JP5257728B2 - 紙製畳表加工用水性樹脂分散体、及びそれを被覆加工してなる紙製畳表 - Google Patents

紙製畳表加工用水性樹脂分散体、及びそれを被覆加工してなる紙製畳表 Download PDF

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Description

本発明は、紙製畳表加工用水性樹脂分散体、及び紙製畳表に関する。更に詳しくは、耐ブリスター性、被覆性、耐摩耗性及び風合いに優れ、特に紙製畳表加工用に適した水性樹脂分散体、及びそれを被覆加工してなる紙製畳表に関する。
一般に用いられる畳表は、天然のイ草を編織して作られるが、イ草は日焼けによる退色や摩耗による劣化を起こしやすく、通常の生活環境では、長期間の使用には耐えられないという問題があった。
そこで、近年では天然のイ草の代わりに、ポリプロピレン樹脂等の合成繊維を編織した畳表が市場に出回りつつあるが、このような合成繊維を編織した畳表の場合、確かに長期間の使用には耐え得るものの、一般に吸湿性に劣るため、通常の生活環境において、畳表の表面が湿気や汗によりベトツキ易く、畳表に接触した肌に不快感を与えたり、風合いの低下や外観不良などの品質悪化の問題があった。
かかる問題を改良し、木質繊維からなる紙を抄造し、これを筒状に成形した筒状抄繊糸を編織してなる紙製畳表に耐摩耗性、撥水性、意匠性等の諸性能を付加価値として付与するために、EVA樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂等の合成樹脂でコート層を形成し、筒状抄繊糸の外周を被覆するようにしたり、あるいは、樹脂を筒状抄繊糸の表面全体に浸透するように設ける方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
しかしながら、上記の如き方法では、用いる樹脂の種類により、得られる紙製畳表の風合いや耐摩耗性等の諸性能が全く異なること、筒状抄繊糸に樹脂を被覆する際に樹脂の造膜性が乏しいと樹脂を均一に被覆できずに十分な性能を得ることができないこと、乾燥時にブリスターが生じてしまうこと、などの問題があった。
尚、本発明でいう「ブリスター」とは、皮膜形成時に水性樹脂分散体に含有される溶媒が局所的に蒸発し飛散することで、「膨れ」が起こる現象を意味する。
以上のように、耐ブリスター性、被覆性、耐摩耗性、及び風合いに優れる紙製畳表加工用水性樹脂分散体、及びそれを被覆加工してなる紙製畳表の開発が切望されていた。
特開2005−048561号公報 特開2005−282152号公報
本発明の目的は、耐ブリスター性、被覆性、耐摩耗性、及び風合いに優れる紙製畳表加工用水性樹脂分散体、及び前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体を被覆加工してなる紙製畳表を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、エチレン性不飽和単量体及び架橋剤を用いて乳化重合することにより得られる樹脂の水性樹脂分散体からなり、且つ、特定の範囲のガラス転移温度、流動開始温度、及び平均粒子径を共に有する樹脂の水性樹脂分散体を、特に紙製畳表加工用として用いることにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、エチレン性不飽和単量体(X)及び架橋剤(Y)を乳化重合することにより得られる樹脂(a)の水性樹脂分散体からなり、且つ、前記水性樹脂分散体を形成する樹脂(a)のガラス転移温度が10〜50℃の範囲、流動開始温度が150〜300℃の範囲、及び平均粒子径が120〜220nmの範囲であり、前記架橋剤(Y)が、ジ又はトリビニル系単量体、メチロールアミド基又はそのアルコキシ基含有ビニル系単量体、シリル基含有ビニル系単量体、アジリジニル基含有ビニル系単量体、イソシアナート基又はブロック化イソシアナート基含有ビニル系単量体、オキサゾリン基含有ビニル系単量体、及びグリシジル基含有ビニル系単量体からなる群から選ばれる少なくとも一種のビニル系架橋剤であることを特徴とする紙製畳表加工用水性樹脂分散体を提供するものである。
また、本発明は、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体を被覆加工してなることを特徴とする紙製畳表を提供するものである。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体は、造膜性に優れており、且つブリスターを生じることがなく、被覆性、耐摩耗性、及び風合いなどの優れた性能を発現できる。また、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体を被覆加工してなる紙製畳表は、通常の生活環境において、天然のイ草と同様の外観を呈し、且つ、同等以上の性能を維持したままで長期間の使用に耐え得ることができ、有用性に優れる。
以下に、本発明についてより詳細に説明する。
先ず、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体とは、(1)畳表に用いる木質繊維からなる紙に被覆加工させる水性樹脂分散体と、(2)木質繊維からなる紙を抄造し、これを筒状に成形した筒状抄繊糸を編織してなる紙製畳表に被覆加工する水性樹脂分散体、を共に包含していう。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体としては、以下に例示する少なくとも一種以上のエチレン性不飽和単量体(X)及び架橋剤(Y)を用いて、水中又は水と親水性溶剤との混合溶媒中で乳化重合することにより得られる樹脂(a)の水性樹脂分散体が挙げられる。
前記エチレン性不飽和単量体(X)としては、各種のエチレン性不飽和単量体が挙げられるが、中でも、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)、若しくは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)と(メタ)アクリロニトリル(x−2)とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)を含んでなるものが好ましい。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体は、例えば、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)を含むエチレン性不飽和単量体(X)の混合物と、架橋剤(Y)を用いて、水中又は水と親水性溶剤との混合溶媒中で乳化重合を行うか、あるいは、
炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)と(メタ)アクリロニトリル(x−2)とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)を含むエチレン性不飽和単量体(X)の混合物と、架橋剤(Y)を用いて、水中又は水と親水性溶剤との混合溶媒中で乳化重合を行うことにより得ることができる。
前記炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これら化合物は単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
前記(メタ)アクリロニトリル(x−2)としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル等のビニル系ニトリルなどが挙げられ、これら化合物は単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
また、前記その他のエチレン性不飽和単量体(x−3)とは、前記エチレン性不飽和単量体(X)から前記単量体(x−1)及び(x−2)を除いたエチレン性不飽和単量体のことであり、これら単量体は単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
