JP5257022B2 - ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム、およびその製造方法 - Google Patents

ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム、およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに関するものであり、詳しくは、優れた加工特性を有し、加工時の通過性が良好で、熱収縮特性に優れ、フィルムの切断加工時におけるヒゲ、切り粉、切断屑などの発生を抑制し、切断加工時に発生する平面性の崩れが品質上の問題となる光学用のフィルムや精密印刷用途に好適に使用される基材フィルムおよびその製造方法に関するものである。
二軸配向ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性から各種光学用フィルムとして多く利用されている。特に、優れた強度、寸法安定性が要求されるLCDのプリズムレンズシート用ベースフィルム、防眩フィルム用ベースフィルム、およびCRT用破砕防止フィルム、拡散板用途やプラズマディスプレイ用の電磁波シールド、太陽電池用裏面バックシートなどを施す際の基材フィルムや、オフセット印刷などの精密印刷を行う際の基材として好適に用いられる。
かかる二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、回転速度に差を設けたロール間で長手方向に延伸された後に、テンター内でフィルムの端部を把持された状態で幅方向に延伸され、テンター内で熱固定されることによって製造される。それゆえ、幅方向の延伸工程では、テンター内においてフィルムの両側端は把持手段により把持されているので、横延伸に伴う縦方向の収縮応力は把持手段によって拘束されている。これに対し、フィルム中央部分は把持手段による拘束力が比較的弱い状態にある。それゆえ、特にフィルムの幅方向の端部際で横延伸および熱固定時に中央部と端部の長手方向の配向および緩和の等方性に差が生じ、フィルムの幅方向におけるスリットロールの位置によって配向性が異なるという事態が生じてしまう。したがって、一旦広幅で巻き取ったミルロールをスリットしたスリットロールのうち、ミルロールの端縁際に相当するスリットロールから採取されたフィルムは、幅方向の片端縁際の配向特性に関連する物性が等方性から崩れて縦横の中間方向(縦方向に45度の二方向)の物性に差異が生じる。また、フィルムの幅方向の端部際で熱固定時に長手方向の緩和を促すことができないため、フィルムの幅方向におけるスリットロールの位置によって長手方向の熱収縮率が異なる、という事態が生じてしまう。したがって、一旦広幅で巻き取ったミルロールをスリットしたスリットロールのうち、ミルロールの端縁際に相当するスリットロールにおいては、幅方向の片端縁際の熱収縮率(長手方向の熱収縮率)が他端縁際の熱収縮率よりも大きくなる、という現象が生じてしまう。そして、そのような歪んだスリットロールを利用すると、プリズムレンズ加工、ハードコート加工、防眩(AR)加工、シート張合せ加工等の後加工時の熱処理工程においてフィルムが変形することにより、フィルムの通過性が悪くなり、フィルムが後加工工程の中で機台の枠やその他で擦れることにより端部に傷を付けたりする事態が発生してしまう。また、フィルムが傷付かないようにユーザ側で後加工条件を調整するのは非常に手間がかかる。そのようにミルロールの端縁際に相当するスリットロールは、これらの用途に用いることが困難であったため、ミルロールの端縁際以外のスリットロールしか後加工条件を調整せずに光学用途に用いることができなかった。
これら以外にも、たとえば次のような用途に利用される場合に、フィルムの熱収縮率が低いことが望まれる。ハードコートフィルムを熱加工する(例えば、約150℃で約1分間加熱)ときにハードコートの収縮率とフィルム基材の熱収縮率の差が大きいとフィルムにカールが生じる問題があった。さらには、フレキシブルプリント基板(FPC)の製造を行う場合に、FPC補強フィルムを剥離せずに加熱プレス処理(例えば、約165℃で約10秒間)が行われる場合があり、その加熱プレス後に補強フィルムを剥離、除去する方法ではFPC補強フィルムとフィルム基材の熱収縮率の差が大きいと加熱プレス後にカールが生じる問題があった。さらにはポリエステルフィルム基材に加熱による多色の重ね刷り(例えば、約160℃で十数秒)を実施する場合には熱収縮により印刷ズレが生じる。また、ポリエステルフィルムを真空蒸着加工する場合は、フィルムの温度は約160℃に曝されるが、この様な熱によりポリエステルフィルムが寸法変化する場合がある。特に耐熱性を要求する分野ではより高温(例えば、180℃)での熱寸法安定性が求められている。
また、後加工コストの低減のために幅広のスリットロールに対する要求が増加してきているが、かかる広幅のスリットロールを限られたミルロールの幅から歩留まり良く採取するには、従来のように幅狭のミルロールから採取するよりも幅広のミルロールから採取する方が得策である。しかしながら、ミルロールを幅広にすると、熱固定装置の幅方向における温度の均一性を保つのが難しくなる。つまり、左右に温度差が生じたり、時間的に温度が不安定になってしまう。結果として、熱収縮率を幅方向、長手方向で一定にコントロールするのが難しくなる。それゆえ、ミルロールを幅広化するには、熱固定装置の幅方向における温度の均一性を良好に保つべく、熱固定装置内の熱風吹き出し量等を微調整することが不可欠である。ところが、熱風吹き出し量等の微調整により、幅方向における温度の均一性を改善することができ、左右の熱収縮率差をある程度低減することができるものの、後加工時におけるフィルムの通過性を良好なものにするために十分なレベルにまで左右の端縁際の熱収縮率差を低減させることはできない。
それゆえ、ミルロールの幅に拘わらず、後加工工程におけるフィルムの通過性を良好なものとすべく、フィルムの幅方向における熱収縮率(フィルムの長手方向の熱収縮率)の差を低減する方法として、出願人によって、フィルムの熱固定工程において、フィルムの進行方向に対して一定間隔で上下に配置させたプレナムダクト(熱風の吹き出し口)に連続的な遮蔽板を被せ、その遮蔽板の幅をフィルム進行方向側にいくにしたがって徐々に拡げていくことにより、フィルムの幅方向の温度を中央部から端部にかけて高くして、端部際の緩和量を中央部分の緩和量に近づける方法が提案されている(特許文献1)。さらに、出願人は、フィルムの幅方向における熱収縮率の差を低減する方法として、フィルムの熱固定工程において、5本のプレナムダクトに不連続な遮蔽板を取り付け、各プレナムダクトから単位時間当たりに吹き出す熱風の量を一定にし、プレナムダクトから吹き出す風速を増加させることで端部に当たる熱風量を増加させる方法を開示している(特許文献2)。
特開2001−138462号公報 特開2002−79638号公報
しかしながら、上記方法では、後加工(塗工および乾燥)における熱処理が120℃程度での通過性はある程度改善されるものの、フィルム端部際のフィルムの緩和はいまだ不十分である。すなわち、上記方法では、160℃程度の熱処理を比較的長時間(10〜60秒)に亘って行った場合(ハードコート膜の形成など)の通過性はさほど改善されない。それゆえ、高温で長時間での後加工をする場合には、条件を調整せざるを得ないが、かかる調整ができない場合もある。
加えて、上記方法では、熱固定ゾーンにおける温度の乱調(ハンチング)が大きくなってしまうため、1,000m以上の長尺なフィルム(ミルロール)を製造する際に、通過性の悪い部分(すなわち、フィルムの幅方向における熱収縮率の差が大きい部分)が形成されてしまう。また、熱収縮率の絶対値を低減するには本方法だけでは達成出来なかった。
また、長手方向の熱収縮率を小さくして後加工時のカールを小さくする方法として、長手方向の処理をオフラインの熱処理工程で実施する方法が提案されている(特許文献3)。
特開2001−138466号公報
さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの熱収縮を低減させる方法として、例えば特許文献4に示されるようにテンターの内で端部に剃刀を入れ切断しクリップの影響を避けて長手方向に緩和処理を行う方法が提案されている。この方法ではクリップの把持の影響は受けないが緩和処理中のフィルムの自重で弛み、テンターのプレナムダクトに接触して傷が生じるという問題が発生した。これを避ける為に上下のエアバランスを微妙に調整し傷防止を行うとエアバランスの崩れによりオーブン内の温度の均一性が損なわれて、フィルムの平面性が悪化したり均一性が損なわれるという問題がある。
特公昭57−54290号公報
これ以外の、二軸延伸ポリエステルフィルムの熱収縮を低減させる方法として、特許文献5に示されるようにテンターのクリップ間隔を徐々に狭くして、縦方向の緩和処理を行う方法が提案されている。しかし、この方法では、クリップ際の端部と中央部のフィルムの動きやすさが異なり、長手方向の把持部近傍と中央部の物性の差が避けられず、熱収縮率を低下させるために緩和を大きくするとフィルムの平面性が悪化するという問題があった。
特公平4−028218号公報
また、液晶ディスプレイ(LCD)に用いられるプリズムレンズシート用ベースフィルム、ハードコートフィルム用ベースフィルム、反射防止(AR)フィルム用ベースフィルム、光拡散板用ベースフィルム、陰極線管(CRT)用破砕防止フィルム、タッチパネルやエレクトロルミネッセンスに用いられる透明導電性フィルム、プラズマディスプレイの前面板に用いられる近赤外線吸収フィルムや電磁波吸収フィルム、太陽電池用バックシート等の用途には、優れた強度、寸法安定性が要求されるため、比較的厚手のフィルムが用いられている。
