アコースティックピアノにおいては、演奏者がダンパーペダルを踏み込んだ場合、ペダルの変位量に応じて、ペダルの反力の変化率が段階的に変化するように感じる。この点について、図22を用いて説明する。図22は、アコースティックピアノのダンパーペダルの踏み込みの往行程における、ペダルレバーの反力特性を示している。アコースティックピアノのダンパーペダルとダンパーは、幾つかの連結部を介して連結されている。これらの連結部には遊びが設けられている。したがって、ダンパーペダルの踏み込みが浅く、図22のA0の範囲にあるとき、その動作はダンパーに伝達されず、ペダルの反力の変化率は小さい。ダンパーペダルの変位量が増して、図22のA1の範囲に移行すると、連結部を介してダンパーに踏み込み力が伝わり始め、連結部全体が有する弾性要素からの反力の増加、部分的に弦から持ち上げられ始めたダンパーの重さ及び摩擦によって、ペダルの反力の変化率が大きくなる。さらに変位量が増して、図22のA2の範囲に移行すると、ダンパーが弦から完全に離れ、連結部全体が有する弾性要素からの反力が増加しなくなる。したがって、ペダルの反力の変化率が再び小さくなる。なお、領域A1の後半から領域A1,A2間の境界を越えて領域A2に侵入する領域(図示のAH領域)を通常ハーフペダル領域という。そして、この領域AHにおいて上級演奏者はダンパーペダルの踏み込み深さを微妙に変化させることにより、発生される楽音の音色、響きなどを微妙に変化させることができる。また、機種及びメーカーによって、ダンパーペダル、連結部及びダンパーの構造が異なると、図22におけるA0、A1、AH及びA2の各範囲の広さも異なる。また、図22に破線で示したように、領域A0,A1間でペダルの反力の変化率に差が無い場合もある。しかし、上記のような従来の電子楽器のペダル装置では、図22のA1の範囲を超えた図22のA2の範囲(再び反力の増加率が小さくなった状態)の操作感を実現できなかった。なお、アコースティックピアノにおいては、ペダルレバーの踏み込みの往行程と復行程で反力の変化特性にヒステリシスを有するものもあるが、本発明においては、このペダルのレバー反力のヒステリシス特性については考慮しない。
本発明は前記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、軽量で、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現し得る電子楽器のペダル装置を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明の特徴は、固定支持部材(FR)によって支持されて、演奏者の踏み込み操作により揺動するレバー(40)と、レバー(40)に対してばね力を付与する第1乃至第3のばね(45,45A,56,56A,82;46,46A、57,57A,83;47,47A,61,61A,90)と、第1乃至第3のばね(45,45A,56,56A,82;46,46A、57,57A,83;47,47A,61,61A,90)のいずれかを支持していて、レバー(40)の揺動に連動して変位するとともに、変位が固定支持部材(FR)によって規制される可動支持部材(48,48A,53,53A,58,58A,84,85)とを備え、第1のばね(45,45A,56,56A,82)は、常時、レバー(40)の踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与し、レバー(40)の踏み込み量が初期状態から増加して所定の第1踏み込み量に達したとき、第2及び第3のばね(46,46A、57,57A,83;47,47A,61,61A,90)と可動支持部材(48,48A,53,53A,58,58A,84,85)との協働により、前記踏み込み操作に対する反力の変化率を減少させるようにしたことにある。
上記のように構成した本発明によれば、レバー(40)の踏み込み量に応じて、レバー(40)の反力の変化率を、大きな変化率から小さな変化率へ変化させることができるので、図22に破線で示したアコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現することができる。また、第1のばね(45,45A,56,56A,82)は、常時、レバー(40)の踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与しているので、第1踏み込み量における反力の変化時にもレバー(40)の反力を安定させることができる。
具体的には、例えば図2,6,7に示すように、可動支持部材(48,48A)は、固定支持部材(FR)によって所定位置から所定の第1の方向への変位が規制されるとともに第1の方向とは反対の第2の方向への変位が許容されており、第1のばね(45,45A)は、固定支持部材(FR)とレバー(40)との間に設けられ、常時、前記踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するものであり、第2のばね(46,46A)は、可動支持部材(48,48A)とレバー(40)との間に設けられ、レバー(40)が踏み込み操作されない状態において、両端を可動支持部材(48,48A)及びレバー(40)に当接させ、レバー(40)の踏み込み操作時に、前記踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するものであり、第3のばね(47,47A)は、固定支持部材(FR)と可動支持部材(48,48A)との間に設けられ、可動支持部材(48,48A)の前記所定位置から第2の方向への変位時に前記踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するように構成するとよい。
上記のように構成した具体的な本発明によれば、レバー(40)の踏み込み量が小さいとき、第2のばね(46,46A)を介したレバー(40)による可動支持部材(48,48A)を第2の方向へ付勢する力が、第3のばね(47,47A)のばね力により可動支持部材(48,48A)を第1の方向へ付勢する力に達するまで、可動支持部材(48,48A)は所定位置に静止している。なお、この場合、可動支持部材(48,48A)は、自重を無視できるほど軽くした構成または自重を無視できないほど重くした構成のどちらでも構わないが、ここでは、この可動支持部材(48,48A)の自重による影響は無視できるものとして説明する。以下、他の具体的な本発明においても同じである。したがって、この状態では、第1のばね(45,45A)によるばね力に加えて、第2のばね(46,46A)によるばね力がレバー(40)に並列に付与される。そして、レバー(40)の踏み込み量がさらに増加して、第2のばね(46,46A)を介したレバー(40)による可動支持部材(48,48A)を第2の方向へ付勢する力が、第3のばね(47,47A)のばね力により可動支持部材(48,48A)を第1の方向へ付勢する力以上になると、可動支持部材(48,48A)は変位し始める。可動支持部材(48,48A)が変位し始めるときのレバー(40)の踏み込み量が、第1踏み込み量に対応する。
そして、この状態からレバー(40)の踏み込み量がさらに増加すると、可動支持部材(48,48A)が第2の方向へ変位しながら、第3のばね(47,47A)が作用し始める。この状態では、第2のばね(46,46A)と第3のばね(47,47A)が直列に結合されているとみなすことができ、この直列ばねのばね定数は第2のばね(46,46A)のばね定数よりも小さくなる。したがって、この状態では、第1のばね(45,45A)によるばね力に加えて、前記第2のばね(46,46A)及び第3のばね(47,47A)からなる直列ばねによるばね力がレバー(40)に並列に付与される。その結果、レバー(40)の踏み込み量に応じて、レバー(40)の反力の変化率を、大きな変化率から小さな変化率へ変化させることができるので、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現することができる。
前述の通り、可動支持部材(48,48A)は、自重を無視できるほど軽くした構成または自重を無視できないほど重くした構成のどちらでも構わないが、可動支持部材(48,48A)の自重による影響を無視できない場合、可動支持部材(48,48A)に働く慣性力を考慮する必要がある。すると、レバー(40)を大きく踏み込んだ後、踏み込み量を急激に減少させた場合、及びレバー(40)の踏み込み量を周期的に変化させた場合、可動支持部材(48,48A)に働く慣性力とばね力の協働により、可動支持部材(48,48A)が一時的に振動することが考えられる。さらに、可動支持部材(48,48A)が固定支持部材(FR)に衝突して、可動支持部材(48,48A)が振動することも考えられる。この振動は、第2のばね(46,46A)を介してレバー(40)に伝わり、演奏者にとって不自然な反力となる。しかし、上記のように構成した本発明においては、第2のばね(46,46A)と第3のばね(47,47A)のばね力が、可動支持部材(48,48A)に対して、相反する方向に働くので、前記振動を抑制または素早く収束させることができる。さらに、レバー(40)に作用するばね力を、第1のばね(45,45A)によるばね力と、第2のばね(46,46A)及び第3のばね(47,47A)によるばね力とに分担させることができるので、第2のばね(46,46A)及び第3のばね(47,47A)によるばね力(ばね定数)を小さくすることができ、前記振動による不自然なレバー反力を小さくすることができる。その結果、レバー(40)の反力を安定させることができる。
一方、可動支持部材(48,48A)の自重による影響を無視できる場合は、可動支持部材(48,48A)に働く慣性力も無視できると考えられるので、前記の不自然な反力の発生を防止でき、ペダル装置を軽量化することもできる。
また、例えば図8,図9に示すように、可動支持部材を、固定支持部材(FR)によって第1の所定位置から所定の第1の方向への変位が規制されるとともに第1の方向とは反対の第2の方向への変位が許容されていてレバー(40)に動力伝達可能に接続された第1の可動支持部材(53,53A)と、固定支持部材(FR)によって第1の所定位置から第2の方向へ離間した位置にある第2の所定位置から第1の方向への変位が規制されるとともに第2の方向への変位が許容された第2の可動支持部材(58,58A)とで構成し、第1のばね(56,56A)は、固定支持部材(FR)と第1の可動支持部材(53,53A)との間に設けられ、常時、踏み込み操作に対抗する方向のばね力を第1の可動支持部材(53,53A)を介してレバー(40)に付与するものであり、第2のばね(57,57A)は、第1の可動支持部材(53,53A)と第2の可動支持部材(58,58A)との間に設けられて、レバー(40)が踏み込み操作されない状態において、両端を第1の可動支持部材(53,53A)及び第2の可動支持部材(58,58A)に当接させ、前記レバー(40)の踏み込み操作時に、レバー(40)の踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するものであり、第3のばね(61,61A)は、固定支持部材(FR)と第2の可動支持部材(58,58A)との間に設けられ、第2の可動支持部材(58,58A)の第2の所定位置から第2の方向への変位時に、踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するように構成してもよい。
上記のように構成した他の具体的な本発明によれば、レバー(40)の踏み込み量が小さいとき、第2のばね(57,57A)を介したレバー(40)による第2の可動支持部材(58,58A)を第2の方向へ付勢する力が、第3のばね(61,61A)のばね力による第2の可動支持部材(58,58A)を第1の方向へ付勢する力に達するまで、第2の可動支持部材(58,58A)は所定位置に静止している。したがって、この状態では、第1のばね(56,56A)によるばね力に加えて、第2のばね(57,57A)によるばね力がレバー(40)に並列に付与される。そして、レバー(40)の踏み込み量がさらに増加して、第2のばね(57,57A)を介したレバー(40)による第2の可動支持部材(58,58A)を第2の方向へ付勢する力が、第3のばね(61,61A)のばね力により第2の可動支持部材(58,58A)を第1の方向へ付勢する力以上になると、第2の可動支持部材(58,58A)は第2の方向へ変位し始める。第2の可動支持部材(58,58A)が変位し始めるときのレバー(40)の踏み込み量が上記第1踏み込み量に対応する。
この状態からレバー(40)の踏み込み量がさらに増加すると、第2の可動支持部材(58,58A)が第2の方向へ変位しながら、第3のばね(61,61A)が作用し始める。この状態では、第2のばね(57,57A)と第3のばね(61,61A)が直列に結合されているとみなすことができ、この直列ばねのばね定数は第2のばね(57,57A)のばね定数よりも小さくなる。したがって、この状態では、第1のばね(56,56A)によるばね力に加えて、第2のばね(57,57A)及び第3のばね(61,61A)からなる直列ばねによるばね力がレバー(40)に並列に付与される。その結果、レバー(40)の踏み込み量に応じて、レバー(40)の反力の変化率を、大きな変化率から小さな変化率へ変化させることができるので、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現することができる。
