以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図6を参照しつつ説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
(画像形成装置の概略)
まず、図1を用いて、トナー像を形成し、定着装置1にてトナー像を定着させる電子写真方式のプリンタ100(画像形成装置に相当)の概略を説明する。そして、図1は、本発明の第1の実施形態に係るプリンタ100の概略構成を示す模型的正面断面図である。
図1に示すように、本第1の実施形態に係るプリンタ100は、下方から、給紙部2、搬送路3、画像形成部4、定着装置1等を備える。
給紙部2は、プリンタ100の最下部に設けられ、例えば、コピー用紙等の各種、各サイズ(A4、B5等)の用紙を収容する。そして、給紙部2には、用紙搬送方向下流側に、給紙ローラ21が設けられる。給紙ローラ21には、積載された用紙のうち、最上位の用紙が当接し、給紙時に給紙ローラ21は、モータ等の駆動装置(不図示)により回転駆動し、用紙を1枚ずつ搬送路3に送り出す。
そして、搬送路3は、給紙部2から送り出された用紙を、画像形成部4を経て、排出トレイ31まで用紙を搬送する。そのため、搬送路3には、駆動機構(不図示)により回転駆動する搬送ローラ対32や、トナー像にタイミングをあわせて用紙を転写ローラ45と感光体ドラム41のニップに送り出すレジストローラ対33等が設けられる。
画像形成部4は、図1において、プリンタ100内の中央左方の位置に配される。画像形成部4は、例えば、PC200(パーソナルコンピュータ、図2参照)等の、外部のコンピュータから送信された原稿等の画像データに基づき、形成すべき画像のトナー像を形成し、用紙に転写を行う。そして、画像形成部4は、感光体ドラム41と、その周囲に配される帯電装置42、露光装置43、現像装置44、転写ローラ45、清掃装置46等で構成される。
トナー像の形成プロセスを説明すると、感光体ドラム41は、所定の方向(図1では時計方向)に回転駆動し、帯電装置42が感光体ドラム41の周面を帯電させる。露光装置43は、帯電後の感光体ドラム41に、画像データに基づき光(例えば、レーザ光)を照射し、周面を走査・露光し、感光体ドラム41の周面に画像データに対応した静電潜像を形成する。現像装置44は、トナーを帯電させ、そのトナーを静電潜像に供給し、静電潜像をトナー像として現像する。転写ローラ45は、回転可能に支持され、感光体ドラム41に圧接しニップを形成する。そして、このニップに用紙とトナー像が進入した際に、転写ローラ45にトナーの帯電極性と逆の極性の電圧が印加され、トナー像の用紙への転写がなされる。清掃装置46は、図1において、感光体ドラム41の上方に配され、感光体ドラム41の周面上の残トナーや塵芥等を除去、回収する。
定着装置1は、本実施形態では、通電で発熱するヒータHを内蔵する加熱ローラ11(加熱体に相当)と加圧ローラ12(加圧体に相当)等を有する。加熱ローラ11は、トナー像を加熱するため、ヒータHが生ずる熱により加熱され、回転する。尚、ヒータHは加熱ローラ11の軸線方向に延び、加熱ローラ11の周面全体を暖めることができる。又、ヒータHには、例えば、ハロゲンヒータを用いることができるが、加熱ローラ11を暖めることができればよい。加圧ローラ12は、回転し、加熱ローラ11に接し、トナー像が転写された用紙を進入させるニップを形成する。
そして、ニップに用紙が進入し、トナー像が加圧・加熱され、用紙にトナー像が定着する。定着完了後の用紙は、排出トレイ31に排出される。尚、加熱ローラ11(定着装置1)の温度を検知するため、保護テープ51(保護部材に相当)で覆われつつ加熱ローラ11に接するサーミスタTH(温度検知用素子に相当)を含む複数の接触式温度センサ5(温度検知部に相当)が設けられる。又、非接触で加熱ローラ11の温度を検知するための非接触式温度センサ5C(非接触式温度検知部に相当)も設けられる(詳細は後述)。
尚、本実施形態のプリンタ100は、図1に破線で示すように、正面上方左側に、装置の状態を通知する操作パネル6(通知部に相当)を有する。操作パネル6には、液晶表示部61や、複数のインジケータ62や、複数の操作用キー63等が設けられる。液晶表示部61は、サービスコール(プリンタ100のメンテナンスを行うサービスマンによる点検・修理の必要性の通知)や、故障発生、エラーメッセージ等、各種メッセージを表示する。インジケータ62は、発光素子(例えば、LED)であり、本実施形態のプリンタ100では、3つ設けられる。インジケータ62は、点灯や点滅により、サービスコール、故障発生、印刷中、用紙切れ等のエラー発生等、各種メッセージを表示する。尚、操作パネル6は、定着装置1の以上に関するメッセージを通知できるので、定着装置1の通知部としても機能する。
(プリンタ100のハードウェア構成)
次に、図2に基づき、本発明の第1の第1の実施形態に係るプリンタ100のハードウェア構成の一例を説明する。図2は、本発明の第1の第1の実施形態に係るプリンタ100のハードウェア構成の一例のブロック図である。
まず、図2に示すように、本実施形態のプリンタ100には、プリンタ100の動作全体の制御を司る制御部7が設けられる。制御部7には、中央演算処理装置として、CPU71が設けられる。又、制御部7は、各温度センサ5からの信号に基づき加熱ローラ11の各部の温度を認識し、各温度が一定値以上異なる場合、故障発生と判断するなど、定着装置1の制御も行うことができる。従って、制御部7は、プリンタ100の制御部7であるとともに、定着装置1の制御部7でもある。尚、定着装置1専用の制御部(コントローラ)が設けられても良い。
そして、制御部7は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read Only Memory)や、フラッシュROMからなり、データを記憶する記憶部72を有する。例えば、ROMやフラッシュROMは各種制御を行うために必要なプログラム、データを記憶する。又、例えば、RAMは制御用のプログラムやデータや、画像データ等を一時的に展開する。
