開示を明瞭にするためにかつ限定するものではなく、本発明の詳細な説明は、本発明のある特定の特徴、実施形態又は適用例について記載し又は図示する下記のサブセクションに分割される。
<本発明の微小胞を単離する方法>
本明細書で使用される「微小胞」という用語は、細胞の原形質膜から形成された脂質二重層を含む小胞を指し、そのサイズは不均質で、約2nm〜約5000nmに及ぶ。微小胞がそこから形成される細胞を、本明細書では「宿主細胞」と呼ぶ。微小胞は、小胞の不均質集団であり、細胞外小胞(EV)、エクトソーム、微粒子、微小胞、ナノ小胞、脱粒小胞、膜粒子などを含むがこれらに限定するものではない。
微小胞は、それらの膜表面にそれらの宿主細胞からの膜タンパク質を示し、例えば、mRNA、miRNA、tRNA、RNA、DNA、脂質、タンパク質、又は感染粒子など、宿主細胞から微小胞内に分子を含有してもよい。これらの分子は、宿主細胞内に導入された組換え分子から得られてもよく又はそのような組換え分子であってもよい。微小胞は、細胞間通信において極めて重要な役割を演じ、体内で局所的にかつ遠位に作用することができ、標的細胞と融合することによって細胞内に変化を誘発させ、微小胞の表面及び/又は内部に輸送された分子を標的細胞に導入する。例えば微小胞は、抗腫瘍反転、がん、腫瘍免疫抑制、転移、腫瘍間質相互作用、血管新生及び組織再生に関係付けられてきた。微小胞は、例えば心疾患、HIV及び白血病を含むいくつかの疾患のバイオマーカーを保持することが示されているので、疾患を診断するのに使用されてもよい。
一実施形態において、微小胞は、
a) 微小胞を含有する生体液を得るステップ、
b) 生体液を清澄化して細胞残屑を除去するステップ、
c) 清澄化された生体液に沈殿剤を添加することによって微小胞を沈殿させるステップ、
d) 沈殿した微小胞を収集し、材料を洗浄して、沈殿剤を除去するステップ、及び
e) 洗浄した微小胞を、貯蔵又は後続の使用のために溶液中に懸濁するステップ
を含む方法において、微小胞を含有する生体液から単離される。
一実施形態において、生体液は、遠心分離によって清澄化される。代替の実施形態において、生体液は濾過によって清澄化される。
一実施形態において、沈殿した微小胞は遠心分離によって収集される。代替の実施形態において、沈殿した微小胞は濾過によって収集される。
一実施形態において、微小胞は、
a) 微小胞を含有する生体液を得るステップ、
b) 生体液を清澄化して、細胞残屑を除去するステップ、
c) 清澄化された生体液に沈殿剤を添加することによって微小胞を沈殿させるステップ、
d) 沈殿した微小胞を収集し、材料を洗浄して、沈殿剤を除去するステップ、
e) 洗浄した微小胞を溶液に懸濁するステップ、及び
f) 微小胞を処理して、核酸、炭水化物、脂質、小分子及び/又はタンパク質含量を分析するステップ
を含む方法において、微小胞を含有する生体液から単離される。
一実施形態において、生体液は遠心分離によって清澄化される。代替の実施形態において、生体液が濾過によって清澄化される。
一実施形態において、沈殿した微小胞は遠心分離によって収集される。代替の実施形態において、沈殿した微小胞が濾過によって収集される。
一実施形態において、本発明は、本発明の方法により生体液から微小胞を単離する試薬及びキットを提供する。
生体液は、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液(CSF)、痰、唾液、骨髄、滑液、眼房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液(前立腺液を含む)、カウパー液若しくは射精前の液、女性射出液、汗、糞便、髪、涙、嚢胞液、胸膜液及び腹膜液、心膜液、リンパ、糜粥、乳糜、胆汁、間質液、月経分泌物、膿、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜分泌物、水様便、膵液、副鼻腔からの洗浄液、気管支肺胞洗浄液又はその他の洗浄液であってもよい。
生体液は、胚盤胞腔、臍帯血又は母体循環から誘導されてもよく、それらは胎児又は母体由来のものであってもよい。生体液は、組織試料又は生検から誘導されてもよい。
生体液は、植物細胞又は植物細胞の培養物から誘導されてもよい。生体液は、酵母細胞又は酵母細胞の培養物から誘導されてもよい。
一実施形態において、生体液は細胞培養培地である。一実施形態において、細胞培養培地は、本発明の方法により微小胞を単離する前に、組織及び/又は細胞を使用して馴化される。
「馴化された」又は「馴化培地」という用語は、細胞若しくは組織の集団又はそれらの組合せが成長し、細胞若しくは組織の集団又はそれらの組合せが培地に因子を寄与する培地を指す。1つのそのような使用において、細胞若しくは組織の集団又はそれらの組合せは培地から除去されると共に細胞が生成する因子は残される。一実施形態において、生成された因子は微小胞である。培地は、当業者により選択される任意の適切な方法を介して馴化されてもよい。例えば培地は、EP1780267A2に記載される方法により培養されてもよい。
一実施形態において、微小胞は、微小胞の単離前に前処置された細胞又は組織から単離される。前処置は、例えば、特定の培地、少なくとも1種の添加剤、成長因子、血清が不足している培地又はこれらの組合せを含有する培地での培養を含んでいてもよい。あるいは、前処置は、細胞又は組織を、添加剤(例えば、インターロイキン、VEGF、転写因子の誘導物質、転写因子、ホルモン、神経伝達物質、医薬化合物、マイクロRNA)、変換剤(例えば、リポソーム、ウイルス、トランスフェクト剤など)と接触させることを含んでいてもよい。あるいは、前処置は、細胞又は組織を、変化させた身体状態(例えば、低酸素症、低温ショック、ヒートショックなど)に曝露することを含んでいてもよい。
一実施形態において、微小胞は、微小胞の単離前に前処置された細胞又は組織を使用して馴化された培地から単離される。前処置は、例えば、特定の培地、少なくとも1種の添加剤、成長因子、血清が欠乏している培地、又はこれらの組合せを含有する培地での培養を含んでいてもよい。あるいは、前処置は、細胞又は組織を、添加剤(例えば、インターロイキン、VEGF、転写因子の誘導物質、転写因子、ホルモン、神経伝達物質、医薬化合物、マイクロRNA)、変換剤(例えば、リポソーム、ウイルス、トランスフェクト剤など)と接触させることを含んでいてもよい。あるいは、前処置は、細胞又は組織を、変化した身体状態(例えば、低酸素症、低温ショック、ヒートショックなど)に曝露することを含んでいてもよい。
一実施形態において、生体液は植物からの抽出物である。代替の実施形態において、生体液は、植物細胞の培養物からの細胞培養培地である。代替の実施形態において、生体液が酵母抽出物である。代替の実施形態において、生体液が、酵母細胞の培養物からの細胞培養培地である。
本発明の方法は任意の温度で実施されてもよいが、当業者なら、ある特定の生体液が分解する可能性があり、そのような分解は、生体液が分解する温度よりも低い温度で試料が維持された場合に低減されることを、容易に理解することができる。一実施形態において、本発明の方法は4℃で実施される。代替の実施形態において、本発明の方法の少なくとも1つのステップが4℃で実施される。ある特定の実施形態において、生体液は、本発明の方法に供される前に希釈されてもよい。希釈は、微小胞の許容される収率を得るには試料の粘度が高過ぎる場合、試料の粘度を低減させるよう粘性生体液を必要とする可能性がある。希釈は1:2希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:3希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:4希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:5希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:6希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:7希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:8希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:9希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:10希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:20希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:30希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:40希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:50希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:60希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:70希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:80希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:90希釈であってもよい。あるいは、希釈は1:100希釈であってもよい。
生体液は、希釈剤が微小胞の機能的及び/又は構造的完全性に影響を及ぼさないことを前提として、任意の希釈剤で希釈されてもよい。当業者なら、適切な希釈剤を容易に選択することができる。希釈剤は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、細胞培養培地などとすることができる。
一実施形態において、生体液は、細胞残屑が除去されるように遠心力を加えることにより清澄化される。生体液に加えられる遠心力は、任意の細胞、溶解細胞、組織残屑を生体液から除去するのに十分であるが、加えられる遠心力は、微小胞を除去するのに、その大きさ、持続時間又はこれらの両方が不十分である。生体液は、清澄化を容易にするのに希釈を必要とする可能性がある。
生体液を清澄化するのに使用される遠心力の持続時間及び大きさは、例えば生体液、生体液のpH、単離された微小胞の所望の純度、単離された微小胞の所望のサイズ、微小胞の所望の分子量などを含む、当業者により容易に理解されるいくつかの因子に応じて様々であってもよい。一実施形態において、2000×gの遠心力が、生体液に30分間加えられる。
清澄化された生体液を沈殿剤と接触させて、微小胞を沈殿させる。一実施形態において、沈殿剤は、微小胞を取り囲みかつ溶媒和水を変位させる、任意の薬剤であってもよい。そのような沈殿剤は、ポリエチレングリコール、デキストラン及び多糖からなる群から選択されてもよい。
代替の実施形態において、沈殿剤は、微小胞の凝集を引き起こす可能性がある。
代替の実施形態において、沈殿剤は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、鉄イオン、硫酸アンモニウムなどの有機溶媒及びアルギネートなどの凝集剤からなる群から選択される。
清澄化された生体液を、微小胞を沈殿させるのに十分な時間、沈殿剤と接触させる。微小胞を沈殿させるのに十分な期間は、例えば生体液、生体液のpH、単離された微小胞の所望の純度、単離された微小胞の所望のサイズ、微小胞の所望の分子量などを含む、当業者に容易に理解されるいくつかの因子に応じて様々であってもよい。一実施形態において、微小胞を沈殿させるのに十分な期間は6時間である。
一実施形態において、清澄化された生体液を、4℃で微小胞を沈殿させるのに十分な期間、沈殿剤と接触させる。
生体液から微小胞を沈殿させるのに使用される沈殿剤の濃度は、例えば生体液、生体液のpH、単離された微小胞の所望の純度、単離された微小胞の所望のサイズ、微小胞の所望の分子量などを含む、当業者に容易に理解されるいくつかの因子に応じて様々であってもよい。
一実施形態において、沈殿剤はポリエチレングリコールである。本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの分子量は、約200Da〜約10,000Daであってもよい。一実施形態において、本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの分子量は、10,000Daより大きくてもよい。ある特定の実施形態において、本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの分子量は、10,000Da又は20,000Daである。分子量の選択は、例えば生体液の粘度、微小胞の所望の純度、微小胞の所望のサイズ、使用される生体液などを含む、様々な因子によって影響を受ける可能性がある。一実施形態において、本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの分子量は、約200Da〜約8,000Daであってもよく、又は200Da、300Da、400Da、600Da、1000Da、1450Da、1500Da、2000Da、3000Da、3350Da、4000Da、6000Da、8000Da、10000Da、20000Da若しくは35000Daの凡そいずれか、あるいはそれらの間の任意の範囲又は分子量である。
一実施形態において、本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの分子量は、約6000Daである。
一実施形態において、本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの平均分子量は、約8000Daである。
一実施形態において、本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの平均分子量は、約10000Daである。
一実施形態において、本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの平均分子量は、約20000Daである。
本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの濃度は、約0.5%w/v〜約100%w/vであってもよい。本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの濃度は、例えば生体液の粘度、微小胞の所望の純度、微小胞の所望のサイズ、使用される生体液などを含む、様々な因子によって影響を受ける可能性がある。
ある特定の実施形態において、ポリエチレングリコールは、約5%〜25%w/vの間の濃度にある本発明の濃度で使用される。ある特定の実施形態において、濃度は、約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%若しくは15%、又はこれらの値の任意の2つの間の範囲である。
一実施形態において、本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの濃度は約8.5%w/vである。
一実施形態において、本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの濃度は約6%w/vである。
一実施形態において、6000Daの平均分子量を有するポリエチレングリコールが、8.5%w/vの濃度で使用される。一実施形態において、ポリエチレングリコールは0.4Mの塩化ナトリウム中に希釈される。
一実施形態において、本発明の方法で使用されるポリエチレングリコールの濃度は、ポリエチレングリコールの平均分子量に反比例する。例えば、一実施形態において、4000Daの平均分子量を有するポリエチレングリコールが、20%w/vの濃度で使用される。代替の実施形態において、8000Daの平均分子量を有するポリエチレングリコールが、10%w/vの濃度で使用される。代替の実施形態において、20000Daの平均分子量を有するポリエチレングリコールが、4%w/vの濃度で使用される。
一実施形態において、沈殿した微小胞は、遠心力を適用することによって収集される。遠心力は、微小胞にペレットを形成させるのに十分でありかつそのペレットを形成させるのに十分な持続時間にわたって加えられるが、微小胞を損傷させるには不十分である。
生体液から微小胞を沈殿させるのに使用される遠心力の持続時間及び大きさは、例えば生体液、生体液のpH、単離された微小胞の所望の純度、単離された微小胞の所望のサイズ、微小胞の所望の分子量などを含む、当業者に容易に理解されるいくつかの因子に応じて変化し得る。一実施形態において、沈殿した微小胞は、60分間、10000×gの遠心力を適用することによって収集される。
沈殿した微小胞は、液体が微小胞の機能的及び/又は構造的完全性に影響を及ぼさないことを前提に、任意の液体で洗浄されてもよい。当業者なら、適切な液体を容易に選択することができる。液体は、例えばリン酸緩衝生理食塩水、細胞培養培地などであってもよい。
一実施形態において、洗浄ステップは、沈殿剤を除去する。一実施形態において、微小胞は、100kDaの分子量カットオフで濾過デバイスを使用して、遠心濾過を介して洗浄される。
単離された微小胞は、液体が微小胞の機能的及び/又は構造的完全性に影響を及ぼさないことを前提に、任意の液体で懸濁させてもよい。当業者なら、適切な液体を容易に選択し得る。液体は例えば、リン酸緩衝生理食塩水、細胞培養培地などであってもよい。
一実施形態において、単離された微小胞をさらに処理してもよい。さらなる処理は、特定サイズの微小胞の単離であってもよい。あるいは、さらなる処理は、特定のサイズ範囲の微小胞の単離であってもよい。あるいは、さらなる処理は、特定の分子量の微小胞の単離であってもよい。あるいは、さらなる処理は、特定の分子量範囲の微小胞の単離であってもよい。あるいは、さらなる処理は、特定の分子を示す又は含有する微小胞の単離であってもよい。