また、この他の具体的な本発明においても、上記図2,6,7を参照することにより説明した具体的な本発明と同様に、第2の可動支持部材(58,58A)の自重による影響を考慮すると、レバー(40)を大きく踏み込んだ後、踏み込み量を急激に減少させた場合、及びレバー(40)の踏み込み量を周期的に変化させた場合、第2の可動支持部材(58,58A)に働く慣性力とばね力の協働により、第2の可動支持部材(58,58A)が一時的に振動することが考えられる。さらに、第2の可動支持部材(58,58A)が固定支持部材(FR)に衝突して、第2の可動支持部材(58,58A)が振動することも考えられる。しかし、この他の具体的な本発明の場合も、第2のばね(57,57A)と第3のばね(61,61A)のばね力が、第2の可動支持部材(58,58A)に対して、相反する方向に働くので、前記振動を抑制または素早く収束させることができる。さらに、レバー(40)に作用するばね力は、第1のばね(56,56A)によるばね力と、第2のばね(57,57A)及び第3のばね(61,61A)によるばね力とに分担させているので、前記振動による不自然なレバー反力を小さくすることができる。その結果、レバー(40)の反力を安定させることができる。一方、第2の可動支持部材(58,58A)の自重による影響を無視できる場合は、第2の可動支持部材(58,58A)に働く慣性力も無視できると考えられるので、前記の不自然な反力の発生を防止でき、ペダル装置を軽量化することもできる。
さらに、例えば図10に示すように、可動支持部材を、固定支持部材(FR)によって第1の所定位置と第1の所定位置から所定の第1の方向に離間した第2の所定位置との間にて変位が許容された第1の可動支持部材(85)と、レバー(40)に当接し、かつ固定支持部材(FR)により第1の所定位置から第1の方向とは反対の第2の方向に離間した第3の所定位置から第2の方向への変位が規制されるとともに、常時、第1の可動支持部材(85)に当接して第1の可動支持部材(85)に対する第1の方向への変位が規制された第2の可動支持部材(84)とで構成し、第1のばね(82)は、固定支持部材(FR)とレバー(40)との間に設けられて、常時、踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するものであり、第2のばね(83)は、固定支持部材(FR)と第2の可動支持部材(84)との間に設けられ、第1の可動支持部材(85)の第2の所定位置から第1の方向への変位が規制されるまで踏み込み操作を助勢する方向のばね力をレバー(40)に付与するものであり、第3のばね(90)は、固定支持部材(FR)と第1の可動支持部材(85)との間に設けられて、第1の可動支持部材(85)が第1の所定位置から第2の所定位置まで変位するとき、踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するように構成してもよい。
上記のように構成した他の具体的な本発明によれば、レバー(40)の踏み込み量が小さいとき、第1の可動支持部材(85)が第2の可動支持部材(84)と共に第1の所定位置から第1の方向へ変位する。このとき、第1のばね(82)及び第3のばね(90)はレバー(40)の踏み込み操作に対抗する方向にばね力を付与し、第2のばね(83)はレバー(40)の踏み込み操作を助勢する方向にばね力を付与する。この状態では、第1乃至第3のばね(82,83,90)のばねは並列に結合されたばねとみなすことができ、この3つのばねの合成ばねのばね定数は、第1のばね(82)のばね定数よりも大きい。そして、レバー(40)の踏み込み量がさらに増加すると、第1及び第2の可動支持部材(84,85)の第1の方向への変位が固定支持部材(FR)によって第2の所定位置にて規制される。第1及び第2の可動支持部材(84,85)の変位が規制されるときのレバー(40)の踏み込み量が上記第1踏み込み量に対応する。
この状態からレバー(40)の踏み込み量がさらに増加すると、第2及び第3のばね(82,83)のばね力がレバー(40)の踏み込み操作に関係しなくなり、第1のばね(82)のみがレバー(40)の踏み込み操作に対して作用し始める。その結果、レバー(40)の踏み込み量に応じて、レバー(40)の反力の変化率を、大きな変化率から小さな変化率へ変化させることができるので、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現することができる。
また、この場合、レバー(40)を大きく踏み込んだ後、踏み込み量を急激に減少させた場合、及びレバー(40)の踏み込み量を周期的に変化させた場合には、レバー(40)が第2の可動支持部材(84)に衝突する。レバー(40)と第2の可動支持部材(84)の衝突により生じた衝撃は、第1のばね(82)及び第2のばね(83)によって吸収されて小さくなる。したがって、前記衝突によるレバー(40)への衝撃を緩和でき、レバー(40)の反力を安定させることができる。
本発明の他の特徴は、さらに、第1踏み込み量よりも小さな踏み込み量領域において、レバー(40)の踏み込み量が初期状態から増加して、所定の第2踏み込み量に達したとき、第2及び第3のばね(46,46A,57,57A,83;47,47A,61,61A、90)と可動支持部材(48,48A,53,53A,58,58A,84,85)との協働により、前記踏み込み操作に対する反力の変化率を増加させるようにしたことにある。
上記のように構成した本発明の他の特徴によれば、レバー(40)の踏み込み量に応じて、レバー(40)の反力の変化率を、始め小さく、次に大きく、さらに次に中程度というように段階的に増減させることができるので、図22に実線で示したアコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現することができる。また、この場合も、第1のばね(45,45A,56,56A,82)は、常時、レバー(40)の踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与しているので、第1及び第2踏み込み量における反力の変化時にもレバー(40)の反力を安定させることができる。
具体的には、例えば図12,16,17に示すように、可動支持部材(48,48A)は、固定支持部材(FR)によって所定位置から所定の第1の方向への変位が規制されるとともに第1の方向とは反対の第2の方向への変位が許容されており、第1のばね(45,45A)は、固定支持部材(FR)とレバー(40)との間に設けられ、常時、前記踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するものであり、第2のばね(46,46A)は、可動支持部材(48,48A)とレバー(40)との間に設けられて、レバー(40)が踏み込み操作されていない状態では、その一端を可動支持部材(48,48A)又はレバー(40)から離間させており、レバー(40)の踏み込み操作により、その両端が可動支持部材(48,48A)及びレバー(40)の両者に当接した状態から踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するものであり、第3のばね(47,47A)は、固定支持部材(FR)と可動支持部材(48,48A)との間に設けられ、可動支持部材(48,48A)の所定位置から第2の方向への変位時に踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するように構成するとよい。
上記のように構成した他の具体的な本発明によれば、レバー(40)の踏み込み量が小さいとき、第2のばね(46,46A)の両端は可動支持部材(48,48A)及びレバー(40)に当接していないので、第1のばね(45,45A)によるばね力のみがレバー(40)に付与される。この状態からレバー(40)の踏み込み量を増加させると、第2のばね(46,46A)の両端が可動支持部材(48,48A)及びレバー(40)に当接する。第2のばね(46,46A)の両端が可動支持部材(48,48A)及びレバー(40)に当接するときのレバー(40)の踏み込み量が、上記第2踏み込み量に対応する。この状態からレバー(40)の踏み込み量がさらに増加しても、第2のばね(46,46A)を介したレバー(40)による可動支持部材(48,48A)を第2の方向へ付勢する力が、第3のばね(47,47A)のばね力により可動支持部材(48,48A)を第1の方向へ付勢する力に達するまで、可動支持部材(48,48A)は所定位置に静止している。したがって、この状態では、第1のばね(45,45A)によるばね力に加えて、第2のばね(46,46A)によるばね力がレバー(40)に並列に付与される。
そして、レバー(40)の踏み込み量がさらに増加して、第2のばね(46,46A)を介したレバー(40)による可動支持部材(48,48A)を第2の方向へ付勢する力が、第3のばね(47,47A)のばね力により可動支持部材(48,48A)を第1の方向へ付勢する力以上になると、可動支持部材(48,48A)は第2の方向へ変位し始める。可動支持部材(48,48A)が第2の方向へ変位開始するときのレバー(40)の踏み込み量が上記第1踏み込み量に対応する。この状態からレバー(40)の踏み込み量がさらに増加すると、可動支持部材(48,48A)が第2の方向へ変位しながら、第3のばね(47,47A)が作用し始める。この状態では、第2のばね(46,46A)と第3のばね(47,47A)が直列に結合されているとみなすことができ、この直列ばねのばね定数は第2のばね(46,46A)のばね定数よりも小さくなる。したがって、この状態では、第1のばね(45,45A)によるばね力に加えて、前記第2のばね(46,46A)及び第3のばね(47,47A)からなる直列ばねによるばね力がレバー(40)に並列に付与される。その結果、レバー(40)の踏み込み量に応じて、レバー(40)の反力の変化率を、始め小さく、次に大きく、さらに次に中程度というように段階的に増減させることができるので、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現することができる。また、上記図2,6,7を参照することにより説明した具体的な本発明と同様に、レバー(40)の反力を安定させることができる。
また、例えば図18,19に示すように、可動支持部材を、固定支持部材(FR)によって第1の所定位置から所定の第1の方向への変位が規制されるとともに第1の方向とは反対の第2の方向への変位が許容されていて前記レバーに動力伝達可能に接続された第1の可動支持部材(53,53A)と、固定支持部材(FR)によって第1の所定位置から第1の方向へ離間した位置にある第2の所定位置から第1の方向への変位が規制されるとともに第2の方向への変位が許容された第2の可動支持部材(58,58A)とで構成し、第1のばね(56,56A)は、固定支持部材(FR)と第1の可動支持部材(53,53A)との間に設けられ、常時、踏み込み操作に対抗する方向のばね力を第1の可動支持部材(53,53A)を介してレバー(40)に付与するものであり、第2のばね(57,57A)は、第1の可動支持部材(53,53A)と第2の可動支持部材(58,58A)との間に設けられて、レバー(40)が踏み込み操作されていない状態では、その一端を第1の可動支持部材(53,53A)又は第2の可動支持部材(58,58A)から離間させており、その両端が第1の可動支持部材(53,53A)及び第2の可動支持部材(58,58A)の両者に当接した状態からレバー(40)の踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するものであり、第3のばね(61,61A)は、固定支持部材(FR)と第2の可動支持部材(58,58A)との間に設けられ、第2の可動支持部材(58,58A)の第2の所定位置から第2の方向への変位時に、踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するように構成してもよい。
上記のように構成した他の具体的な本発明によれば、レバー(40)の踏み込み量が小さいとき、第1の可動支持部材(53,53A)の第1の所定位置から第2の方向への変位を伴いながら、第1のばね(56,56A)によるばね力が第1の可動支持部材(53,53A)を介してレバー(40)に付与される。この状態では、第2のばね(57,57A)の両端は第1の可動支持部材(53,53A)及び第2の可動支持部材(58,58A)に当接していないので、第1のばね(56,56A)によるばね力のみがレバー(40)に付与されることになる。この状態からレバー(40)の踏み込み量を増加させると、第2のばね(57,57A)の両端が第1の可動支持部材(53,53A)及び第2の可動支持部材(58,58A)に当接する。第2のばね(57,57A)の両端が第1の可動支持部材(53,53A)及び第2の可動支持部材(58,58A)に当接するときのレバー(40)の踏み込み量が上記第2踏み込み量に対応する。この状態からレバー(40)の踏み込み量がさらに増加しても、第2のばね(57,57A)を介したレバー(40)による第2の可動支持部材(58,58A)を第2の方向へ付勢する力が、第3のばね(61,61A)のばね力による第2の可動支持部材(58,58A)を第1の方向へ付勢する力に達するまで、第2の可動支持部材(58,58A)は所定位置に静止している。したがって、この状態では、第1のばね(56,56A)によるばね力に加えて、第2のばね(57,57A)によるばね力がレバー(40)に並列に付与される。
