JP2010039104A - 電子楽器 - Google Patents

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賢一 西田
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Abstract

【課題】低音部から高音部に向かって次第に軽い鍵タッチとなるように、スイッチ部材を配置した鍵盤装置を搭載した電子楽器において、押鍵速度に応じて発生楽音の音量を適切に制御する。
【解決手段】鍵番号KNごとに、押鍵速度検出における時間計測値TM(KN)と発生楽音の音量の特性を音量変換テーブルとして予め記憶しておく。この音量変換テーブルは、鍵域の違いによって発生する押鍵速度VELと時間計測値TM(KN)の差を是正するように調整されている。押鍵時には、音量変換テーブルを参照して各鍵22の音量制御値VOLを求め、楽音発生回路16を制御する。
【選択図】図5

Description

本発明は、押鍵操作に応じて楽音信号を発生するとともに、発生する楽音信号の音量を押鍵速度に応じて変更する電子楽器に関する。
従来から、例えば下記特許文献1に示されているように、鍵の回動中心からスイッチ部材までの距離が低音部から高音部に向かうに従って順次短くなる位置にスイッチ部材を配置することにより、低音部から高音部に向かうに従って押鍵反力を軽くして、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を実現した鍵盤が知られている。
特許第3074797号公報
一般に、電子楽器の鍵盤のスイッチ部材は第1スイッチ及び第2スイッチを有し、押鍵操作により順次オンする。そして、電子楽器は、第1スイッチと第2スイッチがオンする時間の差の大小で発生楽音の音量の大小を制御する。すなわち、時間差が小さければ、鍵が速く操作されていると判断できるため、発生楽音の音量を大きく制御し、時間差が大きければ、鍵がゆっくり操作されていると判断できるため、発生楽音の音量を小さく制御している。
しかし、上記の鍵盤のように、スイッチ部材の配置を鍵域によって異ならせた場合、第1スイッチがオンしてから第2スイッチがオンするまでの鍵前端の押下量は、スイッチ部材の位置が鍵の支点に近いほど(高音部ほど)大きくなる。そのため、各鍵の前端部の押下速度(以下、押鍵速度という。)を一定とした場合、低音部の押鍵操作と比較して、高音部の方が、第1スイッチがオンしてから第2スイッチがオンするまでの時間が長くなり、発生楽音の音量が小さくなる。このように、上記のような鍵盤を備えた電子楽器においては、同じ弾き方をしても、鍵域により発生楽音の音量が異なってしまうという問題があった。
前記目的を達成するため、本発明の特徴は、押鍵に伴って回動する複数の鍵と、複数の鍵にそれぞれ対応して設けられて押鍵によってそれぞれ弾性変形する複数のスイッチ部材であって、鍵の回動中心部からの距離が低音部から高音部に向かうに従って順次短くなる位置に設けられた複数のスイッチ部材と、複数の鍵の押鍵に応答し、押鍵された鍵音高に対応した音高の楽音信号を発生する楽音信号発生手段とを備えた電子楽器において、スイッチ部材を、各鍵ごとに少なくとも第1スイッチ及び第2スイッチにより構成しておき、第1スイッチがオンしてから第2スイッチがオンするまでの時間を計測する計測手段と、計測された時間が小さくなるに従って大きくなる、楽音信号の音量を表す音量制御値であって、計測された時間が同一である時間値に対して音高が高い鍵ほど大きくなる音量制御値に変換する変換手段と、変換された音量制御値に応じて楽音信号発生手段にて発生される楽音信号の音量を制御する音量制御手段とを設けたことにある。この場合、変換手段は、例えば、押鍵速度が同じであるとき、全鍵域において楽音信号の音量が同じになるように、前記計測された時間を音量制御値に変換するようにするとよい。