そのような光学用途のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムには、通常の包装用途等のフィルムに比べて平面性(平面な台の上に載置した場合のフラットネス)が良好であることが要求される。殊に、近年の液晶を利用したパソコンや大型テレビ等の製品の高性能化に伴って、平面性に対する要求が一段と高いものとなってきている。出願人らは、そのような良好な平面性を発現させるためには、フィルムを、更に所定のサイズに切断することで、各種用途の基材シートに使用される。しかし、上記のように物性に歪みのあるフィルムでは切断加工特性に異方性を有するため、枚葉に切断するときに、フィルム切断面に「ヒゲ」と呼ばれるフィルムの切れ残りや、クラックが発生し易くなる。また、切断加工の生産性を挙げるため、フィルムを積み重ねた状態で切断加工する場合があるが、切断面に生じたヒゲが原因で枚葉に重ねたフィルムの端縁部が高くなるなど位置ズレが生じる場合がある。さらに、ヒゲから生じた切屑が異物となって、フィルムや加工装置に付着したりする。このように、ヒゲ、異物が発生したり、フィルムの平面性が崩れると、以後の加工工程で加工性が悪化したり、不良の発生により多大な歩留まり低下が発生する事態となる。特に、光学用途では光学歪や表示ムラの要因となるため、フィルムの平面性に対する要求は高い。以上のように、ミルロールの端縁部に相当するフィルムは切断加工性の点で問題があった。
フィルムの切断加工性を向上させる方法として、これまで特許文献6、特許文献7、特許文献8に挙げるような特殊な切断装置や切断方法が開示されている。しかしながら、切断方法を選択して、切れ味の良い刃を使用しても長時間にわたって使用していると、その切れ味も悪くなり、刃の交換やその他条件調整が必要となってくる。また、この刃の交換や調整は装置が大型になると、その時間及び経費のロスが大きくなる。
特開2001−252891公報 特開2005−305637公報 特開2006−289601公報
今後、生産性向上の点から後加工のラインスピードが向上することが予測され、それに対応して高温の後加工でも好適に使用しうるようなフィルムが必要であると考えられる。しかしながら、後加工工程におけるフィルムの通過性を良好なものとするための技術に関しては、熱固定処理においてプレナムダクト(熱風の吹き出し部)に連続的な遮蔽板を被せるだけの方法では、端部際のフィルムを十分に緩和させることができない。したがって、後加工(塗工および乾燥)における熱処理を120℃程度の低温にて行った場合の通過性はある程度改善されるものの、被覆膜(ハードコート膜等)の乾燥効率を上げたり被覆膜の強度を高めたりする目的で後加工における熱処理を高温ゾーン(160℃程度)にて比較的長時間(10〜60秒)に亘って行った場合の通過性は、さほど改善されない。それゆえ、高温にて長時間に亘って後加工する場合には、後加工において条件を調整せざるを得ないし、条件調整ができない事態が生じることもある。
加えて、熱固定処理においてプレナムダクトに遮蔽板を被せるだけの方法では、熱固定ゾーンにおける温度のハンチングが大きくなってしまうため、1,000m以上の長尺なフィルム(ミルロール)を製造する際に、通過性の悪い部分(すなわち、フィルムの幅方向における熱収縮率の差が大きい部分)が形成されてしまう。また、特許文献2の方法では、各プレナムダクトの風量は一定であるので、各プレナムダクト毎に風速が異なるため、熱固定装置内で乱流が生じる。従って、熱固定ゾーンにおける温度に大きな不均一性が生じており不都合である。また、遮蔽板による幅方向の熱収縮率の差を低減する効果は満足できるレベルではなかった。
本発明の目的は、上記従来のフィルムおよびその製造方法が有する問題点を解消し、後加工時の熱処理工程におけるフィルムの通過性が後加工の条件に拘わらず良好な実用性の高く、フィルムの切断加工時におけるヒゲ、切り粉、切断屑などの発生を抑制し、切断加工時に発生する平面性の崩れが品質上の問題となる光学用や太陽電池用のフィルムや精密印刷用途に好適に使用される基材フィルムとして良好なポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを提供することにある。また、本発明の目的は、上記の如く後加工時の熱処理工程におけるフィルムの通過性がきわめて良好な上、厚み斑がきわめて小さく平面性が良好で、フィルムの切断加工時におけるヒゲ、切り粉、切断屑などの発生を抑制するポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを安価かつ容易に製造することが可能な製造方法を提供することにある。
かかる本発明の内、第1の発明は、フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率とそれに90度の角度をなす方向の屈折率との差異Δnabが0.015以上0.060以下であるポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムで下記要件(1)〜(7)を満たすことを特徴とするものである。
(1)フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、巻取方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、巻取方向と90度の角度をなす方向(幅方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、いずれも0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下であること
(2)フィルムの幅方向の長さが70cm以上のフィルムについて、フィルム幅方向に均等に5分割し、各5分割したフィルムの幅方向における中央部より切り出した5つの試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求めたときに、それらのHS150の最大値と最小値の差が0.1%以下であること
(3)前記5つの試料のHS150が、0.0%以上0.5%未満であること
(4)前記5つの試料について、180℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS180を求め、それらのHS180の最大値と最小値の差が0.15%以下であること
(5)前記5つの試料のHS180が、0.7%以上1.5%未満であること
(6)フィルムの巻取方向の厚み変動率が6%以下であること
(7)フィルムの厚みが70μm以上400μm以下であること
第2の発明は、前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの極限粘度が0.45〜0.70dl/gで、かつ酸価が3〜30eq/tである。
第3の発明は、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを製造するための製造方法であって、押出機から原料樹脂を溶融押し出しすることにより未延伸シートを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸シートを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程と、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程とを含んでおり、その横延伸工程が、下記要件(8)〜(12)を満たし、熱固定工程が(13)〜(16)を満たすことを特徴とするものである。
(8)横延伸工程において、連続する温度区分域の設定温度の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)では5℃以上20℃以下であること
(9)横延伸工程における延伸において1.8倍を通過する温度域が100℃以上160℃未満であること
(10)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)と次の後半部分の最初の温度区分領域の間では5℃以上40℃以下であること
(11)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の後半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率まで)では5℃以上30℃以下であること
(12)横延伸工程における延伸において最終延伸倍率に到達する温度域が160℃以上220℃未満であること
(13)熱風を吹き出す幅広な複数のプレナムダクトが、フィルムの進行方向に対して上下に対向して配置されていること
(14)前記複数のプレナムダクトに熱風の吹き出し口を遮蔽するための遮蔽板が取り付けられていること
(15)前記各遮蔽板のフィルムの進行方向における寸法が、フィルムの進行方向における各プレナムダクトの吹き出し口の寸法と略同一に調整されており、前記各遮蔽板のフィルムの幅方向における寸法が、フィルムの進行方向に対して次第に長くなるように調整されていること
(16)熱固定後、長手方向の緩和処理を実施する工程があること
第4の発明は、前記長手方向の緩和処理をする工程において、フィルム端部を保持するクリップ(4)と隣接クリップとの間に屈曲可動なチェンリンク(7)で連結するジョイント部(8)を有し,当該ジョイント部(8)に連結したベアリング(11)がガイドレールを走行することで、チェンリンク(5)の屈曲角度が変位することにより、クリップの進行方向の間隔を収縮することで当該長手方向の緩和処理を可能にすることを特徴とするものである。なお、かっこ内の数字は図6、7の図中の部位に対応する。
