以下に添付図面を参照して、この発明にかかる錠前装置および施解錠方法の最良な実施の形態を詳細に説明する。以下の実施の形態においては、鍵を所持していない非関係者の入館(入室)を制限する目的で使用される主錠と、不正解錠・開放を困難にして不正侵入者の不正入館を抑止・防止する目的で使用される補助錠という2つの錠前機構を備えた錠前装置に本発明を適用した例である。すなわち、錠前装置を出入口扉に設置し、補助錠に本発明の第1錠前機構を、主錠に本発明の第2錠前機構を適用したものである。但し、これに限定されるものではなく、複数の錠を備えた錠前装置であれば、複数の錠のうち第1の錠を第1錠前機構、第2の錠を第2錠前機構として本発明を適用することができる。
(実施の形態1)
本実施の形態にかかる補助錠は、通常時は解錠状態となっており、警備装置の警備設定に連動して施解錠が行われる。このため、補助錠は、正規の利用者の入退館において別個に施解錠操作が不要な錠前機構であって、不正侵入者により主錠に対して不正行為が行われた場合や正規の利用者が警備の解除を失念した場合に、解錠状態から施錠状態へ移行して不正侵入者による侵入を防止したり、正当の利用者に警備の解除を促すものである。
まず、主錠と補助錠の役割の違いについて説明する。上述したように、主錠は鍵を所持していない非関係者の入館(入室)を制限する目的で使用される。すなわち、主錠は、出入口扉を施錠しておくことで、善良な第三者に対して関係者以外は入室禁止である旨を伝えることができればよい。それに対して、補助錠は不正解錠・開放を困難にすることで、不正侵入者の不正入館を抑止・防止する目的で使用されることが本質的な機能である。
つまり、補助錠を設置する目的は以下の効果を期待したものである。第1に、主錠と併せることで、各種非破壊不正解錠手段(ピッキング、サムターン回し等)における作業の手間・所要時間を2倍程度にする。第2に、出入口扉や錠前装置の破壊を伴う不正開放手段(こじ開け、錠破り等)を物理的に困難にする。第3に、補助錠の設置により、不正解錠が困難であることに加えて、居住者の防犯意識が高いことを不正侵入者に感じさせて犯意を失わせるとともに犯行に至らなくするよう促す。すなわち、鍵を持っていない者を入館出来なくするだけであれば、主錠のみで充分であるが、不正解錠・開放を防止・抑制するためには、補助錠を設置することが有効である。
ここで、犯行の頻度として、非破壊不正解錠手段(ピッキング、サムターン回し等)は、扉や錠前の破壊を伴う不正開放手段(こじ開け、錠破り等)に対して、圧倒的多数である。このため、本実施の形態の補助錠では、主に不正解錠手段を防止することを目的として、正規の利用者が入館する際には解錠状態であり、不正解錠が試みられた場合や警備の解除を失念した場合に、解錠状態から施錠状態にする。以下に本実施の形態の補助錠について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる錠前装置を設置した出入口扉の全体を示す図である。図1では、出入口扉4を部屋の外部から見た正面図である。出入口扉4には、上側に主錠2Aが配置され、下側には補助錠2Bが配置された錠前機構100が設置されている。この出入口扉4の外部側には、主錠2Aにおけるデッドロッキングラッチボルト10を移動させて施解錠するために、利用者が鍵を挿入して回動操作するシリンダ30aと、回動操作されて利用者からの操作力を受付けるレバーハンドル70aが設けられている。
図2は、実施の形態1にかかる錠前装置の構成を示す説明図である。図2に示すように、本実施の形態にかかる錠前装置100は、出入口扉に設置されたフロント1および錠前機構2とから主に構成されており、錠前機構2における上側が主錠2A(第2錠前機構部)、下側が補助錠2B(第1錠前機構部)となっている。
主錠2Aは、制御部510と、外部給電部520と、操作部501とを備えており、補助錠2Bは、制御部511と、外部給電部521と、操作部502とを備えている。そして、操作部501および操作部502は、監視領域に設けられている警備装置500に接続されている。なお、フロント1と錠前機構2の詳細は後述する。
警備装置500は、出入口扉が設置されている監視領域を監視(警備)するものであり、監視領域において異常が発生した場合は、通報先である監視センタへ異常を検知した旨の異常検知情報の通報をするものである。そして、監視センタは、監視領域の警備装置から異常検知情報の通報を受信すると、待機中の警備員に対して異常が検知された監視領域へ向かう旨の指示を出すとともに、必要に応じて警察や消防など関係機関への通報を行うことになる。なお、本実施の形態では、錠前装置100は警備装置500と有線で接続されているが、無線通信により接続された構成としてもよい。
次に、主錠2Aにおける操作部501と、制御部510と、外部給電部520とについて説明する。
操作部501は、出入口扉付近の監視領域外に設置され、警備員等の利用者に固有の利用者ID(第2利用者識別情報)の入力を受付けるものであり、例えばテンキーや、接触式または非接触式のカードリーダ、タッチパネル、指紋や虹彩や静脈等の生体情報読取装置等、利用者が特定されるものであればよい。操作部501は、監視領域の利用者が日常使用するものではなく、監視領域の利用者の不在時に、監視領域に異常が発生した場合に駆けつけた警備員や、監視領域の点検に訪れた警備員が、鍵等を利用せずに主錠2Aの施解錠を行うための操作に用いられる。
制御部510は、ソレノイド90(後述)に対する通電を制御するものである。すなわち、制御部510は、操作部501によって受付けた利用者IDが、記憶部(不図示)等に予め定められた利用者IDか否かを照合することによって利用者認証を行い、その利用者認証が成功した場合に、ソレノイド90を通電し、予め定められた所定の時間が経過したらソレノイド90を非通電にするものである。また、制御部510は、通常時は、監視領域等に供給される電力等を操作部501やソレノイド90等に供給するが、例えば、停電時等により電力が供給できない場合には、外部給電部520によって供給された電力を操作部501に供給し、操作部501から受付けた利用者IDの利用者認証が成功した場合、外部給電部520によって供給された電力をソレノイド90に供給して通電する。
外部給電部520は、制御部510に対して独立して電力を供給するものであり、例えば、電池等が該当する。停電時等により制御部510に汎用の電源からの電力供給をうけられない場合には、制御部510には外部給電部520からの電力が供給され、これにより停電時にもソレノイド90に対する通電および非通電の制御が可能となる。
次に、補助錠2Bにおける操作部502と、制御部511と、外部給電部521とについて説明する。
操作部502は、出入口扉付近の監視領域外に設置され、警備装置500の警備モードである警備状態または警備解除状態などの設定を受付けるものである。操作部501と同様、例えばテンキーや、接触式または非接触式のカードリーダ、タッチパネル、指紋や虹彩や静脈等の生体情報読取装置等、各種警備モードの設定を受付けられればよい。また、操作部502は、利用者(警備員等)に固有の利用者ID(第1利用者識別情報)の入力を受付けるものである。
ここで、警備モードとは、監視領域において異常検知した際の通報先への通報の可否、または監視領域に対する報知の可否などを定めたモードであり、異常を検知したときの警備装置の動作を決定するモードである。警備モードは、通報の可否および通報先、監視領域への報知の有無などによって複数のモードが存在し、代表的な警備モードとしては、警備状態、警備解除状態がある。
警備状態とは、主に利用者(住人)が外出中、警備を必要とする場合に設定する警備モードであり、センサによって異常を検知したときに発せられる検知信号を警備装置が受信した場合に、監視センタに異常を知らせる警報(異常検知情報)を通報する状態である。なお、警備装置の設置されている監視領域において異常を検知したことを報知する場合もある。これは、侵入者を威嚇する目的や誤報である場合に警報解除操作を促す目的で報知するものである。
警備解除状態とは、主に利用者が在宅中、警備を必要としない場合に設定する警備モードであり、センサによって異常を検知したときに発せられる検知信号を警備装置が受信した場合でも、監視センタへの警報(異常検知情報)の通報を行わず、監視領域における異常があるとは判断しない状態である。これは、センサにより異常を検知(人の存在の検知、扉の開閉の検知)されても、在宅中の利用者を検知したものと判断するためである。
制御部511は、ソレノイド190(後述)に対する通電を制御するものである。すなわち、制御部511は、操作部502により警備装置500の警備モードを警備状態にする設定を受付けた場合に、ソレノイド190を通電し、警備モードを警備解除状態にする設定を受付けた場合に、ソレノイド190を非通電にする。また、制御部511は、操作部502によって受付けた利用者IDが、記憶部(不図示)等に予め定められた利用者IDか否かを照合することによって利用者認証を行い、その利用者認証が成功した場合に、ソレノイド190を非通電にし、利用者認証が成功しなかった場合に、ソレノイド190を通電する。また、制御部511は、通常時は、監視領域等に供給される電力等を操作部502やソレノイド190等に供給するが、例えば、停電時等により電力が供給できない場合には、外部給電部521によって供給された電力を操作部502に供給し、警備状態に設定した場合や利用者IDの利用者認証が成功しなかった場合、外部給電部521によって供給された電力をソレノイド190に供給して通電する。
