高炉製銑法の主原料である焼結鉱は、一般に、図1に示すような工程を経て製造される。焼結鉱の原料は、鉄鉱石粉、製鉄所内回収粉、焼結鉱篩下粉、石灰石およびドロマイトなどの含CaO系副原料、生石灰等の造粒助剤、コークス粉や無煙炭などであり、これらの原料は、ホッパー1・・・の各々から、コンベヤ上に所定の割合で切り出される。切り出された原料は、ドラムミキサー2等によって適量の水が加えられ、混合、造粒されて、3.0〜6.0mmの平均径を有する擬似粒子である焼結原料とされる。この焼結原料は、焼結機上に配置されているサージホッパー4、5からドラムフィーダー6と切り出しシュート7を介して、無端移動式の焼結機パレット8上に装入され、焼結ベッドともいわれる装入層9を形成する。装入層の厚さ(高さ)は通常400〜800mm前後である。その後、装入層9の上方に設置された点火炉10で、この装入層表層中の炭材に点火するとともに、パレット8の下に配設されているウインドボックス11を介して空気を下方に吸引することにより、該装入層中の炭材を順次燃焼させ、このときに発生する燃焼熱によって、前記焼結原料を燃焼、溶融して焼結ケーキを得る。このようにして得た焼結ケーキは、その後、破砕、整粒され、5.0mm以上の塊成物からなる成品焼結鉱として回収される。
上記製造プロセスにおいては、まず、点火炉10により装入層表層に点火が行われる。点火された装入層中の炭材は、ウインドボックスによって装入層の上層部から下層部に向かって吸引される空気によって幅をもって燃焼を続け、その燃焼帯は、パレット8の移動につれて次第に下層にかつ前方(下流側)に進行する。この燃焼の進行にともない、装入層の焼結原料粒子中に含まれる水分は、炭材の燃焼で発生する熱によって気化し、下方に吸引されて、まだ温度が上昇していない下層の焼結原料中に濃縮し、湿潤帯を形成する。その水分濃度がある程度以上になると、吸引ガスの流路である原料粒子間の空隙を、水分が埋めるようになり、通気抵抗を増大させる。なお、燃焼帯に発生する焼結反応に必要な溶融部分も、通気抵抗を高める要因となる。
焼結機の生産量(t/hr)は、一般に、焼結生産率(t/hr・m2)×焼結機面積(m2)により決定される。即ち、焼結機の生産量は、焼結機の機幅や機長、原料堆積層の厚さ(装入層厚さ)、焼結原料の嵩密度、焼結(燃焼)時間、歩留などにより変化する。そして、焼結鉱の生産量を増加させるには、装入層の通気性(圧損)を改善して焼結時間を短縮する、あるいは、破砕前の焼結ケーキの冷間強度を高めて歩留を向上することなどが有効であると考えられている。
図2は、厚さが600mmの装入層中を移動する燃焼帯の前線が、該装入層のパレットの約400mm上(装入層表面から200mm下)の位置にあるときにおける装入層内の圧損と温度の分布を示したものである。このときの圧損分布は、湿潤帯におけるものが約60%、燃焼・溶融帯におけるものが約40%である。
図3は、焼結鉱の高生産時と低生産時、即ち、パレット移動速度が速い時と遅い時の装入層内の温度分布を示したものである。原料粒子が溶融し始める1200℃以上の温度に保持される時間(以降、「高温域保持時間」と称する)は、低生産の場合にはt1、生産性を重視した高生産の場合にはt2で表されている。高生産の時には、パレットの移動速度が速いため、高温域保持時間t2が低生産の時のt1と比べて短くなる。高温域保持時間が短くなると、焼成不足となり易く、焼結鉱の冷間強度が低下し、歩留が低下する。したがって、高強度焼結鉱の生産性を上げるためには、短時間の焼結でも、焼結ケーキの強度、即ち焼結鉱の冷間強度を上げて、歩留の維持、向上を図ることができる何らかの手段を講じる必要がある。なお、焼結鉱の冷間強度を表す指標としては、一般に、SI(シャッターインデックス)、TI(タンブラーインデックス)が用いられる。
図4(a)は焼結機パレット上の装入層における焼結の進行過程を、図4(b)は装入層内の焼結過程における温度分布(ヒートパターン)を、図4(c)は焼結ケーキの歩留分布を示したものである。図4(b)からわかるように、装入層の上部は下層部に比べて温度が上昇し難く、高温域保持時間も短くなる。そのため、この装入層上部では、燃焼溶融反応(焼結化反応)が不十分となり、焼結ケーキの強度が低くなるため、図4(c)に示すように、歩留が低く、生産性の低下を招く要因となっている。
こうした問題点に鑑み、装入層上層部を長時間、高温に保持するための方法が従来から提案されている。例えば、特許文献1は、装入層に点火後、装入層上に気体燃料を噴射する技術を開示している。しかし、上記技術は、気体燃料(可燃性ガス)の種類が不明であるが、プロパンガス(LPG)や天然ガス(LNG)であるとしても、高濃度のガスを使用している。しかも、可燃性ガスの吹き込みに際し、炭材量を削減していないため、焼結層内が、1380℃を超える高温となる。そのため、この技術では、十分な冷間強度の向上や歩留の改善効果を享受できていない。しかも、点火炉直後に可燃性ガスを噴射した場合には、可燃性ガスの燃焼により焼結ベッド上部空間で火災を起こす危険が高く、現実性に乏しい技術であって、実用化には至っていない。
