以下、本発明の一実施形態について説明する。
<実施形態>
本実施形態に係る鍵盤楽器1のハードウエアの構成について説明する。図1は、鍵盤楽器1のハードウエアの構成を示すブロック図である。
鍵盤楽器1は、例えば、電子ピアノであり、電子システム1a、力覚制御部1b、鍵盤機構100を有する。電子システム1aと鍵盤機構100とは接続され、利用者は鍵盤機構100を操作して、電子システム1aに信号を出力する。このとき、力覚制御部1bは、利用者の操作に対して力覚を付与する。
電子システム1aは、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102およびRAM(Random Access Memory)103を有する情報生成システム1c、アクチュエータ4、センサ5、論理回路6aおよびソレノイドドライバ50aを有する電気負荷部1d、記憶部104、操作部105、表示部106、音声出力部107、インターフェイス108を具備し、バス200によって互いに接続されている。電気負荷部1dは、力覚制御部1bの一部であり、電気負荷部1dと機械負荷機構3により利用者の操作に対して力覚を付与する。
CPU101は、ROM102に記憶されているプログラムを読み出して、RAM103にロードして実行することにより、鍵盤楽器1の各部について、バス200を介して制御する。また、RAM103は、CPU101が記憶された各データの加工などを行う際のワークエリアとして機能する。
記憶部104は、例えば、ハードディスクなどの大容量記憶手段であって、鍵の運動に関する物理量と力覚制御値との関係を示す力覚制御データを複数記憶するとともに、当該力覚制御データの各々に対応した反力制御値を示す反力制御データを記憶する。また、力覚制御データの各々に対応して楽器の種類を示すデータについても記憶する。力覚制御データおよび反力制御データの詳細については後述する。
操作部105は、例えば、楽器の種類の選択などを行うための操作ボタン、キーボード、マウスなどである。利用者が操作部105を操作するとその操作内容を表すデータがCPU101へ出力される。
表示部106は、映像を画面に表示する液晶ディスプレイなどの表示デバイスであって、液晶ディスプレイパネル(L.C.D.)106a、ディスプレイドライバ(D.D.)106b、DA変換器(D/A)45を有し(図5参照)、CPU101に制御され、メニュー画面などの各種画面を表示する。
音声出力部107は、スピーカなどの放音手段を有し、利用者が押鍵することにより鍵盤機構100から出力される信号に応じて、CPU101による制御に基づいて、楽音を放音する。この楽音は、利用者が操作部105における操作ボタンを操作して、楽器の種類を選択することにより、当該楽器の音色で放音される。これは、鍵の押下に対応して、利用者が操作部105を操作して選択する楽器の種類に基づいた音色の楽音を発生する楽音発生手段により実現される。また、音声出力部107は、CPU101によって自動演奏用の楽音ファイルが再生されることにより、当該楽音ファイルに基づいて楽音を放音する。
インターフェイス108は、外部装置との接続する接続部、各種データの入出力する入出力部、ネットワークを介してサーバ等とデータの送受信を行う通信部などである。
次に、鍵盤機構100の構成のうち、1つの鍵に対応する構成について、図2、図3を用いて説明する。鍵盤機構100は、黒鍵2a、白鍵2b(以下の説明においては単に鍵2という)、回転支持部201、筐体202、揺動ストロークガイド203および鍵ストッパ204を有する。これらの間には、空間202a、202b、202cが形成されている。ストロークガイド203は、鍵2に設けられた突起部203aと、筐体202の空間202bの位置に設けられたガイド部203bとを有する。鍵ストッパは、筐体202の空間202aの位置に設けられている。筐体202の空間202cの位置には、アクチュエータ4が設けられている。
鍵(操作子)2は、筐体202に設けられた回転支持部201に回転可能に支持され、筐体202に設けられた揺動ストロークガイド203により上下揺動可能に支持されている。鍵2を押下(矢印AR1)すると、筐体202に設けられた鍵ストッパ204に鍵2が接触して押下量の最大量が決められている。鍵2の押下量が最大の状態(図2における2点鎖線)において、後述するハンマ300は、筐体202に設けられたハンマストッパ205に接触(矢印AR2)するようになっている。
機械負荷機構(第2力覚付与手段)3は、図2、図3に示すように、筐体に設けられ、ハンマストッパ205、ハンマ300、作用部301、反作用部302、支点303、回転体304a、ステッピングモータ304b、調整ねじ306を有する。筐体202の開口部202dは、ハンマ300を筐体202内外に通じて配置するための開口部である。
ハンマ300は、筐体202に設けられた支点303に回転可能に支持されている。そして、ハンマ300の作用部301が、鍵2に設けられた調整ねじ306を介して鍵2との当接状態を保持して、押鍵に伴って下方に移動することにより、ハンマ300は支点303を中心に回転し、ハンマ300の反作用部302を上方に移動させる。反作用部302は、所定の質量の部材を負荷として有している。これにより、鍵2の操作時に、反作用部302は作用部301を介して鍵2に機械的な反力を与える。機械負荷機構3は、質量によって負荷を与えるから、鍵2の加速度に対応する反力F=m・a(F:力、m:質量、a:加速度)を反作用部302の重心と支点303の距離の比に反比例した力が鍵2の負荷として与えられ、鍵2に慣性負荷に対応する力覚を付与する。なお、反作用部302が有する部材の質量は、鍵2に対応する音の高低によって変えるようし、低音部では重く、高音部では軽くするようにしてもよい。
機械負荷機構3の回転体304aは、CPU101の制御によってパルスジェネレータ(PG)304cがステッピングモータ304bを駆動して回転体304aを回転させることによって軸305を中心に回転し、その回転位置に応じて、機械負荷機構3が鍵2に対して反力を与える負荷状態と、機械負荷機構3が鍵に対して反力を与えないように無効化した無負荷状態とを切り替えることができる。無負荷状態は、ハンマ300の作用部301が鍵2に対して、分離離間した状態とし、鍵2を最大深さまで押鍵したときのハンマ300の位置になるように、回転体304aによって付勢されることによって実現する(図3参照)。なお、回転体304については、鍵ごとに回転位置を変えられるようにしてもよいし、全ての鍵において同じ回転位置になるようCPU101によって制御されてもよい。すなわち、鍵ごとに回転体304aを設けて負荷状態と無負荷状態を異なるものとしてもよいし、全ての鍵の回転体304aが接続された棒状の回転体304aを設けて全ての鍵で同一の状態になるようにしてもよい。このように、機械負荷機構3は、鍵2の運動に対して慣性負荷に基づく反力を機械的に与える機能を有し、CPU101の制御によって、このような反力を無効化する機能も有する。
アクチュエータ(第1力覚付与手段)4は、後述するような制御によって鍵2に負荷を与える機能を有する。また、センサ(鍵挙動検出手段)5は、鍵2の押下量を検出する機能を有する。以下、アクチュエータ4とセンサ5の構成について、図4を用いて説明する。