一実施形態において、本発明の微小胞をさらに処理して、電子顕微鏡法により決定されるように約2nm〜約1000nmのサイズを有する微小胞の調製物を単離する。代替の実施形態において、本発明の微小胞をさらに処理して、電子顕微鏡法により決定されるように約2nm〜約500nmのサイズを有する微小胞の調製物を単離する。代替の実施形態において、本発明の微小胞をさらに処理して、電子顕微鏡法により決定されるように約2nm〜約400nmのサイズを有する微小胞の調製物を単離する。代替の実施形態において、本発明の微小胞をさらに処理して、電子顕微鏡法により決定されるように約2nm〜約300nmのサイズを有する微小胞の調製物を単離する。代替の実施形態において、本発明の微小胞をさらに処理して、電子顕微鏡法により決定されるように約2nm〜約200nmのサイズを有する微小胞の調製物を単離する。代替の実施形態において、本発明の微小胞をさらに処理して、電子顕微鏡法により決定されるように約2nm〜約100nmのサイズを有する微小胞の調製物を単離する。代替の実施形態において、本発明の微小胞をさらに処理して、電子顕微鏡法により決定されるように約2nm〜約50nmのサイズを有する微小胞の調製物を単離する。代替の実施形態において、本発明の微小胞をさらに処理して、電子顕微鏡法により決定されるように約2nm〜約20nmのサイズを有する微小胞の調製物を単離する。代替の実施形態において、本発明の微小胞をさらに処理して、電子顕微鏡法により決定されるように約2nm〜約10nmのサイズを有する微小胞の調製物を単離する。
一実施形態において、後続の精製は、イムノアフィニティ、HPLC、接線流濾過、相分離/分配及びマイクロ流体力学からなる群から選択される方法を使用して行われる。
一実施形態において、単離された微小胞をさらに処理して、微小胞の表面に示される又は内部に含有される分子を分析する。分析された分子は、核酸、炭水化物、脂質、小分子、イオン、代謝物、タンパク質、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
培養細胞を使用して馴化された細胞培養培地を含む生体液: 一実施形態において、微小胞は、培養細胞を使用して馴化された培地から得られる。任意の培養細胞又は細胞の集団を、本発明の方法で使用してもよい。細胞は、幹細胞、初代細胞、細胞系、組織若しくは器官外植片、又はこれらの任意の組合せであってもよい。細胞は、その由来が同種、自家又は異種であってもよい。
一実施形態において、細胞は、骨髄穿刺液由来の細胞である。一実施形態において、骨髄穿刺液由来の細胞は、骨髄由来間葉系幹細胞である。一実施形態において、骨髄穿刺液由来の細胞は、単核細胞である。一実施形態において、骨髄穿刺液由来の細胞は、単核細胞と骨髄由来間葉系幹細胞の混合物である。
一実施形態において、骨髄由来間葉系幹細胞は、プラスチックの組織培養フラスコ内で骨髄穿刺液を最長で約4日間にわたり培養し、その後、洗浄して、非接着細胞を除去することによって、骨髄穿刺液から単離される。
一実施形態において、単核細胞は、フィコール勾配を使用した低密度遠心分離、及び界面での単核細胞の収集により、骨髄穿刺液から単離される。
一実施形態において、本発明の方法による微小胞の単離の前に、細胞インキュベーター内で、適切な温度及び気体混合物(典型的には、37℃、5%CO2、哺乳動物細胞に関して)で細胞を培養し成長させ又は維持する。培養条件は、細胞型ごとに広く変化し、当業者によって容易に決定される。
一実施形態において、1つ又は1つ超の培養条件を変化させる。一実施形態において、この変化は異なる表現型をもたらす。
一実施形態において、微小胞単離手順を開始するのに細胞がそれらの培地中に血清を必要とする場合、細胞培養培地に、微小胞のない血清を補充し、次いで細胞に添加して馴化する。微小胞を、馴化細胞培養培地から収集する。血清は、例えば超遠心分離、濾過、沈殿などの任意の適切な方法によって枯渇させてもよい。培地、血清濃度及び培養条件の選択は、例えば培養される細胞型、微小胞の所望の純度、培養細胞の所望の表現型などを含む、当業者により容易に理解される様々な因子によって影響を受ける。一実施形態において、微小胞単離手順に合わせて馴化された細胞培養培地は、微小胞単離手順の前の、細胞を内部で成長させた細胞培養培地と同じ型である。
一実施形態において、微小胞単離手順を開始するために、細胞培養培地を除去し、無血清培地を細胞に添加して馴化する。次いで微小胞を、馴化無血清培地から収集する。培地及び培養条件の選択は、例えば培養される細胞型、微小胞の所望の純度、培養細胞の所望の表現型などを含む、当業者に容易に理解される様々な因子によって影響を受ける。一実施形態において、無血清培地に、無血清培地での細胞の生存を促進させる又は増強する少なくとも1つの追加の因子を補充する。そのような因子は例えば、栄養上のサポートを細胞に提供し、細胞のアポトーシスを阻害し又は防止してもよい。
細胞は、細胞が培地中に微小胞を分泌できるよう十分な期間にわたり、培地中で培養される。細胞が培地中に微小胞を分泌できるのに十分な期間は、例えば培養される細胞型、微小胞の所望の純度、培養細胞の所望の表現型、微小胞の所望の収率などを含む、当業者に容易に理解される様々な因子によって影響を受ける。
次いで微小胞を、本発明の方法によって培地から除去する。
一実施形態において、微小胞単離手順の前に、細胞を、抗炎症化合物、抗アポトーシス化合物、線維症の阻害剤、血管新生を増強することが可能な化合物、免疫抑制化合物、細胞の生存を促進させる化合物、化学療法薬、細胞移動を増強することが可能な化合物、神経因性化合物及び成長因子からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤で処置する。一実施形態において、細胞は、微小胞がそこから収集される培地中で培養されるが、細胞は、抗炎症化合物、抗アポトーシス化合物、線維症の阻害剤、血管新生を増強することが可能な化合物、免疫抑制化合物、細胞の生存を促進させる化合物及び成長因子からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤で処置される。
一実施形態において、抗炎症化合物は、米国特許第6,509,369号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、抗アポトーシス化合物は、米国特許第6,793,945号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、線維症の阻害剤は、米国特許第6,331,298号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、血管新生を増強することが可能な化合物は、米国特許出願第2004/0220393号明細書又は米国特許出願第2004/0209901号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、免疫抑制化合物は、米国特許出願第2004/0171623号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、細胞の生存を促進させる化合物は、米国特許出願第2010/0104542号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、成長因子は、TGF−β1、2及び3を含むTGF−βファミリー、骨形成タンパク質(BMP−2、−3、−4、−5、−6、−7、−11、−12及び−13)、線維芽細胞成長因子−1及び−2、血小板由来成長因子−AA、−AB、及び−BB、多血小板血漿、インスリン成長因子(IGF−I、II) 成長分化因子(GDF−5、−6、−8、−10、−15)、血管内皮細胞由来成長因子(VEGF)、プレイオトロフィン、エンドセリンのメンバーからなる群から選択される少なくとも1種の分子であってもよい。他の医薬化合物は、例えば、ニコチンアミド、低酸素誘導因子1−アルファ、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1及びGLP−2ミメティボディ及びII、エキセンジン−4、ノダル、ノギン、NGF、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、テナシン−C、トロポエラスチン、トロンビン由来ペプチド、カテリシジン、デフェンシン、ラミニン、フィブロネクチン及びビトロネクチンなどの接着性細胞外マトリックスタンパク質の細胞及びヘパリン結合ドメインを含有する生物学的ペプチド、例えば米国特許出願第2004/0209901号明細書及び米国特許出願第2004/0132729号明細書に開示されている化合物などのMAPK阻害剤を含むことができる。
一実施形態において、微小胞は、骨髄由来間葉系幹細胞の培養物を使用して馴化された細胞培養培地を含む生体液から単離され:
a) 骨髄由来間葉系幹細胞の集団を得て、フラスコに1:4の希釈率の細胞を播くステップ、
b) 細胞が80〜90%の集密度になるまで、細胞を培地で培養するステップ、
c) 培地を除去し清澄化して、細胞残屑を除去するステップ、
d) 清澄化された生体液に沈殿剤を添加することによって微小胞を沈殿させるステップ、
e) 沈殿した微小胞を収集し、材料を洗浄して沈殿剤を除去するステップ、及び
f) 洗浄した微小胞を、貯蔵又は後続の使用のために溶液中に懸濁させるステップ
が含まれる。
一実施形態において、微小胞は、骨髄由来単核細胞の培養物を使用して馴化された細胞培養培地を含む生体液から単離され:
a) 骨髄由来単核細胞の集団を得て、フラスコに1:4の希釈率の細胞を播くステップ、
b) 細胞が80〜90%の集密度になるまで、細胞を培地で培養するステップ、
c) 培地を除去し清澄化して、細胞残屑を除去するステップ、
d) 清澄化された生体液に沈殿剤を添加することによって微小胞を沈殿させるステップ、
e) 沈殿した微小胞を収集し、材料を洗浄して沈殿剤を除去するステップ、及び
f) 洗浄した微小胞を、貯蔵又は後続の使用のために溶液中に懸濁させるステップ
が含まれる。
一実施形態において、骨髄由来間葉系幹細胞は、95%の加湿空気及び5%のCO2中、37℃で、20%のウシ胎児血清及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを補充したα−MEMを含む培地で培養される。
一実施形態において、骨髄由来単核細胞は、95%の加湿空気及び5%のCO2中、37℃で、20%のウシ胎児血清及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを補充したα−MEMを含む培地で培養される。
一実施形態において、培地は遠心分離によって清澄化される。
一実施形態において、沈殿剤は、平均分子量6000を有するポリエチレングリコールである。一実施形態において、ポリエチレングリコールは、約8.5w/v%の濃度で使用される。一実施形態において、ポリエチレングリコールは、最終濃度0.4Mを有する塩化ナトリウム溶液中に希釈される。
一実施形態において、沈殿した微小胞は、遠心分離によって収集される。
一実施形態において、単離された微小胞は、リン酸緩衝生理食塩水を使用して、100kDa分子量カットオフによる膜を使用した遠心濾過を介して洗浄される。
血漿を含む生体液: 一実施形態において、微小胞は血漿から得られる。血漿は、健康な個体から、あるいは特定の疾患表現型を持つ個体から、得られてもよい。
一実施形態において、微小胞は、血漿を含む生体液から単離され:
a) 血漿を得て血漿を細胞培養培地で希釈するステップ、
b) 希釈された血漿に沈殿剤を添加することによって微小胞を沈殿させるステップ、
c) 沈殿した微小胞を収集し、材料を洗浄して沈殿剤を除去するステップ、
d) 洗浄した微小胞を、貯蔵又は後続の使用のための溶液に懸濁させるステップ
が含まれる。
一実施形態において、血漿は、培地で1:10に希釈される。一実施形態において、培地がα−MEMである。
一実施形態において、沈殿剤は、平均分子量6000を有するポリエチレングリコールである。一実施形態において、ポリエチレングリコールは、約8.5w/v%の濃度で使用される。一実施形態において、ポリエチレングリコールは、0.4Mの最終濃度を有する塩化ナトリウム溶液中に希釈される。
一実施形態において、沈殿した微小胞は、遠心分離によって収集される。
一実施形態において、単離した微小胞は、リン酸緩衝生理食塩水を使用して、100kDa分子量カットオフによる膜を使用する遠心分離濾過を介して洗浄される。
骨髄穿刺液を含む生体液: 一実施形態において、微小胞は、骨髄穿刺液から得られる。一実施形態において、微小胞は、骨髄穿刺液の細胞画分から得られる。一実施形態において、微小胞は、骨髄穿刺液の無細胞画分から得られる。
一実施形態において、微小胞は、骨髄穿刺液から培養された細胞から得られる。一実施形態において、骨髄穿刺液から培養された細胞は、微小胞がそこから単離される細胞培養培地を馴化するのに使用される。
一実施形態において、微小胞は、骨髄穿刺液を含む生体液から単離され、
a) 骨髄穿刺液を得て、骨髄穿刺液を無細胞部分及び細胞部分に分離するステップ、
b) 無細胞部分を希釈するステップ、
c) 希釈した無細胞部分を清澄化して、細胞残屑を除去するステップ、
d) 希釈した無細胞部分に沈殿剤を添加することによって微小胞を無細胞部分中に沈殿させるステップ、
e) 沈殿した微小胞を収集し、材料を洗浄して沈殿剤を除去するステップ、及び
f) 洗浄した微小胞を、貯蔵又は後続の使用のための溶液中に懸濁させるステップ
が含まれる。
一実施形態において、無細胞部分は培地により1:10に希釈される。
一実施形態において、培地はα−MEMである。
一実施形態において、希釈された無細胞部分は遠心分離によって清澄化される。
一実施形態において、沈殿剤は、平均分子量6000を有するポリエチレングリコールである。一実施形態において、ポリエチレングリコールは、約8.5w/v%の濃度で使用される。一実施形態において、ポリエチレングリコールは0.4Mの最終濃度を有する塩化ナトリウム溶液中に希釈される。
一実施形態において、沈殿した微小胞は遠心分離によって収集される。
一実施形態において、単離された微小胞は、リン酸緩衝生理食塩水を使用して、100kDa分子量カットオフによる膜を使用した、遠心濾過を介して洗浄される。
一実施形態において、細胞部分は、細胞を単離し収集するようにさらに処理される。一実施形態において、細胞部分は、骨髄由来間葉系幹細胞を単離し収集するようにさらに処理される。一実施形態において、細胞部分は、骨髄由来単核細胞を単離し収集するように、さらに処理される。一実施形態において、細胞部分は、微小胞が後でそこから誘導され得る培地を馴化するのに使用される。
一実施形態において、微小胞は細胞部分から単離される。細胞部分は、微小胞の単離前に、ある期間にわたってインキュベートされてもよい。あるいは微小胞は、細胞部分が収集された直後に細胞部分から単離されてもよい。
一実施形態において、細胞部分は、抗炎症化合物、抗アポトーシス化合物、線維症の阻害剤、血管新生を増強することが可能である化合物、免疫抑制化合物、細胞の生存を促進させる化合物、化学療法薬、細胞移動を増強することが可能な化合物、神経因性化合物、及び成長因子からなる群から選択される少なくとも1種の薬剤でも処置される。
一実施形態において、抗炎症化合物は、米国特許第6,509,369号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、抗アポトーシス化合物は、米国特許第6,793,945号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、線維症の阻害剤は、米国特許第6,331,298号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、血管新生を増強することが可能な化合物は、米国特許出願第2004/0220393号明細書又は米国特許出願第2004/0209901号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、免疫抑制化合物は、米国特許出願第2004/0171623号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において、細胞の生存を促進させる化合物は、米国特許出願第2010/0104542号明細書に開示される化合物から選択されてもよい。
一実施形態において成長因子は、とりわけTGF−β1、2及び3を含むTGF−βファミリー、骨形成タンパク質(BMP−2、−3、−4、−5、−6、−7、−11、−12及び−13)、線維芽細胞成長因子−1及び−2、血小板由来成長因子−AA、−AB、及び−BB、多血小板血漿、インスリン成長因子(IGF−I、II) 成長分化因子(GDF−5、−6、−8、−10、−15)、血管内皮細胞由来成長因子(VEGF)、プレイオトロフィン、エンドセリンのメンバーからなる群から選択される少なくとも1種の分子であってもよい。他の医薬化合物は、例えば、ニコチンアミド、低酸素誘導因子1−アルファ、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、GLP−1及びGLP−2ミメティボディ及びII、エキセンジン−4、ノダル、ノギン、NGF、レチノイン酸、副甲状腺ホルモン、テナシン−C、トロポエラスチン、トロンビン由来ペプチド、カテリシジン、デフェンシン、ラミニン、フィブロネクチン及びビトロネクチンなどの接着性細胞外マトリックスタンパク質の細胞及びヘパリン結合ドメインを含有する生物学的ペプチド、例えば米国特許出願第2004/0209901号明細書及び米国特許出願第2004/0132729号明細書に開示されている化合物などのMAPK阻害剤を含むことができる。一実施形態において、細胞部分が低酸素条件下で培養される。一実施形態において、細胞部分がヒートショックを受ける。
尿を含む生体液: 一実施形態において、微小胞が尿から得られる。尿は、健康な個体から、あるいは特定の疾患表現型を持つ個体から得られてもよい。
一実施形態において、微小胞は、尿を含む生体液から単離され:
a) 尿試料を得るステップ、
b) 尿を清澄化して細胞残屑を除去するステップ、
c) 清澄化された尿に沈殿剤を添加することによって微小胞を沈殿させるステップ、
d) 沈殿した微小胞を収集し、材料を洗浄して沈殿剤を除去するステップ、
e) 洗浄した微小胞を、貯蔵又は後続の使用のための溶液中に懸濁するステップ
が含まれる。
一実施形態において、尿は遠心分離によって清澄化される。
一実施形態において、沈殿剤は、平均分子量6000を有するポリエチレングリコールである。一実施形態において、ポリエチレングリコールは、約8.5w/v%の濃度で使用される。一実施形態において、ポリエチレングリコールは0.4Mの最終濃度を有する塩化ナトリウム溶液中に希釈される。