前記その他のエチレン性不飽和単量体(x−3)としては、例えば、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、β−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート等のフッ素含有エチレン性不飽和単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α−ハロスチレン、ビニルナフタリン等の芳香族環を有するエチレン性不飽和単量体;イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、エチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、N−ビニルピロリドン、アリル(メタ)アクリレート等の官能基を含有しないエチレン性不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有エチレン性不飽和単量体;アミノエチル(メタ)アクリレート、N−モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有エチレン性不飽和単量体;
アクロレイン等のアルド基含有エチレン性不飽和単量体;ジアセトン(メタ)アクリルアミド等のケト基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有エチレン性不飽和単量体;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等のシクロペンテニル基含有エチレン性不飽和単量体;アリル(メタ)アクリレート等のアリル基含有エチレン性不飽和単量体;アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート等のアセトアセチル基含有エチレン性不飽和単量体;(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンサクシネート、β−(メタ)ヒドロキシエチルハイドロゲンフタレート、及びこれらの塩等のビニル系カルボン酸などが挙げられ、これら化合物は単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
前記エチレン性不飽和単量体(X)としては、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)80.0〜99.0重量部、若しくは、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)と(メタ)アクリロニトリル(x−2)の合計80.0〜99.0重量部とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)1.0〜20.0重量部の範囲が好ましく、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)90.0〜99.9重量部、若しくは、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)と(メタ)アクリロニトリル(x−2)の合計90.0〜99.9重量部とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)0.1〜10.0重量部を用いることがより好ましい。エチレン性不飽和単量体(X)として、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)若しくは前記単量体(x−1)及び(メタ)アクリロニトリル(x−2)をかかる範囲で用いるならば、加工後の紙製畳表が、より一層天然のイ草様に近くなると共に、優れた風合いを得ることができる。
また、従来、日常生活で長期間使用される畳表には耐磨耗性が必須に要求されるため、耐磨耗性の付与を目的として、通常、フッ素系撥水剤などが用いられてきたが、その効果は決して満足できるものではなかった。本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体では、前記エチレン性不飽和単量体(X)として、特に(メタ)アクリロニトリル(x−2)を、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)と組み合わせて用いることにより、加工後の紙製畳表の耐磨耗性をより一層向上させ、且つ、例えば、お茶やコーヒー等の日常生活での汚れを防ぐ所謂「防汚性」も向上させることができる。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体は、前記水性樹脂分散体を形成する樹脂(a)が、下記の3つの必須条件を満たす。即ち、前記樹脂(a)は、〔必須条件1〕特定範囲のガラス転移温度(実測Tg)を有すること、〔必須条件2〕特定範囲の流動開始温度を有すること、及び、〔必須条件3〕特定範囲の平均粒子径を有すること、の3条件の何れも満足している必要がある。これらの必須条件1〜3について、以下に個別に説明する。
<紙製畳表加工用水性樹脂分散体を形成する樹脂(a)の必須条件1>
必須条件1とは、前記樹脂(a)の示差走査熱量計(DSC)によるガラス転移温度(実測Tg)が、10〜50℃の範囲であり、好ましくは20〜40℃の範囲であることである。前記樹脂(a)の実測Tgがかかる範囲であれば、紙製畳表加工用に用いた場合に、被覆加工後の紙製畳表において、天然のイ草様の風合い(即ち、硬さや触感等)を得ることができ、優れた性能を発揮できる。
前記樹脂(a)の実測Tgは、前記エチレン性不飽和単量体(X)を組み合わせて用いて、公知の方法に従い反応させることにより、目的に応じて調整することができる。
尚、前記樹脂(a)の実測Tgの測定方法は、本発明では示差走査熱量計(DSC)による測定方法を採用し、その具体的内容は後述する。
<紙製畳表加工用水性樹脂分散体を形成する樹脂(a)の必須条件2>
必須条件2とは、前記樹脂(a)の流動開始温度が、150〜300℃の範囲であり、好ましくは180〜270℃の範囲であることである。前記樹脂(a)の流動開始温度がかかる範囲であれば、皮膜強度が向上し、被覆加工後の紙製畳表の耐摩耗性に優れ、磨耗による劣化が抑制されて長期間の使用に耐えることができ、且つ、造膜性が向上し、優れた密着性と風合いなどを得ることができる。
尚、前記樹脂(a)の流動開始温度の測定方法は、本発明では高化式フローテスターによる測定方法を採用し、その具体的内容は後述する。
本発明では、前記樹脂(a)の流動開始温度を、架橋剤(Y)を用いて架橋させることにより、目的の温度範囲にまで上昇させ調整することを特徴とする。
前記架橋剤(Y)の好ましい使用量は、用いる架橋剤の種類により異なるが、例えば、架橋剤(Y)を使用せずに、前記樹脂(a)自体の流動開始温度を基点として、架橋剤(Y)の使用量を通常3水準以上変化させた場合の流動開始温度を夫々測定し、架橋剤(Y)の使用量と流動開始温度との関係をグラフ化することにより、推定値として求めることができる。
前記架橋剤(Y)は、本発明の目的を阻害するものでなければ特に制限はない。前記架橋剤(Y)は、(タイプi)エチレン性不飽和単量体(X)と共に乳化重合に用い架橋に供するものである