第5の発明は、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを製造するための製造方法において、二軸延伸工程がフィルムを縦方向に延伸した後に横方向に延伸するものであるとともに、その横延伸を行うゾーンと熱固定装置との間に、風の吹き付けを実行しない中間ゾーンを設けたことを特徴とするものである。
第6の発明は、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを製造するための製造方法において、熱固定装置が、複数の熱固定ゾーンに分割されているとともに、隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下となるように設定されていることを特徴とするものである。
第7の発明は、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを製造するための製造方法において、ポリエステルの溶融押出時に、任意のメルトラインで、初期濾過効率が90%以上で濾過粒子サイズが15μm以下の濾材を用いて、精密濾過を行うことを特徴とするものである。
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、プリズムレンズ加工やハードコート加工、AR加工などの後加工時の熱処理工程におけるフィルムの通過性等の後加工特性が非常に優れている上、フィルムの切断加工時に切り口にヒゲなどの発生を抑え、光学用フィルムや精密印刷用途および、枚葉で使用される基材フィルムとして、きわめて高い歩留まりで後加工することができる。したがって、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、プリズムレンズシート用のベースフィルム、バックライト用ベースフィルム、ARフィルム用ベースフィルム、CRT用破砕防止フィルム等の各種光学用部材の全般にわたり使用される光学用フィルムや、太陽電池部材その他の後加工における熱処理を高温ゾーン(160℃程度)にて比較的長時間(10〜60秒)に亘って行う加工用フィルムとして好適に用いることができる。それゆえ、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、液晶ディスプレイに用いるプリズムシート、反射防止フィルムやハードコートフィルム、光拡散板等のベースフィルム、プラズマディスプレイの前面板に使用する近赤外線吸収フィルムや電磁波吸収フィルムのベースフィルム、タッチパネルやエレクトロルミネッセンス用の透明導電性フィルムのベースフィルム、陰極線管の破砕防止フィルム等の光学用途に好適に用いることができる。また、本発明のポリエチレンテレフタレフタレート系樹脂フィルムの製造方法によれば、上記の如く光学用途に好適なポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを安価に効率良く製造することが可能となる。
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを構成するフィルムは、エチレングリコールおよびテレフタル酸を主な構成成分として含有する。本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびグリコール成分を共重合させても良い。上記の他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス−(4−カルボキシフェニルエタン)、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シクロヘキサン−1、4−ジカルボン酸等が挙げられる。上記の他のグリコール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ビスフェノールA等のエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。この他、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸成分も利用され得る。
このようなポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETという)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
本発明のフィルムをPETによって形成する場合には、原料であるPETの極限粘度(IV)は、0.45〜0.70dl/gの範囲が好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂の極限粘度を上記範囲にすることは、樹脂の剛性条件を適宜選択することにより行いことができる。例えば、重合時間、触媒量、重合時の真空度等を適宜設定することにより行えばよい。PET原料の極限粘度が0.45以下であると、回収されて再度押出機を通過した後のPETの重合度が低くなりすぎて、フィルムの延伸性が悪化したり、耐引き裂き性が低下したりするため好ましくない。反対に、極限粘度が0.70dl/gを上回ると、濾圧が大きくなりすぎて高精度濾過が困難となるので好ましくない。なお、樹脂原料のIVは、たとえば、以下のような方法で求められる。
[極限粘度(IV)]
PETの粉砕試料を乾燥後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間、および、溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、Hugginsの定数が0.38であると仮定して算出する。なお、極限粘度は[η]とも表される。
また、本発明のフィルムをPETによって形成する場合には、PET原料の酸価(AV)は、3〜30eq/tの範囲が好ましく、5〜25eq/tであるとより好ましい。酸価が3eq/t以下であると、重合速度が遅くなってしまい、製造効率が低下するので好ましくない。反対に、酸値が30eq/t以上であると、加水分解が進行し易く、重合度の低下を引き起こし易いので好ましくない。ポリエチレンテレフタレート系樹脂の酸価を上記範囲にすることは、樹脂の剛性条件を適宜選択することにより行いことができる。例えば、エステル化反応装置の構造等の製造装置要因や、エステル化反応槽に供給するスラリーのジカルボン酸とグリコールの組成比、エステル化反応温度、エステル化反応圧、エステル化反応時間等のエステル化反応条件等を適宜設定することにより行えばよい。また、エステル化反応工程に水を添加して調整してもよい。なお、樹脂原料の酸価は、たとえば、以下のような方法で求められる。
[酸価]
原料を粉砕した後、ベンジルアルコールに溶解し、クロロホルムを加えてから水酸化ナトリウム溶液で中和滴定し、PET1t当たりの水酸化ナトリウムの当量を算出する。
さらに、本発明のフィルムをPETによって形成する場合には、押出機に投入する前の原料(再生原料を含む)に異物が含まれていないことが望ましい。特に、異物による欠点を低減するため、溶融押出しする際に高精度濾過を行い、製膜後のフィルム1mあたりに存在する直径20μm以上の異物が10個以下となるように調整するのが好ましい。上記の高精度濾過を行う場合、初期濾過効率が90%以上、好ましくは95%以上で、濾過粒子サイズが15μm以下の濾材を用いることが好ましい。ここで、初期濾過効率とはANSI/B93.36−1973により測定される数値をいう。なお、原料中の異物の個数は、たとえば、以下のような方法で求められる。
[異物の個数]
位相差顕微鏡およびCCDカメラを用いて、溶融させた原料チップの拡大画像を撮影し、画像処理装置を用いて異物数を計数する。
[Δnab
二軸配向ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造時において、テンター内に幅方向に延伸する時にフィルム幅方向の物性の均一性が乱れる現象が生じることが知られている。この現象が生じるために、得られる二軸配向フィルムは、フィルム幅方向の中央部から離れるほどΔnab(巻き取られたフィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率と巻き取られたフィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の屈折率との差異(絶対値))が大きくなる。ここで、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムはΔnabが全ての領域で0.015以上0.060以下であるものに限定される。Δnabの下限は0.015であるが、より好ましくは0.020、さらに好ましくは0.030である。Δnabが0.015を下回るフィルムは、上記した「歪み(すなわち、幅方向における物性差)」の問題が生じない。一方、Δnabの上限は0.060であるが、より好ましくは0.055、さらに好ましくは0.050である。Δnabが0.060を上回るフィルムは歪が著しく、本発明の要件を満たすようにTS/TE等を調整することが困難である。なお、本発明におけるΔnabとは、フィルム巻取方向に平行な片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置においてそれぞれΔnabを測定し、それらの2つの値の内の大きい方をいう。
[巻取方向の厚み変動率(厚み斑)]
また、本発明のフィルムは、フィルムの巻取方向に沿って長さ30m×幅3cmの帯状のフィルム試料を採取し、そのフィルム試料の巻取方向の厚み斑を測定したときに、フィルム試料の巻取方向の厚み変動率、すなわち厚み斑が、いずれも4%以上7%以下の範囲内にあることが必要である。本発明のフィルムの厚み変動率は、6%以下であり、5.5%以下がさらに好ましく、5.0%以下がよりさらに好ましく、4.5%以下が特に好ましい。厚み変動率は小さいほど好ましいが、製造上の制約から3%が下限と考える。なお、フィルムの巻取方向の厚み変動率が上記範囲のフィルムを得るための好ましい製膜方法については後述する。