又、制御部7には、給紙部2、搬送路3、画像形成部4、定着装置1、電源装置73、操作パネル6等と信号線やバス等で接続される。制御部7は、接続される各部の動作制御を行う。又、制御部7には、ネットワークやケーブルでPC200とプリンタ100を接続するためのコネクタ、ソケットを有するI/F部74(インターフェイス部)が接続される。このI/F部74を利用し、ネットワーク等で、PC200とプリンタ100が通信可能となる。そして、本実施形態のプリンタ100は、PC200から画像データや印刷設定データの送信を受け、印刷を行う。
尚、本実施形態のプリンタ100には、商用電源と接続される電源装置73を有する。又、電源装置73は、整流や昇圧、降圧等を行って制御部7等の基板や、画像形成部4や、用紙搬送用のモータ等に電力を供給する。又、電源装置73は、定着装置1のヒータH等に電力を供給できる。例えば、電源装置73は、商用電源をヒータHに接続するスイッチとして機能しても良いし、整流や昇圧、降圧を行った電力をヒータHに供給しても良い。又、例えば、商用電源と電源装置73の接続をON/OFFすることで、使用者が主電源のON/OFFを行うためのメインスイッチ75が設けられても良い。
(各温度センサ5の設置位置と構成)
次に、図3に基づき、本発明の第1の実施形態に係る定着装置1での各温度センサ5の配置と構成の一例を説明する。図3(a)、本発明の第1の実施形態に係る各温度センサ5の配置の一例を示し、(b)は接触式の温度センサ5でのサーミスタTHの一例を示し、(c)は各温度センサ5の回路の一例を示す。
まず、図3(a)に示すように、本実施形態の定着装置1では、加熱ローラ11と加圧ローラ12はほぼ同様の長さとされる。例えば、加熱ローラ11と加圧ローラ12の長さは、A3用紙を横方向で通紙できる長さとされる(A3用紙の短辺は、各ローラの周面の軸線方向の長さよりも短い)。そして、加圧ローラ12が加熱ローラ11に圧接し、加熱ローラ11と加圧ローラ12の軸線方向は平行とされる。そして、加熱ローラ11と加圧ローラ12のニップにトナー像が転写された用紙が進入する。又、通常、定着装置1では、中央通紙で用紙は搬送される。
そして、本実施形態の定着装置1では加熱ローラ11に接して温度センサ5Aと温度センサ5Bの少なくとも2つが設けられる(2つ以上でもよい)。温度センサ5A、温度センサ5Bは、加熱ローラ11の軸線方向の両端部にそれぞれ配される。即ち、温度センサ5A、温度センサ5Bは、加熱ローラ11の軸線方向端部位置の温度を検知する。尚、温度センサ5Aと温度センサ5Bは、同じ仕様、形式のものでよく、特に区別しない場合、A、Bを省略して、単に「温度センサ5」と称する。一方、非接触式温度センサ5Cは、加熱ローラ11の軸線方向のほぼ中央の位置で加熱ローラ11と対向する。そして、非接触式温度センサ5Cは、加熱ローラ11の軸線方向の中央部分の温度を検知する。
例えば、非接触式温度センサ5Cは、印刷前や印刷中に、加熱ローラ11の中央が定着温度を超えているか、維持されているかを確認するためのセンサである。又、例えば、接触式の温度センサ5A、5Bは、加熱ローラ11の温度検知のほか、片寄った用紙搬送の検知や、小サイズの用紙を連続して印刷する時の加熱ローラ11等の端部での過昇温発生を検知のためのセンサである。
そして、図3(b)に示すように、温度センサ5Aと温度センサ5Bは、温度検知用素子としてのサーミスタTHを含む。各サーミスタTHは、例えば、金属端子(両足)をしならせつつ加熱ローラ11と接するように保持される。又、各サーミスタTHは、加熱ローラ11と接することによる摩耗等を防ぐため、表面が保護テープ51(保護部材に相当)で保護される。尚、非接触式温度センサ5C内にも温度検知用素子としてサーミスタTHが設けられるが、非接触式温度センサ5C内のサーミスタTHには、保護テープ51は不要である。
保護テープ51には、例えば、カプトンテープなどの絶縁性、耐摩耗性を有するテープを用いることができる。例えば、保護テープ51は、片面に粘着剤が塗布され、サーミスタTHを包むことができる程度の大きさのもので、サーミスタTHを挟みつつ保護テープ51を折りたたむ。これにより、サーミスタTHは、保護テープ51で覆われ、摩耗等から保護される。
又、図3(c)には、温度センサ5A、温度センサ5B、非接触式温度センサ5Cの基本的な回路図を示す。図3(c)に示すように、例えば、電源Vcc(例えば、電源装置73から供給)に各温度センサ5のサーミスタTHが接続される。そして、サーミスタTHの一端に、抵抗R1が接続され、抵抗R1はグランドに接続される。このサーミスタTHと抵抗R1の直列回路間の電圧が各温度センサ5の出力として取り出される。
例えば、各サーミスタTHには温度が高くなると抵抗値が小さくなるもの(NTC型)を用いることができる。NTC型では温度が上がるほど、直列回路の合成抵抗値は小さくなり電流が流れやすくなるため、各温度センサ5の出力としての電圧は高くなる。尚、サーミスタTHに温度が高くなると抵抗値が大きくなるもの(PTC型)を用いてもよい。
ここで、サーミスタTHの温度に対する抵抗値は、データシート等、サーミスタTHの形式ごとに定まっている。そして、温度センサ5のうち抵抗R1の抵抗値を定数とすれば分圧比に基づき、Vcc(電源)の電圧と温度センサ5の出力としての電圧の値に対するサーミスタTHの抵抗値をCPU71等により演算で求めることができる。そして、データシート等、サーミスタTHの抵抗値に対する温度との関係をテーブルとして記憶部72に記憶させておき、サーミスタTHの抵抗値に基づき、加熱ローラ11の温度が検知され制御部7が認識するようにしても良い。
或いは、加熱ローラ11の温度と各温度センサ5の出力としての電圧値には、対応する関係がある。そこで、予め温度に対する各温度センサ5の出力としての電圧値を把握しておく。そして、温度と出力としての電圧の関係をテーブルの形式として記憶部72に記憶しておく。これにより、例えば、制御部7は、各温度センサ5の出力としての電圧の値とテーブルを参照すれば、加熱ローラ11の両端及び中央部の温度を認識できる。
