JP5266516B2 - 樹脂成形体 - Google Patents
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Description
このようなアレルゲン物質を除去する方法としては、掃除機や空気清浄機等によって物理的に排除する方法が一般的であるが、かかる方法では微小な物質を完全に除去することは困難である。
このような観点から、本発明者等は、樹脂中に微小蛋白質を不活性化し得る金属超微粒子を分散して成る成形体を提案した(特願2006−332077)。
従って本発明の目的は、アレルゲン物質や細菌等の微小蛋白質を効果的に金属超微粒子に接触させることが可能で、金属超微粒子が有する優れた微小蛋白質不活性化を有効に発現可能な樹脂成形体を提供することである。
本発明の樹脂成形体においては、
1.親水性処理後の成形体表面の水接触角が90°以下であること、
2.銀超微粒子が、微小蛋白質不活性化を有すること、
3.親水性処理の前に、成形体表面に粗面化処理が施され銀超微粒子表面が成形表面から露出していること、
が好適である。
また本発明の樹脂成形体によれば、上述した細菌、アレルゲン物質の他、細菌、真菌、アミノ酸配列によって特定の立体構造を持つ酵素、或いはDNAまたはRNA(核酸)と少数の蛋白分子からなる粒子状物質であるウィルス等の微小蛋白質も、有効に不活性化することができる。
また、成形加工と同時に金属超微粒子を、均一分散させることが可能であり、生産性に優れている。
粒子径が1000nm以下の金属超微粒子は通常の金属粒子とその特性が大きく異なり、特にその表面活性が高くしかも表面積が大きいことから、微小蛋白質に対する反応性に優れ、通常の金属粒子を用いた場合に比して微小蛋白質をより効率的に分解することができ、微小蛋白質に対する優れた不活性化を発現することが可能である。
尚、金属超微粒子が、有機酸成分と金属間で結合を有しているか否かは、赤外吸収ピークを調べることにより明らかであり、本発明においては、1518cm−1付近に有機酸と金属間の結合(COO−M)に由来する赤外吸収ピークを有することにより、金属超微粒子が、有機酸成分と金属間で結合を有していることが明らかとなる。
すなわち、同一の金属超微粒子を含有する成形体について、親水性処理を施したものは(実施例1、2)、親水性処理を施していないもの(比較例1〜2)に比して、銀溶出量が増加しており、より多くの菌と接触し、金属超微粒子による抗菌効果が向上されていることが明らかである。
本発明の樹脂成形体中に含有される金属超微粒子の金属成分は、Cu,Ag,Au,In,Pd,Pt,Fe,Ni,Co,Nb,Ru,Rh、Sn等を挙げることができ、中でもAu,Ag,Cuが好適である。これらの金属成分は、単体、混合物、合金等であってもよい。
前述したとおり、本発明においては、かかる金属が有機酸と結合を有していることが重要な特徴であり、1518cm−1付近に有機酸と金属間の結合に由来する赤外吸収ピークを有している。
本発明においては、用いる有機酸が、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸であることが特に好ましく、炭素数の多いものであることが特に好ましい。
金属超微粒子の好適な出発物質である有機酸金属塩としては、特にミリスチン酸銀、ステアリン酸銀等を挙げることができ、また平均粒子径が1乃至500μm、特に10乃至200μmの範囲にあることが好ましい。
本発明に用いる金属超微粒子を得るために必要な加熱条件は、用いる有機酸金属塩によっても相違するので、一概には規定できないが、一般的には120乃至350℃、特に170乃至300℃の温度で、1乃至1800秒、特に5乃至300秒加熱されることが望ましい。
本発明の金属超微粒子は、その最大径が1μm以下で、その平均粒子径は特に1乃至100nmの範囲にあることが望ましい。
ここでいう平均粒子径とは、金属と金属の間に隙間がないものを一つの粒子とし、その平均値を言う。
本発明の樹脂成形体を成形し得る樹脂組成物は、上述したように、不活性雰囲気下で有機酸金属塩を熱処理して得られた金属超微粒子を樹脂中に配合したものでもよいが、特に、上述した金属超微粒子の出発物質である有機酸金属塩を含有する樹脂組成物であることが好ましい。