そして、レバー(40)の踏み込み量がさらに増加して、第2のばね(57,57A)を介したレバー(40)による第2の可動支持部材(58,58A)を第2の方向へ付勢する力が、第3のばね(61,61A)のばね力により第2の可動支持部材(58,58A)を第1の方向へ付勢する力以上になると、第2の可動支持部材(58,58A)は第2の方向へ変位し始める。この第2の可動支持部材(58,58A)が変位開始するときのレバー(40)の踏み込み量が、上記第1踏み込み量に対応する。この状態からレバー(40)の踏み込み量がさらに増加すると、第2の可動支持部材(58,58A)が第2の方向へ変位しながら、第3のばね(61,61A)が作用し始める。この状態では、第2のばね(57,57A)と第3のばね(61,61A)が直列に結合されているとみなすことができ、この直列ばねのばね定数は第2のばね(57,57A)のばね定数よりも小さくなる。したがって、この状態では、第1のばね(56,56A)によるばね力に加えて、前記第2のばね(57,57A)及び第3のばね(61,61A)からなる直列ばねによるばね力がレバー(40)に付与される。その結果、レバー(40)の踏み込み量に応じて、レバー(40)の反力の変化率を、始め小さく、次に大きく、さらに次に中程度というように段階的に増減させることができるので、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現することができる。また、上記図8,9を参照することにより説明した他の具体的な本発明と同様に、レバー(40)の反力を安定させることができる。
さらに、例えば図20に示すように、可動支持部材を、固定支持部材(FR)によって第1の所定位置と第1の所定位置から所定の第1の方向に離間した第2の所定位置との間にて変位が許容された第1の可動支持部材(85)と、レバー(40)に当接し、かつ固定支持部材(FR)により第1の所定位置から第1の方向とは反対の第2の方向に離間した第3の所定位置から第2の方向への変位が規制されるとともに、第1の可動支持部材(85)への当接により第1の可動支持部材(85)に対する第1の方向への変位が規制された第2の可動支持部材(84)とで構成し、第1のばね(82)は、固定支持部材(FR)とレバー(40)との間に設けられて、常時、踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するものであり、第2のばね(83)は、固定支持部材(FR)と第2の可動支持部材(84)との間に設けられ、第2の可動支持部材(84)の第1の可動支持部材(85)に対する変位が規制され、かつ第1の可動支持部材(85)の第2の所定位置から第1の方向への変位が規制されるまで踏み込み操作を助勢する方向のばね力をレバー(40)に付与するものであり、第3のばね(90)は、固定支持部材(FR)と第1の可動支持部材(85)との間に設けられて、第2の可動支持部材(84)が第1の可動支持部材(85)に当接して、第1の可動支持部材(85)が第1の所定位置から第2の所定位置まで変位するとき、踏み込み操作に対抗する方向のばね力をレバー(40)に付与するように構成してもよい。
上記のように構成した他の具体的な本発明によれば、レバー(40)の踏み込み量が小さいとき、第2の可動支持部材(84)の第1の方向への変位を伴いながら、第1及び第2のばね(82,83)によるばね力がレバー(40)に付与される。このとき、第1のばね(82)はレバー(40)の踏み込み操作に対抗する方向にばね力を付与し、第2のばね(83)はレバー(40)の踏み込み操作を助勢する方向に第1のばね(82)のばね力よりも小さなばね力を付与し、レバー(40)の踏み込み操作に対する反力は、第1のばね(82)のばね力から第2のばね(83)のばね力を減じた合成ばねのばね力となる。したがって、このときの合成ばねのばね定数は第1のばね(82)のばね定数よりも小さくなる。この状態からレバー(40)の踏み込み量を増加させると、第2の可動支持部材(84)が第1の可動支持部材(85)に当接する。この第2の可動支持部材(84)が第1の可動支持部材(85)に当接するときのレバー(40)の踏み込み量が、上記第2踏み込み量に対応する。この状態からレバー(40)の踏み込み量がさらに増加すると、第1の可動支持部材(85)が第2の可動支持部材(84)と共に第1の所定位置から第1の方向へ変位し始める。このとき、前記合成ばねのばね力に加えて、レバー(40)の踏み込み操作に対抗する方向に第3のばね(90)によるばね力がレバー(40)に付与される。
そして、レバー(40)の踏み込み量がさらに増加して、第1及び第2の可動支持部材(84,85)の第1の方向への変位が、固定支持部材(FR)によって第2の所定位置に規制される。第1及び第2の可動支持部材(84,85)の変位が固定支持部材(FR)によって第2の所定位置に規制されるときのレバー(40)の踏み込み量が、上記第1踏み込み量に対応する。この状態からレバー(40)の踏み込み量がさらに増加すると、第2及び第3のばね(82,83)のばね力が、レバー(40)の踏み込み操作に関係しなくなり、第1のばね(82)のみが、レバー(40)の踏み込み操作に対して作用し始める。その結果、レバー(40)の踏み込み量に応じて、レバー(40)の反力の変化率を、始め小さく、次に大きく、さらに次に中程度というように段階的に増減させることができるので、アコースティックピアノのダンパーペダルと同様な操作感を実現することができる。
また、上記図10を参照することにより説明した他の具体的な本発明と同様に、レバー(40)の反力を安定させることができる。
a.電子楽器全体の構成
本発明の各実施形態に係るペダル装置について説明する前に、各実施形態に係るペダル装置が適用される電子楽器全体の構成について説明しておく。図1は各実施形態に係るペダル装置を適用した電子楽器の全体構成例についてのブロック図である。電子楽器10は、鍵盤11、ペダル装置12、複数のパネル操作子13、表示器14、音源回路15、コンピュータ部16、時計回路17及び外部記憶装置18を備えている。
鍵盤11は、演奏者の手によって操作されて、発生楽音の音高をそれぞれ指定する。鍵盤11の操作は、バス21に接続された検出回路22によって検出され、操作内容を表すデータ(例えば、ノートデータ、キーオンデータ、キーオフデータなど)が、バス21を介してコンピュータ部16に供給される。ペダル装置12は、演奏者の足によって操作されて、電子楽器10の楽音の発生態様を制御する。後述の各実施形態においては、ペダル装置12は、演奏者の足による踏み込み操作により、発生される楽音にダンパー効果を付与するためのダンパーペダルである。ペダル装置12の操作は、詳しくは後述するように、バス21に接続された検出回路23によって検出され、操作内容を表すデータがバス21を介してコンピュータ部16に供給される。複数のパネル操作子13は、電子楽器の動作を設定するためのものである。パネル操作子13の操作は、バス21に接続された検出回路24によって検出され、操作内容を表すデータがバス21を介してコンピュータ部16に供給される。表示器14は、液晶ディスプレイ、CRTなどで構成され、文字、数字、図形などを画面上に表示する。表示器14はバス21に接続された表示回路25によって制御され、表示内容が、バス21を介して表示回路25に供給される表示用の指示信号及びデータにより指定される。
音源回路15は、バス21に接続されていて、コンピュータ部16からバス21を介して供給される楽音制御データ(ノートデータ、キーオンデータ、キーオフデータ、音色制御データ、音量制御データなど)に基づいてディジタル楽音信号を生成し、生成したディジタル楽音信号を効果回路26に供給する。効果回路26は、バス21に接続されていて、コンピュータ部16からバス21を介して供給される効果制御データに基づいて、供給されたディジタル楽音信号に効果を付してサウンドシステム27に供給する。前述したダンパー効果は、音源回路15又は効果回路26でディジタル楽音信号に付与される。サウンドシステム27は、D/A変換器、アンプ、スピーカなどからなり、前記供給された効果の付与されたディジタル楽音信号をアナログ楽音信号に変換して、同アナログ楽音信号に対応した楽音を放音する。
コンピュータ部16は、バス21に接続されたCPU16a、RAM16b、ROM16cに加えて、CPU16aに接続されたタイマ16dからなり、プログラムの実行により、電子楽器10を制御する。時計回路17は、継続的に日時を計測する。外部記憶装置18は電子楽器10に組み込まれたハードディスク及びフラッシュメモリ、電子楽器10に接続可能なコンパクトディスクなどの種々の記録媒体と、同各記録媒体に対するドライブユニットを含むものであり、大量のデータ及びプログラムの記憶及び読み出しを可能にしている。
電子楽器10は、さらに、ネットワーク用インターフェース回路28及びMIDIインターフェース回路29を備えている。ネットワーク用インターフェース回路28は、電子楽器10を、通信ネットワークNWを介してサーバ装置30に交信可能に接続する。MIDIインターフェース回路29は電子楽器10を、他の電子楽器又はシーケンサなどの外部MIDI機器31に交信可能に接続する。
b.第1実施形態
次に、本発明に係るペダル装置12の第1実施形態について詳しく説明する。図2は本実施形態に係る電子楽器のペダル装置の側面図である。レバー40は、長尺状の板状部材で、前部(図2において左側)が踏み込み部であり、幅広となっている。レバー40は、中間部にて固定支持部材としてのフレームFRに設けられたレバー支持部41に支持され、回転中心42を中心として、前端部を上下方向に揺動可能としている。レバー40の中間部下方には、フェルトなどの衝撃吸収材によって構成された長尺状の下限ストッパ43が横方向に延設されてフレームFRに固定されている。この下限ストッパ43はレバー40の前部の下方への変位を規制する。なお、フレームFRとは、ペダル装置12の種々の部品を支持するための構造体及びペダル装置12のハウジング自体を意味する。また、レバー40の後部下方には、下限ストッパ43と同様な上限ストッパ44がフレームFR上に固定されており、レバー40の前部の上方への変位を規制する。
レバー40の回転中心42の後方であって、レバー40の後部上方には、第1のばね45の上端がフレームFRに固定されている。第1のばね45の下端は、レバー40の後部上面に設けた凹部40aに侵入して凹部40aの底面に当接し、レバー40の後部を下方へ付勢する。なお、第1のばね45は圧縮ばねである。また、レバー40の回転中心42の後方であって、レバー40の後部上方には、第2のばね46、第3のばね47及び可動支持部材48が設けられている。可動支持部材48は円柱状に形成され、その上面及び下面には凹部48a,48bが形成されている。第3のばね47の上端はレバー40の後部上方のフレームFRに固定され、その下端は、可動支持部材48の凹部48aに侵入してその底面に固着されて支持されている。一方、第2のばね46は、上端が可動支持部材48の凹部48bに侵入してその上底面に固着されて支持される。また、第2のばね46の下端は、レバー40の上面に当接している。なお、第2のばね46及び第3のばね47は圧縮ばねである。第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47のばね定数を比較すると、第1のばね45のばね定数が最も大きい。第3のばね47のばね定数は第1のばね45及び第2のばね46のばね定数に比べて十分に小さい。なお、第1乃至第3のばね45,46,47のばね定数の大小関係は本実施形態に限られず、目的とするレバー40の反力特性に応じて、変更が可能である。例えば、図22のA1領域とA2領域で反力の変化率の差が小さい場合は、第3のばね47のばね定数を第2のばね46のばね定数より大きくしてもよい。可動支持部材48は、板状部材で、図示しないガイド部材によって、上下方向にのみ移動可能となっている。さらに、フレームFRに固定された可動支持部材下限ストッパ49によって、可動支持部材48の下方への変位は規制される。可動支持部材下限ストッパ49は、フェルト等の衝撃吸収材によって構成され、可動支持部材48のフレームFRに対する衝突時の衝撃音の発生を防止する。
可動支持部材48の凹部48bには、第2のばね46の付勢力(ペダル装置12であるレバー40に付与される荷重)を検出するための荷重センサ50が組み付けられている。この荷重センサ50は、第2のばね46の付勢力による弾性変形を電気的に(例えばひずみゲージにより)検出することにより、第2のばね46の付勢力を検出する。また、レバー40の中間部上方には、レバー40の変位量を検出するための変位量センサ51が組み付けられている。この変位量センサ51は、レバー40の上面までの距離を電気的又は光学的に(例えばレーザー光の反射により)検出することにより、レバー40の変位量を検出する。なお、この変位量センサ51に代えて、レバー40の上下変位量を機械的かつ電気的に(例えば可変抵抗により)検出するセンサを用いてもよい。
次に、上記のように構成したペダル装置12の動作を説明する。図3は、レバー40の変位並びに第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47の圧縮状態を表した図である。また図4(A)、図4(B)及び図4(C)は、レバー40の変位量に対する第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47の付勢力を表した図であり、図4(D)は、レバー40の変位に伴いレバー40が発生する反力を表した図である。レバー40を踏み込み操作しない状態では、第1のばね45によって、レバー40の後部が下方に付勢される。したがって、レバー40の後部下面が上限ストッパ44に当接してレバー40は静止し、図3(A)の状態となっている。このとき、第2のばね46は、自然長となっており、レバー40に対する付勢力は「0」である。また、このとき、可動支持部材48は第3のばね47の付勢力及び可動支持部材48の自重によって、可動支持部材下限ストッパ49に当接して静止している。なお、このとき、第2のばね46が若干圧縮され、レバー40を付勢していてもよいが、この場合も第2のばね46の付勢力を第3のばね47の付勢力及び可動支持部材48の自重からなる合力よりも小さくし、可動支持部材48を可動支持部材下限ストッパ49に当接させる。