前記架橋剤(Y)の内、(タイプi)の乳化重合に用いる架橋剤としては、重合可能なビニル系架橋剤であり、例えば、ジビニルスチレン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン等のジ又はトリビニル系単量体;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基又はそのアルコキシ基含有ビニル系単量体;ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン又はその塩酸塩等のシリル基含有ビニル系単量体;2−アジリジニルエチル(メタ)アクリレート等のアジリジニル基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリロイルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナートエチルのフェノール或いはメチルエチルケトオキシム付加物等のイソシアナート基又はブロック化イソシアナート基含有ビニル系単量体;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ビニル系単量体等の架橋剤が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
前記架橋剤(Y)の添加量は、前記エチレン性不飽和単量体(X)100重量部に対して、0.05〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。前記架橋剤(Y)の添加量がかかる範囲であれば、流動開始温度を適正な範囲内に維持でき、且つ、優れた造膜性を得ることができる。
<紙製畳表加工用水性樹脂分散体を形成する樹脂(a)の必須条件3>
必須条件3とは、前記樹脂(a)の平均粒子径が、120〜220nmの範囲であり、好ましくは140〜200nmの範囲であることである。前記樹脂(a)の平均粒子径がかかる範囲であれば、平均粒子径が緻密過ぎずに適度となり、造膜性が向上して紙製畳表への密着性に優れ、且つ、ブリスターの発生を抑制させつつ被覆加工後の紙製畳表に樹脂を均一に付着させることができる。
前記樹脂(a)の平均粒子径は、例えば、界面活性剤の量、製造方法などの条件により調整できる。特に界面活性剤の使用量により、平均粒子径を効果的に制御しやすく、一般に界面活性剤の使用量を多くすると平均粒子径を小さくでき、逆に界面活性剤の使用量を少なくすると平均粒子径を大きくすることができる。
前記界面活性剤の使用量は、例えば、界面活性剤の種類、単量体の種類、製造方法などの種々の条件により異なるが、通常は、樹脂(a)100重量部に対して、0.5〜5.0重量部の範囲が好ましく、1.0〜3.0重量部の範囲がより好ましい。界面活性剤の使用量がかかる範囲であれば、前記樹脂(a)の平均粒子径を上記範囲内に制御でき、造膜性が向上して紙製畳表への密着性に優れ、且つ、ブリスターの発生を抑制させつつ被覆加工後の紙製畳表に樹脂を均一に付着させることができる。
また、本発明において、乳化重合に用いる界面活性剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤などを、本発明の目的を阻害しない範囲で使用すればよく、特に制限はない。
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
前記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
前記両イオン性界面活性剤としては、例えば、ベタインエステル型界面活性剤等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
更に、一般的に「反応性界面活性剤」と称される重合性不飽和基を分子内に有する界面活性剤を使用することもでき、このような反応性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸基及びその塩を有する「ラテムルS−180、PD−104」〔商標;花王株式会社製〕、「エレミノールJS−2、RS−30」〔商標;三洋化成工業株式会社製〕等;硫酸基及びその塩を有する「アクアロンKH−05、KH−10」〔商標;第一工業製薬株式会社製〕、「アデカリアソープSE−10、SE−20」〔商標;旭電化工業株式会社製〕等;リン酸基を有する「ニューフロンティアA−229E」〔商標;第一工業製薬株式会社製〕等;非イオン性親水基を有する「アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50」〔商標;第一工業製薬株式会社製〕、「ラテムルPD−420、PD−430、PD−450」〔商標;花王株式会社製〕等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
前記界面活性剤の中でも反応性界面活性剤は、反応性界面活性剤以外の通常の界面活性剤を用いた場合よりも、耐水性の低下がより少ないため、その他のエチレン性不飽和単量体(x−3)の一部として、反応性界面活性剤のみを用いてソープフリーで乳化重合することが好ましく、これにより一層優れた耐水性を有する水性樹脂分散体を得ることができる。
また、耐水性の向上の為に界面活性剤を使用しない、所謂ソープフリーの紙製畳表加工用水性樹脂分散体を得る方法として、反応性界面活性剤を使用する方法以外にも、オリゴマーや水溶性樹脂を分散剤として用いて乳化重合する方法が知られている。しかしながら、これらの方法で得られたソープフリーの紙製畳表加工用水性樹脂分散体は、確かに、フリーの界面活性剤を含まないために、通常の界面活性剤を用いて得られた水性樹脂分散体よりも耐水性は向上するが、このような分散剤で乳化重合する方法で得られた水性樹脂分散体は、表面張力が高すぎて、紙への浸透性に劣る傾向にあり、好ましくない。故に、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体においては、オリゴマーや水溶性樹脂を分散剤とせずに、その他のエチレン性不飽和単量体(x−3)の一部として、反応性界面活性剤のみを用いたソープフリーでの乳化重合を行なうことが望ましい。
また、前記樹脂(a)の平均粒子径を目的の範囲内(必須条件3の平均粒子径120〜220nmの範囲)に制御するためには、例えば、種粒子を反応の初期段階に予め作成しておく方法が効果的であり、特に反応の初期段階で平均粒子径の決まった別の水性樹脂分散体(所謂「シードエマルジョン」)を合成しておくと、そのシードエマルジョンの平均粒子径により最終的な水性樹脂分散体の平均粒子径が決まるので、平均粒子径の制御が容易にできる。
次に、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体における重要な項目である「最低造膜温度」について以下に説明する。
前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体を用いて、木質繊維からなる紙を加工すると分散媒である水又は水と親水性溶剤との混合溶媒が揮発し、それに伴い水性樹脂分散体粒子同士が密に集合して融合し、連続した皮膜を形成する。紙製畳表加工用水性樹脂分散体が、実質的に平滑な連続した皮膜を形成するための最低温度を「最低造膜温度(MFT、ミニマム フィルム フォーミング テンパラチュア)」といい、MFTよりも高い温度条件で乾燥する必要がある。
本発明の畳表加工用水性樹脂分散体では、MFTを好ましくは0〜40℃の範囲、より好ましくは0〜30℃の範囲に制御することにより、ブリスターの発生をより一層抑制させて木質繊維に均一な樹脂(a)の皮膜を形成でき、密着性をより向上させることができる。
MFTを低下させる方法としては、例えば、樹脂(a)の平均粒子径を小さくしたり、ガラス転移温度(実測Tg)が低下するように分子設計を行えばよく、何れの方法であっても前述の必須条件1及び必須条件3の範囲を超えてはならない。
また、水性樹脂分散体のMFTを低下させる方法としては、例えば、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ブチルセロソルブ、テキサノール、ジブチルフタレート等の所謂「造膜助剤」を使用する方法も有効であるが、前記造膜助剤は揮発性有機化合物であるので、環境への影響を配慮しその使用量は最低限に留めることが好ましい。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体の重合方法としては、公知の重合方法を採用でき、例えば、使用する全てのエチレン性不飽和単量体(X)を一括で仕込み重合する回分重合法、あるいは、エチレン性不飽和単量体(X)の一部を重合反応中に連続で添加する半回分重合法などが挙げられ、特に制限はない。
