本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
まず、本発明の一実施形態としてのロボットハンドを構成要素とするロボットの構成について説明する。
図1に示されているロボットRは脚式移動ロボットであり、人間と同様に、基体B0と、基体B0の上方に配置された頭部B1と、基体B0の上部に上部両側から延設された左右の腕体B2と、左右の腕体B2のそれぞれの先端に設けられているハンド1と、基体B0の下部から下方に延設された左右の脚体B4とを備えている。なお、ロボットRは脚式移動ロボットのみならず、ハンド1の位置および姿勢を変化させるための腕体B2に相当する機構を備えているあらゆる種類のロボットであってもよい。
ロボットRはその動作を制御する制御装置2を備えている。制御装置2はロボットRの内部ネットワークを通じて接続された主制御ユニットおよび一または複数の副制御ユニットより構成される分散制御装置であってもよい。
基体B0はヨー軸回りに相対的に回動しうるように上下に連結された上部および下部により構成されている。頭部B1は基体B0に対してヨー軸回りに回動する等、動くことができる。頭部B1には、ロボットRの前方を撮像範囲とするCCDカメラ、赤外線カメラ等、種々の周波数帯域における光を感知しうる左右一対の頭カメラC1が搭載されている。基体B0の下部には、ロボットRの前方下方に向けて発せられた近赤外レーザー光の物体による反射光を検知することによりこの物体の位置や方位等を測定するための腰カメラ(アクティブセンサ)C2が搭載されている。
腕体B2は第1腕体リンクB22と、第2腕体リンクB24とを備えている。基体B0と第1腕体リンクB21とは肩関節機構(第1腕関節機構)B21を介して連結され、第1腕体リンクB22と第2腕体リンクB24とは肘関節機構(第2腕関節機構)B23を介して連結され、第2腕体リンクB24とハンド1とは手首関節機構(第3腕関節機構)B25を介して連結されている。肩関節機構B21はロール、ピッチおよびヨー軸回りの回動自由度を有し、肘関節機構B23はピッチ軸回りの回動自由度を有し、手首関節機構B25はロール、ピッチ、ヨー軸回りの回動自由度を有している。
脚体B4は第1脚体リンクB42と、第2脚体リンクB44と、足部B5とを備えている。基体B0と第1脚体リンクB42とは股関節機構(第1脚関節機構)B41を介して連結され、第1脚体リンクB42と第2脚体リンクB44とは膝関節機構(第2脚関節機構)B43を介して連結され、第2脚体リンクB44と足部B5とは足関節機構(第3脚関節機構)B45を介して連結されている。
股関節機構B41はロール、ピッチおよびロール軸回りの回動自由度を有し、膝関節機構B43はピッチ軸回りの回動自由度を有し、足関節機構B45はロールおよびピッチ軸回りの回動自由度を有している。股関節機構B41、膝関節機構B43および足関節機構B45は「脚関節機構群」を構成する。なお、脚関節機構群に含まれる各関節機構の並進および回転自由度は適宜変更されてもよい。また、股関節機構B41、膝関節機構B43および足関節機構B45のうち任意の1つの関節機構が省略された上で、残りの2つの関節機構の組み合わせにより脚関節機構群が構成されていてもよい。さらに、脚体B4が膝関節とは別の第2脚関節機構を有する場合、当該第2脚関節機構が含まれるように脚関節機構群が構成されてもよい。足部B5の底には着床時の衝撃緩和のため、特開2001−129774号公報に開示されているような弾性素材B52が設けられている。
〔ハンドに関する説明〕
ここで、ハンド1の構成について説明する。
ハンド1は、手の平部10と、手の平部10から延設されている5本の指機構11〜15とを備えている。手の平部10は、各指機構を連結支持するフレーム101を備え、手の平部10の表側が手の甲とされ裏側が手の平とされる。図3は、ハンド1の手の平側を示している。手の平部10は手の平部表皮部材102により被覆されている。第1指機構11、第2指機構12、第3指機構13、第4指機構14および第5指機構15のそれぞれは、人間の手の5本の指、すなわち、拇指、示指、中指、環指および小指のそれぞれに相当する。指機構11〜15のそれぞれは関節を露出させて指表皮部材(図示略)により被覆されている。
〔第1指機構に関する説明〕
第1指機構11は、図2に模式的に示されているように手の平部10に固定されているリンク部材からCM1関節、CM2関節、MP関節およびIP関節を順に介して接続されている複数の指リンク部材を備えている。
CM1関節およびCM2関節は回動自由度「2」の「手首中手関節機構」を構成する。CM1関節およびCM2関節は相互に直交または略直交する軸線回りに回動する。MP関節は回動自由度「1」の「拇指中手指節関節機構」を構成する。IP関節は回動自由度「1」の「拇指指節間関節機構」を構成する。CM2関節、MP関節およびIP関節は相互に平行または略平行な軸線回りに回動する。
第1指機構11はCM2関節、MP関節およびIP関節の回動により屈伸運動し、たとえば、手の平部10の手の平側に向かって折れ曲がる等の動作が可能とされている。CM1関節は第1指機構11を手の平側に対向するように回動させる。
〔第2〜第5指機構に関する説明〕
指機構11〜15のそれぞれは、図2に模式的に示されているように手の平部10に固定されているリンク部材からMP1関節、MP2関節、PIP関節およびDIP関節を順に介して接続されている複数の指リンク部材を備えている。
MP1関節およびMP2関節は回動自由度「2」の「中手指節関節機構」を構成する。MP1関節およびMP2関節は相互に直交する軸線回りに回動する。PIP関節は回動自由度「1」の「近位指節間関節機構」を構成する。DIP関節は回動自由度「1」の「遠位指節間関節機構」を構成する。MP2関節、PIP関節およびDIP関節は相互に平行または略平行な軸線回りに回動する。
指機構12〜15のそれぞれはMP2関節、PIP関節およびDIP関節の回動により屈伸運動し、たとえば、手の平部10の手の平側に向かって折れ曲がる等の動作が可能とされている。MP1関節は、指機構12〜15が相互に近接または離間するように指機構11〜15のそれぞれを揺動させ、人間にたとえると手を広げる等の動作が可能とされている。
〔センサの説明〕