外部給電部521は、制御部511に対して独立して電力を供給するものであり、例えば、電池等が該当する。停電時等により制御部511に汎用の電源からの電力供給をうけられない場合には、制御部511には外部給電部521からの電力が供給され、これにより停電時にもソレノイド190に対する通電および非通電の制御が可能となる。
次に、フロント1と錠前機構2の詳細について説明する。図3は、実施の形態1にかかる錠前装置の詳細を示す説明図である。図3に示すように、本実施の形態にかかる錠前装置100は、フロント1と錠前機構2とにより構成されており、錠前機構2は、上側に主錠2Aが配置され、下側に補助錠2Bが配置されている。
フロント1は、デッドロッキングラッチボルト10と、トリガーヘッド85と、デッドボルト110とが出入する開口部(不図示)を有し、錠前機構2の側面を覆う板状の金属板である。また、フロント1の上部と下部には、錠前機構2を出入口扉に固定するためのねじ穴(不図示)が設けられている。錠前装置100を出入口扉に設置した場合は、錠前機構2が出入口扉に埋め込まれ、フロント1が出入口扉の側面に見える状態となる。
まず、錠前機構2における主錠2Aについて説明する。主錠2Aは、デッドロッキングラッチボルト10と、手動操作部30と、スライダー40と、ロッキングレバー50と、コネクティングレバー60と、ハンドル部70と、ラッチホールド80と、トリガーヘッド85と、ソレノイド90とを主に備えている。本実施の形態にかかる主錠2Aにおいては、手動操作部30を利用者からの操作力により機械的に施解錠を行う機械的施解錠部とし、ソレノイド90を通電・非通電により電気的に施解錠を行う電気的施解錠部として説明する。なお、ハンドル部70は、補助錠2Bにも共通して備えられている。
デッドロッキングラッチボルト10は、先端部12と、軸部11と、ストッパー13とによって主に構成されており、出入口の壁面に設けられた孔部(不図示)に挿脱可能となっている。また、デッドロッキングラッチボルト10は、出入口扉を本締まり施錠状態にするデッドボルトの機能と、出入口扉を空締まり施錠状態にするラッチボルトの機能を兼ねており、上記両施錠、および出入口扉を解錠状態にすることが可能なボルトである。
ここで、主錠の本締まり施錠状態(施錠状態)とは、出入口扉に設けられたレバーハンドル70a(図1参照)を操作しても出入口扉を開放不可能な状態である。すなわち、フロント1の開口部を通過したデッドロッキングラッチボルト10の先端が、主錠2Aに対向して出入口の壁面に設けられた孔部(不図示)に挿入され、かつデッドロッキングラッチボルト10が孔部に保持され移動不能となった状態である。なお、図3の錠前機構2における主錠2Aは、本締まり施錠状態となっている。
また、主錠の空締まり施錠状態(解錠可能状態)とは、出入口扉が風圧等で開放できないように仮締まりを行うことであり、出入口扉に設けられたレバーハンドル70aを操作すると、デッドロッキングラッチボルト10が移動可能な状態である。すなわち、デッドロッキングラッチボルト10の先端が、主錠2Aに対向して出入口の壁面に設けられた孔部(不図示)から、フロント1を通過して抜き出し可能な状態であって、出入口扉に設けられたレバーハンドル70aを操作すると、ハンドル部70(後述)を介して受けた利用者からの操作力によって、デッドロッキングラッチボルト10が出入口の壁面の孔部からフロント1を通過してから抜き出され、出入口扉を開放できる状態である。
また、主錠の解錠状態とは、出入口扉に設けられたレバーハンドル70aを操作した場合であって、出入口扉を押圧するだけで開放可能な状態である。すなわち、レバーハンドル70aにより受付けた操作力をデッドロッキングラッチボルト10に伝達することで、デッドロッキングラッチボルト10を先端まで出入口扉の内部に移動させ、出入口扉を押圧するだけで開放できる状態である。
デッドロッキングラッチボルト10の軸部11は、内部が空洞となっており、上部と下部とが開放された金属性材料で形成されている。また、軸部11の一方の端面には、先端部12が接続されており、この先端部12は、施錠が行われるとフロント1の開口部(不図示)を通過して出入口の壁面の孔部に挿入される部分で、先端が略三角柱形状の金属性材料で形成されている。また、軸部11の他方の端面には、円柱形状の鉄心14が軸部11に対して移動可能に接続されている。鉄心14は、軸部11と接続されている端面と反対側の端面が錠前機構2の枠部に固定されており、デッドロッキングラッチボルト10がB方向に移動した場合、軸部11の内部に挿入されるものである。また、鉄心14の周囲にはバネ15が設けられており、デッドロッキングラッチボルト10は、バネ15により通常B方向と逆方向に付勢されている。
また、軸部11と先端部12との間にあるストッパー13は、バネ15により付勢されてB方向と逆方向に移動するデッドロッキングラッチボルト10を、ラッチホールド80の係止部83(後述)に当接することでデッドロッキングラッチボルト10を係止してその移動を止めるものである。これは、出入口扉が開放された状態から閉鎖される場合において、デッドロッキングラッチボルト10が出入口の壁面に当接することによる押圧力によってデッドロッキングラッチボルト10が錠前機構2の内部に挿入されるようにするため、先端部12の先端の略三角柱形状の部分のみフロント1から突出させた状態にするものである。
手動操作部30は、出入口扉を本締まり施錠状態から空締まり施錠状態、または空締まり施錠状態から本締まり施錠状態にするために、鍵を挿入して回動操作される監視領域の外部側に設けられたシリンダ30a(図1参照)や、つまみ部分を回動操作される監視領域の内部側に設けられたサムターン(不図示)が設けられている。そして、利用者が手動操作部30であるシリンダ30aまたはサムターンを回動操作すると、そのシリンダ30aまたはサムターンの回動に連動して、手動操作部30の内部に設けられた突部であるサムターンハブ31が図3におけるR1方向またはR1方向と逆方向に回動する。ここで、手動操作部30からの操作力のうち、サムターンハブ31をR1方向へ回動操作する操作力は、出入口扉を本締まり施錠状態から空締まり施錠状態にするものであって、サムターンハブ31をR1方向と逆方向へ回動操作する操作力は、出入口扉を空締まり施錠状態から本締まり施錠状態にするものである。従って、R1方向は、出入口扉の施錠状態から空締まり施錠状態へのサムターンハブ31の回動方向となり、R1方向と逆方向は、出入口扉の空締まり施錠状態から本締まり施錠状態へのサムターンハブ31の施錠方向への回動方向となる。手動操作部30は、監視領域の利用者が日常使用するものであって、外出する利用者が外部側のシリンダ30aから主錠2Aの施解錠を行ったり、帰宅した利用者が内部側のサムターンから主錠2Aの施解錠を行うための操作に用いられる。つまり、上述した操作部501からの操作による施解錠より、手動操作部30からの操作による施解錠の方が、主錠2Aにおいて主体的に利用される。
スライダー40は、手動操作部30の回動に連動して、図3における上方であるA方向、または図3における下方であるA方向と逆方向に移動するものであって、利用者による手動操作部30からの操作力をデッドロッキングラッチボルト10に伝達することによって錠前装置100を空締まり施錠状態または本締まり施錠状態にする。すなわち、A方向は、機械的解錠に伴うスライダー40の移動方向であり、A方向と逆方向は、機械的施錠に伴うスライダー40の移動方向となる。図4−1は、主錠2Aのスライダーの正面図である。図4−2は、図4−1におけるV1側から見たスライダーの側面図である。スライダー40は、金属性材料で形成されており、図4−1、4−2に示すように略板状で、部位44でスライダー40の背面を内側にして略90度に屈曲し、部位45でスライダー40の正面を内側にして略90度に屈曲した形状となっている。
また、スライダー40は、図4−1における右側に切欠き部42が設けられており、この切欠き部42が手動操作部30のサムターンハブ31に当接することにより押圧力を受けてスライダー40は移動する。具体的には、手動操作部30のR1方向の回動に連動してサムターンハブ31がR1方向に回動すると、サムターンハブ31が切欠き部42の傾斜部42aに当接して押圧し、スライダー40は上方に向かって押圧されてA方向へ移動する。また、手動操作部30のR1方向と逆方向の回動に連動してサムターンハブ31がR1方向と逆方向に回動すると、サムターンハブ31が切欠き部42の傾斜部42bに当接して押圧し、スライダー40は下方に向かって押圧されてA方向と逆方向へ移動する。なお、図3の錠前機構2における主錠2Aでは、スライダー40がA方向と逆方向へ移動した状態である。
