JP5257971B2 - 胚性幹細胞から肝芽細胞を得る方法 - Google Patents

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本発明は、胚性幹細胞から肝芽細胞を高効率で得る方法に関し、さらに胚性幹細胞を分化誘導し、かつ分化した肝芽細胞を含む細胞群から、実質的に肝芽細胞からなる細胞培養物を得る方法にも関する。より詳しくは、本発明は、胚性幹細胞から肝芽細胞を得る方法、及び該方法により得られた実質的に肝芽細胞である細胞培養物の医薬としての使用に関する。
胚性幹細胞は、ES細胞(embryonic stem cell)ともいわれ、外、中、又は内胚葉のいずれの細胞にも分化できる未分化状態の細胞である。再生医療への応用のために胚性幹細胞から特定の細胞を確実に分化誘導する方法の提供が切望されており、種々の研究が行われている(非特許文献1; 非特許文献2)。そのような方法の一例として、胚性幹細胞から神経細胞を分化誘導する方法が知られている(非特許文献3)。本発明者は、既に胚性幹細胞から肝細胞を得る方法を発明した(特許文献1)。しかしながら、方法として満足すべきものではなかった。
胚性幹細胞からの肝細胞の分化誘導は、機能する肝細胞が極度に減少する肝不全等の疾患に対して細胞移植治療への応用が期待されている。胚性幹細胞から肝細胞を分化誘導する方法としては、例えば、非特許文献4; 非特許文献5; 非特許文献6; 非特許文献7に記載された方法が知られている。しかしながら、これらの方法では、目的の肝細胞とともに種々の異なる細胞が誘導されてしまい、純粋な肝細胞や、さらには肝臓の幹細胞である肝芽細胞のみからなる細胞培養物を得ることができないという問題があった。種々の細胞を含む細胞培養物から肝細胞のみを分離することは困難であり、経済的にもマイナスであるところから、純粋な肝細胞、さらには肝芽細胞のみからなる細胞培養物を簡便に、かつ再現性よく得ることができる方法の開発が求められていた。さらに、本発明者が先に発明した方法(特許文献1)においても、肝細胞へと分化させる効率は満足できるものではなかった。
特開2005−253374 Curr. Op. CellBiol., 7, 862, 1995 Stem Cells, 19, 193, 2001 Biol. Reprod., 68, 1727, 2003 Stem Cells, 20, 146, 2002 Liver Transplantation, 9, 1094, 2003 Hepatology, 36, 22, 2002 FEBS Letters, 497, 15, 2001
本発明の課題は、胚性幹細胞から肝臓の幹細胞である肝芽細胞を分化誘導し、かつ胚性幹細胞から分化した実質的な肝芽細胞群から実質的に目的の細胞からなる細胞培養物を得る方法を提供することにある。さらに詳しくは、効率よく100%の肝芽細胞集団を得ることにある。
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の成分を実質的に含まない培地を用い、該培地で胚様体形成開始4日以後に培養することにより、胚性幹細胞から肝芽細胞を再現性よく選択的に分化誘導し、かつ100%の肝芽細胞集団として得ることを見出した。本発明はこの知見を基に完成されたものである。
すなわち、本発明は、胚性幹細胞から肝芽細胞を分化誘導し、かつ胚性幹細胞から分化した肝芽細胞を含む細胞群から実質的に肝芽細胞群を得る方法であって、
(a)胚性幹細胞から胚様体を形成する工程、及び
(b)該胚様体を下記の培地:
・該培地は、肝細胞の成育に必須である1以上の物質を実質的に含まない
・該物質は、肝細胞の細胞に存在しかつ該細胞群に含まれる肝細胞の細胞以外の細胞には存在しない代謝酵素の産物である
・該培地は、該代謝酵素が該産物を生成するための基質を含む
で胚様体形成開始4日以後に培養する工程を含む方法である。
さらに、胚性幹細胞から肝芽細胞を分化誘導し、かつ胚性幹細胞から分化した肝芽細胞を含む細胞群から実質的に肝芽細胞群を得る方法であって、
(a)胚性幹細胞から胚様体を形成する工程、及び
(b)該胚様体を下記の培地:
・該培地は、肝細胞の成育に必須であるL−アルギニン、L−チロシン、及びピルビン酸からなる群から選ばれる1以上の物質である物質を実質的に含まない
・該培地は、さらにD−グルコースを実質的に含まず、L−プロリンを含む
・該培地は、該代謝酵素が該産物を生成するための基質を含む
で胚様体形成開始4日以後に培養する工程を含む方法である。