演奏者が、第1のばね45による付勢力に対抗してレバー40を踏み込むと、レバー40は、回転中心42を中心として、図3(A)にて反時計回りに回転し始め、レバー40の後部が上方へ変位する。これにより、第1のばね45が圧縮され、第1のばね45の付勢力が増加する(図4(A)のA1)。また、第3のばね47が可動支持部材48を下方へ付勢する付勢力及び可動支持部材48の自重からなる合力に対して、第2のばね46の付勢力が小さいときは、可動支持部材48は可動支持部材下限ストッパ49に当接したままとなっている。したがって、前記レバー40の回転により、第2のばね46も圧縮され始め、第2のばね46の付勢力も増加する(図4(B)のA1)。これにより、この操作範囲(図3(A)から図3(B)の間)では、レバー40の反力及び反力の変化は第1のばね45及び第2のばね46によって発生する(図4(D)のA1)。
そして、第2のばね46の付勢力が、第3のばね47が可動支持部材48を下方へ付勢する付勢力及び可動支持部材48の自重からなる合力を超えると、可動支持部材48は、可動支持部材下限ストッパ49から離れて、上方へ移動する。可動支持部材48が上方へ移動開始するときのレバー40の踏み込み量が第1踏み込み量である。上述のとおり、第3のばね47のばね定数は第2のばね46に比べて十分に小さいので、レバー40の変位量が増すと、第3のばね47は圧縮されて第3のばね47の付勢力は増加するが、第2のばね46はそれ以上ほとんど圧縮されず、第2のばね46の付勢力はほとんど増加しない(図4(B)のA2及び図4(C)のA2)。したがって、この操作範囲(図3(B)から図3(C)の間)では、レバー40の反力は第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47によって発生する。反力の変化は、厳密にいえば、第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47によって発生する。しかし、第3のばね47のばね定数は第2のばね46に比べて十分に小さいので、第2のばね46はほとんど圧縮されず付勢力がほとんど増加しない。したがって、反力の変化は、第1のばね45及び第3のばね47によって発生するとみなすことができる(図4(D)のA2)。
そして、レバー40の中間部下面が下限ストッパ43に当接して、レバー40の前部の下方への変位が規制される。レバー40の操作を解除すると、第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47の付勢力によって、上述の踏み込みの往行程とは逆の順に動作する。すなわち、レバー40は回転中心42を中心として、図3(C)にて時計回りに回転し、レバー40の後部下面が上限ストッパ44に当接して元の状態(図3(A))に復帰する。なお、上記説明では、可動支持部材48の質量も考慮したが、可動支持部材48を樹脂などの軽い材料で構成すれば、可動支持部材48の質量を無視できる。
また、検出回路23は、荷重センサ50によって検出される第2のばね46の付勢力の変化から、レバー40の反力の変化率が変化する点を検出する。さらに、変位量センサ51によってレバー40の変位量を検出する。そして、電子楽器10は、この反力の変化率の変化点及びレバー40の変位量の情報に基づいて、発生楽音にダンパー効果を付与するとともに発生楽音の音色、響き(音響効果)などの楽音要素を制御する。特に、上述した図22のハーフペダル領域AHに対応する図4(D)の領域AHにおいて、音源回路15及び効果回路26は、前記荷重センサ50によって検出された荷重及び変位量センサ51によって検出された変位量に基づいて、発生楽音の音色、響き(音響効果)などの楽音要素を演奏者のペダル操作により微妙に変化させる。なお、前記楽音要素の制御においては、荷重センサ50によって検出された荷重及び変位量センサ51によって検出された変位量のうちの一方のみで、発生楽音の前記楽音要素を制御するようにしてもよい。
上記のように構成した本実施形態に係るペダル装置においては、図22に破線で示したようなアコースティックピアノのペダルの踏み込み開始から終了までのレバーの変位量と演奏者がペダルから受ける反力の関係に近い特性(図4(D))を実現することができる。すなわち、図22のA0及びA1に相当する操作範囲(図4(D)のA1)においては、第1のばね45及び第2のばね46によるレバー40への付勢力が変化し、図22のA2に相当する操作範囲(図4(D)のA2)では、第1のばね45による付勢力に加え、第3のばね47による付勢力が変化するようになっている。第3のばね47のばね定数は、第2のばね46のばね定数よりも十分に小さいから、図22のA0及びA1に相当する操作範囲(図4(D)のA1)に比べて、図22のA2の範囲に相当する操作範囲(図4(D)のA2)の反力の変化率を小さくすることができる。また、第3のばね47のばね定数が第2のばね46のばね定数よりも十分に小さくなく、又は第2のばね46のばね定数より大きくても、図22のA2の範囲に相当する操作範囲(図4(D)のA2)では、第2のばね46と第3のばね47が直列に接続されるため、第2のばね46及び第3のばね47の合成ばねのばね定数は、第2のばね46のばね定数よりも小さくなる。したがって、この場合も、前記操作範囲(図4(D)のA2)の反力の変化率を図4(D)のA1の操作範囲の反力の変化率よりも小さくすることができる。
なお、図22のA3の範囲は、アコースティックピアノにおいて、レバー及びリンク機構が各ストッパ部材に当接して、僅かにそれらのストッパ部材を圧縮することによって発生するレバーの変位量と反力の関係を示す。この範囲は、本実施形態に係るペダル装置12において、レバー40の前部下面が下限ストッパ43に当接している状態に相当する。したがって、本実施形態に係るペダル装置12において、図22に破線で示したようなアコースティックピアノの特性を実現できる。
また、レバー40を大きく踏み込んだ後、踏み込み量を急激に減少させた場合、及びレバー40の踏み込み量を周期的に変化させた場合、可動支持部材48に働く慣性力とばね力の協働により、可動支持部材48が一時的に振動することが考えられる。さらに、可動支持部材48が可動支持部材下限ストッパ49に衝突して、可動支持部材48が振動することも考えられる。特に図4(D)のAH領域の付近でレバー40の踏み込み量を周期的に変化させた場合で、その周波数が第2のばね46又は第3のばね47の固有振動数に近いと、可動支持部材48の振幅が大きくなり、可動支持部材48が可動支持部材下限ストッパ49に周期的に衝突することが考えられる。この振動は、第2のばね46を介してレバー40に伝わり、演奏者にとって不自然な反力となる。しかし、上記のように構成したペダル装置12においては、第2のばね46と第3のばね47の双方のばね力が、可動支持部材48に対して、相反する方向に働くので、前記振動を抑制または素早く収束させることができる。さらに、レバー40に作用するばね力を、第1のばね45によるばね力と、第2のばね46及び第3のばね47によるばね力とに分担させているので、第2のばね46及び第3のばね47によるばね力は小さい。そのため、前記振動による不自然なレバー反力を小さくすることができる。したがって、レバー40の反力を安定させることができる。
なお、上記説明では、可動支持部材48の質量も考慮したが、可動支持部材48を樹脂などの軽い材料で構成すれば、可動支持部材48の質量を無視できる。この場合、可動支持部材48に働く慣性力も無視できると考えられるので、前記の不自然な反力の発生を防止でき、ペダル装置12を軽量化することもできる。
また、第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47のばね定数のばらつき、各部の組み立て精度などにより、レバー40の変位量と反力の関係にもばらつきが生じる。しかし、本実施形態に係るペダル装置12においては、荷重センサ50によりレバー40の反力を検出して、反力の変化率が変化する点を検出することができるので、レバー40の現在の変位量が図22のどの範囲内にあることに相当するのかを確実に判定することができる。これにより、演奏者が受けるレバー40の操作感と、発生楽音に付与されるダンパー効果、発生楽音の音色、響き(音響効果)などを含む楽音要素の開始点及び終了点を同期させることができる。
なお、図2(B)に示すように、さらにキャプスタンCSを設けてもよい。キャプスタンCSは、円柱状のヘッド部CSaを有し、ヘッド部CSaの下面から下方へ、ヘッドCSaよりもやや径が小さいねじ部CSbが延設されている。レバー40の上面にねじ孔を設けておき、このねじ孔にねじ部CSbをねじ込んでキャプスタンCSを取り付ける。キャプスタンCSの外径を第2のばね46の内径よりも小さくしておき、第2のばね46の中心軸とキャプスタンCSの中心軸が一致するようにしている。すなわち、キャプスタンCSは第2のばね46の内側に配置されている。そして、レバー40が踏み込み操作されない状態においては、ヘッド部CSaの上端は、可動支持部材48から離間しており、可動支持部材48の下面に対向している。なお、レバー40が踏み込まれ、第3のばね47の付勢力及び可動支持部材48の自重からなる合力と第2のばね46の付勢力が同じになったとき、キャプスタンCSが可動支持部材48の下面に当接するように、キャプスタンCSの長さが調整されている。
このように構成した場合、可動支持部材48が可動支持部材下限ストッパ49から離れて上方へ変位しているとき、可動支持部材48はキャプスタンCSに支持され、第2のばね46はそれ以上圧縮されない。そのため、可動支持部材46が安定して上下に移動することができ、レバー40の反力が安定する。
一方、レバー40が踏み込まれ、第2のばね46の付勢力が第3のばね47の付勢力及び可動支持部材48の自重からなる合力を超える前に、キャプスタンCSが可動支持部材48の下面に当接するようにキャプスタンCSの長さを調整してもよい。このように構成した場合のレバー40の変位量に対する第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47の付勢力を図5(A)、図5(B)及び図5(C)に示す。また、レバー40の変位に伴いレバー40が発生する反力を図5(D)に示す。また、比較のために、キャプスタンCSを設けないときの各ばねの付勢力及びレバー40の反力を図5に破線で示す。この場合、レバー40の踏み込み開始からキャプスタンCSが可動支持部材48に当接するまでは、第1のばね45及び第2のばね46の付勢力が増加する(図5(A)及び(B)のA1)。キャプスタンCSが可動支持部材48に当接すると、第2のばね46はそれ以上圧縮されなくなるので、付勢力がそれ以上増加することはない(図5(B)のA2)。そのため、キャプスタンCSを介したレバー40による可動支持部材48を上方へ付勢する力及び第2のばね46の付勢力からなる合力が、第3のばね47の付勢力及び可動支持部材48の自重からなる合力より小さければ、可動支持部材48は可動支持部材下限ストッパ49に当接して静止している。一方、キャプスタンCSを介したレバー40による可動支持部材48を上方へ付勢する力及び第2のばね46の付勢力からなる合力が、第3のばね47の付勢力及び可動支持部材48の自重からなる合力を超えると、可動支持部材48は上方へ変位し始める。そして、第3のばね47が圧縮され、第3のばね47の付勢力が増加する(図5(C)のA2)。なお、第1のばね45も、レバー40の踏み込み量の増加に従って、付勢力が増加する(図5(A)のA2)。したがって、レバー40の反力は、キャプスタンCSが可動支持部材48に当接したときステップ状に増加する。そして、キャプスタンCSの可動支持部材48への当接前に比べて当接後の反力の変化率は小さくなる(図5(D))。
このように構成した場合、反力の変化率が大きい領域と小さい領域の境界において、レバー40の反力がステップ状に変化するので、演奏者は、前記境界を認識し易い。また、キャプスタンCSを設けない場合に比べて、反力の変化率が大きい領域を狭く(図5のA1)、反力の変化率が小さい領域を広く(図5のA2)することができる。
なお、この変形例においては、キャプスタンCSを第2のばね46の内側に配置したが、キャプスタンCSの上端が可動支持部48の下面に対向するような位置であればどこに配置してもよい。また、可動支持部材48側にキャプスタンCSを取り付け、キャプスタンCSのヘッド部CSaがレバー40の上面に対向するようにしてもよい。
また、上記第1実施形態においては、第1のばね45の上端をレバー40の後部上方のフレームFRに固定し、その下端をレバー40の後部上面に当接させるようにした。これに代えて、第1のばね45の下端をレバー40の前部下方のフレームFRに固定し、その上端をレバー40の前部下面に当接させるようにしてもよい。また、上記第1実施形態においては、第3のばね47は、その上端がレバー40の後部上方のフレームFRに固定され、その下端が可動支持部材48の凹部48aに侵入してその底面に固着されて支持されるようにした。これに代えて、可動支持部材48にばね支持部を設け、このばね支持部に引っ張りばねの上端が支持されるようにし、その下端が可動支持部材48の下方のフレームFRに固定されるようにしてもよい。