上記のように構成した電子楽器においては、変更手段が、鍵に応じて、時間計測値に対する音量制御値の変化特性を変更できるので、鍵盤のスイッチ部材の配置を鍵域によって異ならせても、全鍵域において、同一の押鍵速度に対して同一の音量の楽音信号を発生させることができる。
また、本発明の他の特徴は、変換手段は、押鍵速度が同じであるとき、低音側の楽音信号の音量が高音側の楽音信号の音量に比べて小さくなるように、前記計測された時間を音量制御値に変換するようにしたことにある。
上記のように構成した電子楽器においては、同一の押鍵速度であれば、高音側と比較して低音側の楽音信号の音量が小さくなるので、演奏者は高音側の鍵に比べて低音側の鍵の方がより重く感じる。これにより、アコースティックピアノの鍵タッチ感にさらに近づけることができる。
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて説明すると、図1は、本発明に係る電子楽器の全体ブロック図である。この電子楽器は、鍵盤11、パネル操作子12、ペダル操作子13、操作子インターフェース回路14、表示器15、楽音信号発生回路16、サウンドシステム17、コンピュータ部18、記憶装置19及び外部インターフェース回路20を備えている。
図2は、鍵盤11の縦断側面図である。複数の鍵22は所定数ずつ(例えば白鍵ならば3つ又は4つずつ、黒鍵ならば5つずつ)複数のグループに分けられている。各グループに属する鍵は、鍵ユニット23として樹脂により一体成型されている。各鍵ユニット23においては、複数の鍵22が各鍵22から後方にそれぞれ延設された垂直方向に薄肉の延設部24をそれぞれ介して、横方向に延設されて垂直方向に薄肉の連結部25に共通に接続されている。複数の鍵ユニット23の連結部25は、上下に重ねられて鍵フレーム26の後端部にねじ27により固定されている。この構成により、各鍵22は、それらの前端部を延設部24の変形により上下方向に揺動可能にして、連結部25にて鍵フレーム26に支持されている。そして、鍵22の押鍵時には、鍵22の前端部が鍵フレーム26に設けた鍵ガイド(図示省略)に沿って下方に変位する。鍵22の離鍵時には、延設部24の弾性力により、鍵22の前端部が上方へ復帰する。
鍵フレーム26は、複数の鍵22の下方にて横方向に延設されている。鍵フレーム26は金属または樹脂の一体成型により、又は金属及び樹脂との複合により、適宜凹凸を有する板状に構成された部材である。鍵22は、中間部位置にて、それらの下面からストッパ片28を下方に一体的に延設させている。このストッパ片28は、下部を後方へ屈曲させた突出部28aを有する。ストッパ片28の突出部28aは、鍵フレーム26の縦壁部に設けた開口部29から後方へ侵入し、鍵22の前部の上下方向の変位を許容する。開口部29を含む縦壁部の上端から後方へ向かう水平部下面には、鍵22の前端部の上限位置を規定する上限ストッパ30が固着されている。一方、開口部29を含む縦壁部の下端から前方へ向かう水平部上面には、鍵22の前端部の下限位置を規定する下限ストッパ31が固着されている。上限ストッパ30及び下限ストッパ31は、横方向(紙面に垂直方向)に延設された長尺状かつ平板状の緩衝材(例えばフェルト)で構成されて、鍵22のストッパ片28の突出部28aとの衝突による衝撃を緩和するようになっている。
鍵22のストッパ片28の後方位置には、スイッチ駆動部32がそれぞれ設けられている。スイッチ駆動部32の下方の鍵フレーム26上には、横方向に延設されたプリント基板33が固着されている。プリント基板33上には、スイッチ部材34が固着されている。ここで、スイッチ部材34は図3に示すように、スイッチ部材34の弾性による押鍵反力が低音部(図3において左側)から高音部(図3において右側)に向かうに従って順次軽くなるように、鍵22の揺動中心(すなわち連結部25)からスイッチ部材34の中心部までの距離が低音部から高音部に向かうに従って順次短くなるように配置されている。