指機構11〜15のそれぞれは、図3および図4または図5に示されているように、6軸力センサS1を備えている。6軸力センサS1は、各指機構の指先部材に傾斜する姿勢で取付けられている。6軸力センサS1は、各指機構の指先部材に作用する6軸力、すなわち、互いに直交する3軸(x軸、y軸、z軸)方向の並進力と各軸回りのモーメントとを測定する。そして、6軸力センサS1から出力される6軸力の測定値に基づいて各指機構における力の強弱および向き等が制御される。
手の平部10の手の平側における複数の箇所に、各箇所における荷重または圧力に応じた信号を出力する圧力センサS2が設けられている。同様に指機構11〜15のそれぞれの指腹側の複数個所に、各箇所における荷重または圧力に応じた信号を出力する圧力センサS2が設けられていてもよい。
〔第1種の指機構(器用指)および第2種の指機構(力指)に関する説明〕
5つの指機構11〜15は能動的な動きの自由度の高低に応じて第1種の指機構と、第2種の指機構とに区分されている。第1指機構11、第2指機構12および第3指機構13は当該自由度が高い「第1種の指機構」に区分されている。第4指機構14および第5指機構15は第1種の指機構よりも当該自由度が低い「第2種の指機構」に区分されている。
〔第1種の指機構の説明〕
〔第1指機構の構成〕
第1種の指機構に区分されている第1指機構11は、図4に示されているように、CM2関節の回動軸CM21(手首中手関節機構の第2の回動軸)を回動させる第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)と、MP関節の回動軸MP1を回動させる第2の従動流体圧シリンダ32(MP)とを備えている。
第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)は、CM1関節の回動軸(手首中手関節の第2の回動軸)とされており、回動自在に前記手の平部10のフレーム101に支持されている。
このように、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)をCM1関節回動軸として兼用することにより、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)とCM1関節の回動軸とを別々に設けた場合に比べてコンパクトとなる。しかも、CM1関節の回動に伴う第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)の揺動は全くなく、その揺動スペースが不要となるので極めてコンパクトに構成することができる。
第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のシリンダ本体321(MP)は、CM2関節の回動軸CM21を介して第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)に回動自在に連結されている。
第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のシリンダ本体321(MP)に流体を供給する配管324(MP)は、CM2関節の回動軸CM21の内部に収容されている。これにより、CM2関節の回動時に配管324(MP)が邪魔にならず、第1指機構11の屈伸動作を円滑に行うことができる。
MP関節には連結部材IPL1を介してIP関節が連結されている。IP関節の回動軸IP1には、前記指先部材が回動自在に連結されている。連結部材IPL1は、その一端がMP関節の回動軸MP1に回動自在に連結され、他端がIP関節の回動軸IP1に連結されている。
さらに、MP関節とIP関節との間には、リンク部材IPL2(リンク機構)が設けられている。リンク部材IPL2は、第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のシリンダ本体321(MP)と指先部材の6軸力センサS1を支持する支持部材IPL3とを連結する。
第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)は、シリンダ本体321(CM2)内部に流体が供給されることによりピストン322(CM2)が摺動し、ピストンロッド323(CM2)が伸縮してCM2関節を回動させる。これにより、第2指機構12がCM2関節において屈伸する。
第2の従動流体圧シリンダ32(MP)は、シリンダ本体321(MP)内部に流体が供給されることによりピストン322(MP)が摺動し、ピストンロッド323(MP)が伸縮してMP関節を回動させる。このとき、MP関節とIP関節とが、連結部材IPL1とリンク部材IPL2とにより連結されていることにより、第2の従動流体圧シリンダ32(MP)の動きによるMP関節の回動に追従してIP関節が回動する。
IP関節は、第2の従動流体圧シリンダ32(MP)によるMP関節の回動に連動するように構成されているので、人間の指の動きに近い動作が得られるだけでなく、IP関節を駆動するためのシリンダ等が不要となり、第1指機構11を軽量に構成することができる。
以上の構成により、第1指機構11は、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)および第2の従動流体圧シリンダ32(MP)のピストンロッド323(CM2),323(MP)を伸長させることによりを折り曲げ状態となり、ピストンロッド323(CM2),323(MP)を収縮させることにより延ばし状態となる。
第1指機構11のCM1関節は、図3に示されているように、各指機構の配列方向に沿ってピストンロッド323(CM1)が伸縮する第3の従動流体圧シリンダ32(CM1)により回動される。第1指機構11は、第3の従動流体圧シリンダ32(CM1)のピストンロッド323(CM1)を伸長させることにより、手の平部10の手の平側に回動し、第3の従動流体圧シリンダ32(CM1)のピストンロッド323(CM1)を収縮させることにより第2指機構12に隣り合う方向に回動する。
図4に示されているように、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)への流体の供給は、CM1関節の回動軸である第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)の軸受け部101の内部に形成された流体路32(CM2)4を介して行われる。これにより、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)を円滑に回動させることができ、CM1関節の回動により第1指機構11が円滑に動かされうる。