[TS/TE]
本発明において、破断強度(TS)とは、フィルムが破断するのに必要な応力であり、具体的には、フィルムに引張力を徐々に加えていき、フィルムが破断した時の力を求め、これを単位面積あたりの応力に換算した値(単位:MPa)で表す。破断伸度(TE)とは、フィルムが破断するまでに伸びた割合(伸び率)であり、具体的には、フィルムに引張力を加えていったときにフィルムが破断するまでに伸びた長さを、元の長さで除した値(単位:%)で示す。本発明において、破断強度(TS)、破断伸度(TE)はJIS K 7127に準じて測定し、具体的には以下の方法により行う。すなわち、幅12.7mm、長さ200mmのフィルム試験片をサンプリングし、フィルム試験片を引張試験機(例えば、ORIENTEC社製、テンシロンRTC−125A)にセットし、温度23℃、湿度65%RHの環境下において、チャック間距離100mm、引取り速度200mm/minで伸張し、フィルム試験片の破断時の伸び、および破断に要した荷重の測定値から破断強度(TS)、破断伸度(TE)を算出する。
破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比(TS/TE)とフィルムの切断加工性とは以下のような関係を有する。すなわち、TS/TEが大きいフィルムは破断強度が強く、伸度が少ないフィルムを意味する。このような特性を有するフィルムは、脆く腰がないフィルムとなり、切断加工時において切断面が毛羽立ち、ヒゲや切屑が発生し易い。一方、TS/TEが小さいフィルムは破断強度が小さく、伸度が大きいフィルムを意味する。このような特性を有するフィルムは、粘りがあり腰の強いフィルムとなり、切断加工時においても切断面に荒れが少なく、断裁性(切断加工性)が良い。また、フィルムの部位によりTS/TE比が異なる場合は、同じ剪断力に対しても部位により切断加工性に差が生じ、その差によって切断面のズレ、ヒゲが発生し易くなる。そのため、TS/TE比は等方性を有することが最も望ましい。以上のことから、切断加工性においてはTS/TE比が小さく、部位によるTE/TE比の変動が小さいフィルムが好ましい。
本発明のフィルムは、フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向(A方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向(B方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、巻取方向(MD方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、巻取方向と90度の角度をなす方向(TD方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、いずれも0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下であることを特徴とする。TS/TE比の上限は、2.6(MPa/%)が好ましく、2.4(MPa/%)がより好ましく、2.2(MPa/%)がさらに好ましい。MD方向、TD方向、A方向、B方向とも、TS/TE比が2.6(MPa/%)以下であれば、フィルムの切裁性もよく、切断加工に好適である。TS/TE比の下限は、0.6(MPa/%)が好ましく、0.9(MPa/%)がさらに好ましい。TS/TE比が0.6(MPa/%)以上であると、フィルムが力学的に変型しにくく好適である。また、TS/TE比がMD方向、TD方向、A方向、B方向とも上記範囲内であれば、TS/TE比に起因する、剪断ズレが生じにくい。なお、フィルムのTE/TE比が上記範囲のフィルムを得るための好ましい製膜方法については後述する。
[熱収縮率]
また、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、後述する方法により試料切り出し部を設定した場合に、各切り出し部から切り出した5つのフィルム試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求め、それらの最大値と最小値の差が0.1%以下であることが必要である。
上記HS150の最大値と最小値の差が、0.1%以下であると、後加工におけるフィルムの通過性が良好となり好ましい。また、各切り出し部における熱収縮率差は、0.08%以下であるとより好ましく、0.06%以下であると特に好ましい。なお、各切り出し部におけるHS150の最大値と最小値の差は、低いほど好ましいが、設計上、0.05%が下限であると考えられる。
熱収縮率の測定に使用するフィルム試料は、次の手順によって設けた5個の切り出し部から切り出す。
(1)上記Δnabが0.015以上0.060以下である幅方向の長さが70cm以上のフィルムを均等に5分割する。
(2)各分割した5つのフィルムのそれぞれについて幅方向の中央部に切り出し部を設ける。
(3)各切り出し部からフィルム巻き取り方向にそって、幅20mm、長さ250mmの試料フィルムを切り出し5つのフィルム試料を切り出す。
さらに、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、上記した方法により試料切り出し部を設定した場合に、各切り出し部から切り出した5つのフィルム試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求めたときに、すべての切り出し部における両端縁の試料のHS150が、いずれも0.0%以上0.5%未満であることが必要である。
各切り出し部から切り出したフィルム試料のHS150の値が0.5%未満であると、後加工におけるフィルムの通過性が良くなるので好ましい。また、各切り出し部から切り出したフィルム試料のHS150の値は、0.45%以下であるとより好ましく、0.4%以下であると特に好ましい。なお、各切り出し部から切り出したフィルム試料のHS150の値は、低いほど好ましいが、生産性の点から0.0%が下限であると考えている。
さらに、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、上記した方法により試料切り出し部を設定した場合に、各切り出し部から切り出した5つのフィルム試料について、180℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS180を求め、それらの最大値と最小値の差が0.15%以下であることが必要である。
上記HS180の最大値と最小値の差が、0.15%以下であると、後加工における高温でのフィルムの通過性が良好となり好ましい。また、各切り出し部における熱収縮率差は、0.10%以下であるとより好ましく、0.07%以下であると特に好ましい。なお、各切り出し部におけるHS180の最大値と最小値の差は、低いほど好ましいが、設計上、0.05%が下限であると考えられる。
さらに、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、上記した方法により試料切り出し部を設定した場合に、各切り出し部から切り出した5つのフィルム試料について、180℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS180を求めたときに、すべての切り出し部における両端縁の試料のHS180が、いずれも0.7%以上1.5%未満であることが必要である。
各切り出し部から切り出したフィルム試料のHS180の値が1.5%未満であると、後加工における高温でのフィルムの通過性が良くなるので好ましい。また、各切り出し部から切り出したフィルム試料のHS180の値は、1.3%以下であるとより好ましく、1.2%以下であると特に好ましい。なお、各切り出し部から切り出したフィルム試料のHS180の値は、低いほど好ましいが、生産性の点から0.05%が下限であると考えている。
[本発明のフィルムの製造方法]
本発明のフィルムは、上記したポリエチレンテレフタレート系樹脂原料を押出機により溶融押し出しして未延伸フィルムを形成し、その未延伸フィルムを以下に示す方法により二軸延伸して熱処理することによって得ることができる。
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエチレンテレフタレート系樹脂原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
そして、押し出し後のシート状の溶融樹脂を急冷することによって未延伸フィルムを得ることができる。なお、溶融樹脂を急冷する方法としては、溶融樹脂を口金より回転ドラム上にキャストして急冷固化することにより実質的に未配向の樹脂シートを得る方法を好適に採用することができる。
さらに、得られた未延伸フィルムを、長手方向(縦方向)に延伸し、その縦延伸後のフィルムを幅方向に延伸し、熱処理することによって本発明のフィルムを得ることが可能となる。以下、本発明のフィルムを得るための好ましい製膜方法について、従来のフィルムの製膜方法との差異を考慮しつつ詳細に説明する。
<従来の延伸方法の問題点>
未延伸フィルムは、上記の如くシート状の溶融樹脂を金属冷却ロールに巻き付けることによって形成される。その際に、金属冷却ロール形状の不均一性、溶融樹脂の吐出量の変動等の要因によって、未延伸フィルムには少なからず厚み斑が形成されてしまう。かかる厚み斑を低減するために従来から様々な試みがなされているが、未延伸フィルムの厚み斑を完全になくすことは、現状では不可能である。したがって、最終的に厚み斑の良好なフィルムを得るためには、未延伸フィルムにおける厚み斑を延伸工程において如何にして増幅させないか、が大きなポイントとなる。