尚、各温度センサ5自体がメモリ等を搭載し、温度を示すディジタルデータを出力するものでもよい。この場合、制御部7には温度を示すデータが入力され、制御部7は、入力された温度に基づき加熱ローラ11の温度を認識する。
(定着装置1のハードウェア構成)
次に、図4に基づき、本発明の第1の実施形態に係る定着装置1のハードウェア構成の一例を説明する。図4は、本発明の第1の実施形態に係る定着装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
そして、図4に示すように、本実施形態のプリンタ100は、加熱ローラ11内にヒータHを含む加熱回路13を有する。例えば、加熱回路13には、温度ヒューズ、サーマルプロテクタ、サーモスタット等を組み込むことができ、温度ヒューズ等が感応するほどの過昇温が生じた場合、加熱回路13は強制的に断線状態とされる。
そして、加熱回路13のヒータHへの通電のONとOFFを切り換えるヒータ駆動回路14が設けられる。ヒータ駆動回路14には、制御部7のCPU71からのヒータ制御用信号線HCが接続される。制御部7は、このヒータ制御用信号線HCでヒータHへの通電のON/OFF制御を指示するヒータ駆動制御信号をヒータ駆動回路14に入力する。これにより、ヒータHの点灯、消灯が制御される。
温度センサ5A、温度センサ5B、非接触式温度センサ5Cはそれぞれ、加熱ローラ11の温度に応じて、出力するアナログ電圧がそれぞれ異なる。そのため、制御部7と温度センサ5A、温度センサ5B、非接触式温度センサ5Cの間にA/D変換器15を設けることができる。A/D変換器15からの出力は、例えば、制御部7のCPU71に信号として入力される。これにより、制御部7は、加熱ローラ11の両端部と中央部の温度を認識できる。尚、制御部7のCPU71がA/D変換用のポートを有していれば、A/D変換器15は設けなくても良い。
これらの検知された温度に基づき、制御部7はヒータHの点消灯制御を行う。例えば、制御部7は、印刷を行う場合、加熱ローラ11をトナー像の定着に適した温度(以下、「定着温度」という。例えば、200°C程度)で維持する。例えば、定着温度が200°Cであれば、制御部7は、加熱ローラ11の温度が200°Cを越えれば、ヒータHをOFF(消灯)し、200°Cを下回れば、ヒータHをON(点灯)する。
又、加熱ローラ11の軸線方向の長さに対し、用紙の幅が狭い用紙(例えば、B5サイズ)の印刷を連続して行えば、用紙と接する加熱ローラ11の中央部分のみ温度が下がる。更に印刷を続け、加熱ローラ11の中央部分を定着温度で維持するため、ヒータHを点灯させれば、加熱ローラ11の両端の温度は上昇を続ける。従って、小サイズの用紙を連続して印刷した場合、加熱ローラ11の両端や加熱ローラ11の熱が伝えられる加圧ローラ12の両端で温度が定着温度よりも高くなりすぎる場合がある。
このような各ローラの両端部で温度が高くなりすぎたことは、例えば、温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知された温度が、予め定められた温度を超えたことで検知できる。この場合、制御部7は、給紙部2や画像形成部4を制御し、給紙や画像形成を停止させ、一定時間、加熱ローラ11や加圧ローラ12の回転を続けさせる。これにより、加熱ローラ11の両端部の熱が伝達し、加熱ローラ11等の端部の温度が高すぎる状態が解消される。尚、制御部7は、加熱ローラ11等に回転駆動力を供給する定着モータ16の回転を制御でき、加熱ローラ11と加圧ローラ12のみを回転させ続けることができる。
又、本実施形態の定着装置1では、中央通紙で用紙の搬送が行われる。しかし、加圧ローラ12の圧接力が均等でなく、加熱ローラ11の軸線方向の両端で、圧接力の大きさが異なる等の要因で、用紙が加熱ローラ11の軸線方向のいずれかに片寄って搬送されることがある。片寄った用紙の搬送は、用紙の引っ掛かり等によるジャム(詰まり)を引き起こす。又、加熱ローラ11のうち、用紙が接する側の端部では、熱が用紙に奪われるが、用紙が接しない側の端部では、用紙に熱が奪われない。
そのため、用紙が接しない側の端部で昇温が生ずる場合がある。そこで、制御部7は、誤差の範囲を超えて、温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知された温度が一定値以上異なると、片寄った通紙が行われ、故障発生と判断する。故障発生と判断すれば、制御部7は、例えば、「テイチャクキコショウ」等の文字を操作パネル6に表示させる。
ここで、温度センサ5Aと温度センサ5BのサーミスタTHは、接触式であり、保護テープ51で覆われる。しかし、使用している間に、加熱ローラ11との摩擦等により、一部又は全部が剥がれることがある。そして、保護テープ51が剥がれ、加熱ローラ11にサーミスタTHが直接接すると、保護テープ51が剥がれていない状態とでは、温度に対する温度センサ5からの出力としての電圧の値が変わることがある。
一般的に、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHは、加熱ローラ11と直に接することになる。従って、加熱ローラ11の熱は、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHに直に伝わる。一方で、保護テープ51が剥がれていないサーミスタTHは、保護テープ51を介し加熱ローラ11と間接的に接する。言い換えると、保護テープ51が剥がれていないサーミスタTHは、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHよりも加熱ローラ11からの距離が遠い。従って、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを用いて検知された温度は、保護テープ51が剥がれていないサーミスタTHを用いて検知された温度よりも高くなる。ここで、保護テープ51が剥がれていない状態を基準にして、各温度センサ5の出力電圧や、出力電圧に基づき得られたサーミスタTHの抵抗値に対し、加熱ローラ11の温度を定めるテーブル等が記憶部72記憶され、制御部7は、テーブル等を参照して温度を検知する。従って、保護テープ51の剥がれた方の温度センサ5では、検知すべき温度に対しずれが生じる(高くなる)。