アクチュエータ4は、ハウジング406内に収納された、ヨーク400内に配置された電磁ソレノイドコイルであるコイル401と、コイル401の軸心内に、双方向に直線移動が可能なように挿入された棒状のプランジャ402とを有する。コイル401は軸心が上下方向になるように配置され、プランジャ402が上下方向に移動すると、プランジャ402の上下端がヨーク400の上面および底面に設けられた孔を通過可能になっている。プランジャ402の上端には、シャフト403がプランジャ402と同軸に延び、シャフト403の上端には鍵2に接触するシャフトヘッド404が接続されている。そして、コイル401に、後述するソレノイドドライバ50aの電流フィードバック回路51から電流が供給されることによって発生する推力により、プランジャ402が上下方向に移動し、シャフトヘッド404が鍵2と接触して、プランジャ402が移動することにより発生する負荷を鍵2に与えるようになっている。これにより、アクチュエータ4は、後述する制御に基づいて鍵2に力を付与して力覚を与える。
センサ(操作子挙動検出手段)5は、ハウジング500a、500b内に収納されたアクチュエータ4の下部に設置される位置センサ5aおよび速度センサ5bであって、プランジャ402の下端部に接続された被検出部材501と、発光素子と受光素子を有する光反射型センサである検出部502と、被検出部材501の下端部に接続され、バネ505の軸上に位置する棒状のマグネット504とを有する。被検出部材501には、その側面に反射板503が設けられ、プランジャ402の上下移動に伴って反射板503が上下移動する。反射板503は、例えば、濃淡のパターンなどによって、反射板503の上側は反射率が低く、下側は反射率が高くなるように反射率が制御された板であって、反射板503の上下方向の位置により、検出部502の発光素子から発された光を反射する量が異なるようになっている。そして、この反射光を受光素子は受光し、その受光量から反射率がわかるから、検出部502は、受光素子の受光量に応じて、プランジャ402の上下方向の位置を検出することができ、鍵2の押下量を検出できる。
そして、検出部502は、検出した鍵2の押下量を示す位置信号Spを出力する。また、センサ5の下部に位置するコイル506を用いることにより、マグネット504とコイル506とでムービングマグネット型の速度センサ5bを構成することができ、コイル506は、当該速度センサによって検出した鍵2の速度を示す速度信号Svをさらに出力することができる。
次に、CPU101が、ROM102に記憶されたプログラムを実行することによって実現する鍵盤機構100の制御機能について説明する。図5は、CPU101が実現する機能を示したソフトウエアの構成を示すブロック図である。
論理回路6aは、マルチプレクサ(MPX)6、10、21、AD変換器(A/D)7、11、22を有する。マルチプレクサ6は、位置センサ5aの検出部502から出力される位置信号Spが入力される。マルチプレクサ6は、複数設けられており、また、各々が12音分(1オクターブ分)の入力端子を持っている。そして、これらの入力端子に同一オクターブ範囲内の各鍵に対応する位置信号Spが各々入力される。すなわち、マルチプレクサ6は、ピアノの音域に沿ってオクターブごとに設けられており、本実施形態においては、標準的なピアノの88鍵に対応して8個設けられている。
また、マルチプレクサ6の各入力端子が順次スキャンされ、各鍵の位置情報が順次(例えば、低音側から高音側に向かって)検出されるようになっている。そして、マルチプレクサ6を介して出力される位置信号Spは、AD変換器7によってデジタル信号の位置信号DSpに変換される。
一方、速度センサ5bのコイル506から出力される各鍵についての位置信号Spは、マルチプレクサ10に入力される。マルチプレクサ10は、マルチプレクサ6と同様に、鍵盤の各音域に対応して複数設けられており、各々が12音分(1オクターブ分)の入力端子を持っている。マルチプレクサ10の各入力端子は、マルチプレクサ6の入力端子と同期してスキャンされ、各鍵の速度情報が順次検出されるようになっている。そして、マルチプレクサ10を介して出力される速度信号Svは、AD変換器11によってデジタル信号の速度信号DSvに変換される。
また、速度センサ5bのコイル506から出力される各鍵についての速度信号Svは、鍵ごとに設けられた微分器(DF)20によって加速度を示す加速度信号Saに変換され、マルチプレクサ21に入力される。マルチプレクサ21は、マルチプレクサ6、10と同様に、鍵盤の各音域に対応して複数設けられており、各々が12音分(1オクターブ分)の入力端子を持っている。マルチプレクサ21の各入力端子は、マルチプレクサ6、10の入力端子と同期してスキャンされ、ピアノの各鍵の加速度情報が順次検出されるようになっている。そして、マルチプレクサ21を介して出力される加速度信号Saは、AD変換器22によってデジタル信号の加速度信号DSaに変換される。
以上のように、各鍵の位置、速度、加速度を各々示す位置信号Sp、速度信号Sv、加速度信号Saが同期して出力され、かつ、これらが、AD変換器7、11、22によってデジタル信号に変換されるようになっている。
そして、デジタル信号は、CPU101に定期的に取り込まれ、CPU101は、位置信号DSpを使用して、力覚付与テーブル32、33、PWM指示値発生回路40にアクセスするとともに、ヒステリシス切換回路25を介して力覚付与テーブル30または31にアクセスする。同様にして、CPU101は、速度信号DSvを使用して、ヒステリシス切換回路25および力覚付与テーブル32にアクセスし、加速度信号DSaを使用して、力覚付与テーブル33にアクセスする。力覚付与テーブル30〜33は、アクチェータ4が発生すべき反力、すなわち、力覚の特性(鍵の運動に関する物理量と力覚制御値との関係)を記憶しているテーブルであって、力覚付与テーブル30〜33の内容を示すデータを力覚制御データといい、力覚制御データは記憶部104に複数記憶されている。
また、力覚制御データは、力覚付与テーブル30〜33の内容を示すデータであって、鍵の力覚を再現するためのデータであるが、単純な運動方程式では不十分であり、鍵の位置、鍵の速度、鍵の加速度等の種々のパラメータを使用し、これらに適合する反力を求めることが必要である。このような反力については、例えばアコースティックピアノについては、上述した特許文献1(特開平10−177378号公報)において詳細に説明されているから、本明細書では省略する。
このような力覚制御データは、上述したように記憶部104に複数記憶され、各々の力覚制御データは、楽器の種類を示すデータと対応付けられている。そして、操作部105には、楽器の種類が示された操作ボタンが設けられ、利用者がいずれかの操作ボタンを押すと、CPU101は、当該操作ボタンに対応する楽器の種類に対応した力覚制御データを記憶部104から読み出して、力覚付与テーブル30〜33として割り当てる。
このとき、CPU101は、記憶部104に記憶された反力制御データのうち、上記力覚制御データに対応する反力制御データを読み出して、当該反力制御データに基づいて制御信号CTL1をパルスジェネレータ304cに出力してステッピングモータ304bを用いて、機械負荷機構3の回転体304aを回転させて、負荷状態または無負荷状態に切り替える。すなわち、本実施形態においては、反力制御データは、負荷状態または無負荷状態のいずれかを示すデータとなっている。ここで、グランドピアノなど慣性負荷が大きい楽器に対応する反力制御データは、負荷状態を示し、オルガンなど慣性負荷が小さい楽器に対応する反力制御データは、無負荷状態を示している。
ここで、鍵の加速度に対応する力覚付与テーブル33については、後述するように鍵の加速度に応じた反力を示し、これは慣性負荷に対応する。この慣性負荷については、機械負荷機構3における負荷と同じであるから、機械負荷機構3が負荷状態にあれば、機械負荷機構3によって鍵に与えられる慣性負荷の分だけ、アクチュエータ4において与える反力を低減することができる。すなわち、負荷状態を示す反力制御データに対応する力覚制御データは、鍵の加速度に対応する力覚付与テーブル33については、機械負荷機構3における負荷の大きさを低減した状態における力覚の特性を示すようになっている。
