JP5266737B2 - 有機el装置および電子機器 - Google Patents

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Description

本発明は、有機EL装置およびこれを備える電子機器に関する。
薄型で軽量な自発光ディスプレイまたは光源として、OLED(organic light emitting diode)、つまり有機EL(electro luminescent)素子が注目を集めている。有機EL素子は、有機材料で形成された少なくとも一層の有機薄膜を画素電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。有機薄膜の形成方法の一つであるウェットプロセス(例えばインクジェット法、スピンコート法)では、有機薄膜の材料(例えば機能性高分子)と溶媒とを含む溶液、すなわちインクを基板上に配置し、これを乾燥させる。
一般に、有機EL装置は、発光素子を区画するバンク(隔壁)を備えており、バンクに形成された開口部に有機層が配置され、開口部内で有機層と画素電極が接触する。各発光素子の輝度は均一であることが好ましいため、バンクの開口部においては有機層の厚さが均一であることが好ましい。
しかし、有機層の材料となる液体に対する親液性が高い材料でバンク全体が形成されている場合には、開口部の壁に液体が付着し、そのまま乾燥することによって、開口部内の有機層が外側ほど厚くなりやすい。他方、有機層の材料となる液体に対する撥液性が高い材料でバンク全体が形成されている場合には、開口部の壁から液体がはじかれ、そのまま乾燥することによって、開口部内の有機層が内側ほど厚くなりやすい。
そこで、特許文献1には、バンクを親液性の下層と撥液性の上層で形成する技術が提案されている。また、同文献には、バンクの下層に親液性を与える処理を行い、上層に撥液性を与える処理を行う技術も提案されている。しかし、バンクの下層に親液性を与えても、必ずしも下層に液体が付着してその状態でとどまる効果(ピンニング効果つまりアンカー効果)が高いとはいえず、最終的に乾燥で得られる有機層の厚さが均一にならないことがある。
特許文献2には、隔壁の少なくとも表面を多孔質材料から形成する技術が開示されている。
特許第3328297号明細書 特開2001−351781号公報
しかし、特許文献2の技術は、ウェットプロセスで有機層を形成することには関係なく、蒸着などの堆積法で有機層および対向電極を形成する場合に、空孔によって成膜が遮断されることにより発光素子同士の短絡を防止することを目的としている。また、特許文献2に記載の技術では、隔壁の側面全体および上面全体が多孔質材料から形成されているので、ウェットプロセスで有機層を形成する場合には、隔壁の側面全体に有機層の材料となる液体が付着してそこにとどまってしまい、隔壁の側面全体に付着した状態で乾燥が進行することにより、開口部内の有機層が外側ほど厚くなるおそれがある。
そこで、本発明は、より確実にバンクの開口部内での有機層の厚さのバラツキを低減することができる有機EL装置およびこれを備える電子機器を提供する。
本発明に係る有機EL装置は、画素電極と、対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に配置され発光層を含む有機層と、を有する発光素子と、前記有機層が内部に配置される開口部を有するバンクと、を備え、前記画素電極の少なくとも一部は前記開口部内で前記有機層と接触しており、前記バンクは、多孔質の層と、前記多孔質の層よりも前記画素電極から遠い高さに配置された非多孔質の層を有する。
本発明では、バンクにおける非多孔質の層より画素電極に近い高さにある多孔質の層に有機層の材料となる液体が吸収されて、バンクの開口部内全体に広がった状態で乾燥する。他方、バンクにおける画素電極から遠い高さにある非多孔質の層には、多孔質の層よりも有機層の材料となる液体が付着しにくい。従って、バンクの開口部内での有機層の厚さのバラツキを低減して、各発光素子の輝度のバラツキを低減することができる。前記多孔質の層は、前記バンクにおける前記画素電極に最も近い高さに形成されていると好ましい。これにより、バンクの開口部内での有機層の厚さを他の場合より均一にすることが期待される。