一方で、本実施形態のプリンタ100や定着装置1では、温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知された温度の温度差が一定値以上異なると、片寄った通紙が行われていると判断される。そうすると、温度センサ5A又は温度センサ5Bのうち一方で、保護テープ51の剥がれが生じると、片寄った通紙が行われていると誤検知される場合がある。
ジャムの発生率上昇や、端部での昇温等の問題から、片寄った用紙の搬送が行われる定着装置1は、故障と扱われるべきである。一方で、保護テープ51の剥がれは、再度、保護テープ51を張れば済む場合もあれば、検知された温度を補正すれば済む場合もあり、定着装置1の交換を要するほどではない。
そこで、従来、定着装置1での片寄った用紙搬送が行われていると誤検知され、定着装置1の交換が行われかねなかった保護テープ51の剥がれが生じても、本発明では、保護テープ51の剥がれた温度センサ5を認定し、保護テープ51の剥がれた温度センサ5を用いて得られた加熱ローラ11の温度の補正を行う。この保護テープ51がサーミスタTHから剥がれた温度センサ5の認定と、その温度センサ5で検知された温度の補正の一例を図5に基づき説明する。
(保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5の認定)
上述したように、図5に基づき、本発明の第1の実施形態に係る保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5の認定制御の一例を説明する。図5は、本発明の第1の実施形態に係る保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5の認定制御の一例を示すフローチャートである。尚、本実施形態では、温度センサ5Aと温度センサ5Bのみを使用して、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5を認定する制御を説明する。
まず、本説明では、主電源投入時の制御の一例を説明する。そのため、図5に示すフローチャートでのスタートは、プリンタ100の主電源投入時である。メインスイッチ75が投入されると、電源装置73で各種電圧が生成され、制御部7等に供給がなされる。その結果、プリンタ100を印刷可能な状態とするため、ウォームアップ動作が開始される(ステップ♯1)。次に、制御部7は、ヒータHを点灯(ON)させる(ステップ♯2)。その後、ヒータHの熱を加熱ローラ11と加圧ローラ12に均等に伝達し、定着装置1を全体的に暖めるため、制御部7は、加熱ローラ11と加圧ローラ12の回転させる(ステップ♯3)。
次に、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、いずれかの温度センサが所定温度に到達したことを検知したかを確認する(ステップ♯4)。言い換えると、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知された温度を確認して、温度センサ5A、5Bを用いて検知された温度のいずれかが所定温度以上となったか(所定温度を超えたか)を確認する。ここで所定温度とは、定着温度よりも低い温度である(例えば、100°C〜150°C)。所定温度は、保護テープ51が剥がれたことによる検知温度のずれが明確に現れる温度とすればよい。例えば、主電源投入後、200°C程度まで加熱体が暖められる場合、所定温度を100°C程度とすることができる。
尚、所定温度に到達したか否かは、制御部7は、温度センサ5Aを用いても判断しても良いし、温度センサ5Bを用いて判断しても良いが、断線等が生じている場合があるので、温度センサ5Aと温度センサ5Bのいずれでも、先に、所定温度に到達したことが検知されれば、制御部7は所定温度に到達したと判断する。これにより、加熱ローラ11の暖めすぎを確実に防ぐこともできる。
もし、温度センサ5Aと温度センサ5Bのいずれの温度センサ5を用いても所定温度への到達を検知できなければ(ステップ♯4のNo)、例えば、ステップ♯2に戻る。一方、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、いずれかの温度センサ5で所定温度への到達を検知できれば(ステップ♯4のYes)、制御部7は、加熱ローラ11の両端の温度センサ5、即ち、温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知された温度が所定値以上異なるかを確認する(ステップ♯5)。
ここで、所定値以上異なるかを確認するのは、温度センサ5Aを用いて検知された温度と、温度センサ5Bを用いて検知された温度を見て、保護テープ51が剥がれているかを確認するためである。所定値は、保護部材が剥がれたサーミスタTHを有する温度センサ5と、保護部材が剥がれていないサーミスタTHを有する温度センサ5とを用いて、予めの実験等により、同じ温度の対象を測定したときの各温度センサ5を用いて検知された温度の差に基づき定め得る。尚、ヒータHの加熱ムラもあり得るので、所定値は、温度センサ5Aと温度センサ5Bのいずれも保護テープ51が剥がれていない時に生じ得る温度の誤差を越える値に設定される。温度センサ5Aと温度センサ5Bで保護テープ51が剥がれていなくても、例えば、1°C〜3°C程度、検知温度の差が生じ得る場合、所定値は3°Cを越える値に設定される。