また、スライダー40は、図4−1に示すように、下部に孔部41が設けられ、孔部41にはロッキングレバー50の突起部51が貫通しており、スライダー40がA方向に移動することにより孔部41の内壁面がロッキングレバー50の突起部51に当接して押圧することでロッキングレバー50を移動させる。また、スライダー40は、トリガーヘッド85に固定されているコ字状部材86(後述)に掛止するフック状の掛止部43が設けられている。また、スライダー40は、ソレノイド90への通電および非通電によって移動することはなく、詳細な説明については後述する。
ロッキングレバー50は、金属材料で形成されている。ロッキングレバー50は、錠前機構2の枠部に固定された支点52を軸にしてスライダー40に連動してR2方向または、R2方向と逆方向に回動する。ロッキングレバー50は、スライダー40を介して受けた利用者による手動操作部30からの操作力をデッドロッキングラッチボルト10に伝達することによって主錠2Aを空締まり施錠状態または本締まり施錠状態にする。また、支点52は、スライダー40と連結される突起部51と、ソレノイド90と連結される連結部53との間に設けられており、ロッキングレバー50は、その支点52の軸の周囲に設けられたバネ(不図示)によって通常R2方向と逆方向に付勢されている。図5−1は、主錠2Aのロッキングレバーの正面図である。図5−2は、図5−1におけるV2側から見た主錠2Aのロッキングレバーの側面図である。図5−3は、主錠2Aのロッキングレバーの上面図である。図5−4は、主錠2Aのロッキングレバーの底面図である。ロッキングレバー50は、図5−1で示しているロッキングレバー50の左側に、上面および両側面に囲まれて下部が開放された空間が形成されている。つまり、図5−2で示す図5−1におけるV2側から見たロッキングレバー50を参照すると、下部が開放されたコの字状の内部に空間が形成されていることになる。
ロッキングレバー50には、図5−1〜図5−4に示すように、円形の孔部内に円柱部材が差し込まれた突起部51が形成されており、この突起部51がスライダー40の孔部41を貫通してスライダー40と連結されている。そして、スライダー40のA方向への移動とともに突起部51がスライダー40の孔部41の内壁面に当接しながらA方向に押圧され、その結果、ロッキングレバー50は、バネによる付勢力に対抗してR2方向へ回動する。
また、ロッキングレバー50は、図5−1〜図5−4に示すように、上部の端部に板状に突出した突起部54が設けられており、この突起部54は、ロッキングレバー50がバネの付勢力によりR2方向と逆方向に回動する場合に、コネクティングレバー60を押圧する。すなわち、スライダー40がA方向と逆方向へ移動することによってスライダー40から突起部51への押圧が解除されると、ロッキングレバー50がバネの付勢力によりR2方向と逆方向に回動して、突起部54は、デッドロッキングラッチボルト10の外部方向(下方向)に移動してコネクティングレバー60を押圧する。一方、スライダー40がA方向へ移動することによって突起部51がA方向に押圧されると、ロッキングレバー50がバネの付勢力に対抗してR2方向に回動し、突起部54は、デッドロッキングラッチボルト10の内部方向(上方向)に移動してコネクティングレバー60への押圧を解除する。なお、図3の錠前機構2における主錠2Aでは、ロッキングレバー50がR2方向と逆方向に回動して、突起部54がデッドロッキングラッチボルト10の外部方向(下方向)へ移動した状態である。
また、ロッキングレバー50は、図5−1における左側の連結部53により、下部が開放された空間内にあるソレノイド90の鉄心92と連結されている。ソレノイド90が通電にされて鉄心92がD方向へ移動すると、ロッキングレバー50は、鉄心92に連動してD方向に引っ張られてR2方向に回動して、突起部54がデッドロッキングラッチボルト10の内部方向(上方向)に移動してコネクティングレバー60への押圧を解除する。一方、ソレノイド90が非通電にされ、ソレノイド90による鉄心92のD方向への吸引力が解除されると、ロッキングレバー50の支点52の軸の周囲に設けられたバネ(不図示)の付勢力により鉄心92がD方向と逆方向へ移動し、ロッキングレバー50は、R2方向と逆方向に回動して、突起部54がデッドロッキングラッチボルト10の外部方向(下方向)に移動してコネクティングレバー60を押圧する。
なお、上記のようにソレノイド90への通電、非通電によりロッキングレバー50を回動させる場合、スライダー40と連結されている突起部51は、孔部41内を移動するが孔部41に当接せずスライダー40は連動しない。つまり、図3、図4−1に示すように、スライダー40の孔部41は、突起部51が移動可能な大きさで形成されているため、ソレノイド90の鉄心92に連動してロッキングレバー50が回動しても突起部51が孔部41内を移動するのみでスライダー40が連動することはない。
コネクティングレバー60は、ハンドル部70のハンドル受け部材71に回動可能に連結されている連結部61を軸にしてR3方向またはR3方向と逆方向に回動するものであって、ハンドル部70を介して受けた利用者からの操作力をデッドロッキングラッチボルト10に伝達することによってデッドロッキングラッチボルト10を移動させ出入口扉を開放する。図6は、主錠2Aのコネクティングレバーの正面図である。コネクティングレバー60は、金属性材料で形成された板状の部材であり、連結部61の軸の周囲に設けられたバネ(不図示)により通常R3方向に付勢されている。また、コネクティングレバー60は、デッドロッキングラッチボルト10の軸部11の端部に係合するように、窪んだ形状の係合部63が形成されている。
また、コネクティングレバー60は、ロッキングレバー50がR2方向に回動して突起部54からの押圧が解除されると、バネによる付勢力によりR3方向に回動する。この場合、突起部51がデッドロッキングラッチボルト10の内部方向(上方向)へ移動することで、デッドロッキングラッチボルト10の軸部11に空間が設けられる。そして、コネクティングレバー60は、R3方向に回動することでその空間に入り、係合部63が軸部11の端部の位置にくるまで回動し、係合部63がデッドロッキングラッチボルト10の軸部11に係合することになる。
一方、コネクティングレバー60は、ロッキングレバー50がR2方向と逆方向に回動して突起部54により押圧されると、バネによる付勢力に対抗してR3方向と逆方向に回動する。この場合、突起部51がデッドロッキングラッチボルト10の外部方向(下方向)へ移動することで、デッドロッキングラッチボルト10の軸部11に設けられた空間が消滅していく。そして、コネクティングレバー60は、R3方向と逆方向に回動することでその空間から押し出され、コネクティングレバー60の全体がデッドロッキングラッチボルト10の軸部11から完全に出ることで、係合部63とデッドロッキングラッチボルト10の軸部11との係合を解除する。なお、図3の錠前機構2における主錠2Aは、係合部63とデッドロッキングラッチボルト10との係合が解除された状態である。
コネクティングレバー60は、係合部63がデッドロッキングラッチボルト10の軸部11に係合することで、ハンドル部70から受付けた利用者からの操作力をデッドロッキングラッチボルト10に伝達して、デッドロッキングラッチボルト10を移動させることで出入口扉を開放する。このようなコネクティングレバー60とデッドロッキングラッチボルト10とが係合している状態は、出入口扉の開放が可能な状態となるため、空締まり施錠状態となる。また、コネクティングレバー60は、係合部63とデッドロッキングラッチボルト10の軸部11との係合を解除することで、ハンドル部70から受付けた利用者からの操作力をデッドロッキングラッチボルト10に伝達不能にして、デッドロッキングラッチボルト10を移動不能にさせることで、出入口扉を開放不能、つまり閉鎖したままにする。このようなコネクティングレバー60とデッドロッキングラッチボルト10との係合が解除された状態は、出入口扉の開放が不可能な状態となるため、本締まり施錠状態となる。
ハンドル部70は、主錠2A側では、ハンドル受け部材71とレバーハンドル70a(図1参照)により構成されており、レバーハンドル70aは、ハンドル受け部材71に設けられた正方形のレバーハンドル孔72に差し込んで嵌合される。また、ハンドル受け部材71には、レバーハンドル孔72の周囲にバネ(不図示)が設けられており、バネの付勢力によりR4方向と逆方向に付勢されている。そして、空締まり施錠状態の出入口扉を開放するために、利用者からレバーハンドル70aをR4方向に回動する操作力を受付けた場合、ハンドル部70は、レバーハンドル孔72を軸としてR4方向に回動する。また、出入口扉を開放した後、利用者がレバーハンドル70aから手を離すと、ハンドル部70は、バネの付勢力によりR4方向と逆方向に回動し、図3の位置まで戻ることになる。