縦延伸工程においては公知の方法により、縦延伸を行って良く、縦延伸を一段、二段、あるいは多段延伸で行うことが出来る。その倍率は総合延伸倍率が2.5〜4.2の間で行って良い。総合延伸倍率が2.5倍未満だと縦厚みの変動が大きくなり、3倍以上が好ましい。また、総合延伸倍率が4.2倍を超える場合には横延伸工程で破断が発生しやすくなる。3.9倍以下が好ましい。
また、本発明のフィルムを得るためには、縦延伸を施したフィルムに横延伸を行う必要がある。ところが幅方向に延伸する場合には、幅方向での力の伝達が横延伸機内の端部と中央部で異なる。即ち、端部は横延伸を実施するために把持部で掴まれていて、動きが制限されているが、中央部は長手方向に動くことが可能な状態である。この状態では丁度、1本のロープを左右に引っ張った状態と同じ様に懸垂線の曲線を描く。横延伸の場合は長手方向でその懸垂線の形状は延伸初期から延伸後期で刻々と変化をしていく。この変化は例えば横延伸の始まる前のフィルムシートに長手方向に垂直に(幅方向に平行に)フィルムシートの表面に速乾性のインクで線を入ことで可視化することが出来る。横延伸初期はその線は流れ方向の後側に凸に見え、延伸が進むとある所で一直線になり、その後に流れ方向に凹となって見える。
この横延伸の挙動により従来の延伸条件では幅方向の物性の差が生じ、フィルムを使用する時に機台中央部分から採取したフィルムでは問題が生じ無いが機台の端部(フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率とそれに90度の角度をなす方向の屈折率との差異Δnabが0.015以上0.060以下)から採取したフィルムではフィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向とそれに90度の角度をなす方向の配向特性に違いが有る。このことがフィルムの切断時での斜め方向の力学的挙動の差を生じさせ、切断性に影響を及ぼす。この為に、後加工での枚葉での切断性が厳しく要求される加工フィルム、特に厚物とよばれる厚さ70μm以上のフィルムでは、かかる状況を改善する必要があった。一方、縦と横の配向特性はそれぞれの延伸倍率により決定される。本発明の場合、縦方向の全体倍率は2.1〜4.8倍となるがそのこの好ましい範囲は2.7〜3.8倍であるが、横延伸倍率はその縦倍率より0.3〜0.5倍高い倍率が横厚みの均一性から好ましく適用できるが余り横延伸倍率を大きくすると横の配向特性が縦に比較して大きくなり過ぎる場合がある。
本発明者らは、上記した従来の延伸方法が有する問題点を解消すべく、どうすればフィルムの切断性を改善するか、また、どうすればフィルムに幅方向の熱収縮率差に起因する熱加工工程における張力による歪を発生することなく、また、フィルムの熱収縮率の小さいフィルムを作ることが出来るか鋭意検討した。その結果、以下のような横延伸工程の延伸条件を従来とは全く異なる条件で行うことに、さらに、熱固定ゾーンに遮蔽板を用いて幅方向の熱収縮率差を少なくする、熱固定工程での縦方向の緩和を行うことでフィルムの切断時のヒゲの少なく、タルミのないフィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
<本発明のフィルムの製造方法の横延伸工程・熱固定処理工程での特徴>
縦延伸工程を経たフィルムは次いでテンター内で横延伸処理がなされる。テンター内は(イ)縦延伸を施されたフィルムを横方向に延伸する為にフィルムを延伸に適した温度まで昇温する予熱部分と、(ロ)昇温されたフィルムを横方向に延伸する延伸部分、(ハ)引き続き縦及び横延伸による歪を低減する熱処理を施す熱固定処理部分、(ニ)横方向の歪を更に低減する緩和処理部分、(ホ)最後に熱の掛かったフィルムをガラス転移点(Tg)以下に冷却する冷却部分、に区分できる。テンター側部には、チェーンにつながれたクリップを走行させるレールが設置されており、フィルムはクリップに保持された状態でテンター内を走行する。
(イ)の予熱部分では、フィルムの上部および/もくしは下部に設置されたプロナムダクトから噴出す熱風によりフィルム温度が昇温する。フィルムは昇温により膨張するが、かかる膨張相当分による弛みが生じないように、フィルム端部を保持するクリップの走行レールは僅かな幅方向の拡がりが施されている。こうして、プレナムダクトから噴出す風の風圧によりフィルムのバタツキを抑え、熱風が均一にフィルム表面に当たる様に工夫している。
(ロ)の延伸部分ではフィルムを横方向に延伸する為に、フィルム全体の長手方向の進行に対してクリップチェーンは斜め方向に向かってフィルム幅方向に拡がるように設置される。端部をクリップで保持されたフィルムは進行に従い、幅方向に引っ張られて横方向の延伸が施される。フィルムの延伸倍率はクリップチェーンの走行レールの拡がりの程度(角度と距離)に応じて決定される。
(ハ)の熱固定部分ではフィルムが縦方向及び、横方向に延伸された際に生じた歪を低減する為に、フィルムを高温で熱を掛け歪を除去している。この部分での温度により主として縦方向の熱収縮率の大きさが決定される。
(ニ)の緩和処理部分は横方向の歪を更に低減する為に、クリップチェーンの走行レール幅を幅方向に縮めるなどの処理により、幅方向の歪を除去している。この処理の程度(温度及び緩和率)に応じて主として横方向の配向特性は決まる。
(ホ)の冷却部分ではフィルムをTg以下に冷却し、(ハ)、(ニ)の歪を低減した状態でフィルムを室温付近で取り出す様に冷却している。
それぞれの部分は上記の様な役割を担っているが、本発明では(ロ)の延伸部分に着目し、二軸延伸フィルムが持つ幅方向の物性の均一化と厚み斑の低減の両立を意図している。
(ロ)の延伸部分ではフィルムは、進行方向に対して斜め方向に設置されたクリップチェーンの走行レールに従い、横方向に延伸される。延伸過程でフィルムの両端はクリップによって把持され、固定される。しかし、クリップから離れた領域、特にフィルムの中央領域では両端部分に比べて自由度が高い。このように力学的自由度に局所的な差がある中で、フィルム全体としては力の作用が均衡した状態で、延伸が施される。また、フィルムは幅方向以外にも、長手方向の力のバランスも均衡した状態にあり、熱固定部分からの影響も受けている。これらの力作用の関係は、幅方向において端部が固定された懸垂線様の状態で均衡している。この力の作用をフィルム中央部で観察すると、延伸初期ではフィルム進行方向に向かって進める様に作用し、延伸後期では中央部が進行方向に対して遅れる様に作用する。この様な力の作用によって、いわゆるボウイング現象が観察される。
この力の作用の結果、フィルム端部の物性は巻取方向と45度の方向の特性と、それと直角の方向の特性とに差が生じることとなる。この特性のうち、配向特性の状態に起因する破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比TS/TEの差が切断加工特性に影響すると考えられる。
一般的に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなるフィルムの引張試験を行うと、所定の歪み量に達するまで、応力が略一定の割合で増加し、所定の歪み量に達すると、歪み量が増加しても応力が増加しないプラトーな領域が出現する(なお、かかる引張初期における応力が飽和する点を降伏点という)。そして、そのようなプラトーな領域が出現した後に、再度、歪み量の増加に伴って応力が増加する領域が出現し(かかる降伏点後に応力が再度立ち上がり始める点を立ち上がり点という)、応力が二次的に増加した後に破断する、という傾向を示す。このような、応力と歪みの曲線をS−S曲線という。
上記物性差を小さくする為に、横方向の延伸温度を単純に高温に設定すると、延伸が「S−S曲線におけるプラトーな領域に相当する歪み量を与えるような延伸」に相当し、フィルムに厚み斑が生じる恐れがあった。さらに、横方向の延伸温度を高くすると、予熱領域との温度の差異が大きくなり、テンター内の温度状態に乱れが生じることによる厚み斑も生じる恐れがあった(なお、フィルムのΔnabが0.015未満の場合はTS/TE比の差異は断裁性に影響を与える程、大きくならない)。フィルムにこのよう厚み斑が生じると、近年ますます要求される平面性の品質が満足できないものとなるおそれがあった。ところが、驚くべきことに、以下の様に横延伸倍率と温度の関係を適性化する事により、厚み斑が良好で切断加工性も良好なものが得ることが可能になることを見出した。
(1)横延伸工程の温度区分域の温度の制御
横延伸工程において、テンター内は通常、複数の温度区分域が設けられているが、本発明のフィルムを得るためには、連続する各温度区分域の設定温度差を延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)までは5℃以上20℃以下とし、後半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率まで)は5℃以上30℃以下とする必要がある。一方、1.8倍を含む温度区分領域と次の温度区分領域での温度差は5℃以上40℃以下とするのが好ましい。
上記温度範囲で制御することが好ましい理由としては以下のように考えている。すなわち、横延伸工程の延伸前半では、フィルムの引っ張り特性のS−Sカーブの延伸応力増大域で延伸が行なわれるため、温度斑による影響が生じやすい。そのため、上記のように延伸前半での隣接する温度区分域の温度差は低く抑えることが望ましい。また、横延伸工程の延伸後半では、延伸温度を比較的高温に設定するため、フィルムの延伸応力が低下する。よって、延伸後半での隣接する温度区分域の温度差は前半よりも大きくすることができる。さらに、横延伸工程の中間ではS−S曲線のプラトーな領域に相当するため、他の温度区分域に比べ温度変化に対して影響が受けがたく、他の温度区分域よりも大きな温度差が許容される。このように、本発明ではS−S曲線に応じて上記のごとく温度区分域間の温度差を制御する。