もし、温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知され、制御部7が認識した温度が所定値以上異ならなければ(所定値未満ならば、ステップ♯5のNo)、保護テープ51の剥がれはないと判断できるから、制御部7は、加熱ローラ11を定着温度にまで暖める(ステップ♯6)。その後、主電源投入時のウォームアップは終了する(エンド)。その後、例えば、制御部7は、省電力モードに移行しない限り、ヒータHのON、OFFを繰り返して、加熱ローラ11の温度を定着温度で維持する制御に移行する。
一方、温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知され、制御部7が認識した温度が所定値以上異なれば(ステップ♯5のYes)、制御部7は、温度差を、例えば、記憶部72に記憶させる(ステップ♯7)。即ち、制御部7は、定着装置1への電力供給が開始される主電源の投入後、ヒータHの点灯が開始されてから、いずれかの温度センサ5により所定温度にまで加熱ローラ11が暖められたことを検知したときに、温度差を記憶させる。又、温度差が所定値以上であれば、保護テープ51の剥がれや、更には、温度センサ5からA/D変換器15や制御部7までの信号線での断線の発生が考えられる。これらの要因確定のため、制御部7は、ヒータHを点灯させて、加熱ローラ11を所定温度から定着温度まで更に暖める(ステップ♯8)。
そして、制御部7は、定着温度にまで暖まったことを確認する(ステップ♯9)。具体的には、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、いずれかの温度センサが定着温度に到達したことを検知したかを確認する(ステップ♯9)。言い換えると、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知された温度を確認して、温度センサ5A、5Bを用いて検知された温度のいずれかが定着温度以上となったか(定着温度を超えたか)を確認する。
検知された温度に変化がなければ、断線の発生が考えられるので、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、検知する温度の変化がある方の温度センサ5に基づき、定着温度に暖まったことを判断しても良い。そこで、温度センサ5Aと温度センサ5Bのいずれでも、先に、所定温度に到達したことが検知されれば、制御部7は定着温度に到達したと判断する。尚、保護テープ51が剥がれると検知される温度は一般的に高くなるので、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、検知した温度のうち、低い方の温度に基づいて、定着温度に暖まったことを判断しても良い。
もし、温度センサ5Aと温度センサ5Bのいずれの温度センサ5を用いても定着温度にまで暖まったことを検知できなければ(ステップ♯9のNo)、例えば、ステップ♯8に戻る。一方、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、いずれかの温度センサ5で定着温度到達を検知できれば(ほぼ定着温度にまで暖まったことを検知できれば)(ステップ♯9のYes)、制御部7は、所定温度に到達したことを確認したステップ♯4の時に比べて、温度センサ5Aを用いて検知された温度と、温度センサ5Bを用いて検知された温度のいずれでも、温度が上昇しているかを確認する(ステップ♯10)。
もし、温度センサ5Aと温度センサ5Bで検知された温度のいずれも、温度の上昇が検知されていれば(ステップ♯10のYes)、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5を認定する(ステップ♯11)。保護テープ51が剥がれると、保護テープ51が剥がれていない時に比べ、検知される温度が高くなる。そこで、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、検知した温度が高い方の温度センサ5のサーミスタTHで保護テープ51が剥がれたと認定する(ステップ♯11)。言い換えると、保護テープ51が剥がれると、剥がれていないものに比べ、温度センサ5を用いて検知される温度が高くなる場合、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、認識した温度が高い方の温度センサ5を保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5と認定する。即ち、制御部7は、最も高い温度を検知した温度センサ5で保護テープ51の剥がれが生じたと認める。
一方で、温度センサ5Aと温度センサ5Bで検知された温度のいずれか又は両方で、温度の上昇を確認できなければ(ステップ♯10のNo)、温度センサ5A又は温度センサ5Bから制御部7間での信号線での断線の発生がある可能性がある。例えば、制御部7に入力される電圧(信号)がゼロとなる。言い換えると、断線があるため、温度の上昇が制御部7で検知されないことが考えられる。この場合、加熱ローラ11を定着温度で保つことが困難となり、又、加熱ローラ11の端部で過昇温が発生しても検知できない場合がある。そこで、温度センサ5Aと温度センサ5Bでいずれかで、温度の上昇が検知されなければ、制御部7は、操作パネル6の液晶表示部61やインジケータ62を用いて、定着装置1が故障している旨を通知する(ステップ♯12)。即ち、制御部7は、検知され、認識した各温度に所定値以上の差がある場合、ヒータHを点灯させても、温度上昇を検知しない温度センサ5があれば、故障と判断する。そして、制御部7が故障と判断した場合、操作パネル6は、故障発生を通知する。これにより、使用者に、定着装置1の交換の必要性を認識させることができる。尚、定着装置1が故障している旨が表示されれば、プリンタ100で印刷することはできない。
(検知された温度の補正)
次に、図6に基づき、本発明の第1の実施形態に係る保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含むと認定された温度センサ5を用いて検知された温度の補正の一例を説明する。図6は、本発明の第1の実施形態に係る保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含むと認定された温度センサ5を用いて検知された温度の補正の一例を示すフローチャートである。