スイッチ部材34は、ゴム、シリコンなどの弾性部材によって一体成型される。スイッチ部材34は、図4に示すように、それぞれ板状のプレート34aと、鍵22に対応して前後に配置した一対の第1スイッチ34b及び第2スイッチ34cからなる。第1スイッチ34b及び第2スイッチ34cは、共に同一の形状及び厚みを有し、それぞれ内部に空洞を有する半球状(いわゆる「おわん型」)に形成され、中央部に円柱状部分を上下に突出させている。円柱状部分の下面には電気接点がそれぞれ設けられ、同接点はプリント基板33上に設けた一対の電気接点にそれぞれ対向している。また、第1スイッチ34bの円柱状部分は、第2スイッチ34cの円柱状部分よりも下方に長く形成されている。そして、鍵22の押鍵に伴うスイッチ駆動部32の下方への移動時に、最初に第1スイッチ34bの電気接点と、プリント基板33上の対向する電気接点とがそれぞれ接触(オン)し、次に第2スイッチ34cの電気接点とプリント基板33上の対向する電気接点とが接触(オン)するようになっている。また、離鍵時には、第2スイッチ34c、第1スイッチ34bの順にそれぞれの電気接点が離間(オフ)する。
パネル操作子12は、鍵盤11の後方に位置する操作パネル上に設けられた複数の操作子からなる。これらの操作子は演奏者の手によって操作されるもので、発生される楽音信号の音色、音量、効果等の楽音特性を設定する操作子を含み、電子楽器全体の動作を設定するためのものである。これらの操作子には、オンオフ操作子に加えて、回転式操作子、スライド式操作子などの各種操作子が含まれる。また、パネル操作子12にはオンオフ操作子に対応したスイッチ、回転式操作子に対応したボリューム又はロータリーエンコーダ、スライド式操作子に対応したボリューム又はリニアエンコーダなど、各操作子に対応した作動素子も含まれる。
ペダル操作子13は、電子楽器の下部に位置して、演奏者の足によって操作されるもので、発生される楽音信号の音色、音量、効果などの楽音特性を設定する。これらの操作子には、オンオフ操作子に加えてスライド式操作子が含まれる。また、ペダル操作子13には、オンオフ操作に対応したスイッチ、スライド式操作子に対応したボリューム又はリニアエンコーダなどの各操作子に対応した作動素子も含まれる。
鍵盤11、パネル操作子12及びペダル操作子13は、バス35に接続された操作子インターフェース回路14に接続されている。そして、鍵盤11、パネル操作子12及びペダル操作子13の操作を表す信号が、操作子インターフェース回路14及びバス35を介して後述するコンピュータ部18に供給されるようになっている。表示器15は、表示画面上に文字、図形などを表示するためのもので、液晶ディスプレイ(LCD)によって構成されている。この表示器15の表示は、バス35を介してコンピュータ部18によって制御される。
楽音信号発生回路16は、鍵盤11の演奏操作に応じたディジタル楽音信号を生成して、同ディジタル楽音信号に対応した楽音を、サウンドシステム17を介して放音する。サウンドシステム17は、ディジタル楽音信号をアナログ楽音信号にD/A変換するD/A変換器、変換したアナログ楽音信号を増幅するアンプ及び増幅されたアナログ楽音信号を音響信号に変換して出力するスピーカを備えている。
コンピュータ部18は、バス35にそれぞれ接続されたCPU18a、タイマ18b、ROM18c及びRAM18dからなり、後述するプログラムを実行する。記憶装置19は、HDD、FDD、CD−ROM、MO、DVDなどの大容量の不揮発性記録媒体と、同各記録媒体に対するドライブユニットを含むものであり、後述するデータ及びプログラムの記憶及び読出しを可能にしている。これらのデータ及びプログラムは予め記憶装置19に記憶されていてもよいし、外部インターフェース回路20を介して外部から取り込んでもよい。