本発明に係る他の有機EL装置は、画素電極と、対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に配置され発光層を含む有機層と、を有する発光素子と、前記有機層が内部に配置される開口部を有するバンクと、を備え、前記画素電極の少なくとも一部は前記開口部内で前記有機層と接触しており、前記バンクは、多孔質の層と、第1の非多孔質の層と、前記第1の非多孔質の層よりも撥液性を有する第2の非多孔質の層とを有し、前記画素電極側から第2の非多孔質の層、多孔質の層、第1の非多孔質の層の順で積層していることを特徴とする。この有機EL装置では、画素電極側から第2の非多孔質の層、多孔質の層、第1の非多孔質の層の順で積層しているので、有機層を画素電極側から正孔注入層(または電子注入層などのその他の層)、発光層の順で積層することで形成した場合には、多孔質の層と発光層の高さを同じにまたは近似させて、多孔質の層と発光層を接触させやすい。従って、多孔質の層に発光層の材料となる液体が吸収されて、バンクの開口部内全体に広がった状態で乾燥する。他方、バンクにおける画素電極から遠い高さにある第1の非多孔質の層には、多孔質の層よりも発光層の材料となる液体が付着しにくい。従って、バンクの開口部内での発光層の厚さのバラツキを低減して、各発光素子の輝度のバラツキを低減することができる。
前記多孔質の層は、前記発光層と少なくとも一部が接触していると好ましい。これにより、バンクの開口部内での発光層の厚さを他の場合より均一にすることが期待される。
本発明に係る他の有機EL装置は、画素電極と、対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に配置され発光層を含む有機層と、を有する発光素子と、前記有機層が内部に配置される開口部を有するバンクと、を備え、前記画素電極の少なくとも一部は前記開口部内で前記有機層と接触しており、前記バンクは、非多孔質の層と、前記非多孔質の層の側壁の一部に接触し、かつ、前記開口部の側壁の一部をなす多孔質の層と、を有し、前記多孔質の層は前記発光層と少なくとも一部が接触していることを特徴とする。多孔質の層がバンクの横方向全体にわたって延びている場合には、有機層の材料となる多量の液体が多孔質の層に浸透する。もし、多孔質の層に液体がとどまった状態で乾燥すれば材料が無駄になる。他方、真空を利用して有機層の材料となる液体を乾燥させて有機層を得る場合には、多孔質の層に深く浸透していた液体が真空乾燥時に逆流して開口部内での有機層の平面度を損ねるおそれがある。非多孔質の層と前記非多孔質の層の側壁の一部に接触し、かつ、前記開口部の側壁の一部をなす多孔質の層とを有するバンクを使用することによって、多孔質層を開口部の周囲にのみ部分的に形成することにより、多量の液体が多孔質の層に浸透して引き起こす問題を避けることができる。前記多孔質の層は前記開口部の前記側壁の所定の高さの領域全体に位置するように形成されていると好ましい。例えば、多孔質の層を有機層の高さ、あるいは発光層の高さの領域全体に位置するように形成すると好ましい。これにより、多孔質の層は、有機層あるいは発光層と接触し、バンクの開口部内での有機層あるいは発光層の厚さを他の場合より均一にすることが期待される。
本発明に係る電子機器は、上記の有機EL装置を備える。そのような電子機器としては、例えば、有機EL装置を画像表示装置として備える各種の機器、または有機EL装置を露光装置として備える電子写真方式の印刷装置がある。
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施の形態を説明する。なお、図面においては、各部の寸法の比率は実際のものとは適宜に異なる。
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施の形態に係る有機EL装置1を示す断面図であり、図2は有機EL装置1の平面図である。有機EL装置1は、基板10と基板10上に形成された複数の有機EL素子(発光素子)12を備える。
基板10の上には、有機EL素子12にそれぞれ給電して発光させるための複数のTFT(薄膜トランジスタ)32が形成されており、これらのTFT32を覆う無機絶縁体の層30が形成されている。また、基板10には、TFT32に給電して有機EL素子12を発光させるための配線が配置されているが、配線の図示は省略する。この実施の形態の有機EL装置1は、ボトムエミッションタイプでもトップエミッションタイプでもデュアルエミッションでもよく、基板10はボトムエミッションタイプまたはデュアルエミッションでは透光性材料、好ましくはガラスから形成され、トップエミッションタイプでは透光性材料または、例えばセラミックまたは金属のような不透明材料から形成されている。無機絶縁体の層30は、例えば酸化珪素または窒化珪素などから形成されている。