ラッチホールド80は、出入口扉が開放された状態から閉鎖される場合において、デッドロッキングラッチボルト10の先端部12の先端の略三角柱形状の部分のみフロント1から突出させた状態にするために、B方向と逆方向に移動するデッドロッキングラッチボルト10のストッパー13を係止部83に係止させることでその移動を止めるものであり、錠前機構2の枠部に固定された支点81を軸にして回動可能となっている。また、ラッチホールド80は、支点81の周囲に設けられたバネ(不図示)により付勢されることでR5方向と逆方向に移動しており、図3ではトリガーヘッド85に当接することでその移動が係止されている。ラッチホールド80は、後述するコ字状部材86がC方向へ移動することでその端部87に押圧され、バネによる付勢力に対抗してR5方向に回動する。ラッチホールド80は、R5方向に回動した場合に係止部83によりデッドロッキングラッチボルト10の移動を止める。なお、図3の錠前機構2における主錠2Aでは、ラッチホールド80がR5方向と逆方向に移動した状態である。
トリガーヘッド85は、略三角柱形状の金属性材料で形成されており、出入口扉が開放されている際に、本締まり施錠状態にならないように、スライダー40の移動を阻止するものである。トリガーヘッド85のフロント1側と反対側の端部には、断面がコの字形状の金属性材料で形成されたコ字状部材86が固定されている。トリガーヘッド85は、コ字状部材86側に設けられたバネ(不図示)により通常C方向に付勢されているが、出入口扉が閉鎖されている場合は、出入口の壁面により押圧されてC方向と逆方向に押圧されている。そして、トリガーヘッド85は、出入口扉が開放されるとともに出入口の壁面からの押圧が解除されてC方向へ移動し、出入口扉が閉鎖されるとともに出入口の壁面に押圧されてC方向と逆方向に移動して、錠前機構2の内部に挿入される。コ字状部材86の上面には、孔部が形成されており、出入口扉が閉鎖されている状態、すなわちトリガーヘッド85が錠前機構2の内部に挿入されている場合に、その孔部をスライダー40の掛止部43が通過可能となっている。また、コ字状部材86は、トリガーヘッド85のC方向の移動に連動してC方向に移動した場合、端部87がラッチホールド80の突起82をC方向に押圧する。なお、図3の錠前機構2における主錠2Aでは、トリガーヘッド85がC方向と逆方向に移動した状態である。
ソレノイド90は、電磁石の一種で、電磁誘導の作用によって、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換するものである。ソレノイド90は、ソレノイド本体91と、鉄心92とにより主に構成されている。そして、ソレノイド本体91には、孔部が設けられており、その孔部に鉄心92が挿入されている。鉄心92の上部は、連結部53によりロッキングレバー50と回動可能に連結されている。
鉄心92は、制御部510によりソレノイド90が通電されると、孔部に挿入する方向、すなわち図3におけるD方向に移動していき、連結部53をD方向へ移動させる。また、通電された後に予め定めた所定の時間が経過すると、制御部510によりソレノイド90が非通電にされ、ソレノイド90による鉄心92のD方向への吸引力が解除されると、ロッキングレバー50の支点52の軸の周囲に設けられたバネ(不図示)の付勢力により鉄心92はD方向と逆方向へ移動し、連結部53をD方向と逆方向へ移動させる。
本実施の形態の錠前装置100の主錠2Aは、以上のような構成となっている。なお、主錠2Aは、上述のように、機械的施解錠部を主体として監視領域の利用者が利用し、警備員等が電気的施解錠部を使用することが前提となっているため、機械的施解錠部により解錠した場合に常時施錠状態に復帰する機能を構成する必要がなく、機械的施解錠部の動作のみ、もしくは電気的施解錠部の動作のみで施解錠を行うことができる構成としている。すなわち、主錠2Aは、デッドロッキングラッチボルト10の移動と、機械的施解錠部と、電気的施解錠部とが全て連動する構成を取っておらず、機械的施解錠部と電気的施解錠部とを連結する連結部材が不要となる代わりに、ロッキングレバー50とコネクティングレバー60とを機械的施解錠部(手動操作部30)と電気的施解錠部(ソレノイド90)のそれぞれから操作して主錠2Aの施解錠を行うようにしている。具体的には、電気的施解錠部からの施解錠によりロッキングレバー50が回動する際に、スライダー40とロッキングレバー50とを連結する突起部51がスライダー40を連動させずに移動可能となるようなスライダー40の孔部41を設けている。従って、主錠2Aの部材を減少させ簡易な構成とすることができるとともに、安価で機械錠と電気錠とを備えた錠前自体を従来の機械錠と電気錠とを備えた錠前装置よりも小さく構成することが可能となる。
次に、錠前機構2における補助錠2Bについて説明する。補助錠2Bは、デッドボルト110と、ロッキングレバー150と、コネクティングレバー160と、ハンドル部70と、ソレノイド190とを主に備えている。なお、上述したようにハンドル部70は、主錠2Aにも共通して備えられている。
デッドボルト110は、先端部112と、軸部111と、ストッパー113とによって主に構成されており、出入口の壁面に設けられた孔部(不図示)に挿脱可能となっている。また、デッドボルト110は、出入口扉を施錠状態、解錠状態、または施錠状態に移行可能な施錠可能状態にすることが可能なボルトである。
ここで、補助錠の施錠状態とは、出入口扉に設けられたレバーハンドル70a(図1参照)を操作した場合であって、出入口扉を開放不可能にした状態である。すなわち、出入口扉に設けられたレバーハンドル70aからハンドル部70を介して受けた利用者からの操作力によって、デッドボルト110の先端が、補助錠2Bに対向して出入口の壁面に設けられた孔部(不図示)に挿入されている状態である。
また、補助錠の解錠状態とは、出入口扉を押圧するだけで開放可能な状態である。すなわち、デッドボルト110が先端まで出入口扉の内部に挿入され保持された状態であって、出入口扉に設けられたレバーハンドル70aを操作してもデッドボルト110が移動不能となった状態である。
また、補助錠の施錠可能状態とは、出入口扉に設けられたレバーハンドル70aを操作すると、デッドボルト110が移動可能な状態である。すなわち、デッドボルト110の先端が、フロント1を通過して、補助錠2Bに対向して出入口の壁面に設けられた孔部(不図示)に挿入可能な状態であって、出入口扉に設けられたレバーハンドル70aを操作すると、ハンドル部70を介して受けた利用者からの操作力によって、デッドボルト110がフロント1を通過して出入口の壁面の孔部に挿入され、出入口扉を開放できない状態である。
デッドボルト110の軸部111は、金属性材料で形成されている。また、軸部111の一方の端面には、先端部112が接続されており、この先端部112は、施錠が行われるとフロント1の開口部(不図示)を通過して出入口の壁面の孔部に挿入される部分で、先端が略直方体形状の金属性材料で形成されている。また、軸部111の他方の端面には、円柱形状の鉄心114が軸部111に対して移動可能に接続されている。鉄心114は、軸部111と接続されている端面と反対側の端面が錠前機構2の枠部に固定されており、デッドボルト110がF方向と反対方向に移動した場合、軸部111の内部に挿入されるものである。また、鉄心114の周囲にはバネ115が設けられており、デッドボルト110は、バネ115により通常F方向と逆方向に付勢されている。
また、軸部111と先端部112との間にあるストッパー113は、コネクティングレバー160(後述)により付勢されてF方向に移動するデッドボルト110を、フロント1に当接させることでデッドボルト110を係止してその移動を止めるものである。これは、軸部111がフロント1を通過しないようにして、先端部112のみフロント1から突出させて出入口の壁面の孔部に挿入させるためである。
ロッキングレバー150は、コネクティングレバー160(後述)の位置を調整するものであって、コネクティングレバー160を押圧したり、コネクティングレバー160への押圧を解除するものであり、錠前機構2の枠部に固定された支点152を軸にしてソレノイド190に連動してR6方向または、R6方向と逆方向に回動する金属性材料で形成されている。また、ロッキングレバー150は、回転軸である支点152と、ソレノイド190と連結される連結部153と、コネクティングレバー160(後述)を押圧する突起部154とが設けられており、支点152の軸の周囲に設けられたバネ(不図示)によって通常R6方向に付勢されている。図7−1は、補助錠2Bのロッキングレバーの正面図である。図7−2は、図7−1におけるV3側から見た補助錠2Bのロッキングレバーの側面図である。図7−3は、補助錠2Bのロッキングレバーの上面図である。図7−4は、補助錠2Bのロッキングレバーの底面図である。ロッキングレバー150は、図7−1で示しているロッキングレバー150の左側に、底面および両側面に囲まれて上部が開放された空間が形成されている。つまり、図7−2で示す図7−1におけるV3側から見たロッキングレバー150を参照すると、上部が開放されたコの字状の内部に空間が形成されていることになる。