尚、本説明は、図5のステップ♯11で保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5が存在すると認定された場合の制御の一例である。ここでは、用紙搬送の片寄り異常検知を含めた、サイズが小さい用紙の印刷時、加熱ローラ11等の両端部分での過昇温防止制御を例に挙げて説明する。尚、温度補正制御は、加熱ローラ11の定着温度維持制御で行われてもよい。又、図6に示すフローチャートは、温度検知の1回当たりの流れを示し、温度検知が行われるごとに、図6のフローチャートが行われる。
まず、図6のスタートは、加熱ローラ11の温度検知の開始時点である。例えば、連続印刷時や、定着温度で保たれるように温度維持を行う際に、加熱ローラ11の温度検知が行われる。
そして、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bの出力電圧(出力信号)の入力を受け、加熱ローラ11の各部の温度を認識する(ステップ♯21)。このとき、例えば、記憶部72のデータテーブルが参照される。次に、制御部7は、図5のステップ♯7で記憶された温度差を読み出す(ステップ♯22)。更に、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む方の温度センサ5を利用して検知され、認識した温度に対し、読み出された温度差を減算することにより補正する(ステップ♯23)。
即ち、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bで検知されたとの温度差が所定値以上ある場合、ヒータHを点灯させて、その後、温度センサ5を用いて検知された全ての温度の上昇を認識できれば、保護テープ51の剥がれが生じたと判断し、保護テープ51の剥がれが生じたと認めた温度センサ5を用いて検知され、認識した温度を補正する。
ここで、保護テープ51が剥がれていない状態の各温度センサ5の出力電圧に基づき、加熱ローラ11の温度が検知される。そして、保護テープ51が剥がれれば、検知される温度が高くなるので、制御部7は、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5を利用して検知され、認識した温度に対し、温度差を減算して補正する。即ち、保護テープ51の剥がれが生じたと判断された場合、制御部7は、保護テープ51の剥がれたと認めた温度センサ5を用いて検知された温度と、保護テープ51の剥がれていない温度センサ5を用いて検知された温度との温度差を記憶部72に記憶させ、保護テープ51が剥がれたと認めた温度センサ5を用いて検知された温度に、記憶された温度差を減算して、補正を行う。これにより、加熱ローラ11の温度を正確に把握することができる。
次に、制御部7は補正後でも温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知された温度の温度差が一定値以上異なるかを確認する(ステップ♯24)。もし、一定値以上異なっていれば(ステップ♯24のYes)、片寄った用紙の搬送が行われていると判断できるので、制御部7は、操作パネル6の液晶表示部61やインジケータ62を用いて、定着装置1が故障している旨を通知する(ステップ♯25)。即ち、補正を行っても、検知された各温度が一定値以上異なる場合、制御部7は、片寄った通紙が行われていることによる定着装置1の故障と判断する。そして、制御部7が故障と判断した場合、操作パネル6は、故障発生を通知する。
尚、一定値とは、加熱ローラ11や加熱ローラ11を駆動させるギア等の駆動機構の耐熱温度等の各要素を勘案して任意に定めることができる。例えば、片寄った用紙の搬送で用紙が通過しない方の温度がこれ以上高くならないように予め定められた温度と、印刷時に適切な定着が行われるように、ヒータHの点消灯を行って維持しようとする温度との差を一定値とすることができる(例えば、10数°C〜数十°C)。又、定着装置1が故障している旨が通知されれば、印刷を続けることは好ましくないので、印刷は中止される。
一方、一定値以上異なっていなければ(ステップ♯24のNo)、問題はないので、温度センサ5Aを用いて検知された温度と、温度センサ5Bを用いて検知された温度を確認して、制御部7は、加熱ローラ11の両端部で過昇温が生じていないか確認する(ステップ♯26)。尚、過昇温が生じているか否かは、加熱ローラ11や加熱ローラ11を駆動させるギア等の駆動機構の耐熱温度等の各要素を勘案し、予め定める温度を超えるか否かにより制御部7は、判断する。過昇温が発生していれば(ステップ♯26のYes)、ヒータHが点灯していれば消灯させる(ステップ♯27→エンド)。過昇温が発生していなければ(ステップ♯26のNo)、特に問題はないので、温度検知制御を終了する(エンド)。その後、例えば、検知され、制御部7で認識された温度に基づき、定着温度よりも温度が低ければヒータHは点灯され、定着温度以上であれば、ヒータHは消灯される。
(第2の実施形態)
次に、図7に基づき、本発明の第2の実施形態に係る保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5の認定制御の一例を説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5の認定制御の一例を示すフローチャートである。尚、本実施形態では、温度センサ5Aと温度センサ5Bと非接触式温度センサ5Cを使用して、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5を認定する制御を説明する。