反応に使用する重合開始剤としては、特に限定しないが、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物類、過酸化水素等の過酸化物など挙げられる。これら過酸化物のみを用いてラジカル重合するか、或いは前記過酸化物と、例えば、アスコルビン酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムのような還元剤とを併用したレドックス重合開始剤系によっても重合でき、また、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤を使用することも可能であり、これら化合物は、単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
重合温度は、使用するエチレン性不飽和単量体(X)や重合開始剤の種類などにより異なるため、特に限定せず、適宜設定すればよいが、単一重合開始剤の場合には通常30〜100℃の範囲であり、レドックス系重合開始剤の場合には通常20〜80℃の範囲であり、逐次添加する場合には通常30〜95℃の範囲である。
また、反応釜が高圧密閉系であれば、安全上問題のない範囲で水又は水と親水性溶剤との混合溶媒の沸点を超えても構わない。
前記親水性溶剤としては、環境面、安全面及び品質面で問題が少なく、且つ反応に悪影響を与えないものであればよく、例えば、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数3以下のアルコール類などが挙げられ、これらの中でも、アセトン、メチルエチルケトンが好ましい。これら親水性溶剤は単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。
重合反応において、水と親水性溶剤との混合溶媒を用いる場合、混合溶媒の全重量に対する親水性溶剤の使用割合は、10重量%以下が好ましい。
重合時間も特に限定しないが、通常1〜40時間の範囲である。
重合反応器内の雰囲気は、特に限定しないが、副反応を抑制し重合反応を速やかに行わせるために、窒素やアルゴン等の不活性気体で、反応開始前から置換しておくことが好ましい。
また、重合反応時に連鎖移動剤を用いてもよく、例えば、ラウリルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリセリン等のメルカプタン類、あるいはα−メチルスチレン・ダイマー等が挙げられ、これら化合物は、単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量により樹脂(a)の分子量が調整できるので、本発明の目的を阻害しない範囲でその使用量は調整すればよい。
更に、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体は、酸性のままの状態では、紙に被覆加工した際に、紙焼け等の弊害が発生する場合があるため、中和剤により予め中和しておくことが好ましい。
前記中和剤として用いる塩基性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、アンモニア、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の水溶性有機アミン類等が挙げられ、これらは単独使用でもよく2種以上を併用してもよい。これらの中でも耐水性をより向上させるためには、常温或いは加熱により飛散し易いアンモニアを使用することが好ましい。
また、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体には、必要に応じて本発明の目的を阻害しない範囲で、例えば、充填剤、顔料、pH調整剤、被膜形成助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等の公知の添加剤を適宜添加して使用することができる。
本発明の紙製畳表とは、(1)木質繊維からなる紙を用いてなる紙製畳表と、(2)木質繊維からなる紙を抄造し、これを筒状に成形した筒状抄繊糸を編織してなる紙製畳表とに、それぞれ前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体を被覆加工してなるものをいう。
前記筒状抄繊糸としては、針葉樹を主体とする繊維長の長い木質繊維を抄造した、例えば、坪量15〜30g/m2の薄葉紙を15〜40mm幅に裁断し、中心部を空洞にして5〜15巻にて筒状に撚りをかけた径0.7〜1.5mmの糸状部材が挙げられる。このように木質繊維からなる薄葉紙を筒状に成形しているので、得られる筒状抄繊糸は比表面積の大きなものとなる。
本発明の紙製畳表で、所謂「本体」とは、例えば特開2005−048561号公報に記載されるように、経糸に、筒状抄繊糸を交互に編織して仕上げられた、その表面が凸部と凹部とが整列した畝状に形成されたシート状の部材である。
また、本発明の紙製畳表には、前記本体に耐水性と強度を与えるため、本体の表面に、高分子樹脂からなる薄層、所謂「コート層」を設けることができる。
前記コート層は、通常、上述した筒状抄繊糸の外周を被覆するように、もしくは、筒状抄繊糸の表面全体に浸透するようにして設けられているが、紙製畳表の本体における模様の定着性および定着させた模様の耐久性のみを考慮した場合には、少なくとも本体の表面に設けられていればよい。
前記コート層を形成する高分子樹脂としては、例えば、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコン系樹脂およびフッ素系樹脂などの合成高分子樹脂を単独もしくは適宜組み合わせて用いることができ、中でも、エチレン酢酸ビニル、アクリル系樹脂、ナイロン系樹脂およびポリエステル系樹脂などが好適である。
本発明の紙製畳表には、本体の表面に意匠性を付与するために、染料や顔料によって形成された図柄や紋様を設けることができる。
本発明の紙製畳表を製造する際には、先ず、少なくとも筒状抄繊糸からなる本体をロール状に巻き取ったものを準備する。なお、この本体の製造方法については、例えば、特開平8−170422号公報に記載されているような公知の方法を用いることができ、特に制限しない。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体の被覆加工基材に対する樹脂付着量は、好ましくは5〜20%の範囲であり、より好ましくは10〜15%の範囲である。樹脂付着量がかかる範囲であれば、耐摩耗性や風合いなどの優れた性能を発現できる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はそれら実施例のみに限定されるものではない。また、文中「部」及び「%」は、特に断りのない限り重量基準であるものとする。尚、諸物性は以下に記した方法により評価した。
〔筒状抄繊糸の作成方法〕
坪量約25g/m2の和紙を幅20mmのテープ状に切り、外径1.0〜1.2mm、内径0.3〜0.4mmになるように巻き、筒状抄繊糸を作成した。
〔耐ブリスター性の評価方法〕
(評価方法1)
実施例1及び比較例1で得られた紙製畳表加工用水性樹脂分散体に水を加え、固形分濃度を19%に調整した含浸液に、坪量約25g/m2の和紙を浸漬し、熱風循環乾燥機中140℃で10分間乾燥キュアして被覆加工を行った後、幅20mmのテープ状に切り、外径1.0〜1.2mm、内径0.3〜0.4mmになるように巻き、被覆加工基材を作成(加工方法Iという。)した。被覆加工基材のブリスターの発生状態を光学顕微鏡により観察し、以下の基準に従い評価し、その評価レベルを記号(○、△、×)で表2に示した。尚、評価時の被覆加工基材に対する樹脂付着量は10〜15%であった。
