JP5268110B2 - 太陽熱利用システム - Google Patents

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Description

本発明は、太陽熱を利用して水等の熱媒を加熱して、加熱された熱媒が保有する熱量を熱的負荷に供給する太陽熱利用システムに関する。
この様な太陽熱利用システムは、近年の環境保護意識の向上に伴い、急速に普及している。
係る太陽熱利用システムでは、集熱器により太陽熱を集熱して、熱媒を加熱する。
ここで、集熱器内の熱媒が蒸発し、高温・高圧の気相熱媒が配管や太陽熱利用システム中の機器(吸収式冷凍機、給湯器、蓄熱タンク、熱交換器など)へ到達すると、それらを破損させる恐れがある。そのため、冷却機構やポンプが故障したり、停電した場合には、集熱器内の熱媒の沸騰を回避し、沸騰した熱媒蒸気を凝縮し、或いは、熱媒蒸気を放出する必要がある。
例えば図6で全体を符号100Jで示す様な、いわゆる「開放系システム」では、集熱ポンプ1、集熱器2、熱的負荷3、落水用タンクTw、熱媒循環ラインLh、制御手段CU1を備えている。
熱媒循環ラインLhは、集熱器2の出口2oと入口2iを接続し、熱的負荷(或いは熱的負荷と熱交換を行なっている熱交換器や蓄熱タンク)3を介装している。
熱媒循環ラインLhにおける熱的負荷3と集熱器2の入口2iとの間の領域には、集熱ポンプ1が介装されている。そして、熱媒循環ラインLhにおける集熱ポンプ1と集熱器2の入口2iとの間の領域には、落水用タンクTwが介装されている。
集熱器2の出口2o近傍には、吸排気弁Vを介装した吸排気ラインLaが接続されている。また、集熱器2の出口2o近傍には、熱媒の温度を計測する温度センサ7が設けられている。
制御手段CU1は、温度センサ7からの熱媒温度の情報を受信し、熱媒温度によって集熱ポンプ1の作動を制御する。
制御手段CU1は、集熱器2における熱媒温度が沸騰直前(例えば95℃)まで昇温した場合には、集熱ポンプ1を停止して、吸排気弁Vが熱媒の自重により開放される。停電等により集熱ポンプ1に対する電気入力が無くなった場合も同様に、集熱ポンプ1は停止し、吸排気弁Vが熱媒の自重により開放される。
吸排気弁Vが開放されると集熱器2内に外気が流入し、集熱器2内の熱媒は自重により落水用タンクTwに落水される。これにより、集熱器2内で熱媒が沸騰して、集熱器2や配管系Lhなどを破損することが防止される。
日射量が減少し、或いは、停電が復旧して、集熱ポンプ1が起動する条件が充足されたのであれば、再び集熱ポンプ1が起動して、集熱器2内に熱媒が充填される。
しかし、図6で示す開放系システムでは、集熱器2を外気に開放して集熱器2内の熱媒を落水しているので、外気が集熱器2内に侵入して、外気に包含される酸素によって集熱器2を腐食させる可能性が高まる、という問題を有している。
これに対して、図7で示す様な、いわゆる「密閉系システム」であれば、外気が集熱器内に侵入することはないので、集熱器の腐食の問題は生じ難い。
図7において、全体を符号101Jで示す太陽熱利用システムは、集熱器2の出口2o近傍に、バッファーラインLjが接続されている。バッファーラインLjには凝縮用タンク(或いは、自然放熱ラジエータ)Tcが介装され、バッファーラインLjの端部には膨張タンク60が接続されている。
また、熱媒循環ラインLhにおける集熱ポンプ1と集熱器2の入口2iとの間の領域には、逆止弁Vcが介装されている。
図7において、制御手段CU2は、集熱器2における熱媒温度が沸騰直前(例えば95℃)まで昇温した場合には、集熱ポンプ1を停止する。停電等により集熱ポンプ1に対する電気入力が無くなった場合も同様に、集熱ポンプ1は停止する。
集熱ポンプ1が停止して、熱媒が循環しなくなると、日射により熱媒が加熱され、集熱器2内で熱媒が蒸発して気相熱媒が発生する。発生した気相熱媒は、凝縮用タンク(或いは、自然放熱ラジエータ)Tcにおいて凝縮される。凝縮用タンクの場合は主としてタンクの保有水の熱容量により、自然放熱ラジエータの場合は外気への放熱により、気相熱媒を凝縮する。
ここで、集熱器2で発生した気相熱媒により、凝縮用タンクTcに予め充填されていた液相熱媒が排除されて、膨張タンク60に流入する。
日射量が減少し、集熱器2内で気相熱媒が凝縮すると集熱器2内で熱媒の体積が減少し、膨張タンク60から液相熱媒が押し出され、凝縮用タンク(或いは、自然放熱ラジエータ)Tcから液相熱媒が集熱器2内に充填される。
これにより、再び集熱ポンプ1が起動する条件が整う。
図8の太陽熱利用システム102Jは、図7の太陽熱利用システム101JにおけるバッファーラインLj、凝縮用タンクTc、膨張タンク60を省略している。図8の太陽熱利用システム102Jは、熱媒循環ラインLhの蓄熱タンク30と集熱ポンプ1との間の領域に、膨張タンク6を介装している。
図8の太陽熱利用システム102Jにおいて、集熱器2における熱媒温度が沸騰直前(例えば95℃)まで昇温した場合には、集熱ポンプ1を停止する。停電等により集熱ポンプ1に対する電気入力が無くなった場合も同様である。
集熱器2内で気相熱媒が発生すると、発生した気相熱媒は蓄熱タンク30により凝縮される。そして、集熱器2で発生した気相熱媒の膨張分は、膨張タンク6が受ける。
日射量が減少し、集熱器2内で気相熱媒が凝縮すると集熱器2内で熱媒の体積が減少し、膨張タンク6から液相熱媒が押し出され、集熱器2内に液相熱媒が充填され、再び集熱ポンプ1が起動する条件が整う。
しかし、図7、図8の従来技術における密閉系システムでは、凝縮用タンク(或いは、自然放熱ラジエータ)Tc(図7)、蓄熱タンク30(図8)は、停電時に対応するために、電動ファンを設けていない。そのため、凝縮用タンクや蓄熱タンクの場合は気相熱媒の凝縮に必要な大きな熱容量を必要とし、自然放熱ラジエータの場合は大きな伝熱面積を必要とする。