このような構成とすると、鍵の加速度に対応する慣性負荷が大きい楽器、例えばアコースティックピアノにおいては、機械負荷機構3を負荷状態として、アクチュエータ4においては、鍵の加速度に対応する制御を行わなくするか、慣性負荷の微妙な変化を制御するようにできる。一方、鍵の加速度に対応する慣性負荷が小さい楽器、例えばオルガンにおいては、機械負荷機構3を無負荷状態として、アクチュエータ4において、慣性負荷を与えることができる。これにより、比較的大きな力となり得る慣性負荷を鍵2の力覚を再現するために、アクチュエータ4のみで全ての力を付与しなくても済むので、アクチュエータ4を小型化することができる。
図5の説明に戻る。力覚付与テーブル30〜33は、各種パラメータに応じた反力に対応する値(Y1、Y2、Y3)を出力し、各力覚付与テーブル30〜33から出力された値は加算器35、36によって合成され、これにより、力覚制御データに基づいた反力に対応する値となる。すなわち、鍵の運動に関する物理量に対応した反力を示す値(以下、力覚制御値Sumという)を算出することができる。
ここで、力覚付与テーブル30、31は、鍵の位置と速度から得られる反力に対応する値を発生する。この場合、力覚付与テーブル30は、押鍵行程における反力に対応する値を発生し、力覚付与テーブル31は離鍵行程における反力に対応する値を発生する。より詳細に言えば、力覚付与テーブル30、31においては、位置信号DSpと速度信号DSvとをパラメータとした値(出力データY1)が決定される。すなわち、力覚付与テーブル30、31は、図6に示すようにX軸が位置信号DSpの値、Y軸が出力値となっている関係PL1〜PLんを示すテーブル30−1〜30−nをZ軸方向に複数配列して構成されている。そして、Z軸に速度信号DSvの値をとり、この速度信号DSvによっていずれかのテーブル30−1〜30−nが選択され、この選択されたテーブルを用いて位置信号DSpに対応する出力値が決定される。これは、鍵2の位置に対応した弾性負荷であって、鍵盤楽器の鍵、アクションなどの速度によって変化する弾性負荷を表現している。ここで、速度信号DSvの値が各テーブルの間にある場合は、その両側にある2つのテーブルが選択され、各テーブルから出力される出力値に対して補間処理を行うことによって出力データY1が決定される。また、力覚付与テーブル31も上記と同様の構成となっている。
そして、力覚付与テーブル30、31は、ヒステリシス切換回路25の出力信号によって、そのいずれか一方が選択されるようになっている。ヒステリシス切換回路25は、速度信号DSvの符号を判断し、正である場合に力覚付与テーブル30を、負である場合に力覚付与テーブル31を各々選択する。このヒステリシス切換回路25においては、鍵2が押されて押鍵過程にあるときは速度が正になり、逆に鍵2が離されて離鍵過程にあるときは速度が負になることを検出原理としている。なお、ヒステリシス切換回路25は、速度の正負の変化に対してある程度の不感帯(時間的不感帯)を設け、切り替えの頻度を減らすことによって、切り替えに伴う不連続な力覚変化の発生を低減するようにしてもよい。
次に、力覚付与テーブル32、33は、図6に示す力覚付与テーブル30と同様の構成になっているが、力覚付与テーブル32のX軸には速度信号DSvの値がとられ、Z軸には位置信号である位置信号DSpの値がとられる。また、力覚付与テーブル33のX軸には加速度信号DSaの値がとられ、Z軸には位置信号DSpの値が取られる。すなわち、力覚付与テーブル32は、鍵の速度と位置に応じた反力に対応する値を出力する。これは、鍵2の速度に対応した粘性負荷であって、鍵盤楽器の鍵、アクションなどの特に、位置によって大きく変化する粘性負荷を表現している。力覚付与テーブル33は、鍵の加速度と位置に応じた反力に対応する値を出力する。これは、鍵2の加速度に対応する慣性負荷であって、鍵盤楽器の鍵、アクションなどの特に、位置によって大きく変化する慣性負荷を表現している。
次に、PWM指示値発生回路40は、力覚付与テーブル30〜33に基づいて算出された力覚制御値Sumと位置信号DSpとに基づいて、アクチェータ4を駆動するためのパルス幅変調の指示値(以下、PWM指示値CTL2という)を発生する回路である。具体的には、力覚制御値SumをX軸、PWM指示値をY軸にとったテーブルをZ軸方向に複数設けて構成されている。そして、Z軸には位置信号DSpの値を取り、この位置信号DSpによっていずれかのテーブルが選択され、この選択されたテーブルを用いて力覚制御値Sumに対応するPWM指示値CTL2が決定される。ここで、位置信号DSpの値が各テーブルの間にある場合は、その両側にある2つのテーブルが選択され、各テーブルから出力される出力値に対して補間処理を行うことによってPWM指示値が決定される。PWM指示値発生回路40の目的は、ストローク位置により推力に差が生じるという、ソレノイド特有の非線形な推力発生特性を、このテーブルによって補正しようとするものである。PWM指示値発生回路40内のテーブルにより、任意の推力特性が得られ、ソレノイドの設計が容易になるばかりでなく、効率の最適化、コストの低減など多くの利点が得られる。
PWM指示値発生回路40から出力されるPWM指示値は、ソレノイドドライバ50aのPWMドライバ50bに供給され、PWM波形に変換される。PWMドライバ50bから出力されるPWM波形は、電流フィードバック回路51を介して駆動信号DR1としてアクチェータ4のコイル401に供給される。電流フィードバック回路51は、アクチェータ4に供給される駆動電流がPWM指示値CTL2に一致するようにフィードバック制御を行う。この電流フィードバック制御により、アクチェータの温度上昇に伴う推力変化が補正され、常に、目標とする反力を再現することができる。
一方、力覚制御値Sumは、表示部106に供給され、ディスプレイドライバ106bによって処理された信号が、DA変換器45によってアナログ信号に変換され、液晶ディスプレイパネル106aに供給される。これにより、表示部106の液晶ディスプレイパネル106aには、時事刻々変化する力覚制御値Sumの波形、すなわち、鍵に与える負荷に係る波形が写し出される。
次に、本実施形態に係る鍵盤楽器1の動作について説明する。
まず、利用者は、操作部105の操作ボタンを操作して、鍵盤を操作して鳴らしたい音の楽器の種類を選択する。CPU101は、このようにして選択された楽器の種類に対応する力覚制御データおよび反力制御データを記憶部104から読み出す。そして、CPU101は、力覚制御データを各力覚付与テーブル30〜33に割り当てる。また、CPU101は、反力制御データに基づいて、機械負荷機構3の回転体304aを回転させて、機械負荷機構3を負荷状態または無負荷状態に切り替える。
利用者が選択した楽器の種類が、グランドピアノであった場合には、グランドピアノに対応した力覚制御データが選択され、グランドピアノの鍵についての力覚の特性を示した力覚付与テーブル30〜33が割り当てられる。そして、グランドピアノに対応した反力制御データに基づいて、回転体304aが回転することにより、機械負荷機構3は負荷状態になる。一方、利用者が選択した楽器の種類が、オルガンであった場合には、オルガンに対応した力覚制御データが選択され、オルガンの鍵についての力覚の特性を示した力覚付与テーブル30〜33が割り当てられる。そして、オルガンに対応した反力制御データに基づいて、回転体304aが回転することにより、機械負荷機構3は無負荷状態になる。
利用者が鍵2を操作すると、位置センサ5a、速度センサ5bから当該操作による鍵2の運動に関する物理量である鍵2の押鍵量を示す位置信号Sp、速度信号Svが出力される。この速度信号Svは、微分器20によって、加速度信号Saに変換される。そして、これらの信号に応じた反力を示す値が各力覚付与テーブル30〜33から出力され、これらが合成されて力覚制御値Sumとなる。
