以下、図面を参照して、この発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置が使用される鉄道車両を概略的に示す側面図である。図2は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置が使用される鉄道車両を概略的に示す平面図である。
図1及び図2に示す軌道1は、車両2が走行する通路(線路)であり、車両2の車輪3aを支持し案内してこの車両2を走行させるレール1aなどから構成されている。車両2は、軌道1に沿って走行する鉄道車両であり、台車3と車体4などを備えている。図1及び図2に示す車両2は、A方向に走行するときには後尾車両となり、A方向とは逆方向に走行するときには先頭車両となる。図1に示す台車3は、車体4を支持して走行する装置であり、図1に示すようにレール1aと転がり接触する車輪3aなどを備えている。車体4は、旅客などの積載物を輸送するための構造物であり、図2に示すように客室5と、側引戸6R,6Lと、乗務員室7と、乗務員室ドア8R,8Lなどを備えている。
客室5は、乗客が乗車する部屋であり、乗客が着席するための座席などの種々の客室設備が設置されている。側引戸6R,6Lは、乗客が乗降するためのドアであり、客室5と車外とを区画している。図2に示す側引戸6Rは、車両2の進行方向(A方向)に向かって右側のドアであり、側引戸6Lは車両2の進行方向に向かって左側のドアである。乗務員室7は、乗務員が乗車する部屋であり、運転士が車両2を運転するための主幹制御器(マスタコントローラ)及び側引戸6R,6Lを開閉するための車掌スイッチなどが設置されている。乗務員室7には、例えば、図1及び図2に示すように車両2がA方向に走行する後尾車両の場合には車掌が乗務し、車両2がA方向とは逆方向に走行する先頭車両の場合には運転士が乗務している。
図3は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置が使用される鉄道車両の乗務員室ドアの下降窓を上昇させた状態を概略的に示す正面図である。図4は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置が使用される鉄道車両の乗務員室ドアの下降窓を下降させた状態を概略的に示す正面図である。なお、図3及び図4では、乗務員室側から見た状態を示しており、理解が容易なように乗務員室ドアから被覆部材を取り外した状態を示している。
図2に示す乗務員室ドア8R,8Lは、乗務員が乗降するためのドアであり、乗務員室7と車外とを区画している。図2に示す乗務員室ドア8Rは、車両2の進行方向(A方向)右側の乗務員室側開戸であり、乗務員室ドア8Lは車両2の進行方向左側の乗務員室側開戸である。図2に示す乗務員室ドア8R,8Lは、乗務員の手動操作によって乗務員室7側に開く片開きドアであり、例えば乗務員室7に車掌が乗務しているときに乗務員室7と駅ホームとの間を車掌が移動する際に車掌によって開閉される。乗務員室ドア8R,8Lは、車両2の中心線に対していずれも左右対称の構造であり、以下では乗務員室ドア8Rについて説明し、乗務員室ドア8L側の部分で乗務員室ドア8Rと対応する部分については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。乗務員室ドア8R,8Lは、図3及び図4に示すように、ドア本体9と、下降窓10と、バランサ装置11などを備えている。
ドア本体9は、乗務員室ドア8Rの本体を構成する部分である。ドア本体9は、図4に示すように乗務員が安全を確認するための窓開口部9aと、ドア本体9を車体4に回転自在に連結するヒンジ部(蝶番)9bと、乗務員が乗務員室ドア8Rを開閉するときに操作するドアノブ9cと、乗務員が乗務員室ドア8Rを施錠するときに使用する掛金9dと、バランサ装置11を被覆する板状の被覆部材(カバー)9eなどを備えている。
下降窓10は、下降することによって窓開口部9aを開く開閉窓であり、窓開口部9aを開くときには下降し、窓開口部9aを閉じるときには上昇する下降式側窓(落し窓)である。下降窓10は、ドア本体9に昇降自在に支持される窓枠10aと、この窓枠10aに固定されるガラス板10bと、下降窓10を昇降するときに乗務員によって手動操作される操作部10cと、下降窓10を所定の位置で保持し施錠及び解錠する窓戸錠10dなどを備えている。
図5は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置が使用される鉄道車両の乗務員室ドアの下降窓のバランサ装置を模式的に示す構成図である。
図3〜図5に示すバランサ装置11は、下降窓10の開閉を軽くするための装置であり、重力方向とは反対方向の外力を下降窓10に作用させて下降窓10の質量と釣り合わせる窓釣合い器(窓バランサ)である。図5に示すように、バランサ装置11は下降窓10がB1方向に下降するときには、下降窓10にB2方向の外力を作用させて、下降窓10が急激に下降するのを抑制し下降窓10に作用する衝撃力を緩和する。一方、バランサ装置11は、下降窓10がB2方向に上昇するときには、この下降窓10にB2方向の外力を作用させて下降窓10を軽い力で上昇させる。図3〜図5に示すバランサ装置11は、下降窓10の昇降動作に連動しててこ機構部が動作するてこ式バランサ装置である。バランサ装置11は、図3〜図5に示すように、ガイド部11aと、回転体11bと、第1リンク部材11cと、支持部11dと、第2リンク部材11eと、第3リンク部材11fと、支持部11gと、連結軸11hと、取付部11i,11jと、コイルばね11k,11mと、固定ボルト11nと、取付部11pと、締結ナット11qと、固定部材11rなどを備えている。
