JP5269242B1 - ストレッチ機能を有する甲被を備えた履物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】短靴1Aは、非伸縮性材料よりなる表地21および伸縮性材料よりなる裏地を有する甲被2Aと、甲被2Aが取り付けられる底3Aとを備えている。甲被の表地21に、足の凸部に合わせて伸びうるように多数の貫通状の孔5a,5b,5cをあけたストレッチ帯域41が設けられている。ストレッチ帯域41の多数の孔は、孔の周囲の伸長方向が異なる3つのグループの孔5a,5b,5cよりなり、これらのグループの孔がストレッチ帯域に分散混在するように幾何学的に配置されている。
【選択図】 図2
Description
ところで足の形状は個人差が大きく、既製の履物を履いた際に足の凸部が甲被によって圧迫され、違和感や痛みを覚えることも少なくない。とりわけ外反母趾のように足の内側ボールジョイント部(親指付け根部)が大きく飛び出していると、通常の既製の履物では甲被の圧迫による痛みが大きくて履けない場合があった。
特許文献2に開示された靴は、甲被における足の内外両側ボールジョイント部に対応する部分をシャーリング構造としたものである。この靴によれば、甲被のシャーリング部分が伸びることによってボールジョイント部の圧迫が緩和される。
また、特許文献3には、甲被の爪先部の表面に天然皮革・人工皮革等よりなる補強片が取り付けられ、補強片における屈曲部の両側部に上下方向にのびる複数の平行なスリット・長孔または小孔列が形成された靴が開示されている。この靴は、甲被によるボールジョイント部等への圧迫の緩和を目的とするものではないが、非伸縮性材料よりなる補強片にスリット等を形成することによって歩行時の屈曲性を向上させたものである。
まず、特許文献1の靴では、甲被の表材として特殊な伸縮性材料を使用する必要があるため、材料コストが高くつく上、外観にバリエーションを持たせるのが難しくデザインに制約があった。また、上記の靴にあっては、中芯材にあけられた孔が前後方向にのびる1種類の長孔で構成されており、各孔の周囲の伸長方向および伸長度合いが一様となるため、ボールジョイント部等の足の凸部の形状によっては、これにぴったりとフィットするように中芯材が伸びないおそれがある。
特許文献2の靴の場合、甲被の一部をシャーリング構造としているため、製造に手間がかかってコスト高となる上、外観上もパターンが限られ、デザイン性の問題があった。
また、特許文献3に記載の靴は、甲被の爪先部の最外層を補強片で構成した特殊なものであって、補強片に形成された複数のスリット等も上下方向にのびる1種類だけであるため、足のボールジョイント部の形状に合わせて伸びるとは考え難く、さらにはスリット等のパターンが単調であって甲被がデザイン性に乏しくなる虞があった。
この発明の履物によれば、甲被の非伸縮性材料よりなる表地に多数の貫通状の孔を有するストレッチ帯域が設けられているので、履いた際に足の凸部に合わせてストレッチ帯域が伸びることにより、圧迫による違和感や痛みが軽減される。また、甲被の表地として合成皮革・天然皮革などの一般的な材料を使用することができるので、特許文献1記載の靴のように表地の材料コストが高くつかず、特許文献2の靴のように甲被の一部をシャーリング構造とすることによる製造効率の低下やコスト増大を招く虞もない上、デザインにバリエーションを持たせることが可能である。さらに、ストレッチ帯域に設けられる多数の孔が、孔の周囲の伸長方向および/または伸長度合いが異なる2以上のグループの孔よりなり、これらのグループの孔がストレッチ帯域に分散混在するように配置されているので、特許文献1・特許文献3の靴のように1種類の孔が設けられている場合と比べて、ストレッチ帯域の各部における伸長の方向や度合いが複合的に増大し、帯域全体としてのストレッチ性が向上している。そのため、個人差が大きい足の凸部にぴったりと合うようにストレッチ帯域が伸びうるので、特許文献1記載の靴と比べて、凸部の圧迫による違和感や痛みを軽減する効果が大きく向上する。また、表地のストレッチ帯域に2以上のグループの孔が分散混在して幾何学的に配置されるので、これらの孔によって甲被の外観に様々なバリエーションをもたらすことが可能となり、斬新でデザイン性に富んだストレッチ機能付き履物を提供することができる。
足の内側・外側ボールジョイント部、特に内側ボールジョイント部は、形状や位置の個人差が大きく、履物を履いた際に甲被で圧迫されて違和感や痛みを覚えることが多い。そこで、上記のように甲被の表地の前内側部および前外側部のうち少なくとも前内側部にストレッチ帯域を設けておけば、ボールジョイント部の圧迫による違和感・痛みを軽減する効果が得られる可能性が高い。