または、胚性幹細胞から肝芽細胞を分化誘導し、かつ胚性幹細胞から分化した肝芽細胞を含む細胞群から実質的に肝芽細胞群を得る方法であって、
(a)胚性幹細胞から胚様体を形成する工程、及び
(b)該胚様体を下記の培地:
・該培地は、肝細胞の成育に必須であるL−アルギニン、L−チロシン、及びピルビン酸からなる群から選ばれる1以上の物質である物質を実質的に含まない
・該培地は、さらにD−グルコースおよびL−シスチンを実質的に含まず、L−プロリンを含む
・該培地は、該代謝酵素が該産物を生成するための基質を含む
で胚様体形成開始4日以後に培養する工程を含む方法である。
さらに、上記に記載の方法により得られた実質的に肝芽細胞からなる細胞培養物に関する。
さらに加えるに、個体における肝組織を再生する方法であって、該細胞培養物を個体に投与する工程を含む方法に関する。
さらに、該細胞培養物を有効成分として含有する医薬に関する。この医薬は、個体における肝組織を再生する方法であって、該細胞培養物を有効成分として含有する医薬を個体に投与する工程を含む方法に関する。
本発明の好ましい態様によれば、該培地の該物質がL−アルギニン、L−チロシン、及びピルビン酸からなる群から選ばれる1以上の物質である上記いずれかの方法が提供される。この発明のさらに好ましい態様によれば、培地がさらにL−シスチンを実質的に含まない上記いずれかの方法;培地がさらにD−グルコースを実質的に含まない上記いずれかの方法;及び培地がL−プロリンを含む上記いずれかの方法が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、肝芽細胞を得る方法であって、その手段として培地の該物質がL−アルギニン、L−チロシン、及びピルビン酸からなる群から選ばれる1以上の物質である上記いずれかの培地を用いればよい。この発明のさらに好ましい態様によれば、さらにL−シスチンを実質的に含まない上記いずれかの培地;さらにD−グルコースを実質的に含まない上記いずれかの培地;及びL−プロリンを含む上記いずれかの培地を用いればよい。
さらに別の観点からは、上記いずれかの方法により得られた実質的に肝芽細胞からなる細胞培養物;個体における肝組織を再生する方法であって、上記の細胞培養物を個体に投与する工程を含む方法;上記の細胞培養物を有効成分として含有する医薬;個体における肝組織を再生する方法であって、該医薬を個体に投与する工程を含む方法;上記の細胞培養物を用いる肝組織の再生方法;上記の細胞培養物を用いる肝炎、肝不全などの肝疾患の治療方法;肝組織の再生用医薬を製造するための上記の細胞培養物の使用;肝炎、肝不全などの肝疾患の治療用医薬を製造するための上記の細胞培養物の使用が提供される。
本発明の方法で用いる胚性幹細胞としては、ヒト胚性幹細胞のほか、マウス胚性幹細胞など哺乳類動物の胚性幹細胞を用いることができ、既に培養細胞として確立されている胚性幹細胞を用いることができる。肝疾患の患者から分離した体細胞の核を、卵子の核と入れ替えることによって作り出したクローン胚から取り出した胚性幹細胞を用いることも好ましい。
胚性幹細胞は通常用いられる方法のいずれの方法で調製してもよい。例えば、いわゆるフィーダー細胞を用いて調製してもよいが、調製、培養にあたっては白血病抑制因子(leuke
mia inhibitory facor、LIF)を含む培地を用いるのが好ましい。その際、アミノ酸類(L−アルギニン、L−チロシン及びL−シスチンを含んでもよい)、ビタミン類、糖類(D−グルコースを含んでもよい)、無機塩類、及び血清などを含んだ培地を用いることができ、例えばGlasgow Minimum Essential Medium (GMEM)培地等の通常の培地を用いることができる。胚性幹細胞は継代培養しておくことも好ましい。
胚性幹細胞は分化誘導の前に、常法により胚様体(Embyoid body)としておくことが好ましい。胚様体の形成には例えば、LIFを添加していないGMEM培地を用い、Curr. Op. Cell
Biol., 7, 862, 1995等に記載されるhanging drop method等を用いることができる。培養は1×104細胞/ml〜1×105細胞/mlの濃度で4日行えばよい。胚様体が形成されたか否かは、例えば肉眼及び顕微鏡下の観察で確認できる。hanging drop methodを用いた場合、胚様体はhanging dropの下端に球状の細胞塊として沈降するので、肉眼では微小な白色の球状の細胞塊の形成、顕微鏡下では球状の細胞塊の形成を確認することができる。