(評価方法2)
実施例2〜7及び比較例2〜7で得られた紙製畳表加工用水性樹脂分散体に水を加え、固形分濃度を19%に調整した含浸液に、上記で作成した筒状抄繊糸を浸漬し、熱風循環乾燥機中140℃で10分間乾燥キュアして被覆加工し、被覆加工基材を作成(加工方法IIという。)した。被覆加工基材のブリスターの発生状態を光学顕微鏡により観察し、以下の基準に従い評価し、その評価レベルを記号(○、△、×)で表2に示した。尚、評価時の被覆加工基材に対する樹脂付着量は10〜15%であった。
評価方法1及び評価方法2における耐ブリスター性の判定基準
○;光学顕微鏡でブリスターを確認できず、発生していない。
△;光学顕微鏡でブリスターが確認できる程度に、少量発生している。
×;目視でもブリスターが確認できる程、顕著にブリスターが発生している。
〔風合いの評価方法〕
(評価方法1)
実施例1及び比較例1で得られた紙製畳表加工用水性樹脂分散体に水を加え、固形分濃度を19%に調整した含浸液に、坪量約25g/m2の和紙を浸漬し、熱風循環乾燥機中140℃で10分間乾燥キュアして被覆加工を行った後、幅20mmのテープ状に切り、外径1.0〜1.2mm、内径0.3〜0.4mmになるように巻き、被覆加工基材を作成(加工方法Iという。)した。被覆加工基材の風合いを触感により、以下の基準に従い評価し、その評価レベルを記号(○、△、×)で表2に示した。尚、評価時の被覆加工基材に対する樹脂付着量は10〜15%であった。
(評価方法2)
実施例2〜7及び比較例2〜7で得られた紙製畳表加工用水性樹脂分散体に水を加え、固形分濃度を19%に調整した含浸液に、上記で作成した筒状抄繊糸を浸績し、熱風循環乾燥機中140℃で10分間乾燥キュアし、被覆加工基材を作成(加工方法IIという。)した。被覆加工基材の風合いを触感により、以下の基準に従い評価し、その評価レベルを記号(○、△、×)で表2に示した。尚、評価時の被覆加工基材に対する樹脂付着量は10〜15%であった。
風合いの判定基準
○;天然のイ草と同様の風合いであり、自然な触感である。
△;天然のイ草に比べて、風合いに若干違和感がある。
×;風合いに明確な違和感があり、明らかに人工的である。
〔被覆性の評価方法〕
(評価方法1)
実施例1及び比較例1で得られた紙製畳表加工用水性樹脂分散体に水を加え、固形分濃度を19%に調整した含浸液に、坪量約25g/m2の和紙を浸漬し、熱風循環乾燥機中140℃で10分間乾燥キュアを行った後、幅20mmのテープ状に切り、外径1.0〜1.2mm、内径0.3〜0.4mmになるように巻き、被覆加工基材を作成(加工方法Iという。)した。次いで、樹脂を染色する特殊染料「カチオンブルーK−GLH」〔前田化成株式会社製〕の0.01%水溶液に、上記で作成した被覆加工基材を浸漬し1時間煮沸した後、軽く水洗した。被覆加工基材への樹脂の被覆性を顕微鏡観察により以下の基準に従い評価し、その評価レベルを記号(○、△、×)で表2に示した。尚、評価時の被覆加工基材に対する樹脂付着量は10〜15%であった。
(評価方法2)
実施例2〜7及び比較例2〜7で得られた紙製畳表加工用水性樹脂分散体に水を加え、固形分濃度を19%に調整した含浸液に、上記で作成した筒状抄繊糸を浸漬し、熱風循環乾燥機中140℃で10分間乾燥キュアし、被覆加工基材を作成(加工方法IIという。)した。次いで、樹脂を染色する特殊染料「カチオンブルーK−GLH」〔前田化成株式会社製〕の0.01%水溶液に、上記で作成した被覆加工基材を浸漬し1時間煮沸した後、軽く水洗した。被覆加工基材への樹脂の被覆性を顕微鏡観察により以下の基準に従い評価し、その評価レベルを記号(○、△、×)で表2に示した。尚、評価時の被覆加工基材に対する樹脂付着量は10〜15%であった。
被覆性の判定基準
◎;被覆加工基材に染料が均一に濃く染まっており、優れている。
○;被覆加工基材に染料が均一に染まっており、良好である。
△;被覆加工基材に対する染料の染まり具合に色ムラ(薄い箇所)があり若干不良。
×;被覆加工基材に染料が染まっていない箇所があり、不良である。
〔耐摩耗性の評価方法〕
(評価方法1)
実施例1及び比較例1で得られた紙製畳表加工用水性樹脂分散体に水を加え、固形分濃度を19%に調整した含浸液に、坪量約25g/m2の和紙を浸漬し、熱風循環乾燥機にて140℃で10分間乾燥キュアを行った後、幅20mmのテープ状に切り、外径1.0〜1.2mm、内径0.3〜0.4mmになるように巻き、被覆加工基材を作成(加工方法Iという。)した。作成した被覆加工基材を軽く水で湿らし、「Rubbing Tester(学振型染色物摩擦堅牢度試験機)」〔DAIEI KAGAKU SEIKI MFG. CO.LTD.製〕で耐摩耗性の試験を行った(重り;500g、回数;20回)。被覆加工基材の耐摩耗性を目視により、以下の基準に従い評価し、その評価レベルを記号(○、△、×)で表2に示した。
(評価方法2)
実施例2〜7及び比較例2〜7で得られた紙製畳表加工用水性樹脂分散体に水を加え、固形分濃度を19%に調整した含浸液に坪量約125g/m2のろ紙を浸績し、被覆加工基材に対する樹脂付着量が15〜20%になるようにマングルロールで絞り、熱風循環乾燥機中140℃で10分間乾燥キュアし被覆加工基材を作成(加工方法IIという。)した。作成した被覆加工基材を軽く水で湿らし、「Rubbing Tester(学振型染色物摩擦堅牢度試験機)」〔DAIEI KAGAKU SEIKI MFG. CO.LTD.製〕で耐摩耗性の試験を行った(重り;500g、回数;20回)。被覆加工基材の耐摩耗性を目視により、以下の基準に従い評価し、その評価レベルを記号(○、△、×)で表2に示した。
耐磨耗性の判定基準
○;摩耗されておらず、耐磨耗性に優れる。
△;一部摩耗されている個所があり、やや耐摩耗性に劣る。
×;著しく摩耗されており、耐摩耗性に劣る。
〔実施例1〕
表1に示した如く、撹拌装置を備えた重合容器を窒素ガスで置換後、反応性界面活性剤としてアクアロンKH−10(商標、第一工業製薬株式会社製)0.4部と水475.1部を仕込み、内温80℃に昇温した。
別の容器に反応性界面活性剤としてアクアロンKH−10を9.6部と、エチレン性不飽和単量体(X)として、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)であるアクリル酸エチル(以下EA)180部、アクリル酸ブチル(以下BA)40部、メタクリル酸メチル(以下MMA)124部と、単量体(x−2)であるアクリロニトリル(以下AN)40部と、その他のエチレン性不飽和単量体(x−3)であるN−メチロールアクリルアミド(以下NM)8部、アクリル酸(以下AA)8部と、水100部を仕込み、攪拌を行い乳化させ、乳化液を調整した。
前記乳化液の3重量%を前記重合容器に仕込み、4.8%過硫酸ナトリウム水溶液1.7部を添加し、重合を開始させた。次いで、残りのモノマー混合物の乳化液と4.8%過硫酸ナトリウム水溶液15.1部を2時間かけて滴下し重合を行った。滴下終了後、内温80℃にて1時間保持した。次いで、冷却を行い、アンモニア水で水性樹脂分散体をpH7.0に調整し、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(1)を得た。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(1)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(1)を形成する樹脂の示差走査熱量計(DSC、TAインスツルメント株式会社製)で測定したガラス転移温度(実測Tg)は32℃であり、最低造膜温度測定器(TP−805、東芝キャリア株式会社製)で測定した最低造膜温度(MFT)は39℃であり、高化式フローテスター(CFT−500D−1、株式会社島津製作所製)で測定した流動開始温度は159℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(1)の平均粒子径は170nmであり、耐ブリスター性、風合い、被覆性及び耐磨耗性は何れも優れていた。