ガイド部11aは、回転体11bを移動自在にガイドする部分であり、図3及び図4に示すように、下降窓10と一体となって昇降可能なように、下降窓10の窓枠10aの下端部に水平に取り付けられている。ガイド部11aは、断面形状が略U字状の溝形鋼であり、回転体11bが脱落しないようにガイドしている。回転体11bは、ガイド部11aに沿って回転する部材であり、図3及び図4に示すように下降窓10の昇降動作に連動して往復移動可能なようにガイド部11aに嵌め込まれておりガイド部11aと転がり接触する。
第1リンク部材11cは、支持部11dを回転中心としてC1,C2方向に回転する部材であり、一方の端部に回転体11bが回転自在に連結されており、他方の端部に支持部11dが回転自在に連結されている。支持部11dは、第1リンク部材11cを回転自在に支持する部分であり、ドア本体9に取り付けられている。第2リンク部材11eは、第1リンク部材11cと第3リンク部材11fとを回転自在に連結する部材であり、一方の端部が第1リンク部材11cの支持部11d寄りに回転自在に連結されており、他方の端部が第3リンク部材11fに回転自在に連結されている。
第3リンク部材11fは、支持部11gを回転中心としてD1,D2方向に回転する部材であり、一方の端部が第2リンク部材11eに回転自在に連結され、他方の端部が連結軸11hに回転自在に連結されている。第3リンク部材11fは、外観形状が略V字状に屈曲した部材であり、屈曲部が支持部11gに回転自在に連結されている。支持部11gは、第3リンク部材11fを回転自在に支持する部分であり、固定部材11rに取り付けられている。連結軸11hは、第3リンク部材11fと取付部11iとを回転自在に連結する部材であり、コイルばね11mの一方の端部が取り付けられる金具である。取付部11i,11jは、コイルばね11kの両端部をそれぞれ取り付ける部分である。取付部11iは、コイルばね11kの一方の端部を第3リンク部材11fに取り付ける部分であり、第3リンク部材11fに回転自在に連結されており、取付部11jはコイルばね11kの他方の端部を固定部材11rに取り付ける部分である。取付部11i,11jは、いずれも金属製の取付金具である。
コイルばね11k,11mは、第3リンク部材11fを付勢する部材である。コイルばね11kは、図4に示すように、下降窓10が下降して取付部11iと取付部11jとの間の間隔が広がると弾性力が増大する引張コイルばねであり、図5に示すD2方向に第3リンク部11fを付勢して下降窓10に上昇する方向の外力を作用させる。コイルばね11mは、図4に示すように、下降窓10が下降して取付部11pと連結軸11hとの間の間隔が広がると弾性力が増大する引張コイルばねであり、図5に示すD2方向に第3リンク部11fを付勢して下降窓10に上昇する方向の外力を作用させる。コイルばね11k,11mは、いずれも両端部が掛け止め可能なようにフック状に形成されている。
固定ボルト11nは、コイルばね11mの端部を取付部11pに取り付ける部材である。固定ボルト11nは、図5に示すように、この固定ボルトの一方の端部に形成され断面形状が円形のボルト頭部11sと、このボルト頭部11sを貫通し、コイルばね11mの取付部11jに取り付けられる側とは反対側の端部を掛け止めするための貫通孔11tと、固定ボルト11nの他方の端部に形成された雄ねじ部11uなどを備えている。
図3〜図5に示す取付部11pは、コイルばね11mの端部を取り付ける部分であり、固定ボルト11nの雄ねじ部11uを案内する金属製の取付金具である。取付部11pは、図5に示すように、固定ボルト11nの雄ねじ部11uが貫通する貫通孔11vを備えている。締結ナット11qは、固定ボルト11nを取付部11pに締結する部材であり、固定ボルト11nの雄ねじ部11uと噛み合う雌ねじ部が形成されている。締結ナット11qは、固定ボルト11nを取付部11pに強固に取り付けるために、雄ねじ部11uに2個装着される。固定部材11rは、ドア本体9に固定される部材であり、両端部が下方に折り曲げられてドア本体9に固定される金属製の取付金具である。固定部材11rには、支持部11g及び取付部11j,11pなどが溶接などによって固定されている。
図6は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置とともに使用されるストッパ装置の外観図であり、図6(A)は正面図であり、図6(B)は平面図であり、図6(C)は右側面図である。図7は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置とともに使用されるストッパ装置を右側の乗務員室ドアに装着した状態を示す正面図である。図8は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置とともに使用されるストッパ装置を左側の乗務員室ドアに装着した状態を示す正面図である。