一実施形態において、沈殿した微小胞は遠心分離によって収集される。
一実施形態において、単離された微小胞は、リン酸緩衝生理食塩水を使用して、100kDaの分子量カットオフによる膜を使用した、遠心濾過を介して洗浄される。
本発明の代替の実施形態において、生体液は濾過によって清澄化される。代替の実施形態において、沈殿した微小胞は濾過によって収集される。代替の実施形態において、生体液は清澄化され、沈殿した微小胞は濾過によって収集される。ある特定の実施形態において、生体液及び/又は沈殿した微小胞のいずれかの濾過は、外力を加えることを必要とした。外力は、重力、正規重力又は遠心力のいずれかであってもよい。あるいは外力は、吸引であってもよい。
一実施形態において、本発明の実施形態は、濾過による生体液の清澄化を容易にする装置を提供する。一実施形態において、本発明は、濾過による沈殿微小胞の収集を容易にする装置を提供する。一実施形態において、本発明は、濾過によって、生体液の清澄化及び沈殿微小胞の収集を容易にする装置を提供する。一実施形態において、装置は微小胞を洗浄もする。
一実施形態において、装置は、図4に示される装置である。この実施形態において、生体液は、内側チャンバに添加される。内側チャンバは、内側チャンバ内に微小胞よりも大きいサイズの任意の粒子を保持しながら、微小胞を通すことができる孔径を持つ、第1のフィルターを有する。一実施形態において、内側チャンバのフィルターの孔径は、1μmである。この実施形態において、生体液が内側チャンバからフィルターを経て通過するとき、1μmよりも大きい粒子が内側チャンバ内に保持され、全てのその他の粒子は、内側チャンバの底部と第2のフィルターとの間の領域に収集される。
第2のフィルターは、微小胞を通すことができない孔径を有する。一実施形態において、内側チャンバの第2のフィルターの孔径が0.01μmである。この実施形態において、生体液が第2のフィルターを通過するとき、微小胞が、内側チャンバの底部と第2のフィルターとの間の領域に保持され、残りの全ての粒子及び流体は、装置の底部に収集される。
当業者は、例えば所望のサイズの微小胞を選択するために、装置が、様々な孔径を持つ2つよりも多くのフィルターを有することができることを、容易に理解することができる。
一実施形態において、沈殿剤は、内側チャンバ内の生体液に添加される。一実施形態において、沈殿剤は、濾液が第1のフィルターを通過した後に濾液に添加される。本発明の装置によって利用されるフィルター膜は、フィルター膜が生体液と反応しないこと又は生体液中の成分と結合しないことを前提として、任意の適切な材料から作製されてもよい。例えばフィルター膜は、例えばポリエーテルスルホン、ナイロン6、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ゼータ修飾ガラスマイクロファイバー、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、再生セルロースなどの、低結合材料から作製されてもよい。
<本発明の微小胞>
一実施形態において、本発明の微小胞は、電子顕微鏡法により決定したときに約2nm〜約5000nmのサイズを有する。代替の実施形態において、本発明の微小胞は、電子顕微鏡法により決定したときに約2nm〜約1000nmのサイズを有する。代替の実施形態において、本発明の微小胞は、電子顕微鏡法により決定したときに約2nm〜約500nmのサイズを有する。代替の実施形態において、本発明の微小胞は、電子顕微鏡法により決定したときに約2nm〜約400nmのサイズを有する。代替の実施形態において、本発明の微小胞は、電子顕微鏡法により決定したときに約2nm〜約300nmのサイズを有する。代替の実施形態において、本発明の微小胞は、電子顕微鏡法により決定したときに約2nm〜約200nmのサイズを有する。代替の実施形態において、本発明の微小胞は、電子顕微鏡法により決定したときに約2nm〜約100nmのサイズを有する。代替の実施形態において、本発明の微小胞は、電子顕微鏡法により決定したときに約2nm〜約50nmのサイズを有する。代替の実施形態において、本発明の微小胞は、電子顕微鏡法により決定したときに約2nm〜約20nmのサイズを有する。代替の実施形態において、本発明の微小胞は、電子顕微鏡法により決定したときに約2nm〜約10nmのサイズを有する。
一実施形態において、本発明の微小胞は、少なくとも100kDaの分子量を有する。
本発明の方法により単離された微小胞は、療法に使用されてもよい。あるいは、本発明の方法により単離された微小胞は、診断試験に使用されてもよい。あるいは、本発明の微小胞は、細胞又は組織を変化させ又は操作するのに使用されてもよい。本発明の微小胞が、細胞又は組織を変化させ又は操作するのに使用される場合、微小胞は、ロードされ、細胞又は組織を変化させ又は操作することになるRNA、DNA、脂質、炭水化物、タンパク質、薬物、小分子、代謝物、又はこれらの組合せで標識されてもよい。あるいは微小胞は、RNA、DNA、脂質、炭水化物、タンパク質、薬物、小分子、代謝物又はこれらの組合せを発現する及び/又は含有する細胞又は組織から単離されてもよい。
<診断試験における本発明の微小胞の使用>
本発明の微小胞は、例えば状態若しくは疾患又は疾患のステージ若しくは進行など、特定の表現型を同定するバイオマーカーを検出する診断試験で使用することができる。起始細胞特異的微小胞からのバイオマーカー又はマーカーを使用して、疾患の処置レジメン、状態、疾患ステージ及び状態のステージを決定することができ、処置効力を決定するのにも使用することができる。起始細胞特異的微小胞からのマーカーは、未知の起源の疾患の状態を明らかにするのに使用することもできる。
本明細書で使用する「バイオマーカー」という用語は、生物学的状態の指標を指す。これは正常な生物学的過程、発病過程又は療法介入に対する薬理学的反応の指標として、客観的に測定され評価される特徴である。微小胞の1つ以上のバイオマーカーを、表現型を特徴付けるために評価することができる。バイオマーカーは、代謝物、核酸、ペプチド、タンパク質、脂質、抗原、炭水化物又はプロテオグリカン、例えばDNA又はRNAとすることができる。RNAは、mRNA、miRNA、snoRNA、snRNA、rRNA、tRNA、siRNA、hnRNA又はshRNAとすることができる。
対象の表現型は、生体試料を対象から得て、試料からの1つ以上の微小胞を分析することによって、特徴付けることができる。例えば対象又は個体の表現型を特徴付けることは、疾患若しくは状態を検出すること(前駆症状早期検出を含む)、疾患若しくは状態の予後、診断若しくは又はセラノシスを決定すること、又は疾患若しくは状態のステージ若しくは進行を決定することを含んでいてもよい。表現型を特徴付けることは、特定の疾患、状態、疾患のステージ及び状態のステージに適切な処置又は処置効力を明らかにすること、疾患の進行、特に疾患再発、転移拡散又は疾患再燃の予測及び尤度解析を、含むこともできる。表現型は、がん又は腫瘍など、状態又は疾患の臨床的に全く異なる型又は亜型とすることもできる。表現型の決定は、生理学的状態の決定、又は移植後などの臓器不全若しくは臓器拒絶の評価とすることもできる。本明細書に記載される生成物及びプロセスは、個体ベースでの対象の評価を可能にし、処置におけるより効率的で経済的な決定の利益を提供することができる。
表現型は、米国特許第7,897,356号明細書に列挙された任意の表現型とすることができる。表現型は、腫瘍、新生物又はがんとすることができる。本明細書に記載される生成物又はプロセスにより検出される又は評価されるがんには、乳がん、卵巣がん、肺がん、直腸がん、過形成性ポリープ、線腫、結腸直腸がん、高度異形成、低度異形成、前立腺肥大症、前立腺がん、黒色腫、膵がん、脳がん(膠芽腫など)、血液系腫瘍、肝細胞癌、子宮頚がん、子宮内膜がん、頭頚部がん、食道がん、消化管間質腫瘍(GIST)、腎細胞癌(RCC)又は胃がんが含まれるがこれらに限定するものではない。結腸直腸がんは、CRC Dukes B又はDukes C−Dとすることができる。血液系腫瘍は、B細胞慢性リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫−DLBCL、B細胞リンパ腫−DLBCL−胚中心様、B細胞リンパ腫−DLBCL−活性化B細胞様及びBurkittリンパ腫とすることができる。表現型は、Barrett食道などの前癌性状態とされてもよい。
表現型は、炎症性疾患、免疫疾患又は自己免疫疾患とすることもできる。例えば疾患は、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、骨盤内炎症、脈管炎、乾癬、糖尿病、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、重症筋無力症、I型糖尿病、リウマチ様関節炎、乾癬、全身性エリテマトーデス(SLE)、橋本甲状腺炎、グレーヴス病、強直性脊椎炎 シェーグレン病、CREST症候群、強皮病、リウマチ病、臓器拒絶、移植片対宿主疾患、原発性硬化性胆管炎又は敗血症であってもよい。ある特定の例示的な実施形態において、疾患が、EB、例えばRDEB及び/又はDDEB、接合型EB、単純型EB及び/又は後天形態のEBである。
表現型は、アテローム性動脈硬化症、うっ血性心不全、不安定プラーク、卒中又は虚血などの、心血管疾患とすることもできる。心血管疾患又は状態は、高血圧、狭窄、血管閉塞又は血栓事象とすることができる。
表現型は、神経系疾患、例えば多発性硬化症(MS)、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、統合失調症、双極性障害、うつ病、自閉症、プリオン病、ピック病、認知症、ハンチントン病(HD)、ダウン症候群、脳血管疾患、ラスムッセン脳炎、ウイルス性髄膜炎、神経精神全身性エリテマトーデス(NPSLE)、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、伝達性海綿状脳症、虚血再潅流損傷(例えば、卒中)、脳外傷、微生物感染又は慢性疲労症候群とすることもできる。表現型は、線維筋痛症、慢性神経因性疼痛又は末梢神経因性疼痛などの状態であってもよい。
表現型は、細菌、ウイルス又は酵母感染などの感染性疾患であってもよい。例えば、疾患又は状態は、ホイップル病、プリオン病、肝硬変、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、HIV、肝炎、梅毒、髄膜炎、マラリア、結核又はインフルエンザであってもよい。HIV又はHCV様粒子などのウイルス性タンパク質は、エキソソーム内で評価してウイルス状態を特徴付けることができる。
表現型は、周産期又は妊娠関連状態(例えば、子癇前症又は早産)、代謝疾患又は状態、例えば鉄代謝に関連した代謝疾患又は状態とすることもできる。代謝疾患又は状態は、糖尿病、炎症又は周産期状態とすることもできる。
表現型は、例えばウェスタンブロット、ELISA、PCRなど、任意の適切なアッセイ方法を介して検出されてもよい。アッセイ方法は、1種よりも多くの表現型のマルチプレックス解析が行われるように、組み合わせてもよい。本発明の微小胞に適用され得るアッセイ方法の例は、PCT出願WO2009092386A3号及びWO2012108842A1号に開示される。
バイオマーカーがRNAである場合、RNAは、米国特許第8,021,847本号明細書に開示される方法によって、本発明の微小胞から単離されてもよい。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第7,897,356号明細書に開示される疾患に関する診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第8,211,653号明細書に開示される方法により、がんに関する診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第8,216,784号明細書に開示される方法により、がんに関する診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第8,278,059号明細書に開示される方法により、前立腺がんに関する診断試験で利用される。一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第8,343,725号明細書に開示される方法により、がん生存率に関する予後の診断試験に利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第8,349,568号明細書に開示される方法により、がん生存率に関する予後の診断試験に利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第8,349,560号明細書に開示される方法により、急性リンパ性白血病に関する診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第8,349,561号明細書に開示される方法により、急性リンパ性白血病に関する診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、C型肝炎ウイルスに関する診断試験で利用される。一実施形態において、C型肝炎ウイルスRNAは、患者におけるC型肝炎ウイルスの存在に関して試験をするため米国特許第7,807,438号明細書に記載される方法により、本発明の微小胞から抽出される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第8,349,574号に開示される方法により、がん療法に対する患者の応答を決定するための診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許出願第20120058492(A1)号明細書に開示される方法により、悪性腫瘍を診断するための診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許出願第20120238467(A1)号明細書に開示される方法により、がん又は不利な妊娠結果を診断するための診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許出願第20120214151(A1)号明細書に開示される方法により、尿中のHIVに関する診断試験で利用される。一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許出願20120309041(A1)号明細書に開示される方法により、心血管事象に関する診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、PCT出願WO2012110099A1号に開示される方法により、心血管事象に関する診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、PCT出願WO2012126531A1号に開示される方法により、心血管事象に関する診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、PCT出願WO2013110253A3号に開示される方法により、心血管事象に関する診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、PCT出願WO2012135844A2号に開示される方法により、黒色腫に関する診断試験で利用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、バイオマーカーBRAFの存在に関して本発明の方法により単離された微小胞を試験することにより、転移性黒色腫に関する診断試験で利用される。BRAFの存在は、ウェスタンブロットを介して、あるいはPCRによって決定されてもよい。一実施形態において、転移性黒色腫の試験は、野生型及び悪性BRAFを検出することが可能である。一実施形態において、転移性黒色腫の試験は、悪性BRAFのスプライス変種を検出することが可能である。
一実施形態において、転移性黒色腫に関する診断試験で利用される微小胞は、図3に概説するステップを含む方法を使用して単離される。
一実施形態において、微小胞は、転移性黒色腫の存在に関して診断を望む患者から得られる。一実施形態において、微小胞は、患者の血漿から得られる。
一実施形態において、転移性黒色腫の存在は、以下の2つのプライマーセットの1つを使用する、PCRを介して決定される:
別の実施形態において、転移性黒色腫の存在は、マウス抗−BRAF V600E抗体(NewEast Biosciences、Malvern、PA)を使用する、ウェスタンブロットを介して決定される。
<療法における本発明の微小胞の使用>
本発明の微小胞は、疾患を処置する療法として使用することができる。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許出願第20030198642(A1)号明細書に記載される方法によりワクチンとして使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許出願第20060116321(A1)号明細書に記載される方法により患者の免疫応答を変調させ又は抑制するのに使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、PCT特許出願WO06007529A3号に記載される方法により、患者の免疫応答を変調させ又は抑制するのに使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、PCT特許出願WO2007103572A3号に記載される方法により、患者の免疫応答を変調させ又は抑制するのに使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第8,288,172号明細書に記載される方法により、患者の免疫応答を変調させ又は抑制するのに使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、PCT特許出願WO2011000551A1号に記載される方法により、がんの療法として使用される。一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許出願第20120315324(A1)号明細書に記載される方法により、がん又は炎症性疾患の療法として使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、米国特許第8,343,485号明細書に記載される方法により、血管損傷の療法として使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、分子を細胞に送達するのに使用される。分子の送達は、疾患の処置又は予防に有用であり得る。一実施形態において、送達は、PCT出願WO04014954A1号に記載される方法による。代替の実施形態において、送達は、PCT出願WO2007126386A1号に記載される方法による。代替の実施形態において、送達は、PCT出願WO2009115561A1号に記載される方法による。代替の実施形態において、送達は、PCT出願WO2010119256A1号に記載される方法による。