また、これらの温度設定は、フィルムの進行方向に向かって段階的に設定温度を上げることが好ましい。フィルムの進行に伴って随伴流が発生するので、フィルム進行方向にそって上流から下流への空気の流れが生じる。そのため、連続する2つの温度区分域で設定温度に差がある場合、温度区分域の境界で温度の乱れが生じる。設定温度の差が大きい場合は、テンター内の温度の分布の乱れが大きくなり、フィルムの延伸状態に乱れが生じ、厚み斑の要因となる。そこで、連続する各温度区分域の設定温度を一定範囲に設定し、幅方向、長手方向のフィルム温度が安定化することとした。これにより、テンター内の横延伸部分の温度の乱れに起因するフィルムの厚み斑が低減することが可能となった。本発明のフィルムを得るための前記設定温度差の下限は5℃以上、好ましくは10℃以上とすることが望ましい。設定温度差が5℃未満の場合は、最終温度区域の設定温度を後述の設定温度にすることが難しくなる。また、前記設定温度差の上限は1.8倍を含む温度区分領域までは20℃以下が必要である。一方、延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率までは30℃以下が必要である。一方、1.8倍を含む温度区分領域とその次の温度区分領域間は40℃以下、好ましくは30℃以下とすることが望ましい。設定温度差が40℃超の場合は、フィルムの厚みの乱れとなり、上記効果が得られない。
予熱部分(イ)から延伸部分(ロ)の最初の温度区分との連続する2つの温度区分域においても、設定温度差を5℃以上40℃以下にすることが好ましい。予熱部分では、延伸が可能な温度程度になるようにフィルムを温める必要がある。そのため延伸部分の温度を高温に設定する場合は、フィルムの温度は縦延伸の延伸温度〜縦延伸の延伸温度+15℃程度が好ましい。なお、予熱部分の設定温度は予熱部分の長手方向の長さとフィルムを走行させる速度とフィルムの厚みに応じて制御することが望ましい。
(2)横延伸工程の延伸前半での温度の制御
横延伸工程の初期の部分ではフィルムの温度は予熱部分で昇温された後、横延伸工程の延伸前半では、フィルムの引っ張り特性のS−Sカーブの延伸応力増大域で延伸が行なわれる。本発明のフィルムを得るためには、横延伸工程の前半部分の温度域を100℃以上160℃未満とし、比較的低温で横延伸を行うことが好ましい。設定温度を100℃未満とすると、フィルムが破断し易くなり、好ましくない。また、設定温度を160℃以上とすると、延伸条件が「S−S曲線におけるプラトーな領域に相当する歪み量を与えるような延伸」に相当するだけでなく、予熱部分との温度の差異が大きくなり、テンター内の温度バランスが不安定となり、厚み斑が生じ易くなり好ましくない。なお、後述のごとく、延伸前半から後半に掛けて温度は高める方向で設定することが望ましい。しかしながら、延伸前半で複数の温度区分域による段階的な温度設定を設けることが困難な場合には、延伸前半と後述する延伸後半の領域間で、目的の効果を得る為に温度差を調整しても良い。
ここで延伸前半の意味する所は、横延伸工程の前半領域でなされる延伸であり、S−Sカーブの延伸応力増大域で行われる延伸である。具体的には、横延伸倍率が1.8倍を含む区分領域をいう。延伸前半の延伸倍率はその全区分領域数に依存する。例えば、最終の横延伸倍率が4倍の場合、全区分領域数が3の時は2.0倍となり、全区分領域数が4の時は2.5倍となる。ここで、1.8倍を含む区分領域における設定温度を100℃以上160℃未満として比較的低温での延伸を行う。
(3)横延伸工程の最終到達部での温度の制御
本発明のフィルムを得るためには、横延伸工程の最終到達部をの温度域を160℃以上220℃未満とし、比較的高温に設定することが好ましい。高温に設定することで前述のTS/TE比の差異が小さくなり、裁断性を良好にすることができる。
ここで延伸後半の意味する所は、横延伸工程の後半領域でなされる延伸であり、具体的には横延伸倍率が1.8倍を含む区分領域の次の区分領域から最終到達倍率まででありる。延伸後半の延伸倍率は、その全区分領域数に依存する。例えば、最終の横延伸倍率が4倍の場合、全区分領域数が3の時は2.0倍から、全区分領域数が4の時は2.5倍からとなる。そして、前半の倍率を含めた最終倍率は、3倍以上5倍未満、好ましくは4.8倍未満、より好ましくは4.4倍と設定することができる。例えば、最終の横延伸倍率が4倍で、横延伸ゾーンを3段とする場合のプロセス条件は以下のようになる。1段目の倍率は1.0〜2.0倍、2段目の倍率は2.0〜3.0倍、3段目の倍率は3.0倍〜4.0倍となり、1段目のゾーンが延伸の前半部となる。温度の設定は予熱ゾーンの最終温度を105℃とし、最終倍率到達区間の温度を165℃とすると、1ゾーン目は110〜145℃、2ゾーン目は145〜160℃とするのが好ましい。但し、製膜速度など設定によっては2ゾーンの温度設定であっても可能である。
本発明のフィルムは、上記の様な高度に制御された横延伸を実施することにより得ることができる。上記横延伸工程により、巻取方向と45度の方向とそれに90度をなす方向とのTS/TE比の差が小さくなったのは、以下のようなメカニズムによると考えている。横延伸工程では前述のように横方向および長手方向のフィルム全体において力作用が均衡した状態にあり、長手方向では延伸初期ではフィルム進行方向に向かって進める様に作用し、延伸後期では中央部が進行方向に対して遅れる様に作用する。ここで、横延伸の最終到達部の延伸温度を高温に設定すると、横延伸工程の最終の延伸張力が下がる。これにより、フィルムの長手方向にそって熱固定部分から伝播する力の作用の影響が緩和され、長手方向で作用する力の歪が緩和されたと考えられる。一方、巻取方向(MD方向)とそれに90度をなす方向(TD方向)の配向特性は縦延伸と横延伸の倍率を適度に採用することにより得ることができる。即ち、本発明の場合、縦方向の全体倍率は2.1〜4.8倍となるがそのこの好ましい範囲は2.7〜3.8倍であるが、横延伸倍率はその縦倍率より0.3〜0.5倍高い倍率が横厚みの均一性から好ましく適用できるが余り横延伸倍率を大きくすると横の配向特性が縦に比較して大きくなり過ぎる場合がある。
一方、横方向の力作用については以下のように考えられる。フィルム中央部では進行方向での力しか作用しないため、フィルムに掛かる力作用は長手方向に対して左右対称になる。これに対して、フィルム端部ではクリップに保持された状態で斜め方向に進行し、進行方向だけでなく、斜め方向の力が加わる。そのため、フィルム端部の力作用は進行方向に対して左右対称にならない。TS/TE比の差を小さくするためには、この力作用を左右対称に近づける必要がある。これには、横延伸工程を高温で行い、フィルムにかかる延伸張力を小さくすることが有効である。ただし、単に延伸工程を高温で行うと、厚み斑が生じる恐れがある。そこで、横延伸工程の前半では、延伸温度を引くくし、厚み斑の生じにくい「S−Sカーブの延伸応力の増加する領域」で延伸を行い、厚みが均一化されてきた状態で、今度は延伸温度を高くし、横方向の延伸応力を低くして全体の力の作用のバランスにより、延伸を行うこととした。これにより、厚みの斑を増加させずに、巻取方向(MD方向)と巻取り方向に45度(A方向)、巻取方向と90度(TD方向)および巻取方向に135度(B方向:A方向に90度)をなす方向の破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比TS/TEの差異を小さくすることが可能となったと考えられる。
なお、フィルムの縦延伸工程において、上記した(1)〜(3)の手段を用いることにより、フィルムに熱斑欠点となり得る微小な延伸斑を発生させることなく、フィルムの厚み斑(特に、長手方向の厚み斑)の低減と、縦延伸と横延伸の配向特性を勘案した倍率を採用することにより、巻取方向(MD方向)と巻取り方向に45度(A方向)、巻取方向と90度(TD方向)および巻取方向に135度(B方向:A方向に90度)をなす方向の破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比TS/TEの差異の低減の両立を図ることが可能となったと考えられる。なお、上記した(1)〜(3)の手段の内の特定の何れかのみが、フィルムの厚み斑低減、熱斑の低減およびTS/TE比の差異の低減に有効に寄与するものではなく、(1)〜(3)の手段および横延伸倍率を組み合わせて用いることにより、非常に効率的にフィルムの厚み斑低減、熱斑の低減、およびTS/TE比の差異の低減が可能になるものと考えられる。
本発明では、横延伸工程に引き続き、熱固定処理を行う。熱固定処理工程の温度は180℃以上240℃以下が好ましい。熱固定処理の温度が180℃以上では、熱収縮率の絶対値が小さくなり好ましく、反対に、熱固定処理の温度が240℃以下であると、フィルムが不透明になり難く、また、破断の頻度が少なくなり好ましい。なお、好適な熱固定処理については以下に述べる。
<熱固定処理工程でのプレナムダクトの工夫>
通常、延伸後のフィルムの熱固定処理は、長尺状の熱風吹き出し口を有する複数本のプレナムダクトを長手方向に垂直に配置した熱固定装置内で実施される。このような熱固定装置では、加熱効率を良くするために、「熱風の循環」が行われる。熱固定装置に設置された循環ファンにより熱固定装置内の空気を吸引し、その吸引した空気を温調して、再度、プレナムダクトの熱風吹き出し口から排出される。このようにして、「熱風の吹き出し→循環ファンによる吸引→吸引した空気の温調→熱風の吹き出し」の「熱風循環」が行われる。