図6〜図8に示すストッパ装置12は、下降窓10の昇降動作に連動するバランサ装置11の固定部材11rに着脱自在に装着して、この下降窓10の下降を一時的に阻止する装置である。ストッパ装置12は、例えば、コイルばね11mの端部が破断して新品のコイルばね11mに交換するようなときに、バランサ装置11に装着してこのバランサ装置11の動作を規制する安全対策用の落し窓ストッパである。ストッパ装置12は、図6に示すように、本体部12aと、動作規制部12b,12cと、抜け止め部12d,12eと、姿勢保持部12f,12gと、移動防止部12h,12iと、逃げ部12j,12kと、干渉部12mなどを備えている。
本体部12aは、ストッパ装置12の本体を構成する部分であり、外観形状が略L字状の板状部材であり、金属板を折り曲げ加工して形成されている。本体部12aは、折り曲げ部分を中心線とする対称構造であり、図7及び図8に示すようにこの折り曲げ部分を回転中心として略90度回転させて姿勢を変化させることによって、左右の乗務員室ドア8R,8Lのバランサ装置11の動作を規制可能である。
動作規制部12b,12cは、バランサ装置11の動作を規制する部分であり、図7及び図8に示すように下降窓10が下降したときにこの下降窓10の下降動作に連動して動作するバランサ装置11の回転動作を規制する。動作規制部12b,12cは、バランサ装置11の第3リンク部材11fと固定部材11rとの間に挟み込まれてこのバランサ装置11の動作を規制する。動作規制部12bは、図7に示すように、右側の乗務員室ドア8Rのバランサ装置11の動作を規制し、動作規制部12cは図8に示すように、左側の乗務員室ドア8Lのバランサ装置11の動作を規制する。動作規制部12b,12cは、図6〜図8に示すように、本体部12aの先端部の外側角部を切り欠いて形成された切欠部であり、図7及び図8に示すように第3リンク部材11fと接触してこの第3リンク部材11fが図5に示すD1方向に回転するのを阻止する。
抜け止め部12d,12eは、バランサ装置11から動作規制部12b,12cが抜け出すのを防止する部分である。抜け止め部12d,12eは、図7及び図8に示すように、下降窓10が下降して第3リンク部材11fが動作規制部12b,12cと衝突したときに発生する衝撃力によって、ストッパ装置12が手前側に飛び出し、第3リンク部材11fと固定部材11rとの間から動作規制部12b,12cが抜け出すのを防止する。抜け止め部12d,12eは、図6に示すように、動作規制部12b,12cよりも高く形成された段部である。抜け止め部12dは、図7に示すように、右側の乗務員室ドア8Rのバランサ装置11から動作規制部12bが抜け出すのを防止し、抜け止め部12eは図8に示すように、左側の乗務員室ドア8Lのバランサ装置11から動作規制部12cが抜け出すのを防止する。
姿勢保持部12f,12gは、バランサ装置11のコイルばね11mを所定の姿勢に保持する部分である。姿勢保持部12f,12gは、図7及び図8に示すように、ストッパ装置12を固定部材11rに装着したときにこの固定部材11rの上面に対して上方に傾斜する部分の先端部であり、コイルばね11mの外周面と接触してこのコイルばね11mが撓むのを抑え、このコイルばね11mの姿勢を固定部材11rの上面に対して略平行に保持する。姿勢保持部12f,12gは、例えば、コイルばね11mの端部が破断して新品のコイルばね11mに交換する作業を実施するようなときに、固定ボルト11nの雄ねじ部11uを取付部11pの貫通孔11vに挿入した状態でコイルばね11mの姿勢を略水平に保持する。姿勢保持部12fは、図7に示すように、右側の乗務員室ドア8Rのバランサ装置11のコイルばね11mの姿勢を所定の姿勢に保持し、姿勢保持部12gは図8に示すように、左側の乗務員室ドア8Lのバランサ装置11のコイルばね11mを所定の姿勢に保持する。
移動防止部12h,12iは、本体部12aが固定部材11r上を移動するのを防止する部分である。移動防止部12h,12iは、図7及び図8に示すように、下降窓10が下降して第3リンク部材11fが動作規制部12b,12cと衝突したときに発生する衝撃力によって、本体部12aが固定部材11r上を横方向に移動し、第3リンク部材11fと固定部材11rとの間から動作規制部12b,12cが抜け出すのを防止する。移動防止部12h,12iは、図6〜図8に示すように、本体部12aの両端部をそれぞれ略90度外側に折り曲げて形成したときの先端部であり、図7及び図8に示すようにこの先端部が固定部材11rの上面と接触して本体部12aが固定部材11rの長さ方向に移動するのを阻止する。移動防止部12hは、図7に示すように、右側の乗務員室ドア8Rのバランサ装置11の固定部材11r上を本体部12aが移動するのを防止し、移動防止部12iは図8に示すように、左側の乗務員室ドア8Lのバランサ装置11の固定部材11r上を本体部12aが移動するのを防止する。
逃げ部12j,12kは、バランサ装置11のコイルばね11mと干渉するのを防止する部分である。逃げ部12j,12kは、図6に示すように、ストッパ装置12の一方の縁部に形成された略L字状の切欠部であり、ストッパ装置12を固定部材11r上に設置したときにコイルばね11mの端部が入り込む。逃げ部12jは、図7に示すように、右側の乗務員室ドア8Rのバランサ装置11のコイルばね11mと干渉するのを防止し、逃げ部12kは左側の乗務員室ドア8Lのバランサ装置11のコイルばね11mと干渉するのを防止する。