図3および図4に示されているように、CM1関節、CM2関節およびMP関節のそれぞれにはコイルばね(ねじりばね)CM12、CM22およびMP2のそれぞれが設けられている。MP関節およびCM2関節の各コイルばねMP2,CM22は、第1指機構11を延ばし方向に付勢する。CM1関節のコイルばねCM12は、第1の従動流体圧シリンダ32(CM2)のシリンダ本体321(CM2)の外周を包囲するようにして設けられ、第1指機構11を第2指機構12に隣り合う方向に回動する方向に付勢する。言い換えれば、各コイルばねCM12、CM22およびMP2の付勢方向は、3つの従動流体圧シリンダ32(CM1)、32(CM2)および32(MP)の各ピストンロッド323(CM1)、323(CM2)および323(MP)の収縮方向と同じ方向とされている。
〔第2指機構の構成〕
第2指機構12は、図5に示されているようにMP2関節の回動軸MP21(中手指節関節の第1の回動軸)を回動させる第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)と、PIP関節の回動軸PIP1を回動させる第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)とを備えている。
第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)のシリンダ本体321(MP2)は、人間の中手骨に相当し、MP1関節の回動軸MP11(中手指節関節機構の第1の回動軸)により回動自在に前記手の平部10のフレーム101(図1参照)に支持されている。第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)は、人間の基節骨に相当し、MP2関節の回動軸MP21を介して第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)に回動自在に連結されている。
第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)に流体を供給する配管324(PIP)は、MP2関節の回動軸MP21の内部に収容されている。これにより、MP2関節の回動時に配管324(PIP)が邪魔にならず、第2指機構12の屈伸動作を円滑に行うことができる。
また、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)を第2指機構12の長手方向に沿ってMP2関節とPIP関節との間に配設することにより、第2指機構12をコンパクトに構成することができる。
PIP関節には、人間の中節骨に相当する連結部材DIPL1を介してDIP関節が連結されている。DIP関節の回動軸DIP1には、前記指先部材に連設された6軸力センサS1を支持する支持部材DIPL2が回動自在に連結されている。連結部材DIPL1は、その一端がPIP関節の回動軸PIP1に回動自在に連結され、他端がDIP関節の回動軸DIP1に連結されている。
さらに、PIP関節とDIP関節との間には、リンク部材DIPL3(リンク機構)が設けられている。リンク部材DIPL2は、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のシリンダ本体321(PIP)と指先部材の6軸力センサS1を支持する支持部材DIPL2とを連結する。
第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)は、シリンダ本体321(MP2)内部に流体が供給されることによりピストン322(MP2)が摺動し、ピストンロッド323(MP2)が伸縮してMP2関節を回動させる。これにより、第2指機構12がMP2関節を介して屈伸する。
第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)は、シリンダ本体321(PIP)内部に流体が供給されることによりピストン322(PIP)が摺動し、ピストンロッド323(PIP)が伸縮してPIP関節を回動させる。このとき、PIP関節とDIP関節とが、連結部材DIPL1とリンク部材DIPL3とにより連結されているので、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)によるPIP関節の回動に追従してDIP関節が回動する。
DIP関節は、第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)によるPIP関節の回動に連動するように構成されているので、人間の指の動きに近い動作が得られるだけでなく、DIP関節を駆動するためのシリンダ等が不要となり、第2指機構12を軽量に構成することができる。
以上の構成により、第2指機構12は、第1の従動流体圧シリンダ32(MP2)および第2の従動流体圧シリンダ32(PIP)のピストンロッド323(MP2),323(PIP)を伸長させることにより折り曲げ状態となり、ピストンロッド323(MP2),323(PIP)を収縮させることにより延ばし状態となる。
第2指機構12のMP1関節は、図3に示されているように、各指機構の配列方向に沿ってピストンロッド323(MP1)が伸縮する第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)により回動される。第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)は、ピストンロッド323(MP1)を伸長させることにより第2指機構12を第3指機構13に近接する方向に揺動させ、ピストンロッド323(MP1)を収縮させることにより第2指機構12を第3指機構13から離反する方向に揺動させる。
図5に示されているように、MP1関節、MP2関節およびPIP関節のそれぞれにはコイルばね(ねじりばね)MP12、MP22およびPIP2のそれぞれが設けられている。PIP関節およびMP2関節の各コイルばねPIP2,MP22は、第2指機構12を延ばし方向に付勢する。MP1関節のコイルばねMP12は、第2指機構12を第3指機構13から離反させる方向に付勢する。言い換えれば、各コイルばねMP12、MP22およびPIP2の付勢方向は、3つの従動流体圧シリンダ32(MP1)、32(MP2)および32(PIP)のピストンロッド323(MP1)、323(MP2)および323(PIP)の収縮方向と同じ方向とされている。