また、蒸発した際の体積膨張分を吸収するために、膨張タンク60(図7)或いは膨張タンク6(図8)の容積を非常に大きくしなければならない、という問題を有している。
さらに、密閉系システムにおける凝縮用タンク(或いは、自然放熱ラジエータ)Tc(図7)、蓄熱タンク30(図8)の圧力は大気圧以上となり、例えば熱媒として水を用いた場合には、その沸点が100℃を超えてしまう。
そのため、凝縮用タンク(或いは、自然放熱ラジエータ)Tc(図7)、蓄熱タンク30(図8)が第1種圧力容器(労働安全衛生法)に該当してしまう。そして、第1種圧力容器に該当した場合には、頑強な構造であることが要求されると共に、毎年の開放点検が義務付けられてしまうので、その分だけコスト高となってしまう。
それに加えて、熱的負荷(或いは熱的負荷と熱交換を行なっている熱交換器や蓄熱タンク)3に気相熱媒が到達することを防ぎ、気相熱媒を凝縮用タンク(或いは、自然放熱ラジエータ)Tcに導くためには、凝縮用タンク(或いは、自然放熱ラジエータ)Tcを集熱器出口2oと接続し、その先にバッファーラインLjを介して膨張タンク60を設ける必要があるが、集熱ポンプ1が運転している間、集熱器の出口2oから集熱ポンプ1の間に流体の圧力が低下し、集熱ポンプ1の吸込側で、ポンプ吸込みに必要な正の圧力(NPSH:Net Positive Suction Head)を確保することが出来ない、という問題を有している。
NPSHはキャビテーション防止のために必要であり、これを確保しないと、キャビテーションにより羽根車等の集熱ポンプの部品が破損してしまうという問題が浮上する。ここで、膨張タンク60の気体封入圧力を高めると、集熱器の出口2oから集熱ポンプ1の間の圧力損失が大きくても、NPSHを確保することができるが、その場合は気相熱媒が高温・高圧化し、高い耐熱性及び耐圧性を備えた高コストなシステムにしなければならない。
さらに、膨張タンクの容積を小さく(熱媒の気化による体積膨張分を吸収することのできる容積以下)した場合、図7、図8で示す様な密閉系システムでは、図示しない安全弁から、高温の気相熱媒や液相熱媒が噴出してしまうという問題がある。
高温の気相熱媒や液相熱媒が噴出してしまうと、その周囲の作業者やユーザーは大変に危険である。
また、太陽熱利用システムを建造物の屋根に設けている場合には、屋根に敷設されている防水シートは高温に弱い材質であることが多いので、図示しない安全弁から高温の気相熱媒や液相熱媒が噴出すると、防水シートを損傷してしまう恐れがある。
その他の従来技術としては、例えば、停電時に集熱器を含む熱媒循環系を循環している熱媒を熱媒タンクに落下させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)では、膨張タンクが大気に開放されており、停電時において、外気が膨張タンク、熱媒タンクを介して集熱器に侵入してしまう。そのため、図6で示す開放系システムと同様に、集熱器が腐食してしまう恐れがある。
また、集熱器により熱媒体温度が上昇すると、切換弁を切り換えることによりバイパス管を介して集熱器と大容量リザーブタンクとが連通し、熱媒体がバイパス管を流過する際に冷却機構により冷却され、且つ、大容量リザーブタンク壁面から放熱される技術も提案されている(特許文献2参照)。
しかし、この技術(特許文献2)では、停電により切換弁が作動しない場合や、集熱器内で熱媒が蒸発して気相熱媒となってしまう事態は想定してはいない。そのため、熱媒が蒸発することに伴う上述の各種問題点には対処することが出来ないという問題を有している。
特開昭58−47954号公報 特開2001−4231号公報
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、外気が集熱器内に侵入することによる腐食のリスクが防止できて、巨大なラジエータや容積が膨大なタンクを必要とすることがなく、高温の気相熱媒や液相熱媒を噴出することがない様な太陽熱利用システムの提供を目的としている。
本発明の太陽熱利用システムは、熱媒循環用機器(集熱ポンプ1)と太陽熱により熱媒(例えば水)を加熱する集熱装置(集熱器2)と熱的負荷(或いは熱的負荷に接続されている熱交換器3或いは図示しない蓄熱タンク)を介装している配管系(Lh)を備え、当該配管系(Lh)の集熱装置(集熱器2)と熱的負荷(3)との間の領域から分岐配管(Lb)が分岐(B1)しており、分岐配管(Lb)は容器(開放用タンク4)に連通しており、当該容器(開放用タンク4)は、分岐配管(Lb)を介して流入した気相熱媒(例えば水蒸気)を凝縮する凝縮領域(凝縮側41)と、第1の開閉弁(V1)を介装した配管(La)を介して外部に連通する調整領域(バッファー側42)を有しており、凝縮領域(凝縮側41)と調整領域(バッファー側42)は液相熱媒(例えば水)が充填されており、凝縮領域(凝縮側41)に流入した気相熱媒(例えば水蒸気)は調整領域(バッファー側42)には流入しないが、発生する気相熱媒の体積に等しい液相熱媒が凝縮領域(凝縮側41)から調整領域(バッファー側42)に流入する機能を有していることを特徴としている。
ここで、熱媒としては水が好ましいが、その他の熱媒として、エチレングリコールやプロピレングリコールを含んだ不凍液を使用することが可能である。
また、本発明における「発生する気相熱媒(もしくは蒸気)の体積」とは、集熱装置(集熱器2)において発生する蒸気のうち、凝縮領域(凝縮側41)で凝縮する蒸気を除いた分の蒸気体積を示す。
本発明において、前記配管系(Lh)の熱媒循環用機器(集熱ポンプ1)吸込側の領域には熱媒供給用の配管(Lc)が合流(G)し、熱媒供給用の配管(Lc)は第2の開閉弁(V2)を介して熱媒供給装置(5)に連通しており、且つ、膨張タンク(6)が設けられているのが好ましい。
ここで、熱媒供給装置として、一定圧力で熱媒の供給を行なうように構成されている熱媒供給槽(いわゆる「シスターン」5)が好ましい。