まず、本実施形態は、第1の実施形態とは、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5の認定の制御を行ううえで、非接触式温度センサ5Cを用いる点で異なる。しかし、例えば、各温度センサ5の設置数、設置位置等、第1の実施形態で説明したプリンタと構成は同様でよい。
まず、本説明でも、主電源投入時の保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5の認定の制御の一例を説明する。そのため、図7に示すフローチャートでのスタートは、プリンタ100の主電源投入時である。メインスイッチ75が投入されると、電源装置73で各種電圧が生成され、制御部7等に供給がなされる。その結果、ウォームアップ動作が開始され(ステップ♯31)、ヒータH点灯(ステップ♯32)、加熱ローラ11と加圧ローラ12の回転(ステップ♯33)がなされるが、これらのステップは、第1の実施形態(ステップ♯1〜3)と同様である。
次に、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、非接触式温度センサ5Cと検知温度の差が少ない(近い)方の温度センサ5(5Aor5B)で、所定温度への到達を検知できたかを確認する(ステップ♯34)。言い換えると、制御部7は、所定温度にまで加熱ローラ11が暖まったことを、非接触式温度センサ5Cと検知温度が近い温度センサ5(5Aor5B)で検知できたかを確認する。ここで所定温度とは、定着温度よりも低い温度である(例えば、100°C〜150°C)点等は、第1の実施形態と同様である。
制御部7は、非接触式温度センサ5Cとの検知温度の差が少ない方の温度センサ5を利用して得られた温度に基づいて判断するので、正確に、加熱ローラ11が所定温度にまで暖まったことを検知することができる。尚、非接触式温度センサ5Cをのみを用いて、加熱ローラ11が所定温度にまで暖まったことを確認しても良い。
もし、所定温度への到達を検知できなければ(ステップ♯34のNo)、例えば、ステップ♯2に戻る。一方、所定温度への到達を検知できれば(ステップ♯34のYes)、制御部7は、加熱ローラ11の両端の温度センサ5、即ち、温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知された温度が所定値以上異なるかを確認する(ステップ♯35)。この点、第1の実施形態のステップ♯5と同様であるので、説明を省略する。
もし、温度センサ5Aと温度センサ5B用いて検知され、制御部7が認識した温度が所定値以上異ならなければ(所定値未満ならば、ステップ♯35のNo)、制御部7は、加熱ローラ11を定着温度にまで暖める(ステップ♯36)。その後、主電源投入時のウォームアップは終了する(エンド)。その後、例えば、制御部7は、省電力モードに移行しない限り、ヒータHのON、OFFを繰り返して、加熱ローラ11の温度を定着温度で維持する制御に移行する。
一方、温度センサ5Aと温度センサ5Bを用いて検知され、制御部7が認識した温度が所定値以上異なれば(ステップ♯35のYes)、制御部7は、温度差を、例えば、記憶部72に記憶させる(ステップ♯37)。即ち、制御部7は、定着装置1への電力供給が開始される主電源の投入後、ヒータHの点灯が開始されてから、いずれかの温度センサ5により所定温度にまで加熱ローラ11が暖められたことを検知したときに、温度差を記憶させる。更に、制御部7は、ヒータHを点灯させて、加熱ローラ11を所定温度から定着温度まで更に暖める(ステップ♯38)。これら、ステップ♯35〜ステップ♯38は、第1の実施形態のステップ♯5〜ステップ♯8と同様である。
又、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、非接触式温度センサ5Cと検知温度の差が少ない(近い)方の温度センサ5(5Aor5B)で、定着温度への到達を検知できたかを確認する(ステップ♯39)。言い換えると、制御部7は、定着温度にまで加熱ローラ11が暖まったことを、非接触式温度センサ5Cと検知温度が近い温度センサ5(5Aor5B)で検知できたかを確認する。
非接触式温度センサ5Cとの検知温度の差が少ない方の温度センサ5を利用して得られた温度に基づき加熱ローラ11が定着温度にまで暖まったことを確認するので、正確に、加熱ローラ11が定着温度にまで暖まったことを検知することができる。尚、非接触式温度センサ5Cのみを用いて、加熱ローラ11が定着温度にまで暖まったことを確認しても良い。
もし、定着温度にまで暖まったことを検知できなければ(ステップ♯39のNo)、例えば、ステップ♯38に戻る。一方、定着温度到達を検知できれば(ほぼ定着温度にまで暖まったことを検知できれば)(ステップ♯39のYes)、制御部7は、所定温度に到達したことを確認したステップ♯4の時に比べて、温度センサ5Aを用いて検知された温度と、温度センサ5Bを用いて検知された温度のいずれでも、温度が上昇しているかを確認する(ステップ♯40)。
もし、温度センサ5Aと温度センサ5Bで検知された温度のいずれでも、温度の上昇が検知されていれば(ステップ♯40のYes)、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5を認定する(ステップ♯41)。
制御部7は、例えば、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、非接触式温度センサ5Cを用いて得られた温度と差が大きい方の温度センサ5を、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含む温度センサ5と認定する。即ち、制御部7は、非接触式温度センサ5Cからの信号に基づき、非接触式温度センサ5Cの検知部分の温度を認識し、非接触式温度センサ5Cを用いて検知され、認識した温度と温度差が最も大きい温度センサ5を、保護テープ51の剥がれが生じた温度センサ5と認める。あるいは、第1の実施形態と同様に、制御部7は、温度センサ5Aと温度センサ5Bのうち、検知した温度が高い方の温度センサ5のサーミスタTHで保護テープ51が剥がれたと認定してもよい(第1の実施形態のステップ♯10)。