無機絶縁体の層30の上には、例えば酸化珪素または窒化珪素などの無機絶縁体から形成された下地層34が形成されており、下地層34の上には、複数の有機EL素子12を互いに区分するバンク(隔壁)14が形成されている。
図3は、この実施の形態に係る有機EL装置1の一部拡大断面図である。バンク14においては、多孔質の層14aと非多孔質の層14bが積層されている。図において、非多孔質の層14bは多孔質の層14aの上に形成されている。多孔質の層14aは、例えば、シリカを主成分とした材料で、多数の微小な空隙を設けることによって形成することができる。好ましくは、平均直径3nm以下の微細な空隙が均一に分布したNCS(Nano Clustering Silica)を多孔質の層14aとして使用することができる。非多孔質の層14bは、絶縁性の透明樹脂材料、例えばアクリル、エポキシまたはポリイミドなどにより形成されている。
図1に示すように、有機EL素子12の各々は、画素電極16、正孔注入層(有機層)17、発光層(有機層)18および対向電極20を有する。画素電極16は、下地層34上に形成されており、その端部にはバンク14の一部が重なっている。画素電極16は、有機EL素子12の各々に設けられており、下地層34を貫通してTFT32まで延びる貫通孔36内の導体によって、TFT32と電気的に接続されている。
正孔注入層17および発光層18は、バンク14で区画された各空間(開口部)内に配置されている。換言すると、バンク14は、複数の有機EL素子12の有機層を区分している。発光層18は、有機発光層であり、正孔と電子が結合して発光する有機EL物質から形成されている。この実施の形態では、有機EL物質は高分子材料であって、例えば、その材料となる液体は、インクジェット法、ディスペンサ法などの液体供給方法(ウェットプロセス)により、バンク14で区画された各空間内に供給される。正孔注入層17の材料となる液体もウェットプロセスにより、バンク14で区画された各空間内に供給される。バンク14の各空間内で、正孔注入層17は画素電極16に面接触し、発光層18は正孔注入層17に面接触する。
画素電極16と発光層18の間で、発光に寄与するための発光機能層を構成する他の層として、電子ブロック層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層および正孔ブロック層の一部または全部を備えていてもよい。他の実施の形態として、正孔注入層17を省略することも可能である。
対向電極20は、複数の有機EL素子12の発光層18に面接触している。つまり、対向電極20は、複数の有機EL素子12に共通するように、バンク14で画定された発光層18の区域およびバンク14上に広がっている。この実施の形態では、画素電極16は陽極で、対向電極20は陰極だが、その逆であってもよい。画素電極16が陰極で対向電極20が陽極の場合には、図1とは逆に正孔注入層17が発光層18の上に配置される。画素電極16および対向電極20の材料は、エミッションタイプに応じて適宜選択されうる。
図示しないが、有機EL素子12の発光層18を水分および酸素から保護するために、公知の封止膜で対向電極20を覆ってもよいし、公知の封止キャップを基板10に接合してもよい。また、この有機EL装置1をカラー画像表示装置として使用する場合、発光色の色度を改善するために、光が放出される側にカラーフィルタを配置してもよい。
バンク14では、多孔質の層14aが画素電極16に最も近い高さの層に配置されており、非多孔質の層14bが多孔質の層14aよりも画素電極16から遠い高さの層に配置されている。バンク14の空間内に、有機層の材料溶液が供給されたときには、その液体は多孔質の層14aに付着しやすく、非多孔質の層14bに付着しにくい。このため、画素電極16上のバンク14の空間内で材料溶液は広がりやすくなっている。
バンク14の全体、または少なくともバンク14のうち基板10から最も遠い非多孔質の層14bには、例えばCFプラズマにより撥液化処理が施されると好ましい。この撥液化処理は、ウェットプロセスで、有機層の材料となる液体(材料溶液)を所定位置に供給するときに、非多孔質の層14bの上面(基板10とは反対側の面)にその材料溶液が残存しないようにするために行われる。撥液化処理された部分は、その材料溶液に対する撥液性が向上する。