また本発明(請求項2の太陽熱利用システム100)において、集熱装置(集熱器2)の熱媒温度(水温T)を計測する計測装置(温度センサ7)と、当該計測装置(温度センサ7)の計測結果が入力される制御装置(コントロールユニット10)を備え、当該制御装置(コントロールユニット10)は、
集熱装置(集熱器2)の熱媒温度(水温T)が熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度(熱媒が水の場合であれば、例えば95℃)よりも低温の場合には、第1の開閉弁(V1)を閉鎖し、第2の開閉弁(V2)を開放する機能と、
集熱装置(集熱器2)の熱媒温度(水温T)が熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度(熱媒が水の場合であれば、例えば95℃)以上に昇温した場合には、当該熱媒温度が、熱媒の沸点よりも低温で且つ日射量が多くない時間帯には昇温不可能な温度(熱媒が水の場合であれば、例えば65℃)に降温するまでは、熱媒循環用機器(集熱ポンプ1)を停止し、第1の開閉弁(V1)を開放し、第2の開閉弁(V2)を閉鎖する機能と、
集熱装置(集熱器2)の熱媒温度(水温T)が、熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度(熱媒が水の場合であれば、例えば95℃)以上に昇温した後、熱媒の沸点よりも低温で且つ日射量が多くない時間帯には昇温不可能な温度(熱媒が水の場合であれば、例えば65℃)まで降温した場合に、第1の開閉弁(V1)を閉鎖し、第2の開閉弁(V2)を開放する機能を有しているのが好ましい。
そして本発明の制御方法は、太陽熱利用システム(請求項3の太陽熱利用システム)の制御方法において、
集熱装置(集熱器2)の熱媒温度(水温T)を計測装置(温度センサ7)で計測する工程(S2)と、
計測された集熱装置(集熱器2)の熱媒温度(水温T)が熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度(熱媒が水の場合であれば、例えば95℃)よりも低温であれば、熱媒循環用機器(集熱ポンプ1)を作動し、第1の開閉弁(V1)を閉鎖し、第2の開閉弁(V2)を開放する工程(S1)と、
前記熱媒温度(水温T)が熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度(熱媒が水の場合であれば、例えば95℃)以上に昇温した場合に、当該熱媒温度が、熱媒の沸点よりも低温で且つ日射量が多くない時間帯には昇温不可能な温度(熱媒が水の場合であれば、例えば65℃)に降温するまでは、熱媒循環用機器(集熱ポンプ1)を停止し、第1の開閉弁(V1)を開放し、第2の開閉弁(V2)を閉鎖する工程(S4)と、
前記熱媒温度(水温T)が、熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度(熱媒が水の場合であれば、例えば95℃)以上に昇温した後、熱媒の沸点よりも低温で且つ日射量が多くない時間帯には昇温不可能な温度(熱媒が水の場合であれば、例えば65℃)まで降温したならば、第1の開閉弁(V1)を閉鎖し、第2の開閉弁(V2)を開放する工程(S1)を有していることを特徴としている。
なお、熱媒循環用機器(集熱ポンプ1)は図示しない制御フロー上で集熱器温度や日射などの条件に応じて発停するが、第1の開閉弁(V1)を開放し、第2の開閉弁(V2)を閉鎖する工程(S4)においては、その際の集熱ポンプ1の状態に関わらず、制御装置(コントロールユニット10)は集熱ポンプ1への停止信号を発報し、集熱ポンプ1が起動中であれば停止させる。
上述する構成を具備する本発明によれば、集熱器(2)内の液相熱媒(例えば水)が蒸発しない通常状態では、配管系(Lh)が密閉系として構成されている。そして、集熱装置(集熱器2)内の液相熱媒が蒸発した場合には、分岐配管(Lb)を介して気相熱媒(例えば水蒸気)は容器(開放用タンク4)の凝縮領域(凝縮側41)に流入して容器の保有する液相熱媒の熱容量により凝縮される。
そして、集熱装置(集熱器2)内の気相熱媒が凝縮して集熱装置(集熱器2)内の圧力が低下すると、容器(開放用タンク4)内の液相熱媒が分岐配管(Lb)を介して配管系(Lh)に流入する。調整領域(バッファー側42)は、発生する気相熱媒と等しい容積であるため、気相熱媒が凝縮して開放弁V1から外気が流入しても、凝縮領域(凝縮側41)には外気は流入せず、外気に包含される酸素により、システムを構成する配管や集熱器が腐食することが防止される。なお、本発明において、「調整領域(42)の容積」とは、容器(開放用タンク4)の連結部44の上端から下端を含まず、調整領域(42)における連結部44より上部の容積を意味している。
本発明によれば、容器(開放用タンク4)の凝縮領域(凝縮側41)については、流入した気相熱媒(例えば水蒸気)が凝縮できるだけの容積があれば足りる。
また、調整領域(バッファー側42)の容積は、発生する気相熱媒が凝縮した体積と等しければ足りる。すなわち、調整領域(42)の容積は、集熱装置(2)の容積と等しいか、或いは、集熱装置(2)の容積と、集熱装置(2)から前記容器(開放用タンク4)の凝縮領域(凝縮側41)に至る配管(配管Lhの集熱器2から分岐点B1までの領域と、分岐配管Lb)の容積との和に等しければ足りる。
気相熱媒の発生に伴う熱媒体積の膨張をすべて膨張タンクにより受けようとすると、一般に、膨張タンクは集熱装置(2)と配管系(Lh)が保有する液相熱媒の温度変化に伴う熱膨張の体積分の液相熱媒と、発生する気相熱媒の体積分の液相熱媒を受け、さらにその際にそれら体積の和と同等の体積の気体を膨張タンク内に保有する必要がある。そのため、図7に図示する従来技術においては、本発明における調整領域(バッファー側42)の約2倍の容積を持った膨張タンク60が必要となる。