一方で、温度センサ5Aと温度センサ5Bで検知された温度のいずれか又は両方で、温度の上昇を確認できなければ(ステップ♯40のNo)、制御部7は、操作パネル6の液晶表示部61やインジケータ62を用いて、定着装置1が故障している旨を通知する(ステップ♯42)。この点、第1の実施形態のステップ♯12と同様である。
尚、本実施形態の保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含むと認定された温度センサ5を用いて検知された温度の補正は、第1の実施形態と同じように行えばよい。言い換えると、図6に示した第1の実施形態と同様に、制御部7は、本実施形態の保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを含むと認定された温度センサ5による検知温度を補正した上で用いればよい。
このようにして、第1、第2の実施形態に示したように、各温度センサ5(温度検知部)を用いて検知され、認識された温度に所定値以上の温度差がある場合、一旦、ヒータHを点灯させ温度の上昇が確かめられる。これにより、制御部7と温度センサ5間の信号線やサーミスタTH(温度検知用素子)での断線等の異常の有無を確認することができる。又、全ての接触式の温度センサ5(温度センサ5A、5B)で温度上昇が確認されれば、断線等の異常ではなく、保護テープ51(保護部材)の剥がれで温度に差が生じていると判断される。更に、制御部7は、保護テープ51の剥がれが生じている温度センサ5を認定し、認定した温度センサ5を用いて検知され、認識した温度を補正する。
これにより、保護テープ51の剥がれが生じても、各温度センサ5で検知される温度を適切なものとできる。又、補正により、各温度センサ5を用いて検知された温度が一定値以上異なることで片寄った用紙搬送に関する故障、エラー等の誤検知もなくなる。又、使用者は、そのまま定着装置1を使用することができる。従って、保護テープの剥がれのみを原因とする定着装置1の交換がなくなり、使用者の費用面の負担が軽減される。又、故障の誤検知による定着装置1の点検のため、画像形成装置の使用不可状態は続かない。
又、温度センサ5では、保護テープ51がある時の状態を基準として温度が検知されるところ、保護テープ51が剥がれた温度センサ5の方が、非接触式温度センサ5Cを用いて検知された温度との温度差は大きくなる場合がある。そこで、非接触式温度センサ5Cを用いて検知され、認識された温度と温度差が大きい温度センサ5を保護テープ51の剥がれが生じた温度センサ5と認定する(特に、第2の実施形態)。これにより、保護テープ51が剥がれた温度センサ5を正確に認定することができる。又、検知された温度の補正も適切に行われる。又、保護テープ51の剥がれが生ずると、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHは、直接、加熱体と接し、保護テープ51の剥がれが生じたサーミスタTHの温度は、保護テープ51が剥がれていないサーミスタTHに比べ、加熱ローラ11の温度に限りなく近づく。そのため、保護テープ51が剥がれたサーミスタTHを用いて検知された温度は、一般に、高くなる。そこで、最も検知温度が高い温度センサ5で保護テープ51の剥がれが生じたと認定する(特に、第1の実施形態)。これにより、保護テープ51が剥がれた温度センサ5を正確に認定することができる。又、検知された温度の補正も適切に行われる。
又、各温度センサ5を用いて検知された各温度の温度差が把握され、記憶部72に記憶される。そして、温度の補正は、記憶した温度差を減算して行われる。従って、保護テープ51が剥がれた場合、検知される温度が高くなる場合、温度差を減算することで、適正な温度に補正することができる。又、サーミスタの抵抗値の変化率が温度によって異なる等の要因で、主電源投入後、ヒータHを点灯してすぐでは、検知され、制御部7に認識される各温度に大きな差が現れないことがある。そこで、所定温度にまで温度が上昇したことを、いずれかの温度センサ5を用いて検知してから記憶部72に温度差が記憶される。これにより、保護テープ51が剥がれたことによって検知される温度のずれを適切に把握することができる。
又、検知された温度に所定値以上の温度差がある場合、一旦、ヒータHを点灯させて全ての検知された温度の上昇が確かめられる。これにより、検知された各温度の差が保護テープ51の剥がれにより生じたものではなく、断線等の他の要因と認められる場合に、定着装置1が故障と判断される。又、補正を行っても、検知され、認識した温度が一定値以上異なる場合、片寄った用紙の搬送が行われていることが考えられる。そこで、補正を行っても、温度が一定値以上異なる場合、加熱体の一部の過昇温が生じ得る片寄った用紙搬送が行われていると判断することができる。又、通知部が故障の発生を使用者に通知するので、使用者に、定着装置1を使用するべきではなく、印刷を行うべきではないと認識させることができる。又、保護テープ51が剥がれただけで故障、エラー発生と誤検知されることがない画像形成装置を提供することができる。又、保護テープ51が剥がれたことのみを理由とした、故障発生の誤検知による定着装置1の交換がなく、メンテナンスが容易でランニングコストも低く抑えられ、使用者にとって有益な画像形成装置を提供することができる。
次に、他の実施形態を説明する。上記の実施形態では、加熱ローラ11と加圧ローラ12からなるローラ式の定着装置1を例に挙げて説明した。しかし、例えば、ベルトやフィルムを2本の回転体で張架し、そのうちの1本の回転体に加圧ローラ12を圧接させる形式の定着装置1にも適用することができる。この形式の定着装置1では、ベルトやフィルムが加熱され、ベルトやフィルムと加圧ローラ12のニップにトナー像が転写された用紙が進入する。従って、ベルトやフィルムが加熱体となり、温度センサ5は、ベルトやフィルムの温度を検知するために配されることになる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。