一実施形態において、本発明の微小胞は、創傷治癒を促進させる又は増強するのに使用される。一実施形態において、創傷が全層性熱傷である。一実施形態において、創傷が第2度熱傷である。
一実施形態において、本発明の微小胞は、患者における血管新生を促進させる又は増強するのに使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、患者における神経再生を促進させる又は増強するのに使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、患者における瘢痕形成を低減させるのに使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、患者の皮膚における皺の形成を低減させるのに使用される。
一実施形態において、本発明の微小胞は、患者における複合組織再生を編成するのに使用される。
一実施形態において、本発明は、複合組織構造の機能的再生及び組織化を促進させることができる微小胞の単離された調製物を提供する。一実施形態において、本発明は、再生不良性貧血の患者において造血組織を再生することができる微小胞の単離された調製物を提供する。一実施形態において、本発明は:上皮組織、間質組織、神経組織、血管組織及び付属構造からなる群から選択される、疾患、損傷又は皮膚の損失がある患者における少なくとも1つの組織を再生することができる、微小胞の単離された調製物を提供する。一実施形態において、本発明は、3つの胚芽層全てから組織及び/又は細胞を再生することができる、微小胞の単離された調製物を提供する。
一実施形態において、本発明は、患者の免疫系を変調させるのに使用される、微小胞の単離された調製物を提供する。
一実施形態において、本発明は、患者のEB(例えば、RDEB及び/又はDDEB、接合型EB、単純型EB及び/又は後天形態のEB)の1つ以上の症状を軽減するのに使用される、微小胞の単離された調製物を提供する。
別の実施形態において、本発明は、EB(例えば、RDEB及び/又はDDEB、接合型EB、単純型EB及び/又は後天形態のEB)を有する患者におけるVII型コラーゲン発現を増大させるのに使用される、微小胞の単離された調製物を提供する。
一実施形態において、本発明は、患者に移植された組織又は細胞の生存を増強する、微小胞の単離された調製物を提供する。一実施形態において、患者は、移植された組織又は細胞を受容する前に、微小胞の単離された調製物で処置される。代替の実施形態において、患者は、移植された組織又は細胞を受容した後に、微小胞の単離された調製物で処置される。代替の実施形態において、組織又は細胞が、微小胞の単離された調製物で処置される。一実施形態において、組織又は細胞は、移植前に、微小胞の単離された調製物で処置される。
一実施形態において、本発明は、宿主細胞からのRNA、DNA、脂質、炭水化物、代謝物、タンパク質及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の分子を含有する微小胞の単離された調製物を提供する。一実施形態において、宿主細胞は、RNA、DNA、脂質、炭水化物、代謝物、タンパク質及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの分子を発現するように操作される。一実施形態において、宿主細胞からのRNA、DNA、脂質、炭水化物、代謝物、タンパク質及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの分子を含有する微小胞の単離された調製物が、治療剤として使用される。
<療法における本発明の微小胞の使用>
療法上の使用のため、MVは、好ましくは薬学的に許容される担体と組み合わされる。本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」は、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答又はその他の問題若しくは合併症のない、妥当な損益比に相応しい、人間及び動物の組織と接触させて使用するのに適切な、緩衝剤、担体及び賦形剤を意味する。担体(複数可)は、製剤のその他の成分に適合可能でありかつレシピエントに有害ではないという意味で「許容される」べきである。薬学的に許容される担体には、医薬投与に適合可能である緩衝剤、溶媒、分散媒体、コーティング、等張性及び吸収遅延剤などが含まれる。薬学的に活性な物質にそのような媒体及び薬剤を使用することは、当技術分野で公知である。
したがって、本発明のEV組成物は、任意の適切な賦形剤、例えば希釈剤、結合剤、安定化剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存剤、アジュバントなどであるがこれらに限定することのない、少なくとも1種を含むことができる。薬学的に許容される賦形剤が好ましい。そのような滅菌溶液を調製する非限定的な例及び方法は、限定するものではないがGennaro編、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18版、Mack Publishing Co.(Easton、Pa.)1990年に記載されているものなど、当技術分野で周知である。薬学的に許容される担体は、当技術分野で周知のように又は本明細書に記載されるように、EV組成物の投与形態、溶解度及び/又は安定性に関して適切なものを、通常通り選択することができる。
本発明の組成物に有用な医薬賦形剤及び添加剤には、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質及び炭水化物(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖及びオリゴ糖を含む糖;アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖;及び多糖又は糖ポリマー)であって、単体で又は組み合わせて存在することができ、単独で又は1〜99.99重量又は体積%を構成するものが含まれるが、これらに限定するものではない。例示的なタンパク質賦形剤には、血清アルブミン、例えばヒト血清アルブミン(HSA)、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどが含まれる。緩衝能で機能することもできる代表的なアミノ酸/抗体分子成分には、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが含まれる。
本発明で使用するのに適切な炭水化物賦形剤には、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D−マンノース、ソルボースなどの単糖;ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストリン、デンプンなどの多糖;並びにマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトールなどのアルジトールが含まれる。本発明で使用するのに好ましい炭水化物賦形剤は、マンニトール、トレハロース及びラフィノースである。
EV組成物は、緩衝剤又はpH調節剤を含むこともでき;典型的には緩衝剤は、有機酸又は塩基から調製された塩である。代表的な緩衝剤には、クエン酸、酢酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸又はフタル酸の塩などの有機酸塩;Tris、トロメタミン塩酸塩又はリン酸緩衝溶液が含まれる。
さらに、本発明のEV組成物は、ポリマー賦形剤/添加剤、例えばポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、着香剤、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN(登録商標) 20」及び「TWEEN 80」などのポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)及びキレート剤(例えば、EDTA)を含むことができる。
本発明による抗体分子組成物中に使用するのに適切なこれら及び追加の公知の医薬賦形剤及び/又は添加剤は、例えば「Remington: The Science & Practice of Pharmacy」、19版、Williams & Williams(1995年)、及び「Physician’s Desk Reference」、52版、Medical Economics、Montvale、N.J.(1998年)に列挙されるように、当技術分野で公知である。好ましい担体又は賦形剤の材料は、炭水化物(例えば、糖及びアルジトール)及び緩衝剤(例えば、シトレート)又はポリマー剤である。
本発明は、薬学的に許容される製剤中にMVを含む、安定な組成物を提供する。保存製剤は、少なくとも1種の公知の保存剤を含有し、又は少なくとも1種のフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール若しくはこれらの混合物からなる群から任意選択的選択されるものを、水性希釈剤中に含有する。任意の、適切な濃度又は混合物は、当技術分野で公知のように、例えば0.001〜5%、又はその内部の任意の範囲若しくは値、例えば限定するものではないが0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、又はその中の任意の範囲若しくは値とすることができる。非限定的な例には、保存剤が含まれず、0.1〜2%のm−クレゾール(例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.9又は1.0%)、0.1〜3%のベンジルアルコール(例えば、0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0又は2.5%)、0.001〜0.5%のチメロサール(例えば、0.005又は0.01%)、0.001〜2.0%のフェノール(例えば、0.05、0.25、0.28、0.5、0.9又は1.0%)、0.0005〜1.0%のアルキルパラベン(複数可)(例えば、0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9又は1.0%)などが含まれる。
本明細書に開示されるMVを含有する医薬組成物は、単位剤形で提供することができ、任意の適切な方法により調製することができる。医薬組成物は、その意図される投与経路に適合されるように製剤化されるべきである。投与経路の例は、静脈内(IV)、皮内、吸入、経皮、局所、経粘膜及び直腸投与である。MVに好ましい投与経路は、局所投与である。有用な製剤は、医薬の分野で公知の方法によって調製することができる。例えば、上掲のRemington’s Pharmaceutical Sciences(1990年)を参照されたい。非経口投与に適切な製剤成分は、滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又はその他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は重硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばEDTA;緩衝剤、例えばアセテート、シトレート又はホスフェート;及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの等張性を調節するための薬剤を含む。
担体は、製造及び貯蔵条件下で安定であるべきであり、微生物に対して保存されるべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)及びこれらの適切な混合物を含有する、溶媒又は分散媒体とすることができる。
医薬製剤は、好ましくは滅菌性である。滅菌は、任意の適切な方法、例えば滅菌濾過膜と通した濾過によって実現することができる。組成物が凍結乾燥される場合、濾過滅菌は、凍結乾燥及び再構成の前又は後に実施することができる。
本発明の組成物は、様々な形をとってもよい。これらには例えば、液体、半固体及び固体剤形、例えば液体溶液(例えば、注射可能な及び注入可能な溶液)、分散体又は懸濁体及びリポソームが含まれる。好ましい形は、意図される投与形態及び療法上の適用例に依存する。典型的な好ましい組成物は、注射可能な又は注入可能な溶液の形をとる。好ましい投与形態は、非経口(例えば、静脈内、皮下、眼内、腹腔内、筋肉内)である。好ましい実施形態において、調製物は、静脈内注入又は注射によって投与される。別の好ましい実施形態において、調製物は、筋肉内又は皮下注射によって投与される。
本明細書で使用される「非経口投与」及び「非経口的に投与された」という文言は、腸内及び局所投与以外の投与形態、通常は注射によるものを意味し、限定するものではないが静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、クモ膜下腔内、関節包内、眼窩内、硝子体内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、吸入、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び注入を含む。
本発明は、包装材料と、処方された緩衝剤及び/又は保存剤と共にMVを水性希釈剤に任意選択的に溶かした溶液を含む少なくとも1つのバイアルとを含む、キットを提供する。水性希釈剤は、薬学的に許容される保存剤を任意選択的にさらに含む。保存剤は、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール又はこれらの混合物からなる群から選択されるものを含む。製剤中に使用される保存剤の濃度は、抗菌効果をもたらすのに十分な濃度である。そのような濃度は、選択される保存剤に依存し、当業者によって容易に決定される。
その他の賦形剤、例えば等張性薬剤、緩衝剤、抗酸化剤、防腐促進剤は、任意選択的にかつ好ましく、希釈剤に添加することができる。グリセリンなどの等張性薬剤は、一般に、公知の濃度で使用される。生理学的に耐性のある緩衝剤を添加して、改善されたpH制御をもたらすことができる。製剤は、pHの広範囲、例えば約pH4.0〜約pH10.0、約pH5.0〜約pH9.0、又は約pH6.0〜約pH8.0などを包含する。
その他の添加剤、例えばTWEEN 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、TWEEN 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、TWEEN 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、及びPEG(ポリエチレングリコール)、又は非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート20若しくは80又はポロキサマー184若しくは188、Pluronic(登録商標)ポリル、その他のブロックコポリマー、並びにEDTA及びEGTAなどのキレート剤のような薬学的に許容される可溶化剤を、製剤又は組成物に任意選択的に添加して、凝集を低減させてもよい。これらの添加剤は、ポンプ又はプラスチック容器が製剤を投与するのに使用される場合、特に有用である。薬学的に許容される界面活性剤の存在は、タンパク質が凝集する傾向を緩和させる。
様々な送達システムを使用して、MVを対象に投与することができる。ある特定の例示的な実施形態において、MVの投与は局所的であり、任意選択的にドレッシング、包帯、医療用テープ、パッド、ガーゼなどが追加される。局所送達を支援するのに適切なドレッシングは、当技術分野で周知であり、市販されている。その他の実施形態において、MVは、肺送達によって、例えば鼻内投与によって、又は口内吸入投与によって、投与される。肺送達は、注射器又は吸入デバイス(例えば、ネブライザー、加圧式定量噴霧吸入器、多回用量液体吸入器、熱蒸発エアロゾルデバイス、乾燥粉末吸入器など)を介して実現されてもよい。肺送達に適切な方法は、当技術分野で周知であり、市販されている。
上述の製剤のいずれかは、液体又は凍結形態で貯蔵することができ、任意選択的に保存プロセスに供することができる。
本発明の、ある特定の例示的な実施形態において、本明細書に記載されるEVは、1種以上の生物活性剤を標的細胞に送達するのに使用される。「生物活性剤」という用語は、限定するものではないが、タンパク質(例えば、非膜結合タンパク質)、ペプチド(例えば、非膜結合ペプチド)、転写因子、核酸などであって、細胞内及び/又は細胞液内で発現しかつ本明細書に記載されるEVの精製及び/又は調製中に添加されるもの、及び/又は医薬化合物、タンパク質(例えば、非膜結合タンパク質)、ペプチド(例えば、非膜結合ペプチド)、転写因子、核酸などであって、本明細書に記載されるEVが、本明細書に記載される1つ以上の精製及び/又は調製ステップ中に曝露されるものを、含むと意図する。ある特定の実施形態において、生物活性剤が、VII型コラーゲンタンパク質、VII型コラーゲンmRNA、STAT3シグナル伝達アクチベーター(例えば、インターフェロン、上皮成長因子、インターロイキン−5、インターロイキン−6、MAPキナーゼ、c−src非受容体チロシンキナーゼ、又はSTATをリン酸化し及び/又はその他の手法で活性化する別の分子)、及び/又は古典的Wntアクチベーター(例えば、McBrideら(2017年)参照。古典的Wnt阻害剤、カリスタチンのトランスジェニック発現は、末梢血中で減少する循環CD19+Bリンパ球に関連する。参照によりその全体が本明細書に組み込まれるInternational Journal of Hematology、1〜10.DOI: 10.1007/s12185−017−2205−5参照)である。他の実施形態において、生物活性剤は、当技術分野で公知の1種以上の医薬化合物である。