これに対して、本発明では、集熱装置(2)と配管系(Lh)が保有する液相熱媒の温度変化に伴う熱膨張分の体積の液相熱媒を受けるための膨張タンク6は必要であるが、液相熱媒の温度変化に伴う熱膨張分の体積は、発生する気相熱媒の体積と比べて極めて小さい。そのため、本発明によれば、調整領域(バッファー側42)の容積と膨張タンク6の容積の合計を、図7に図示する膨張タンク60の容積よりも小さくすることができる。
さらに本発明によれば、集熱装置(2)内の液相熱媒が蒸発して、気相熱媒(例えば水蒸気)が発生すると、気相熱媒と同一体積の液相熱媒であって、調整領域(バッファー側42)に充填されていた液相熱媒が、第1の開閉弁(V1)を介装した配管(La)を介して外部に流出する。
調整領域(バッファー側42)の容積と、発生する気相熱媒の体積は等しいため、当該配管(La)から外部に流出するのは常に低温の液相熱媒であり、高温の気相熱媒や液相熱媒が噴出してしまう恐れはない。
それに加えて、集熱装置(2)において液相熱媒が気化(蒸発)する可能性が高くなると(例えば、集熱器の水温Tが95℃以上になると)、配管(La)に開放された第1の開閉弁(V1)は開放するので、容器(開放用タンク4)内の圧力は大気圧よりも高くなることはない。そして、容器(開放用タンク4)内の液相熱媒が沸点(例えば、熱媒が水であれば100℃)を超えることも無い。
そのため、本発明によれば、当該容器(開放用タンク4)は労働安全衛生法における第1種圧力容器には該当せず、労働安全衛生法における第1種圧力容器に要求される頑丈な構造とする必要がなく、開放点検が義務付けられてしまうこともない。
これに加えて、本発明において、熱媒循環用機器(集熱ポンプ1)吸込側の領域に合流している熱媒供給用の配管(Lc)に膨張タンク(6)が設けられていれば、熱媒循環用機器(集熱ポンプ1)吸込側圧力が膨張タンク(6)の圧力に等しくなるので、熱媒循環用機器(集熱ポンプ1)吸込側圧力が正圧に保持される(有効NPSHを維持出来る)。そのため、キャビテーションが発生して、熱媒循環用機器(集熱ポンプ1)が破損してしまうことが防止される。
本発明の第1実施形態を示すブロック図である。 第1実施形態の制御を示すフローチャートである。 第1実施形態における第1変形例の要部を示すブロック図である。 第1実施形態における第2変形例の要部を示すブロック図である。 本発明の第2実施形態を示すブロック図である。 従来技術に係る開放系システムを示すブロック図である。 従来の密閉系システムの一例を示すブロック図である。 図7とは別のタイプの従来の密閉系システムを示すブロック図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
以下の実施形態においては、熱媒として水を使用する場合について説明する。
最初に、図1、図2を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
図1において、全体を符号100で示す太陽熱利用システムは、集熱ポンプ1及び太陽熱集熱器(以下、「集熱器」と記載する)2を介装した配管(以下、「熱媒循環ライン」と記載する)Lhと、熱媒循環ラインLhから分岐した分岐ラインLbと、分岐配管Lbが連通する開放用タンク4を有している。
ここで、熱媒循環ラインLhは、熱的負荷(或いは熱的負荷と熱交換をしている熱交換器や蓄熱タンク:以下、「熱交換器」と記載する)3を介装している。
熱媒循環ラインLhは、ラインLh1、Lh2、Lh3から構成されている。
ラインLh1は、集熱ポンプの吐出側1oと集熱器2の入口2iを接続する熱媒ラインであり、逆止弁Vcを介装している。
ラインLh2は、集熱器2の出口2oと熱交換器3の入口3iを接続する熱媒ラインである。
ラインLh3は、熱交換器3の出口3oと集熱ポンプ1の吸入側1iを接続する熱媒ラインである。
開放用タンク4は、仕切り板43によって凝縮領域(以下、「凝縮側」と記載する)41と、調整領域(以下、「バッファー側」と記載する)42に区分されている。
仕切り板43は、開放用タンク4の底部側(図1では下側)が欠損して構成されており、当該欠損部(開放用タンク4の底部側の欠損した領域)が符号44で示す連通部を構成している。そして、連通部44を介して、凝縮領域41と調整領域42とが連通している。
ここで、開放用タンク4のバッファー側42の容積は、集熱器2の容積程度に設定されている。
調整領域42の天井部(図1では上部)42tには、開閉弁V1を介装したオーバーフロー用ラインLaが接続されており、ラインLaの端部は大気に開放されている。
また、調整領域42の天井部42tには、吸排気弁Vaが設けられている。
集熱器2の出口2oと熱交換器3の入口3iを接続するラインLh2には分岐点B1が設けられ、分岐点B1から分岐ラインLbが分岐している。分岐ラインLbは、開放用タンク4の凝縮領域41の底部近傍に連通している。
熱交換器3の出口3oと集熱ポンプ1の吸入側1iを接続するラインLh3には合流点Gが設けられ、合流点Gには熱媒供給用の配管(以下、「熱媒供給ライン」と記載する)Lcが接続されている。熱媒供給ラインLcは、熱媒供給槽(以下、「シスターン」と記載する)5に連通している。すなわち、熱媒供給ラインLcは、集熱ポンプ1の吸込側の領域で熱媒循環ラインLhに合流し、シスターン5から集熱ポンプ1の吸込側に熱媒である水が供給されるように構成されている。
ここで、シスターン5は、一定圧力で給水する給水槽(熱媒供給槽)である。
熱媒供給ラインLcには、開閉弁V2が介装されている。
熱媒供給ラインLcにおける開閉弁V2と合流点Gとの間の領域には、分岐点B2が形成されており、分岐点B2から分岐ラインLdが分岐しており、分岐ラインLdは膨張タンク6に連通している。
膨張タンク6は、熱媒が液相の状態で熱膨張、熱収縮して体積変化した際に、当該体積変化を吸収するために設けられている。