干渉部12mは、被覆部材9eと干渉する部分である。干渉部12mは、図7及び図8に示すように、ストッパ装置12を固定部材11r上に設置したままの状態で、図3及び図4に示す被覆部材9eをドア本体9に装着したときに、この被覆部材9eと干渉させてストッパ装置12の取り忘れを防止する。干渉部12mは、図6に示すように、ストッパ装置12の側面に溶接された板状部から突出する略U字状の突出部分であり、ストッパ装置12を固定部材11r上に着脱するときに作業者が把持するためのハンドル部としても利用可能である。
図9は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置を概略的に示す平面図である。図10は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置の取付作業前の状態を概略的に示す平面図である。図11は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置の取付作業中の状態を概略的に示す平面図である。図12は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置の取付作業後の状態を概略的に示す平面図である。図13は、図12のXIII方向から見た左側面図である。図14は、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置を左側の乗務員室ドアに装着した状態を示す平面図である。
図9〜図12及び図14に示す取付装置13は、コイルばね11mを引っ張りながらこのコイルばね11mの端部に取り付けられた固定ボルト11nを固定部材11rの取付部11pに取り付けるための装置である。取付装置13は、下降窓10の昇降動作によってコイルばね11mが折れたときに、新しいコイルばね11mと交換するためのばね交換機(ばね交換用治具)であり、持ち運びに便利なようにアルミニウムなどの軽量金属によって形成されている。取付装置13は、作業者の手動操作によって固定ボルト11nの雄ねじ部11uを取付部11pに向かって進出させて、固定ボルト11nを取付部11pの貫通孔11vに挿入し、コイルばね11mの弾性力が適正範囲内になるまでこのコイルばね11mの端部を引っ張る。取付装置13は、図9〜図12に示すように、保持部14と、ガイド部15と、装着部16と、手動操作部17と、送出部18と、後退阻止部19などを備えている。
保持部14は、固定ボルト11nを保持する部分であり、図12に二点鎖線で示すようにコイルばね11mの弾性力が適正範囲になる位置まで前進したときに停止する。保持部14は、図9〜図12に示すように、外観形状が略J字状の軸部材であり、曲げ剛性が高くなるように金属製の軸部材を複数箇所で折り曲げて形成されている。保持部14は、弾性力の適正範囲が異なる複数のコイルばね11mに対応して複数種類存在し、ガイド部15に交換可能に装着される。保持部14は、図10〜図12に示すように、押圧部14aと、抜け止め部14bと、ストッパ部14cなどを備えている。
押圧部14aは、固定ボルト11nのボルト頭部11sを押圧する部分であり、図11及び図12に示すように固定ボルト11nのボルト頭部11sを位置決めする。押圧部14aは、固定ボルト11nのボルト頭部11sが嵌り込むように、このボルト頭部11sの形状に合わせて保持部14の先端部に形成された凹部である。図9〜図12に示す抜け止め部14bは、保持部14がガイド部15から抜け出すのを防止する部分であり、保持部14の押圧部14aとは反対側の端部に形成された雄ねじ部14dと、この雄ねじ部14dと噛み合うナット14eとを備えている。抜け止め部14bは、保持部14を交換するようなときに雄ねじ部14dとナット14eとが着脱される。ストッパ部14cは、コイルばね11mの弾性力が適正範囲になる位置まで保持部14が前進したときにこの保持部14を停止させる部分である。ストッパ部14cは、保持部14を略90度折り曲げて形成された屈曲部であり、この屈曲部が解除レバー部19aと接触することによってこの保持部14の前進を停止させる。
ガイド部15は、保持部14を移動自在にガイドする部分であり、図10〜図12に示すように取付装置13を固定部材11rに装着したときに、保持部14が固定部材11rと平行に水平方向に往復動作可能なようにガイドする。ガイド部15は、図9〜図12に示す本体部15aと、図10〜図12に示すガイド孔15b〜15dと、取付部15eと、支持部15fと、回転規制部15g,15hなどを備えている。
図9〜図12に示す本体部15aは、ガイド部15の本体を構成する部分であり、外観形状が枠状のフレーム部材である。ガイド孔15bは、抜け止め部14b側の保持部14が移動自在に貫通する貫通孔であり、ガイド孔15cはストッパ部14c側の保持部14が移動自在に貫通する貫通孔であり、ガイド孔15dは押圧部19eが移動自在に貫通する貫通孔である。ガイド孔15bは、本体部15aの前側にこの本体部15aを貫通して形成されており、ガイド孔15c,15dは本体部15aの後側にこの本体部15aを貫通して形成されている。取付部15eは、装着部16を取り付ける部分であり、本体部15aの前側に形成された平坦面である。支持部15fは、解除レバー部19aを回転自在に支持する部分であり、本体部15aの後側の外側角部から突出して形成されている。回転規制部15gは、回転レバー部17bの回転を規制する部分である。回転規制部15gは、本体部15aの後側の内側角部から突出して形成されており、押出部17dの側面と接触して固定レバー部17aに対する回転レバー部17bの回転範囲を所定範囲内に規制している。回転規制部15hは、解除レバー部19aの回転を規制する部分である。回転規制部15hは、本体部15aの後側の外側側面から突出して形成されており、解除レバー部19aの接触面19dと接触して解除レバー部19aの回転範囲を所定範囲内に規制している。