また、特許文献2も、装入層に点火後、装入層に吸引される空気中に可燃性ガスを添加する技術を開示している。点火後、約1〜10分程度の供給が好ましいとされているが、点火炉での点火直後の表層部は、赤熱状態の焼結鉱が残存しており、供給の仕方によっては可燃性ガスの燃焼により火災を起こす危険が高く、また、具体的記述は少ないが、焼結済みの焼結帯で可燃ガスを燃焼させても効果は無く、焼結帯で燃焼すると、燃焼ガスによる温度上昇と熱膨張により通気性を悪化させるため、生産性を低減させてしまう傾向にあるので、これまで実用化には至っていない。
また、特許文献3は、焼結原料の装入層内を高温にするため、装入層の上にフードを配設し、そのフードを通じて空気やコークス炉ガスとの混合ガスを点火炉直後の位置で吹き込むことを開示している。しかし、この技術も、焼結層内の燃焼溶融帯の温度が1380℃を超える高温となるため、コークス炉ガス吹き込みの効果を享受できないとともに、可燃性混合ガスが焼結ベッド上部空間で発火し、火災を起こす危険性があり、実用化されていない。
さらに、特許文献4は、低融点溶剤と炭材や可燃性ガスを同時に、点火炉直後の位置で吹き込む方法を開示している。しかし、この方法も、表面に火炎が残留した状態で可燃性ガスを吹き込むため、焼結ベッド上部空間で火災になる危険性が高く、また、焼結帯の幅を十分に厚くできない(約15mm未満)ため、可燃性ガス吹き込みの効果を十分に発現することができない。さらに、低融点溶剤が多く存在するため、上層部において過剰な溶融現象を引き起こして、空気の流路となる気孔を閉塞してしまい、通気性を悪化させて、生産性の低下を招くことから、この技術もまた、現在に至るまで実用化されていない。
以上説明したように、これまで提案された従来の技術はいずれも、実用化には大きな問題を抱えており、実施可能な可燃性ガス吹込み技術の開発が切望されていた。
上記問題点を解決する技術として、出願人は、特許文献5において、焼結機のパレット上に堆積させた焼結原料の装入層の上から燃焼下限濃度以下に希釈した各種気体燃料を供給して装入層中に導入して燃焼させることにより、装入層内の最高到達温度および高温域保持時間のいずれか一方または両方を調整する方法を提案している。
特開昭48−18102号公報
特公昭46−27126号公報
特開昭55−18585号公報
特開平5−311257号公報
WO2007−052776号公報
本発明の焼結機における焼結鉱の製造方法は、装入工程、点火工程、気体燃料供給工程および焼結工程とから構成されている。この製造方法における上記装入工程は、循環移動するパレット上に粉鉱石と炭材を含む焼結原料を装入して、パレット上に焼結原料の装入層を形成する工程であり、上記点火工程は、点火炉を使って装入層上表面の炭材に点火する工程である。また、上記気体燃料供給工程は、高濃度の気体燃料を装入層上方の空気中に高速で吐出して燃焼下限濃度以下の所定濃度の希釈気体燃料を得る工程であり、上記焼結工程は、パレット下に配置されたウインドボックスの吸引力により上記希釈気体燃料と空気とを装入層内に吸引し、その希釈気体燃料を装入層内において燃焼させると同時に、該装入層内の炭材を燃焼させ、これらの燃焼によって発生する熱によって、焼結原料を焼結し、焼結ケーキを生成させる工程である。
上記焼結鉱の製造方法において、焼結機のウインドボックスから排気経路に流れる排気ガスは、その後、電気集塵機等で集塵されて清浄化されるが、その排気ガス中には未燃焼の気体燃料が所定濃度以上に含まれることがあり、斯かる場合には電気集塵機での放電により爆発や燃焼事故を起こすおそれがある。そこで、本発明では、ウインドボックスに接続した排気経路に気体燃料の検知手段を配設し、所定濃度以上の気体燃料が検知された場合には、焼結機の運転を停止した上で、気体燃料供給装置のフード内の残留気体燃料を焼結機建屋外に排気すると共に、気体燃料の供給経路および/またはウインドボックスに接続した排気経路を不活性ガス雰囲気とすることによって上記問題を回避することとした。
本発明において、上記のように装入層の上方で気体燃料を大気中に高速で吐出し、その気体燃料を燃焼下限濃度以下に希釈するのは、以下の理由による。
表1は、本発明で用いることができる代表的な気体燃料の燃焼下限濃度、供給濃度等を示したものである。焼結原料中に気体燃料を供給する時のガス濃度は、爆発や火災(着火)を防止するには、燃焼下限濃度より低いほど安全である。都市ガスは、Cガス(コークス炉ガス)と燃焼下限濃度が近似しているが、熱量がCガスよりも高いことから、供給濃度を低くできる。したがって、安全性を確保する観点からは、供給濃度を低くできる都市ガスの方がCガスよりも優位である。