以上、第1種の指機構とされる第2指機構12の構成を詳しく述べたが、第1種の指機構とされる第3指機構13の構成も第2指機構12と同じである。
〔第2種の指機構の構成〕
第2種の指機構に区分されている第4指機構14および第5指機構15のそれぞれは、第2指機構12の上述した構成のうち、第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)が省略されていることを除き、第2指機構12と同じ構成である。第4指機構14および第5指機構15は、第3の従動流体圧シリンダ32(MP1)が省略されているため、MP1関節が力動作に応じて自在に回動し、MP1関節のコイルばねMP12の付勢により所定位置に自然復帰するようになっている。すなわち、第2種の指機構はこの分だけ能動的な動きの自由度が第1種の指機構よりも低くなっている。
〔駆動装置の構成〕
ハンド1の駆動機構の構成について説明する。駆動機構は、図6に示されている複数の駆動流体圧シリンダ(マスタシリンダ)31と、複数の従動流体圧シリンダ(スレーブシリンダ)32(i)(i=CM1,CM2,MP,MP1,MP2,PIP)とを構成要素としている(図3、図4および図5参照)。駆動流体圧シリンダ31は従動流体圧シリンダ32(i)のそれぞれに対応して合計13個設けられている。駆動流体圧シリンダ31とハンド1の従動流体圧シリンダ32(i)とは流体圧伝達管33(配管)を介して各別に接続される。流体圧伝達管33は流体圧力に応じて径または断面積が変化しうる程度の柔軟性を有している。
複数の駆動流体圧シリンダ31のそれぞれはロボットRの適当な箇所(たとえば基体B0または腕体B2の内部空間)にユニットとしてあるいは分散して配置されている。
駆動流体圧シリンダ31は、内部に流体を収容するシリンダ本体311と、シリンダ本体311の内部を摺動するピストン(マスタピストン)312と、ピストン312に連設された中空のピストンロッド313とを備えている。さらに、駆動流体圧シリンダ31は、ピストンロッド313の軸線に沿ってピストンロッド313内に挿入されるボールネジ314と、ピストンロッド313の内部に固設されてボールネジ314に螺合する螺合部材315と、ボールネジ314を回転駆動することにより螺合部材315を介してピストンロッド313を進退させるモータ30(回転駆動装置)と、モータ30の作動量を検出するためのエンコーダS3とを備えている。駆動流体圧シリンダ31には、シリンダ本体311の内部の流体圧力に応じた信号を出力する圧力センサS4が設けられている。
モータ30は、回転伝達手段としてのプーリ301,303に掛けわたされたベルト302を介してボールネジ314を回転駆動する。これにより、モータ30の出力軸300とピストンロッド313との軸線が平行となり、モータ30をシリンダ本体311に隣設することができてコンパクトに形成される。
この構成により、図7に模式的に示されているように、マスタピストン312が前進駆動されることにより、駆動流体圧シリンダ31から流体が流出し、配管33を介してそれに対応する従動流体圧シリンダ32(i)に流体が流入し、従動流体圧シリンダ32(i)のピストン(スレーブピストン)322(i)が前進することにより指機構11〜15のそれぞれが駆動される。これとは逆にマスタピストン312が後退駆動されることにより、駆動流体圧シリンダ31から流体が流入し、配管33を介してそれに対応する従動流体圧シリンダ32(i)から流体が流出し、従動流体圧シリンダ32(i)のピストン322(i)が後退することにより指機構11〜15のそれぞれが駆動される。
[ハンドの動作制御]
制御装置2はコンピュータ(CPU、ROMおよびRAM等のメモリ、ならびに、A/D回路およびI/O回路等の回路により構成されている。)により構成されている。制御装置2によれば、CPUによりメモリから制御プログラムが適宜読み出され、読み出されたプログラムにしたがってハンド1の動作が制御される。
制御装置2はロボットRに搭載されている複数のアクチュエータ4のそれぞれの動作を制御することにより、腕体B2の各関節機構における動き、および、脚体B4の各関節における動き等を制御する。制御装置2はマスタピストン312の位置を制御することにより指機構11〜15のそれぞれの動きまたは力を制御する。
制御装置2は図9に示されているように第1演算処理要素21と、第2演算処理要素22とを備えている。
第1演算処理要素21は、指機構11〜15のそれぞれの先端部に設けられている6軸力センサS1の出力信号に基づき、指機構11〜15のそれぞれの先端部における物体との当接位置、物体に与える圧力および圧力の方向を測定する。第1演算処理要素21は、手の平部10の手の平側における複数個所に配置されている複数の圧力センサS2のそれぞれの出力信号等に基づき、手の平部10における荷重中心の位置と、手の平部10にかかる荷重とを測定する。第1演算処理要素21は、エンコーダS3および流体圧力センサS4のそれぞれの出力信号に基づき、従動流体圧シリンダ32(i)のピストン322(i)の位置、さらには、指機構11〜15のそれぞれの各関節iにおける回動角度を測定する。
第2演算処理要素22は、物体がハンド1によって把持されることにより複数の指機構11〜15および手の平部10のそれぞれに当接している状態において、手の平部10における荷重中心の測定位置が目標手の平領域PAに含まれるとともに、手の平部10にかかる荷重の測定値が目標荷重範囲に含まれるように、複数の指機構11〜15のそれぞれから物体にかける圧力を制御する。第2演算処理要素22は、指機構11〜15のそれぞれの各関節iにおける回動角度の測定結果に基づき、当該回動角度、ひいては、指機構11〜15のそれぞれの位置および姿勢を制御する。
前記構成のロボットR、ハンド1および制御装置2の機能について説明する。
[基本制御]
指機構11〜15のそれぞれの各関節における回動角度(スレーブ関節角度)θslvは、エンコーダS3および流体圧力センサS4のそれぞれの出力信号に基づき、第1演算処理要素21により関係式(1)〜(6)にしたがって測定される。
説明のため、図7に示されているように、指機構11〜15のそれぞれを構成する指リンク部材の揺動軸の方向がZ方向として定義され、従動ピストン322(i)の進退方向がX方向として定義されている直交座標系を考える。
回動角度(スレーブ関節角度)θslvは関係式(1)により表現される。
θslv=φ+tan-1(h/Px)−θ0 (θ0>0),