また、上述したように、フィルムロールの幅方向における熱収縮率差(片端縁際のHS150と他端縁際のHS150との差)は、熱固定を行う際にフィルム端縁部の緩和が不十分であるために発生する。図1に示すように、熱固定処理において各プレナムダクト3,3・・の熱風吹き出し口2,2・・の中央部分に連続した大型の遮蔽板Sを被せる方法(特開2001−138462号公報参照)によって、短尺のフィルムを後加工で比較的低温(例えば。120℃)で処理する場合の通過性は改善される。しかし、長尺のフィルムにおいて過度な張力を掛けると通過性は改善されるものの平面性が崩れたり、シワの発生が起こり、後加工での熱処理を高温(例えば、160℃)で行った場合に加工中のフィルムの平面性(シワなど)は、改善されない。また、図2に示すように、プレナムダクト毎に非連続の遮蔽板を被せ、風速を変更して行う方法(特開2002−79638号公報参照)では安定性に欠けることが判った。
本発明者らは、図1に示す方法では何故「長尺のフィルムにおける平面性」や「後加工での熱処理を高温にて行った場合の平面性」が改善されないのか、図2に示す方法では何故、安定性に欠けるのかを理解するため、熱固定装置内における現象の解析を詳細に行った。その結果、複数本のプレナムダクトに跨るような連続した大型の遮蔽板をプレナムダクトの熱風吹き出し口に被せると、遮蔽板により熱風の流れが制限され、上記した「熱風の循環」がスムーズに行われず、熱固定装置内で温度の乱調(温度のハンチング現象)が生じることを突き止めた。図2の場合もプレナムダクト毎に風速が異なり風のバランスが崩れ易く、温度の乱調が生じ、安定性が欠けることが判った。
本発明者らは、上記した「温度のハンチング現象」によりフィルム端部際の熱緩和が不十分になる為に、「長尺のフィルムにおける平面性」や「後加工での熱処理を高温にて行った場合の平面性」が悪くなるのではないかと推測した。そこで、本発明者らは、「熱風の循環」をスムーズにするとで、「長尺のフィルムにおける平面性」および「後加工での熱処理を高温にて行った場合の平面性」を改善できるのではないかと考えた。そして、熱固定装置の温度風量条件、遮蔽板の被覆態様、および後加工におけけるフィルムの通過性の三者の関係を把握すべく試行錯誤した結果、フィルム製造の際に、下記(1)の手段を講じることにより、「長尺のフィルムにおける平面性」や「後加工での熱処理を高温にて行った場合の平面性」が改善される傾向が見られた。そして、その知見に基づいて、本発明者らが、さらに試行錯誤した結果、下記(1)の手段を講じた上で、下記(2),(3)の手段を講じることにより、後加工における通過性の良好なフィルムロールを得ることが可能となることを見出し、本発明を案出するに至った。
(1)熱固定装置におけるプレナムダクトの温度・風量の調節
(2)熱固定装置におけるプレナムダクトの熱風吹き出し口の遮断条件の調整
(3)延伸ゾーンと熱固定装置との間における加熱の遮断
以下、上記した各手段について順次説明する。
(1)熱固定装置におけるプレナムダクトの温度・風量の調節
熱固定工程では加温・冷却を段階的に行うために、一般に、熱固定装置は温度の異なるいくつかの区分(熱固定ゾーン)に分かれている。本発明のフィルムロールの製造においては、熱固定装置の隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下となるように、各プレナムダクトから吹き出される熱風の温度、風量を調節することが不可欠である。たとえば、熱固定装置が第1〜3の熱固定ゾーンに分割されている場合には、第1ゾーン−第2ゾーン間における温度差と風速差との積、第2ゾーン−第3ゾーン間における温度差と風速差との積のいずれもが、250℃・m/s以下となるように調節される。このように、熱風の温度、風量を調節することによって、「熱風の循環」がスムーズになる。後述する不連続な遮蔽板を熱風吹き出し口に取り付ける法と組み合わせると、「温度のハンチング現象」が効果的に抑制される。これにより初めて、後加工における熱固定処理を高温にて行った場合の平面性が良好な長尺のフィルムを得ることが可能となる。
隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が250℃・m/s以下であると(たとえば、隣接し合う熱固定ゾーン同士の温度差が20℃となるように設定するとともに、隣接し合う熱固定ゾーン同士の風速差が10m/sとなるように設定する)、熱固定装置における「熱風の循環」がスムーズに行われ、「温度のハンチング現象」を効果的に抑制することができるので好ましい。加えて、隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が250℃・m/s以下であると、フィルムの通過により生じる随伴流として上流の熱固定ゾーンから下流の熱固定ゾーンへと流れ込む空気の温度差が小さくなる。そのため、下流の熱固定ゾーンの幅方向における温度が安定する為、好ましい。また、当該温度差と風速差との積は、200℃・m/s以下であると好ましく、150℃・m/s以下であるとより好ましい。
(2)熱固定装置におけるプレナムダクトの遮断条件の調整
本発明のフィルムロールの製造においては、複数のプレナムダクトに跨る大きな遮蔽板を取り付けるのではなく、図3に示すように、個々のプレナムダクト3,3・・の熱風吹き出し口(ノズル)2,2・・を一つずつ遮蔽するように棒状の遮蔽板S,S・・を取り付ける必要がある。このような不連続な遮蔽板を用いることで、「熱風の循環」がスムーズに行われる。また、同一の長さの遮蔽板を各プレナムダクトに取り付けるのではなく、熱固定装置の入口から出口(フィルムの通過方向)にかけて遮蔽板の長さを次第に長くするのが好ましい(図5参照)。このように、長さを調整することで、フィルム端縁部に曝される熱風温度が調整され、フィルム端縁部の歪みの解消が促される。なお、遮蔽板の材質は、熱固定装置の温度に耐えることができ、かつ、フィルムを汚したり、フィルムを粘着させたりしないものであればよいが、熱膨張の点からプレナムダクトと同一の材料を用いるのが好ましい。
(3)延伸ゾーンと熱固定装置との間における加熱の遮断(中間ゾーンの設置)
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムロールは、通常、縦−横延伸された後に、熱固定処理される。本発明のフィルムロールの製造においては、縦−横延伸されるゾーンと熱固定処理される熱固定装置との間に、積極的な熱風の吹き付けを行わない中間ゾーンを設置することが望ましい。これにより、延伸ゾーンと熱固定装置との間で、完全に加熱の遮断が行われる。より具体的には、延伸ゾーンおよび熱固定装置をフィルム製造時と同一条件にした状態で、延伸ゾーンと熱固定装置との間に短冊状の紙片を垂らしたときに、その紙片がほぼ完全に鉛直方向に垂れ下がるように、延伸ゾーンおよび熱固定装置の熱風を遮断するのが好ましい。なお、そのような中間ゾーンは、ハウジングによって囲われていても良いし、連続的に製造されるフィルムが露出するように設けられていても良い。かかる中間ゾーンにおける熱風の遮断が十分になされると、熱固定装置中における遮蔽板による遮蔽効果が発揮され、後加工時における良好なフィルムの平面性が得られるようになり好ましい。本発明での横延伸温度では中間ゾーンが無くても良い。
上述した通り、上記した(1)〜(3)までの方法を採用することにより、熱固定装置における「熱風の循環」がスムーズに実行され、「温度のハンチング現象」を抑えることが可能となり、その結果、幅方向の端部際で長手方向の緩和を十分に促すことができ、「長尺のフィルムにおける平面性」や「後加工での熱処理を高温にて行った場合の平面性」を改善することが可能となる。なお、上記説明においては、プレナムダクトを設置した熱固定装置において「熱風の循環」をスムーズに実行させて「温度のハンチング現象」を抑える方法を示した。上記説明は、生産レベルにおいて如何にフィルムに熱エネルギーを付与すれば本発明のフィルムロールが得られるか、という技術的思想を開示したものであるが、当業者であれば、かかる技術的思想を上記した方法と異なった方法により容易に実施することができ、異なった方法で本発明のフィルムを得ることができる。例えば、遮蔽板を設けるかわりに、赤外線ヒーターを用いて、フィルム幅方向の温度を中央から端部にかけて高くしても良い。すなわち、別のタイプの熱固定装置であっても、「熱風の循環」をスムーズに実行させて「温度のハンチング現象」を抑えた上で、幅方向の端部際で長手方向に十分に緩和させるに足る熱エネルギーをフィルムに付与することにより、本発明のフィルムの如く「長尺のフィルムにおける平面性」や「加工での熱処理を高温にて行った場合の平面性」の改善されたフィルムを得ることが可能である。
ただ、上記の熱固定方法であっても、クリップ近傍のフィルムはクリップにより動きを制限されているために、長手方向の緩和が十分に実施されず、フィルム端縁部については熱収縮率が十分改善されない場合がある。長手方向の熱収縮率を小さくしようとしても、単に熱固定での温度を上げるだけでは、フィルムが着色したり、結晶化が進みフィルムが白化して透明性が悪化するという問題があり、熱収縮率を低下させることが困難であった。
そこで、本発明では、上記熱固定処理方法に加え、さらに以下の方法により長手方向の緩和を行うことでフィルム端縁部の熱収縮率を小さくすることができた。すなわち、本発明における長手方向の緩和処理は、図6、7、8に記載のように、クリップ間に屈曲可能な構造を持たせ、縦方向のクリップ間隔を調整することでフィルム端部を保持するクリップ(4)と隣接クリップとの間に屈曲可動なチェンリンク(7)で連結するジョイント部(8)を有し,当該ジョイント部(8)に連結したベアリング(11)がガイドレールを走行することで、チェンリンク(7)の屈曲角度が変位することにより、クリップの進行方向の間隔を収縮することで長手方向の緩和を実施することが可能となる(図6、7、8参照)。本発明の長手方向の緩和処理はフィルムの製造工程で連続的に行うことができ(インライン工程)、後工程で追加の工程を加えることなく加工が可能となる。本発明における緩和率は1%以上4%以下が好ましく、1.5%以上2.0%以下が更に好ましい。
