JP5260449B2 - ガスサンプリングバック及びフィルム - Google Patents
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Description
本実施形態に係るガスサンプリングバック(「本サンプリングバック」と称する)は、フィルムを袋状に形成し、その一部に採取口を設け、そこに開閉コックを装着してなる構成を備えたものである。但し、このような構成に限定するものではなく、任意に構成可能である。
本サンプリングバックを形成するために用いるフィルム(「本フィルム」と称する)は、サンプリングガスと接触する側、すなわちバッグの内側から外側に向かって順次、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂層、接着層、シリカ層、及び、基材フィルム層を積層してなる構成を備えた積層フィルムである。但し、必要に応じて、各層間に他の層を介在させてもよい。例えば、必要に応じてシリカ層と基材フィルム層との間にプライマー層を介在させることは好ましい一例である。
以下、このプライマー層を含めて各層について順次説明する。
ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂層は、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とする層である。
例えば、テトラデカンを吸着しない点で優れている。
テトラデカンは、自動車のシートなどから揮発する可能性があり、所謂新車の臭い成分の一つであり、厚生労働省に指定された特定VOC(揮発性有機化合物)の一種である。このテトラデカンは、沸点が高く一度何かに付着すると揮発させるのが難しいために、分析が難しい成分として知られているが、ポリアクリロニトリル(PAN)はこのテトラデカンの非吸着性に優れており、この面からも自動車の部品から生じるガスの分析に適している。
接着層の構成成分は、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂層とシリカ層とを接着することができれば特に限定するものではない。特にドライラミネートに使用し得る接着剤成分であるのが好ましい。例えばアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂を含む接着性樹脂である。これらの中でも、シリカ層とポリアクリロニトリル層との接着性の観点から、ポリウレタン樹脂或いはポリエステル樹脂、中でもポリウレタン樹脂を主成分とする接着性樹脂が好ましい。
シリカ層は、シリカ(酸化珪素)を主成分とする層である。
シリカ層の形成手段としては、蒸着法、コーティング法などの方法を採用することができるが、ガスバリヤ性が高く、かつ余分な成分が入らずアウトガスの発生を抑制できる点で蒸着法を採用するのが好ましい。
但し、蒸着法は、真空蒸着、イオンプレーティング、スパッタリングなどのPVD(物理的気相蒸着)、CVD(化学的気相蒸着)等の方法を含むことができる。
そのような金属成分としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、リチウム、カルシウム、ナトリウム、チタン、鉛、スズ等の金属及びそれらの酸化物、炭化物、窒化物等が挙げられる。
シリカ層の厚さは、特に限定するものではないが、0.1nm〜500nmであるのが好ましく、0.5nm〜40nmであるのがさらに好ましい。薄過ぎると十分なガスバリヤ性が得られ難く、また、逆に厚すぎても蒸着膜に亀裂や剥離が発生しやすくなったり、透明性が悪くなったりする可能性がある。
基材フィルム層とシリカ層との密着性向上のため、基材フィルム層とシリカ層との間にプライマー層を設けるのが好ましい。
中でも、密着性、耐熱水性の点から、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂及びこれらの共重合体から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、更には、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂の1種類以上と、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート基含有樹脂の1種類以上を組み合わせたものが好ましい。
基材フィルム層は、通常の包装材料の主原料となり得る樹脂を主成分として形成することができる。例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等の単独重合体または共重合体などのポリオレフィン、環状ポリオレフィン等の非晶質ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ナイロン等のポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体部分加水分解物(EVOH)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート(PC)、ポリビニルブチラール、ポリアリレート、アクリレート樹脂、及びポリ乳酸、コハク酸、澱粉等の生分解性樹脂などを挙げることができる。
中でも、フィルム物性の観点から、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが好ましい。
なお、以上挙げた樹脂のうちの一種を単独で基材フィルム層の主成分として用いることもできるが、以上挙げた樹脂のうちから二種類以上を選択して主成分として併用することもできる
フィルムの形成方法は従来公知の一般的な製造方法であればよい。例えば、原料樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して、急冷することにより実質的に無定型で配向していない未延伸フィルムを製造することができる。この未延伸フィルムを一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸などの従来公知の一般的な方法により、フィルムの流れ(縦軸)方向又はフィルムの流れ方向とそれに直角な(横軸)方向に延伸することにより、少なくとも一軸方向に延伸したフィルムを製造することができる。