装着部16は、固定部材11rの所定の位置にガイド部15を着脱自在に装着する部分であり、図13に示すように先端部が略U字状に分岐した板状部材である。装着部16は、この装着部16の中心軸を回転中心として180°回転させて取付装置13の姿勢を変化させることによって、図10〜図12に示す右側の乗務員室ドア8Rの下降窓10のバランサ装置11の固定部材11rと、図14に示す左側の乗務員室ドア8Lの下降窓10のバランサ装置11の固定部材11rとにそれぞれ装着可能である。装着部16は、図13に示す挟み込み部16a,16bと、図9〜図12に示す掛け止め部16cと、取付部16dと、図10〜図12及び図14に示すガイド部16eなどを備えている。
図13に示す挟み込み部16a,16bは、固定部材11rを挟み込む部分であり、固定部材11rの側面から差し込まれることによってこの固定部材11rに装着部16を取り付ける。図9〜図12に示す掛け止め部16cは、取付部11pに掛け止めされる部分であり、取付部11pと接触してこの取付部11pに掛け止めされる。図9〜図12に示す取付部16dは、装着部16をガイド部15に取り付ける部分である。取付部16dは、ガイド部15側の取付部15eと接触する平坦面であり、図示しないねじなどの締結部材によってこの取付部15eに固定されている。図10〜図12に示すガイド部16eは、抜け止め部14b寄りの保持部14が移動自在に貫通する貫通孔(ガイド孔)である。
図9〜図12に示す手動操作部17は、保持部14を前進させるときに手動操作される部分であり、固定レバー部17aと、回転レバー部17bと、連結部17cと、押出部17dなどを備えている。手動操作部17は、図10に示すように、回転レバー部17bをE1,E2方向に繰り返し回転させることによって保持部14を送出部18によってF1方向に前進させる。
固定レバー部17aは、作業者が取付装置13を操作するときに把持する部分であり、本体部15aの後側の下側角部にこの本体部15aと一体に形成されている。回転レバー部17bは、作業者が取付装置13を操作するときに把持して回転操作する部分であり、図10に示すように固定レバー部17aに対して前後方向に回転可能である。連結部17cは、回転レバー部17bを本体部15aに回転自在に連結する部分であり、回転レバー部17bをてことして機能させる支点部である。連結部17cは、回転レバー部17bの下端部までの距離よりも、回転レバー部17bの上端部までの距離のほうが短くなるように、この回転レバー部17bを回転自在に支持している。押出部17dは、取付部11pに向かって保持部14が移動するように送出部18を押し出す部分である。押出部17dは、回転レバー部17bの端部に取り付けられた軸状部材であり、図10〜図12に示すように外周面の前側が送出部18と接触し、外周面の後側が回転規制部15hと接触及び離間する。
送出部18は、コイルばね11mの端部を引っ張りながら取付部11pに向かって保持部14が前進するように、ガイド部15に沿ってこの保持部14を送り出す部分である。送出部18は、手動操作部17の手動操作に連動して、ガイド部15に沿って保持部14を送出する。送出部18は、図9〜図12に示すように、本体部15aの内側に配置されており、外観形状が円筒状の部材である。送出部18は、図10〜図12に示すように、貫通孔18aと、接触面18b,18cと、圧縮ばね18dなどを備えている。送出部18は、図11に示すように、回転レバー部17bがE1方向に回転して押出部17dによって接触面18cがF1方向に押し出されると、貫通孔18aと保持部14とが摩擦接触した状態でこの保持部14をF1方向に繰り出す。
図10〜図12に示す貫通孔18aは、保持部14が貫通する部分であり、保持部14との間に間隙部を形成するように、内径が保持部14の外径よりも僅かに大きく形成されている。貫通孔18aは、図10及び図11に示すように、保持部14の中心軸に対して送出部18の中心軸が傾斜しているときには保持部14の外周面と摩擦接触し、図12に示すように保持部14の中心軸に対して送出部18の中心軸が略一致しているときには保持部14の外周面と摩擦接触していない。接触面18bは、圧縮ばね18dと接触する部分であり、送出部18の前側に形成された平坦面であり、接触面18cは押出部17d及び押圧部19eと接触する部分であり、送出部18の後側に形成された平坦面である。圧縮ばね18dは、送出部18を後退する方向に付勢する部材であり、本体部15aの前側の内側側面と送出部18の前側の接触面18bとの間に挟み込まれており、圧縮ばね18dの内側には保持部14が貫通している。圧縮ばね18dは、図10〜図12に示すように、送出部18の接触面18cが押出部17dと常時接触するようにこの送出部18を付勢している。圧縮ばね18dは、図11に示すように、回転レバー部17bがE1方向に回転して押出部17dが送出部18をF1方向に押し出すと弾性力が増大する。