そして、力覚制御値Sumと位置信号DSpに応じたPWM指示値CTL2がPWM指示値発生回路40から出力され、これに応じた駆動電流DR1が電流フィードバック回路51を介して出力される。この結果、アクチェータ4が駆動され、利用者の指に対して反力を与える。このときに、機械負荷機構3が負荷状態になっている場合には、機械負荷機構3によっても利用者の指に対して反力を与えることになり、機械負荷機構3およびアクチュエータ4によって鍵の力覚を再現する。
このように、鍵盤楽器1は、各力覚付与テーブル30〜33を用いて2つのパラメータを用いて反力を決めているため、単純に一変数だけに基づいて反力を決める場合に比べて複雑な反力特性にも対応でき、利用者が選択した楽器の種類の鍵の力覚に極めて近いものとなる。しかも、力覚付与テーブル30〜33は、各々異なるパラメータの組を用いているため、反力が発生する要因ごとに個別に反力を再現することができ、これらを総合的に用いることにより、極めて高い忠実度をもって力覚の再現を行うことができる。そして、大きな負荷がかかる鍵盤楽器における力覚を再現する場合には、機械負荷機構3を併用することにより、アクチュエータ4の負荷を低減することができ、アクチュエータ4の小型化、低消費電力化することができる。また、鍵2と分離した機械負荷機構3を設けることで、通常のピアノアクションなどで感じられる「アクション連結部のあそび感」、「ハンマの自由な振動感」、「ハンマの衝突感、衝突音」、「アクション系のたわみ感」などを利用者は指から感ずることができ、いわゆる弾きごたえ感を得ることができるという大きな効果を得られる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
<変形例1>
上述した実施形態においては、機械負荷機構3は、負荷状態、無負荷状態のいずれかの状態にCPU101によって制御されていたが、負荷状態のときの負荷の大きさを制御し、鍵2に与える反力の大きさを変更できるようにしてもよい。この場合には、鍵盤楽器1Aにおける機械負荷機構3Aの反作用部302Aを図7に示すような構成とすればよい。反作用部302Aは、フレーム310a、移動体310b、リードスクリュー311、モータ312、ガイド部材313を有する。
モータ312のシャフトに取り付けられているリードスクリュー311は、移動体310bを移動させるための軸状の部材であり、その周面には、ねじ山が設けられている。ガイド部材313は、軸状の部材であり、移動体310bを案内するための部材である。移動体310bは、金属製の円柱状の部材であり、一方の端面から他方の端面に向かって、リードスクリュー311が貫通する孔と、ガイド部材313が貫通する孔とが設けられている。リードスクリュー311が貫通する孔には、リードスクリュー311に設けられているねじ山に係わり合うねじ山が設けられており、リードスクリュー311とガイド部材313とが貫通した状態においてリードスクリュー311がモータ312によって回転させられると、移動体310bはガイド部材313に沿って図の左右方向に移動する。
記憶部104に記憶された反力制御データは、機械負荷機構3Aにおける負荷の程度を示す反力制御値を示している。反力制御値が0の場合には実施形態において述べたように回転体304aを回転させて無負荷状態とする一方、0より大きく1以下であれば負荷状態となる。ここで、反力制御値が1である場合には、最大負荷となる。
そして、CPU101が記憶部104から反力制御データを読み出して、当該反力制御データの反力制御値に基づいて、回転体304aを制御するとともに、反作用部302Aのモータ312を電子システム1Aaから出力される駆動信号DR2により制御して、移動体310bを移動させる。このとき、移動体310bを実線で示すように、支点303から遠ざける方向(図の左方向)に移動させた場合には、慣性負荷が大きくなり、破線で示すように、支点303に近づける方向(図の右方向)に移動させた場合には、慣性負荷が小さくなる。このようにして、CPU101は、反力制御データに基づいて機械負荷機構3Aにおける負荷の大きさを制御し、鍵2に与える反力を変化させることもできる。
さらに、CPU101の制御に応じて、支点303の位置を図の左右方向に変化させ、作用部301が鍵2と接触する位置について、回転支持部201からの距離を変えることができる機構を設ければ、鍵2の押下量が同じ量であっても作用部301の移動量を異ならせることができるから、利用者が鍵2を同じように押下しても作用部301が移動する加速度が変わることになり、反力を変えることもできる。
これにより、様々な負荷の程度を機械負荷機構3Aで実現することができるから、どのような慣性負荷を有する鍵盤楽器であっても、その慣性負荷の大部分を機械負荷機構3Aに負担させることにより、アクチュエータ4は慣性負荷の微妙な変化だけを制御するように力覚制御データを作成しておけばよく、アクチュエータ4の負荷をより少なくすることができる。なお、負荷の程度については、全鍵で同じとしてもよいし、鍵ごとに異なるようにしてもよい。
<変形例2>
上述した実施形態においては、機械負荷機構3は、ハンマ300を用いた鍵2の加速度に対応した反力である慣性負荷を機械的に与える機構であったが、慣性負荷でなく鍵2に対して弾性負荷を与える機構としてもよい。弾性負荷の一例として、機械負荷機構3Bは、図8に示すようにバネ320を用いた構成としてもよい。バネ320は、鍵2と支持板321に接続されている。支持板321は、バネ320とは反対側の面から回転体304によって支持され、回転体304の回転位置によって、支持板321が図の上下方向に移動し、鍵2が押下されていないときのバネ320の長さ(以下、初期長さという)を変化させることができる。
このような機械負荷機構3Bを用いて鍵2の運動に対する反力を与える場合には、バネ320の伸縮に応じた力が反力として鍵2に与えられる。すなわち、機械負荷機構3Bは、F=k・x(k:バネ定数、x:バネの伸縮量)の反力を鍵2に与えるから、鍵2の位置(押下量)に対応する反力である弾性負荷を鍵2に与えることになる。
また、CPU101の制御に基づいて回転体304aを回転させることにより、初期長さが変化するとバネ320の負荷の大きさを制御することができ、鍵2に与える反力の大きさが変化させることができる。具体的には、回転体304によって支持板321が図の上方に付勢されているときには、バネ320が縮む状態であり反力が大きくなる一方、支持板321が図の下方に位置するときには、バネ320が伸びる方向になるため反力が小さくなる。すなわち、鍵2が押下されていないときにおける反力の大きさを変化させることができるから、鍵2に与える反力の初期荷重を調整する制御を行うことができる。
さらに、CPU101の制御に応じて、バネ320と鍵2が接触する位置を図の左右方向に変化させ、回転支持部201からの距離を変えることができる機構を設ければ、鍵2の押下量が同じ量であってもバネ320の伸縮量を変えることができ、鍵2の押下量に応じて変化する反力の変化率を変えることもできる。すなわち、バネ定数kを変化させる効果と同様な効果を得ることができ、バネ感を調整する制御を行うことができる。
これにより、様々な弾性負荷の大きさを機械負荷機構3Bで実現することができるから、どのような弾性負荷を有する鍵盤楽器であっても、その弾性負荷の大部分を機械負荷機構3に負担させることにより、アクチュエータ4は弾性負荷の微妙な変化だけを制御するように力覚制御データを作成しておけばよく、アクチュエータ4の負荷をより少なくすることができる。なお、負荷の程度については、全鍵で同じとしてもよいし、鍵ごとに異なるようにしてもよい。