集熱器2は、例えば建造物の屋根上に配置されている。
集熱器2の出口2o近傍には、熱媒の温度(水温)を計測する温度センサ7が取り付けられている。
温度センサ7は、信号伝達ラインSiによって制御手段10と接続されている。
制御手段10は、集熱ポンプ1、開閉弁V1、V2と制御信号ラインSoによって接続されている。
制御手段10は、温度センサ7が検知した水温に基づいて、集熱ポンプ1の作動や停止を制御し、開閉弁V1、V2の開閉制御を行なう。
次に、図1で示す太陽熱利用システム100の作動を、図2のフローチャートも参照して説明する。
太陽熱利用システム100は、その初期状態では開閉弁V1が閉鎖され、開閉弁V2が開放されている。
初期状態の太陽熱利用システム100は、シスターン5から開閉弁V1までの領域(図1で示す太陽熱利用システム100全体)が水で充填されており、密閉系を構成している。そして、初期状態において、開放用タンク4の凝縮側41、バッファー側42は全て水で充填されており、分岐ラインLbも水で充満している。
図2のステップS1は、太陽熱利用システム100の初期状態を示している。ステップS1において、開閉弁V1が閉鎖され、開閉弁V2が開放されている。ここで、集熱ポンプ1は、図示しない制御により、集熱器温度や日射などの条件に応じて発停する。
集熱ポンプ1が作動すると、集熱器2及び負荷(熱交換器)3を介装した熱媒循環ラインLh内を熱媒である水が循環する。
太陽熱利用システム100の初期状態(ステップS1)では、集熱器2において、水は蒸発していない。
ステップS2では、温度センサ7が常時集熱器2内の水温を計測している。
ステップS3では、制御手段10は、集熱器2内の水温Tが、水の沸点近傍で且つ水の沸点以下の所定温度(例えば、95℃)に到達したか否かを判断する。
集熱器2における水温Tが、水の沸点近傍で且つ水の沸点以下の所定温度(例えば、95℃)に到達したならば(ステップS3がYES)、ステップS4に進み、集熱ポンプ1を停止して、開閉弁V1を開放し、開閉弁V2を閉鎖する。
ここで、「水の沸点近傍で且つ水の沸点以下の温度」の「95℃」というのは、あくまでも例示であり、これに限定する趣旨ではない。
図2のフローチャートでは記載していないが、停電の場合も同様に、開閉弁V1を開放し、開閉弁V2を閉鎖する。
開閉弁V1を開くことにより、配管Laは大気に開放され、バッファー側42を含む集熱器2内や熱媒循環ラインLhの圧力は大気圧と等しくなる。
集熱器2内の水温が沸点に昇温した時点で、水の沸騰が開始する。
沸騰した熱媒(蒸気)は、分岐ライン配管Lbを介して、開放用タンク4の凝縮側41に流入する。
ここで、開放用タンク4のバッファー側42はステップS4で大気開放されており、開放用タンク4に連通する分岐ラインLbの管路抵抗は小さい。それに対して、熱的負荷(熱交換器)3を介装した熱媒循環ラインLhの管路抵抗は大きい。さらに、ラインLh1には逆止弁Vcが設置されており、ラインLh1からラインLh3へ熱媒が流れることはない。
そのため、集熱器2で蒸発した蒸気は、全て分岐ラインLbを介して開放タンク4の凝縮側41に流れ、蒸気が熱的負荷(熱交換器)3を介装した熱媒循環ラインLh側に流れてしまうことはない。
開放用タンク4の凝縮側41には、昇温していない水が充填されているので、分岐ラインLbを介して凝縮側41に流入した蒸気は、そこに存在する水と潜熱−顕熱熱交換を行なって直ちに凝縮する。
その結果、凝縮側41には発生した蒸気体積分の水が流れ込んだこととなる。
前述した通り、開放用タンク4の凝縮側41とバッファー側42とは、仕切り板43により仕切られている。
仕切り板43は開放用タンク4の上部は仕切っているが、下部は仕切っていないので、開放用タンク4の下方の領域(連通部)44において、凝縮側41とバッファー側42とは連通している。
水が気化すると、凝縮側41に蒸気が流入し、凝縮側41の底部から上部へと熱媒の比重差で蒸気が上昇しながら凝縮し、凝縮された水は凝縮側41の上方に貯留され、凝縮側41に元から存在していた温度の低い水は、開放用タンク4の下方の連通部44を介してバッファー側42に流れ込む。
その結果、発生した蒸気が凝縮した体積と同一体積の水が、バッファー側42から、ラインLa、開閉弁V1を介してオーバーフローされる。
ここで、バッファー側42からオーバーフローした水は、開閉弁V1が閉鎖している初期状態に充填されていた水であり、その温度は、外気温程度である。
その後、集熱器2が太陽熱で加熱され続けると、集熱器2内は蒸気で満たされ、集熱器2の内容積と同一体積の水が開放用タンク4の凝縮側41からバッファー側42に流れ込み、ラインLaからオーバーフローされる。なお、集熱器2の仕様や配管系如何によっては、集熱器2と集熱器出口2oから分岐ラインLbの内部が蒸気で満たされ、集熱器2の内容積分に加えて、集熱器出口2oから分岐ラインLbまでの配管の容積と同一体積の水が、バッファー側42に流れ込む場合が存在する。
集熱器2内が蒸気で満たされた後は、開放用タンク4の凝縮側41から、バッファー側42に水が流れ込むことはなく、ラインLaから水がオーバーフローされることもない。
ここで、ステップS4では、開閉弁V1が開放しており、ラインLaが大気開放されているため、開放用タンク4内の圧力は大気圧よりも高圧にはならず、開放用タンク4内の水温も100℃を越えることはない。
換言すれば、開閉弁V1が開放している状態では、開放用タンク4内の圧力は大気圧に維持され、開放用タンク4内に充填される水の沸点が大気圧における水の沸点(100℃)よりも高温となってしまうことはない。そのため、開放用タンク4は、労働安全衛生法における「第1種圧力容器」に該当しない。「第1種圧力容器」では、内部圧力が大気圧よりも高圧となり、内部に充填される液体の沸点が大気圧における沸点よりも高温となるからである。