また、ロッキングレバー150は、図7−1における左側の連結部153により、上部が開放された空間内にあるソレノイド190の鉄心192と連結されている。また、ロッキングレバー150は、図7−1〜図7−4に示すように、下部の端部に板状に突出した突起部154が設けられている。そして、ソレノイド190が非通電にされて、ソレノイド190による鉄心192のE方向と逆方向への吸引力が解除されると、ロッキングレバー150の支点152の軸の周囲に設けられたバネ(不図示)の付勢力により、鉄心192がE方向へ移動すると、ロッキングレバー150は、鉄心192に連動してE方向に引っ張られてR6方向に回動して、突起部154が上方向に移動してコネクティングレバー160を押圧する。これにより、コネクティングレバー160はデッドボルト110への係合を解除することになる。一方、ソレノイド190が通電にされ、ソレノイド190による鉄心192のE方向と逆方向への吸引力により、ロッキングレバー150の支点152の軸の周囲に設けられたバネ(不図示)の付勢力に対抗して鉄心192がE方向と逆方向へ移動し、ロッキングレバー150は、R6方向と逆方向に回動して、突起部154が下方向に移動してコネクティングレバー160への押圧を解除する。これにより、コネクティングレバー160はデッドボルト110へ係合することになる。なお、図3の錠前機構2における補助錠2Bでは、ロッキングレバー150がR6方向と逆方向に回動して、突起部154が下方向へ移動した状態である。
コネクティングレバー160は、ハンドル部70のハンドル受け部材73に回動可能に連結されている連結部161を軸にしてR7方向またはR7方向と逆方向に回動するものであって、ハンドル部70を介して受けた利用者からの操作力をデッドボルト110に伝達することによってデッドボルト110を出入口の壁面の孔部に移動させ、出入口扉を開放不能、すなわち施錠状態にする。図8は、補助錠2Bのコネクティングレバーの正面図である。コネクティングレバー160は、金属性材料で形成された板状の部材であり、連結部161の軸の周囲に設けられたバネ(不図示)により通常R7方向と反対方向に付勢されている。また、コネクティングレバー160は、デッドボルト110の軸部111の端部に係合するように、窪んだ形状の係合部163が形成されている。
また、コネクティングレバー160は、ロッキングレバー150がR6方向と反対方向に回動して突起部154からの押圧が解除されると、バネによる付勢力によりR7方向と反対方向に回動する。この場合、突起部154が下方向へ移動することで、コネクティングレバー160は、R7方向と反対方向に回動して、係合部163が軸部111の端部の位置にくるまで回動し、係合部163がデッドボルト110の軸部111に係合することになる。
一方、コネクティングレバー160は、ロッキングレバー150がR6方向に回動して突起部154により押圧されると、バネによる付勢力に対抗してR7方向に回動する。この場合、突起部154が上方向へ移動することで、コネクティングレバー160は、R7方向に回動して、係合部163とデッドボルト110の軸部111との係合を解除する。なお、図3の錠前機構2における補助錠2Bは、係合部163とデッドボルト110とが係合した状態である。
コネクティングレバー160は、係合部163がデッドボルト110の軸部111に係合することで、ハンドル部70から受付けた利用者からの操作力をデッドボルト110に伝達して、デッドボルト110を出入口の壁面の孔部に移動させることで出入口扉を開放不可能にする。このようにコネクティングレバー160とデッドボルト110とが係合している状態とは、デッドボルト110を出入口の壁面の孔部に移動させる(挿入させる)と出入口扉の開放が不可能な状態となるため、施錠可能状態となる。また、コネクティングレバー160は、係合部163とデッドボルト110の軸部111との係合を解除することで、ハンドル部70から受付けた利用者からの操作力をデッドボルト110に伝達不能にして、デッドボルト110を移動不能にさせることで出入口扉を開放可能にする。このようなコネクティングレバー160とデッドボルト110との係合が解除された状態とは、デッドボルト110が出入口の壁面の孔部に移動されず出入口扉の開放が可能な状態となるため、解錠状態となる。
ハンドル部70は、補助錠2B側では、ハンドル受け部材73とレバーハンドル70a(図1参照)により構成されており、レバーハンドル70aは、ハンドル受け部材73に設けられた正方形のレバーハンドル孔72に差し込んで嵌合される。また、ハンドル受け部材73には、レバーハンドル孔72の周囲にバネ(不図示)が設けられており、バネの付勢力によりR4方向と逆方向に付勢されている。そして、施錠可能状態の出入口扉を施錠状態にするためには、コネクティングレバー160がデッドボルト110の軸部111に係合している状態で、利用者からレバーハンドル70aをR4方向に回動する操作力を受付け、ハンドル部70は、レバーハンドル孔72を軸としてR4方向に回動する。また、出入口を施錠した後、利用者がレバーハンドル70aから手を離すと、ハンドル部70は、バネの付勢力によりR4方向と逆方向に回動し、図3の位置まで戻ることになる。
ソレノイド190は、電磁石の一種で、電磁誘導の作用によって、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換するものである。ソレノイド190は、ソレノイド本体191と、鉄心192とにより主に構成されている。そして、ソレノイド本体191には、孔部が設けられており、その孔部に鉄心192が挿入されている。鉄心192の下部は、連結部153によりロッキングレバー150と回動可能に連結されている。
鉄心192は、制御部511によりソレノイド190が非通電にされると、ソレノイド190による鉄心192のE方向と逆方向への吸引力が解除され、ロッキングレバー150の支点152の軸の周囲に設けられたバネ(不図示)の付勢力により、鉄心192が図3におけるE方向に移動していき、連結部153をE方向へ移動させる。また、制御部511によりソレノイド190が通電にされると、鉄心192が図3におけるE方向と反対方向に移動していき、連結部153をE方向と反対方向へ移動させる。本実施の形態では、操作部502から警備状態の設定を受付けた場合にソレノイド190が通電にされ、操作部502から警備解除状態の設定を受付けた場合にソレノイド190が非通電にされる。
本実施の形態の錠前装置100は、以上のような構成となっている。主錠2Aは、手動操作部30またはソレノイド90のいずれかからの操作により、本締まり施錠状態(施錠状態)または空締まり施錠状態(解錠可能状態)にすることができ、空締まり施錠状態において、レバーハンドル70aを操作することにより、解錠状態にすることができる。一方、補助錠2Bは、警備モードの設定に従ったソレノイド190からの操作により、解錠状態または施錠可能状態にすることができ、施錠可能状態において、レバーハンドル70aを操作することにより、施錠状態にすることができる。すなわち、補助錠2Bは、警備モードが警備解除状態に設定された場合に解錠状態にされ、警備モードが警備状態に設定された場合に施錠可能状態にされる。
次に、錠前装置100の動作について説明する。なお、手動操作部30(機械的施解錠部)からの操作により、主錠2Aを本締まり施錠状態または空締まり施錠状態にする場合を機械的施解錠とし、ソレノイド90(電気的施解錠部)の通電・非通電により主錠2Aを本締まり施錠状態または空締まり施錠状態にする場合を電気的施解錠とする。
まず、図3に示す主錠2Aが本締まり施錠状態で、補助錠2Bが施錠可能状態である錠前装置100において、ハンドル部70を操作した場合の動作について、図3および図9を参照して説明する。図9は、図3に示す錠前装置においてハンドル部が操作された場合を示す図である。
図3に示す主錠2Aは、コネクティングレバー60とデッドロッキングラッチボルト10の軸部11とは係合が解除された状態で離れているため、本締まり施錠状態となっている。この状態において、レバーハンドル孔72に嵌合しているレバーハンドルへの利用者からの操作力を受付けると、ハンドル部70がR4方向に回動し、ハンドル部70のハンドル受け部材71と連結部61で連結されているコネクティングレバー60が移動して、図9の主錠2Aの状態になる。つまり、図3の主錠2Aの状態で、レバーハンドルへの利用者からの操作力を受付けても、コネクティングレバー60がデッドロッキングラッチボルト10の軸部11に係合されていないため、ハンドル部70およびコネクティングレバー60は、デッドロッキングラッチボルト10を移動させることなく空転してしまう。従って、主錠2Aは、デッドロッキングラッチボルト10が移動不能な状態であるため、空締まり施錠状態になることはなく、レバーハンドルを操作しても施錠状態のままである。なお、この場合のコネクティングレバー60は、施解錠動作とは関係ないが、移動することによってロッキングレバー50の突起部54からの押圧が解除されるため、バネによりR3方向に多少回動する。