<変形例3>
上述した変形例2においては、機械負荷機構3における弾性負荷の一例としてバネ32
0を用いた構成としたが、図17に示すように、板ばね340を用いた構成としてもよい。板ばね340は、受板342と当接し、回転軸341aを中心にステッピングモータ341bを用いて回転可能および鍵2の長手方向の所定範囲内で移動可能となっている。回転軸341aによって回転させられる角度、移動させられる位置は、CPU101によって反力制御データの反力制御値に基づいて制御される。このようにすると、回転角によって板ばね340が鍵2に与える初期荷重の大きさを変化させることができる。また、長手方向の位置により、板ばね340と受板342との当接位置が変化し、鍵2の押下量が同じ量であっても板ばね340の変化量を変えることができ、実質的にバネ定数を変化させる効果と同様な効果が得られる。なお、図17においては、板ばね340は、鍵2の上面側に設けられていたが、鍵2の下面側に設けられるようにしてもよい。
<変形例4>
上述した実施形態においては、機械負荷機構3は、ハンマ300を用いた鍵2の加速度に対応した反力である慣性負荷を機械的に与える機構であったが、慣性負荷でなく鍵2に対して粘性負荷を与える機構としてもよい。機械負荷機構3Cは、粘性負荷の一例として、図9に示すように、可動部材330、支柱331、筒状部材332、オリフィス径制御部333から構成されるシリンダとしてもよい。可動部材330は筒状部材332内部において上下移動可能に配置され、支柱331を介して鍵2と接続されている。これにより、鍵2の上下移動と可動部材330の上下移動が連動するようになっている。オリフィス径制御部333は、CPU101の制御によって電子システム1Caから出力される駆動信号DR3によりシリンダ底部の孔333aの径(オリフィス径)が変化するようになっている。このようなシリンダを粘性負荷として用いた場合には、可動部材330の移動速度に対応した力が発生し、鍵2の押下速度に対応した反力が鍵2に与えられる。
この粘性負荷の大きさは、オリフィス径に対応して変化し、オリフィス径が小さいほど負荷が大きく、大きいほど負荷が小さくなる。そのため、CPU101の制御に基づいてオリフィス径を制御することにより、粘性負荷の大きさを制御することができ、鍵2に与える反力の大きさが変化させることができる。
さらに、CPU101の制御に応じて、支柱331と鍵2が接触する位置を図の左右方向に変化させ、回転支持部201からの距離を変えることができる機構を設ければ、鍵2の押下量が同じ量であっても可動部材330の上下移動量を異ならせることができるから、利用者が鍵2を同じように押下しても可動部材330が移動する速度が変わることになり、反力を変えることもできる。
これにより、様々な粘性負荷の大きさを機械負荷機構3Cで実現することができるから、どのような粘性負荷を有する鍵盤楽器であっても、その粘性負荷の大部分を機械負荷機構3Cに負担させることにより、アクチュエータ4は粘性負荷の微妙な変化だけを制御するように力覚制御データを作成しておけばよく、アクチュエータ4の負荷をより少なくすることができる。なお、負荷の程度については、全鍵で同じとしてもよいし、鍵ごとに異なるようにしてもよい。
<変形例5>
上述した実施形態においては、機械負荷機構3が負荷状態になる場合には、加速度に基づいた反力に応じた値を出力する力覚付与テーブル33については、力覚制御データにより、その出力値が機械負荷機構3の負荷を除いた値になるように割り当てられていた。一方、機械負荷機構3の負荷のみで加速度に対応する反力を再現できる場合には、力覚付与テーブル33による出力は必要ない。この場合には、力覚付与テーブル33に加速度信号DSaが入力される前に遮断するようにしてもよいし、力覚付与テーブル33からの出力が加算器36に入力されないようにしてもよい。
この場合には、例えば、図11に示すように、スイッチ37aを設けた鍵盤楽器1Eとすればよい。このスイッチ37aは、機械負荷機構3Eの負荷のみで加速度に対応する半力を再現できるか否かに応じたCPU101の制御によって、加速度信号Dsについて、AD変換器22から力覚付与テーブル33への経路の接続、遮断を行うものである。
<変形例6>
上述した実施形態においては、アクチュエータ4は電磁ソレノイドコイルを用いたアクチュエータであったが、鍵2の運動に関する物理量に基づいて算出される力覚制御値に基づいて、電気的に制御可能なアクチュエータであれば、モータ(リニアモータ、ロータリーモータ)、ブレーキ装置、あるいは油圧、空圧装置等のアクチュエータであってもよい。
<変形例7>
上述した実施形態においては、機械負荷機構3における回転体304aの回転によって、負荷状態と無負荷状態を切り替えていたが、負荷状態と無負荷状態を切り替えることができれば、別の構成によって行なってもよい。例えば、無負荷状態において、図3に示すような位置にハンマ300を付勢できれば、支点303にモータやブレーキ装置を設けたり、別途油圧、空圧装置等を設けたりして、ハンマ300を付勢できるようにすればよく、どのような構造によって実現してもよい。変形例2、3における機械負荷機構3についても同様に、鍵2と機械負荷機構3との結合状態を解除する機構などを設けて無負荷状態を実現してもよい。さらに、変形例3においては、図9における可動部材330の位置を破線で示す図の下方に移動させておけば、鍵2に負荷を与えることがなくなる。
<変形例8>
上述した実施形態においては、鍵の力覚を再現するための鍵盤楽器1として説明したが、外部接続される鍵盤機構100に力覚を付与するための力覚制御部1bおよび情報生成システム1cを有する力覚制御装置として用いることもできる。
<変形例9>
上述した実施形態においては、センサ5は、速度センサ5bを有していたが、速度センサ5bを用いずに、位置信号Spを微分することによって速度信号Svを算出するようにすればよい。この場合には、例えば、図12に示すように、位置信号Spを微分して速度信号Svをマルチプレクサ10および微分器20に出力する微分器9を有する鍵盤楽器1Gとすればよい。
<変形例10>
アコースティックピアノにおいては、ダンパペダルをオンした場合とオフした場合とで、反力が異なる。そこで、ダンパペダルのオン/オフを検出するとともに、このオン/オフに従って使用する力覚付与テーブルを切り換えるようにしてもよい。この場合には、ダンパペダルオン用、オフ用それぞれに対応する力覚制御データを記憶部104に記憶しておき、CPU101は、ダンパペダルの操作に応じて、対応する力覚制御データを読み出して力覚付与テーブルに割り当てるようにすればよい。
<変形例11>
力覚付与テーブルは、上述した実施形態で説明したもの以外を増設することもできる。すなわち、何らかの感触を演奏者に与える要素があれば、それを再現する力覚付与テーブルを設定し、パラメータとしては、位置信号Sp、速度信号Sv、加速度信号Saなど任意のものを2つ以上選択して読み出すように構成すればよい。これを変形例9の構成に適用した場合は、図13に示すように、上述した実施形態における構成に、マルチプレクサ60aとAD変換器60bとを有する増設部60を設け、増設部60からの出力を力覚付与テーブル3xで変換して加算器37において力覚制御値Sumに加算する構成を有した鍵盤楽器1G’とすればよい。なお、増設する力覚付与テーブル3xのパラメータとしては実施形態で用いたもの以外を用いてもよい。また、力覚付与テーブルは、3次元(パラメータが2つ)に限らず、より多くのパラメータを用いて多次元構成としてもよいし、図中に示した力覚付与テーブル3xのように2次元(パラメータが1つ)であってもよい。