外部インターフェース回路20は、MIDIインターフェース回路及び通信インターフェース回路を含んでおり、他の電子音楽装置、パーソナルコンピュータなどのMIDI対応の外部機器に接続可能となっているとともに、インターネットなどの通信ネットワークに接続可能となっている。そして、各種プログラム及びデータが、MIDI対応の外部機器及びインターネットを介した各種サーバコンピュータから、外部インターフェース回路20を介して入力可能となっている。
次に、上記のように構成した実施形態の動作について説明する。図示しない電源スイッチの投入により、コンピュータ部18は図5の押離鍵処理プログラムの実行を開始する。そして、この押離鍵処理プログラムの実行中、パネル操作子12及びペダル操作子13が操作された場合には、図示しない楽音特性制御用の各種プログラムが実行される。
演奏者が、パネル操作子12及びペダル操作子13のいずれかの操作子を操作すると、コンピュータ部18は図示しない楽音特性制御用のプログラムを実行する。この楽音特性制御用プログラムの実行により、コンピュータ部18は、操作子の操作に応じて、発生される楽音信号の音色を指定する音色指定信号TC、同楽音信号に付与される効果を指定するための効果指定信号EFなどを楽音信号発生回路16に供給する。楽音信号発生回路16は、これらの音色指定信号TC、効果指定信号EFなどに基づいて、発生する楽音信号の音色、効果などを制御する。
次に、押離鍵処理プログラムについて詳しく説明する。押離鍵処理プログラムの実行は
図5のステップS10にて開始され、コンピュータ部18は、ステップS11〜S18からなる処理を繰り返し実行する。ステップS11においては、鍵番号KN(KN=1,2,3,・・・127)が順次更新される。鍵番号KNは、鍵盤11の複数の鍵22のいずれかを指定するもので、この鍵番号KNの更新により、各鍵22が順番に繰り返し指定される。このステップS11の処理後、コンピュータ部18は、ステップS12〜S14にて、鍵番号KNによって指定される鍵22の押離鍵に伴う第1スイッチ34b及び第2スイッチ34cの状態変化を検出する。鍵番号KNによって指定される鍵22が押離鍵操作されることなく、スイッチ部材34の状態が変化しなければ、コンピュータ部18はステップS12〜S14にてそれぞれ「No」と判定して、ステップS11の鍵番号KNの更新処理を繰り返し実行する。
鍵番号KNによって指定される鍵22が押鍵操作されて、鍵22に対応したスイッチ部材34の第1スイッチ34bがオフ状態からオン状態に変化すると、コンピュータ部18はステップS12にて「Yes」と判定し、ステップS15にて鍵番号KNに関する時間計測を開始する。すなわち、鍵番号KNによって指定される時間計測値TM(KN)が「0」にクリアされ、以降、タイマ18bの制御の下、時間計測値TM(KN)が所定の短時間ごとに順次カウントアップされる。その後も、鍵番号KNによって指定される鍵22の押鍵が続行されて、鍵22に対応したスイッチ部材34の第2スイッチ34cがオフ状態からオン状態に変化すると、コンピュータ部18は、ステップS13にて「Yes」と判定し、ステップS16にて後述の音量変換テーブルを参照して、鍵番号KNによって指定される時間計測値TM(KN)に対応した音量制御値VOLを決定する。
音量変換テーブルは、鍵番号KNごとにそれぞれ専用に設定され、ROM18c内に用意されている。または、音量変換テーブルを記憶装置19内に用意しておき、電源投入時RAM18d内に転送して記憶されている。音量変換テーブルは、スイッチ部材34によって計測した時間計測値TM(KN)と楽音信号発生回路16に供給する音量制御値VOLとの対応表で、全鍵域において、押鍵速度VELが同じであれば、同じ音量の楽音信号が発生されるように鍵番号KNごとに調整されている。そのため、音量変換テーブルは、図6に示すように、鍵番号KNごとに特有の変化特性を有する。具体的には、時間計測値TM(KN)が小さくなるに従って、音量制御値VOLは大きな値となる。また、時間計測値TM(KN)が同一であれば、鍵番号KNが大きいほど音量制御値VOLは大きな値となる。