また、上記第1実施形態においては、レバー40を付勢する機構をレバー40の回転中心42の後方かつ上方に設けた。これに代えて、レバー40を付勢する機構を、上記第1実施形態とは上下を逆にした状態で、レバー40の回転中心42の前方かつ下方に構成してもよい。この場合、可動支持部材48は上方への変位が規制されるという点が上記第1実施形態とは異なる。このように構成しても、第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47がレバー40の回転中心42より前方の下面を上方へ付勢することができ、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。なお、この変形例では、可動支持部材48の自重は、上記第1実施形態とは逆に、可動支持部材48の変位を許容する方向に作用する。また、この場合も、可動支持部材48を軽い材料で構成すれば、その自重は無視される。
また、上記第1実施形態においては、可動支持部材48は、上下方向に移動可能とした。これに代えて、図6に示すように、レバー40に連動して揺動する可動支持部材48Aとしてもよい。可動支持部材48Aは、前後方向に延設された上板と、上板の左端又は右端から下方へ延設された側板からなる。可動支持部材48Aは前部にてレバー支持部41に支持され、回転中心42を中心として、後端部が上下方向に揺動可能となっている。なお、可動支持部材48Aは、フレームFRに固定された可動支持部材下限ストッパ49によって、後端部の下方への変位を規制される。レバー支持部41の後方のレバー40の上面に設けた凹部40aに、第1のばね45の下端が侵入してその底面に固着されて支持されている。可動支持部材48Aの上板の中間部には、上面から下面へ貫通した孔が設けられており、第1のばね45はこの孔を通って上端が上方のフレームFRに固着されている。なお、可動支持部材48Aに貫通孔を設けて第1のばね45を通すようにしたが、必ずしもこのように構成する必要はなく、第1のばね45が可動支持部材48Aの外側に設けられていてもよい。また、可動支持部材48Aの上板の後部の下面に設けた凹部48Aaには、第2のばね46の上端が侵入してその上底面に固着されており、第2のばね46の下端は、レバー40の後部の上面に当接している。そして、可動支持部材48Aの後部の上面には、第3のばね47の下端が当接しており、その上端は、上方のフレームFRに固着されている。このように構成しても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
また、上記第1実施形態及びその変形例においては、第2のばね46及び第3のばね47は圧縮ばねとした。しかしこれに代えて、図7に示すように第2のばね46A及び第3のばね47Aとして引っ張りばねを用いてもよい。この場合、第2のばね46A及び第3のばね47Aは、レバー40の回転中心42の前方かつ上方に設けられる。そして、可動支持部材48の凹部48aに第3のばね47Aの下端が侵入して、その底面に固着されて支持されるようにし、その上端が可動支持部材48の上方のフレームFRに固定されるようにする。また、第2のばね46Aの上端は、可動支持部材48の凹部48bに侵入して、その上底面に固着されて支持されるようにする。一方、第2のばね46の下端は、フック状に構成される。レバー40には、第2のばね46Aの下端のフックに係合するばね支持部40bが設けられる。第2のばね46Aの下端のフックはばね支持部40bに常に当接している。さらに、可動支持部材48はフレームFRに固定された可動支持部材上限ストッパ49Aによって上方への変位が規制される。このように構成しても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。なお、この変形例においても、可動支持部材48の自重は、上記第1実施形態とは逆に、可動支持部材48の変位を許容する方向に作用する。したがって、この場合には、第2のばね46Aによる引っ張りばね力を第3のばね47Aの引っ張りばね力よりも小さくして、レバー40の変位量が小さい状態(図4(D)のA1)では、可動支持部材48が下方へ変位しないようにする。また、この場合も、可動支持部材48を軽い材料で構成すれば、その自重は無視される。
c.第2実施形態
次に、本発明に係るペダル装置12の第2実施形態について詳しく説明する。図8は、本実施形態に係るペダル装置12の側面図である。レバー40、レバー支持部41、下限ストッパ43及び上限ストッパ44は、第1実施形態と同様に構成される。レバー40の回転中心42の後方であって、レバー40の後部上面に設けた凹部40cには、駆動ロッド52の下端が侵入してその底面に当接している。駆動ロッド52は長尺状部材で、レバー40の後部上方へ延設され、その上端は、第1可動支持部材53の下面に設けた凹部53aに侵入してその上底面に当接している。駆動ロッド52は図示しないガイド部材によって、上下方向にのみ移動可能となっている。
第1可動支持部材53は、板状部材で、図示しないガイド部材によって上下方向にのみ移動可能となっている。さらに、第1可動支持部材53は、フレームFRに固着された第1可動支持部材下限ストッパ54によって下方への変位が規制される。この第1可動支持部材下限ストッパ54も衝撃音の緩和のためにフェルトなどの衝撃吸収部材によって構成されている。また、第1可動支持部材53の下面には、ばね支持部55が設けられ、第1のばね56の上端が固着されて支持されている。第1のばね56の下端は、第1可動支持部材53の下方のフレームFRに固定されている。なお、第1のばね56は引っ張りばねである。また、第1可動支持部材53の上面に設けた凹部53bには、第2のばね57の下端が侵入して固着されて支持されている。なお、第2のばね57は圧縮ばねである。
第2のばね57の上方には、第2可動支持部材58が設けられている。第2可動支持部材58は、板状部材で、図示しないガイド部材によって上下方向にのみ移動可能となっている。さらに、第2可動支持部材58は、フレームFRに固定された第2可動支持部材下限ストッパ59によって下方への変位が規制される。この第2可動支持部材下限ストッパ59も衝撃音の緩和のためにフェルトなどの衝撃吸収部材によって構成されている。第2のばね57の上端は、第2可動支持部材58の下面に当接している。また、第2可動支持部材58の下面には、ばね支持部60が設けられ、第3のばね61の上端が固着されて支持されている。第3のばね61の下端は、第2可動支持部材58の下方のフレームFRに固定されている。なお、第3のばね61は引っ張りばねである。第1のばね56、第2のばね57及び第3のばね61のばね定数を比較すると、第1のばね56のばね定数が最も大きく、第3のばね61のばね定数は第1のばね56及び第2のばね57のばね定数に比べて十分に小さい。この場合も第1実施形態と同様に、第1乃至第3のばね56,57,61のばね定数の大小関係は本実施形態に限られず、目的とするレバー40の反力特性に応じて、変更が可能である。例えば、図22のA1領域とA2領域で反力の変化率の差が小さい場合は、第3のばね61のばね定数を第2のばね57のばね定数より大きくしてもよい。また、第1実施形態と同様に、荷重センサ50が第2可動支持部材58の下面に組み付けられ、変位量センサ51がフレームFRに組み付けられている。
次に、上記のように構成したペダル装置12の動作を説明する。レバー40を踏み込み操作しない状態では、第1のばね56によって、第1可動支持部材53が下方に付勢され、第1可動支持部材下限ストッパ54に当接している。これにより、駆動ロッド52を介してレバー40の後部が下方に付勢される。したがって、レバー40の後部下面が上限ストッパ44に当接してレバー40は静止し、図8の状態となっている。このとき、第2のばね57は、自然長となっており、レバー40に対する付勢力は「0」である。また、このとき、第2可動支持部材58は第3のばね61の付勢力及び第2可動支持部材58の自重によって、第2可動支持部材下限ストッパ59に当接している。なお、このとき、第2のばね57が若干圧縮され、駆動ロッド52を介してレバー40を付勢していてもよいが、この場合も第2のばね57の付勢力を第3のばね61の付勢力及び第2可動支持部材58の自重からなる合力よりも小さくし、第2可動支持部材58を第2可動支持部材下限ストッパ59に当接させる。
演奏者が、第1のばね56による付勢力に対抗してレバー40を踏み込むと、レバー40は、回転中心42を中心として、図8にて反時計回りに回転し始め、レバー40の後部が上方へ変位する。これにより、駆動ロッド52が第1可動支持部材53を上方へ変位させる。そのため、第1のばね56が伸長され、第1のばね56によるレバー40への付勢力が増加する(図4(A)のA1)。このとき、第3のばね61が第2可動支持部材58を下方へ付勢する付勢力及び第2可動支持部材58の自重からなる合力に対して、第2のばね57の付勢力が小さいときは、第2可動支持部材58は第2可動支持部材下限ストッパ59に当接したままとなっている。したがって、前記第1可動支持部材53の上方への変位により、第2のばね57も圧縮され始め、第2のばね57の付勢力も増加する(図4(B)のA1)。これにより、この操作範囲では、レバー40の反力及び反力の変化は第1のばね56及び第2のばね57によって発生する(図4(D)のA1)。
そして、第2のばね57の付勢力が、第3のばね61による第2可動支持部材58を下方向へ付勢する付勢力及び第2可動支持部材58の自重からなる合力を超えると、第2可動支持部材58は、上方へ移動する。第2可動支持部材58が上方へ移動開始するときのレバー40の踏み込み量が第1踏み込み量である。上述のとおり、第3のばね61のばね定数は第2のばね57に比べて十分に小さいので、レバー40の変位量が増すと、第3のばね61は伸長されて第3のばね61の付勢力は増加するが、第2のばね57は、それ以上ほとんど圧縮されず、第2のばね57の付勢力はほとんど増加しない(図4(B)のA2及び図4(C)のA2)。したがって、この操作範囲では、レバー40の反力は第1のばね56、第2のばね57及び第3のばね61によって発生する。反力の変化は、厳密にいえば、第1のばね56、第2のばね57及び第3のばね61によって発生する。しかし、第3のばね61のばね定数は第2のばね57に比べて十分に小さいので、第2のばね57はほとんど圧縮されず付勢力がほとんど増加しない。したがって、反力の変化は、第1のばね56及び第3のばね61によって発生するとみなすことができる(図4(D)のA2)。
そして、レバー40の中間部下面が下限ストッパ43に当接して、レバー40の前部の下方への変位が規制される。レバー40の操作を解除すると、第1のばね56、第2のばね57及び第3のばね61の付勢力によって、上述の踏み込みの往行程とは逆の順に動作する。すなわち、レバー40は回転中心42を中心として、図8にて時計回りに回転し、レバー40の後部下面が上限ストッパ44に当接して元の状態(図8)に復帰する。また、荷重センサ50及び変位量センサ51は第1実施形態と同様に動作し、ダンパー効果及び発生楽音の楽音要素が上記第1実施形態と同様に制御される。なお、上記説明では、第2可動支持部材58の質量も考慮したが、第2可動支持部材58を樹脂などの軽い材料で構成すれば、第2可動支持部材58の質量を無視できる。
上記のように構成した本実施形態に係るペダル装置においても、第1実施形態と同様に、図22の各操作範囲に相当する範囲に応じて、第1のばね56、第2のばね57及び第3のばね61による付勢力が変化する。これにより、図22に破線で示したようなアコースティックピアノのペダルの踏み込み開始から終了までのレバーの踏み込み量と演奏者がペダルから受ける反力の関係に近い特性(図4(D))を実現することができる。
また、第1実施形態と同様に、本実施形態においても、レバー40を大きく踏み込んだ後、踏み込み量を急激に減少させた場合、及びレバー40の踏み込み量を周期的に変化させた場合、慣性力とばね力の協働により、第2可動支持部材58が一時的に振動することが考えられる。さらに、第2可動支持部材58が第2可動支持部材下限ストッパ59に衝突することも考えられる。しかし、本実施形態においても、第2のばね57と第3のばね61のばね力が、第2可動支持部材58に対して、相反する方向に働くので、前記振動を抑制または素早く収束させることができる。さらに、レバー40に作用するばね力を、第1のばね56によるばね力と、第2のばね57及び第3のばね61によるばね力とに分担させているので、第2のばね57及び第3のばね61によるばね力は小さい。そのため、前記振動による不自然な反力を小さくできる。したがって、レバー40の反力を安定させることができる。
なお、上記説明では、第2可動支持部材58の質量も考慮したが、第2可動支持部材58を樹脂などの軽い材料で構成すれば、第2可動支持部材58の質量を無視できる。この場合、第2可動支持部材58に働く慣性力も無視できると考えられるので、前記の不自然な反力の発生を防止でき、ペダル装置12を軽量化することもできる。
また、荷重センサ50及び変位量センサ51は第1実施形態と同様に動作するので、演奏者が受けるレバー40の操作感と、発生楽音に付与されるダンパー効果、発生楽音の音色、響き(音響効果)などを含む楽音要素の開始点及び終了点を同期させることができる。
なお、第1可動支持部材53と第2可動支持部材58の間に上記第1実施形態の変形例と同様なキャプスタンCSを設けてもよい。このように構成しても、上記第1実施形態の変形例と同様の効果が得られる。
また、上記第2実施形態においては、第1のばね56の上端が第1可動支持部材53に設けたばね支持部55に支持されるようにし、その下端が第1可動支持部材53の下方のフレームFRに固定されるようにした。これに代えて、圧縮ばねの上端が第1可動支持部材53の上方のフレームFRに固定され、その下端が第1可動支持部材53の上面に当接するようにしてもよい。また、上記第2実施形態においては、第2のばね57の下端が第1可動支持部材53の凹部53bに侵入して、その上底面に固着されて支持されるようにした。これに代えて、第2可動支持部材58の下面に凹部を設け、その上底面に第2のばね57の上端が固着されて支持され、第2のばね57の下端が第1可動支持部材53の凹部53bに侵入して当接するようにしてもよい。さらに、上記第2実施形態においては、第3のばね61の上端が第2可動支持部材58のばね支持部60に支持され、その下端が第2可動支持部材58の下方のフレームFRに固定されるようにした。これに代えて、圧縮ばねの上端が第2可動支持部材58の上方のフレームFRに固定され、その下端が第1可動支持部材58の上面に当接するようにしてもよい。