φ=cos-1{(Px2+(L2)2+h2−(L1)2)/(2L(Px2+h2)1/2)}−θ0 ‥(1)
「h」はクランクオフセットであり、指リンク部材の揺動軸と、ロッド323(i)の後端揺動軸とのY方向の間隔である。「L1」はロッド323(i)の後端揺動軸と先端揺動軸との間隔(ロッド長)である。「L2」は指リンク部材の揺動軸と、ロッド323(i)の先端揺動軸との間隔(クランク長)である。クランクオフセットh、ロッド長L1およびクランク長L2の値はメモリに保存されている。
「Px」はスレーブピストン322(i)の位置(スレーブピストン位置)Pxであり、関係式(2)により表現される。
Px=P0−Strkslv ‥(2)
「P0」はスレーブピストン322(i)の基準位置である。
「Strkslv」はスレーブピストン322(i)の基準位置p0からの変位量(スレーブストローク)であり、関係式(3)により表現される。
Strkslv=Strkmst・(Smst/Sslv)−StrkOffsetmst+StrkExpslv ‥(3)
「Smst」はマスタピストン312の断面積である。「Sslv」はスレーブピストン322(i)の断面積である。「StrkOffsetmst」はマスタピストン312のオフセット(マスタストロークオフセット)である。断面積SmstおよびSslvまたはその比率(Smst/Sslv)、ならびに、マスタストロークオフセットStrkOffsetmstの値はメモリに保存されている。
「Strkmst」はマスタピストン312の変位量(マスタストローク)であり、エンコーダS3の出力信号に応じたモータ30の回動位置MotPosmstに基づき、関係式(4)にしたがって算定されうる。
Strkmst=MotPosmst・Rr ‥(4)
「Rr」はプーリ301,303およびベルト302により構成されている減速機構(図6参照)の減速比であり、メモリにあらかじめ保存されている。
「StrkExpslv」は配管33の断面積変化または膨張もしくは収縮によるスレーブストローク変位量であり、スレーブピストン323(i)の断面積Sslvおよび配管膨張量Exppipに基づき、関係式(5)にしたがって算定されうる。
SstrkExpslv=Exppip/Sslv ‥(5)
「Exppip」は配管膨張量(体積変化量)であり、流体圧力センサS4の出力信号に応じた測定流体圧Prsactに加えて、油圧目標値Prscmd、配管33の柔軟性の高低を表わす係数Kpipおよび配管33の長さLpipに基づき、関係式(6)にしたがって表現される。油圧目標値Prscmd、配管33の柔軟性の高低を表わす係数Kpipおよび配管33の長さLpipはメモリに保存されている。
Exppip=(Prscmd−Prsact)・Kpip・Lpip ‥(6)
第1演算処理要素21により前記のように測定されたスレーブ関節角度θslvに加えて、後述するように6軸力センサS1および圧力センサS2のそれぞれの出力信号に基づき、第2演算処理要素22により指機構11〜15のそれぞれの動きまたは力が制御される。
[応用制御]
第1演算処理要素21により、手の平部10の位置および姿勢、ならびに、ハンド1を用いた把持対象である物体の位置、姿勢、形状およびサイズ等、当該物体を把持するために必要な情報が認識される(図9/STEP002)。
ロボットRの物体把持動作の制御のため、ロボット座標系のほか、手首座標系、ハンド座標系および物体座標系が定義される。「ロボット座標系」は、世界座標系におけるロボットRの位置および姿勢を定義するために定義される。「手首座標系」は、たとえば、手首関節機構B25の代表点を原点とし、かつ、手首関節機構B25の3つの回動軸を3つの直交軸として定義される。「ハンド座標系」は、たとえば、手の平部10の手の平面上の一点を原点とし、手の平面に平行な一対の直交軸をx軸およびy軸とし、かつ、手の平面に垂直な軸をz軸として定義される。「物体座標系」は、たとえば、物体の代表点を原点として定義される。ロボット座標系に対する手首座標系およびハンド座標系のそれぞれの位置および姿勢は、肩関節機構B21、肘関節機構B23および手首関節機構B25の屈曲角度等、ロボットRの動作により変動する因子、ならびに、メモリに保存されている第1腕体リンクB22および第2腕体リンクB22の長さ等、ロボットRのサイズを表わす一定の因子に基づき、順運動学計算法にしたがって算出されうる。
手の平部10の位置および姿勢は腕体B2の各関節機構の屈曲角度を測定するためのロータリエンコーダ等、ロボットRの動作状態に応じたセンサからの出力信号に基づいて測定される。手の平部10の位置および姿勢はロボット座標系における座標値またはオイラー角によって認識される。ロータリエンコーダ等の動作状態センサの出力信号に基づき、ロボットRの腕体B2および脚体B4のそれぞれの位置および姿勢も認識されうる。
頭カメラC1および腰カメラC2のうち一方または両方を通じて得られた画像解析により、固定座標系(ロボットRの動きとは無関係に固定されている座標系)における基体B0の位置および姿勢が認識される。
エンコーダS3の出力信号に応じたモータ30の作動量に基づき、指機構11〜15のそれぞれの先端部の位置および姿勢が認識される。各指機構の先端部の位置は、エンコーダS3の出力信号に応じた各関節機構の屈曲角度、ハンド座標系において不変の各指機構の根元部の位置、および、各指機構の指節リンクの長さ等に基づき、順運動学計算法にしたがって、算出されたハンド座標系における位置および姿勢として定義される。
物体の位置、姿勢、形状およびサイズは、頭カメラC1および腰カメラC2のうち一方または両方により撮像されたロボットRの周辺範囲の画像に基づいて認識される。物体の位置および姿勢はロボット座標系における座標値およびオイラー角によって認識される。ロボット座標系にける物体の位置および姿勢は、ロボットRの位置および姿勢(たとえば基体B0の位置および基本前額面の姿勢)が変化することにより変化するので、逐次認識または測定される。なお、認識対象となる情報の一部または全部がロボットRの外部にある端末装置から制御装置2に入力されることにより、当該入力情報が第1演算処理要素21により認識されてもよい。
また、第1演算処理要素21により認識された物体の位置等に基づき、第2演算処理要素22によってアクチュエータ4の動作が制御されることにより、ハンド1により物体を把持するためのロボットRの予備的動作が制御される(図9/STEP004)。具体的には、必要に応じて脚体B4が動かされることによりロボットRの位置および姿勢が調節される。その上で、腕体B2が動かされることにより手の平部10が当該物体を把持するのに適当な位置および姿勢に調節される。