なお、ストレッチ帯域は、甲被の表地において、足の凸部の圧迫を緩和するためにストレッチ機能が必要な箇所に設ければよく、上記以外にも例えば足の甲の上部(第1楔状骨付近)に対応する履き口の前縁部や足の踵後部に対応する履き口の後縁部に設けたり、ブーツ等の長靴であれば内外両側のくるぶしに対応する箇所に設けたりしてもよい。
表地のストレッチ帯域に設ける孔が長孔の場合、その幅(短径)方向に沿って孔の周囲が伸び(広がり)、伸びる度合いは長孔の長さ(長径)が長い程大きくなる。また、長孔の方向が異なれば、必然的に長孔の周囲の表地部分が伸びる方向も異なってくる。他方、ストレッチ帯域に設ける孔が短孔の場合、孔の周囲は多方向に伸びる(広がる)が、伸びる度合いは小さいものとなる。そこで、上記のように第1の方向にのびるグループの長孔と、1以上のグループの短孔および/または第1の方向と交差する方向にのびる1以上のグループの長孔とを組み合わせれば、特許文献1や特許文献3の靴のように1種類の孔をあけた場合と比べて、表地のストレッチ帯域の各部分において伸長の方向や度合いが複合的に増大し、ひいてはストレッチ帯域全体としてのストレッチ性が向上する。
また、ストレッチ帯域の孔に係る上記組合せの他の例として、前後方向に対して時計回り方向に傾斜した方向にのびる第1のグループの長孔と、前後方向に対して反時計回り方向に傾斜した方向にのびる第2のグループの長孔とを含んでおり、両グループの長孔が1個ずつX字状に交差するように又は交差しないように配置されているものが挙げられる。
どちらの例も、向きが異なる2以上のグループの長孔を組み合わせることによって、ストレッチ帯域全体としてのストレッチ性が向上するので、履いた際に足の凸部にぴったりとフィットしやくなり、圧迫による違和感や痛みを軽減効果と同時に適度なホールド感も得られる。
上記態様によれば、多数の孔をあけることによって強度が低下した表地のストレッチ帯域の強度が補強材によって補われる。また、伸縮性を有する補強材が表地のストレッチ帯域の裏面に接合されることによって、ストレッチ帯域のキックバック(復元性)が補完され、保形性が確保される。さらに補強材として表地と異なる色のものを使用すれば、表地のストレッチ帯域の孔の輪郭が目立ちやすくなり、これが外観上のアクセントとして機能することによりデザイン性が高められる。
補強材の材料は、伸縮性を有するシート状のものであれば特に限定されないが、例えば合成樹脂シートのような防水性を有する材料を用いた場合、表地のストレッチ帯域に多数の孔をあけているにもかかわらず甲被に防水性を付与することが可能となる。また、通気性を有する材料を補強材に使用した場合、これを点接着等によって表地や裏地に接合すれば、甲被の通気性が高められる。なお、甲被の通気性は、補強材を使用しないことによっても確保することができる。
上記の構成によれば、糊による接着の場合と比べて補強材の接合強度が高められる上、表地の孔の周囲に糊が付着して汚れるといった問題も生じない。
この構成の場合も、糊による接着の場合と比べて、補強材の接合強度が高められ、また表地の孔の周囲に糊が付着して汚れるようなことがない。しかも、熱可塑性樹脂シートが補強材を兼ねている分だけ材料コストが抑えられる。
この態様によれば、ストレッチ帯域全体のうち例えばボールジョイント部に対応する部分に限定してストレッチ性を付与することができる。従って、甲被の表地の広範囲に孔をあけることが可能となり、外観デザインのバリエーションが更に広がる。
まず、この発明の第1の実施形態を図1ないし図3を参照して以下に説明する。第1の実施形態は、この発明を短靴に適用したものである。なお、図面では右足用のみが示されている(以下同じ)。図1および図2に示すように、短靴(1A)は、甲被(2A)と、甲被(2A)が取り付けられる底(3A)とを備えている。
表地(21)は、合成皮革または天然皮革よりなる。合成皮革の場合、全方向の伸縮性が無いか又は低い合成皮革の他、一方向についてある程度の伸縮性を有するが他の方向の伸縮性が無いか又は低い合成皮革であってもよい。この発明において、表地を構成する「非伸縮性材料」には、このような一方向伸縮性を有する材料も含まれるものとする。なお、一方向伸縮性を有する合成皮革を表地として使用する場合、底への吊り込み作業に支障が生じたり靴擦れが起きたりすることを避けるため、伸縮性を有する方向が履物の前後方向と一致するように製甲される。裏地(22)としては、例えばポリウレタンフォームにメリヤス生地が裏打ちされたものが用いられる。保形材(231)(232)は、例えば非伸縮性の綿布によって形成される。