また、上記第2実施形態においては、レバー40を付勢する機構をレバー40の回転中心42の後方かつ上方に設けた。これに代えて、レバー40を付勢する機構を上記第2実施形態とは上下を逆にした状態で、レバー40の回転中心42の前方かつ下方に構成してもよい。この場合、第1可動支持部材53及び第2可動支持部材58は上方への変位が規制されるという点が上記第2実施形態とは異なる。このように構成しても、第1のばね56、第2のばね57及び第3のばね61がレバー40の回転中心42より前方の下面を上方へ付勢することができ、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。なお、この変形例においては、第2可動支持部材58の自重は、上記第2実施形態とは逆に、第2可動支持部材58の変位を許容する方向に作用する。また、この場合も、第2可動支持部材58を軽い材料で構成すれば、その自重は無視される。
また、上記第2実施形態においては、第1可動支持部材53及び第2可動支持部材58は、上下方向にのみ移動可能とした。これに代えて、図9に示すように、レバー40に連動して揺動する第1可動支持部材53A及び第2可動支持部材58Aとしてもよい。第1可動支持部材53A及び第2可動支持部材58Aは、いずれも前後方向に延設された板状の部材である。第1可動支持部材53A及び第2可動支持部材58Aはそれぞれの後部にて支持部62に支持され、回転中心63を中心として、それぞれの前端部が上下方向に揺動可能となっている。第2可動支持部材58Aは第1可動支持部材53Aの上側に位置する。第2可動支持部材58Aは、フレームFRに固定された第2可動支持部材下限ストッパ59によって、前端部の下方への変位を規制される。駆動ロッド52の上端は第1可動支持部材53Aの前部の下面に設けた凹部53Aaに当接している。第1可動支持部材53Aの前部の上面側には、凹部53Abが設けられ、第1のばね56Aの下端が凹部53Abに侵入して固着されて支持され、第1のばね56Aの上端は、上方のフレームFRに固着されて支持されている。なお、第1のばね56Aは圧縮ばねである。第1のばね56Aは、駆動ロッド52を介して、レバー40の前端を上方へ付勢している。また、第1可動支持部材53Aの中間部の上面には、凹部53Acが設けられ、第2のばね57Aの下端が凹部53Acに侵入して固着されており、第2のばね57Aの上端は、第2可動支持部材58Aの中間部の下面に当接している。そして、第2可動支持部材58Aの中間部の上面には、第3のばね61Aの下端が固着されており、その上端は、上方のフレームFRに固着されている。この場合も、図4(D)のA1の操作範囲において、第2可動支持部材58Aは第3のばね61Aの付勢力及び第2可動支持部材58Aの自重によって、第2可動支持部材下限ストッパ59Aに当接して静止している。このように構成しても、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。なお、この場合も、第2のばね57Aによるばね力を第3のばね61Aによるばね力よりも小さくして、レバー40の変位量が小さい状態(図4(D)のA1)では、第2可動支持部材58Aが上方へ変位しないようにする。また、この場合も、第2可動支持部材58Aを軽い材料で構成すれば、その自重は無視される。
なお、第1可動支持部材53Aと第2可動支持部材58Aの間に上記第1実施形態の変形例と同様なキャプスタンCSを設けてもよい。このように構成しても、上記第1実施形の変形例と同様の効果が得られる。
e.第3実施形態
次に、本発明にかかるペダル装置12の第3実施形態について詳しく説明する。図10は、本実施形態にかかるペダル装置12の側面図である。レバー40及び下限ストッパ43は、第1実施形態と同様に構成される。レバー40は、後端部にてフレームFRに設けられたレバー支持部80に支持され、回転中心81を中心として、前端部を上下方向に揺動可能としている。レバー40の中間部下方には、第1のばね82の下端がフレームFRに固定されており、その上端がレバー40の下面に設けた凹部40eに侵入してその上底面に当接し、レバー40の前部を上方へ付勢している。なお、第1のばね82は圧縮ばねである。
また、レバー40の中間部上方には、第2のばね83の上端がフレームFRに固定されており、その下端が第2のばね83とレバー40の上方に配置した押圧部材84の上面に設けた凹部84aに侵入してその底面に組み付けられている。なお、第2のばね83は圧縮ばねである。押圧部材84は、本発明の可動支持部材を構成するもので、上部が円板状であり、中間部から下部が上部よりも直径の小さい円柱状となっている。また、押圧部材84の下端は半球状に加工されており、可動支持部材85に設けられて、その上面から下面へ貫通する貫通穴85aを通って、レバー40の上面に当接する。押圧部材84の上側の円板部の下面は、可動支持部材85の上面に常に当接している。また、押圧部材84は、図示しないガイド部材によって上下方向にのみ移動可能となっており、押圧部材上限ストッパ86によって上方向の動きが規制される。なお、本実施形態では、可動支持部材85に貫通孔85aを設けて、押圧部材84を貫通孔85aに通すようにしたが、必ずしもこのように構成する必要はなく、押圧部材84は可動支持部材85の外側に設けられていてもよい。
可動支持部材85は板状部材で、図示しないガイド部材によって上下方向にのみ移動可能となっている。さらに、可動支持部材85は、可動支持部材上限ストッパ87及び可動支持部材下限ストッパ88によって上下方向の動きが一定の範囲内に規制される。これらの可動支持部材上限ストッパ87及び可動支持部材下限ストッパ88も衝撃音の緩和のためにフェルトなどの衝撃吸収材によって構成されている。可動支持部材85の上面には、ばね支持部89が設けられ、第3のばね90の下端が固着されて支持されている。第3のばね90の上端は、可動支持部材85の上方のフレームFRに固定されている。なお、第3のばね90は引っ張りばねである。第1のばね82、第2のばね83及び第3のばね90のばね定数を比較すると、第1のばね82のばね定数が最も小さく、第2のばね83及び第3のばね90のばね定数は、第1のばね82のばね定数に比べて大きい。また、第3のばね90のばね定数は第2のばね83のばね定数に比べてやや大きい。この場合も第1実施形態と同様に、第1乃至第3のばね82,83,90のばね定数の大小関係は本実施形態に限られず、目的とするレバー40の反力特性に応じて、変更が可能である。例えば、図22のA1領域とA2領域で反力の変化率の差が小さい場合は、第2のばね83のばね定数及び第3のばね90のばね定数を小さくするとよい。可動支持部材85の上面であって、押圧部材84が当接する部分には、第1実施形態と同様に、荷重センサ50が組み付けられている。また、第1実施形態と同様に、変位量センサ51がフレームFRに組み付けられている。
次に、上記のように構成したペダル装置12の動作を説明する。図11(A)、図11(B)及び図11(C)は、レバー40の変位量に対する第1のばね82、第2のばね83及び第3のばね90の付勢力を表した図であり、図11(D)は、レバー40の変位に伴いレバー40が発生する反力を表した図である。なお、図11(A)及び図11(C)は、レバー40の踏み込みに対抗する方向の付勢力を正とし、図11(B)はレバー40の踏み込みを助勢する方向の付勢力を正として示す。レバー40を踏み込み操作しない状態では、第1のばね82による上方への付勢力によって、レバー40は回転中心81を中心として、図10にて時計回りに回転し、押圧部材84を押し上げ、押圧部材84の上面が押圧部材上限ストッパ86に当接してレバー40は静止し、図10の状態となっている。また、可動支持部材85は可動支持部材上限ストッパ87に当接するとともに、押圧部材84にも当接している。このとき、第1のばね82及び第2のばね83はいずれも圧縮された状態にある。
演奏者が、第1のばね82による付勢力に対抗してレバー40を踏み込むと、レバー40は、回転中心81を中心として、図10にて反時計回りに回転し始め、レバー40の前部が下方へ変位する。このとき、第1のばね82は圧縮され、第1のばね82の付勢力は増加する(図11(A)のA1)。一方、第2のばね83は、圧縮状態から解放されていくので、第2のばね83の付勢力は減少する(図11(B)のA1)。ここで、第1のばね82がレバー40を付勢する方向は、踏み込み操作に対抗する方向であるが、第2のばね83がレバー40を付勢する方向は、踏み込み操作を助勢する方向である。
第2のばね83は、レバー40を下方に付勢するとともに、可動支持部材85を下方へ付勢する。そのため、第3のばね90が伸長されて付勢力が増加する(図11(C)のA1)。なお、レバー40の踏み込み開始時における第2のばね83及び第3のばね90の付勢力を調整して、この操作範囲(図11のA1)において第3のばね90の付勢力が第2のばね83の付勢力よりも小さくなるようにしている。したがって、レバー40の反力は第1のばね82の付勢力に第3のばね90の付勢力を加えたものから、第2のばね83の付勢力を差し引いたものとなり、反力の変化は、第1のばね82、第2のばね83及び第3のばね90によって発生する(図11(D)のA1)。
さらにレバー40の変位量が増すと、第1のばね82による付勢力がさらに増加する(図11(A)のA2)。また、可動支持部材85の下面が可動支持部材下限ストッパ88に当接して、可動支持部材85の下方向への変位が規制され、押圧部材84の先端がレバー40の上面から離れる。可動支持部材85の下方向への変位が規制されるときのレバー40の踏み込み量が第1踏み込み量である。したがって、この操作範囲では、レバー40の踏み込み操作に対抗する反力は、第1のばね82のみによって発生し、反力の変化も第1のばね82のみによって発生する(図11(D)のA2)。
そして、レバー40の中間部下面が下限ストッパ43に当接して、レバー40の前部の下方への変位が規制される。レバー40の操作を解除すると、第1のばね82、第2のばね83及び第3のばね90の付勢力によって、往行程とは逆順に動作する。すなわち、レバー40は回転中心81を中心として、図10にて時計回りに回転して、押圧部材84を上方へ押し上げ、押圧部材84の上面が押圧部材上限ストッパ86に当接して静止し、元の状態(図10)に復帰する。また、荷重センサ50及び踏み込み量センサ51は第1実施形態と同様に動作する。
上記のように構成した本実施形態に係るペダル装置においても、図22に破線で示したようなアコースティックピアノのペダルの踏み込み開始から終了までのレバーの変位量と演奏者がペダルから受ける反力の関係に近い特性を実現することができる。すなわち、図22のA0及びA1に相当する操作範囲(図11(D)のA1)においては、第1のばね82の付勢力が第2のばね83の付勢力によって一部打ち消されるようになっているが、その第2のばね83の付勢力は第3のばね90によって一部打ち消されている。このとき、第1乃至第3のばね82,83,90は並列に接続されており、この合成ばねのばね定数は、第1のばね82のばね定数よりも大きい。
そして、図22のA2に相当する操作範囲(図11(D)のA2)では、第1のばね82による付勢力は、第2のばね83及び第3のばね90によって打ち消されないようになっている。したがって、図22のA0及びA1に相当する操作範囲(図11(D)のA1)に比べて、図22のA2の範囲に相当する操作範囲(図11(D)のA2)の反力の変化率を小さくすることができる。したがって、本実施形態に係るペダル装置12において、図22のようなアコースティックピアノの特性を実現できる。
また、レバー40の踏み込み量を急激に減少させた場合及びレバー40の踏み込み量を周期的に変化させた場合、レバー40が押圧部材84に衝突することがある。レバー40と押圧部材84の衝突により生じた衝撃は、第1のばね82及び第2のばね83によって吸収される。したがって、レバー40の反力を安定させることができる。
また、荷重センサ50及び変位量センサ51も第1実施形態と同様に動作するので、演奏者が受けるレバー40の操作感と、発生楽音に付与されるダンパー効果、発生楽音の音色、響き(音響効果)などを含む楽音要素の開始点及び終了点を同期させることができる。
なお、上記第3実施形態においては、第1のばね82の下端がレバー40の中間部下方のフレームFRに固定され、その上端がレバー40の中間部下面に設けた凹部40eに侵入し、その底面に当接するようにした。これに代えて、レバー40の中間部上面にばね支持部を設け、このばね支持部に引っ張りばねの下端が支持され、その上端がレバー40の中間部の上方のフレームFRに固定されるようにしてもよい。また、上記第3実施形態においては、第3のばね90の下端が可動支持部材85のばね支持部89に支持され、その上端がフレームFRに固定されるようにした。これに代えて、可動支持部材85の下面に凹部を設け、その上底面に圧縮ばねの上端が固着して支持され、その下端が可動支持部材85の下方のフレームFRに固定されるようにしてもよい。