図3に示す補助錠2Bは、警備モードが警備状態に設定されており、コネクティングレバー160とデッドボルト110の軸部111とが係合された状態であるため、施錠可能状態となっている。この状態において、レバーハンドルへの利用者からの操作力を受付けると、ハンドル部70がR4方向に回動し、ハンドル部70のハンドル受け部材73と連結部161で連結されているコネクティングレバー160が移動して、コネクティングレバー160により軸部111を押圧されたデッドボルト110がF方向に移動して、図9の補助錠2Bの状態になる。従って、補助錠2Bは、レバーハンドルを操作すると、デッドボルト110が移動して施錠状態となる。
つまり、図3の錠前装置100において、レバーハンドルを回動させた場合、主錠2Aのデッドロッキングラッチボルト10は本締まり施錠状態を維持し、補助錠2Bのデッドボルト110は、施錠可能状態から施錠状態となり、図9の錠前装置100では、主錠2Aおよび補助錠2Bが施錠状態となり、出入口扉が開放されることはない。
また、図9の錠前装置100の状態において、利用者がレバーハンドルから手を離すと、バネによる付勢力によりハンドル部70がR4方向と逆方向に回動する。そうすると、ハンドル受け部材71と連結部61で連結されているコネクティングレバー60が移動し、ハンドル受け部材73と連結部161で連結されているコネクティングレバー160が移動して、図3の状態に戻る。
次に、図3に示す主錠2Aが本締まり施錠状態であって、補助錠2Bが施錠可能状態である錠前装置100から、手動操作部30を操作することにより主錠2Aが空締まり施錠状態にされた場合の動作(機械的解錠)について、図3および図10を参照して説明する。図10は、空締まり施錠状態の主錠2Aと施錠可能状態の補助錠2Bとを備えた錠前装置を示す図である。また、図10では、補助錠2Bは、警備モードを警備状態に設定されたままであるため、施錠可能状態のままである。ここで、主錠2Aが本締まり施錠状態から空締まり施錠状態にされ、補助錠2Bが警備状態のままである場合とは、例えば、不正侵入者によるピッキングやサムターン回しなどの不正解錠が行われた場合、もしくは正当な利用者が警備モードを警備解除状態に設定することを失念した状態で手動操作部30を操作した場合が考えられる。
図3に示す本締まり施錠状態の主錠2Aにおいて、利用者から手動操作部30をR1方向へ回動する操作力を受付けると、手動操作部30に連動してサムターンハブ31がR1方向へ回動する。そして、サムターンハブ31が回動することでサムターンハブ31がスライダー40の傾斜部42aを上方に向かって押圧し、スライダー40が上方向(A方向)へ移動する。このとき、孔部41の下部内壁面にロッキングレバー50の突起部51が当接しているので、突起部51はこの下部内壁面によってスライダー40の上方向の移動に伴って押圧され、従って、突起部51の移動により、ロッキングレバー50が支点52周りのR2方向に回動する。ロッキングレバー50がR2方向に回動すると、突起部54がデッドロッキングラッチボルト10の内部方向(上方向)へ移動し、コネクティングレバー60への押圧を解除する。ロッキングレバー50からの押圧が解除されると、コネクティングレバー60は、バネ(付図示)の付勢力によりR3方向に回動し、係合部63がデッドロッキングラッチボルト10の軸部11に係合して、図10に示すように、主錠2Aが空締まり施錠状態になる。
このとき、図3に示す補助錠2Bは、警備モードが警備状態に設定されており、コネクティングレバー160とデッドボルト110の軸部111とが係合された状態であるため、施錠可能状態となっている。そして、警備モードは警備状態に設定されているままであるため、図10に示す補助錠2Bにおいても図3と同様に同じく施錠可能状態である。
次に、図10に示す主錠2Aが空締まり施錠状態で、補助錠2Bが施錠可能状態である錠前装置100において、ハンドル部70を操作した場合の動作について、図10、図11を参照して説明する。図11は、図10に示す錠前装置においてハンドル部が操作された場合を示す図である。
図10に示す主錠2Aは、コネクティングレバー60とデッドロッキングラッチボルト10の軸部11とが係合された状態となっているため、機械的解錠により空締まり施錠状態となっている。この状態において、レバーハンドルへの利用者からの操作力を受付けると、ハンドル部70がR4方向に回動し、ハンドル部70とコネクティングレバー60は連結部61で連結されているため、コネクティングレバー60がB方向に移動する。コネクティングレバー60がB方向へ移動することで、軸部11によって係合部63に係合されているデッドロッキングラッチボルト10がバネ15の付勢力に対抗してB方向へ移動して、先端部12が錠前機構2の内部に挿入されていく。そして、デッドロッキングラッチボルト10の先端部12が完全に錠前機構2の内部に挿入されるまで移動すると、図11に示すように、主錠2Aは、フロント1からデッドロッキングラッチボルト10が突出されない状態となり解錠状態となる。
図10に示す補助錠2Bは、警備モードが警備状態に設定されており、コネクティングレバー160とデッドボルト110の軸部111とが係合された状態であるため、施錠可能状態となっている。この状態において、レバーハンドルへの利用者からの操作力を受付けると、ハンドル部70がR4方向に回動し、ハンドル部70のハンドル受け部材73と連結部161で連結されているコネクティングレバー160が移動して、コネクティングレバー160により軸部111を押圧されたデッドボルト110がF方向に移動して、図11の補助錠2Bの状態になる。従って、補助錠2Bは、レバーハンドルを操作すると、デッドボルト110が移動して施錠状態となる。
つまり、図10の錠前装置100において、レバーハンドルを回動させた場合、主錠2Aのデッドロッキングラッチボルト10は空締まり施錠状態から解錠状態となるが、補助錠2Bのデッドボルト110は、施錠可能状態から施錠状態となるため、図11の錠前装置100では、主錠2Aが解錠状態で、補助錠2Bが施錠状態となり、出入口扉が開放されることはない。従って、例えば、鍵を挿入することで操作する手動操作部30から主錠2Aが不正に解錠された場合でも、警備解除状態に設定されなければ補助錠2Bは解錠されず、不正な入館を阻止することができる。
次に、図3に示す主錠2Aが本締まり施錠状態であって、補助錠2Bが施錠可能状態である錠前装置100から、操作部502により警備モードを警備状態から警備解除状態に設定した場合の動作について、図3および図12を参照して説明する。図12は、本締まり施錠状態の主錠2Aと解錠状態の補助錠2Bとを備えた錠前装置を示す図である。なお、ここでは、主錠2Aは本締まり施錠状態のままである。
図3に示す補助錠2Bは、操作部502により警備解除状態の設定を受付け、警備装置500の警備モードが警備状態から警備解除状態に設定されると、制御部511によりソレノイド190が非通電にされ、鉄心192がE方向へ移動する。鉄心192がE方向へ移動すると、鉄心192に連結されている連結部153がE方向に引っ張られてロッキングレバー150がR6方向に回動する。ロッキングレバー150がR6方向に回動すると、突起部154が上方向へ移動し、コネクティングレバー160を押圧する。ロッキングレバー150から押圧されると、コネクティングレバー160は、連結部161を中心にR7方向に回転して、係合部163がデッドボルト110の軸部111への係合を解除して、図12に示すように、補助錠2Bが解錠状態になる。
次に、図12に示す主錠2Aが本締まり施錠状態であって、補助錠2Bが解錠状態である錠前装置100から、手動操作部30を操作することにより主錠2Aが空締まり施錠状態にされた場合の動作(機械的解錠)について、図12および図13を参照して説明する。図13は、空締まり施錠状態の主錠2Aと解錠状態の補助錠2Bとを備えた錠前装置を示す図である。ここで、主錠2Aを手動操作部30により本締まり施錠状態から空締まり施錠状態にする動作は、図3から図10への主錠2Aを手動操作部30により本締まり施錠状態から空締まり施錠状態にする動作と同様であるため説明を省略する。
次に、図13に示す主錠2Aが空締まり施錠状態で、補助錠2Bが解錠状態である錠前装置100において、ハンドル部70を操作した場合の動作について、図13、図14を参照して説明する。図14は、図13に示す錠前装置においてハンドル部が操作された場合を示す図である。
図13に示す主錠2Aは、機械的解錠により空締まり施錠状態となっており、コネクティングレバー60とデッドロッキングラッチボルト10の軸部11とが係合された状態となっている。この状態において、レバーハンドルへの利用者からの操作力を受付けた場合の動作は、図10から図11へのレバーハンドルへの利用者からの操作力を受けた場合の主錠2Aの動作と同様であるため説明を省略する。