また、アコースティックピアノには、打弦後のハンマがハンマーアクション機構に戻ったときのハンマの暴れを防止するために、バックチェックが設けられているが、強い打弦があった場合に、ハンマがバックチェックにあたった後のバックチェック振動に対応する力覚を再現できるようにしてもよい。この場合には、図13に示すように加算器38を設け、CPU101が所定のタイミングで信号を出力し、加算器38において、力覚制御値Sumに加算するようにすればよい。所定のタイミングは、バックチェック振動が発生するタイミングであり、これは打鍵が急峻か否かを検出することによって判断できるから、位置信号DSpと速度信号DSvとに基づいて、バックチェック振動が発生するタイミングを決定すればよい。
<変形例12>
上述した実施形態においては、力覚付与テーブルのパラメータは、位置信号DSp、速度信号DSv、加速度信号DSaを用いていたが、加速度の変化分、すなわち、加加速度を用いてもよい。この加加速度は、自動車などの乗り心地などの指標として用いられることもあり、人間の感覚に重要な要素として知られている。したがって、加加速度を検出し、これを用いる力覚付与テーブルを設定して、力覚制御をしてもよい。
<変形例13>
上述した実施形態においては、押鍵行程と離鍵行程のヒステリシス特性を模倣するために、鍵位置に関する力覚付与テーブル30、31を鍵速度の符号に応じて選択するようにしているが、鍵加速度の符号などの他の選択情報により選択するようにしてもよい。また、鍵速度あるいは鍵加速度のヒステリシス特性をも模倣するようにしてもよく、その場合には、鍵速度あるいは鍵加速度に関する力覚付与テーブルを複数設け、鍵速度や鍵加速度の符号などの選択情報に応じて選択するようにしてもよい。このとき、鍵速度あるいは鍵加速度に関する力覚付与テーブルの切り替えは、鍵位置の場合と同様に、選択情報の変化が基準期間を越えた場合にのみ行うことは勿論である。さらに、基準期間を鍵位置、鍵速度、鍵加速度で各々独立に設定可能にすれば、よりきめ細かい制御が可能となる。
<変形例14>
上述した実施形態においては、鍵の位置に関する時間に関する情報を、ヒステリシス特性を模倣するための力覚付与テーブルの切り替えに利用するようにしていたが、これに限らず、所定タイミング(例えば、押鍵が開始された瞬間、あるいは、鍵位置/鍵速度/鍵加速度が0を含む所定値になった瞬間など)から時間経過に応じて力覚を制御するようにしてもよい。これにより、例えば、所定タイミングからの時間が長くなるほど反力を大きくするか、あるいは小さくするといった制御が可能になる。
<変形例15>
上述した実施形態においては、離鍵過程においても力覚制御をしているが、離鍵時の感触があまり問題ない場合は、押鍵過程のみの力覚を制御してもよい。
<変形例16>
上述した実施形態におけるCPU101が実行するプログラムはROM102に記憶されたプログラムであったが、インターフェイス108を介して、当該プログラムが記憶された様々な記録媒体から取得したり、サーバなど外部装置との通信によって当該プログラムを取得したりして、外部から取得するようにしてもよい。
<変形例17>
上述した実施形態、各変形例においては、鍵盤機構100の鍵2に力覚を付与する鍵盤楽器1を例として説明したが、ダンパペダルやホイールなどの演奏操作子、また、ミキサなどの電子機器の操作子に適用してもよい。例えば、ダンパペダルに適用する場合には、図1における鍵盤機構100に替えて、または併せて、ペダル機構600を有する鍵盤楽器1Hとすればよい。以下にペダル機構600の構成の一例について説明する。
図14は、ペダル機構600の構成を上面から示す説明図である。ペダル機構600は、電子鍵盤楽器などで用いられるダンパペダルなどの操作子である複数のペダル部601−A、601−B、601−C(以下、総称してペダル部601という)を有し、それぞれ回動支点602−A、602−B、602−C(以下、総称して回動支点602という)によって筐体600aに回動自在に設けられている。603−A、603−B、603−Cは、後述する下部アクチュエータ610のシャフト611が、ペダル部601を押し上げる際の押し上げ部分を示し、604−A、604−B、604−Cは、後述する上部アクチュエータ620のシャフト621が、ペダル部601を押し下げる際の押し下げ部分を示している。
図15は、ペダル機構600の構成について、1つのペダル部601に対応する構成を横方向から示す説明図である。ペダル機構600は、下部アクチュエータ610aを有する自動演奏部610および力覚制御部1Hbを有する。下部アクチュエータ610aは、実施形態におけるアクチュエータ4の機能を有し、自動演奏時などにおいて、CPU101の制御に基づいて供給される駆動信号DR10によりシャフト611を上下移動させ、回動支点602を中心軸としてペダル部601を図中の反時計回りに回動させる。
力覚制御部1Hbは、上部アクチュエータ620を有する電気負荷部1HdおよびバネP622を有する機械負荷機構3Hを有する。上部アクチュエータ620は、実施形態におけるアクチュエータ4およびセンサ5の機能を有し、上部アクチュエータ620から出力される位置信号Spと力覚付与テーブルとに基づくCPU101の制御に応じて供給される駆動信号DR11によりシャフト621を上下移動させ、回動支点602を中心軸としてペダル部601を図中の時計回りに回動させる方向に力を与えることにより、ペダルに力覚を付与する。
バネQ612、バネR613は、それぞれ下部アクチュエータ610aの部分的バックアップ用バネ、がたつき防止用バネであり、安定性を向上させる機能を有し、シャフト611に対して力を与えている。バネP622は、変形例2における弾性負荷を与える機械負荷機構3Bに対応し、シャフト621に力を与えている。すなわち、このバネP622により、上部アクチュエータ620がペダル部601に与える負荷を低減することができる。
このような構成における上部アクチュエータ620の負荷の低減について、図16を用いて説明する。図12は、ダンパペダルの踏み込み時、戻し時の押下量と荷重負荷を示す負荷特性(それぞれ、PL11、PL12)、すなわち力覚の特性を示している。また、バネQ612(バネ定数kq)、バネR613(バネ定数kr)、バネP622(バネ定数kp)の負荷特性についても示している。図に示すように、これらのバネについての全体の弾性負荷(以下バネP’という)については、F=kp’・x(ここで、kp’=kp−(kq+kr))により表される。そして、力覚付与テーブルについては、ダンパペダルの負荷特性からバネP’の弾性負荷を除いた部分のテーブルとすればよい。
例えば、ダンパペダル戻し負荷特性PL12については、バネP’の弾性負荷により、上部アクチュエータ620は、図中の斜線部に対応する微妙な変化となる負荷を与えるだけでよく、特に荷重負荷が大きくなるダンパペダルの押下量が大きい領域においては、大半はバネP’の弾性負荷で対応でき、バネP’の弾性負荷が無い場合に比べて大幅に消費電力を低減することができる。このように、鍵盤楽器1Hは、鍵2に対する力覚の付与を行うだけでなく、様々な操作子に対して力覚を付与することができる。なお、上述した実施形態、各変形例において説明したように負荷の程度を変化させたり、無負荷状態としたりすることを適用してもよい。また、図15に斜線で示したような所定の質量の負荷部材630を設けて、慣性負荷を与えるようにしてもよく、変形例4で説明したような粘性負荷を与える機構を設けてもよい。さらに、実施形態と同様に、利用者が操作部105を操作することによって選択した楽器の種類に対応する力覚制御データに基づいて力覚付与テーブルを変更してもよいし、バネP’の弾性負荷を変化させるようにしてもよい。このように、鍵盤楽器1Hは、鍵盤機構100とペダル機構600をそれぞれ並行して力覚の制御をすることができ、さらに別の種類の操作子の力覚を同時に制御してもよい。
<変形例18>