なお、すべての鍵22についてではなく、所定の鍵域ごとに前記のような音量変換特性を用意しておき、各鍵22の音量制御値VOLを線形補間により求めるようにしてもよい。すなわち、複数の鍵22を所定数ずつ(例えばオクターブごと)複数のグループに分け、各グループ内の代表的な鍵22の音量変換テーブルをROM18c内に用意しておく。または、前記のような音量変換テーブルを記憶装置19内に用意しておき、電源投入時に記憶装置19からRAM18d内に転送して記憶しておいてもよい。そして、各グループの代表的な鍵22の間に位置する鍵22の音量制御値VOLについては、代表的な鍵22の音量変換テーブルを用いて、線形補間により求める。これによれば、音量変換テーブルのための記憶容量を大幅に削減できる。
そして、ステップS17において、コンピュータ部18は、鍵番号KNによって指定される鍵22の鍵音高を表すピッチデータPT、鍵22が押鍵されたことを表すキーオン信号KON及び前記計算した音量制御値VOLを楽音信号発生回路16に供給する。楽音信号発生回路16は、ピッチデータPTで指定された音高の周波数で、音色指定信号TCで指定された音色の音源波形を生成し、この音源波形に対し、前述の効果指定信号EFに基づいて効果を付与する。そして、音量制御値VOLが小さくなるに従って、生成された音源波形の振幅が小さくなるように減少させて、サウンドシステム17に楽音信号を供給する。サウンドシステム17は、前記供給された楽音信号に対応した楽音を放音する。
一方、前記押鍵操作されていた鍵22、すなわち鍵番号KNによって指定される鍵22が離鍵されると、鍵22に対応したスイッチ部材34の第1スイッチ34bがオン状態からオフ状態に変化する。この変化に応答して、コンピュータ部18は、ステップS14にて「Yes」と判定し、ステップS18にて楽音信号の生成を終了するよう制御する。すなわち、コンピュータ部18は、楽音信号発生回路16にキーオフ信号KOFを出力する。すると、楽音信号発生回路16にて生成される楽音信号は減衰し、その後消滅する。よってサウンドシステム17から放音される楽音も、鍵22の離鍵に応答して減衰し、その後消滅する。
上記実施形態によれば、鍵番号KNに応じて、音量変換テーブルを選択的に変更することができるので、各鍵22に対するスイッチ部材34の位置を鍵域によって異ならせたとしても、全鍵域において、同じ押鍵速度VELに対する発生楽音の音量を同一の音量に揃えることができる。したがって、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができ、演奏者の意図したとおりの演奏が可能になる。
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態においては、スイッチ部材34は2つのスイッチ(第1スイッチ34b及び第2スイッチ34c)で構成した。しかし、これに代えて、スイッチ部材をさらに多くのスイッチ(3つ以上)で構成してもよい。例えばスイッチ部材を押鍵操作に伴って第1スイッチ、第2スイッチ及び第3スイッチの順にオンする3つのスイッチで構成した場合、上記実施形態と同様の押離鍵処理プログラムにより、コンピュータ部18は、第2スイッチがオンした時点から時間計測を開始し、第3スイッチがオンしたとき時間計測を終了する。この時間計測値と発生楽音の音量の関係を、鍵22ごとに予め音量変換テーブルとしてROM18c内に用意しておく。または、前記のような音量変換テーブルを記憶装置19内に用意しておき、電源投入時に記憶装置19からRAM18d内に転送して記憶しておく。また、離鍵操作により、第1スイッチがオフした時点で、コンピュータ部18がキーオフ信号KOFを楽音信号発生回路16に出力するようにする。このように構成しても、上記実施形態と同様の動作及び効果が得られる。