図13に示す補助錠2Bは、警備モードが警備状態から警備解除状態に設定され、ソレノイド190が非通電にされたことで、コネクティングレバー160とデッドボルト110の軸部111との係合が解除された状態であるため、解錠状態となっている。この状態において、レバーハンドルへの利用者からの操作力を受付けると、ハンドル部70がR4方向に回動し、ハンドル部70のハンドル受け部材73と連結部161で連結されているコネクティングレバー160が移動して、図14の補助錠2Bの状態になる。つまり、図13の補助錠2Bの状態で、レバーハンドルへの利用者からの操作力を受け付けても、コネクティングレバー160がデッドボルト110の軸部111に係合されていないため、ハンドル部70およびコネクティングレバー160は、デッドボルト110を移動させることなく空転してしまう。従って、補助錠2Bは、デッドボルト110が移動不能な状態であるため、レバーハンドルを操作しても解錠状態のままである。
つまり、図13の錠前装置100において、レバーハンドルを回動させた場合、主錠2Aのデッドロッキングラッチボルト10は空締まり施錠状態から解錠状態となり、補助錠2Bのデッドボルト110は解錠状態を維持するため、図14の錠前装置100では、主錠2Aおよび補助錠2Bが解錠状態となり、出入口扉が開放されることになる。
なお、図14に示す錠前装置100において、出入口扉が開放される際、出入口の壁面からの押圧が解除されたトリガーヘッド85がバネの付勢力によりC方向へ移動するとともに、トリガーヘッド85に固定されているコ字状部材86もC方向へ移動する。コ字状部材86がC方向へ移動すると、端部87がラッチホールド80の突起82をC方向に押圧して、ラッチホールド80はR5方向に回動する。
そして、出入口扉が開放された後に利用者がレバーハンドルから手を離すと、ハンドル部70はバネの付勢力によりR4方向と逆方向に回動し、ハンドル部70と連結部61で連結されているコネクティングレバー60もB方向と逆方向に移動する。コネクティングレバー60がB方向と逆方向に移動することによって、係合部63に軸部11で係合されてB方向へ移動していたデッドロッキングラッチボルト10が、バネ15の付勢力によりB方向と逆方向に移動する。
このとき、ハンドル部70は、R4方向と逆方向に回動して、図13における空締まり施錠状態のハンドル部70の位置まで戻るが、デッドロッキングラッチボルト10は、図13における空締まり施錠状態まで戻らない。これは、デッドロッキングラッチボルト10がバネ15により付勢されてB方向と逆方向に移動している途中で、ストッパー13がR5方向に回動したラッチホールド80の係止部83に当接することで係止され、図13における空締まり施錠状態におけるデッドロッキングラッチボルト10の位置までは戻らず、デッドロッキングラッチボルト10の先端部12の先端の略三角柱形状の部分のみフロント1から突出させた状態となる。これにより、レバーハンドルからの操作力を受付けなくとも、出入口扉が閉鎖される場合の出入口の壁面から略三角柱形状の部分への押圧力により、デッドロッキングラッチボルト10が一旦錠前機構2に挿入されて出入口扉が閉鎖されることになる。
また、出入口扉が閉鎖される際、出入口の壁面から押圧されてトリガーヘッド85がバネの付勢力に対抗してC方向と逆方向へ移動するとともに、トリガーヘッド85に固定されているコ字状部材86もC方向と逆方向へ移動する。コ字状部材86がC方向と逆方向へ移動すると、端部87によるラッチホールド80の突起82へのC方向の押圧が解除されて、ラッチホールド80はバネの付勢力によりR5方向と逆方向に回動する。そして、出入口の壁面からの押圧力により一旦錠前機構2に挿入されたデッドロッキングラッチボルト10は、バネ15の付勢力によりB方向と逆方向に移動して、ラッチホールド80がR5方向と逆方向へ回動したためにストッパー13が係止部83に係止されることなく、出入口の壁面の孔部に先端部12が挿入されて空締まり施錠状態となる。
このように、操作部502により警備解除状態の設定を受付け、制御部511により警備モードを警備状態から警備解除状態へ設定することで補助錠2Bを施錠可能状態から解錠状態にし、かつ手動操作部30からの操作により主錠2Aを本締まり施錠状態から空締まり施錠状態にした場合(機械的解錠)に、レバーハンドルを操作することで出入口扉を開放することができる。すなわち、警備解除状態へ設定を行わずにレバーハンドルを操作したり、手動操作部30からの操作を行わずにレバーハンドルを操作しても、出入口扉は開放されることはない。
次に、図3に示す主錠2Aが本締まり施錠状態であって、補助錠2Bが施錠可能状態である錠前装置100から、ソレノイド90を通電することにより主錠2Aが空締まり施錠状態にされた場合の動作(電気的解錠)と、操作部502により警備モードを警備状態から警備解除状態に設定した場合の動作とについて、図3、15を参照して説明する。図15は、空締まり施錠状態の主錠2Aと解錠状態の補助錠2Bとを備えた錠前装置を示す図である。
なお、通電によって主錠2Aを解錠状態にする場合とは、例えば、監視領域に異常が発生し、異常検知情報の通報を受けた監視センタが待機中の警備員をその監視領域へ向かわせた場合である。そして、その監視領域に設置された出入口扉の鍵を所持していない警備員が駆けつけた場合、警備員は、出入口扉付近に設置された操作部501に警備員の利用者IDを入力する。操作部501が利用者IDを受付けると、制御部510は、受付けた利用者IDが、記憶部等に予め定められた利用者IDか否かを照合することで利用者認証を行い、その利用者認証が成功した場合に、ソレノイド90を通電する。
図3に示す本締まり施錠状態の主錠2Aにおいて、ソレノイド90が通電されると、鉄心92がD方向へ移動する。鉄心92がD方向へ移動すると、鉄心92に連結されている連結部53がD方向に引っ張られてロッキングレバー50がR2方向に回動する。ロッキングレバー50がR2方向に回動すると、突起部54がデッドロッキングラッチボルト10の内部方向(上方向)へ移動し、コネクティングレバー60への押圧を解除する。ロッキングレバー50からの押圧が解除されると、コネクティングレバー60は、バネの付勢力によりR3方向に回動し、係合部63がデッドロッキングラッチボルト10の軸部11に係合して、図15に示すように、主錠2Aが空締まり施錠状態になる。ここで、突起部51は、スライダー40の孔部41の下部内壁面に当接した状態となっているので、ソレノイド90を通電することによりロッキングレバー50がR2方向に回動した場合、突起部51は孔部41の下部内壁面に当接しなくなり孔部41内を上方向に移動する。このため、ロッキングレバー50のR2方向への回動にスライダー40が連動して上方向に移動することはなく、図3および図15に示すように、スライダー40は本締まり施錠状態においても空締まり施錠状態においても同じ位置を維持する。
図3に示す補助錠2Bは、操作部502により警備解除状態の設定を受付け、警備装置500の警備モードが警備状態から警備解除状態に設定されると、制御部511によりソレノイド190が非通電にされ、鉄心192がE方向へ移動する。鉄心192がE方向へ移動すると、鉄心192に連結されている連結部153がE方向に引っ張られてロッキングレバー150がR6方向に回動する。ロッキングレバー150がR6方向に回動すると、突起部154が上方向へ移動し、コネクティングレバー160を押圧する。ロッキングレバー150から押圧されると、コネクティングレバー160は、連結部161を中心にR7方向に回転して、係合部163がデッドボルト110の軸部111への係合を解除して、図15に示すように、補助錠2Bが解錠状態になる。
次に、図15に示す主錠2Aが空締まり施錠状態で、補助錠2Bが解錠状態である錠前装置100において、ハンドル部70を操作した場合の動作について、図15、図16を参照して説明する。図16は、図15に示す錠前装置においてハンドル部が操作された場合を示す図である。
図15に示す主錠2Aは、電気的解錠により空締まり施錠状態となっており、コネクティングレバー60とデッドロッキングラッチボルト10の軸部11とが係合された状態となっている。この状態において、レバーハンドルへの利用者からの操作力を受付けた場合の動作は、図10から図11へのレバーハンドルへの利用者からの操作力を受けた場合の主錠2Aの動作と同様であるため説明を省略する。
図15に示す補助錠2Bは、警備モードが警備解除状態に設定され、ソレノイド190が非通電にされたことで、コネクティングレバー160とデッドボルト110の軸部111との係合が解除された状態であるため、解錠状態となっている。この状態において、レバーハンドルへの利用者からの操作力を受付けた場合の動作は、図13から図14へのレバーハンドルへの利用者からの操作力を受けた場合の補助錠2Bの動作と同様であるため説明を省略する。
つまり、図15の錠前装置100において、レバーハンドルを回動させた場合、主錠2Aのデッドロッキングラッチボルト10は空締まり施錠状態から解錠状態となり、補助錠2Bのデッドボルト110は解錠状態を維持するため、図16の錠前装置100では、主錠2Aおよび補助錠2Bが解錠状態となり、出入口扉が開放されることになる。