次にこの実施の形態に係る有機EL装置1を製造する方法の例を説明する。まず、図4に示すように、基板10に公知の方法で、有機EL素子12への給電用の配線(図示せず)およびTFT32を形成し、絶縁体の層30を形成する。さらに、下地層34を形成し、例えばITO(indium tin oxide)によって画素電極16を公知の方法でパターニングする。
次に、図5に示すように、バンク14の多孔質の層14aを形成する。これには、まずあらかじめ微細な空隙をそれぞれに形成した籠状分子構造のナノクラスタを形成する。ナノクラスタは、シロキサン樹脂および必要に応じてその他の成分から形成する。次にナノクラスタを溶媒に分散させる。溶媒としては熱分解樹脂(例えば、ポリスチレン、アクリル系重合体、スチレンーアクリル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー等のオレフィン系重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール樹脂、フェノール樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、キシレン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンエステル、石油樹脂など各種重合体)が好ましい。
次に、画素電極16を覆うように下地層34上に、この溶液を均一な厚さにコートする。コートの方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ブレードコート法、スキャン塗布法等のいずれを使用してもよい。
さらにこの溶液に、水酸基を有する有機溶剤(例えばメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール、フェノール、クレゾール、ジエチルフェノール、トリエチルフェノール、プロピルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール)及びpH1〜10の水溶液(例えば、塩酸水溶液, 硝酸水溶液, 硫酸水溶液等の酸性水溶液; マレイン酸水溶液、蟻酸水溶液、酢酸水溶液、トルエンスルホン酸水溶液等の有機酸水溶液; アンモニア水溶液等のアルカリ水溶液; ジメチルアミン、プロピルアミン、ヘキサメチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイト等の有機アルカリ系水溶液)から選ばれる表面処理液でその表面を親水性化する。
さらに、この構造を摂氏200度〜500度に加熱する焼成工程を行って、均一な厚さの多孔質のシロキサン樹脂の層を得る。焼成工程では、熱分解樹脂が分解し、表面が親水性化されて内部に空隙を有するシロキサン樹脂のナノクラスタが相互に強固に結合する。
さらに、多孔質の層14aを残すべき箇所にマスク(例えばフォトレジスト)を重ね、CF4とCHF3のガスを用いたフッ素プラズマによって、プラズマエッチングする。これによって、余分な部分が削られて、図5に示すように、必要な箇所だけに多孔質の層14aが残る。
次に、図6に示すように、バンク14の非多孔質の層14bを形成する。これには、まず非多孔質の層14bの材料となる樹脂を均一な厚さにコートする。コートの方法としては、例えば、スピンコート法、ディップコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ブレードコート法、スキャン塗布法等のいずれを使用してもよい。
さらに、非多孔質の層14bを残すべき箇所にフォトマスクを配置し、材料樹脂を露光して、非多孔質の層14bをパターニングする。この後、フォトマスクを取り外し、材料樹脂のうち露光された部分を、水を含む現像液でスプレー方式またはディップ方式により洗浄して除去することで、図6に示すように非多孔質の層14bとなる部分を残存させる。さらに、Nガス中で、摂氏280度で1時間加熱し、非多孔質の層14bを形成する。
さらにこの構造に対してCFプラズマにより撥液化処理を施して、正孔注入層17の材料となる液体および発光層18の材料となる液体に対する非多孔質の層14bの撥液性を向上させる。
図に示すように、バンク14の多孔質の層14aの傾斜した側面と非多孔質の層14bの傾斜した側面は面一であるが、図の状態に本発明は限定されない。多孔質の層14aの傾斜した側面が非多孔質の層14bの傾斜した側面から突出していてもよいし、逆に、非多孔質の層14bの傾斜した側面が多孔質の層14aの傾斜した側面から突出していてもよい。