また、上記実施形態においては、押鍵速度VELが同じであれば、全鍵域において発生される楽音の音量が同一となるように、予め音量変換テーブルを作成して、ROM18c内に用意しておいた。または、前記のような音量変換テーブルを予め記憶装置19内に用意しておき、電源投入時に記憶装置19からRAM18d内に転送して記憶しておいた。しかし、これに代えて、同じ押鍵速度VEL(すなわち鍵22の前端の移動速度)であっても、高音側より低音側の音量が小さくなるような音量変換テーブルを予め作成して、ROM18c内に用意しておいてもよい。または、前記のような音量変換テーブルを予め記憶装置19内に用意しておき、電源投入時に記憶装置19からRAM18d内に転送して記憶しておいてもよい。すなわち、鍵番号KNがm(m=0,1,・・・126)の音量変換特性については、図7に示すように、全鍵域について同一の押鍵速度VELであれば音量が同一になるように設定した場合(図示A)に対し、時間計測値TM(KN)軸に沿って音量変換特性を高音側に比べて低音側を大きく左側(原点側)へ平行移動させる(図示B)。具体的には、平行移動量を低音側ほど大きくし、最高音(m=127)の音量変換特性は移動させない。また、逆に、鍵番号KNがm(m=1,2,・・・127)の音量変換特性については、全鍵域について同一の押鍵速度VELであれば音量が同一になるように設定した場合に対し、時間計測値TM(KN)軸に沿って音量変換特性を低音側に比べて高音側を大きく右側へ平行移動させてもよい。この場合、平行移動量は高音側ほど大きくし、最低音(m=0)の音量変換特性は移動させない。さらに、中間部の鍵22の音量変換特性を移動させずに、この鍵22より低音側の鍵22についての音量変換特性を、低音側ほど大きく時間計測値TM(KN)軸に沿って左側へ移動させ、高温側の鍵22についての音量変換特性を、高音側ほど大きく時間計測値TM(KN)軸に沿って右側へ移動させてもよい。これによれば、演奏者に対し、低音部の鍵が高音部の鍵に比べて、より重くなったように感じさせることができ、よりアコースティックピアノに近い鍵タッチ感を実現することができる。さらに、すべての鍵22についてではなく、所定の鍵域ごとに前記のような音量変換特性を用意しておき、各鍵22の音量制御値VOLを線形補間により求めるようにしてもよい。これによれば、よりアコースティックピアノに近い鍵タッチ感を実現するとともに、音量変換テーブルのための記憶容量を大幅に削減できる。
また、隣り合う複数の鍵22のように理想的な音量変換特性が近似する鍵22については、代表的な鍵22に対する音量変換特性を予め記憶しておき、他の鍵22については、代表的な鍵22の音量変換特性に対するシフト量、傾き補正量などを予めROM18c内に用意しておく。または、これらのシフト量、傾き補正量などを記憶装置19内に用意しておき電源投入時に記憶装置19からRAM18d内に転送して記憶しておく。そして、これらを用いて、他の鍵22の音量変換特性を演算処理により求めるようにしてもよい。ここで、シフト量とは、代表的な鍵22の音量変換特性について、音量制御値VOLを全体的に増減するための値である。また、傾き補正量とは、代表的な鍵22の音量変換特性について、時間計測値TM(KN)の増加に対し音量制御値VOLが変化する割合を補正するための値である。このように構成しても、アコースティックピアノに近似した鍵タッチ感を得ることができ、演奏者の意図したとおりの演奏が可能になる。
また、時間計測値TM(KN)から押鍵速度VELを求め、押鍵速度VELに基づいて音量制御値VOLを求めるようにしてもよい。上述のように、スイッチ部材34の配置の違いにより、押鍵速度VELが同じであっても、すなわち鍵22の前端の移動速度が同じであっても、時間計測値TM(KN)は鍵域によって異なる。したがって、上記実施形態における音量変換テーブルと同様に、予め鍵22ごとに時間計測値TM(KN)と押鍵速度VELの関係を押鍵速度変換テーブルとしてROM18c内に用意しておく。または、前記の押鍵速度変換テーブルを記憶装置19に用意しておき、電源投入時に記憶装置19からRAM18d内に転送して記憶しておく。