すなわち前述した通り、本発明の微小蛋白質金属超微粒子の出発物質である有機酸金属塩は、樹脂組成物の成形加工の際の熱処理によって、樹脂成形品中で金属超微粒子化と均一分散がされ、樹脂成形品中に本発明の微小蛋白質不活性化金属超微粒子が存在することが可能になる。
本発明に用いる樹脂組成物においては、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルを用いることが好適である。
また本発明に用いる樹脂組成物においては、その用途に応じて、それ自体公知の各種配合剤、例えば、充填剤、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、減粘剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を公知の処方に従って配合することができる。
本発明の微小蛋白質不活性化金属超微粒子含有樹脂成形体は、上述した樹脂組成物を二本ロール法、射出成形、押出成形、圧縮成形等の従来公知の溶融成形に賦することにより、最終成形品の用途に応じた形状、例えば、粒状、ペレット状、繊維状、フィルム、シート、容器等の樹脂成形品を成形することができる。
樹脂成形品への成形温度は、成形方法や用いる樹脂及び有機酸金属塩の種類によって一概に規定できないが、用いる樹脂の熱劣化を生じない温度、且つ有機金属塩が金属超微粒子化と均一分散し得る上述した温度範囲内であることが必要である。
粗面化の方法としては、ショットブラスト、サンドブラスト加工や金属超微粒子含有層表面をサンドパーパーやワイヤーブラシを用いて削ったり、或いは研磨剤を用いて研磨する等の方法を採用できるが、好適にはショットブラスト加工により粗面化することが好ましい。
また本発明の樹脂成形体は、単層構造の樹脂成形品を構成することもできるが、他の樹脂との組み合わせで多層構造とすることもできる。
本発明においては上記方法により成形された樹脂成形体に親水性処理を施す。
親水性処理としては、成形体表面の水接触角が90°以下になるものであれば従来公知の親水性処理を施すことができるが、特にフレーム処理、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線光表面処理等のコーティングを行わない処理であることが好ましく、特にコロナ処理が好ましい。すなわち親水性処理として、親水性樹脂を施した場合には、金属超微粒子と微小蛋白質との直接接触を妨げることになり、効率的な不活性化効果を得ることができない。
(接触角測定)
接触角計を用いて、液滴法(水、25℃)により親水性処理前後のフィルム表面の接触角を測定し、親水性処理による水濡れ性の効果を確認した。
I.抗菌評価
JIS Z 2801により抗菌効果の確認を行った。菌種は大腸菌(escherichia coli)を用いた。無抗菌加工フィルムの培養後菌数を実施例1〜2及び比較例1〜3により得られた成形体についての培養後菌数を除した数の対数値を抗菌活性値とし算出した。なお、抗菌効果の確認について黄色ブドウ球菌(S.aureus)には行っていないが、大腸菌(escherichia coli)と同様の抗菌効果があるものと推測される。
1.ダニアレルゲン不活性化効果の確認方法(ダニスキャン)
ダニスキャン(アサヒフードアンドヘルスケア社製)を用いて、Der f I(アサヒフードアンドヘルスケア社製)(ダニ虫体に含まれるアレルゲン)に対する不活性化効果の確認を行った。前記不活性化効果の確認は、ダニ抗原の存在の確認、それぞれの成形体と抗原との接触・浸漬をそれぞれ行ない、下記に記載のダニスキャンの判定基準に従い、ダニアレルゲンの不活性化効果を確認した。
(1)ダニ抗原溶液:PPチューブ(BIO−BIK社製)にDer f I溶液20μL(ダニ抗原量2μg)を添加し、37℃12時間インキュベートした。
(2)ダニ抗原の存在の確認:インキュベート後、溶液をダニスキャン測定部に滴下し、下記記載のCラインとTラインの着色量により前記ダニ抗原の存在を確認した。
(1)成形体サンプル:実施例1〜2及び比較例1〜3により成形体を幅5mm、長さ50mm、厚み50μmの短冊状に採取し成形体サンプルとした。
(2)接触・浸漬:成形体サンプルにDer f I溶液20μL(抗原量2μg)を滴下し、さらに成形体サンプルとでサンドイッチされるよう接触・浸漬させて、37℃12時間インキュベートした。
(3)判定:インキュベート後、成形体サンプルを除去し、溶液をダニスキャン測定部に滴下し、下記記載のCラインとTラインの着色量により不活性化効果を確認した。