表2は、気体燃料中に含まれる燃焼成分(水素,CO,メタン)と、それら成分の燃焼下限・上限濃度、層流、乱流時の燃焼速度等を示したものである。焼結中に気体燃料供給装置から供給している気体燃料への着火を防止するには、逆火防止を図る必要があるが、そのためには、気体燃料を、少なくとも層流燃焼速度以上、好ましくは乱流燃焼速度以上の高速で吐出させれば良いと考えられる。例えば、メタンを主成分とする都市ガスの場合には、3.7m/sを超える速度で吐出させれば、逆火のおそれはないわけである。一方、水素ガスは、乱流燃焼速度がCOやメタンと比較して速いため、逆火を防止するには、その分、高速で吐出させる必要がある。つまり、表1に示した気体燃料の中では、水素を含まない都市ガスは、水素を59vol%含有するCガスと比較して、吐出速度を遅くすることができる。しかも、都市ガスは、COを含まないので、ガス中毒を起こすおそれもない。したがって、安全性を確保する観点からは、都市ガスは、本発明において使用する気体燃料として好ましい特性を有するものであると言える。メタンを主成分とする天然ガスも同様である。もちろん、水素やCOを多く含むCガスも、気体燃料として使用することができるが、その場合には、ガス吐出速度を高める(速める)こと、および、CO対策を別途講ずることが必要となる。
表3は、気体燃料を供給する形式による得失を評価した結果を示したものである。表中、直上吹込み形式とは、都市ガスやCガス等の気体燃料を、高濃度のまま吐出して周囲の大気を巻き込ませることにより所定の濃度に希釈し、装入層中に吸引(導入)させる形式のことであり、予混合吹込み形式とは、あらかじめ大気と気体燃料とを混合して所定の濃度まで希釈したものを装入層上に供給し、装入層中に吸引(導入)させる、いわゆるプレミックス形式のことである。直上吹込み形式では、上述した乱流燃焼速度以上の速度で気体燃料を吐出すれば、逆火防止は容易であるが、気体燃料を周囲の大気と混合し希釈させる際、濃度ムラが発生しやすいため、異常燃焼を起こす可能性が、予混合吹込み形式に比べて高い。しかし、設備コストを含めて総合的に評価した場合には、都市ガスの直上吹込みが最も優位である。
また、本発明では、気体燃料供給装置により、気体燃料を装入層の上方で大気中に高速で吐出させ、それによって周囲の空気と短時間で混合させて、その気体燃料の燃焼下限濃度以下の濃度に希釈し、その後、装入層中にその希釈気体燃料を導入するようにしているが、その理由は以下による。
図5(a)に示したような内径300mmφ×高さ400mmの焼結鍋に焼結ケーキを充填し、その焼結ケーキの中央部の上から深さ90mmの位置にノズルを埋め込み、対空気で1vol%となるよう100%濃度のメタンガスを吹き込み、焼結ケーキ内の円周方向および深さ方向におけるメタンガス濃度を測定し、その結果を表4に示した。一方、図5(b)に示したように、同じノズルを用いて、焼結ケーキの上方350mmの位置からメタンガスを大気中に供給して上記と同じ濃度となるよう希釈した場合について、上記と同様にして焼結ケーキ内のメタンガス濃度の分布を測定し、その結果を表5に示した。これらの結果から、メタンガスを焼結ケーキ中に直接導入した場合には、メタンガスの横方向への拡散が不十分であるのに対して、メタンガスを焼結ケーキ上方で希釈して供給した場合には、焼結ケーキ内のメタンガス濃度はほぼ均一化していることがわかる。以上の結果から、気体燃料は、焼結ケーキの上方で空気中に供給することにより、装入層内に導入される前に、均一に希釈しておくことが好ましいことがわかる。
本発明において、装入層中に供給する気体燃料としては、高炉ガス(Bガス)、コークス炉ガス(Cガス)、高炉ガスとコークス炉ガスとの混合ガス(Mガス)、都市ガス、天然ガス(LNG)またはメタン、エタン、プロパン、ブタンガス、あるいはこれらの混合ガスのいずれかを用いることができる。本発明では、これらの気体燃料のいずれかを空気中に高速で吐出し、空気と混合させて希釈気体燃料とし、装入層中に供給(導入)する。
上記希釈気体燃料は、その中に含まれる可燃性ガス(燃焼成分)の濃度を、大気中の常温における燃焼下限濃度の75%以下まで希釈した気体燃料であることが好ましく、より好ましくは燃焼下限濃度の60%以下、さらに好ましくは燃焼下限濃度の25%以下の濃度にまで希釈したものであるのが好ましい。燃焼下限濃度以下の75%以下に希釈した可燃性ガスを使用する理由は、下記の2つである。
(a)装入層上部への高濃度の可燃性ガスの供給は、時として、爆発的燃焼を招くおそれがあり、少なくとも常温では、火種があっても燃焼しない状態としておく必要がある。
(b)装入層中で完全に燃焼せず、未燃焼のままウインドボックスの下流にある電気集塵器等に到達したとしても、電気集塵器の放電によって燃焼するおそれがないことが必要である。
さらに、希釈気体燃料の濃度は、その希釈気体燃料の燃焼による酸素の消費によって、焼結原料用に含まれる総燃料(固体燃料+気体燃料)の燃焼に必要な酸素の不足を招いて燃焼不足を起こさない程度に希釈されたものであることが必要である。ただし、希釈気体燃料の濃度は、燃焼下限濃度の2%以上であるのが好ましい。濃度が2%未満では、燃焼による発熱量が不足し、焼結鉱の強度向上と歩留まりの改善が得られないからである。