これを用いて、押鍵時に時間計測値TM(KN)から各鍵22の押鍵速度VELを求める。全鍵域について、押鍵速度VELが同じであれば音量制御値VOLが同じになるようにするには、押鍵速度VELと音量制御値VOLの関係を定めた音量変換テーブルを一つ用意しておき、いずれの鍵22についても、この音量変換テーブルに基づいて、押鍵速度VELから音量制御値VOLを求めるようにすればよい。また、図8に示すように、鍵22ごとに押鍵速度VEL(KN)と音量制御値VOLの関係を定めた音量変換テーブルを予めROM18c内に用意しておく。または、この音量変換テーブルを記憶装置19に用意しておき、電源投入時に記憶装置19からRAM18d内に転送して記憶しておく。これにより、低音側ほど押鍵速度VEL(KN)に対する音量制御値VOLを小さくすることもできる。このように構成しても、上記実施形態及び変形例と同様の動作及び効果が得られる。
また、上記実施形態においては、音量制御値VOLにより、発生楽音の音量を制御するようにした。これに加えて、音量制御値VOLに基づいて、発生楽音の音量以外の楽音特性(例えば、ピッチ、周波数特性、効果など)も制御するようにしてもよい。これによれば、音量制御値VOLに応じて、音量以外の楽音特性も変化させることができ、豊かな表現力をもった演奏が可能となる。
本発明の実施形態に係る電子楽器の全体構成例を示すブロック図である。 図1の鍵盤の縦断側面図である。 図1の鍵盤のスイッチ部材の配置を示す図である。 図1の鍵盤のスイッチ部材の詳細断面図である。 図1のコンピュータ部で実行される押離鍵処理プログラムを示すフローチャートである。 スイッチ部材による時間計測値と音量制御値との関係を示すグラフである。 高音側に比べ低音側の音量を小さくする方法を説明した図である。 押鍵速度と音量制御値との関係を示すグラフである。
符号の説明
11…鍵盤、16…楽音信号発生回路、18…コンピュータ部、22…鍵、34…スイッチ部材、34b …第1スイッチ、34c…第2スイッチ、KN…鍵番号、TM(KN)…
時間計測値、VOL…音量制御値、VEL…押鍵速度

Claims (3)

  1. 押鍵に伴って回動する複数の鍵と、
    前記複数の鍵にそれぞれ対応して設けられて押鍵によってそれぞれ弾性変形する複数のスイッチ部材であって、前記鍵の回動中心部からの距離が低音部から高音部に向かうに従って順次短くなる位置に設けられた複数のスイッチ部材と、
    前記複数の鍵の押鍵に応答し、押鍵された鍵音高に対応した音高の楽音信号を発生する楽音信号発生手段とを備えた電子楽器において、
    前記スイッチ部材を、各鍵ごとに少なくとも第1スイッチ及び第2スイッチにより構成しておき、
    前記第1スイッチがオンしてから前記第2スイッチがオンするまでの時間を計測する計測手段と、
    前記計測された時間が小さくなるに従って大きくなる、楽音信号の音量を表す音量制御値であって、前記計測された時間が同一である時間値に対して音高が高い鍵ほど大きくなる音量制御値に変換する変換手段と、
    前記変換された音量制御値に応じて前記楽音信号発生手段にて発生される楽音信号の音量を制御する音量制御手段とを設けたことを特徴とする電子楽器。
  2. 前記変換手段は、押鍵速度が同じであるとき、全鍵域において楽音信号の音量が同じになるように、前記計測された時間を音量制御値に変換することを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
  3. 前記変換手段は、押鍵速度が同じであるとき、低音側の楽音信号の音量が高音側の楽音信号の音量に比べて小さくなるように、前記計測された時間を音量制御値に変換することを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
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