1:ダニアレルゲンの汚染はない(Cライン着色、Tライン着色全くなし)
2:ややダニアレルゲンで汚染されている(Cライン着色>Tライン着色)
3:ダニアレルゲンで汚染されている(Cライン着色=Tライン着色)
4:非常にダニアレルゲンで汚染されている(Cライン着色<Tライン着色)
1.酵素不活性化効果の確認方法
β-ガラクトシダーゼを用いて酵素の不活性化効果の確認を行った。前記不活性化効果の確認は、酵素の存在を確認してイニシャル値とし、一方、実施例1〜2及び比較例1〜3から得られた成形体との接触・浸漬させてサンプル値とし、下記に記載する酵素不活性化率の算出を行って効果を確認した。尚、酵素の活性測定にはβ−Galactosidase Enzyme Assay System with Reporter Lysis Buffer (Promega 社製)を用い、β−ガラクトシダーゼは添付品を用いた。
(1)酵素溶液調整:β−ガラクトシダーゼの濃度が0.1μL/1mLになるように1×ReporterLysisBufferで希釈する。
(2)前処理:β−ガラクトシダーゼ溶液(0.1μL/1mL)50μLをPPチューブ(BIO−BIK社製)に添加し、37℃2時間インキュベートした。その後、1×ReporterLysisBufferを100μL混合した。
(3)発色反応:AssayBufferを150μL滴下し、混合後37℃湯浴中で30分間反応させた。
(4)反応停止:1M炭酸ナトリウム500μL混合し、反応を停止させた。
(5)吸光度測定:溶液の420nmの吸光度を測定し、イニシャル値とした。
(1)酵素溶液調整:β−ガラクトシダーゼの濃度が0.1μL/1mLになるように1×ReporterLysisBufferで希釈する。
(2)接触・浸漬:β−ガラクトシダーゼ溶液(0.1μL/1mL)100μLをPPチューブに添加し、成形体(幅5mm長さ20mm厚み50μm)をPPチューブ内へ挿入し溶液に接触・浸漬させ、37℃2時間インキュベートした。成形体を除去後溶液50μL採取し、1×ReporterLysisBuffer100μLと混合した。
(3)発色反応:AssayBufferを150μL滴下し、混合後37℃湯浴中で30分間反応させた。
(4)反応停止:30分後1M炭酸ナトリウム500μL混合し、反応を停止させた。
(5)吸光度測定:溶液の420nmの吸光度を測定し、サンプル値とした。
測定したイニシャル値とサンプル値を用いて下記式より、サンプルの酵素不活性化率を求めた。
(酵素不活性化率)=(1−サンプル値/イニシャル値)×100(%)
低密度ポリエチレン樹脂に、ステアリン酸銀を0.1wt%の含有率になるように配合し、押出成形温度200℃で押出して50μm単層フィルムを作製した。次いで、作製したフィルムを大気圧下で出力200Wの条件でコロナ処理(移動速度2m/min)を行った。得られた処理済みフィルムについて、前述した接触角測定、抗菌評価、ダニアレルゲン不活性化評価、酵素不活性化評価を実施した。
イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして処理、測定、評価を実施した。
コロナ処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にフィルムを作成し、測定、評価を実施した。
コロナ処理を行わなかった以外は、実施例2と同様にフィルムを作成し、測定、評価を実施した。
Claims (4)
- 脂肪酸成分と銀間で結合を有する銀超微粒子を含有する樹脂組成物から成る樹脂成形体において、前記樹脂成形体は、樹脂100重量部に当り脂肪酸銀を0.001〜0.1重量部の量配合してなる樹脂組成物を加熱混合することにより樹脂中で銀超微粒子が生成されていると共に、前記樹脂成形体の表面に親水性処理が施されていることを特徴とする樹脂成形体。
- 前記親水性処理後の成形体表面の水接触角が90°以下である請求項1記載の樹脂成形体。
- 前記銀超微粒子が、微小蛋白質不活性化を有する請求項1又は2の何れかに記載の樹脂成形体。
- 親水性処理の前に、成形体表面に粗面化処理が施され銀超微粒子表面が成形表面から露出している請求項1乃至3の何れかに記載の樹脂成形体。
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