本発明の方法に用いられる培地は、肝細胞の成育に必須である1以上の物質を実質的に含まず;該物質は、目的の細胞に存在しかつ該細胞群に含まれる目的の細胞以外の細胞には存在しない代謝酵素の産物であり;及び、該培地は、該代謝酵素が該産物を生成するための基質を含む。該物質が目的の細胞以外の細胞に存在する代謝酵素の作用によって該基質以外の基質からも生成する場合には、本発明の方法に用いられる培地は、好ましくは、その該基質以外の基質を含まない。なお、本明細書において「代謝酵素」とは1つの代謝反応に関与する「代謝酵素群」を示すこともある。
肝細胞に特異的な代謝酵素の基質を含み、該代謝酵素の産物を実質的に含まないこのような培地を用いることにより、肝芽細胞に特異的な代謝酵素の作用を誘導し、肝芽細胞に分化させると同時に目的外の細胞を死滅させることができるものと考えられる。従って、本発明に用いられる培地は、胚性幹細胞から分化した肝芽細胞を含む、実質的にすべてが肝芽細胞からなる細胞培養物を得るためにも有用である。
本発明の胚性幹細胞を肝芽細胞に分化誘導する方法に用いられる培地は、L−アルギニン、L−チロシン、L−シスチン、及びピルビン酸からなる群から選ばれる1以上の物質、好ましくは2以上の物質、特に好ましくは全てを含まない。また、好ましくは、上記培地はこれらの物質のほか、L−シスチン及び/又はD−グルコースを実質的に含まない。また、上記培地は好ましくはL-プロリンを含む。
L−アルギニン及びL−チロシンは必須アミノ酸であり、それぞれ肝臓においてL−オルニチンより尿素サイルクル、L−フェニルアラニンよりフェニルアラニンヒドロキシラーゼ複合体によって合成される。また、L−シスチンは、肝臓で特異的にL−システインのスルフヒドリル基が酸化されてジスルフィド結合が形成されて、合成される。エネルギー代謝の過程において、D−グルコースはピルビン酸に分解されるが、肝臓では、D−グルコースだけではなく、D−ガラクトース及びグリセロールが、肝臓に特異的な代謝酵素によりピルビン酸に分解される。
本明細書において、「物質等を実質的に含まない」とは、物質等が、培地中に全く含まれていないか、または目的の細胞に特異的な代謝酵素の作用の誘導を阻害しない濃度以下で含まれていることを意味する。例えば、通常の分析方法で検出できる濃度以下であるとき、すなわちアミノ酸は1ng/l以下、D−グルコースは10ng/l 以下、およびピルビン酸は10ng/l以下であるときは、この意味に含まれる。
上記培地は、好ましくは、L−プロリンを含む。L−プロリンは、の培地中での濃度は0.0012 g/l〜1.1 g/l、好ましくは 0.02 g/l〜0.06 g/l であればよい。上記培地はさらに、(1)アミノ酸類(2)ビタミン類、(3)糖類(好ましくはD−ガラクトース及び/又はグリセロールを含む)、(4)無機塩類を含んでもよい。さらに上記培地は、好ましくは、血清(ウシ、ブタ等)、増殖因子(インスリン、デキサメタゾンのような副腎皮質ホルモン剤等)、アポトーシス阻害剤(アプロチニン等)、還元剤(メルカプトエタノール等)を含んでもよい。なお、血清は、培地から除く必要のある成分を含有する可能性が高いので、好ましくは、透析を行って低分子物質を除去したものを用いる。
培地として、具体的には、例えば、Leibovitz's L-15培地を基にして、L−オルニチンを0.169g/l程度、L−プロリンを0.03g/l程度、グリセロールを0.365ml/l程度、D−ガラクトースを0.9g/l程度の濃度で、さらに仔牛血清を10%程度, インスリン10〜9mol/l程度、デキサメサゾン10〜9mol/l程度、アプロチニン50U/l程度、メルカプトエタノール5×10〜6mol/l程度の濃度で含有する培地を用いることができる。
胚性幹細胞を肝芽細胞に分化誘導する本発明の方法において、培養は、好ましくは、前述の胚様体形成開始4日以後から行うことができる。4日前でも後でも行えることができるが、細胞集団中の肝芽細胞の割合いの低下、つまり他の細胞のコンタミが起きる可能性があるが、使われる細胞集団の特性から、適応可能な範囲となることも考えられる。
培養は、通常の培養条件、例えば5%CO2、35〜40℃で行うことができ、例えば、1〜2日好ましくは2日に一度培地を交換しながら10日から90日間、好ましくは18日から30日間程度行えばよい。