後退阻止部19は、送出部18が保持部14を前進させるときに、コイルばね11mの弾性力によってこの保持部14が後退するのを阻止する部分である。後退阻止部19は、図12に示すように、固定ボルト11nを取付部11pに取り付けた後に保持部14が後退可能なように、この保持部14の後退阻止を解除する。後退阻止部19は、図10〜図12に示すように、解除レバー部19aと、貫通孔19bと、圧縮ばね19cと、接触面19dと、押圧部19eなどを備えている。後退阻止部19は、図11に示すように、回転レバー部17bがE1方向に回転して押出部17dによって接触部18bがF1方向に押し出されているときには、圧縮ばね19cの弾性力に抗してG1方向に僅かに回転して、保持部14がF1方向に前進するのを許容する。後退阻止部19は、図10に示すように、回転レバー部17bがE2方向に回転しているときには、貫通孔19bと保持部14との間に発生する摩擦力によって、保持部14がF2方向に後退するのを阻止する。後退阻止部19は、図12に示すように、解除レバー部19aがG1方向に回転したときには、貫通孔19bと保持部14との間に間隙部を形成して、保持部14がF2方向に後退するのを許容する。
解除レバー部19aは、作業者が取付装置13を終了したときに回転操作する部分であり、図12に示すように前後方向(G1,G2方向)に回転可能である。解除レバー部19aは、外観形状が板状の回転レバーであり、端部が支持部15fに回転自在に連結されている。貫通孔19bは、保持部14が貫通する部分であり、保持部14との間に間隙部を形成するように、内径が保持部14の外径よりも僅かに大きく形成されている。貫通孔19bは、図10及び図11に示すように、保持部14の中心軸に対して中心軸が傾斜しているときには保持部14の外周面と摩擦接触し、図12に示すように保持部14の中心軸に対して中心軸が略一致しているときには保持部14の外周面との間で摩擦接触していない。
圧縮ばね19cは、解除レバー部19aを後退する方向に付勢する部材であり、本体部12aの後側の外側側面と解除レバー部19aの前側の接触面19dとの間に挟み込まれており、圧縮ばね19cの内側には保持部14が貫通している。圧縮ばね19cは、図10及び図11に示すように、貫通孔19bの内周面が保持部14の外周面と常時接触するように解除レバー部19aをG2方向に回転するように付勢しており、解除レバー部19aがG1方向に回転すると圧縮されて縮む。接触面19dは、圧縮ばね19c及び押圧部19eと接触する部分であり、解除レバー部19aの前側に形成された平坦面である。押圧部19eは、送出部18を押圧する部分である。押圧部19eは、外観形状が軸状の部材であり、本体部15aのガイド孔15dにスライド自在に挿入されており、このガイド孔15dから抜け出さないように後端部が折り曲げられている。押圧部19eは、先端部が送出部18の接触面18cと接触及び離間し、後端部が解除レバー部19aの接触面19dと接触する。押圧部19eは、図12に示すように、解除レバー部19aがG1方向に回転すると、この解除レバー部19aの接触面18cによって押し出されてF1方向に前進し、送出部18の接触面18cを押し出して、送出部18の中心軸と保持部14の中心軸とが略一致するようにこの送出部18を起立させる。
次に、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置が使用される鉄道車両の乗務員室ドアの下降窓の動作を説明する。
例えば、車両2が駅ホームに到着して乗務員室7内の車掌が安全確認などをするときには、図3に示す窓戸錠10dを解錠して操作部10cを操作し、図4に示すように下降窓10を下降させる。図5に示すように、下降窓10がB1方向に下降すると、第1リンク部材11cがC1方向に回転し、第2リンク部材11eを介して第3リンク部材11fがD1方向に回転する。その結果、図4に示すように、コイルばね11k,11mが引っ張られて第3リンク部材11fをD1方向とは逆方向のD2方向に回転させるように、コイルばね11k,11mの弾性力が第3リンク部材11fに作用し、コイルばね11k,11mの弾性力が下降窓10にブレーキ力として作用する。一方、安全確認などを終了したときには、図4に示す操作部10cを車掌が操作して、図3に示すように下降窓10を上昇させる。図5に示すように、下降窓10がB2方向に上昇すると、第1リンク部材11cがC2方向に回転し、第2リンク部材11eを介して第3リンク部材11fがD2方向に回転する。その結果、図4に示すように、コイルばね11k,11mの弾性力が第3リンク部材11fをD2方向に回転させるように作用するため、下降窓10の上昇方向にコイルばね11k,11mの弾性力がこの下降窓10に推進力として作用する。
次に、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置とともに使用されるストッパ装置の使用方法を説明する。
図3〜図5に示すように、下降窓10の昇降動作を繰り返すと、図3及び図4に示すようにコイルばね11mの姿勢が水平状態と傾斜状態とに変化して、コイルばね11mに繰返し応力が作用し、コイルばね11mが疲労して折損することがある。このような場合には、車両2の運用に支障がないように、走行中の車両2の乗務員室7に作業員が乗車してコイルばね11mの交換作業を短時間で実施する必要がある。先ず、図3に示す被覆部材9eを乗務員室ドア8Rから取り外して、図7に示すように第3リンク部材11fと固定部材11rとの間に動作規制部12bを挟み込むように、ストッパ装置12を固定部材11r上に設置する。その結果、列車の振動などによって下降窓10が下降しても、図5に示す第3リンク部材11fの回転動作が規制されるため、第1リンク部材11c及び第2リンク部材11eの回転動作も規制されて、下降窓10が所定高さ以下に下降するのが阻止される。また、下降窓10が下降して第3リンク部材11fが動作規制部12bに衝突しても、第3リンク部材11fに抜け止め部12dが引っ掛かるとともに、固定部材11rの上面と移動防止部12hとが接触する。このため、衝突時に発生する衝撃力によって、ストッパ装置12が手前側に飛び出したり横方向にずれたりするのが阻止される。