本明細書に記載される方法のその他の適切な修正及び適応を、本明細書に開示される実施形態の範囲から逸脱することなく、適切な均等物を使用して行ってもよいことが、当業者に容易に理解される。次に、ある特定の実施形態について詳細に記載するが、この実施形態は、単なる例示を目的として含まれかつ限定を意図するものではない以下の実施例を参照することによって、より明瞭に理解される。本明細書に記載される全ての特許、特許出願、及び参考文献は、それらの全体が全ての目的で、参照により本明細書に組み込まれる。
[実施例1] 超遠心分離による細胞培養培地からの微小胞の単離
この実施例は、それによって微小胞が細胞培養培地又は任意の生体液から単離される、典型的な方法を示す。微小胞を細胞培養培地から単離する方法の概略を、図1に示す。まとめると、細胞は、微小胞のない血清(血清は、超遠心分離、濾過、沈殿などによって微小胞を枯渇させてもよい)を補充した培地で培養される。細胞を、ある期間にわたって培養した後、培地を除去し、円錐管に移し、400×gで10分間、4℃で遠心分離して、細胞をペレット化する。次に、上清を新しい円錐管に移し、2000×gで30分間、4℃で遠心分離して、細胞及び細胞残屑をさらに除去する。この後、別の遠心分離ステップ(例えば、10000×gを30分間行って、細胞残屑をさらに枯渇させ及び/又はより大きい微小胞を除去する)を行ってもよい。得られた上清を超遠心分離管に移し、計量して等しい重量を確実にし、70000+×gで70分間、4℃で超遠心分離して、微小胞をペレット化する。
この上清を、引き続き廃棄し、ペレットを氷冷PBSに再懸濁する。溶液を、70000+×gで70分間、4℃で超遠心分離して、微小胞をペレット化する。微小胞に富むペレットを、小体積(約50〜100μl)の適切な緩衝液(例えば、PBS)に再懸濁する。
[実施例2] 本発明の方法による細胞培養培地からの微小胞の単離
この実施例は、本発明の方法によって、微小胞が細胞培養培地からどのように単離されるかを示す。培養された細胞を有する培地から微小胞を単離する方法の概要を、図2及び図3に示す。まとめると、細胞は、微小胞のない血清(血清は、超遠心分離、濾過、沈殿などによって微小胞を枯渇させてもよい)を補充した培地で培養される。細胞を、ある期間にわたって培養した後、培地を除去し、円錐管に移し、400×gで10分間、4℃で遠心分離して、細胞をペレット化する。次に、上清を新しい円錐管に移し、2000×gで30分間、4℃で遠心分離して、細胞及び細胞残屑をさらに除去する。この後、別の遠心分離ステップ(例えば、10000×gを30分間行って、細胞残屑をさらに枯渇させかつより大きい粒子を除去する)を行ってもよい。
次いで微小胞を、8.5%w/vのPEG 6000及び0.4MのNaClを使用して、4℃で沈殿させる。この混合物を、4℃で30分間、10000×gで回転させる。上清を除去し、ペレットを適切な緩衝液(例えば、PBS)中に再懸濁する。これを直に下流の反応に使用し、さらに精製してもよい。さらなる精製手順は、遠心分離フィルター(例えば、100kDaのMWCO)、免疫親和性、HPLC、接線流濾過、相分離/分配、マイクロ流体の使用を含むことができる。
[実施例3] 本発明の方法により骨髄由来幹細胞を使用して馴化された培地からの微小胞の単離
正常なドナーのヒト骨髄を、AllCells LLC(Emeryville、CA、http://www.allcells.com)から獲得した。MSCを、標準的なプラスチック接着方法によって単離した。骨髄単核細胞を、製造業者のプロトコール(GE Healthcare Life Sciences、Pittsburgh、PA)に従いFicoll−Paque Premium(密度:1.077g/ml)を使用して、低密度遠心分離によって単離した。単核細胞を界面で収集し、2%FBS(Atlanta Biologics、Atlanta、GA)を補充したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で3回洗浄し、アルファ−最小必須培地(a−MEM)(Mediatech Inc.、Manassas、VA)及び20%FBS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza、Allendale、NJ)及び1%グルタミン(Lonza)からなるMSC培地中に再懸濁した。
MSC又は単核細胞のいずれかの初期培養物を、組織培養処置皿(BD Biosciences、San Jose、CA)内で2〜3×105細胞/cm2の間で播き、95%加湿空気及び5%CO2中、37℃で、細胞インキュベーター内に置いた。48〜72時間後、非接着細胞を除去し、培養フラスコをPBSで1回すすぎ、新鮮な培地をフラスコに添加した。細胞を、80%の集密度に達するまで成長させ、次いでトリプシンEDTA(Life technologies、Carlsbad、CA)により継代させた。細胞を、1:4の比で5層マルチフラスコ(BD Biosciences)に分割した。あるいは、凍結保存したMSCを37℃で解凍し、直ぐに、20%の微小胞のないウシ胎児血清及び1%のペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを補充したMEM中で、95%の加湿空気及び5%のCO2中、37℃で培養した。それらを上記と同様に拡げた。
細胞を、80〜90%の集密度に達するまでマルチフラスコ内で成長させた。フラスコをPBSで2回すすぎ、1%のペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを補充したMEMを添加した。24時間後、馴化培地を50mLの円錐遠心管(Thermo Fisher Scientific Inc.、Weston、FL)に移し、直ぐに400×gで10分間、4℃で遠心分離して、あらゆる非接着細胞をペレット化した。上清を新しい50mL円錐遠心管に移し、2000×gで30分間、4℃で遠心分離して、細胞及び細胞残屑をさらに除去した。上清を収集し、250mlの滅菌ポリプロピレン使い捨て容器(Corning、Corning、NY)に入れた。上清に、RNase及びプロテアーゼのないポリエチレングリコール平均分子量6000(Sigma Aldrich、Saint Louis、MO)を8.5w/v%で、及び塩化ナトリウム(最終濃度0.4M)を添加した。溶液を、4℃の冷蔵室に終夜、揺動させながら置いた。溶液を50mLの円錐遠心管に移し、10000×g、4℃で30分間遠心分離した。上清をデカントし、微小胞に富むペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。微小胞に富む溶液を、Amicon ultra−15遠心分離フィルターユニットに移し(公称分子量限界100kDa)(Millipore、Billerica、MA)、5000×gで30分間遠心分離した。フィルターユニットをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、再び5000×gで30分間遠心分離した。濃縮された試料を、フィルターデバイスの底部から回収した(約200μl)。タンパク質濃度を、マイクロBSAタンパク質アッセイキット(Pierce、Rockford、IL)により決定し、富化された微小胞溶液を−70度で貯蔵し、又は下流での使用に向けて処理した(例えば、タンパク質、RNA及びDNA抽出)。
[実施例4] 本発明の方法による血漿からの微小胞の単離
血液(ヒト及びブタ)約6〜8mlを、静脈穿刺を介して収集し、BD VacutainerプラスチックEDTAラベンダー管(BD Biosciences、San Jose、CA)に入れた。静脈穿刺は、室温で、30分間にわたり400×gで遠心分離した。血漿を除去し(約3〜4ml)、新しい50ml円錐遠心管(Thermo Fisher Scientific Inc.、Weston、FL)に入れた。滅菌アルファ−最小必須培地(α−MEM)(Mediatech Inc.、Manassas、VA)を、1:10(血漿対培地)の比で添加した。
溶液に、RNase及びプロテアーゼのないポリエチレングリコール平均分子量6000(Sigma Aldrich、Saint Louis、MO)を8.5w/v%で、及び塩化ナトリウム(最終濃度0.4M)を添加した。溶液を、4℃の冷蔵室に、終夜揺動させながら置いた。溶液を、10000×g、4℃で30分間遠心分離した。上清をデカントし、微小胞に富むペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。微小胞に富む溶液を、Amicon ultra−15遠心分離フィルターユニット(公称分子量限界100kDa)(Millipore、Billerica、MA)に移し、5000×gで30分間遠心分離した。フィルターユニットをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、再び5000×gで30分間遠心分離した。濃縮した試料をフィルターデバイスの底部から回収した(約200〜400μl)。タンパク質濃度を、マイクロBSAタンパク質アッセイキット(Pierce、Rockford、IL)により決定し、富化された微小胞溶液を−70度で貯蔵し又は下流の使用に向けて処理した(例えば、タンパク質、RNA及びDNA抽出)。
[実施例5] 本発明の方法による骨髄穿刺液からの微小胞の単離
ブタ骨髄を、腸骨稜から単離した。皮膚領域を、ポビジンヨード7.5%及びイソプロパノール70%で慎重に清浄化した。11ゲージの3mmトロカール(Ranafac、Avon、MA)を腸骨稜に挿入した。吸引シリンジに5000〜1000単位のヘパリンをロードして、骨髄試料が凝固しないようにした。約20〜25mlの骨髄を吸引し、溶液を50mlの円錐遠心管に移した。あるいは、正常なドナーのヒト骨髄(約50ml)を、AllCells LLC(Emeryville、CA、URL:allcells.com.)から獲得した。
50mlの円錐管を、400×gで30分間、室温で遠心分離した。上清(無細胞部分)を収集し(50ml当たり約10〜12ml)、新しい50ml円錐遠心管(Thermo Fisher Scientific Inc.、Weston、FL)に入れた。滅菌アルファ−最小必須培地(α−MEM)(Mediatech Inc.、Manassas、VA)を、1:10(骨髄の上清対培地)の比で添加した。溶液を、新しい50mlの円錐管に移し、2000×gで30分間、4℃で遠心分離した。上清を新しい50mlの円錐管に移し、この溶液に、RNase及びプロテアーゼのないポリエチレングリコール平均分子量6000(Sigma Aldrich、Saint Louis、MO)を8.5w/v%で、及び塩化ナトリウム(最終濃度0.4M)を添加した。
溶液を、4℃の冷蔵室に、終夜揺動させながら置いた。溶液を、10000×g、4℃で30分間遠心分離した。上清をデカントし、微小胞に富むペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。微小胞に富む溶液を、Amicon ultra−15遠心分離フィルターユニット(公称分子量限界100kDa)(Millipore、Billerica、MA)に移し、5000×gで30分間遠心分離した。フィルターユニットをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、再び5000×gで30分間遠心分離した。濃縮した試料を、フィルターデバイスの底部から回収した(約200〜400μl)。タンパク質濃度を、マイクロBSAタンパク質アッセイキット(Pierce、Rockford、IL)により決定し、富化された微小胞溶液を−70度で貯蔵し又は下流の使用に向けて処理した(例えば、タンパク質、RNA及びDNA抽出)。
細胞部分を収集し、間葉系幹細胞単離に向けて又は骨髄の完全な単離に向けて処理した。
[実施例6] 本発明の方法による尿からの微小胞の単離
無菌的に採取されたヒト尿約500mlを単離し、50mlの円錐管(Thermo Fisher Scientific Inc.、Weston、FL)に入れた。
50mlの円錐管を、400×gで30分間、4℃で遠心分離した。上清を除去し、新しい50ml円錐遠心管(Thermo Fisher Scientific Inc.、Weston、FL)に入れた。溶液を新しい50ml円錐管に移し、2000×gで30分間、4℃で遠心分離した。上清を新しい50ml円錐管に移し、この溶液に、RNase及びプロテアーゼのないポリエチレングリコール平均分子量6000(Sigma Aldrich、Saint Louis、MO)を8.5w/v%で、及び塩化ナトリウム(最終濃度0.4M)を添加した。
溶液を、4℃の冷蔵室に、終夜揺動させながら置いた。溶液を、10000×g、4℃で30分間、遠心分離した。上清をデカントし、微小胞に富むペレットを、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に再懸濁した。微小胞に富む溶液を、Amicon ultra−15遠心分離フィルターユニット(公称分子量限界100kDa)(Millipore、Billerica、MA)に移し、5000×gで30分間遠心分離した。フィルターユニットをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、再び5000×gで30分間遠心分離した。濃縮された試料を、フィルターデバイスの底部から回収した(約200〜4000μl)。タンパク質濃度を、マイクロBSAタンパク質アッセイキット(Pierce、Rockford、IL)により決定し、富化された微小胞溶液を、−70度で貯蔵し又は下流の使用に向けて処理した(例えば、タンパク質、RNA及びDNA抽出)。
[実施例7] 本発明の方法による骨髄細胞の長期培養から得た培地からの微小胞の単離
骨髄を穿刺液から得て(実施例1参照)、赤血球を、0.1mM EDTA(Stem Cell Technologies、Vancouver、BC)を含有する0.8%塩化アンモニウム溶液を使用して溶解した。有核細胞を、ウシ胎児血清(Atlanta Biologics、Atlanta、GA)クッションの下で、400×gで5分間、ペレット化した。有核細胞を、400×gで5分間ペレット化することにより、McCoyの5a培地(Mediatech Inc.、Manassas、VA)中で洗浄した。細胞を、1×106細胞の密度で培地中に再懸濁し、25、75又は225cm2のフラスコ(Corning、Corning、NY)中に播いた。
培地は、McCoyの5a培地、1%重炭酸ナトリウム(Life technologies、Carlsbad、CA)、0〜4%MEM非必須アミノ酸(Life technologies)、0〜8%MEM必須アミノ酸(Life technologies)、1%L−グルタミン(Lonza、Allendale、NJ)、0.1μMヒドロコルチゾン(Life technologies)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza)、12〜5%ウシ胎児血清(Atlanta Biologics)及び12〜5%ウマ血清(Stem Cell Technology)からなるものであった。培養物を、33℃及び5%CO2でインキュベートした。栄養補給は、当初の体積の半分の培地を添加することによって、かつ培養の最初の9週間にいかなる培地も除去せずに、毎週行った。培養物を、9週を超えて成長させた場合、培地の体積は当初の体積に低減され、当初の体積の半分の新鮮な培地を毎週添加した。
培養の約9週間後、当初の培地を取り出し貯蔵した。細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、McCoyの5a培地、1%重炭酸ナトリウム、0〜4%MEM非必須アミノ酸、0〜8%MEM必須アミノ酸(Life technologies)、1%L−グルタミン(Lonza、Allendale、NJ)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza)からなる培地中で24時間インキュベートした。
24時間後、上清を50mLの円錐遠心管(Thermo Fisher Scientific Inc.、Weston、FL)に移し、直ぐに400×gで10分間、4℃で遠心分離して、あらゆる非接着細胞をペレット化した。貯蔵さされた当初の培地を元の細胞に添加した。上清を新しい50mL円錐遠心管に移し、2000×gで30分間、4℃で遠心分離して、細胞及び細胞残屑をさらに除去した。
上清を収集し、250mlの滅菌ポリプロピレン使い捨て容器(Corning、Corning、NY)に入れた。上清に、RNase及びプロテアーゼのないポリエチレングリコール平均分子量6000(Sigma Aldrich、Saint Louis、MO)を8.5w/v%で、及び塩化ナトリウム(最終濃度0.4M)を添加した。溶液を、4℃の冷蔵室に終夜、揺動させながら置いた。溶液を50mLの円錐遠心管に移し、10000×g、4℃で30分間遠心分離した。上清をデカントし、微小胞に富むペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。微小胞に富む溶液を、Amicon ultra−15遠心分離フィルターユニットに移し(公称分子量限界100kDa)(Millipore、Billerica、MA)、5000×gで30分間遠心分離した。フィルターユニットをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、再び5000×gで30分間遠心分離した。濃縮された試料を、フィルターデバイスの底部から回収した(約200μl)。タンパク質濃度を、マイクロBSAタンパク質アッセイキット(Pierce、Rockford、IL)により決定し、富化された微小胞溶液を−70度で貯蔵し、又は下流での使用に向けて処理した(例えば、タンパク質、RNA及びDNA抽出)。