本発明の積層フィルムの各層には、本発明の目的を損ねない範囲で各種添加剤を配合することができる。基材フィルム層には、主成分のほかに各種添加剤を配合することも可能である、例えば有機系の滑剤、ワックス、帯電防止剤、紫外線吸収剤、衝撃改良剤、シート製造時にトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂などを配合してもよい。
基材フィルム層を構成するフィルムを用意しておき、必要に応じてプライマー層を塗布し、シリカを蒸着する。
他方、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂層を構成するPAN樹脂フィルムを用意しておき、このフィルム面に接着剤を塗布し、上記基材フィルムの蒸着層と当該接着剤を介してPAN樹脂フィルムとをラミネートすればよい。
本フィルムは、サンプリングバックに求められる性質、すなわち、1)捕集したガスを逃がさない性質、2)袋自体からガスを発生しない性質、3)捕集したガスの成分を吸着しない性質(非吸着特性)などを備えている。それに加えて、ハロゲンなどを含まない可燃物であり、しかも、手で引き裂くことができるので、使用後は手で引き裂いて可燃物として廃棄することができる。
本サンプリングバックは、本フィルムを長方形状にカットし、2枚の周縁部を、一部を残して熱融着し、その熱融着しない一部に開閉コックを装着して採取口とすることで形成することができる。
本発明において「主成分」とは、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含する。この際、当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分(2成分以上が主成分である場合には、これらの合計量)がバインダー中の50質量%以上、特に70質量%以上、中でも特に90質量%以上(100%含む)を占めるのが好ましい。
また、本発明において、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り、「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特にことわらない限り、「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
厚さ170μmの未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを二軸延伸処理(延伸倍率:縦3.5倍×横4.0倍)した後、その上に、オキサゾリン基含有ポリマー(日本触媒社製「エポクロスWS−500」)60重量%、水性アクリル樹脂(以下に示す樹脂A)20重量%、水性ウレタン樹脂(以下に示す樹脂B)20重量%からなる混合樹脂を、インラインコーティング法によりコートし、該混合樹脂層より成る0.1μmの プライマー層を有する厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。次に、プライマー層上に、真空蒸着装置を使用して珪素酸化物(SiO)を 高周波加熱方式で蒸着させ、シリカ層(SiOx)の厚さが約15nmである蒸着プラスチックフィルムを得た。
アクリル酸エチル40重量部、メタクリル酸メチル30重量部、メタクリル酸20重量部及びグリシジルメタクリレート10重量部からなる混合物をエチルアルコール中で溶液重合し、重合後水を加えつつ加熱しエチルアルコールを除去した。アンモニア水でpH7.5に調節し、水性アクリル系樹脂水性塗料(樹脂A)を得た。
テレフタル酸664重量部、イソフタル酸631重量部、1,4−ブタンジオール472重量部およびネオペンチルグリコール447重量部から成るポリエステルポリオールを得た。次いで、得られたポリエステルポリオールに、アジピン酸321重量部、ジメチロールプロピオン酸268重量部を加え、ペンダントカルボキシル基含有ポリエステルポリオールAを得た。更に、該ポリエステルポリオールA1880重量部にヘキサメチレンジイソシアネート160重量部を加えて水性ポリウレタン系樹脂水性塗料(樹脂B)を得た。
準備作業として、25℃で5Lの窒素を充填し、窒素を抜く作業を3回繰り返し、バッグ内の置換洗浄を行った。ここで、各ガス成分量を測定した(表にはブランク値として示した)。
実施例1において、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂フィルムの替わりに、ポリエチレンフィルム((株)東セロ製 TUX FCS 30μm)を使用した以外は、実施例1と同様に積層フィルム及びサンプリングバッグを作製した。
実施例1及び比較例1で作製したサンプリングバッグのヒートシール部分を手で引き裂いてみたところ、実施例1で作製したサンプリングバッグは容易に引き裂くことができたが、比較例1で作製したサンプリングバッグは引き裂くことができなかった。
Claims (3)
- 袋の一部に採取口を設け、そこに開閉コックを装着してなる構成を備えた、化学物質成分(VOC)検出用ガスサンプリングバックであって、
前記袋は、サンプリングガスと接触する側から順次、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂層、接着層、シリカ層及び基材フィルム層を積層してなる構成を備えた積層フィルムからなるものであることを特徴とする、化学物質成分(VOC)検出用ガスサンプリングバック。 - テトラデカンの検出用に用いることを特徴とする、請求項1に記載の化学物質成分(VOC)検出用ガスサンプリングバック。
- ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂層とシリカ層とを接着する接着層は、ポリウレタン樹脂を主成分とする接着性樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の化学物質成分(VOC)検出用ガスサンプリングバック。
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