各ストレッチ帯域(41)(42)は、甲被(2A)の前端付近から前後長さ中央付近まで達する大きさを有している。但し、各ストレッチ帯域(41)(42)の前端部は、爪先側の保形材(231)と重なっているため、ストレッチ機能は奏されない。
各ストレッチ帯域(41)(42)の多数の孔は、孔の周囲の伸長方向が異なる3つのグループの孔(5a)(5b)(5c)よりなり、これらのグループの孔(5a)(5b)(5c)が各ストレッチ帯域(41)(42)に分散混在するように幾何学的に配置されている。
第1のグループの孔(5a)は、前後方向にのびる長孔よりなる。第2のグループの孔(5b)は、前後方向に対して時計回り方向に傾斜した方向にのびる長孔よりなる。第3のグループの孔(5c)は、前後方向に対して反時計回り方向に傾斜した方向にのびる長孔よりなる。そして、3つのグループの長孔(5a)(b)(5c)の各2個すなわち計6個が放射状に配置されることによって1つのユニットが構成されていると共に、同ユニットがストレッチ帯域(41)(42)全体にわたって千鳥状に配置されている。
また上記の短靴(1A)では、補強材(24)によって表地(21)のストレッチ帯域(41)(42)の強度およびキックバックが補完されている。その上、補強材(24)は、熱可塑性樹脂シート(25)によって表地(21)のストレッチ帯域(41)(42)裏面に接合されているので、糊による接着の場合と比べて接合強度が高く、表地(21)の孔(5a)(5b)(5c)の周囲に糊が付着して汚れるといった問題も生じない。
図4〜6には、この発明の第2の実施形態が示されている。第2の実施形態では、この発明をサンダルに適用している。図示のサンダル(1B)は、幅広バンド状の甲被(2B)と、甲被(2B)が取り付けられる底(3B)とを備えている。
内側部および外側部のストレッチ帯域(44)(45)は、甲被の前後長さの中間部分に位置しており、図5に示すように側面より見てほぼ山形の輪郭をなすように形成されている。履き口前縁部のストレッチ帯域(46)は、図4に示すように平面より見て略ドーム形の輪郭をなすように形成されている。
各ストレッチ帯域(44)(45)(46)の多数の孔は、孔の周囲の伸長方向が異なる2つのグループの孔(5d)(5e)よりなり、両グループの孔(5d)(5e)が各ストレッチ帯域(44)(45)(46)に分散混在するように幾何学的に配置されている。
第1のグループの孔(5d)は、前後方向にのびる長孔よりなる。第2のグループの孔(5e)は、前後方向と直交する方向にのびる長孔よりなる。そして、両グループの長孔(5d)(5e)が1個ずつ十字状に交差して配置されることによって1つのユニットが構成されていると共に、同ユニットがストレッチ帯域全体にわたって千鳥状に配置されている。
また上記のサンダル(1B)では、補強材(28)によって表地(21)のストレッチ帯域(44)(45)(46)の強度およびキックバックが補完されている。その上、補強材(28)はTPUシート製であって、加熱加圧によりストレッチ帯域(44)(45)(46)の裏面に接合されているので、糊による接着の場合と比べて接合強度が高く、表地(21)の孔(5d)(5e)の周囲に糊が付着して汚れるといった問題も生じない上、材料コストも抑えられる。
図7は、ストレッチ帯域に設けられる孔の組合せの変形例を示すものである。
まず図7(a)に示す例の場合、孔の周囲の伸長方向が異なる2つのグループの長孔(5f)(5g)によって構成されている。即ち、第1のグループの長孔(5f)は前後方向にのびており、第2のグループの長孔(5g)は前後方向と直交する方向にのびている。そして、両グループの長孔(5d)(5e)が前後および上下に交互に間隔をおいて並ぶように配置されている。
図7(b)に示す変形例は、孔の周囲の伸長方向が異なる3つのグループの長孔(5h)(5i)(5j)で構成されているものである。第1のグループの長孔(5h)は前後方向にのびており、第2のグループの長孔(5i)は前後方向に対して時計回り方向に傾斜した方向にのびており、第3のグループの長孔(5j)は前後方向に対して反時計回り方向に傾斜した方向にのびている。第2・第3のグループの長孔(5i)(5j)は、第1のグループの長孔(5h)と比べてやや短いものとなされており、従って孔の周囲の伸長度合いもやや小さくなる。そして、各グループの長孔(5h)(5i)(5j)が1個ずつ横向きY字状に交差して配置されることによって1つのユニットが構成されていると共に、同ユニットが千鳥状に配置されている。