[実施例8] 本発明の微小胞の分析
微小胞の試料を、電子顕微鏡法により分析した。透過型電子顕微鏡法(TEM)では、微小胞の各標本を、ホルムバールでコーティングされた150メッシュの銅格子(Electron Microscopy Sciences、Fort Washington、PA)上に20分間ロードした。格子から排出させ、2%のグルタルアルデヒドの液滴上に5分間浮かべ、次いで再蒸留水(DDOH)中で洗浄し、その後、4%の酢酸ウラニル水溶液の液滴を着色し、DDOH中で多数回洗浄した。格子を、Philips CM10電子顕微鏡で、80kVで検査した。
図5は、実施例1に記載された超遠心分離方法によって(パネルA及びB)及び実施例3に記載された本発明の方法により(パネルC及びD)単離されたヒト骨髄由来間葉系幹細胞由来の微小胞の電子顕微鏡写真を示す。図6は、実施例1に記載された超遠心分離方法によって(パネルA及びB)及び実施例3に記載された本発明の方法により(パネルC及びD)単離されたブタ骨髄由来間葉系幹細胞由来の微小胞の電子顕微鏡写真を示す。図7は、実施例1に記載された超遠心分離方法によって(パネルA及びB)及び実施例3に記載された本発明の方法により(パネルC及びD)単離されたマウス骨髄由来間葉系幹細胞由来の微小胞の電子顕微鏡写真を示す。
図5〜7は、超遠心分離単離と比較した、本発明の方法により単離された微小胞間の相違を示す。本発明の方法により単離された微小胞は、より滑らかな、波が寄っていない、より「無傷」に見える辺縁を有する。
図8は、本発明の方法によりヒト血漿から単離された微小胞の、電子顕微鏡写真を示す。PEG単離で実現された形状及びサイズの不均質性は、微小胞の全てのタイプが単離されたことを示唆する。類似の不均質性は、本発明の方法により単離されたブタ血漿(図9)及びヒト尿(図10)からの微小胞で観察された。
微小胞の試料中のタンパク質発現を分析するために、細胞及び微小胞をRIPA緩衝液(Cell signaling technology、Danvers、MA)中に溶解し、タンパク質濃度をマイクロBSAアッセイキット(Pierce、Rockford、IL)により推定した。約20マイクログラムのライセートを各レーンにロードし、膜を、ウサギ抗−63抗体(SBI Biosciences、Mountain View、CA)、ウサギ抗−hsp70(SBI Biosciences)、ウサギSTAT3(Cell signaling technology)及び/又はウサギホスホ−STAT3(Cell signaling technology)のいずれかにより終夜プローブした(1:1000)。
エキソソームマーカー(HSP 70及びCD63)の存在は、本発明の方法でエキソソームを単離することが可能であることを確認した。さらに、エキソソームは、転写因子STAT3及び活性化リン酸化形態ホスホ−STAT3も含有した。図11を参照されたい。
[実施例9] 線維芽細胞の増殖及び遊走に対する本発明の微小胞の効果
本発明の微小胞が創傷治癒を促進させる又は増強する能力を研究するために、微小胞が皮膚線維芽細胞の増殖を刺激する能力を試験した。正常なヒト成人皮膚線維芽細胞を、Life Technology(Carlsbad、CA)から得た。慢性創傷患者の線維芽細胞(圧力足部潰瘍及び糖尿病足病性潰瘍)を、IRB認可プロトコール(IND# BB IND 13201)下で、標準ケア及び先進の創傷ケア処置にも関わらず治癒の証拠のない、2年の持続期間の創傷から収集した。正常及び慢性創傷線維芽細胞を、24ウェル組織培養プレート(BD Biosciences、San Jose、CA)上で、ウェル当たり5×103細胞で播いた。MTT細胞増殖アッセイを、0日目及び3日目に行った。微小胞を0日目に添加した。PEG単離された及び超遠心分離で単離された微小胞は、3日後、正常な及び慢性創傷線維芽細胞の成長増大においてほぼ等しかった。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び微小胞を枯渇させた馴化MSC培地は、成長をほとんど示さなかった。図12を参照されたい。
同時培養実験において、正常な成人線維芽細胞及び糖尿病足病性潰瘍からの線維芽細胞を、24ウェルプレートに播いた。各ウェルに、100%の集密度が実現されるまで(ウェル当たり約1×105細胞)播いた。細胞増殖の影響を防止するために、引掻きの2時間前に、培地を、ミトマイシン10μg/mlを含有する新鮮な無血清培地に交換した。次いで集密単層に、1ml滅菌ピペットの先端で引掻き傷を付けて、幅0.4〜0.5mmの引掻き傷を付けた。次いで培地を直ぐに除去した(任意の外れた細胞と一緒に)。除去された培地の代わりに、微小胞(PEG又は超遠心分離で誘導された)、PBS又は微小胞を枯渇させたMSC馴化培地を含有する新鮮な培地(10%FBS)を用いた。引掻き傷領域を、引掻き直後及び処置後3日目に、デジタル化画像を収集することによってモニタリングした。デジタル化画像を、倒立IX81 Olympus顕微鏡(Olympus America、Center Valley、PA、URL: olympusamerica.com)及びORCA−AG浜松デジタルカメラ(浜松ホトニクス株式会社、静岡県浜松市、日本、URL:hamamatsu.com)で獲得した。処置の3日後、本発明の方法により単離された微小胞は、最大の遊走を示し(創傷に本質的に近い)、その後、超遠心分離から微小胞を誘導した。対照(PBS)及び微小胞を枯渇させたMSC馴化培地(枯渇)は、遊走をほとんど示さなかった。図13を参照されたい。
図14は、糖尿病足病性潰瘍由来の細胞遊走線維芽細胞に対する、微小胞の効果を示す。図13の結果と同様に、本発明の方法により単離された微小胞は、最大の遊走を誘発し、その後、実施例1に記載された超遠心分離を使用して微小胞を単離した。対照(PBS)及び微小胞を枯渇させたMSC馴化培地(枯渇)は、遊走をほとんど示さなかった。
[実施例10] 本発明の微小胞の、細胞への取込み
本発明の方法による馴化培地から単離されたヒトMSC微小胞を、製造業者の取扱い説明書(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)に従いリン脂質細胞リンカー色素PKH−26(赤)で標識した。正常な皮膚線維芽細胞を、製造業者の取扱い説明書に従いVybrant−Dio(Life technology)で標識した。正常な皮膚線維芽細胞を、フィブロネクチン(Sigma−Aldrich)でコーティングされた4ウェルNunc*Lab−Tek*IIチャンバースライド(Thermo Fisher Scientific Inc.、Weston、FL)(ウェル当たり5×10細胞)上に播いた。細胞を、製造業者の取扱い説明書に従って核色素Hoechst 33342(Life technology)で染色した。Dio標識された線維芽細胞を、PKH−26標識された微小胞で、24時間処置した。画像を、倒立1X81 Olympus顕微鏡及びORCA−AG浜松デジタルカメラで獲得した。正常な皮膚線維芽細胞(緑色脂質膜色素Dioで染色)は、核周辺部位でのPEG沈殿により単離されたPKH−26標識ヒトMSC MVの取込みを実証した。図15及び16を参照されたい。図16において、微小胞は、核周辺部位に見られる。
[実施例11] リウマチ様関節炎の診断としての本発明の微小胞の使用
正常な皮膚線維芽細胞を、6ウェル組織培養プレート(BD Biosciences)において、1×105細胞/ウェルの密度で播いた。線維芽細胞を、終夜で血清飢餓状態にし、PBS(対照)、10マイクログラムの下記のいずれか、リウマチ様関節炎に罹った患者から得られた血漿から本発明の方法により単離された微小胞(ヒト血漿MV PEG沈殿);骨髄由来間葉系幹細胞で馴化された培地から本発明の方法により単離された微小胞(ヒトhMSC MV PEG沈殿);骨髄由来間葉系幹細胞で馴化された培地から超遠心分離を介して単離された微小胞(ヒトhMSC MV超遠心分離);PBS対照;及び枯渇培地対照(MVを枯渇させたhMSC馴化培地)で処置した。線維芽細胞で観察されたSTAT3リン酸化の量は、本発明の方法により単離された微小胞において、より大きかった。図17を参照されたい。
[実施例12] 転移性黒色腫の診断としての、本発明の微小胞の使用
BRAFは、B−Rafと呼ばれるタンパク質を作製するヒト遺伝子である。ヒトがんに関連したBRAF遺伝子の、30を超える突然変異が、明らかにされた。本発明者らは、転移性黒色腫に連結されるBRAFの突然変異形態を増幅する、perプライマーを設計した。突然変異は、BRAF中のエキソンにおけるT1799A突然変異である。これは、コドン600でバリン(V)の代わりにグルタメート(E)をもたらす(以下、V600Eと呼ぶ)。この突然変異の存在は、BRAF阻害剤ベムラフェニブによる処置に必要とされる。ATCC(Washington DC、Maryland)から得られるSK−Mel28細胞系は、BRAFのエキソン15にT1799A突然変異を有することが公知である。本発明の方法により単離された微小胞は、EMEM(ATCC)+10%血清(Atlanta Biologics、Atlanta、Georgia)における3日間のインキュベーションにより馴化された培地から得た。
単離された微小胞を、Qiagen‘s(Hilden、ドイツ)AUPrep DNA/RNAキットを使用して、DNA及びRNA単離のために処理した。SK−MEL28細胞及び微小胞からの約50ngのRNAを、iScript(登録商標)逆転写Supermix(BioRad、Hercules、CA)を使用して逆転写させた。2mlの一定分量を、製造業者の取扱い説明書によりPlatinum(登録商標)PCR SuperMix(Lite technology)を利用するPCRに使用した。さらに、SK−MEL28細胞及び微小胞からの80ngのDNAを、製造業者の取扱い説明書によりPlatinum(登録商標)PCR SuperMixを利用するPCRに使用した。PCR産物を、3%のアガロースゲル上に流し、Bio−Radのゲル・ドック・システムにより視覚化した。結果を図18に示す。
使用したプライマーは、下記の通りであった:
さらに、微小胞の試料をRIPA緩衝液に溶解し、タンパク質濃度をマイクロBSAアッセイキットにより推定した。約50マイクログラムを各レーンにロードし、膜を、マウス抗−BRAF V600E抗体(NewEast Biosciences、Malvern、PA)により終夜プローブした(1:1000)。二次抗体、ヤギ抗マウス(Pierce)を、1:10000の希釈率で1時間適用した。ウェスタンブロットは、SKMEL28細胞及びMVライセートにおけるBRAF V600E検出を示す。
[実施例13] 本発明の方法によりGFP標識された骨髄由来間葉系幹細胞の培養物を使用して馴化された培地からの微小胞の単離
ヒトユビキチンCプロモーター(C57BL/6−Tg(UBC−GFP)30Scha/J)の指揮下で増強型緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するホモ接合型トランスジェニックマウスを、Jackson Laboratories(Bar Harbor、Maine)から得た。これらのマウスは、全ての組織においてGFPを発現することが公知である。
GFP−Mice(約3〜4週齢)を、CO2窒息により安楽死させた。肢を、腰の上及び足首関節の下で切断した。後肢を収集し、皮膚、筋肉及び全ての結合組織を除去した。次いで骨を、氷冷滅菌IX PBSの皿に置き、PBSで数回洗浄した。各骨の端部を鋏で切り取った。温めた培地(20%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを補充したα−MEM)が入っている10ccの注射器を、骨幹内に強制的に通して、全ての骨髄を150mmプレートに抽出した。これを数回繰り返して、全ての骨髄が除去されたことを確実にした。細胞混合物を、数回ピペット分取して細胞を解離させ、細胞懸濁液を、セルストレイナー(70μmのサイズ)(BD Biosciences、San Jose、CA)内に通して、大きい細胞集塊又は骨粒子を除去した。
初期培養物を、2〜3×105細胞/cm2の間で組織培養処置皿(BD Biosciences、San Jose、CA)に播き、細胞インキュベーター内で、37℃、95%加湿空気及び5%CO2中に置いた。72〜96時間後、非接着細胞を除去し、培養フラスコをPBSで1回すすぎ、新鮮な培地をフラスコに添加した。細胞を。80%の集密度に到達するまで成長させ、次いでトリプシン−EDTA(Life technologies、Carlsbad、CA)により継代させた。細胞を、1:4の比で分割させた。
あるいは、凍結保存したGFPマウス−MSCを37℃で解凍し、直ぐに、20%ウシ胎児血清及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンを補充したα−MEMで、37℃、95%加湿空気及び5%CO2内で培養した。これらを上述と同様に拡大させた。
細胞を、100%の集密度に到達するまで(約1週間)フラスコ内で成長させた。上清を50mL円錐遠心管(Thermo Fisher Scientific Inc.、Weston、FL)に移し、直ぐに、400×gで10分間、4℃で遠心分離して、あらゆる非接着細胞をペレット化した。上清を新しい50mL円錐遠心管に移し、2000×gで30分間、4℃で遠心分離して、細胞及び細胞残屑をさらに除去した。上清を収集し、250mlの滅菌ポリプロピレン使い捨て容器(Corning、Corning、NY)に入れた。上清に、RNase及びプロテアーゼのないポリエチレングリコール平均分子量6000(Sigma Aldrich、Saint Louis、MO)を8.5w/v%で、及び塩化ナトリウム(最終濃度0.4M)を添加した。溶液を、4℃の冷蔵室に、揺動させながら終夜置いた。溶液を50mL円錐遠心管に移し、10000×g、4℃で30分間遠心分離した。上清をデカントし、微小胞に富むペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。微小胞に富む溶液を、Amicon ultra−15遠心分離フィルターユニット(公称分子量限界100kDa)(Millipore、Billerica、MA)に移し、5000×gで30分間遠心分離した。フィルターユニットをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、再び5000×gで30分間遠心分離した。濃縮した試料を、フィルターデバイスの底部から回収した(約200〜400μl)。タンパク質濃度を、マイクロBSAタンパク質アッセイキット(Pierce、Rockford、IL)により決定し、富化された微小胞溶液を、−70度で貯蔵し又は下流の使用(例えば、タンパク質、RNA及びDNA抽出)に向けて処理した。
微小胞の細胞取込みを決定するために、正常なヒト皮膚線維芽細胞を、製造業者の取扱い説明書に従いVybrant−Dio(Life technology)で標識した。正常な皮膚線維芽細胞を、フィブロネクチン(Sigma−Aldrich)でコーティングされた4ウェルNunc*Lab−Tek*IIチャンバースライド(Thermo Fisher Scientific Inc.、Weston、FL)(ウェル当たり5×10細胞)上に播いた。細胞を、製造業者の取扱い説明書に従って核色素Hoechst 33342(Life technology)で染色した。Dil標識された線維芽細胞を、GFP発現マウスMSCから単離された微小胞で、24時間処置した。画像を、倒立1X81 Olympus顕微鏡及びORCA−AG浜松デジタルカメラで獲得した。図20及び21を参照されたい。重要なのは、これらの画像が、GFPを含有する微小胞が細胞によって取り込まれたことを示すことである。
[実施例14] 創傷治癒を促進させる又は増強する療法としての本発明の微小胞の使用
全層創傷を、10mmのパンチ生検機器を使用して、ブタの背部に創出させた。微小胞を、実施例1に記載された方法(「従来の超遠心分離方法」)又は実施例3に記載される方法のいずれかにより自家骨髄由来間葉系幹細胞を使用して馴化された培地から単離した。30マイクログラムの微小胞を、創傷時並びに1日目及び2日目に、局所注入によって創傷に投与した。対照を生理食塩水で処置し、又は空気曝露により治癒させた。5日後、動物を安楽死させ、創傷の検査をした。
図22は、創傷から5日後の、創傷の組織構造を示す。5日目に、本発明の方法により(即ち、実施例3に記載された方法により)単離された微小胞で処置した創傷は、生理食塩水による対照、空気曝露による対照、及び超遠心分離によって調製された微小胞で処置された創傷よりも、小さく見えた。超遠心分離によって調製された微小胞で処置した創傷は、本発明の方法により調製された微小胞で処置されたもの及び療法の対照に比べて高い炎症応答を示した。
別の研究では、第2度熱傷創傷は、100℃に加熱された黄銅棒を使用して、ブタの背部に創出された。微小胞を、実施例1に記載された方法(「従来の超遠心分離方法」)又は実施例3に記載された方法のいずれかによって自家骨髄由来間葉系幹細胞を使用して馴化された培地から単離した。微小胞30マイクログラムを、創傷時並びに1日目及び2日目に局所注入によって創傷に投与した。対照は、生理食塩水で処置し又は空気曝露で治癒させた。
実験の期間にわたり(熱傷損傷後、最長28日まで)、超遠心分離によって調製された微小胞で処置した創傷は、本発明の方法により(即ち、実施例3に記載された方法により)調製された微小胞で処置したものよりも著しい炎症を起こした。図23を参照されたい。同様に、超遠心分離によって調製された微小胞で処置した創傷は、生理食塩水による対照及び空気曝露した対照よりも著しい炎症を起こした。本発明の方法により調製された微小胞で処置した熱傷創傷は、対照よりもさらに著しい炎症を起こすようには見えなかった。
図23は、超遠心分離によって調製された微小胞で、本発明の方法により調製された微小胞及び空気曝露された対照で処置された創傷間での、創傷後7日目の炎症の相違を示す。微視的には、全層と、超遠心分離により調製された微小胞で処置した熱傷創傷との両方で、膿瘍形成が見られた。科学理論に拘泥するものではないが、超遠心分離によって調製された微小胞によるものと示される炎症は、損傷した微小胞に起因すると考えられ、これが炎症カスケードを容易に刺激することができる。本発明の微小胞は、追加の粒子を含むことによって追加の利益を与えてもよい。