本発明の方法により得られる細胞培養物には、肝芽細胞以外の細胞が実質的に含まれておらず、他の細胞を分離する工程を付加する必要がない。従って、例えば本発明の方法で得られた実質的に肝芽細胞からなる細胞培養物は、好適に、そのまま肝組織の再生に用いることが可能である。該細胞培養物をヒト又はマウス等の個体に投与することにより、その個体の肝組織が再生し、その結果肝組織の機能が再生される。従って、本発明の方法で得られた細胞培養物は、例えば、劇症肝炎、部分肝切除術後、又は肝硬変の自然経過中に生じる肝不全などの肝疾患の移植治療を含む再生医療に用いることができる。本明細書において「投与する」という用語は、血中注射する等の意味のほか、肝臓組織に細胞培養物を直接移植する細胞移植等の意味を含む。
本明細書において「実質的に肝芽細胞からなる」とは、肝芽細胞とその他の細胞の数の比(目的の細胞:その他の細胞)が10:1以下、好ましくは100:1以下、さらに好ましくは1000:1以下であることをいう。
本発明の方法により実質的に肝芽細胞のみからなる細胞培養物が得られたことは、インドシアニングリーン(ICG)が肝細胞に特異的に取り込まれることを利用した方法(Stem Cells, 20, 146, 2002等参照)や、肝芽細胞に特異的な遺伝子の発現を検出する方法等により確認することができる。なお、本発明の方法により得られた細胞は、未分化な肝細胞の性質を有するのみならず、胆管上皮細胞の性質も有するので、肝芽細胞であった。
本発明の方法により得られる実質的に肝芽細胞からなる細胞培養物は、劇症肝炎、部分肝切除術後、又は肝硬変の自然経過中に生じる肝不全などの肝疾患の治療のための医薬として用いることができる。本発明の方法により得られる細胞培養物を有効成分として含有する医薬は、薬理学的に許容される生理食塩水、添加剤、または培地等を含んでもよいが、血清、ウィルス等の不純物の混入のないのが好ましい。細胞培養物の細胞数は、各目的を達成できる細胞数があればよく、医薬として用いられる場合、10から10個あればよく、好ましくは10から10個である。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されることはない。
(材料及び方法)
(マウスES細胞の培養と胚様体の形成)
129/Ola系マウス由来のES細胞にE14tg2a及びそのOct3/4遺伝子座にブラストシジン耐性遺伝子を挿入し、未分化ES細胞を選択可能なEB5を、10%仔牛血清、非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM 2メルカプトエタノール及び1000U/ml、leukemia inhibitory factor
(LIF)を含むGMEM培地に定法(5%CO2、37℃)によって継代培養した。
ES細胞からの胚様体の形成は以下のように行った。ES細胞を生理食塩水(PBS)で洗浄後、0.05%トリプシン0.53mM EDTA処理、停止を行い、ピペッティングにて分散させた細胞を、1000個のES細胞を10%仔牛血清、非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、0.1mM 2メルカプトエタノールを含むGMEM培地(以下ESMとする)30μlに浮遊させ、培養皿の底に付着させ、天地を反転させ(以下hanging drop methodとする)、定法にて培養し、胚様体を形成させた。
(胚様体からの肝芽細胞への分化)
上記にて胚様体の形成開始4日後、反転させた培養皿を元に戻し、培地とともに胚様体を集め、毎分3000回転4℃ 5分間遠心分離し、培地を吸引除去し、表1に示す、肝細胞選択培地(HSM、特許文献1)を追加してゼラチンコーティングした培養皿に移して、さらに定法にて培養した。



(ICGによる肝細胞の同定)
ICGを培地に添加し15分間定法にて培養し、光学顕微鏡にて、ICGを取り込んで緑色を呈する肝細胞を確認した。
(肝細胞の濃縮の確認)
0.05%トリプシン0.53mM EDTA処理、停止を行い、ピペッティングにて分散させた細胞を光学顕微鏡下にて計測、解析した。
(肝細胞に特異的な遺伝子発現の確認)
細胞よりRNAを抽出し、逆転写酵素にて相補的DNA(cDNA)を合成し、PCR法(RT-PCR法)にてtransthyretin(TTR)、アルブミン(albumin)、 alpha-feto protein(AFP)、 tyrosine
aminotransferase(TAT)、alpha1-antitrypsin、glucose-6-phosphatase(G6P)、 phosphoenolpyruvate carboxykinase(PEPCK)、 CK8、 CK18、 CK19、 gamma-glutamyl