また、本発明における焼結鉱の製造方法では、装入層中の炭材に点火した後に、希釈された気体燃料を装入層中へ供給(導入)する。その理由は、点火直後の位置で希釈気体燃料を供給しても、希釈気体燃料は、装入層の表層上で燃焼するだけであり、焼結層に何ら好ましい影響を与えることはないからである。したがって、本発明では、装入層表層部の焼結原料が焼成されて焼結ケーキ層が形成された後に、希釈気体燃料を装入層に供給する必要がある。また、希釈気体燃料の供給は、装入層の上層表面に焼結ケーキの層が形成されていれば、焼結が完了するまでの間の任意の位置で行うことができる。
希釈気体燃料の供給を装入層表層に焼結ケーキ層が形成された後に行うことが好ましい他の理由は、焼結ケーキが生成していない状態で装入層の上部に希釈気体燃料の供給を行うと、該装入層上で爆発的な燃焼を起こす危険性があること、希釈気体燃料の供給は、焼結鉱の歩留りを向上させる必要がある部分に対して行う、即ち、焼結鉱の強度を上昇させたい部分で燃焼を起こすよう供給するのが好ましいことからである。
また、点火後の装入層中に希釈気体燃料を供給し、装入層内の最高到達温度と高温域保持時間のいずれかまたは両方を制御するためには、燃焼・溶融帯の厚みが少なくとも15mm以上、好ましくは20mm以上、さらに好ましくは30mm以上となった状態において、希釈気体燃料の供給を行うことが好ましい。燃焼・溶融帯の厚みが15mm未満では、気体燃料を燃焼させても、焼結層(焼結ケーキ)を通して吸引される空気と希釈気体燃料による冷却効果によってその効果が不十分となり、燃焼・溶融帯の厚みの拡大を図れない。一方、前記燃焼・溶融帯の厚みが15mm以上、好ましくは20mm以上、さらに好ましくは30mm以上となる段階で希釈気体燃料を供給すると、燃焼・溶融帯の厚みの拡大や高温域保持時間の延長を実現することができ、ひいては高強度の焼結鉱を得ることができるからである。なお、上記燃焼・溶融帯の厚みの確認は、透明石英製窓付き竪型管状試験鍋を用いて行うことができる。この試験鍋は、希釈気体燃料の供給位置を決定するのに極めて有効である。
さらには、希釈気体燃料の装入層内への供給(導入)は、燃焼前線が表層下に下がり、燃焼・溶融帯が表層から50mm以上、好ましくは100mm以上となった位置、すなわち、装入層の中・下層領域を対象として行うのがより効果的である。つまり、希釈気体燃料は、燃焼前線が表層下に達した段階から供給を開始し、装入層の表層に生成した焼結ケーキ領域(焼結層)を燃焼することなく通過させることが好ましい。その理由は、燃焼前線が表層下まで下がった位置であれば、焼結層を通して吸引される空気が焼結ケーキの余熱によって加熱されるため、冷却の悪影響が軽減され、燃焼・溶融帯の厚みを効果的に拡大することができるからである。
上記理由から、希釈気体燃料を生成する気体燃料供給装置は、焼結機の規模にもよって異なるが、例えば、気体燃料供給量が1000〜5000m3(標準)/hr、生産量が約1.5万t/日で、機長が90mの規模の焼結機では、点火炉の下流側約5m以降の位置に配置するのが好ましい。
上述したように、本発明に係る焼結機では、希釈気体燃料の供給位置(装入層への導入位置)は、パレット移動方向における点火炉下流で、焼結ケーキが生成した後のいわゆる燃焼前線が表層下に進行した位置から焼結が完了するまでの間の1ヶ所以上の任意の位置で行うことが好ましい。このことは、燃焼前線が装入層の表層下に移った段階で気体燃料の導入を開始すること、したがって、気体燃料の燃焼が装入層の内部で起り、次第に下層へ移行することになるので、爆発のおそれがなく、安全な焼結操業が可能になることを意味している。
また、本発明における焼結鉱の製造方法では、装入層中への希釈気体燃料の導入は、生成した焼結ケーキの再加熱を促進するものであることを意味している。即ち、この希釈気体燃料の供給は、もともと高温域保持時間が短いために熱不足となり、焼結鉱の冷間強度が低くなりやすい部分に対して、固体燃料に比べて反応性の高い気体燃料を供給することによって、不足している燃焼熱を補填し、燃焼・溶融帯の再生−拡大を図るという役割を担うものだからである。
さらに、本発明における焼結鉱の製造方法では、装入層上部からの希釈気体燃料の供給は、装入層内に導入された希釈気体燃料を未燃焼のまま燃焼・溶融帯にまで到達させ、そこで燃焼させることによって、燃焼熱の補填を図るようにするのが好ましい。それは、希釈気体燃料の装入層中への供給(導入)は、装入層上部のみならず、厚み方向中央部の燃焼・溶融帯にまで波及させることがより効果的と考えられるからである。つまり、気体燃料の供給が、熱不足(高温域保持時間不足)になりやすい装入層の上層部で行われると、この部分に十分な燃焼熱が提供されるので、焼結ケーキの品質改善を図ることができる。さらに、希釈気体燃料の作用効果を中層部以下の帯域にまで及ぶようにすると、本来の炭材によって形成された燃焼・溶融帯の上に希釈気体燃料による燃焼・溶融帯を形成するのと等しいことになり、結果として燃焼・溶融帯の上下方向の拡幅につながり、最高到達温度を上げることなく、高温域保持時間の延長を図ることができるので、パレットの移動速度を落すことなく十分な焼結効果を得ることができる。その結果、装入層全体にわたって品質が改善(冷間強度の向上)されるので、成品焼結鉱の歩留り向上と生産性の向上を図ることができる。