図24は、熱傷損傷から28日後に本発明の方法によって単離された微小胞で処置した第2度ブタ熱傷損傷を示す。基質の出現と共にコラーゲンの著しい再構築がある。これらの発見は、III型コラーゲン形成による皮膚再構築を示す。真皮に十分固着されたように見える肥厚表皮をもたらす、真皮・上皮誘導もある。これらの発見は、瘢痕形成では観察されず、真皮再生とさらに一致している。瘢痕上での表皮形成は、瘢痕真皮に十分固着できないことに起因して、再損傷を容易に受ける。
図25は、熱傷損傷から28日後に生理食塩水で処置した第2度ブタ熱傷損傷を示す。扁平表皮による最小限の真皮再生がある。著しい乳頭間隆起形成の欠如は、不適切に固着された表皮を非常に示唆している。これらの発見は、継続する損傷のリスクを持つ瘢痕形成を、さらにより示している。
図26は、損傷から28日後に本発明の方法により単離された微小胞で処置された、全層ブタ創傷を示す。おそらくは微小胞の適用によって刺激された、再構築真皮への神経の内殖(矢印によって示される)がある。神経成長は、血管新生応答(円内領域)を伴う。神経は、発達した構造であるように見え、単なる軸索発芽に起因しない。これは独自の発見であり、かつて報告されておらず、対照創傷又は超遠心分離により調製された微小胞で処置した創傷でも観察されなかった。これらの観察は、表皮、間質、脈管構造及び神経組織を含む全ての胚葉から成熟要素を発生させる能力による、複合組織再生を非常に示している。次いでこれらの方法は、外胚葉、内胚葉及び中胚葉誘導組織の外傷、炎症、新生物、及び変性障害を含む数多くの状態の処置に、広く適用可能であるように見える。
図27は、損傷から28日後に本発明の方法により単離された微小胞で処置した全層ブタ創傷を示す。この図は、図26で記載された観察内容を、より大きい倍率で示す。A)において、神経成長は、血管新生応答に関する経路を辿るように見える。この発見は、神経成長が胎生発育における血管新生に続くことが周知であるので、興味深い。この場合も、これらの発見は組織再生を示す。B)は、より高い倍率で神経を示す。C)は、神経成長に隣接する血管新生を、より良好に示す。
骨形成が、ブタ全層創傷モデルの全ての処置群(対照及び微小胞で処置された)で見られた。図28を参照されたい。動物に、合計で1.44mgの微小胞(半分は本発明の方法により調製され、半分は超遠心分離による)を与えた。次いで全ての創傷において、骨の形成を刺激する全身効果があるようである。骨形成は、さらになお炎症性の高い創傷を引き起こす傾向があり、局所炎症メディエーターと微小胞の全身効果との相乗効果を示唆している。
[実施例15] 骨髄を再配置する及び複合構造を再生する療法としての本発明の微小胞の使用
C57/CJ6(GFP)マウスに、2サイクルの400cGyガンマ照射で致命的に照射して、それらの宿主骨髄前駆細胞をアブレーションした。照射後、マウスを、約2cmの領域内でかつアブレーティブ分別エルビウム:YAGレーザーで処置した。レーザー処置後、プラスチックチャンバを皮膚に接着させ、同系GFP<+>トランスジェニックマウスから得られた骨髄由来細胞をチャンバに添加した。GFP+骨髄細胞は、新しく収集された全骨髄細胞、分化系列ネガティブ選択骨髄細胞、間葉系幹細胞、及び骨髄完全培養細胞を含んでいた(本出願で記載されるような)。僅か数匹の動物においてキメラ現象が実現され、これはGFP+細胞を、細胞の投与後4〜6週間にわたり循環させることによって検出された(図29参照)。意外にも、多くの動物は、ドナー骨髄生着の証拠なしに生存した。細胞を受けた動物の全体(所与の細胞の全ての群において)で30%が生存した。種々の群の中で、生存率は、分化系列ネガティブ選択細胞(45%)及び新鮮な骨髄細胞(30%)を受けた動物に関して最高であった。細胞を受けていない対照の照射動物は、100%の死亡率を有していた。サイトカインは、同様に致命的に照射された動物を同様に救うことができず、機能的なドナー骨髄生着は、これらの生存する動物において実証できなかった。送達された細胞により分泌された微小胞は、これらの動物の生存に繋がる宿主骨髄の回復に応答可能になり得る。本発明者らは、新鮮な骨髄(分化系列ネガティブ細胞を含む)及び間葉系幹細胞が、この効果を実現できる大量の微小胞を生成することを実証した。別の研究では、C57/CJ6(GFP−)マウスに、2サイクルの400cGyガンマ照射で致命的に照射して、それらの毛髪成長を阻害し、それらの骨髄を部分的にアブレーションした。照射後、マウスの背中を剃り、次いでマウスを、約2cmの領域内でかつアブレーティブ分別エルビウム:YAGレーザーで処置した。レーザー処置後、プラスチックチャンバを皮膚に接着させ、同系GFP+トランスジェニックマウスから得られた骨髄由来細胞をチャンバに添加した。GFP+骨髄細胞は、新しく収集された全骨髄細胞、分化系列ネガティブ選択骨髄細胞、間葉系幹細胞及び骨髄完全培養細胞を含んでいた(本出願で記載されるような)。キメラ現象が実現される動物はなく;GFP+細胞を、細胞の投与後4〜6週間にわたり循環させることによって検出された。図30を参照されたい。レーザー処置のみ受けた動物は、短くずんぐりした毛髪成長しかなかった。図30(A)。骨髄細胞が与えられた動物では、著しく長く伸びた毛髪成長があった。図30(A及びB)。これらの発見は、GFP+分化系列ネガティブ選択細胞及び全新鮮GFP+骨髄細胞で処置したマウスで最も劇的であった。毛髪成長は、2週間で検出することができ、数カ月にわたって成長し続けることができた。皮膚生検を、新しい毛髪成長の領域で得たが、GFP+細胞は検出されなかった。骨髄細胞の機能的生着も、FACS分析により任意の動物で検出できなかった。図30(C)。図29の実施例のように、サイトカインは、毛髪成長の回復においてこの効果を発揮することが実証されなかった。送達された細胞を分泌する微小胞は、毛髪成長の刺激に責任を負うようである。
[実施例16] 血管新生を促進させる又は刺激するための及び線維芽細胞増殖を促進させる又は刺激するための本発明の微小胞の使用
骨髄穿刺液微小胞の単離: 約25mlの新鮮な全骨髄を、AllCells、Inc.(Alameda、CA)から得た。骨髄を、慎重に、新しい50ml円錐遠心管に入れ、400×gで30分間、室温で遠心分離した。上清を、慎重に除去し(約15ml)、新しい50ml円錐遠心管(Thermo Fisher Scientific Inc.、Weston、FL)に入れ、2000×gで30分間、4℃で遠心分離した。上清を、再び慎重に除去し、新しい50ml円錐遠心管に入れ、そこに滅菌アルファ−最小必須培地(α−MEM)(Mediatech Inc.、Manassas、VA)を1:10(骨髄上清対培地)の比で添加した。溶液に、RNase及びプロテアーゼのないポリエチレングリコール平均分子量6000(Sigma Aldrich、Saint Louis、MO)を、8.5w/v%で添加し、かつ塩化ナトリウム(最終濃度0.4M)を添加した。溶液を、4℃の冷蔵室に終夜、揺動させながら入れた。溶液を、10000×g、4℃で30分間遠心分離した。上清をデカントし、微小胞に富むペレットをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁した。微小胞に富む溶液をAmicon ultra−15遠心分離フィルターユニット(公称分子量限界100kDa)(Millipore、Billerica、MA)に移し、5000×gで30分間遠心分離した。フィルターユニットをリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、再び5000×gで30分間遠心分離した。濃縮された試料を、フィルターデバイスの底部から回収した(約200〜400μl)。
血管新生アッセイ: 血管新生を、内皮管形成アッセイ(Invitrogen Life Technologies、Grand Island、NY)を使用して測定した。凍結保存した初代ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)(Invitrogen Life Technology)を、75cmの組織培養フラスコ内で6日間、2%低血清成長補助剤(Invitrogen Life Technologies)を補充した培地200PRF中で成長させた。次いで細胞を、3×10<4>の密度で、補助剤なしの培地を含有する24ウェル組織培養プレートに播いた。HUVEC細胞を、引き続き骨髄微小胞(約100μg)で処置した。PBSを、ビヒクル対照として使用した。処置した細胞を、6時間、37℃及び5%CO2でインキュベートした。2μg/mlの濃度にあるCalcein AM蛍光色素を、管形成を視覚化するために使用した。蛍光画像を、倒立IX80オリンパス顕微鏡(Olympus America、Center Valley、PA)で獲得した。骨髄MVは、ビヒクル(PBS)対照に比べて著しい管形成能を示した(図31参照)。
成長アッセイ: 正常な成人線維芽細胞を、アッセイのために成長培地中(5%FBS、1%グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)で、24ウェルプレート上に播いた(10000細胞/ウェル)。終夜インキュベートした後、3つのウェルをランダムに選択し、細胞をNucBlue Live ReadyProbes試薬(Invitrogen Life technologies)で染色した(0日目)。蛍光画像を、EVOS FL Auto Cell撮像システム(Invitrogen Life technologies)を使用して獲得した。線維芽細胞に、骨髄由来微小胞(約100μg)又はPBS(ビヒクル対照)を含有する新鮮な培地を再び供給し、3日後(3日目)に細胞を染色し撮像した。骨髄由来微小胞で処置された線維芽細胞は、その数が約3倍増加し(0日目と比較して)、ビヒクル対照よりも著しく大きい速度で増加した(図32、パネルA及び図32、パネルB)。
[実施例17] 標的細胞への生物活性材料のEV媒介送達
本発明の、ある特定の例示的な実施形態によれば、本明細書に記載されるEVは、1種以上の生物活性剤(例えば、VII型コラーゲンタンパク質又はペプチド、VII型コラーゲン mRNA、STAT3−シグナル伝達アクチベーター、古典的Wntアクチベーターなど)を標的細胞に送達するのに有用である。この実施例は、野生型線維芽細胞に比べてCOL7A1発現が足りないRDEB線維芽細胞への、EVの送達を実証する。EVは、RDEB線維芽細胞におけるVII型コラーゲン発現を刺激した。EVは、RDEB線維芽細胞における創傷治癒に関連したマーカーの発現も刺激した。
図44は、RDEBを有すると診断された幼児由来のインビトロ細胞系の検証を示す(Hallopeau−Siemens型)。小胞交換が、BM−MSCとRDEB線維芽細胞との間で観察された(図45)。VII型コラーゲンを、BM−MSC EVで同時単離し(図46)、COL7A1 mRNAを、MB−MSC EV中で富化した(図47)。
RDEB線維芽細胞を、1日目にBM−MSC EVで処置し、3日目に洗浄し、6日目にはVII型コラーゲン発現の増大を示した(図48)。化学選択的ライゲーションアッセイ(「click iT」反応化学を利用する)は、新しいVII型コラーゲンを、BM−MSC EVとの同時処置の後にRDEB繊維芽細胞から生成することを明らかにした(図49)。BM−MSC EVは、RDEB線維芽細胞の創傷治癒(例えば、増殖及びトリプシン耐性)に関連したインビトロ代理アッセイを増大させることを示した(図50)。
臨床試験での熱傷患者に、生理食塩水中で送達されたBM−MSCは、何時間以内(図示、4時間)に、生理食塩水中で多数のEV(CD63ポジティブ)を分泌することを示した(図51)。
BM−MSC媒介型創傷治癒のモデルを、図52に示す。
[実施例18] 劣性栄養障害性表皮水疱症の処置において骨髄間葉系幹細胞由来の細胞外小胞
同種骨髄由来間葉系幹細胞(BM−MSC)の局所及び静脈内注射は、劣性栄養障害表皮水疱症(RDEB)における創傷治癒を促進させることが示されてきた。本発明者らは、BM−MSC由来の細胞外小胞(EV)(BM−MSC EV)が、BM−MSCに起因した治癒効果に大きく責任を負うことを、記載してきた。本発明者らは、EVがVII型コラーゲン(Col VII)をRDEB細胞に移すことができることも発見した。本発明者らは、健康な同種ドナーからのBM−NSC EVが、RDEB患者の創傷に局所的に付着され、創傷治癒を増強しながら患者の安全性及び快適性を最大限にする、第1の臨床試験を提案する。EVによる処置には、遺伝的不安定性及び悪性形質転換のさらに低いリスクを含む、細胞療法に勝る多くの利点がある。本発明者らは、FDA治験新薬(IND)の認可を確実にし、30名のRFDB患者において局所的に適用された同種BM−MSC由来EVの非盲検用量漸増第I相試験に向けた臨床グレードのBM−MSC EVを製造する。
<特定の目的>
目的1−RDEB患者において局所的に適用されたBM−MSCEVの第I相用量漸増試験のためにFDAからIND認可を得ること、及び最適な臨床グレードのBM−MSC−EVを調製すること
本発明者らは、本発明者らの第I相臨床試験で使用される、ドナーBM−MSC EVのスクリーニング、選択及び機能的特徴付けに、特定の基準を適用する。これには、それらがRDEBに特に関係するINDのEV製造及び生成物特性の詳細を定義することが含まれる。本発明者らは、本発明者らの幹細胞をベースにした臨床試験で重要であることが見出された分析を用い、レシピエントRDEB細胞に対する機能的性能に基づいてBM−MSC EVに対してドナーを評価する。本発明者らは、最適なBM−MSCドナーを選択し、本発明者らの試験でRDEB患者の処置に使用されるBM−MSC EVを製造する。
目的2−30名のRDEB患者における創傷の処置での局所的な同種BM−MSC誘導EVの非盲検用量漸増臨床試験を実行すること
投薬は、熱傷患者に局所的に適用されたBM−MSCの、PIの成功臨床試験に基づく。3つの連続的に漸増する投薬群があり、各群は10名の患者で構成される。投薬計画は、処置0日目で最初の用量であり、3回の追加の用量が毎月与えられる(3カ月にわたり、合計で4回の処置)。主要な結果は、局所的に適用されたBM−MSC EVの安全性及び耐容性を評価し;二次的な結果は、創傷治癒、疼痛、掻痒感及び美容術(色素、瘢痕評価及び組織再生の証拠を含む)を評価する。Integrium Contract Research Organizationが、臨床試験を補助する。
<研究戦略>
目的1−RDEB患者の創傷を処置するための第I相臨床試験で局所BM−MSC由来細胞外小胞(EV)を使用するためにFDAからIND認可を得ること。
熱傷及び扱い難い慢性非治癒創傷に対する骨髄由来幹細胞及び前駆細胞の直接適用は、創傷閉鎖及び真皮再構築をもたらす。慢性創傷患者(持続時間が1年よりも長い)を、骨髄幹細胞及び前駆細胞で処置した。MSCは、患者に与えられた細胞の約30%を示した。治癒の証拠が、処置した全ての患者で観察され、多くはそれらの創傷の完全閉鎖を実現した。一部の対象は、7年を超えて治癒したままであった(最終的には追跡不能)。臨床上の発見の中に、皮膚の再構築及び治癒創傷における瘢痕の欠如があり、共に臨床的にかつ組織学的に記述された。臨床的には、創面の上昇があり、治癒創傷の閉鎖に関して萎縮/窪みがほとんどない状態から全くない状態を持つ(図33)。組織学的証拠は、処置した創傷における真皮再構築を裏付ける。
微視的発見には、増大したコラーゲン形成及び基質堆積が含まれた。最も意外な観察の中に、レチクリン及び弾性線維などの構造の復元があった(図34)。これらの線維は、さらに複雑ではない急性及び慢性創傷の治癒において、特徴的に失われる。全体としてこれらの発見は、有害事象なしに、局所的に適用された骨髄由来幹細胞を使用して、非治癒創傷で治癒を誘発させ、組織体積の不足を回復し、組織再生を刺激し、瘢痕を大幅に低減させる能力を裏付ける。
熱傷創傷に局所的に適用された同種BM−MSCは、迅速な上皮形成、低減された瘢痕、色素の回復、及び毛包の再生の証拠を示した。関連する深刻な有害事象も拒絶の証拠も観察されなかった。組織再生に一致する毛包再生(図35)が、熱傷創傷へのBM−MSCの局所適用後に示された。しかし毛包の再生は、熱傷損傷の未処置領域では観察されなかった。組織再生を示す劇的な再色素化(図36)も観察された。
患者において示される迅速な再色素化は、これらの創傷が典型的には長期(しばしば永続的)にわたる熱傷後白皮症になるので、処置の任意のその他の手段によってこれまで聞かれていない。熱傷皮膚における弾性の回復も、驚くべき発見であった(図37)。これらの結果に関して特に顕著なことは、これらがBM−MSCの短期局所適用の後にのみ生ずることである。特にこの時間枠内で、細胞はこの投与手段によって長く生存すること及び/又は生着することがないようである。このことは、送達された細胞が複雑なメッセージを迅速に伝達でき、堅牢な再生及び治癒効果をもたらすことを、強く示している。裸のサイトカイン、核酸及び転写因子は、熱傷損傷環境で長く生存できず、単一因子がそのような複雑な応答を発生させることが可能と考えることもありそうにない。
科学理論に拘泥するものではないが、膜結合EVは、そのような臨床応答を発生させることが可能であると仮定した。ちょうど細胞が患者に送達される(細胞の除去後)生理食塩水ビヒクルについて検査する際、本発明者らは1.6×1011EV粒子/mLよりも多くが存在することを見出し、本発明者らはかなりの数のEVを患者に送達することを確認した。患者に投与された試料中のEVは無傷であり、特徴的なEVマーカーを保有する。最近、本発明者らは、EVが正常及び慢性創傷線維芽細胞増殖及び移行を刺激し、STAT3媒介型標的遺伝子の活性化を介して血管新生を増強することを公表した(Shabbir A、Cox A、Rodriguez−Menocal L、Salgado M、Van Badiavas E. Mesenchymal Stem Cell Exosomes Induce Proliferation and Migration of Normal and Chronic Wound Fibroblasts,and Enhance Angiogenesis In Vitro. Stem Cells Dev 2015;24:1635〜47)。本発明者らの前臨床研究も、創傷治癒及び組織再生のBM−MSC EV刺激を強力に裏付ける(図38及び39)。本発明者らの前臨床研究における組織再生の証拠、例えば神経成長は、その他の手段により実現されていない。特に、本発明者らの前臨床研究は、EV単離のその他の方法が小胞に損傷を与え、それが望ましくない炎症応答の発生に繋がることを実証した。本発明者らの新規な方法は、EVに損傷を与えず、炎症応答を発生させることなく迅速な治癒を誘発することが示されてきた(図40)。予備データは、これらの小胞が、治癒促進因子の送達とは別に、Col VIIタンパク質及び機能的COL7A1 mRNAをRFEB線維芽細胞に輸送できることを示した(図41及び42)。