transpeptidase(G-GTP)、 ornithine transcarbamylase(OTC)、 phenylalanine hydroxylase(PAH)、 glycerol kinase、 galactokinase、 pyruvate kinase、 beta-actinを増幅し、2.0%アガロースゲルにて電気泳動した。
(ノザンブロット法)
細胞より抽出したRNAを、ホルムアルデヒド変成1.2%アガロースゲルにて電気泳動し、ナイロンメンブレンに転写後、CCAAT/enhancer binding protein(C/EBP)α、C/EBPβに対するプローブを用いてハイブリダイズし、定法にて解析した。
(実験結果)
(特許文献1(特開2005-253374)開示の方法における、肝細胞の回収効率)
ゼラチンコートした6孔プレートに1孔あたり胚様体を3個移して、ESMで培養31日後、培地をHSMに変えて10日培養すると、50%のみにICG陽性の細胞を認め、肝細胞以外の細胞が多数残存していた。ICG陽性肝細胞数は、ESM、HSMともに、1.3×105個で同数であった。特許文献1(特開2005-253374)で開示した方法では、ICG陽性細胞の回収は不十分であった。
(100%肝細胞の回収)
胚様体形成4日後HSMに培地を変更後培養すると、18日で100%均一の細胞の回収に成功した。ICG陽性率は80%だが、100%の細胞がalbuminを強発現しており、100%肝細胞の回収に成功したと考えられた。ICG陽性細胞数は、HSM培養下では9.7×102個に対し、ESM培養下では7.9×102個であり、HSMの方がICG陽性細胞の効率が優れていた。
(肝芽細胞の確認)
HSMで培養した細胞は、TTR、 AFPは陽性だが、TAT、 alpha1-antitrypsin、 G6P、 PEPCKは陰性で、未分化な肝細胞の性質を有していた。CK8、 CK18は陽性なので、肝細胞としての分化した性質を有していることは明確であり、ICG陽性、albumin強陽性な結果と一致した。胆管上皮細胞のみが発現するCK19、 G-GTPが陽性なので、HSMで回収された細胞は未分化な肝細胞の性質のみならず、胆管上皮細胞の性質をも有するので、肝芽細胞と考えられる。ノザンブロット法でも、肝芽細胞で発現の見られるC/EBPα、C/EBPβの発現がみられるので、肝芽細胞としての性質を有することがさらに確認された。
(HSMで生存するメカニズム)
Glycerol kinase、 galactokinase、 pyruvate kinaseが陽性なので、ブドウ糖、ピルビン酸がないHSMで培養中、ガラクトース、グリセロールを解糖してエネルギーとし、生存したものと考えられる。Galactokinase、 pyruvate kinaseは、ESMで培養した細胞では陰性だが、肝臓では陽性なので、HSMで培養すると、肝細胞への分化が誘導されてgalactokinase、 pyryvate kinaseが発現し、生存するメカニズムの存在が推定された。
本発明により、胚性幹細胞から肝芽細胞を分化誘導し、かつ胚性幹細胞から分化した実質的に肝芽細胞からなる細胞培養物を得る方法が提供される。例えば、本発明の方法により得られる実質的に肝芽細胞からなる細胞培養物は、肝芽細胞以外の細胞を実質的に含まないため、そのまま個体に投与することにより肝組織の再生に用いることが可能である。
胚様体2日、ESMで培養31日後、HSMに変更した条件でのICG陽性細胞を示す図である。 胚様体4日直後、HSMで培養し、100%肝細胞の回収成功を示す図である。 胚様体4日直後、HSMで培養し、細胞数の変化を示す図である。 ICG陽性細胞が88%、albuminは100%の細胞が陽性を示す図である。 未熟な肝細胞と、胆管上皮細胞両者に特有の遺伝子発現がみられることを示す図である。またgalactokinase、 pyruvate kinase陽性なことも示されている。 C/EBPα、C/EBPβの発現が、肝芽細胞に固有なことを示す図である。

Claims (1)

  1. 胚性幹細胞から肝芽細胞を分化誘導し、かつ胚性幹細胞から分化した肝芽細胞を含む細胞群から実質的に肝芽細胞群を得る方法であって、
    (a)胚性幹細胞から胚様体を形成する工程、及び
    (b)該胚様体を下記の表の組成の培地:
    で胚様体形成開始4日以後に培養する工程を含む方法。
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