非多孔質の層14bの形成後、図7に示すように、インクジェット法により、正孔注入層17の材料溶液17Lつまりインクをバンク14で囲まれた空間内に滴下し、乾燥させることにより図8に示す構造を形成する。
この実施の形態では、バンク14における非多孔質の層14bより画素電極16に最も近い高さにある多孔質の層14aに正孔注入層17の材料となる材料溶液17Lが吸収されて、バンク14の開口部内全体に広がった状態で乾燥する。他方、バンク14における画素電極16から遠い高さにある非多孔質の層14bには、多孔質の層14aよりも正孔注入層17の材料となる材料溶液17Lが付着しにくい。従って、バンク14の開口部内での正孔注入層17の厚さのバラツキを低減して、各有機EL素子12の輝度のバラツキを低減することができる。特に多孔質の層14aは、バンク14における画素電極16に最も近い高さに形成されているので、バンク14の開口部内での正孔注入層17の厚さを他の場合より均一にすることが期待される。また、多孔質の層14aは、バンク14における正孔注入層17と同じ高さに形成されている。このようにして、多孔質の層14aは正孔注入層17と少なくとも一部が接触しているので、バンク14の開口部内での正孔注入層17の厚さを他の場合より均一にすることが期待される。
正孔注入層17の形成後、図9に示すように、インクジェット法により、発光層18の材料溶液18Lつまりインクをバンク14で囲まれた空間内に滴下し、乾燥させることにより図10に示す構造を形成する。
この実施の形態では、バンク14における非多孔質の層14bより画素電極16に最も近い高さにある多孔質の層14aに発光層18の材料となる材料溶液18Lが吸収されて、バンク14の開口部内全体に広がった状態で乾燥する。他方、バンク14における画素電極16から遠い高さにある非多孔質の層14bには、多孔質の層14aよりも発光層18の材料となる材料溶液18Lが付着しにくい。従って、バンク14の開口部内での発光層18の厚さのバラツキを低減して、各有機EL素子12の輝度のバラツキを低減することができる。特に多孔質の層14aは、バンク14における画素電極16に最も近い高さに形成されているので、バンク14の開口部内での発光層18の厚さを他の場合より均一にすることが期待される。また、多孔質の層14aは、バンク14における発光層18と同じ高さに形成されている。このようにして、多孔質の層14aは発光層18と少なくとも一部が接触しているので、バンク14の開口部内での発光層18の厚さを他の場合より均一にすることが期待される。なお、図では、発光層18の上面は、バンク14の多孔質の層14aの上面と一致しているが、そうでなくてもよい。
この後、図1に示すように、対向電極20を公知の方法(例えば真空蒸着法)で形成し、さらに必要に応じて、封止膜または封止キャップを接合し、カラーフィルタを配置する。説明の簡略化のために、発光層18と正孔注入層17の二層の発光機能層のみの形成を説明したが、発光機能層は上述の通りより多くの層から構成されていてもよく、その場合には、各層に対して材料溶液の供給工程とその乾燥工程が施される。
<第2の実施の形態>
図11は本発明の第2の実施の形態に係る有機EL装置41を示す断面図である。図11において、第1の実施の形態と共通する構成要素を示すために同一の符号を使用し、それらを詳細には説明しない。
有機EL装置41には、第1の実施の形態のバンク14の代わりに、異なるタイプのバンク44が形成されている。バンク44においては、非多孔質の親液層44a(第2の非多孔質の層)と、多孔質の親液層44b(多孔質の層)と、非多孔質の撥液層44c(第1の非多孔質の層)が積層されている。非多孔質の親液層44aが画素電極16に最も近い高さの層に配置されており、非多孔質の撥液層44cが画素電極16から最も遠い高さの層に配置されている。
非多孔質の親液層44aは、非多孔質の撥液層44cよりも、正孔注入層17の材料となる液体(材料溶液)に対する親液性が高い材料、例えば酸化珪素または窒化珪素から形成されている。非多孔質の親液層44aには、例えば酸素プラズマにより親液化処理を施してもよい。親液化処理により、さらに正孔注入層17の材料となる液体(材料溶液)に対する非多孔質の親液層44aの親液性を高めることができる。
多孔質の親液層44bは、第1の実施の形態の多孔質の層14aと同様の材料から形成されている。非多孔質の撥液層44cは、第1の実施の形態の非多孔質の層14bと同様の材料から形成されている。