〔実施例2〕
表1に示した如く、実施例1における反応前の重合容器内を界面活性剤のラテムルE−118B(商標、花王株式会社製、固形分26%)3.1部と水441.7部に、また、乳化液中の界面活性剤をラテムルE−118Bを35.4部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてEA280部、MMA94部、メタクリル酸(以下MAA)16部、NM10部に換えた以外は、実施例1と同様に行い、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(2)を得た。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(2)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(2)を形成する樹脂の実測Tgは12℃であり、MFTは15℃であり、流動開始温度は187℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(2)の平均粒子径は150nmであり、耐ブリスター性、風合い、被覆性及び耐磨耗性は何れも優れていた。
〔実施例3〕
実施例1における反応前の重合容器内を水441.7部に、また、乳化液中の界面活性剤をラテムルE−118Bを38.5部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてBA160部、MMA222部、MAA16部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(以下MPS)2部に、初期反応として使用する乳化液を2重量%に換えた以外は、実施例1と同様に行い、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(3)を得た。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(3)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(3)を形成する樹脂の実測Tgは27℃であり、MFTは36℃であり、流動開始温度は198℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(3)の平均粒子径は200nmであり、耐ブリスター性、風合い、被覆性及び耐磨耗性は何れも優れていた。
〔実施例4〕
表1に記載の如く、実施例1における反応前の重合容器内を界面活性剤をE−118B(商標、花王株式会社製、固形分26%)12.3部と水441.7部に、乳化液中の界面活性剤のラテムルE−118Bを33.8部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてBA124部、MMA176部、スチレン(以下ST)80部、AA8部、NM10部、MPS2部に換えた以外は、実施例1と同様に行い、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(4)を得た。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(4)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(4)を形成する樹脂の実測Tgは47℃であり、MFTは56℃であり、流動開始温度は264℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(4)の平均粒子径は125nmであり、耐ブリスター性、風合い、被覆性及び磨耗性は何れも優れていた。
〔実施例5〕
表1に記載の如く、実施例1における反応前の重合容器内を界面活性剤のE−118B(商標、花王株式会社製、固形分26%)12.3部と水441.7部に、乳化液中の界面活性剤をラテムルE−118Bを33.8部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてBA124部、MMA180部、ST80部、AA8部、NM8部に換えた以外は、実施例1と同様に行い、アンモニア水で水性樹脂分散体をpH7.0に調整した後、最低造膜温度(MFT)が35℃になるまで造膜助剤のブチルセロソルブを添加し、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(5)を得た。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(5)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(5)を形成する樹脂の実測Tgは46℃であり、MFTは35℃であり、流動開始温度は172℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(5)の平均粒子径は125nmであり、耐ブリスター性、風合い、被覆性及び耐磨耗性は何れも優れていた。
〔実施例6〕
表1に記載の如く、実施例1における反応前の重合容器内を水473.2部に、乳化液中の反応性界面活性剤のアクアロンKH−10を10部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてEA180部、BA40部、AN40部、MMA122部、AA8部、NM10部に、初期反応として使用する乳化液を2重量%に換えた以外は、実施例1と同様に行い、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(6)を得た。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(6)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(6)を形成する樹脂の実測Tgは32℃であり、MFTは39℃であり、流動開始温度は191℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(6)の平均粒子径は200nmであり、耐ブリスター性、風合い、被覆性及び耐磨耗性は何れも優れていた。
〔実施例7〕
表1に記載の如く、実施例1における反応前の重合容器内を、界面活性剤をラテムルE−118B(商標、花王株式会社製、固形分26%)12.3部と水441.7部に、乳化液中の界面活性剤のラテムルE−118Bを33.8部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてBA166部、MMA210部、MAA16部、GMA2部に換えた以外は、実施例1と同様に行い、本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(7)を得た。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体(7)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(7)を形成する樹脂の実測Tgは24℃であり、MFTは30℃であり、流動開始温度は158℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(7)の平均粒子径は210nmであり、耐ブリスター性、風合い、被覆性及び耐磨耗性は何れも優れていた。
〔比較例1〕
表1に記載の如く、実施例1における乳化液中のエチレン性不飽和単量体(X)としてBA236部、AN40部、MMA98部、MAA16部、NM10部に換えた以外は、実施例1と同様に行い、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(8)を得た。