また、上記第3実施形態においては、レバー40を付勢する機構をレバー40の回転中心81の前方に設けた。これに代えて、レバー40を第1実施形態と同様にレバー40の中間部で支持するようにして、その支点の後方にレバー40を付勢する機構を構成してもよい。この場合、第1のばね82は、レバー40の支点の後方かつ上方に上記第3実施形態とは上下を逆にした状態で設けられる。第2のばね83、第3のばね90、押圧部材84、第2可動支持部材85及びこれらのストッパ類は、レバー40の支点の後方かつ下方に上記第3実施形態とは上下を逆にした状態で設けられる。この場合、押圧部材84は下方への変位が規制され、可動支持部材85は上方への変位が規制されるという点が上記第3実施形態とは異なる。このように構成しても、第1のばね82及び第3のばね90がレバー40の踏み込みに対抗する方向のばね力を発生し、第2のばね83がレバー40の踏み込みを助勢するばね力を発生するので、上記第3実施形態と同様の効果が得られる。
f.第4実施形態
次に、本発明に係るペダル装置12の第4実施形態について詳しく説明する。図12は本実施形態に係る電子楽器のペダル装置の側面図である。本実施形態は、図2に示す第1実施形態とほぼ同様の構成であるが、第1実施形態と異なり、レバー40が踏み込み操作されない状態において、第2のばね46の下端をレバー40から離間させている。
次に、上記のように構成したペダル装置12の動作を説明する。図13は、レバー40の変位並びに第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47の圧縮状態を表した図である。また図14(A)、図14(B)及び図14(C)は、レバー40の変位量に対する第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47の付勢力を表した図であり、図14(D)は、レバー40の変位に伴いレバー40が発生する反力を表した図である。レバー40を踏み込み操作しない状態では、第1のばね45によって、レバー40の後部が下方に付勢される。したがって、レバー40の後部下面が上限ストッパ44に当接してレバー40は静止し、図13(A)の状態となっている。このとき、可動支持部材48は第3のばね47の付勢力によって、可動支持部材下限ストッパ49に当接して静止している。
演奏者が、第1のばね45による付勢力に対抗してレバー40を踏み込むと、レバー40は、回転中心42を中心として、図13(A)にて反時計回りに回転し始め、レバー40の後部が上方へ変位する。これにより、第1のばね45が圧縮され、第1のばね45の付勢力が増加する(図14(A)のA0)。第2のばね46の下端は、この操作範囲(図13(A)から図13(B))では、レバー40に当接しない。したがって、この操作範囲では、レバー40の反力及び反力の変化は、第1のばね45によって発生する(図14(D)のA0)。
レバー40がさらに踏み込まれて変位量が増すと、第1のばね45によるレバー40への付勢力がさらに増加する(図14(A)のA1)。一方、第2のばね46の下端がレバー40の上面に当接する。第2のばね46の下端がレバー40の上面に当接するときのレバー40の踏み込み量が第2踏み込み量である。そして、第3のばね47が可動支持部材48を下方へ付勢する付勢力及び可動支持部材48の自重からなる合力に対して、第2のばね46の付勢力が小さいときは、可動支持部材48は可動支持部材下限ストッパ49に当接したままとなっている。したがって、前記レバー40の回転により、第2のばね46も圧縮され始め、第2のばね46の付勢力が増加する(図14(B)のA1)。これにより、この操作範囲(図13(B)から図13(C)の間)では、レバー40の反力及び反力の変化は第1のばね45及び第2のばね46によって発生する(図14(D)のA1)。
さらに、レバー40の変位量が増すと、第1のばね45の付勢力がさらに増加する。(図14(A)のA2)。そして、第2のばね46の付勢力が、第3のばね47が可動支持部材48を下方へ付勢する付勢力及び可動支持部材48の自重からなる合力を超えると、可動支持部材48は、可動支持部材下限ストッパ49から離れて、上方へ移動する。可動支持部材48が上方へ移動開始するときのレバー40の踏み込み量が第1踏み込み量である。第1実施形態と同様に、第3のばね47のばね定数は第2のばね46に比べて十分に小さいので、レバー40の変位量が増すと、第3のばね47は圧縮されて第3のばね47の付勢力は増加するが、第2のばね46はそれ以上ほとんど圧縮されず、第2のばね46の付勢力はほとんど増加しない(図14(B)及び(C)のA2)。したがって、この操作範囲(図13(C)から図13(D)の間)では、レバー40の反力は第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47によって発生する。反力の変化は、厳密にいえば、第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47によって発生する。しかし、第3のばね47のばね定数は第2のばね46に比べて十分に小さいので、第2のばね46はほとんど圧縮されず付勢力がほとんど増加しない。したがって、反力の変化は、第1のばね45及び第3のばね47によって発生するとみなすことができる(図14(D)のA2)。
そして、レバー40の中間部下面が下限ストッパ43に当接して、レバー40の前部の下方への変位が規制される。レバー40の操作を解除すると、第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47の付勢力によって、上述の踏み込みの往行程とは逆の順に動作する。すなわち、レバー40は回転中心42を中心として、図13(D)にて時計回りに回転し、レバー40の後部下面が上限ストッパ44に当接して元の状態(図13(A))に復帰する。また、荷重センサ50及び変位量センサ51は第1実施形態と同様に動作し、ダンパー効果及び発生楽音の楽音要素が上記第1実施形態と同様に制御される。なお、上記説明では、可動支持部材48の質量も考慮したが、可動支持部材48を樹脂などの軽い材料で構成すれば、可動支持部材48の質量を無視できる。
上記のように構成した本実施形態に係るペダル装置においては、図22に実線で示したようなアコースティックピアノのペダルの踏み込み開始から終了までのレバーの変位量と演奏者がペダルから受ける反力の関係に近い特性(図14(D))を実現することができる。すなわち、図22のA1に相当する操作範囲(図14(D)のA0)においては、第1のばね45によるレバー40への付勢力が変化し、図22のA1に相当する操作範囲(図14(D)のA1)においては、第1のばね45に加えて、第2のばね46によるレバー40への付勢力が変化するようになっている。したがって、図22のA0に相当する操作範囲(図14(D)のA0)に比べて、図22のA1の範囲に相当する操作範囲(図14(D)のA1)の反力の変化率を大きくすることができる。そして、図22のA2に相当する操作範囲(図14(D)のA2)では、第1のばね45による付勢力に加え、第3のばね47による付勢力が変化するようになっている。第3のばね47のばね定数は、第2のばね46のばね定数よりも十分に小さいから、図22のA1に相当する操作範囲(図14(D)のA1)に比べて、図22のA2の範囲に相当する操作範囲(図14(D)のA2)の反力の変化率を小さくすることができる。また、第3のばね47のばね定数が第2のばね46のばね定数よりも十分に小さくなく、又は第2のばね46のばね定数より大きくても、図22のA2の範囲に相当する操作範囲(図14(D)のA2)では、第2のばね46と第3のばね47が直列に接続されるため、第2のばね46及び第3のばね47の合成ばねのばね力は、第2のばね46によるばね力よりも小さくなる。そのため、この場合も、前記操作範囲(図14(D)のA2)の反力の変化率を図14(D)のA1の操作範囲の反力よりも小さくすることができる。したがって、本実施形態に係るペダル装置12において、図22に実線で示したようなアコースティックピアノの特性を実現できる。
また、第1実施形態と同様に、本実施形態においても、レバー40を大きく踏み込んだ後、踏み込み量を急激に減少させた場合、及びレバー40の踏み込み量を周期的に変化させた場合、可動支持部材48に働く慣性力とばね力の協働により、可動支持部材48が一時的に振動することが考えられる。さらに、可動支持部材48が可動支持部材下限ストッパ49に衝突し、可動支持部材48が振動することも考えられる。この振動は、第2のばね46を介してレバー40に伝わり、演奏者にとって不自然な反力となる。しかし、上記のように構成したペダル装置12においては、第2のばね46と第3のばね47のばね力が、可動支持部材48に対して、相反する方向に働くので、前記振動を抑制または素早く収束させることができる。さらに、レバー40に作用するばね力を、第1のばね45によるばね力と、第2のばね46及び第3のばね47によるばね力とに分担させているので、第2のばね46を介してレバー40に伝わる不自然な反力を低減することもできる。その結果、レバー40の反力を安定させることができる。
なお、上記説明では、可動支持部材48の質量も考慮したが、可動支持部材48を樹脂などの軽い材料で構成すれば、可動支持部材48の質量を無視できる。この場合、可動支持部材48に働く慣性力も無視できると考えられるので、前記の不自然な反力の発生を防止でき、ペダル装置12を軽量化することもできる。
また、荷重センサ50及び変位量センサ51は第1実施形態と同様に動作するので、演奏者が受けるレバー40の操作感と、発生楽音に付与されるダンパー効果、発生楽音の音色、響き(音響効果)などを含む楽音要素の開始点及び終了点を同期させることができる。
なお、可動支持部材48とレバー40の間に上記第1実施形態の変形例と同様なキャプスタンCSを設けてもよい。このように構成した場合、第1実施形態の変形例と同様にレバー40の反力を安定化できる。さらに、第2のばね46の付勢力が第3のばね47の付勢力及び可動支持部材48の自重からなる合力を超える前に、キャプスタンCSが可動支持部材48に当接するように構成してもよい。このように構成した場合のレバー40の変位量に対する第1のばね45、第2のばね46及び第3のばね47の付勢力を図15(A)、図15(B)及び図15(C)に示す。また、レバー40の変位に伴いレバー40が発生する反力を図15(D)に示す。また、比較のために、キャプスタンCSを設けないときの各ばねの付勢力及びレバー40の反力を図15に破線で示す。レバー40の踏み込み開始から第2のばね46がレバー40に当接するまでは、第1のばね45の付勢力のみが増加する(図15(A)のA0)。第2のばね46がレバー40に当接したときからキャプスタンCSが可動支持部材48に当接するときまでは、第1のばね45及び第2のばね46の付勢力が増加する(図15(A)のA1及び図15(B)のA1)。キャプスタンCSが可動支持部材48に当接して、さらに踏み込み量が増加すると、その増加に従って第1のばね45及び第3のばね47の付勢力が増加し、第2のばね46の付勢力はそれ以上増加しない(図15(A)乃至(C)のA2)。このように構成すると、反力の変化率が大きい領域と小さい領域の境界において、レバー40の反力がステップ状に変化するので、演奏者は、前記境界を認識し易い。また、キャプスタンCSを設けない場合に比べて、反力の変化率が大きい領域を狭く(図15のA1)、反力の変化率が小さい領域を広く(図15のA2)することができる。
また、第1実施形態の変形例と同様に、第1乃至第3のばね45,46,47の取り付け位置を変更してもよい。また、図16に示すように、可動支持部材48をレバー40に連動して揺動する可動支持部材48Aとしてもよい。図16の変形例は、図6に示す第1実施形態の変形例において、レバー40が踏み込み操作されない状態の第2のばね46の下端をレバー40の上面から離間させたものである。また、図17に示すように、引っ張りばねを用いてもよい。図17の変形例は、図7に示す第1実施形態の変形例において、レバー40が踏み込み操作されない状態の第2のばね46Aの下端を、レバー40に設けたばね支持部40bから離間させたものである。これらのように構成しても、上記第4実施形態と同様の効果が得られる。
g.第5実施形態
次に、本発明にかかるペダル装置12の第5実施形態について詳しく説明する。図18は、本実施形態にかかるペダル装置12の側面図である。本実施形態は、図8に示す第2実施形態とほぼ同様の構成であるが、第2実施形態と異なり、レバー40が踏み込み操作されない状態において、第2のばね57の上端を第2可動支持部材58から離間させている。
次に、上記のように構成したペダル装置12の動作を説明する。レバー40を踏み込み操作しない状態では、第1のばね56によって、第1可動支持部材53が下方に付勢され、第1可動支持部材下限ストッパ54に当接している。これにより、駆動ロッド52を介してレバー40の後部が下方に付勢される。したがって、レバー40の後部下面が上限ストッパ44に当接してレバー40は静止し、図18の状態となっている。このとき、第2可動支持部材58は第3のばね61の付勢力及び第2可動支持部材58の自重によって、第2可動支持部材下限ストッパ59に当接している。
演奏者が、第1のばね56による付勢力に対抗してレバー40を踏み込むと、レバー40は、回転中心42を中心として、図18にて反時計回りに回転し始め、レバー40の後部が上方へ変位する。これにより、駆動ロッド52が第1可動支持部材53を上方へ変位させる。そのため、第1のばね56が伸長され、第1のばね56によるレバー40への付勢力が増加する(図14(A)のA0)。このとき、第2のばね57の上端は、第2可動支持部材58の下面から離間している。したがって、この操作範囲では、レバー40の反力および反力の変化は、第1のばね56によって発生する(図14(D)のA0)。