この実施の形態では、正孔注入層17の材料溶液に対する親液性は、非多孔質の親液層44aが最も高く、多孔質の親液層44bがその次に高く、非多孔質の撥液層44cが最も低い。また、発光層18の材料溶液に対する親液性は、多孔質の親液層44bが最も高く、非多孔質の親液層44aがその次に高く、非多孔質の撥液層44cが最も低い。
この実施の形態では、バンク44における画素電極16に最も近い高さにある非多孔質の親液層44aに正孔注入層17の材料となる材料溶液が付着して、バンク44の開口部内全体に広がった状態で乾燥する。他方、バンク44における画素電極16から遠い高さにある多孔質の親液層44および非多孔質の撥液層44cには、非多孔質の親液層44aよりも正孔注入層17の材料となる材料溶液が付着しにくい。従って、バンク44の開口部内での正孔注入層17の厚さのバラツキを低減して、各有機EL素子12の輝度のバラツキを低減することができる。なお、図では、正孔注入層17の上面は、バンク44の非多孔質の親液層44aの上面と一致しているが、そうでなくてもよい。
この実施の形態では、画素電極16側から第2の非多孔質の層(非多孔質の親液層44a)、多孔質の層(多孔質の親液層44b)、第1の非多孔質の層(非多孔質の撥液層44c)の順で積層しているので、有機層を画素電極16側から正孔注入層17(またはその他の層)、発光層18の順で積層することで形成した場合には、多孔質の親液層44bと発光層18の高さを同じにまたは近似させて、多孔質の親液層44bと発光層18を接触させやすい。従って、多孔質の親液層44bに発光層18の材料となる材料溶液が吸収されて、他方、バンク44における画素電極16から最も遠い高さにある非多孔質の撥液層44cには、多孔質の親液層44bよりも発光層18の材料となる材料溶液が付着しにくい。従って、バンク44の開口部内での発光層18の厚さのバラツキを低減して、各有機EL素子12の輝度のバラツキを低減することができる。また、多孔質の親液層44bは、バンク44における発光層18と同じ高さに形成されている。このようにして、多孔質の層14aは発光層18と少なくとも一部が接触しているので、バンク44の開口部内での発光層18の厚さを他の場合より均一にすることが期待される。なお、図では、発光層18の上面は、バンク44の多孔質の親液層44bの上面と一致しているが、そうでなくてもよい。
<第3の実施の形態>
図12は本発明の第3の実施の形態に係る有機EL装置51を示す断面図である。図12において、第1の実施の形態と共通する構成要素を示すために同一の符号を使用し、それらを詳細には説明しない。
有機EL装置51には、第1の実施の形態のバンク14の代わりに、異なるタイプのバンク54が形成されている。バンク54においては、多孔質の層54aと、非多孔質の層54bが形成されている。図において、非多孔質の層54bは多孔質の層54aの上に形成されている。
多孔質の層54aは、第1の実施の形態の多孔質の層14aと同様の材料から形成されている。非多孔質の層54bは、第1の実施の形態の非多孔質の層14bと同様の材料から形成されている。従って、バンク54は第1の実施の形態のバンク14と基本的には類似した構造を有する。
しかし、この実施の形態のバンク54では、バンク54における開口部の周囲にのみ多孔質の層54aが部分的に形成されている。そして、バンク54の下部には、多孔質の層54aと同じ高さの層として、非多孔質の層54cが形成されている。つまり、バンク54は、非多孔質の層54b、54cと、非多孔質の層54cの側壁の一部に接触し、かつ、開口部の側壁の一部をなす多孔質の層54aとを有し、多孔質の層54aは発光層18と少なくとも一部が接触している。非多孔質の層54cは、バンク54の開口部に面していないので、正孔注入層17にも発光層18にも接触しない。非多孔質の層54cは、非多孔質の層54bと同じ材料から形成してもよいし、他の材料から形成してもよい。