紙製畳表加工用水性樹脂分散体(8)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(8)を形成する樹脂の実測Tgは2℃であり、MFTは9℃であり、流動開始温度は188℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(8)の平均粒子径は170nmであり、耐ブリスター性、被覆性及び耐磨耗性は優れていたものの、風合いは劣っていた。
〔比較例2〕
表1に記載の如く、実施例1における反応前の重合容器内を界面活性剤のラテムルE−118B(商標、花王株式会社製、固形分26%)1.5部と水441.7部に、また、乳化液中の界面活性剤をラテムルE−118Bを37部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてBA236部、AN40部、MMA98部、MAA16部、NM10部に換えた以外は、実施例1と同様に行い、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(9)を得た。
紙製畳表加工用水性樹脂分散体(9)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(9)を形成する樹脂の実測Tgは2℃であり、MFTは8℃であり、流動開始温度は188℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(9)の平均粒子径は170nmであり、耐ブリスター性、被覆性及び耐磨耗性は優れていたものの、風合いは劣っていた。
〔比較例3〕
表1に記載の如く、実施例1における反応前の重合容器内を界面活性剤のラテムルE−118B(商標、花王株式会社製、固形分26%)1.5部と水441.7部に、また、乳化液中の界面活性剤をラテムルE−118Bを37部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてEA108部、MMA282部、AA8部、MPS2部に換えた以外は、実施例1と同様に行い、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(10)を得た。
紙製畳表加工用水性樹脂分散体(10)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(10)を形成する樹脂の実測Tgは59℃であり、MFTは65℃以上であり、流動開始温度は232℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(10)の平均粒子径は170nmであり、耐ブリスター性及び耐磨耗性は優れていたものの、被覆性及び風合いは劣っていた。
〔比較例4〕
表1に記載の如く、実施例1における反応前の重合容器内を界面活性剤のラテムルE−118B(商標、花王株式会社製、固形分26%)15.4部と水440.2部に、また、乳化液中の界面活性剤をラテムルE−118Bを30.8部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてBA152部、MMA230部、MAA16部、MPS2部に換えた以外は、実施例1と同様に行い、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(11)を得た。
紙製畳表加工用水性樹脂分散体(11)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(11)を形成する樹脂の実測Tgは30℃であり、MFTは36℃であり、流動開始温度は193℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(11)の平均粒子径は100nmであり、風合い、被覆性及び耐磨耗性は優れていたものの、耐ブリスター性は劣っていた。
〔比較例5〕
表1に記載の如く、実施例1における反応前の重合容器内を水443.2部に、また、乳化液中の界面活性剤をラテムルE−118Bを30.8部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてEA180部、BA40部、AN40部、MMA122部、AA8部、NM10部に、初期反応として使用する乳化液を1重量%に換えた以外は、実施例1と同様に行い、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(12)を得た。
紙製畳表加工用水性樹脂分散体(12)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(12)を形成する樹脂の実測Tgは32℃であり、MFTは43℃であり、流動開始温度は191℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(12)の平均粒子径は300nmであり、耐ブリスター性及び風合いは優れていたものの、耐磨耗性、被覆性は劣っていた。
〔比較例6〕
表1に記載の如く、実施例1における反応前の重合容器内を界面活性剤のラテムルE−118B(商標、花王株式会社製、固形分26%)1.5部と水441.7部に、また、乳化液中の界面活性剤をラテムルE−118Bを37部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてBA152部、MMA227.2部、MAA16部、MPS0.8部に換えた以外は、実施例1と同様に行い、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(13)を得た。
紙製畳表加工用水性樹脂分散体(13)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(13)を形成する樹脂の実測Tgは30℃であり、MFTは39℃であり、流動開始温度は105℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(13)の平均粒子径は170nmであり、耐ブリスター性、被覆性及び風合いは優れていたものの、耐磨耗性は劣っていた。
〔比較例7〕
表1に記載の如く、実施例1における反応前の重合容器内を界面活性剤のラテムルE−118B(商標、花王株式会社製、固形分26%)1.5部と水441.7部に、また、乳化液中の界面活性剤をラテムルE−118Bを37部に、エチレン性不飽和単量体(X)としてEA192部、AN40部、MMA66部、ST20部、AA8部、MPS2部、GMA12部に換えた以外は、実施例1と同様に行い、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(14)を得た。
紙製畳表加工用水性樹脂分散体(14)の評価結果を表2に記載したが、紙製畳表加工用水性樹脂分散体(14)を形成する樹脂の実測Tgは29℃であり、MFTは38℃であり、流動開始温度は320℃であり、且つ、前記紙製畳表加工用水性樹脂分散体(14)の平均粒子径は170nmであり、耐ブリスター性及び耐磨耗性は優れていたものの、被覆性及び風合いは劣っていた。
Figure 0005257728
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表1中の略号は、下記の化合物名を表す。
EA ;アクリル酸エチル
BA ;アクリル酸ブチル
AN ;アクリロニトリル
MMA;メタクリル酸メチル
ST ;スチレン
AA ;アクリル酸
MAA;メタクリル酸
NM ;N−メチロールアクリルアミド
MPS;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
GMA;メタクリル酸グリシジル
Figure 0005257728
〔実施例8〜14及び比較例8〜14〕