また、本発明は、前記希釈気体燃料の供給位置を、気体燃料供給の作用・効果を装入層中のどこに及ぼすかという観点から決定している。また、気体燃料の供給によって、装入層内における最高到達温度や高温域保持時間を、熱量一定基準の下で固体燃料の量に応じて制御している。従って、本発明において、希釈気体燃料を装入層中へ導入(供給)するに当たっては、その供給位置を調整するだけでなく、燃焼・溶融帯自体の形態を制御し、燃焼・溶融帯における最高到達温度および/または高温域保持時間をも制御するようにすることが好ましい。
一般に、点火後の装入層内では、燃焼(火炎)前線が、パレットの移動に伴って次第に前方(下流側)かつ下方に拡大していくため、燃焼・溶融帯の位置は、図4(a)に示すように変化する。そして、図4(b)に示すように、焼結過程で受ける焼結層上層、中層、下層の熱履歴は大きく異なり、したがって、上層〜下層間では、高温域保持時間(約1200℃以上となる時間)も大きく異なる。その結果、パレット内の焼結鉱の位置別歩留まりは、図4(c)に示すような分布を示す。即ち、表層部(上層部)の歩留は低く、中層、下層部で高い歩留となる。そこで、本発明に従って、前記気体燃料を供給すると、燃焼・溶融帯の上下方向の厚みやパレット進行方向の幅が拡大し、これが成品焼結鉱の品質向上につながる。そして、高い歩留分布となる中層部や下層部は、さらに高温域保持時間を制御(延長)できるため、歩留がより向上する。
上記のように、本発明では、気体燃料の供給(導入)位置を調整することにより、燃焼・溶融帯の形態、即ち、燃焼・溶融帯の高さ方向の厚さおよび/またはパレット移動方向の幅を制御できると共に、最高到達温度や高温域保持時間を制御することができる。そして、これらの制御を通じて、常に十分な焼成を達成し、ひいては成品焼結鉱の冷間強度を高め、品質向上を実現することができる。
また、本発明における装入層中への希釈気体燃料の供給(導入)は、成品焼結鉱全体の強度を制御するためであると言うこともできる。すなわち、本発明において、希釈気体燃料を供給するそもそもの目的は、焼結ケーキ(焼結鉱)の冷間強度を向上させることにあり、具体的には、気体燃料の供給位置制御や、焼結原料が燃焼・溶融帯に滞在する時間である高温域保持時間の制御、最高到達温度の制御を通じて、焼結鉱の冷間強度(シャッターインデックスSI)を75〜85%程度、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上にすることである。なお、実機焼結機によって製造された焼結鉱の冷間強度(SI値)は、鍋試験で得られる値よりもさらに10〜15%高い値を示すのが一般的である。
この強度レベルは、本発明によれば、前記希釈気体燃料の濃度、供給量、供給位置および供給範囲を、好ましくは焼結原料中の炭材量をも考慮した上で(投入熱量を一定にする条件下で)調整することによって、安価に達成することができる。焼結鉱の冷間強度の向上は、一方で、通気抵抗の増大と生産性の低下を招くことがあるが、本発明では、そうした問題点を、最高到達温度や高温域保持時間を制御することによって解消することができる。
したがって、本発明の焼結鉱の製造方法において、希釈気体燃料の装入層中への導入位置は、装入層中に生成した焼結ケーキから湿潤帯までの間の任意の帯域における焼結鉱の冷間強度をどのように制御するかという観点も考慮して決定される。そして、この観点から、本発明では、気体燃料供給装置の規模(大きさ)、数、位置(点火炉からの距離)、ガス濃度を、好ましくは焼結原料中の炭材量(固体燃料)に応じて調整することによって、燃焼・溶融帯の大きさ(上下方向の厚さおよびパレット移動方向の幅)だけでなく、高温到達温度、高温域保持時間をも制御し、それによって、生成する焼結ケーキ(焼結鉱)の強度の向上を図っている。
また、本発明の焼結機で焼結鉱を製造するに当たっては、ウインドボックス下流の排気経路に配設された気体燃料の検知手段が、気体燃料を構成する1または2以上の成分の濃度が所定値以上であることを検知したときには、焼結機の運転を停止し、気体燃料供給装置のフード内に残留した気体燃料を焼結機建屋外に排気すると共に、気体燃料の供給経路および/またはウインドボックスに接続した排気経路を不活性ガス雰囲気とする。ここで、上記気体燃料の供給経路は、気体燃料の供給配管だけでなく、気体燃料の供給部分(ノズル)やフード等からなる気体燃料供給設備全体を含んでもよく、また、上記排気経路は、ウインドボックスに接続した排気ダクトや集塵機などを含んでもよい。