第1の実施の形態のように、多孔質の層14aがバンク14の横方向全体にわたって延びている場合には、有機層の材料となる多量の液体が多孔質の層14aに浸透する。もし、多孔質の層14aに液体がとどまった状態で乾燥すれば材料が無駄になる。他方、真空を利用して有機層の材料となる液体を乾燥させて有機層を得る場合には、多孔質の層14aに深く浸透していた液体が真空乾燥時に逆流して開口部内での有機層の平面度を損ねるおそれがある。この第3の実施の形態では、非多孔質の層54b、54cと、非多孔質の層54cの側壁の一部に接触し、かつ、開口部の側壁の一部をなす多孔質の層54aとを有するバンク54を使用し、バンク54の多孔質の層54aを開口部の周囲にのみ部分的に形成することにより、多量の液体が多孔質の層54aに浸透して引き起こす問題を避けることができる。多孔質の層54aは開口部の側壁の所定の高さの領域全体に位置するように形成されていると好ましい。例えば、多孔質の層54aを有機層の高さ、あるいは発光層18の高さの領域全体に位置するように形成すると好ましい。これにより、多孔質の層54aは、有機層あるいは発光層18と接触し、バンクの開口部内での有機層あるいは発光層18の厚さを他の場合より均一にすることが期待される。
この第3の実施の形態は、第1の実施の形態の修正であるが、第2の実施の形態についても同様に修正してよい。つまり、バンク44の多孔質の親液層44bを開口部の周囲にのみ部分的に形成してもよい。
<第4の実施の形態>
図13は本発明の第4の実施の形態に係る有機EL装置61を示す断面図であり、図14は、正孔注入層17、発光層18および対向電極20がない状態での有機EL装置61の平面図である。図13において、第4の実施の形態と共通する構成要素を示すために同一の符号を使用し、それらを詳細には説明しない。
有機EL装置61には、第1の実施の形態のバンク14の代わりに、異なるタイプのバンク64が形成されている。図14に示すように、バンク64は環状である。つまりバンク64はドーナツバンクである。図では、バンク64は楕円形であるが、円形でもよいし、矩形、その他の切れ目のない形状であってもよい。
バンク64においては、非多孔質の親液層64aと、非多孔質の撥液層64bが積層されている。非多孔質の親液層64aが画素電極16に最も近い高さの層に配置されており、非多孔質の撥液層64bが画素電極16から最も遠い高さの層に配置されている。
非多孔質の親液層64aは、非多孔質の撥液層64bよりも、正孔注入層17の材料となる液体(材料溶液)および発光層18の材料液体に対する親液性が高い材料、例えば酸化珪素または窒化珪素から形成されている。非多孔質の親液層64aには、例えば酸素プラズマにより親液化処理を施してもよい。
非多孔質の撥液層64bは、絶縁性の透明樹脂材料、例えばアクリル、エポキシまたはポリイミドなどにより形成されている。非多孔質の撥液層64bには、例えばCFプラズマにより撥液化処理が施されると好ましい。
バンク64の外側の周囲には、多孔質の層65が形成されている。多孔質の層65は、第1の実施の形態の多孔質の層14aと同様の材料から形成されている。
この実施の形態では、バンク64の外側に多孔質の層65を配置したことによって、ウェットプロセスで、有機層の材料となる液体(材料溶液)を開口部に供給するときに、開口部から材料溶液があふれ出たとしても、材料溶液が多孔質の層65に浸透して多孔質の層65にとどまる。従って、材料溶液は、多孔質の層65よりも外側には広がらない。
<応用>
次に、本発明に係る有機EL装置を適用した電子機器について説明する。図15は、上記実施形態に係る有機EL装置1,41,51,61のいずれかを画像表示装置に利用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示装置としての有機EL装置1と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。
図16に、上記実施形態に係る有機EL装置1,41,51,61のいずれかを適用した携帯電話機を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示装置としての有機EL装置1を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、有機EL装置1に表示される画面がスクロールされる。
図17に、上記実施形態に係る有機EL装置1,41,51,61のいずれかを適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistant)を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示装置としての有機EL装置1を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機EL装置1に表示される。