このように、操作部502により警備解除状態の設定を受付け、制御部511により警備モードを警備状態から警備解除状態へ設定することで補助錠2Bを施錠可能状態から解錠状態にし、かつ操作部501から受付けた利用者IDにより利用者認証を行ってソレノイド90を通電することにより主錠2Aを本締まり施錠状態から空締まり施錠状態にした場合(電気的解錠)に、レバーハンドルを操作することで出入口扉を開放することができる。すなわち、警備解除状態へ設定を行わずにレバーハンドルを操作したり、操作部501からの利用者IDの受付けが行われずにレバーハンドルを操作しても、出入口扉は開放されることはない。
上述のように、錠前装置100の動作においては、操作部502により警備状態や警備解除状態の警備モードの設定を受付け、制御部511により操作部502により警備状態にする設定を受付けた場合はソレノイド190を通電し、警備解除状態にする設定を受付けた場合はソレノイド190を非通電にすることで、補助錠2Bを施錠可能状態もしくは解錠状態にしていた。これに対し、操作部502により受付けた利用者IDによる利用者認証の成功の有無によって、ソレノイド190を通電または非通電にして、補助錠2Bを施錠可能状態もしくは解錠状態にしてもよい。
具体的には、主錠2Aが本締まり施錠状態であって、補助錠2Bが施錠可能状態である錠前装置100から、操作部502により警備モードを警備状態から警備解除状態に設定した場合の動作(図3、12参照)について説明する。
図3に示す補助錠2Bは、操作部502により利用者ID(第1利用者識別情報)を受付けると、制御部511により受付けた利用者IDによる利用者認証が行われ、その利用者認証が成功した場合にソレノイド190が非通電にされ、鉄心192がE方向へ移動する。鉄心192がE方向へ移動すると、鉄心192に連結されている連結部153がE方向に引っ張られてロッキングレバー150がR6方向に回動する。ロッキングレバー150がR6方向に回動すると、突起部154が上方向へ移動し、コネクティングレバー160を押圧する。ロッキングレバー150から押圧されると、コネクティングレバー160は、連結部161を中心にR7方向に回転して、係合部163がデッドボルト110の軸部111への係合を解除して、図12に示すように、補助錠2Bが解錠状態になる。また、図15における補助錠2Bの解錠状態への動作も同様である。
このように、操作部502により利用者IDの入力を受付け、制御部511により利用者認証が成功した場合にソレノイド190を非通電にすることで補助錠2Bを施錠可能状態から解錠状態にし、かつ手動操作部30からの操作により主錠2Aを本締まり施錠状態から空締まり施錠状態にした場合(機械的解錠)に、レバーハンドルを操作することで出入口扉を開放することができる。すなわち、利用者認証が成功していない場合にレバーハンドルを操作したり、手動操作部30からの操作を行わずにレバーハンドルを操作しても、出入口扉は開放されることはない。
また、操作部502により利用者IDの入力を受付け、制御部511により利用者認証が成功した場合にソレノイド190を非通電にすることで補助錠2Bを施錠可能状態から解錠状態にし、かつ操作部501から受付けた利用者IDにより利用者認証を行ってソレノイド90を通電することにより主錠2Aを本締まり施錠状態から空締まり施錠状態にした場合(電気的解錠)に、レバーハンドルを操作することで出入口扉を開放することができる。すなわち、利用者認証が成功していない場合にレバーハンドルを操作したり、操作部501からの利用者IDの受付けが行われずにレバーハンドルを操作しても、出入口扉は開放されることはない。
次に、主錠2Aと補助錠2Bにおける施解錠の可否について説明する。図17は、主錠2Aと補助錠2Bによる施解錠の可否を示す図である。
図17に示すように、主錠2Aは、機械的施解錠部の手動操作部30による操作が行われた場合、および電気的施解錠部の操作部501による利用者IDを受付け利用者認証に成功した場合に、本締まり施錠状態(施錠状態)から空締まり施錠状態(解錠可能状態)への動作、またはその反対の動作を行うことができる。一方、主錠2Aは、操作部502による警備モードの設定を受付けた場合、および操作部502による利用者IDを受付け利用者認証に成功した場合には、本締まり施錠状態(施錠状態)から空締まり施錠状態(解錠可能状態)への動作、またはその反対の動作を行うことができない。
また、図17に示すように、補助錠2Bは、機械的施解錠部の手動操作部30による操作が行われた場合、および電気的施解錠部の操作部501による利用者IDを受付け利用者認証に成功した場合に、本締まり施錠状態(施錠可能状態)から空締まり施錠状態(解錠状態)への動作、またはその反対の動作を行うことができない。一方、補助錠2Bは、操作部502による警備モードの設定を受付けた場合、および操作部502による利用者IDを受付け利用者認証に成功した場合には、本締まり施錠状態(施錠可能状態)から空締まり施錠状態(解錠状態)への動作、またはその反対の動作を行うことができる。
上記は、操作部501から受付ける利用者ID(利用者ID−Aと称する)と操作部502から受付ける利用者ID(利用者ID−Bと称する)とが異なる場合である。従って、利用者ID−Aと利用者ID−Bとが同一である場合、すなわち同一の利用者IDにより制御部510、511それぞれにより利用者認証が行われる場合には、同一の利用者IDにより主錠2Aおよび補助錠2Bの施解錠動作を行うことができる(図17における「A=Bでは○」参照)。
このように、実施の形態1の錠前装置100における補助錠2Bでは、通常時には解錠状態であって、不正解錠や警備解除状態への設定の失念などによる不正行為が行われた場合に、レバーハンドル70aを操作すると、デッドボルト110を解錠状態から施錠状態にし、正常な解錠が行われた場合は解錠状態を維持する。従って、正規の利用者が入退館する場合には、主錠のみで出入口扉を施錠状態にするため、一回の施解錠操作で出入口扉の施解錠を可能にして煩雑な施解錠操作を強要せず利便性を向上させることができる。また、不正侵入者による不正解錠などの不正行為が行われた場合は、主錠2Aと補助錠2Bとにより出入口扉を施錠状態にするため、不正侵入者には解錠操作を困難にして防犯性を向上できる。また、正規の利用者が警備解除状態に設定することなく、鍵による手動操作部30からの解錠を試みても出入口扉が開放されず、正規の利用者に警備の解除の失念を気付かせることができるとともに、警備の解除の失念による監視センタ等への誤報も軽減することができる。
また、補助錠2Bは、警備装置500における警備状態または警備解除状態の設定に従ってデッドボルト110を移動させて施解錠を行うことが可能であるため、警備サービスを提供する警備会社等が補助錠2Bの鍵を受領することが不要となり、鍵の管理負担や警備サービスの運用負担を低減することができる。
(実施の形態1の変形例)
実施の形態1の補助錠2Bは、不正行為が行われた場合に解錠状態から施錠状態に移行する構成となっており、出入口扉の内部に設置されていた。従って、実施の形態1では、補助錠が設けられていることが外部側からはわからない。そこで、本実施の形態では、さらに、実施の形態1の補助錠が設置されていることを不正な第三者に連想させる模造のシリンダ(ダミーシリンダ)を出入口扉4に設置したものである。
図18は、実施の形態1の変形例にかかる補助錠と主錠とを設置した出入口扉の全体を示す図である。図18は、出入口扉4を部屋の外部から見た正面図であり、主錠2Aと補助錠2Bとを備えた錠前装置100とが出入口扉4の内部に設けられている。そして、補助錠2Bが内部に設置されている位置に対応する出入口扉4の外側にダミーシリンダ200が設けられている。図19は、電気的に施解錠操作を行う補助錠が設置されていることを連想させる描画を施したダミーシリンダの一例を示す図である。なお、補助錠2Bと主錠2Aの構成、機能、および施解錠動作については、実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
ダミーシリンダ200は、出入口扉4に二つ目の錠前機構(補助錠2B)が設置されていることを連想させるものであり、実際の施解錠の機能は有していない。すなわち、ダミーシリンダ200は、主錠2Aだけでなく補助錠2Bが設置されていることを連想させる。また、ダミーシリンダ200には、図19に示すように、IC(Integrated Circuit)タグなどを所持する手が描かれた描画201を施し、このダミーシリンダ200にICタグなどを近づけることによって、非接触で電気的に施解錠操作を行うことを連想させるようにしてもよい。
このように、実施の形態1の変形例では、出入口扉4に描画201を施したダミーシリンダ200を設けることで、外部から侵入しようとする不正侵入者に、出入口扉4には二つ目の錠前機構である補助錠2Bが設置されていることを視覚的に連想させることができる。従って、二つ目の錠前機構である電気錠を連想させる補助錠2Bの設置により、不正解錠が困難であることに加え居住者の防犯意識が高いことを不正侵入者に感じさせて犯意を失わせ犯行に及ぶことに至らなくさせるよう促すことができる。