次に、破損したコイルばね11mをバランサ装置11から取り外し、図10に示すように新品のコイルばね11mの一方の端部を図6に示す逃げ部12jに挿入して図5に示す連結軸11hに掛け止めする。また、図10に示すように、新品のコイルばね11mの他方の端部に固定ボルト11nを取り付けて、この固定ボルト11nの雄ねじ部11uを取付部11pの貫通孔11vに挿入する。このとき、図7に示すように、コイルばね11mの外周部とストッパ装置12の姿勢保持部12fとが接触し、コイルばね11mの姿勢が水平になるように、コイルばね11mの外周部を姿勢保持部12fが保持する。
次に、この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置の使用方法を説明する。
図7に示すように、バランサ装置11の動作をストッパ装置12によって規制した状態で、図10に示すようにこのバランサ装置11の固定部材11rに取付装置13を装着する。先ず、図13に示すように、挟み込み部16aと挟み込み部16bとの間に固定部材11rを挟み込み、掛け止め部16cを取付部11pに掛け止めすると、固定部材11r上に装着部16が位置決めされて取付装置13が固定部材11rに装着される。この状態では、図7に示すように、ストッパ装置12の姿勢保持部12fがコイルばね11mの姿勢を水平状態に保持しているため、図10に示すように、取付装置13が固定部材11rに位置決めされて装着されると、コイルばね11mの中心軸と取付部11pの貫通孔11vの中心軸とが一致するように配置される。
次に、図11に示すように、回転レバー部17bをE1方向に回転して押出部17dが送出部18をF1方向に押し出すと、貫通孔18aの内周部と保持部14の外周部とが摩擦接触した状態で一体となってF1方向に繰り出され、保持部14が二点鎖線の位置から実線の位置まで前進する。このとき、解除レバー部19aが圧縮ばね19cの弾性力に抗してG1方向に僅かに回転するため、保持部14のF1方向への移動を後退阻止部19が阻害することがなく、送出部18によって保持部14がF1方向に所定のストローク分だけ前進する。
図10に示すように、回転レバー部17bをE1方向に回転操作させた後に回転レバー部17bを解放すると、圧縮ばね18dの弾性力によって送出部18及び押出部17dがF2方向に後退して、回転レバー部17bがE2方向に回転し元の位置に復帰する。このとき、貫通孔19bの内周部と保持部14の外周部との間に摩擦力が発生しているため、保持部14がF2方向に後退するのを後退阻止部19が阻止する。このように、回転レバー部17bをE1,E2方向に繰り返し回転操作することによって、保持部14がF1方向に間欠的に前進する。
図11に示すように、保持部14がF1方向に前進して、保持部14の押圧部14aが固定ボルト11nのボルト頭部11sに接触すると、図12に示すようにコイルばね11mが徐々に引っ張られて、固定ボルト11nを保持部14がF1方向にさらに前進させる。一方の手で固定ボルト11nを支持して雄ねじ部11uの中心軸と取付部11pの貫通孔11vの中心軸とを一致させて、他方の手で手動操作部17を操作して保持部14をF1方向に前進させながら、雄ねじ部11uを貫通孔11vに導く。そして、貫通孔11vから僅かに突出した雄ねじ部11uの先端部に1本目の締結ナット11qを位置決めして、保持部14をF1方向に前進させながら1本目の締結ナット11qを少しずつ仮締めするとともに、2本目の締結ナット11qを雄ねじ部11uに仮締めする。図12に示すように、固定ボルト11nを移動量(ストローク)ΔSだけ保持部14が前進させると、ストッパ部14cが貫通孔19bに接触して保持部14がF1方向に前進するのを阻止する。その結果、2本の締結ナット11qを雄ねじ部11uに締結することによって、コイルばね11mの弾性力が適正範囲に調整される。
図12に示すように、固定ボルト11nの雄ねじ部14dに2本の締結ナット11qを作業者がスパナを使用して本締めした後に、解除レバー部19aがG1方向に回転操作される。その結果、貫通孔19bの内周部と保持部14の外周部との間に間隙部が形成されてこれらの間の摩擦力がなくなるとともに、押圧部19eがF1方向に前進して、送出部18が傾斜した姿勢から起立した姿勢に変化する。その結果、貫通孔18aの内周部と保持部14の外周部との間に間隙部が形成されて、これらの間の摩擦力がなくなる。このため、図14に示すように、保持部14をF2方向に後退させて、固定ボルト11nのボルト頭部11sから押圧部14aが離間しこれらの間に間隙部が形成される。