レバー40がさらに踏み込まれて変位量が増すと、第1のばね56によるレバー40への付勢力がさらに増加する(図14(A)のA1)。一方、第2のばね57の上端が第2可動支持部材58の下面に当接する。第2のばね57の上端が第2可動支持部材58の下面に当接するときのレバー40の踏み込み量が第2踏み込み量である。そして、第3のばね61が第2可動支持部材58を下方へ付勢する付勢力及び第2可動支持部材58の自重からなる合力に対して、第2のばね57の付勢力が小さいときは、第2可動支持部材58は第2可動支持部材下限ストッパ59に当接したままとなっている。したがって、前記第1可動支持部材53の上方への変位により、第2のばね57も圧縮され始め、第2のばね57の付勢力も増加する(図14(B)のA1)。これにより、この操作範囲では、レバー40の反力及び反力の変化は第1のばね56及び第2のばね57によって発生する(図14(D)のA1)。
さらにレバー40の変位量が増すと、第1のばね56及び第2のばね57の付勢力がさらに増加する(図14(A)及び(B)のA1)。そして、第2のばね57の付勢力が、第3のばね61による第2可動支持部材58を下方向へ付勢する付勢力及び第2可動支持部材58の自重からなる合力を超えると、第2可動支持部材58は、上方へ移動する。第2可動支持部材58が上方へ移動開始するときのレバー40の踏み込み量が第1踏み込み量である。第2実施形態と同様に、第3のばね61のばね定数は第2のばね57に比べて十分に小さいので、レバー40の変位量が増すと、第3のばね61は伸長されて第3のばね61の付勢力は増加するが、第2のばね57はほとんどそれ以上圧縮されず、第2のばね57の付勢力はほとんど増加しない(図14(B)及び(C)のA2)。したがって、この操作範囲では、レバー40の反力は第1のばね56、第2のばね57及び第3のばね61によって発生する。反力の変化は、厳密にいえば、第1のばね56、第2のばね57及び第3のばね61によって発生する。しかし、第3のばね61のばね定数は第2のばね57に比べて十分に小さいので、第2のばね57はほとんど圧縮されず付勢力がほとんど増加しない。したがって、反力の変化は、第1のばね61及び第3のばね57によって発生するとみなすことができる(図14(D)のA2)。したがって、この場合も、前記操作範囲(図4(D)のA2)の反力の変化率を図4(D)のA1の操作範囲の反力よりも小さくすることができる。また、第3のばね61のばね定数が第2のばね57のばね定数よりも十分に小さくなく、又は第2のばね57のばね定数より大きくても、図22のA2の範囲に相当する操作範囲(図14(D)のA2)では、第2のばね57と第3のばね61が直列に接続されるため、第2のばね57及び第3のばね61の合成ばねのばね定数は、第2のばね57によるばね定数よりも小さくなる。そのため、この場合も、前記操作範囲(図14(D)のA2)の反力の変化率を図14(D)のA1の操作範囲の反力よりも小さくすることができる。したがって、本実施形態に係るペダル装置12において、図22に実線で示したようなアコースティックピアノの特性を実現できる。
そして、レバー40の中間部下面が下限ストッパ43に当接して、レバー40の前部の下方への変位が規制される。レバー40の操作を解除すると、第1のばね56、第2のばね57及び第3のばね61の付勢力によって、上述の踏み込みの往行程とは逆の順に動作する。すなわち、レバー40は回転中心42を中心として、図18にて時計回りに回転し、レバー40の後部下面が上限ストッパ44に当接して元の状態(図18)に復帰する。また、荷重センサ50及び変位量センサ51は第1実施形態と同様に動作し、ダンパー効果及び発生楽音の楽音要素が上記第1実施形態と同様に制御される。なお、上記説明では、第2可動支持部材58の質量も考慮したが、第2可動支持部材58を樹脂などの軽い材料で構成すれば、第2可動支持部材58の質量を無視できる。
上記のように構成した本実施形態に係るペダル装置においても、第4実施形態と同様に、図22の各操作範囲に相当する範囲に応じて、第1のばね56、第2のばね57及び第3のばね61による付勢力が変化する。これにより、図22に実線で示したようなアコースティックピアノのペダルの踏み込み開始から終了までのレバーの踏み込み量と演奏者がペダルから受ける反力の関係に近い特性(図14(D))を実現することができる。
また、第2実施形態と同様に、本実施形態においても、レバー40を大きく踏み込んだ後、踏み込み量を急激に減少させた場合、及びレバー40の踏み込み量を周期的に変化させた場合、慣性力とばね力の協働により、第2可動支持部材58が一時的に振動することが考えられる。さらに、第2可動支持部材58が第2可動支持部材下限ストッパ59に衝突し、第2可動支持部材が振動することも考えられる。しかし、本実施形態においても、第2のばね57と第3のばね61のばね力が、第2可動支持部材58に対して、相反する方向に働くので、前記振動を抑制または素早く収束させることができる。さらに、レバー40に作用するばね力を、第1のばね56によるばね力と、第2のばね57及び第3のばね61によるばね力とに分担させているので、第2のばね57及び第3のばね61によるばね力は小さい。そのため、前記振動による不自然なレバー反力を小さくすることができる。したがって、レバー40の反力を安定させることができる。
なお、上記説明では、第2可動支持部材58の質量も考慮したが、第2可動支持部材58を樹脂などの軽い材料で構成すれば、第2可動支持部材58の質量を無視できる。この場合、第2可動支持部材58に働く慣性力も無視できると考えられるので、前記の不自然な反力の発生を防止でき、ペダル装置12を軽量化することもできる。
また、荷重センサ50及び変位量センサ51は第1実施形態と同様に動作するので、演奏者が受けるレバー40の操作感と、発生楽音に付与されるダンパー効果、発生楽音の音色、響き(音響効果)などを含む楽音要素の開始点及び終了点を同期させることができる。
なお、第1可動支持部材53と第2可動支持部材58の間に上記第1実施形態の変形例と同様なキャプスタンCSを設けてもよい。このように構成しても、上記第1実施形の変形例と同様の効果が得られる。
また、第2実施形態の変形例と同様に、第1乃至第3のばね56,57,61の取り付け位置を変更してもよい。また、図19に示すように、第1可動支持部材53及び第2可動支持部材58をレバー40に連動して揺動する第1可動支持部材53A及び第2可動支持部材58Aとしてもよい。図19の変形例は、図6に示す第2実施形態の変形例において、レバー40が踏み込み操作されない状態の第2のばね57の上端を第1可動支持部材53Aの上面から離間させたものである。これらのように構成しても、上記第5実施形態と同様の効果が得られる。
i.第6実施形態
次に、本発明にかかるペダル装置12の第6実施形態について詳しく説明する。図20は、本実施形態にかかるペダル装置12の側面図である。本実施形態は、図10に示す第3実施形態とほぼ同様の構成であるが、第3実施形態と異なり、レバー40が踏み込み操作されない状態において、押圧部材84と可動支持部材85を離間させている。
次に、上記のように構成したペダル装置12の動作を説明する。図21(A)、図21(B)及び図21(C)は、レバー40の変位量に対する第1のばね82、第2のばね83及び第3のばね90の付勢力を表した図であり、図21(D)は、レバー40の変位に伴いレバー40が発生する反力を表した図である。なお、図21(A)及び図21(C)は、レバー40の踏み込みに対抗する方向の付勢力を正とし、図21(B)はレバー40の踏み込みを助勢する方向の付勢力を正として示す。レバー40を踏み込み操作しない状態では、第1のばね82による上方への付勢力によって、レバー40は回転中心81を中心として、図20にて時計回りに回転し、押圧部材84を押し上げ、押圧部材84の上面が押圧部材上限ストッパ86に当接してレバー40は静止し、図20の状態となっている。このとき、第1のばね82及び第2のばね83はいずれも圧縮された状態にある。
演奏者が、第1のばね82による付勢力に対抗してレバー40を踏み込むと、レバー40は、回転中心81を中心として、図20にて反時計回りに回転し始め、レバー40の前部が下方へ変位する。このとき、第1のばね82は圧縮され、第1のばね82の付勢力は増加する(図21(A)のA0)。一方、第2のばね83は、圧縮状態から解放されていくので、第2のばね83の付勢力は減少する(図21(B)のA0)。また、第3のばね90は、この操作範囲ではレバー40を付勢しない。ここで、第1のばね82がレバー40を付勢する方向は、踏み込み操作に対抗する方向であるが、第2のばね83がレバー40を付勢する方向は、踏み込み操作を助勢する方向である。したがって、レバー40の反力は、第1のばね82の付勢力から第2のばね83の付勢力を差し引いたものとなり、レバー40の反力の変化は第1のばね82及び第2のばね83によって発生する(図21(D)のA0)。
レバー40がさらに踏み込まれて変位量が増すと、第1のばね82による付勢力がさらに増加する(図21(A)のA1)。また、押圧部材84の円板部が可動支持部材85の上面に当接する。押圧部材84の円板部が可動支持部材85の上面に当接するときのレバー40の踏み込み量が第2踏み込み量である。そして、第2のばね83は、レバー40を下方に付勢するとともに、可動支持部材85を下方へ付勢する。そのため、第3のばね90が伸長されて付勢力が増加する(図21(C)のA1)。なお、レバー40の踏み込み開始時における第2のばね83及び第3のばね90の付勢力を調整して、この操作範囲(図21のA1)において第3のばね90の付勢力が第2のばね83の付勢力よりも小さくなるようにしている。したがって、レバー40の反力は第1のばね82の付勢力に第3のばね90の付勢力を加えたものから、第2のばね83の付勢力を差し引いたものとなり、反力の変化は、第1のばね82、第2のばね83及び第3のばね90によって発生する(図21(D)のA1)。
さらにレバー40の変位量が増すと、第1のばね82による付勢力がさらに増加する(図21(A)のA2)。また、可動支持部材85の下面が可動支持部材下限ストッパ88に当接して、可動支持部材85の下方向への変位が規制され、押圧部材84の先端がレバー40の上面から離れる。可動支持部材85の下方向への変位が規制されるときのレバー40の踏み込み量が第1踏み込み量である。したがって、この操作範囲では、レバー40の踏み込み操作に対抗する反力は、第1のばね82のみによって発生し、反力の変化も第1のばね82のみによって発生する(図21(D)のA2)。
そして、レバー40の中間部下面が下限ストッパ43に当接して、レバー40の前部の下方への変位が規制される。レバー40の操作を解除すると、第1のばね82、第2のばね83及び第3のばね90の付勢力によって、往行程とは逆順に動作する。すなわち、レバー40は回転中心81を中心として、図20にて時計回りに回転して、押圧部材84を上方へ押し上げ、押圧部材84の上面が押圧部材上限ストッパ86に当接して静止し、元の状態(図20)に復帰する。また、荷重センサ50及び踏み込み量センサ51は第1実施形態と同様に動作する。
上記のように構成した本実施形態に係るペダル装置においても、図22に実線で示したようなアコースティックピアノのペダルの踏み込み開始から終了までのレバーの変位量と演奏者がペダルから受ける反力の関係に近い特性を実現することができる。すなわち、図22のA0に相当する操作範囲(図21(D)のA0)においては、第1のばね82によるレバー40への付勢力が第2のばね83によって大きく打ち消されるようになっている。このとき、第1及び第2のばね82,83は並列に接続されており、この合成ばねのばね定数は、第1のばね82のばね定数よりも大きい。
また、図22のA1に相当する操作範囲(図21(D)のA1)においては、第1のばね82の付勢力が第2のばね83の付勢力によって一部打ち消されるようになっているが、その第2のばね83の付勢力は第3のばね90によって一部打ち消されている。このとき、第1乃至第3のばね82,83,90は並列に接続されており、この合成ばねのばね定数は、第1のばね82及び第2のばね83からなる合成ばねのばね定数よりも大きい。したがって、図22のA0に相当する操作範囲(図21(D)のA0)に比べて、図22のA1の範囲に相当する操作範囲(図21(D)のA1)の反力の変化率を大きくすることができる。
そして、図22のA2に相当する操作範囲(図21(D)のA2)では、第1のばね82による付勢力は、第2のばね83及び第3のばね90によって打ち消されないようになっている。したがって、図22のA1に相当する操作範囲(図21(D)のA1)に比べて、図22のA2の範囲に相当する操作範囲(図21(D)のA2)の反力の変化率を小さくすることができる。したがって、本実施形態に係るペダル装置12において、図22に実線で示したようなアコースティックピアノの特性を実現できる。
また、第3実施形態と同様に、本実施形態においても、レバー40の踏み込み量を急激に減少させた場合又はレバー40の踏み込み量を周期的に変化させた場合、レバー40が押圧部材84に衝突することがある。レバー40と押圧部材84の衝突により生じた衝撃は、第1のばね82及び第2のばね83によって吸収される。したがって、レバー40の反力を安定させることができる。
また、荷重センサ50及び変位量センサ51は第1実施形態と同様に動作するので、演奏者が受けるレバー40の操作感と、発生楽音に付与されるダンパー効果、発生楽音の音色、響き(音響効果)などを含む楽音要素の開始点及び終了点を同期させることができる。
なお、第3実施形態の変形例と同様に、第1乃至第3のばね82,83,90の取り付け位置を変更してもよいし、圧縮ばねを引っぱりばねに変更してもよい。これらのように構成しても、上記第6実施形態と同様の効果が得られる。。
また、上記第1乃至第6実施形態においては、ペダル装置12を電子楽器のダンパーペダルに適用した。しかし、上記ペダル装置12は、電子楽器のソステヌートペダル、ソフトペダル等のペダルにも適用されるものである。