本発明の焼結機における気体燃料供給装置は、焼結機の幅方向に沿って、パレットの両サイドウォールを跨がるように配設されるのが好ましい。すなわち、上記気体燃料供給装置は、パレットの両サイドウォールを跨がるようにフードが配設され、その内部には気体燃料を供給する配管を、単数または複数本、好ましくは2〜15本、パレット進行方向に対して平行に、あるいは垂直に配列し、そのそれぞれの配管には、気体燃料を大気中に高速で供給するためのスリットや噴出穴あるいはノズルを複数取り付けたものにて構成されることが好ましい。
前記気体燃料供給装置は、点火炉の下流側でかつ燃焼・溶融帯が装入層内を進行中の過程(状態)にある、パレット進行方向のいずれかの位置に1以上配設され、その位置において、希釈気体燃料の装入層中への供給が行われるのが好ましい。即ち、この装置は、点火炉の下流側で、燃焼前線が表層下に進行した以降の任意の位置に1ないし複数配設されるものであり、目標とする成品焼結鉱の冷間強度を調整する観点から、大きさ、位置、数が決められる。
ところで、本発明においては、気体燃料を使用しているが、装入層中に供給するときの気体燃料は、前述したように燃焼下限濃度以下に希釈され、通常、装入層外では燃焼することがないように制御されている。しかし、上記気体燃料が装入層の裂け目や装入層とパレット内壁の間隙を通り、パレット下のウインドボックスに未燃焼のまま流出する可能性がある。ウインドボックスから排気経路に流れた空気は、その後、電気集塵機で集塵され、清浄化されるが、気体燃料が未燃焼のままでは、電気集塵機での放電により爆発や燃焼を起こすおそれがある。そこで、本発明では、ウインドボックスに接続された排気経路に、前記未燃焼の気体燃料の流出を検知する手段を配設して気体燃料の濃度を監視することで、電気集塵機の放電下での爆発や燃焼を防止することとした。
上記気体燃料の検知手段としては、気体燃料自体を検知可能な検知器、あるいは、気体燃料を構成するガス成分の1または2以上の成分の濃度を検出することができるガス検知器であればよく、用いるガスの種類(例えば、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉−コークス炉混合ガス、都市ガス、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、あるいはこれらの混合ガス等)に応じて、ガス検知器の検出可能なガス成分(例えば、水素(H2),CO,メタン成分等)を選択すればよい。具体的には、高炉ガスや高炉−コークス炉ガスの混合ガスでは、CO成分が多いためCO濃度を検出することができるガス検知器が有効であり、また、コークス炉ガス単体では、水素成分またはメタン成分を検出することができるガス検知器が有効であり、天然ガスや天然ガスを利用した都市ガスでは、メタン成分を検出することができるガス検知器が有効である。
また、本発明は、ウインドボックスの下流に接続された排気経路に配設された気体燃料の検知手段が、気体燃料を構成する1または2以上の成分の濃度が所定値以上であることを検知したときは、焼結機の運転を停止し、気体燃料の供給経路および/またはウインドボックスに接続した排気経路を不活性ガス雰囲気とする運転方法を採用する。すなわち、気体燃料を検知したときは、気体燃料の供給を停止し、気体燃料の供給経路および/またはウインドボックスに接続した排気経路に窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給し、不活性ガス雰囲気とする。何らかの火種により、爆発や燃焼事故が起こるのを防止するための処置である。供給する不活性ガスとしては、製鉄所で大量に得ることができる窒素ガス、アルゴンガスの他、各種燃焼設備の排ガスなどを用いることができる。
しかし、気体燃料の異常を検知したときに、気体燃料供給装置からの気体燃料の供給を停止し、気体燃料の供給経路やウインドボックスに接続した排気経路を不活性ガス雰囲気とするだけでは、必ずしも安全とは言えない。例えば、気体燃料供給装置のフード内に残留している気体燃料が、不活性ガスに押し出される等してフード外に漏出し、建屋内において爆発や燃焼をおこすおそれもあるからである。そこで、本発明の焼結機には、気体燃料供給装置のフード内を不活性雰囲気とするだけでなく、フード内に残留している気体燃料を、焼結機建屋外に排出する排気装置を配設する。この排気装置により、気体燃料供給装置から建屋内への気体燃料の漏出を防止しするだけでなく、排気系統への気体燃料の流出をも防止することができる。上記排気装置は、フードに接続し、建屋外へ通ずる排気配管と、排気ブロワーとで構成されるのが好ましい。
また、焼結機の運転開始あるいは運転再開に当たっても、フード内に残留している気体燃料を、焼結機建屋外に排出し、気体燃料供給経路および/または排気経路内を一旦不活性ガス雰囲気とし、所定時間経過後、焼結機の運転を再開する運転方法を採用することが好ましい。これにより、運転開始時における希釈気体燃料の濃度不安定を防止したり、気体燃料と残存する気体燃料との接触を防止したりすることができるので、爆発や燃焼事故を確実に抑止できる。