図13に示す固定部材11rから装着部16を引き抜き、固定部材11rから取付装置13を取り外す。次に、図7に示すストッパ装置12を横方向にスライドさせて第3リンク部材11fと固定部材11rとの間から動作規制部12bを引き抜いた後に、ストッパ装置12を手前にスライドさせて固定部材11rから取り外す。最後に、図3に示すように、被覆部材9eを乗務員室ドア8Rに取り付けて、コイルばね11mの交換作業を終了する。交換作業中に車両2が駅に到着し、乗務員室ドア8Rを車掌が開閉する必要が生じても、取付装置13が固定部材11rに装着された状態で乗務員室ドア8Rが開閉可能である。なお、固定部材11rにストッパ装置12を設置した状態で、被覆部材9eを乗務員室ドア8Rに取り付けようとすると、図6に示すように干渉部12mに被覆部材9eが接触する。このため、被覆部材9eを乗務員室ドア8Rに取り付けることができず、作業者に注意を喚起してストッパ装置12の置忘れが防止される。
この発明の実施形態に係るコイルばねの取付装置には、以下に記載するような効果がある。
(1) この実施形態では、固定ボルト11nを保持する保持部14を移動自在にガイド部15がガイドし、固定部材11rの所定の位置にガイド部15を着脱自在に装着部16が装着し、取付部11pに向かって保持部14が前進するように、ガイド部15に沿ってこの保持部14を送出部18が送り出す。このため、固定ボルト11nを保持部14によって確実に保持し、固定ボルト11nの位置ずれを防止することができる。また、保持部14の移動方向をガイド部15によって規制し、固定ボルト11nの姿勢を一定にした状態でこの固定ボルト11nを移動させることができる。さらに、ガイド部15が装着部16によって固定部材11rに位置決めされるため、固定ボルト11nを取付部11pに向かって正確に前進させることができ、固定ボルト11nを短時間で簡単に取り付けることができる。
(2) この実施形態では、送出部18が保持部14を前進させるときに、コイルばね11mの弾性力によってこの保持部14が後退するのを後退阻止部19が阻止する。このため、取付作業中に保持部14が後退して、取付部11pから固定ボルト11nが脱落するのを防止することができる。また、固定ボルト11nを取付部11pに位置決めした状態で取付装置13から作業者が両手を離して、固定ボルト11nに締結ナット11qを締結する作業を実施することができる。
(3) この実施形態では、固定ボルト11nを取付部11pに取り付けた後に保持部14が後退可能なように、この保持部14の後退阻止を後退阻止部19が解除する。このため、取付作業終了後に保持部14を後退させて、固定ボルト11nから保持部14を簡単に引き離し、取付装置13を固定部材11rから取り外すことができる。
(4) この実施形態では、コイルばね11mの弾性力が適正範囲になる位置まで保持部14が前進する。このため、保持部14を所定の位置まで送出部18が送出するだけで、コイルばね11mの弾性力を自動的に適正範囲に設定することができる。
(5) この実施形態では、弾性力の適正設定範囲が異なる複数のコイルばね11mに対応して保持部14が複数種類存在し、これらの保持部14がガイド部15に交換可能に装着される。このため、コイルばね11mの弾性力の適正範囲がそれぞれ異なる車両毎に保持部14を交換することによって、コイルばね11mの弾性力を適正範囲に設定することができる。
(6) この実施形態では、右側の乗務員室ドア8Rのバランサ装置11の固定部材11rと、左側の乗務員室ドア8Lのバランサ装置11の固定部材11rとに、装着部16をそれぞれ着脱自在に装着可能である。このため、左右の乗務員室ドア8R,8Lのいずれに対しても1個の取付装置13を兼用することができる。その結果、左右の乗務員室ドア8R,8Lにそれぞれ対応する取付装置13を1個ずつ製造する必要がなくなるため、低コスト化を図ることができるとともに、左右それぞれの取付装置13を現場に持ち運ぶ手間を省くことができる。
(7) この実施形態では、手動操作部17の手動操作に連動して、ガイド部15に沿って保持部14を送出部18が前進させる。このため、電源やモータなどの特別な装置を使用せずに、手動操作によって保持部14を簡単に前進させることができる。
この発明は、以上説明した実施形態に限定するものではなく、以下に記載するように種々の変形又は変更が可能であり、これらもこの発明の範囲内である。
(1) この実施形態では、鉄道車両の下降窓10のバランサ装置11に使用するコイルばね11mを取り付ける場合を例に挙げて説明したが、鉄道車両以外の自動車、自動二輪車又は自転車などの車両、機械類などに使用されるコイルばねを取り付ける場合についても、この発明を適用することができる。また、この実施形態では、折損したコイルばね11mを取り外して新品のコイルばね11mに交換する場合を例に挙げて説明したが、乗務員室ドア8R,8Lの組立時や製造時に新品のコイルばね11mを取り付ける場合についても、この発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、コイルばね11mを取付部11pに取付装置13によって取り付ける場合を例に挙げて説明したが、コイルばね11kを取付部11i,11jに取付装置13によって取り付ける場合についても、この発明を適用することができる。
(2)この実施形態では、鉄道車両の乗務員室ドア8R,8Lの下降窓10のバランサ装置11を例に挙げて説明したが、鉄道車両の客室5の下降窓のバランサ装置についてもこの発明を適用することができる。また、この実施形態では、コイルばね11mが引張力を受ける引張コイルばねである場合を例に挙げて説明したが、圧縮力を受ける圧縮コイルばねを取り付ける場合についてもこの発明を適用することができる。さらに、この実施形態では、車両2の種類に応じて保持部14を交換可能である場合を例に挙げて説明したが、全車種に対応して使用可能な保持部14を一つだけ用意することもできる。