本発明に係る有機EL装置が適用される電子機器としては、図15から図17に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。ほかに、像担持体に光を照射して静電潜像を形成するプリンタヘッドのような発光源に有機EL装置1,41,51,61のいずれかを用いた、電子写真方式を利用した画像印刷装置も、そのような電子機器に含まれる。
本発明の第1の実施の形態に係る有機EL装置を示す断面図である。 図1の有機EL装置1の平面図である。 図1の有機EL装置の一部拡大断面図である。 図1の有機EL装置の製造方法の一工程を示す図である。 図4の次の工程を示す図である。 図5の次の工程を示す図である。 図6の次の工程を示す図である。 図7の次の工程を示す図である。 図8の次の工程を示す図である。 図9の次の工程を示す図である。 本発明の第2の実施の形態に係る有機EL装置を示す断面図である。 本発明の第3の実施の形態に係る有機EL装置を示す断面図である。 本発明の第4の実施の形態に係る有機EL装置を示す断面図である。 図13の有機EL装置の一部を除去した平面図である。 本発明に係る有機EL装置を有するパーソナルコンピュータの外観を示す斜視図である。 本発明に係る有機EL装置を有する携帯電話機の外観を示す斜視図である。 本発明に係る有機EL装置を有する携帯情報端末の外観を示す斜視図である。
符号の説明
1…有機EL装置、10…基板、12…有機EL素子(発光素子)、14…バンク、14a…多孔質の層、14b…非多孔質の層、16…画素電極、17…正孔注入層(有機層)、18…発光層(有機層)、17L…材料溶液、18L…材料溶液、20…対向電極、41…有機EL装置、44…バンク、44a…非多孔質の親液層(第2の非多孔質の層)、44b…多孔質の親液層(多孔質の層)、44c…非多孔質の撥液層(第1の非多孔質の層)、51…有機EL装置、54…バンク、54a…多孔質の層、54b…非多孔質の層、54c…非多孔質の層、61…有機EL装置。

Claims (6)

  1. 画素電極と、対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に配置され発光層を含む有機層と、を有する発光素子と、
    前記有機層が内部に配置される開口部を有するバンクと、
    を備え、
    前記画素電極の少なくとも一部は前記開口部内で前記有機層と接触しており、
    前記バンクは、多孔質層と、前記多孔質層よりも前記画素電極から遠い高さに配置された非多孔質層を有することを特徴とする有機EL装置。
  2. 画素電極と、対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に配置され発光層を含む有機層と、を有する発光素子と、
    前記有機層が内部に配置される開口部を有するバンクと、
    を備え、
    前記画素電極の少なくとも一部は前記開口部内で前記有機層と接触しており、
    前記バンクは、多孔質の層と、第1の非多孔質の層と、前記第1の非多孔質の層よりも撥液性を有する第2の非多孔質の層とを有し、前記第の非多孔質の層は前記画素電極から最も近い高さの層に配置されており、前記第の非多孔質層は前記画素電極よりも最も遠い高さの層に配置されていることを特徴とする有機EL装置。
  3. 前記多孔質の層は、前記発光層と少なくとも一部が接触していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機EL装置。
  4. 画素電極と、対向電極と、前記画素電極と前記対向電極との間に配置され発光層を含む有機層と、を有する発光素子と、
    前記有機層が内部に配置される開口部を有するバンクと、
    を備え、
    前記画素電極の少なくとも一部は前記開口部内で前記有機層と接触しており、
    前記バンクは、非多孔質の層と、前記非多孔質の層の側壁の一部に接触し、かつ、前記開口部の側壁の一部をなす多孔質の層と、を有し、
    前記多孔質の層は前記発光層と少なくとも一部が接触していることを特徴とする有機EL装置。
  5. 前記多孔質の層は前記開口部の前記側壁の所定の高さの領域全体に位置するように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の有機EL装置。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の有機EL装置を備えることを特徴とする電子機器。
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