上述した実施形態においては、機械負荷機構3の支点303の位置は変化しなかったが、図18に示すように鍵2の長手方向の所定範囲内で移動可能としてもよい。この移動は、支点303と接続されたガイド350、回転軸351およびガイド350と当接する回転体352によって実現する。すなわち、回転軸351が回転すると、回転体352が回転軸351を中心に回転して移動すると、回転体352に当接するガイド350が筐体202に沿って鍵2の長手方向に移動することになる。そして、ガイド350が移動すると、機械負荷機構3が移動する。これにより、鍵2と作用部301とが当接する位置が変化する。したがって、鍵2の押下量が同じ量であっても作用部301の移動量を異ならせることができるから、利用者が鍵2を同じように押下しても作用部301が移動する加速度が変わることになり、反力を変えることもできる。
このとき、支点303の位置が変化して鍵2によって当接される作用部301の当接位置が変わることにより、鍵2の押下に伴う作用部301に係る当接位置の振れ幅が変化して、ハンマ300とハンマストッパ205とが衝突するときの鍵2の押鍵量が変化する。これを防ぐために、図19に示す構成にしてもよい。すなわち、上記図18の構成において、ガイド350の移動に対応する筐体202の部分が傾斜した傾斜部206となっている。このようにすることで、鍵2と作用部301とが当接する位置が変わっても、反作用部302の振れ幅が変わる一方、作用部301に係る当接位置の振れ幅は変化しない。これにより、ハンマ300とハンマストッパ205とが衝突するときの鍵2の押鍵量が、支点303の位置によらず変化しないようにすることができる。
また、図19に示す構成ではなく、図20に示す構成としてもよい。すなわち、上記図18の構成において、作用部301と鍵2との当接の態様を変更したものである。この態様は、作用部301に当接部360が設けられ、鍵2に受板207が設けられ、当接部360と受板207とが当接するものとなっている。このようにすることで、支点303の位置が変化して当接部360によって当接される受板207の当接位置が変わる。したがって、当接部360の振れ幅が変わらないようにすることができるから、ハンマ300とハンマストッパ205とが衝突するときの鍵2の押鍵量が、支点303の位置によらず変化しないようにすることができる。なお、鍵2、受板207の形状によっては、支点303の位置によって当接部360の振れ幅が変化してしまう場合も想定されるが、その場合には、ハンマ300とハンマストッパ205とが衝突するときの鍵2の押鍵量が支点303の位置によらず変化しないように、鍵2の形状を調整し、または鍵2の長手方向に対して受板207の厚さ、形状を調整すればよい。
<変形例19>
上述した変形例2における弾性負荷を鍵2に与えるときに、バネ320を用いる代わりに、図21に示すような弾性負荷付アクチュエータ450を用いて、アクチュエータ4と置き換えてもよい。なお、センサ5については、図示していないが、実施形態のアクチュエータ4の構成と同様に弾性負荷付アクチュエータ450に接続して用いることができる。以下、弾性負荷付アクチュエータ450の構成について、図21を用いて説明する。弾性負荷付アクチュエータ450は、実施形態におけるアクチュエータ4と、このアクチュエータ4の上部に結合され、弾性負荷を与えることができる弾性負荷機構370とを有する。
アクチュエータ4のプランジャ402は、弾性負荷機構370の中心軸を通り、弾性負荷機構370の上面および底面に設けられた孔を通過可能となっている。また、プランジャ402は、係合部371を有する。この係合部371は、プランジャ402の一部に設けられた凹部であり、補助アクチュエータ372のプランジャ373が突出したときに、プランジャ373と係合部371の凹部が係合するようになっている。補助アクチュエー
タ372は、CPU101によってプランジャ373を突出させるか否かの制御が行われる。すなわち、CPU101は、プランジャ373と係合部371とを係合させるか係合を解除するかを制御する。
ガイド板374は、プランジャ402に沿って上下方向に移動可能になっている。ガイド板374と補助アクチュエータ372とは結合され、ガイド板374とアクチュエータ4との間に設けられたバネ375によって、上部方向へ付勢されている。
次に、弾性負荷付アクチュエータ450の動作について、図22、23を用いて説明する。プランジャ373と係合部371とが係合していないときには、図22に示すように、鍵2の押下によりプランジャ402が下方に移動しても弾性負荷機構370はプランジャ402に弾性負荷を与えない。一方、プランジャ373と係合部371とが係合しているときには、図23に示すように、鍵2の押下によりプランジャ402が下方に移動するとバネ375が圧縮されるため、弾性負荷機構370はプランジャ402に弾性負荷を与えることになり、プランジャ402に当接する鍵2に対しても弾性負荷を与える。このように、CPU101は、プランジャ373と係合部371とを係合させるか否かの制御により、バネ375の弾性負荷を鍵2に与えるか否かを制御することができる。
<変形例20>
上述した変形例2においては、鍵2に対して弾性負荷をバネ320によって与え、支持板321を上下方向に移動させて弾性負荷の大きさを変化させていたが、別の方法によって変化させてもよい。例えば、図24に示すように、バネ320については、筐体202に固定して設置されるものとし、バネ320とは鍵2を介して反対側の面に当接されるバネ322およびバネ322の位置を制御する位置制御部323を設ければよい。位置制御部323は、上下方向に移動することにより、バネ322と鍵2とを当接させたり離間させたりするとともに、当接している場合には、バネ322を圧縮させ初期長さを制御する。また、位置制御部323は、鍵2の長手方向に水平移動することにより鍵2とバネ322との当接位置を変更することができる。これによって、鍵に作用する強さが可変となる。なお、位置制御部323は、CPU101によって、反力制御データに基づいて位置が制御される。このようにして、固定された負荷とは別に負荷を設け、別に設けられた負荷の大きさを制御することで、全体としての鍵2に与える全体としての負荷を低減してもよい。
<変形例21>
上述した実施形態、変形例における機械負荷機構3については、それぞれ独立して用いるだけでなく、それぞれを適宜組み合わせて併用することもできる。また、鍵2に反力を与える位置は、どのような位置であってもよく、鍵2の回転支持部201の近くに設置するか、遠くに設置するかによっても、鍵2に与える反力の影響を異なるものとすることができる。例えば、図10に示すように、変形例2による構成と、変形例4による構成を組み合わせた鍵盤楽器1Dとすればよい。
<変形例22>
上述した実施形態、変形例における構成については、自動演奏時において、発音に対応する鍵2を駆動させるアクチュエータを有する自動演奏鍵盤楽器にも適用することができる。このような場合には、自動演奏時に鍵2を駆動する機構を設け、自動演奏時には、利用者が鍵2を操作することが無く、力覚を付与する必要が無いから、機械負荷機構3における負荷ができるだけ小さくなるようにCPU101が制御し、望ましくは無負荷状態にするようにすればよい。このようにすれば、自動演奏時に鍵2を駆動させるアクチュエータの負荷を低減することができ、省電力化が可能である。なお、発音に対応する鍵2を駆動させるアクチュエータは、アクチュエータ4であってもよいし、図示しない別のアクチュエータを設けて鍵2を駆動させるものであってもよい。また、変形例17に示したよう
なペダル部601にも適用することができる。