すなわち、開閉弁SV1が開放しており、配管Laが大気開放されていれば、開放用タンク4は、労働安全衛生法における第1種圧力容器とはなり得ない。
また、上述した様に、バッファー側42からオーバーフローした水は、開閉弁V1が閉鎖している初期状態に充填されていた水であり、その温度は、システム外気温程度の低温(常温)である。そのため、図1、図2の第1実施形態の太陽熱利用システム100によれば、従来技術のように、100℃近い水や蒸気が配管Laや図示しない安全弁から排出されてしまうことはない。
従って、太陽熱利用システム100が建造物の屋根上に配置されており、屋根に貼られている防水シートが高熱に弱い材料製であったとしても、ラインLaからオーバーフローした高温の水や図示しない安全弁から排出された蒸気によって、防水シートがダメージを受けて、建造物内部が漏水するという恐れはない。
日射量が多い状態では、最終的に、集熱器2は蒸気のみで満たされる。その状態では、開放用タンク4の凝縮側41では、集熱器2の容積に等しい水が流入している。
しかし、開放用タンク4のバッファー側42の容積は少なくとも集熱器2の容積程度であるため、集熱器2内がすべて蒸気で満たされても、比較的高温の水がオーバーフローしてしまうことはない。
日が翳り、集熱器2への日射量が減少して、集熱器2がそれ以上加熱されない状態となれば、集熱器2内で蒸気の凝縮が始まる。
集熱器2内で蒸気の凝縮が開始された時点においては、開閉弁V1が開放しており、開閉弁V2が閉鎖している状態が維持される。
ここで、集熱器2で蒸気の凝縮が開始された状態となれば、その時点で、集熱器2内で水が蒸発して体積膨張することに起因した各種トラブルは、回避された状態になる。
集熱器2内で蒸気の凝縮が開始されると、蒸気の凝縮により集熱器2内の圧力が低下するので、分岐ラインLbを介して開放用タンク4の凝縮側41から、水が集熱器2側に吸引される。
そして集熱器2内の蒸気が完全に凝縮すると、集熱器2内は、凝縮側41およびバッファー側42から吸引された水で充填される。そして、開放用タンク4の凝縮側41およびバッファー側42の水が集熱器2側に吸引されるので、集熱器2と等しい体積の空気がラインLaを介して外部から吸引されて、バッファー側42に充填される。
上述した通り、バッファー側42の容積は集熱器2の容積と同程度であるので、バッファー側42は空気で充填される。
しかし、凝縮側41は水で充填されているので、バッファー側42の空気が、分岐ラインLbを介して熱媒循環ラインLh及び集熱器2に侵入してしまうことはない。そのため、空気中の酸素による熱媒循環ラインLh及び集熱器2の腐食のリスクが増加してしまうことはない。
その後、集熱器2における水温Tは低下する。
図2のステップS5では、集熱器2内の水温を計測しており、ステップS6では、制御手段10により、集熱器2における水温Tが、水の沸点よりも遥かに低い温度であって、夏季の日射量が多くない時間帯(例えば夜間)には到達不能な温度(例えば、65℃以下)になったか否かを判断する。
集熱器2における水温Tが、水の沸点よりも遥かに低い温度であって、夏季の日射量が多くない時間帯(例えば夜間)には到達不能な温度(例えば、65℃以下)になったならば(ステップS6がYES)、ステップS1まで戻り、開閉弁V1を閉鎖して、開閉弁V2を開放する。
停電が復旧した場合においても、集熱器2における水温Tが、水の沸点よりも遥かに低い温度であって、夏季の日射量が多くない時間帯(例えば夜間)には到達不能な上述の温度(例えば、65℃以下)になったことを確認してから、開閉弁V1を閉鎖して、開閉弁V2を開放する。
一方、集熱器2における水温Tが、水の沸点よりも遥かに低い温度であって、夏季の日射量が多くない時間帯(例えば夜間)には到達不能な温度(例えば、65℃)まで降下していない場合には(ステップS6がNO)、ステップS4以降を繰り返す(ステップS6がNOのループ)。
「水の沸点よりも遥かに低い温度であって、夏季の日射量が多くない時間帯(例えば夜間)には到達不能な温度」の「65℃以下」というのは、あくまでも例示であり、これに限定する趣旨ではない。
ここで、「夏季の日射量が多くない時間帯(例えば夜間)には到達不能な温度」という条件がついているのは、「水の沸点よりも遥かに低い温度」であっても、あまりにも低温(例えば30℃)に設定してしまうと、例えば夏季の夜間には、日照が存在しなくても集熱器2の水温Tが30℃以下にならない場合が存在するので、何時までも開閉弁V1は閉鎖せず、開閉弁V2は開放せず、初期状態へ復旧しないために太陽熱の利用が出来なくなってしまうからである。
集熱器2における水温Tが、水の沸点よりも遥かに低い温度であって、夏季の日射量が多くない時間帯(例えば夜間)には到達不能な温度(例えば、65℃)まで降温したならば(ステップS6がYES)、ステップS1において、開閉弁V2が開放することにより、シスターン5の自動圧力オンオフ機能によって、熱媒循環ラインLhの集熱ポンプ1吸込側の領域に、水が供給される。
シスターン5から水が供給されると、当該水は、ラインLh、集熱器2、分岐ラインLbを介して、開放タンク4に供給される。ここで、開閉弁V1が閉鎖されているので、バッファー側42に充填された空気は、吸排気弁Vaから排出される。その結果、バッファー側42も水で充填されることになる。
開閉弁V1は閉鎖されているので、バッファー側42が水で充填されると、循環ラインLh内の水圧が上昇する。そして図1のシステム100全体がシスターン設定圧力に到達した時点で、シスターン5の自動圧力オンオフ機能により水の供給が中止される。これにより、初期状態に復旧する。
日射量が比較的少なく、集熱器2内で水が蒸発する恐れがない状態(ステップS3がNOのループ)において、制御手段10は、太陽熱システムの運転を終了するか否かを判断する(ステップS7)。
太陽熱利用システム100の運転を終了するのであれば(ステップS7がYES)、制御を終了する(図2のエンド)。