実施例8〜14及び比較例8〜14として、前記した実施例1〜7及び比較例1〜7で得た紙製畳表加工用水性樹脂分散体を用い、固形分濃度19%に調整した含浸液に、筒状抄繊糸を浸漬し、熱風循環乾燥機中140℃で10分間乾燥キュアして被覆加工し、この被覆加工基材を用いて、綿の経糸に、緯糸に被覆加工筒状糸を交互に織り密度1.0kg/m2で編織機にて、シート状に加工して、評価用の紙製畳表を得た。上記のようにして被覆加工を施した紙製畳表について、ブリスターの発生の有無、テイバー型磨耗試験による耐摩耗性、45度カンチレバー法による剛軟度、及び引掻き傷防止を目的とした耐擦過性を評価し、その結果を表3に示した。
〔耐ブリスター性の評価方法〕
10cmの被覆加工した紙製畳表をマイクロスコープ(キーエンス社製)を用い倍率50倍にて、ブリスターの発生個数を観察した。ブリスター発生の個数の少ないもの程、手触りのザラツキが無く、外観が良好であり、耐ブリスター性に優れる、と評価できる。
〔耐磨耗性の評価方法(テイバー型磨耗試験)〕
直径15cmの円盤上に被覆加工した紙製畳表をセットし、テイバー磨耗試験機(株式会社東洋精機社製、T型)で磨耗子CS−10にて500回磨耗する。磨耗前の重量から磨耗後重量を測定し、減量した量を計算にてもとめる。磨耗後の減量(g)が少ないほど、耐磨耗性に優れ、外観の擦り減り等に強い畳表であると、評価できる。
〔風合い(剛軟度)の評価方法(45度カンチレバー法)〕
被覆加工した紙製畳表を経方向に巾2cm×長さ30cmに裁断し、JIS L−1096(45度カンチレバー法)により、紙製畳表の風合い(剛軟度、硬さ)を評価した。数値(mm)が大きいほど剛性が強く、また数字が小さいほど柔軟であるが、硬すぎると紙製畳表を畳床に縫い合わせる場合に縫製がしづらくなり、また、柔軟すぎると荷重で凹みが生じた場合に回復性に乏しくなる。風合いは、被覆加工を施す樹脂のガラス転移温度(実測Tg)と相関し、10〜50℃の範囲がよい。
〔耐擦過性の評価方法〕
被覆加工紙製畳表を巾2cm×長さ20cmに裁断し、「Rubbing Tester(学振型染色物摩擦堅牢度試験機)」〔DAIEI KAGAKU SEIKI MFG. CO.LTD.製〕にて、磨耗子に400番のサンドペーパーを取り付け、荷重500gで回数20回、被覆加工紙製畳表の表面を引っ掻き、耐擦過性を以下の基準に従い評価し、その程度を1級〜5級の判定を行った。
耐擦過性の判定基準
5級;表面に引っかき傷が全く無い。
4級;表面に一部引っかき傷があるが、殆ど目立たない。
3級;表面の引っかき傷が表面積の50%以下で発生し、外観の色相にやや劣る。
2級;表面の引っかき傷が表面積の50%以上で発生し、明らかな色相変化がある。
1級;表面の全体が著しく摩耗され、擦り切れた状態になった。
Figure 0005257728
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本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体を用いて被覆加工した紙製畳表は、実施例8〜14の結果から、表3の如く、いずれも、耐ブリスター性、耐磨耗性、耐擦過性、及び風合いに優れており、畳表としての実用性に優れた性能を有していた。
一方、比較例8及び9は、表3の如く、被覆加工した紙製畳表において、いずれもブリスターの発生はないものの、樹脂の実測Tgが2℃と低いため、被覆加工した樹脂が柔らかすぎて、耐磨耗性、耐擦過性に劣っていた。
応用比較例10は、樹脂の実測Tgが59℃と高すぎて、風合い(剛軟度)が硬く、また、造膜性が悪い為に被覆効果が少なく、よって耐磨耗性、耐擦過性が劣っていた。
応用比較例11は、樹脂の平均粒子径が100nmと小さすぎて、造膜性が速い為にブリスターの発生が多く、耐ブリスター性に劣っていた。
応用比較例12は、樹脂の平均粒子径が300nmと大きく、樹脂の造膜性が低く、耐磨耗性及び耐擦過性に劣っていた。
応用比較例13は、樹脂の流動開始温度が105℃と低く、架橋剤であるγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPS)の量が少ないことで被膜自体の強度が低下し、耐磨耗性及び耐擦過性に劣っていた。
応用比較例14は、樹脂の流動開始温度が320℃と高く、造膜性が低く被覆効果が乏しく、耐磨耗性及び耐擦過性に劣っていた。
本発明の紙製畳表加工用水性樹脂分散体は、造膜性に優れており、且つブリスターを生じることがなく、被覆性、耐摩耗性、及び風合いなどの優れた性能を発現できるので、それを被覆加工してなる紙製畳表は、天然のイ草と同様の外観を呈し、且つ、同等以上の性能を維持したままで長期間の使用に耐え得ることができ、有用性に優れる。

Claims (8)

  1. エチレン性不飽和単量体(X)及び架橋剤(Y)を乳化重合することにより得られる樹脂(a)の水性樹脂分散体からなり、且つ、前記水性樹脂分散体を形成する樹脂(a)のガラス転移温度が10〜50℃の範囲、流動開始温度が150〜300℃の範囲、及び平均粒子径が120〜220nmの範囲であり、前記架橋剤(Y)が、ジ又はトリビニル系単量体、メチロールアミド基又はそのアルコキシ基含有ビニル系単量体、シリル基含有ビニル系単量体、アジリジニル基含有ビニル系単量体、イソシアナート基又はブロック化イソシアナート基含有ビニル系単量体、オキサゾリン基含有ビニル系単量体、及びグリシジル基含有ビニル系単量体からなる群から選ばれる少なくとも一種のビニル系架橋剤であることを特徴とする紙製畳表加工用水性樹脂分散体。
  2. エチレン性不飽和単量体(X)が、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)、若しくは、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)と(メタ)アクリロニトリル(x−2)とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)を用いてなるものである請求項1記載の紙製畳表加工用水性樹脂分散体。
  3. エチレン性不飽和単量体(X)が、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)と(メタ)アクリロニトリル(x−2)とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)を含んでなるものである請求項1記載の紙製畳表加工用水性樹脂分散体。
  4. エチレン性不飽和単量体(X)の合計100重量部に対して、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)80.0〜99.0重量部とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)1.0〜20.0重量部、若しくは、炭素原子数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(x−1)と(メタ)アクリロニトリル(x−2)の合計80.0〜99.0重量部とその他のエチレン性不飽和単量体(x−3)1.0〜20.0重量部を用いてなるものである請求項1記載の紙製畳表加工用水性樹脂分散体。
  5. 前記樹脂(a)の最低造膜温度が、0〜40℃の範囲である請求項1〜4の何れか一項に記載の紙製畳表加工用水性樹脂分散体。
  6. 前記水性樹脂分散体が、その他のエチレン性不飽和単量体(x−3)の一部として反応性界面活性剤を用い、ソープフリーで乳化重合してなる水性樹脂分散体である請求項1〜5の何れか一項に記載の紙製畳表加工用水性樹脂分散体。
  7. 水性樹脂分散体を形成する樹脂(a)のガラス転移温度が20〜40℃の範囲、流動開始温度が180〜270℃の範囲、及び平均粒子径が140〜200nmの範囲である請求項1〜6の何れか一項に記載の紙製畳表加工用水性樹脂分散体。
  8. 請求項1〜の何れかに記載の紙製畳表加工用水性樹脂分散体を被覆加工してなることを特徴とする紙製畳表。
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