なお、このような検知手段や運転方法を採用するのは、以下の理由による。
一般的な焼結機の有効火格子面積は200m2以上であり、日産1万トン(焼結鉱)を超える規模のものでは400m2、500m2以上のものもある。このように大きな火格子面積の一部あるいはかなりの部分に希釈された気体燃料を供給しようとした場合、気体燃料の濃度偏析が生じたり、気体燃料が滞留して局部的濃度上昇を生じたりするおそれがある。また、本発明では、希釈気体燃料を装入層中の任意の位置で燃焼させるため、希釈気体燃料の装入層への導入を、燃焼前線が装入層表層下に移動してから行うが、この際、希釈気体燃料が、装入層形成時に生じた亀裂や、焼結原料の焼き締まりで発生した亀裂などを通過して、あるいは、装入層とパレット内壁に生じる間隙を通過して、燃焼することなくそのままウインドボックスに流出する可能性もある。したがって、これらによる危険性を払拭する必要があるからである。
図6は、本発明に係る焼結機の一実施形態の一部を示したものであり、点火炉10のパレット移動方向下流側に当たる装入層の上辺に、高炉ガスやコークス炉ガスあるいはこれらの混合ガス(Mガス)等の気体燃料を大気中に吐出し、所望の濃度の希釈気体燃料とするための気体燃料供給装置12を1基だけ配設した例を示したものである。その気体燃料供給装置12は、装入層の上方にフード12´が設置され、そのフードの内部には、パレットの幅方向に沿って複数の気体燃料供給パイプ12aが配設されており、そのパイプには、気体燃料を高速で大気中に吐出するノズル12bを下向きにかつパレット幅方向に複数個配列させたものを、図示していないサイドウォールの上から装入層を覆うように配設したものである。この気体燃料供給装置12のフード12´内に供給された気体燃料は、フード12´内の周辺の空気と混合して希釈気体燃料となり、その後、パレット8下の図示されていないウインドボックスの吸引力を利用して、装入層表層に生成した焼結ケーキを経て、装入層の深部(下層)にまで導入される。
図7は、図6の製造装置に、本発明に係る防災装置を付加した例を示したものである。図中、点火炉10および気体燃料供給装置12と、ウインドボックス11の間に、焼結原料を堆積した装入層を載せた図示されていないパレットがあり、これが図の右方向に移動する。この際、点火炉によって装入層表面の炭材に点火され、パレットの移動に伴って炭材の燃焼が装入層の上層から下層に向けて進行し、焼結ケーキ(焼結鉱)が得られる。さらに、本発明では、点火炉10の後方(下流)において、気体燃料供給装置12で気体燃料をフード12´内の大気中に吐出して燃焼下限濃度以下の所定濃度に希釈された気体燃料とし、この希釈気体燃料を装入層中に吸引導入して、装入層内で燃焼させる。なお、気体燃料供給装置12から供給する気体燃料は、点火炉10とは別途に独立した配管系で供給してもよく、また、点火炉用燃料配管と同じ系として、点火炉10へのガス供給管(図示せず)の延長上に接続するように構成してもよい。
また、図中に12として示した気体燃料供給装置において、実線で示したAの気体燃料供給装置は、焼結機進行方向の略中央域において気体燃料を供給し、装入層中層領域の焼結鉱の品質改善を行う場合の例であり、また、破線で示したBの気体燃料供給装置は、焼結機進行方向の後方域まで気体燃料を供給し、装入層中層・下層領域の焼結鉱の品質改善を行う場合の例を示している。
気体燃料供給装置12においては、気体燃料をフード12´内の大気中に高速で吐出して空気と混合し、常温下では燃焼を起こさない燃焼下限濃度以下まで希釈された気体燃料とする。この希釈気体燃料は、その後、ウインドボックス11を介して、装入層の上から下に向けて吸引されて、高温の装入層中の所定の位置で燃焼が始まるように濃度が調整されている。この希釈気体燃料は、ウインドボックス11を通過した後は、高温領域が存在しないため、通常では燃焼や爆発のおそれはない。
しかし、ウインドボックス11を通過した排気は、ウインドボックス11を結ぶ主ダクトから構成される排気経路13を経て、後方(下流)の集塵機14に導入され、除塵、排ガス処理されて煙突から排気される。上記集塵機14には、通常、電気集塵機が使用されており、電気集塵機では、放電を繰り返すことにより除塵している。通常、所定の濃度以下に希釈された気体燃料は、上記電気集塵機14でも爆発や燃焼を起こすことはない。
また、前述したように、焼結機は、有効火格子面積が大きいため、希釈気体燃料を供給する際に濃度の偏析が生じたり、気体燃料が滞留して局部的な濃度上昇を起こしたりするおそれがあり、また、装入層に導入した希釈気体燃料が、装入層形成時に生じた亀裂や、装入層の焼き締まりで発生した亀裂などから、あるいは、装入層とパレット内壁との間隙などから、燃焼することなくそのまま通過してウインドボックスに到達する可能性を完全に払拭することはできない。万一、電気集塵機14で爆発事故が発生した場合には、復旧に多大の時間を要し、月単位の操業停止を余儀なくされるため、焼結鉱生産に及ぼす影響は極めて大きい。したがって、電気集塵機の放電による気体燃料の燃焼・爆発を確実に阻止する必要がある。