さらに、第1演算処理要素21により認識された物体の位置および姿勢等に基づき、第2演算処理要素22により指機構11〜15のそれぞれの動きおよび必要に応じて腕体B2の動きが制御されることによって物体がハンド1により把持される(図9/STEP006)。
たとえば、図10(a)に示されているように手の平部10の位置および姿勢が維持されたまま、指機構11のうち第1種の指機構11〜13により、ハンド1により物体がつままれる。さらに、第1種の指機構11〜13に加えて第2種の指機構14〜15により、物体が手の平部10に押し付けられる。この結果、図10(b)に示されているように物体が指機構11〜15のうち少なくとも一部ならびに手の平部10のそれぞれに当接した状態で、当該物体がハンド1により把持される。
第1演算処理要素21により、手の平部10に配置されている複数の圧力センサS2の出力信号に基づき、手の平接触面積Sが基準値CA以上であるか否かが判定される(図9/STEP008)。手の平接触面積Sは有意の(たとえば所定微小値以上の)圧力に応じた信号(圧力信号)を出力し、かつ、相互に隣接してひとまとまりのグループまたはクラスタを構成する複数の圧力センサS2の個数、または、個数および配置態様に基づいて算定される。
ここで、図11に示されているように複数の圧力センサS2が配置されている状況を考える。図11において、圧力信号を出力している圧力センサS2が「●」により示される一方、圧力信号を出力していない圧力センサS2が「○」により示されている。図11(a)に示されているように圧力信号を出力し、かつ、相互に隣接してひとまとまりのグループを構成する圧力センサS2の数は「25」であり、この数値またはこの数値に比例する数値が手の平接触面積Sとして算出される。図11(b)に示されているように圧力信号を出力している圧力センサS2の数は「7」であるものの、相互に隣接してひとまとまりの最大のグループを構成する圧力センサS2の数は「4」であり、この数値またはこの数値に比例する数値が手の平接触面積Sとして算出される。基準値CAがたとえば「15」である場合、図11(a)に示されている状態では手の平接触面積Sは基準値CA以上であると判定される一方、図11(b)に示されている状態では手の平接触面積Sは基準値CA未満であると判定される。
手の平接触面積Sが基準値CA未満であると判定された場合(図9/STEP008‥NO)、一連の処理が終了する。
手の平接触面積Sが基準値CA以上であると判定された場合(図9/STEP008‥YES)、各指機構の先端部に設けられている6軸力センサS1の出力信号に基づき、第1演算処理要素21により指機構11〜15のそれぞれの指位置P1〜P5のそれぞれが測定される(図9/STEP010)。第i指機構(i=1〜5)の指位置Piを「第i指位置」という。
具体的には、まず、6軸力センサS1の出力信号に基づいて第i指機構と物体との当接箇所が算出される。第i指機構に対応するエンコーダS3の出力信号に基づき、順運動学モデルにしたがって、ロボット座標系等の基準座標系における第i指機構の先端部の位置および姿勢が算出されうる。その上で、当該当接箇所を頂点とし、かつ、当該当接箇所に応じて姿勢が定まる軸を有する摩擦円錐が定義される。
これにより、図12(a)(b)に斜線付三角形により表現されているような摩擦円錐が定義される。なお、図12においては、図示の簡単のため第1指機構11が省略されているが、第1指機構11が物体に当接していないことが表現されているわけではない。
さらに、第i指機構の先端部における物体との当接位置から、第i指機構が物体に当接するように動かされる際の当該先端部の変位方向に伸びる力ベクトルが、摩擦円錐を通過していることを要件として、当該力ベクトルと手の平部10の手の平側表面との交点が第i指位置として算出される。第i指機構に対応するエンコーダS3の出力信号と、手首関節機構等の屈曲角度に応じたセンサの出力信号とに基づき、順運動学モデルにしたがって、ロボット座標系等の基準座標系における第i指機構の先端部の変位方向が算出されうる。
図12(a)には、指機構12〜15のすべてについて力ベクトル(矢印参照)が摩擦円錐を通っている状況が示されている。この状況ではすべての指位置P2〜P5が算出されうる。
図12(b)には、指機構12〜15のうち第3指機構13および第4指機構14については力ベクトル(矢印参照)が摩擦円錐を通っている一方、第2指機構12および第5指機構15については力ベクトルが摩擦円錐から外れている状況が示されている。この状況では、第3指位置P3および第4指位置P4が算出される一方、第2指位置P2および第5指位置P5は算出されない。
続いて、前記のように算出された指位置に基づき、第2目標手の平領域PAが設定される(図9/STEP012)。
図13(a)〜(e)には少なくとも第1指位置P1が測定された状態が示されている。
図13(a)には、第1指位置P1と、その他の4つの指位置P2〜P5とが測定された状態が示されている。この状態では、第1指位置P1と、第2指位置P2および第3指位置P3を結ぶ線分の中間位置P23と、第4指位置P4および第5指位置P5を結ぶ線分の中間位置P45とを頂点とする三角形が定義される。そして、当該三角形の長辺(第1基準線分)L1に対向する頂点から、当該長辺L1まで伸びる垂線(第2基準線分)L2の中間位置を中心とし、かつ、当該三角形の内側に収まる円形の領域が目標手の平領域PAとして設定される。
図13(b)には、第1指位置P1と、その他の3つの指位置P2〜P4とが測定された状態が示されている。この状態では、第1指位置P1と、第2指位置P2および第3指位置P3を結ぶ線分の中間位置P23と、第4指位置P4とを頂点とする三角形が定義される。そして、当該三角形の長辺(第1基準線分)L1に対向する頂点から、当該長辺L1まで伸びる垂線(第2基準線分)L2の中間位置を中心とし、かつ、当該三角形の内側に収まる円形の領域が目標手の平領域PAとして設定される。なお、3つの指位置に第4指位置P4および第5指位置P5が含まれている場合、両指位置を結ぶ線分の中間位置P45を頂点の1つとする三角形が定義される。