また、逆に力覚駆動アクチュエータと自動演奏駆動アクチュエータの両方を同時活用することで、次のようなことが可能となる。第1に、力覚動作時に鍵の揺動を再現できる。例えば、指を離したときにハンマの戻りによって鍵が揺れる等のアコースティックピアノの動作を正確に再現することができる。第2に、アクチュエータを差動駆動することでサーボゲインを大幅に向上させることができる。これによって、自動演奏時に、駆動中の鍵を急停止させることができるなど、サーボ制御安定化に重要な役割、効果がある。
このような鍵盤楽器は、演奏データに基づく自動演奏を行う自動演奏モードと、自動演奏を行わず、利用者による演奏が行われる通常演奏モードとを有する。いずれかのモードの選択は、利用者による操作部105の操作などによって行われる。そして、通常演奏モードが選択された場合には、上述した実施形態、変形例の構成により動作し、自動演奏モードが選択された場合には、上述のように機械負荷機構3における負荷ができるだけ小さくなるように制御される。そして、自動演奏時に鍵2を駆動させるアクチュエータによって、演奏データに基づく発音に対応する鍵2が駆動されるようにすればよい。なお、機械負荷機構3における負荷を小さくするときには、最小負荷でなくてもよく、通常演奏モードの場合における負荷よりも低減されるものとなっていれば、省電力化が可能である。
また、このように自動演奏時に負荷を低減する構成は、アコースティックピアノなどにも適用することができる。以下、複数の具体例を説明する。
例えば、図25に示すようなアコースティックピアノに用いられるダンパペダル機構の構成において、自動演奏時にペダル部701を駆動するアクチュエータ702を、変形例19における弾性負荷付アクチュエータ450とし、プランジャ402と突上シャフト703とを接続すればよい。このダンパペダル機構は、ペダル部701が押下されて突上シャフト703が上方に移動すると、ペダルレバー704が上方に移動し、リフタ707、ダンパーヘッド708を移動させる構成であり、ペダルレバー704と筐体705との間には、バネ706が設けられている。そして、突上シャフト703は、バネ706の弾性負荷およびペダルレバー704、リフタ707、ダンパーヘッド708によって下方に付勢され、ペダル部701を押下するときの負荷になっている。
ここで、自動演奏時にアクチュエータ702がペダル部701を駆動する場合には、突上シャフト703の下方への付勢力と逆の駆動力を必要とするが、アクチュエータ702において、上方への弾性負荷を発生、すなわち、変形例19における弾性負荷付アクチュエータ450のプランジャ373と係合部371とを係合させることにより、バネ375の上方への弾性負荷を発生させれば、バネ375がバネ706の弾性負荷を低減するように作用してアクチュエータ702で駆動することができる。一方、自動演奏時でないときには、アクチュエータ702で駆動することなくプランジャ373と係合部371とを係合を解除した状態として、バネ375による上方への弾性負荷を発生させないことにより、ペダル部701の押下時の弾性負荷は、バネ706の弾性負荷がそのまま低減されていないものになる。これにより、自動演奏時には、自動演奏時でないときのペダル部701への弾性負荷より低減させることができるから、アクチュエータ702の駆動力が少なくてもペダル部701を駆動させることが可能となる。
また、アクチュエータ702は、弾性負荷機構370が設けられていないアクチュエータとして、弾性負荷を低減させる構成を別の手段によって設けてもよい。例えば、図26に示すように、バネ706の初期荷重を変更できるように、バネ706の初期長さを調整するギヤードモータなどにより構成される圧縮伸長部709を設けてもよい。そして自動演奏時にはバネ706を伸長して初期荷重を低減し、自動演奏時以外の場合にはバネ706を圧縮して初期荷重を増加させればよい。
また、図27に示すように、バネ706とペダルレバー704を介して反対側にバネ710を設け、バネ710の位置を制御可能な位置制御部711を設ければよい。この構成は、変形例20における構成と同様な構成であって、ペダルレバー704とバネ710が当接する位置、およびバネ710を圧縮して初期長さの制御をして、バネ710のペダルレバー704に与える弾性負荷の大きさを変更することができる。そして自動演奏時には、バネ710による弾性負荷をペダルレバー704に与えることにより、バネ706による弾性負荷を低減させることができる。
なお、図25、図26、図27に示すような構成において、自動演奏時にペダルレバー704への弾性負荷が低減されたときに、ペダルレバー704の位置を安定させるために図示しない別の暴れ防止バネを設けてもよい。また、アクチュエータ702のプランジャの重さをキャンセルして、利用者がペダル部701を押下するときの本来の力覚に近づけるために、そのプランジャの重さに応じた上方への付勢力を与えるキャンセルバネを設けてもよい。また、圧縮伸長部709がバネ706を圧縮伸長するとき、および位置制御部711がバネ710の位置、初期長さを制御するときには、ノイズ発生やペダル部701が揺れ動くことを避けるために、所定速度より遅い速度で制御することが望ましい。
<変形例23>
上述した実施形態においては、機械負荷機構3の回転体304aは、その回転位置に応じて機械負荷機構3が鍵2に対して反力を与える負荷状態と、機械負荷機構3が鍵に対して反力を与えないように無効化した無負荷状態とを切り替えていたが、鍵2の押鍵に伴う移動範囲において、所定範囲においては負荷状態、それ以外の範囲においては無負荷状態となるようにしてもよい。この場合には、以下のような構成とすればよい。
記憶部104に記憶された反力制御データは、鍵2の移動範囲の少なくとも一部の範囲を指定する範囲制御値をさらに示すようにする。そして、CPU101は、記憶部104に記憶された反力制御データを読み出す際に、この反力制御データが示す範囲制御値に基づいて、回転体304aを回転させる。このとき、図28に示すように、回転体304aの回転位置は、実施形態における負荷状態と無負荷状態との間の位置に制御される。
このようにすると、鍵2の押鍵量が少ないときには、鍵2とハンマ300の作用部301とは離間状態であり、無負荷状態になっている一方、押鍵量が大きくなってくると、鍵2とハンマ300の作用部301とは当接状態となり、負荷状態になる。CPU101は、このような負荷状態となる押鍵量の範囲を範囲制御値が指定する範囲になるように回転体304の回転角度を制御すればよい。このようにすれば、鍵2の押鍵に伴う移動範囲のうち、鍵2が範囲制御値によって指定される範囲内に存在する場合には負荷状態、範囲外に存在する場合には無負荷状態とすることができる。なお、負荷状態にある鍵2の押鍵量から、さらに押鍵量が大きくなったときに無負荷状態にする場合には、CPU101は、位置センサ5aの検出部502から出力される位置信号Spから押鍵量を検出し、範囲制御値が指定する範囲外に鍵2が到った場合に、回転体304aの回転位置を図3に示す位置に制御して無負荷状態にしてもよい。このように、範囲制御値が指定する範囲内に鍵2が存在するか否かは、CPU101が位置信号Spから検出するようにしてもよい。
<変形例24>
上述した各変形例において、機械負荷機構3の負荷の大きさを変化させることができる場合には、反力制御データが示す反力制御値に応じて負荷の大きさを変化させていたが、鍵2の押下量に応じて負荷の大きさを変化させられるようにしてもよい。この場合には、記憶部104に記憶された反力制御データは、反力制御値と鍵2の押下量との関係を示すデータとし、CPU101は、位置センサ5aの検出部502から出力される位置信号Spから押鍵量を検出し、検出した押鍵量に対応する反力制御値に基づいて機械負荷機構3の負荷の大きさを変化させればよい。
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