そこで、本発明においては、排気経路13に前記気体燃料の検知手段15を配設し、排気中の気体燃料濃度が、電気集塵機14の放電で、爆発・燃焼を起こす値に達しないよう監視する。前記気体燃料の検知手段15としては、気体燃料自体を検知可能な検知器、あるいは、気体燃料を構成するガス成分の1または複数の成分の濃度を検出できるガス検知器であれば用いることができる。
また、本発明の焼結機には、前記気体燃料の検知手段15によって所定濃度を超える気体燃料が検知されたときには、安全を確保するため、焼結機自体の運転を停止するとともに、速やかに不活性ガスを排気経路13に供給し、爆発・燃焼を起こすおそれのない安全な濃度領域まで希釈するための不活性ガス供給手段16を配設されている。なお、図中の17は、排気経路13の排気を吸引する主排気ブロワーである。
さらに、本発明の焼結機には、前記気体燃料の検知手段15で所定濃度以上の気体燃料が検知されたときには、上記処置と同時に気体燃料供給装置のフード内に残留している気体燃料を焼結機建屋外に排出するための排気設備25と、気体燃料供給配管や気体燃料供給装置等の気体燃料供給経路内を不活性ガス雰囲気とするための不活性ガス供給手段19を備えられており、これらによって、気体燃料供給装置のフード内等に残留していた気体燃料が焼結機から建屋内に漏出することによって引き起こされる不測の事態を回避する。
また、前記気体燃料の検知手段15によって所定濃度以上の気体燃料が検知され、焼結機が停止されたときには、主ダクトからなる排気経路13のほか、ウインドボックス11から排気経路13に延びる枝管20までを不活性ガス雰囲気とする不活性ガス供給手段16´を設置してもよい。すなわち、ウインドボックス11、枝管20、排気経路13にも不活性ガスを供給し、気体燃料を払拭してもよい。
さらに、焼結機の排鉱部では、焼結鉱の破砕が行われるため、ここにも集塵装置21が設置されているが、気体燃料供給装置12を焼結機の焼結領域の後方まで延長した場合には、上記集塵機21にも気体燃料が吸引されるおそれがある。そのため、集塵機21の排気吸引経路にも、気体燃料の検知手段22や不活性ガス供給手段23を配設するのが好ましい。
つまり、前記気体燃料の検知手段により排気中に所定濃度以上の気体燃料が検知されたときには、焼結機を停止し、前記気体燃料供給手段により供給されている気体燃料の供給を停止すると共に、気体燃料供給装置のフード内に残留した気体燃料を排気し、さらに、気体燃料の供給経路や排気経路内の全てを完全に不活性ガス雰囲気とする運転方法が好ましい。設備上、何らかの火種によって、爆発・燃焼事故が発生するのを予防する処置である。
なお、上記説明では、集塵機14、21の上流に気体燃料の検知手段15、22を配置した例を説明したが、集塵機14、21の下流側に気体燃料の検知手段を配置し、検知された気体燃料の濃度変化から濃度の上昇を予測したり、閾値を適正化したりすることにより、気体燃料濃度の異常を検知することは可能である。
さらに、焼結機は、通常、建屋内に収められているが、焼結操業では、燃料(凝結材)として炭材が使用されており、操業条件によってはCOガスなどの有害ガスが発生するため、建屋は一部開放されているのが普通である。しかし、建屋が開放されている場合でも、供給した希釈気体燃料が、気体燃料供給装置12とパレット上の装入層との間から機外に漏洩して建屋内の淀み易い部分に充満することがある。そこで、このような淀みが発生し易い部分にガス検知器(気体燃料の検知手段)24を配置し、気体燃料の滞留を検知したときには、気体燃料供給ブロワー18を停止したり、炭材(凝結材)のみの焼結操業に切り替えたり、あるいは、建屋内の換気を促進したりして、滞留した気体燃料による爆発事故等の防止を図ることが好ましい。
図8は、本発明における排気経路における気体燃料の異常検知から、気体燃料供給装置フード内の残留気体燃料の排気、不活性ガスの吹き込みまでの処理フローの一例を示したものである。この図の例は、ウインドボックス下流に接続した排気系統の主集塵機で気体燃料濃度の異常を検知したときには、焼結機を停止して原料装入、気体燃料吹き込み、主排気ブロワーを停止した上で、排気装置を運転してフード内の残留気体燃料を排出すると共に、気体燃料供給経路や排気経路に不活性ガスを吹き込むようにしている。さらに、この例では、上記場合の他に、排鉱部排気系統で気体燃料の異常を検知した場合や、建屋内の気体燃料の滞留、気体燃料供給装置の異常、操業条件の異常および基準を超える横風等を検知した場合にも、上記と同様の対応を行うようにしている。なお、本発明の安全対策は、この例に限定されるものではない。