、22μm以上、45μm未満とした。
耐食性は、次の要領で評価した。各例の不定形耐火物に水を外かけ4質量%添加し、混練後、型枠に流し込み、養生及び乾燥を経て脱枠し、試験片と成す。試験片を回転侵食試験炉に内張りし、1650℃で20時間、侵食剤によって侵食させる。
廃棄物スラグに対する耐食性の評価では、侵食剤に、SiOを42.8質量%、Alを12.4質量%、CaOを31.7質量%、NaOを3.7質量%、KOを1.4質量%それぞれ含むガス化溶融炉スラグを用いた。このスラグは、NaO及びKOを合計で5.1質量%含む。
製鉄スラグに対する耐食性の評価では、侵食剤に、SiOを12.0質量%、Alを2.5質量%、CaOを50.2質量%、MgOを5.1質量%、Feを12.0質量%、FeOを5.1質量%、MnOを4.8質量%それぞれ含み、NaO及びKOを含まない転炉スラグを用いた。
上記侵食試験後、各試験片の溶損寸法を測定し、各例の溶損寸法を実施例Aの溶損寸法で割って100倍した値である溶損指数を求めた。表1に括弧書きで溶損指数を示す。なお、溶損指数は、その値が小さい程耐食性に優れることを意味する。また、溶損指数によって耐食性を◎、○、△、×の4段階評価した。
比較例Aは、アルミナ質の球状化処理された粒子(以下、アルミナ質球状粒子という)である焼結アルミナAもシリカ微粉も含まない例であり、製鉄スラグに対して耐食性を示すが、アルカリ塩によってシリカ超微粉が早々に溶出するため、廃棄物スラグに対しては耐食性を示さない。
比較例Bは、シリカ微粉を含むためアルカリ膨張を生じるが、アルミナ質球状粒子を含まないためアルカリ膨張による応力を緩和できず、廃棄物スラグに対する耐食性が充分でない。なお、比較例Bが製鉄スラグに対しても充分に耐食性を示さないのは、比較例Aよりもシリカ超微粉を減らし、その分、シリカ微粉を用いたため、液相の生成が不充分になったためと考えられる。
比較例Cは、シリカ微粉とアルミナ質球状粒子とを含むが、アルミナ質球状粒子の量が少なすぎるため、比較例Bと同様、廃棄物スラグに対する耐食性が充分でない。
実施例A〜Dは、いずれも、廃棄物スラグに対して充分な耐食性を示した。これらと比較例Cとの結果から、微粒域に占めるアルミナ質球状粒子の割合は30質量%以上が好ましいと言える。
なお、実施例A〜Dが、製鉄スラグに対して耐食性に劣るのは、比較例Aよりもシリカ超微粉を減らし、その分、シリカ微粉を用いたため、液相の生成が不充分になったためと考えられる。また、製鉄スラグは、NaO及びKOを含まないため、製鉄スラグと接する条件下では、アルカリ膨張を利用した組織の緻密化が図れないことも原因する。
比較例Dは、シリカ微粉を含まないため、アルカリ膨張を利用した組織の緻密化が図られず、廃棄物スラグに対する耐食性に劣る。
比較例Eは、シリカ微粉を含むが、その量が少なすぎるため、比較例Dと同様、廃棄物スラグに対する耐食性に劣る。
実施例E〜Mは、いずれも廃棄物スラグに対して充分な耐食性を示す。比較例Eとの比較から、微粒域に占めるシリカ微粉の割合は1質量%以上が好ましいと言える。
実施例K及びLは、許容範囲ではあるが廃棄物スラグに対する耐食性がやや低下した。この結果から、微粒域に占めるシリカ微粉の割合は、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましいと考えられる。
実施例Hに示すように、シリカ微粉として、珪石に代えて蝋石を用いても、廃棄物スラグに対して同等の耐食性が発揮された。
実施例Iに示すように、シリカ微粉として、珪石に代えて溶融シリカを用いても、廃棄物スラグに対して充分な耐食性が発揮された。但し、実施例G及びHに比べると劣る。このことから、シリカ微粉としては、溶融シリカのように非晶質のものよりも、珪石や蝋石のようにα石英からなる結晶構造をもつものが好ましい。この理由は、結晶構造をもつ方が溶出しにくいか、又は結晶構造の転移による膨張も奏されるため、アルカリ膨張に加えて、さらなる組織の緻密化が図られるためと推察される。
以上、本発明の具体例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、種々の組み合わせ及び改良が可能なことは当業者に自明であろう。
本発明の不定形耐火物は、例えば、ガス化溶融炉、灰溶融炉、焼却炉、鶏糞処理炉等の廃棄物処理炉の内張りに用いることができる。また、本発明の不定形耐火物は、廃棄物処理炉に限らず、ガラスタンク窯の熱交換器、平炉の蓄熱構造、セメントキルン用内張り等、KO及びNaOを合計で2質量%以上含有する炉内容物と接しうる部位に広く適用することができる。

Claims (1)

  1. O及びNaOを合計で2質量%以上含む炉内容物と接しうる部位に粒径1mm未満の微粒域の75質量%以上がアルミナ質原料で構成されており、そのアルミナ質原料のうち前記微粒域に占める割合で30質量%以上が粒径75μm以上の球状化処理された粒子であり、かつ前記微粒域の1質量%以上は粒径22μm以上のシリカ質原料で構成された不定形耐火物を施工した炉
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