図7(c)に示すものは、孔の周囲の伸長方向が異なる2つのグループの長孔(5k)(5m)によって構成されており、第1のグループの長孔(5k)は前後方向に対して時計回り方向に傾斜した方向にのびており、第2のグループの長孔(5m)は前後方向に対して反時計回り方向に傾斜した方向にのびている。そして、両グループの長孔(5k)(5m)の各2個すなわち計4個が放射状に配置されることによって1つのユニットが構成されていると共に、同ユニットが縦横に列をなすように配置されている。
また、図7(d)の変形例は、3つのグループの孔(5n)(5p)(5q)によって構成されている。第1のグループの孔(5n)は、前後方向にのびる長孔よりなる。第2のグループの孔(5p)は、前後方向に対して直交する方向にのびる長孔よりなる。第3のグループの孔(5q)は、円形の小さな短孔よりなる。そして、第1・第2グループの長孔(5p)(5q)が上下左右に交互に等間隔おきに配置されていると共に、両長孔(5p)(5q)どうしの間に短孔(5q)が配置されている。
図8および図9には、この発明の第3の実施形態が示されている。第3の実施形態は、以下の点を除いて第1の実施形態と同じである。
すなわち、図8,9に示す短靴(1C)において、甲被(2C)の表地(21)には、前半部のほぼ全体に亘るように、多数の孔(5a)(5b)(5c)を有するストレッチ帯域(47)が設けられている(図面上は一部の孔を省略してある)。
図9に示すように、表地(21)と裏地(22)との間には非伸縮性材料よりなるシート状の中芯材(210)が介在されている。中芯材(210)には、その前内側部および前外側部に、略山形の切り欠き(210a)(210b)が形成されている。前内側の切り欠き(210a)は、足の内側ボールジョイント部に対応する部分に形成されており、前外側の切り欠き(210b)は、足の外側ボールジョイント部に対応する部分に形成されている。
(1C):サンダル(履物)
(2A)(2B)(2C):甲被
(21):表地
(22):裏地
(24):補強材
(210):中芯材
(210a)(210b):切り欠き
(3A)(3B):底
(41)(42)(44)(45)(46)(47):ストレッチ帯域
(5a)(5b)(5c)(5d)(5e)(5f)(5g)(5h)(5i)(5j)(5k)(5m)(5n)(5p):長孔
(5q):短孔
Claims (7)
- 非伸縮性材料よりなる表地および伸縮性材料よりなる裏地を有する甲被と、甲被が取り付けられる底とを備えており、甲被の表地に、足の凸部に合わせて伸びうるように多数の貫通状の孔をあけたストレッチ帯域が設けられ、ストレッチ帯域の多数の孔が、互いに異なる方向にのびる2つ以上のグループの長孔を含んでおり、これらのグループの長孔が2個ずつ集まって放射状に配置されることによって1つのユニットが構成されていると共に、同ユニットがストレッチ帯域全体にわたって幾何学的に配置されていることを特徴とする履物。
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- 非伸縮性材料よりなる表地および伸縮性材料よりなる裏地を有する甲被と、甲被が取り付けられる底とを備えており、甲被の表地に、足の凸部に合わせて伸びうるように多数の貫通状の孔をあけたストレッチ帯域が設けられ、ストレッチ帯域の多数の孔が、互いに異なる方向にのびる3つのグループの長孔を含んでおり、これらのグループの長孔が1個ずつ集まってY字状に配置されることによって1つのユニットが構成されていると共に、同ユニットがストレッチ帯域全体にわたって幾何学的に配置されていることを特徴とする履物。
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- 表地のストレッチ帯域の裏面に、伸縮性材料よりなるシート状の補強材が接合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の履物。
- 表地のストレッチ帯域と裏地との間に非伸縮性材料よりなるシート状の中芯材が介在されていると共に、表地のストレッチ帯域の特定部分のみが伸びうるように当該特定部分に対応する中芯材部分に切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の履物。
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