図13(c)には、第1指位置P1と、その他の2つの指位置P2〜P3とが測定された状態が示されている。この状態では、第1指位置P1、第2指位置P2および第3指位置P3を頂点とする三角形が定義される。そして、当該三角形の長辺(第1基準線分)L1に対向する頂点から、当該長辺L1まで伸びる垂線(第2基準線分)L2の中間位置を中心とし、かつ、当該三角形の内側に収まる円形の領域が目標手の平領域PAとして設定される。第1指位置P1と、その他の任意の2つの指位置が測定された場合も同様に目標手の平領域PAが設定される。
図13(d)には、第1指位置P1と、その他の1つの指位置P2とが測定された状態が示されている。この状態では、第1指位置P1と、第2指位置P2とを結ぶ基準線分Lの中間位置を中心とする円形の領域が目標手の平領域PAとして設定される。第1指位置P1と、その他の任意の1つの指位置が測定された場合も同様に目標手の平領域PAが設定される。
図13(e)には、第1指位置P1のみが測定された状態が示されている。この状態では、第1指位置P1を中心とする円形の領域が目標手の平領域PAとして設定される。
なお、前記のように三角形が定義されたすべての場合において、当該三角形の五心のいずれかを基準とし、当該三角形の内側に収まる領域が目標手の平領域PAとして設定されてもよい。目標手の平領域PAは円形に限らず、楕円形、正方形、長方形、ひし形または五角形等、さまざまな形状であってもよい。
図14(a)〜(d)には第1指位置P1が測定されなかった状態が示されている。
図14(a)には、第1指位置P1以外の4つの指位置P2〜P5が測定された状態が示されている。この状態では、第2指位置P2および第3指位置P3を結ぶ線分の中間位置P23と、第4指位置P4および第5指位置P5を結ぶ線分の中間位置P45とを結ぶ基準線分Lの中間位置を中心とする円形の領域が目標手の平領域PAとして設定される。なお、3つの指位置に第2指位置P2および第3指位置P3が含まれている場合、第2指位置P2および第3指位置P3を結ぶ線分の中間位置P23と、第4指位置P4および第5指位置P5を頂点とする三角形、または、第4指位置P4および第5指位置P5を結ぶ線分の中間位置P45と、第2指位置P2および第3指位置P3を頂点とする三角形が定義されうる。
図14(b)には、第1指位置P1以外の3つの指位置P2〜P4が測定された状態が示されている。この状態では、第2指位置P2および第3指位置P3を結ぶ線分の中間位置P23と、第4指位置P4とを結ぶ基準線分Lの中間位置を中心とする円形の領域が目標手の平領域PAとして設定される。なお、3つの指位置に第4指位置P4および第5指位置P5が含まれている場合、両指位置を結ぶ線分の中間位置P45を頂点の1つとする三角形が定義される。
図14(c)には、第1指位置以外の2つの指位置P2〜P3が測定された状態が示されている。この状態では、第2指位置P2および第3指位置P3を結ぶ基準線分Lの中間位置を中心とする円形の領域が目標手の平領域PAとして設定される。第1指位置P1以外の任意の1つの指位置が測定された場合も同様に目標手の平領域PAが設定される。
図14(d)には、第1指位置P1以外の1つの指位置P2のみが測定された状態が示されている。この状態では、第2指位置P2を中心とする円形の領域が目標手の平領域PAとして設定される。なお、第2指位置P2に代えて、第3指位置P3、第4指位置P4および第5指位置P5のうちいずれか1つのみが測定された場合も、同様に目標手の平領域PAが設定される。
さらに、第1演算処理要素21により、手の平部10に配置されている複数の圧力センサS2の出力信号に基づき、手の平部10における荷重中心p0および手の平部10にかかる荷重f0が測定される(図9/STEP014)。当該算定方法は特開2007−196372号公報に詳細に説明されているので、ここでは説明を省略する。
次に、第2演算処理要素22により手の平部10における荷重中心p0が目標手の平領域PAに含まれているという第1条件、および、手の平部10にかかる荷重f0が目標荷重範囲FAに含まれているという第2条件のそれぞれが満たされているか否かが判定される(図9/STEP016)。
目標荷重範囲FAはメモリに保存されている。目標荷重範囲FAは一定であってもよいが、物体の属性に応じて可変的に設定されてもよい。たとえば、頭カメラC1または腰カメラC2を通じて得られた画像が解析されることにより、物体の形状または色彩等の外観上の特徴が認識され、当該外観上の特徴に基づいてデータベースからその属性が検索されうる。
第1条件および第2条件のうち少なくとも一方が満たされていないと判定された場合(図9/STEP016‥NO)、第i指位置Piが測定された第i指機構から物体に作用する圧力が第2演算処理要素22により制御される(図9/STEP018)。説明の簡単のため、第i指機構から物体に作用する圧力を第i指圧力という。「指圧力上昇制御」が実行されることにより指圧力が強められる一方、「指圧力下降制御」が実行されることにより指圧力が弱められる。
図13(a)に示されている状態では、荷重中心を変位させるために次のように第i指圧力が制御される。第1基準線分L1に平行な方向(x方向)について、第2指位置P2および第3指位置P3寄りに荷重中心を変位させるため、第2指圧力および第3指圧力の合力が強められ、これに代えてまたは加えて、第4指圧力および第5指圧力の合力が弱められる。これとは反対にx方向について、第4指位置P4および第5指位置P5寄りに荷重中心を変位させるため、第2指圧力および第3指圧力の合力が弱められ、これに代えてまたは加えて、第4指圧力および第5指圧力の合力が強められる。さらに、第2基準線分L2に平行な方向(y方向)について、第1指位置P1寄りに荷重中心を変位させるため、第1指圧力が強められ、これに代えてまたは加えて、第2〜第5指圧力の合力が弱められる。これとは反対にy方向について、指位置P2〜P5寄りに荷重中心を変位させるため、第1指圧力が弱められ、これに代えてまたは加えて、第2〜第5指圧力の合力が強められる。
図13(b)に示されている状態では、荷重中心を変位させるために次のように第i指圧力が制御される。第1基準線分L1に平行な方向(x方向)について、第2指位置P2および第3指位置P3寄りに荷重中心を変位させるため、第2指圧力および第3指圧力の合力が強められ、これに代えてまたは加えて、第4指圧力が弱められる。これとは反対にx方向について、第4指位置P4寄りに荷重中心を変位させるため、第2指圧力および第3指圧力の合力が弱められ、これに代えてまたは加えて、第4指圧力が強められる。さらに、第2基準線分L2に平行な方向(y方向)について、第1指位置P1寄りに荷重中心を変位させるため、第1指圧力が強められ、これに代えてまたは加えて、第2〜第4指圧力の合力が弱められる。これとは反対にy方向について、指位置P2〜P4寄りに荷重中心を変位させるため、第1指圧力が弱められ、これに代えてまたは加えて、第2〜第4指圧力の合力が強められる。