太陽熱利用システム100の運転を続行するのであれば(ステップS7がNO)、ステップS1に戻り、ステップS1以降を繰り返す。
なお、図2において、停電時には開閉弁V1・V2に通電が無くなり、開閉弁V1は開、開閉弁V2は閉となり、集熱ポンプ2は運転している状態であれば停電により停止する。復電時にはステップS5の段階から制御が開始される。
図1の実施形態によれば、集熱器2内の水が蒸発しない通常状態(或いは初期状態)では、システム100全体が密閉系として構成されている。そして、集熱器2内の水が蒸発したとしても、外部からシステム100内に空気が流入することはない。
そのため、システム100を構成する配管Lh、Lbや集熱器2が腐食することが防止される。
ここで、開放用タンク4の凝縮側41については、流入した蒸気が凝縮できるだけのサイズがあれば足りる。
また、バッファー側42の容積は、集熱器2の容積か、或いは、集熱器2の容積に分岐ラインLbの容積を加えた容積であれば足りる。
蒸気の発生に伴う熱媒体積の膨張をすべて膨張タンクにより受けようとすると、一般に、膨張タンクは集熱装置2と配管系Lhが保有する水の温度変化に伴う熱膨張の体積分の水と、発生する蒸気の体積分の水を受け、さらにその際にそれら体積の和と同等の体積の気体を膨張タンク内に保有する必要がある。そのため、図7に図示する従来技術においては、図示の実施形態におけるバッファー側42の約2倍の容積を持った膨張タンク60が必要となる。
これに対して、図示の実施形態によれば、集熱装置2と配管系Lhが保有する水の温度変化に伴う熱膨張分の体積の水を受けるだけの膨張タンク6は必要であるが、水の温度変化に伴う熱膨張分の体積は、発生する蒸気の体積と比べて極めて小さい。そのため、図示の実施形態におけるバッファー側42の容積と膨張タンク6の容積の合計は、図7に図示する膨張タンク60の容積よりも小さくすることができる。
それに加えて、集熱器2において水が蒸発する可能性が高くなると(例えば、集熱器2の水温Tが95℃以上になると)、ラインLaに介装された開閉弁V1は開放するので、開放用タンク4内の圧力は大気圧よりも高くなることはない。そのため、図1、図2の第1実施形態によれば、開放用タンク4内が大気圧以上に昇圧してしまうことは無く、開放用タンク4が労働安全衛生法における「第1種圧力容器」に該当してしまうことはない。そのため、開放用タンク4を第1種圧力容器に要求される頑丈な構造とする必要はなく、開放点検が義務付けられてしまうこともない。
さらに図1、図2の第1実施形態によれば、熱媒循環ラインLhにおいて、シスターン5により水が供給される領域に膨張タンク6が設けられている。
そのため、ポンプ吸込側圧力は、膨張タンク6の圧力に等しくなり、ポンプ吸込みに必要な正の圧力(NPSH)を確保することが出来る。そのため、集熱ポンプ吸込側圧力が負圧となることはなく、集熱ポンプ1内でキャビテーションが発生してしまうことが防止される。
図1、図2の第1実施形態によれば、集熱器2内の水が蒸発して、蒸気が開放用タンク4に流入しても、当該蒸気は凝縮側41で直ちに凝縮され、凝縮した蒸気と同一体積の水であって、バッファー側42に充填されていた水がラインLaを介して大気側にオーバーフローする。
そのため、ラインLaからオーバーフローするのは常に低温の水であり、高温の水や蒸気が噴出してしまう恐れはない。
そのため、図1、図2の第1実施形態に係る太陽熱利用システム100が建造物の屋根に設けられている場合に、高温の水や蒸気が屋根上に流出してしまうことはなく、高熱に弱い防水シートに損傷を与えてしまうことが防止される。
上述した様に、開放用タンク4の凝縮側41については、流入した蒸気が凝縮できるだけのサイズがあれば足りる。
これに基づいて、例えば、図3、図4で示す様な変形例を構成することが可能である。
例えば、図1では、開放用タンク4は、仕切り板43で2つの区間に仕切られ、分岐ラインLbが連通している側の区間を凝縮側41として、ラインLaが接続している側の区画をバッファー側42としている。
これに対して、図3において、全体を符号100Aで示す第1変形例に係る太陽熱利用システムでは、開放用タンクの凝縮側が、放熱能力が極めて優れている配管Le(図3では、大量の放熱フィンを有する配管が例示されている)により構成されている。そして、当該放熱能力が極めて優れている配管Leが連通している区画が、バッファー側4Aとなっている。
なお、バッファー側4Aには、図1(第1実施形態)のバッファー側42と同様に、開閉弁V1を介装したラインLaが接続され、吸排気弁Vaが設けられている。
このように構成すれば、集熱器2で蒸発した蒸気が、放熱能力が極めて優れている配管Le内を流過する際に気化熱を奪われるので、全量が凝縮している。
そして、バッファー側4Aに流入した水に押し出されて、バッファー側4Aに連通するラインLaからオーバーフローされるのは、初期段階でバッファー側4Aに充填されていた常温の水となる。
図3の第1変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図1、図2を参照して説明したのと同様である。
図4において、全体を符号100Bで示す第2変形例に係る太陽熱利用システムでは、開放タンク4は、放熱機能が優れた配管Lfと、上方が閉鎖しているが下方が開放している仕切り板43と、当該仕切り板43で仕切られている容積の小さな区画(凝縮側)41Bと、容積が大きな区画(バッファー側)42Bにより構成されている。
係る小さな空間41Bと、バッファー側42Bには、常温の水が充填されている。
ここで、「放熱機能が優れた配管」Lfは、図3における「放熱能力が極めて優れている配管Le」に比較する放熱能力は劣っているが、図1の分岐ラインLbよりは遥かに優れた放熱能力を有している。