化学選択的ライゲーション反応と組み合わせてCol VIIタンパク質を獲得するアッセイにおいて(Click iT(登録商標)、ThermoFisher)、本発明者らは、RDEB線維芽細胞がBM−MSC EV(10μg/mLの用量で)によって実際に誘発されて、新しいCol VIIタンパク質を作製することを見出した(図42)。BM−MSC EVは、RDEB増殖及びトリプシン消化に対する耐性の両方を著しく促進させる(図43)。これらは、RDEB皮膚線維芽細胞の、機能獲得及び創傷治癒促進の可能性を、評価するのに使用される標準的なアッセイである。これらのデータは、創傷治癒を改善する可能性に加え、BM−MSC EVがRDEBに関して利益を有する証拠を提供する。臨床試験に関するIND認可を得るために、本発明者らは、PIが先の試験において首尾良く働いた請負GMP製造施設内で製造を確立する。一般的な製造要件を満たすこととは別に、本発明者らは、RDEBの処置に特に関係する課題に対処する。本発明者らは、EVの潜在的な再生促進活性を最適化するために、ドナーのスクリーニング及び選択に関する基準を確立する。BM−MSC EV生成物の特徴は、定義される。これらのパラメーターには、タンパク質濃度、EVサイズ分布(例えば、NanoSight NS300を使用する)、表面マーカーの特徴付け、製造中に使用された試薬の除去、及び生成物の安定性試験が含まれる。質量分析法及びRNA配列決定を使用して、本発明者らは、いくつかのBM−MSC EVドナーのタンパク質及びRNAカーゴの内容物を定義し、カーゴを機能的アッセイ性能に相関させる。BM−MSC EV機能的活性は、レシピエントRDEB細胞に関して定義され、創傷治癒及び表現型の反転のための効力を確立するためのインビトロ研究が含まれ、RDEB線維芽細胞増殖及び耐トリプシンアッセイが含まれる。さらに、内皮血管新生についてインビトロで検査する。
目的2−30RDEB患者の創傷の処置における局所的同種BM−MSC由来EVの非盲検用量漸増臨床試験を実行すること
<手法>
臨床試験は、3つの漸増処置用量群(用量レベル当たり10名の患者)による、非盲検パイロット研究である。調査員は、処置のための5〜50cm2の間の標的病変を特定する。生理食塩水中のEVを、薄いシリコーンシートドレッシングの下に、一次層として、その上に重なる二次標準治療創傷ドレッシングと共に付着させる。対照創傷は、シリコーンシートの下で、生理食塩水で処置される。処置頻度は、ベースライン、4週、8週及び12週である。用量レベルは、PIの燃焼試験で投与されたレベルから誘導される。デジタル画像を、処置及び対照創傷で撮影する。処置及び対照創傷を、Silhouette(登録商標)デバイスを使用して測定する。
結果を、12週間にわたって毎月評価する。本発明者らの先の経験から、本発明者らは、50%よりも高い刺激を治癒に見ることを期待する。臨床的に及び実験室のばらつきの観点から、本発明者らは、プールされた標準偏差が20であると想定した。ここで検定力(確率と混同しないように)0.8が、この範囲の差を試験する臨床研究のために推奨される(Breau RH、Carnat TA、Gaboury I. Inadequate statistical power of negative clinical trials in urological literature. The Journal of urology 2006;176:263〜6; Ichihara K、Boyd JC. An appraisal of statistical procedures used in derivation of reference intervals. Clinical chemistry and laboratory medicine: CCLM/FESCC 2010;48:1537〜51)。事実、50%よりも大きい差の評価は、0.8未満の検定力を必要とする可能性がある。チャンスの差が有意であると呼ばれる確率は、α(I型誤差)によって示され、典型的には閾値0.05を有するべきであり、その下ではp値が有意と見なされる。実際の差が不明な(II型誤差)チャンスはβによって示される。本発明者らが現実的と考えるこれらの値により、本発明者らは、必要になる以下のサンプルサイズ(表1)を計算した。αは、チャンス差が有意であると呼ばれる確率を指す。慣習的に、閾値は0.05(95%信頼区間)であり、その下でp値は有意と考えられる。表1の値は、両側検定に関する。群当たり10名の患者に選択されたサンプルサイズは、検定力が推奨される0.8〜0.95を十分に超えて増大したときであっても、適切以上である。これは、本発明者らが必要と考えるよりも厳しいが、本発明者らは、対象の数を提示した状態で適正な検定力を有することが確実になる。
<適格性基準>
重要な包含基準は下記を含む:男性又は女性の患者、スクリーニング時に12才以上、年齢が18才よりも下の場合には保護者の同意が必要;臨床症状及び組織学的確認により定義されるように、RDEB診断を確認した;腕及び/又は足に、5〜50cm2の間の少なくとも1つの活性創傷を有する;妊娠の可能性がある女性は、スクリーニングで陰性の尿又は血清妊娠検査を持たなければならず、許容される形の産児制限を使用しなければばらない(口内/インプラント/注射可能/経皮避妊、子宮内デバイス、又はその他の形の産児制限)。重要な除外基準には、下記が含まれる:感染に関する臨床上の証拠;任意の理由のための任意の種類の同時免疫抑制療法。
<主要評価項目>
下記の主要評価項目について評価する。
1) 全ての有害事象に関するスクリーニング及び文書化、特に処置に関係することが疑われるもの。
2) 全ての報告された、関連ある有害事象の特徴付け及び分析。
3) 処置からの自由脱退又は不寛容に起因した、不連続な参加者の評価。
注目すべきは、本出願において、本発明者らが、創傷治癒を改善しかつおそらくはRDEB創傷にCol VIIを導入するために、多数用量で同種BM−MSC由来のEVの使用を提示することである。EU及びUS臨床登録は、BM−MSCを使用して、したがってそれらが生成する(EVを含む)パラクリン材料を使用して、1,000を超える臨床試験を世界的に十分列挙し、全ての調査の凡そ半分が同種源を用いる。今日まで、深刻に関連する有害事象は報告されていない。熱傷患者で同種BM−MSCを使用する本発明者らの試験では、本発明者らは、関係ある有害事象の任意の証拠を検出せず、大量のBM−MSC EVを含有することがわかっている送達された材料に対する免疫応答も、検出しなかった。本発明者らの調査における免疫応答の分析は、混合リンパ球反応において免疫応答の非常に小さい無症候性エビデンスを検出する、FDAによりクリアされた感受性ELISAアッセイを含む。本発明者らの試験で多数の用量を与えたにも関わらず、これらのアッセイではいかなる免疫応答も検出されなかった。しかしこのことは、それらが生成するEVによって媒介することが示されてきたように(Bruno S、Deregibus MC、Camussi G. The secretome of mesenchymal stromal cells: Role of extracellular vesicles in immunomodulation. Immunology letters 2015;168:154−8; Chen W、Huang Y、Han Jら、Immunomodulatory effects of mesenchymal stromal cells−derived exosome. Immunologic research 2016;64:831−40; Li X、Liu L、Yang Jら. Exosome Derived From Human Umbilical Cord Mesenchymal Stem Cell Mediates MiR−181c Attenuating Burn−induced Excessive Inflammation. EBioMedicine 2016;8:72〜−82)、BM−MSCが免疫調節特性を有することが公知であるので(Bartholomew A、Polchert D、Szilagyi E、Douglas GW、Kenyon N. Mesenchymal stem cells in the induction of transplantation tolerance. Transplantation 2009;87:S55−7; Siegel G,Schafer R,Dazzi F. The immunosuppressive properties of mesenchymal stem cells. Transplantation 2009;87:S45−9; Sundin M,Barrett AJ、Ringden Oら、 HSCT recipients have specific tolerance to MSC but not to the MSC donor. J Immunother 2009;32:755−64)、予測されないことではない。本発明者らは、本発明者ら自身も含めた多数の試験が免疫応答又は拒絶の証拠なしに同種間葉系幹細胞ベースのEVを何年にもわたり送達したならば、RDEBに関するEVベースの療法で慎重に前へ進めることが正当化されると考える。本発明者らは、当然ながら、本発明者らの試験で十分確立された対策を使用して、免疫応答又は拒絶の任意の証拠に関して非常に密接に患者をモニタリングする。本発明者らは最近、BM−MSC EVがCol VIIを送達しかつRDEB細胞を誘発させてCol VIIを作製できることを見出したので、患者がCol VIIに対する抗体を発生させる可能性に関して疑問が持ち上がった。これは、RDEB患者に対して行われた多くの臨床試験における懸念であったが、Col VII抗体が検出される試験においてさえ(Petrof、下記)、有害応答について誰も実証してこなかった。Col VIIタンパク質を直接投与する前臨床試験では、Col VIIに対する抗体の循環が検出されたときでさえ、疾患の悪化、水疱形成の増大、これらの抗体の皮膚に対する結合が観察されなかった(Riazifar、下記;Palazzi X、Marchal T、Chabanne L、Spadafora A、Magnol JP、Meneguzzi G. Inherited dystrophic epidermolysis bullosa in inbred dogs: A spontaneous animal model for somatic gene therapy. J Invest Dermatol 2000;115:135−7; South AP、Uitto J. Type VII Collagen Replacement Therapy in Recessive Dystrophic epidermolysis Bullosa−How Much, How Often? J Invest Dermatol 2016;136:1079−81; Woodley DT、Cogan J、Wang Xら、De novo anti−type VII collagen antibodies in patients with recessive dystrophic epidermolysis bullosa. J Invest Dermatol 2014;134:1138−40)。RDEB患者におけるBM−MSC試験も、Col VIIの存在が確立できたときでさえ及び/又は抗コラーゲン抗体が検出できたときでさえ、疾患の悪化、増大する水疱形成、又は自己免疫性の誘発の証拠を実証できなかった(El−Darouti M、Fawzy M、Amin Iら、Treatment of dystrophic epidermolysis bullosa with bone marrow non−hematopoietic stem cells: a randomized controlled trial. Dermatol Ther 2016;29:96〜100; Riazifar M、Pone EJ、Lotvall J、Zhao W. Stem Cell Extracellular Vesicles: Extended Messages of Regeneration. Annu Rev Pharmacol Toxicol 2017;57:125−54; Petrof G、Lwin SM、Martinez−Queipo Mら、Potential of Systemic Allogeneic Mesenchymal Stromal Cell Therapy for Children with Recessive Dystrophic Epidermolysis Bullosa. J Invest Dermatol 2015;135:2319−21)。化学(Woodley、下記)及び骨髄幹細胞移植(Wagner JE、Ishida−Yamamoto A、McGrath JAら、Bone marrow transplantation for recessive dystrophic epidermolysis bullosa. The New England journal of medicine 2010;363:629−39)の両方でRDEB患者において誘発したCol VIIの発現は、処置した患者において誘発された抗Col VII抗体に関するいかなる懸念も確立できなかった。これは、RDEB患者の半分以上が、通常は抗体産生に関与するCol VIIの主要な抗原性部分を発現するので、意外なことではない(Woodley DT、Cogan J、Hou Yら、Gentamicin induces functional type VII collagen in recessive dystrophic epidermolysis bullosa patients. J Clin Invest 2017; Jones DA、Hunt SW、3rd、Prisayanh PS、Briggaman RA、Gammon WR. Immunodominant autoepitopes of type VII collagen are short, paired peptide sequences within the fibronectin type III homology region of the noncollagenous (NC1) domain. J Invest Dermatol 1995;104:231−5; Lapiere JC、Woodley DT、Parente MGら、Epitope mapping of type VII collagen. Identification of discrete peptide sequences recognized by sera from patients with acquired epidermolysis bullosa. J Clin Invest 1993;92:1831−9; Pfendner E、Uitto J、Fine JD. Epidermolysis bullosa carrier frequencies in the US population. J Invest Dermatol 2001;116:483−4)。
多くのRDEB患者が限局的逆モザイク現象を経験するという発見(無傷のCol VIIを含有する耐久性ある皮膚の領域で)も、Col VIIのRDEB患者への導入が病原性応答を誘発しないようであるという強力な証拠を提供する。たとえそうであっても、Col VII抗体の産生が臨床上関連ある効果を発揮した場合、後天性表皮水疱症;RDEBよりもさらに管理可能な疾患の形に、より似ていると考えられる。本発明者らは、幹細胞ではなくEVの使用を提案していると指摘することも必要である。幹細胞は、生着する能力を有し、元に戻ることはできない。EVは生存可能ではなく、持続できずかつ複製されない。したがって、本発明者らが有害な結果(抗Col VII抗体滴定)の任意の証拠又は疑念を検出した場合、処置は停止され、可逆的になる。
<二次結果判定法>
下記の二次結果判定法について評価する:
1) 体表面積インデックス(BSAI)の変化に基づく、水疱/びらんの低減。
2) 標的創傷サイズの低減又は閉鎖。創傷サイズの低減は、EV処置の可能性ある効力を決定する評価である。標的創傷は、Silhouette(登録商標)(Aranz Medical)、FDA認可医療用デバイス創傷撮像、3D測定、並びに正確、精密及び反復可能な創傷評価をもたらす非侵襲的レーザー技術を使用する文書化システムを使用して測定される。
3) 個々の徴候の医師の査定−このスケールは、水疱形成及び腐食、滲出/痂皮形成/浸出、掻痒症、非水疱形成の周囲皮膚における紅斑症、及び疼痛にて評価する。体面積は、頭/頚、上肢、体幹及び下肢を含む。
4) 表皮水疱症の疾患活性及び瘢痕インデックス(EBDASI)。
5) VAS疼痛スコアアンケート及び疼痛の薬物療法の使用。
6) ItchyQuantスケールスコア(掻痒を評価するために検証されたスケール)(Haydek CG、Love E、Mollanazar NKら、Validation and Banding of the ItchyQuant: A Self−Report Itch Severity Scale. J. Invest. Dermatol. 2017;137:57−61)。
7) 小児の皮膚科学的生活品質指標(Children’s Dermatology Life Quality Index(CDLQI))。初期試験施設は、マイアミ大学である(世界的に有名な小児皮膚科学博士、Dr. Lawrence Schachner)。二次施設はこれから決定される。
本発明の様々な態様について、実施例及び好ましい実施形態を参照することにより上記にて示してきたが、本発明の範囲は、前述の説明によってではなく、特許法の原則の下で正しく解釈された下記の特許請求の範囲によって、定義される。