図13(c)に示されている状態では、荷重中心を変位させるために次のように第i指圧力が制御される。第1基準線分L1に平行な方向(x方向)について、第1指位置P1寄りに荷重中心を変位させるため、第1指圧力が強められ、これに代えてまたは加えて、第2指圧力が弱められる。これとは反対にx方向について、第2指位置P2寄りに荷重中心を変位させるため、第1指圧力が弱められ、これに代えてまたは加えて、第2指圧力が強められる。さらに、第2基準線分L2に平行な方向(y方向)について、第1指位置P1および第2指位置P2寄りに荷重中心を変位させるため、第1指圧力および第2指圧力の合力が強められ、これに代えてまたは加えて、第3指圧力が弱められる。これとは反対にy方向について、第3指位置P3寄りに荷重中心を変位させるため、第1指圧力および第2指圧力の合力が弱められ、これに代えてまたは加えて、第3指圧力が強められる。
図13(d)に示されている状態では、荷重中心を変位させるために次のように第i指圧力が制御される。基準線分Lに平行な方向について、第1指位置P1寄りに荷重中心を変位させるため、第1指圧力が強められ、これに代えてまたは加えて、第2指圧力が弱められる。これとは反対に当該方向について第2指位置P2寄りに荷重中心を変位させるため、第1指圧力が弱められ、これに代えてまたは加えて、第2指圧力が強められる。
図14(a)に示されている状態では、荷重中心を変位させるために次のように第i指圧力が制御される。基準線分Lに平行な方向について、第2指位置P2および第3指位置P3寄りに荷重中心を変位させるため、第2指圧力および第3指圧力の合力が強められ、これに代えてまたは加えて、第4指圧力および第5指圧力の合力が弱められる。これとは反対に当該方向について、第4指位置P4および第5指位置P5寄りに荷重中心を変位させるため、第2指圧力および第3指圧力の合力が弱められ、これに代えてまたは加えて、第4指圧力および第5指圧力の合力が強められる。
図14(b)に示されている状態では、荷重中心を変位させるために次のように第i指圧力が制御される。基準線分Lに平行な方向について、第2指位置P2および第3指位置P3寄りに荷重中心を変位させるため、第2指圧力および第3指圧力の合力が強められ、これに代えてまたは加えて、第4指圧力が弱められる。これとは反対に当該方向について、第4指位置P4寄りに荷重中心を変位させるため、第2指圧力および第3指圧力の合力が弱められ、これに代えてまたは加えて、第4指圧力が強められる。
図14(c)に示されている状態では、荷重中心を変位させるために次のように第i指圧力が制御される基準線分Lに平行な方向について、第2指位置P2寄りに荷重中心を変位させるため、第2指圧力が強められ、これに代えてまたは加えて、第4指圧力が弱められる。これとは反対に当該方向について第4指位置P4寄りに荷重中心を変位させるため、第2指圧力が弱められ、これに代えてまたは加えて、第4指圧力が強められる。
なお、第2演算処理要素22によって、第i指機構を物体から一度離した上で当該物体に再び当接させるように、対応するモータ30の動作が制御されてもよい。その結果、ハンド1による物体の握り具合を微妙に変化させて、手の平部10における荷重中心p0を目標手の平領域PAに向けて変位させることができる。
さらに、荷重中心位置が調節される過程または調節された後において、第i指位置Piが定義されているすべての第i指機構の第i指圧力の合力が調節されることにより、手の平部10にかかる荷重が調節される。
前記のように荷重および荷重中心位置が調節された上で、手の平部接触面積が基準値CA以上であるか否かの判定以降の処理が繰り返される(図9/STEP008参照)。
そして、第2演算処理要素22により第1条件および第2条件が満たされていると判定された場合、すなわち、手の平部10における荷重中心p0が目標手の平領域PAに含まれ、かつ、荷重f0が目標荷重範囲FAに含まれていると判定された場合(図9/STEP016‥YES)、前述の一連の処理が終了する。
前記機能を発揮するハンド1によれば、配管33に流体の圧力に応じた断面積変化が許容される程度の柔軟性を持たせ、これによって配管33およびこれを介して連結されているマスタシリンダ31の配置自由度を高めることができる。また、配管33中の流体圧力に応じて生じる配管33の断面積変化が考慮されるので、スレーブピストン位置Pxが高精度で測定されうる(図7、関係式(1)〜(6)参照)。したがって、スレーブピストン323(i)の測定位置Pxに基づいて指機構11〜15の動作が安定に制御されうる(図9〜図14参照)。
また、物体がハンド1により把持されることによって複数の指機構11〜15および手の平部10のそれぞれに当接している状態において、複数の指機構11〜15のそれぞれから当該物体にかけられる荷重が調節されうる(図9/STEP014、図11〜図14参照)。これにより、当該状態において手の平部10における荷重中心p0の位置が目標手の平領域PAから外れている場合、すなわち、手の平部10における荷重分布が手の平部において過度に偏向している等、物体の安定な把持の観点から不適当である場合、当該荷重中心p0の位置が目標手の平領域PAに含まれるように変位されうる。また、当該状態において手の平部10にかかる荷重f0が目標荷重範囲FAから外れている場合、すなわち、手の平部10にかかる荷重が弱すぎる等、物体の安定な把持の観点から不適当である場合、当該荷重f0が目標荷重範囲FAに収まるように調節されうる。
なお、つまみ動作用の第1種の指機構は最低2本あればよく、つかみ動作用の第2種の指機構は1本以上あればよいので、指機構の数は3、4または6等、3以上の任意の数に変更されてもよい。
前記実施形態ではMP1関節(またはCM1関節)の能動的な回動自由度が差別化されることにより、第1種および第2種の指機構の間で能動的な動きの自由度が差別化された。そのほか、MP1関節(またはCM1関節)、MP2関節(またはCM2関節)、PIP関節(またはMP関節)およびDIP関節(またはIP関節)の任意の組み合わせにおける能動的な回動自由度が差別化されることにより、第1種および第2種の指機構の間で能動的な動きの自由度が差別化されてもよい(図2参照)。