図4において、集熱器2で蒸発した蒸気が「放熱機能が優れた配管」Lfを流過すると、その大部分が凝縮する。しかし、一部、凝縮しない蒸気が残存する場合がある。
凝縮した水は仕切り板43下方の連通部44を介してバッファー側42Bに流入するが、残存した蒸気は容積が小さい区間(凝縮側)41Bに留まる。
ここで、当該小さな区間(凝縮側)41Bには水が充填しており、或いは、水が残存しているので、当該残存した蒸気は直ちに凝縮する。
その結果、バッファー側42Bに連通するラインLaを介してオーバーフローされるのは、初期段階でバッファー側42Bに充填されていた常温の水となる。
図4の第2変形例におけるその他の構成及び作用効果は、図1、図2を参照して説明したのと同様である。
次に、図5を参照して、第2実施形態を説明する。
図5の第2実施形態は、開放用タンク4のバッファー側42でオーバーフローした水を、循環用配管(第2の循環ライン)Lgを介して、シスターン5側に戻すように構成した実施形態である。
図5において、全体を符号100Cで示す太陽熱利用システムでは、開放用タンク4のバッファー側42とシスターン5とを第2の循環ラインLgで接続している。
第2の循環ラインLgは、熱媒貯蔵タンク8を介装している。
第2の循環ラインLgにおいて、開放用タンク4のバッファー側42と熱媒貯蔵タンク8との間の領域には、第1実施形態と同様に、開閉弁V1が介装されている。
第2実施形態の太陽熱利用システム100Cは、開放用タンク4でオーバーフローした水を、第2の循環ラインLgを介して、シスターン5側に戻す際に、熱媒貯蔵タンク8に一旦貯蔵している。以って、この貯蔵した水を再利用可能としている。
この様に構成することにより、水以外の熱媒を使用した場合に、当該熱媒が太陽熱利用システム100C外に排出されてしまうことが防止される。そして、当該(水以外の)熱媒により周辺環境を汚染してしまう恐れがなくなるので、環境に配慮したものとして利用価値が高くなる。
第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1〜図4の第1実施形態と同様である。
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
1・・・熱媒循環用機器/集熱ポンプ
2・・・集熱装置/集熱器
3・・・熱的負荷/熱交換器
4・・・容器/開放用タンク
5・・・熱媒供給装置/シスターン
6・・・膨張タンク
7・・・温度センサ
8・・・熱媒貯蔵タンク
41・・・凝縮領域/凝縮側
42・・・調整領域/バッファー側
La・・・吸排気ライン
Lb・・・分岐ライン
Lh・・・熱媒循環ライン

Claims (4)

  1. 熱媒循環用機器と太陽熱により熱媒を加熱する集熱装置と熱的負荷を介装している配管系を備え、当該配管系の集熱装置と熱的負荷との間の領域から分岐配管が分岐しており、分岐配管は容器に連通しており、当該容器は、分岐配管を介して流入した気相熱媒を凝縮する凝縮領域と、第1の開閉弁を介装した配管を介して外部に連通する調整領域を有しており、凝縮領域と調整領域は液相熱媒が充填されており、凝縮領域に流入した気相熱媒は調整領域には流入しないが、発生する気相熱媒の体積に等しい液相熱媒が凝縮領域から調整領域に流入する機能を有していることを特徴とする太陽熱利用システム。
  2. 本発明において、前記配管系の熱媒循環用機器吸込側の領域には熱媒供給用の配管が合流し、熱媒供給用の配管は第2の開閉弁を介して熱媒供給装置に連通しており、且つ、膨張タンクが設けられている請求項1の太陽熱利用システム。
  3. 集熱装置の熱媒温度を計測する計測装置と、当該計測装置の計測結果が入力される制御装置を備え、当該制御装置は、
    集熱装置の熱媒温度が熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度よりも低温の場合には、熱媒循環用機器を作動し、第1の開閉弁を閉鎖し、第2の開閉弁を開放する機能と、
    集熱装置の熱媒温度が熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度以上に昇温した場合には、当該熱媒温度が、熱媒の沸点よりも低温で且つ日射量が多くない時間帯には昇温不可能な温度に降温するまでは、熱媒循環用機器を停止し、第1の開閉弁を開放し、第2の開閉弁を閉鎖する機能と、
    集熱装置の熱媒温度が、熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度以上に昇温した後、熱媒の沸点よりも低温で且つ日射量が多くない時間帯には昇温不可能な温度まで降温した場合に、第1の開閉弁を閉鎖し、第2の開閉弁を開放する機能を有している請求項2の太陽熱利用システム。
  4. 請求項3の太陽熱利用システムの制御方法において、
    集熱装置の熱媒温度を計測装置で計測する工程と、
    計測された集熱装置の熱媒温度が熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度よりも低温であれば、第1の開閉弁を閉鎖し、第2の開閉弁を開放する工程と、
    前記熱媒温度が熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度以上に昇温した場合に、当該熱媒温度が、熱媒の沸点よりも低温で且つ日射量が多くない時間帯には昇温不可能な温度に降温するまでは、熱媒循環用機器を停止し、第1の開閉弁を開放し、第2の開閉弁を閉鎖する工程と、
    前記熱媒温度が、熱媒沸点近傍で且つ沸点以下の温度以上に昇温した後、熱媒の沸点よりも低温で且つ日射量が多くない時間帯には昇温不可能な温度まで降温したならば、第1の開閉弁を閉鎖し、第2の開閉弁を開放する工程を有していることを特徴とする制御方法。
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