上記した方法により製造される本発明のフィルムは、優れた加工特性を有し、加熱処理下でも平面性が保持され、断裁によるヒゲの発生もなく、LCDに用いられるプリズムレンズシート用ベースフィルム、ハードコートフィルム用ベースフィルム、ARフィルム用ベースフィルム、拡散板用ベースフィルム、CRT用破砕防止フィルム、タッチパネルやエレクトロルミネッセンスに用いられる透明導電性フィルム、プラズマディスプレイの前面板に用いられる近赤外線吸収フィルムや電磁波吸収フィルム等に好適に使用できる。
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを構成するフィルムの厚みは、特に限定はされない。しかしながら、光学用途、印刷用途としてフィルムを枚葉に使用する場合には、70μm以上400μm以下の厚みであると好ましい。フィルムの厚みは70μm以上であれば、枚葉での取り扱いが容易となり好ましい。また、フィルムの厚みは、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。フィルムの厚みが400μm以下であれば、切断加工が容易となり好ましい。
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは単層でも、2層以上の積層構造を有するフィルムでも良いし、透明性を重視して微粒子を入れない二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの片面、又は両面に後加工工程時の接着性を改良する目的や滑り性を改良する目的で種々のコーティングを製膜時に付与したものでもなんら差し支えがない。
また、本発明のフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム中には、必要に応じて微粒子を添加することができる。その際に添加する微粒子としては、公知の無機微粒子や有機微粒子を挙げることができる。さらに、フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。本発明におけるポリエチレンテレフタレート系樹脂には、微粒子を添加してポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの作業性(滑り性)を良好なものとすることが好ましい。微粒子としては任意のものが選べるが、たとえば無機系微粒子として、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等を挙げることができる。また、有機系微粒子として、たとえばアクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05〜2.0μmの範囲内で、必要に応じて適宜選択することができる。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに上記粒子を配合する方法としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めても良い。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うことができる。
さらに、本発明のフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、厚み斑(特に、長手方向の厚み斑)がきわめて小さく平面性が良好である上、熱収縮率が小さく、フィルムの切断加工時に切り口にヒゲなどの発生を抑え、光学用フィルムや精密印刷用途および、枚葉で使用される基材フィルムとして好適に用いることができる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。なお、フィルム特性の評価方法は以下の通りである。
(1)ポリエチレンテレフタレート系樹脂の極限粘度、酸価
PET樹脂の粉砕試料を乾燥後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間、および、溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、Hugginsの定数が0.38であると仮定して極限粘度を算出した。
PET樹脂を粉砕した後、ベンジルアルコールに溶解し、クロロホルムを加えてから水酸化ナトリウム溶液で中和滴定し、PET1t当たりの水酸化ナトリウムの当量を算出し、酸価とした。
(2)Δnabの測定
得られたフィルムのフィルム巻取方向に平行な両端縁から50mm以内の位置および中央の位置からそれぞれフィルム試験片を採取した。フィルム試験片を23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置した後に、アタゴ社製の「アッベ屈折計4T型」を用いて、巻き取られたフィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率(n)、および、巻き取られたフィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向(すなわち、上記した45度の方向と90度の角度をなす方向)の屈折率(n)をそれぞれ測定した。そして、それらの2つの屈折率の差異の絶対値をΔnabとして算出した。これら2つの屈折率の差異の絶対値をΔnabとし、Δnab=│n―n│により算出した。フィルムロールの両端縁部および中央部のΔnabがいずれも0.015以上0.060以下であることを確認し、最も大きい値を表中のΔnabとした。なお、本発明においてフィルムの巻取り方向は、フィルムの長手方向もしくは縦方向ともいう。
(3)長手方向厚み変動率(厚み斑)
フィルムの巻取方向に沿ってフィルム長さ30m×幅30mmの長尺なロール状にサンプリングし、ミクロン測定器株式会社製の連続接触式厚み計を用いて、5m/分の速度でフィルム試料の長手方向に沿って連続的に厚みを測定する(測定長さは30m)。そして、測定時の最大厚みをTmax、最小厚みをTmin、平均厚みをTaveとし、下式1からフィルムの巻取方向の厚み変動率を算出する。
厚み変動率={(Tmax−Tmin)/Tave}×100(%).式1
(4)破断強度[TS]、破断伸度[TE]
フィルムの巻取方向(MD方向)と、それに45度の角度をなす方向(A方向)と、90度の角度をなす方向(TD方向)と、135度の角度をなす方向(B方向)との、4箇所から、幅12.7mm、長さ200mmのフィルム試験片をサンプリングした。フィルム試験片を引張試験機(ORIENTEC社製、テンシロンRTC−125A)にセットし、温度23℃、湿度65%RHの環境下において、チャック間距離100mm、引取り速度200mm/minで伸張し、破断に要する応力とフィルムの伸びを計測した。2回の測定の平均値から、破断強度 (MPa)、破断伸度(%)を求めた。
(5)フィルムの断裁性
ギロチンカッタによりフィルムを切断し、その断裁性を評価する。断裁性とは、例えばハサミやカッターで切る際の切り易さで、切断面の滑らかさを表す。切断方法によりその切れ性は変わるが、押し切り方法の断裁機(コクヨ社製、DN−1N)を用いて、200mmの長さにわたって約400mm/秒の速度で切断し、その切り口の様子を目視で観察した。切断試験は30回行い、切断面の目視観察結果を以下のように評価した。
判定
○:切り屑も発生せず、切り口ヒゲも発生しない。
△:切り屑もしくは切り口ヒゲが1〜10回発生。
×:切り屑もしくは切り口ヒゲが11回以上発生。
(6)フィルムの熱収縮率の測定
Δnabが0.015以上0.060以下である幅方向の長さが70cm以上のフィルムを均等に5分割する。各分割した5つのフィルムのそれぞれについて幅方向の中央部に切り出し部を設ける。各切り出し部からフィルム巻き取り方向にそって、幅20mm、長さ250mmの試料フィルムを切り出し5つのフィルム試料を切り出す。前記で切り出した幅20mm、長手方向の長さ250mmの試料に200mm間隔で標線を印し、150℃または180℃に調節した加熱オーブンに入れ、JIS/C−2318に準拠して、各フィルムについて熱収縮率を測定する。また、その最大値と最小値の差を熱収縮率差とする。
(7)加工フィルムの平面性
ロール状フィルムを用い、コータで下方及び上方の空気流吹き出し口の間隔が38cmの空気浮上搬送式乾燥装置を用いて、搬送張力2000kPa、温度160℃で16秒間で通過させ、加工のモデルフィルムを得た。冷却は、50℃の冷却ロールを用いてフィルムを20℃/秒の速度で冷却した後、ロール上に巻き取り、ロールに巻いた7日経過後にロールからフィルムを引き出しフィルムの平面性を観察した。すなわち、温度25℃、湿度65%の室内で100cm幅の加工モデルフィルムを約3mの長さにしてフィルム長手方向に二人で軽く長手方向と幅方向に引っ張りながら持ちフィルムに写る反射する像を見てタルミが無いかを見る。
判定
○:タルミの無いもの
×:タルミの有るもの。
(8)フィルムの通過性
熱処理後のフィルムの平面性を下記方法により評価した。熱処理工程として、2本のロールの間隔が1,900mmであるコーターを用い、温度を100℃あるいは160℃、炉内張力を100Nに設定した。次いで、ロール間隔が2,000mmになるよう2本のロールを水平に配置し、さらに2本のロールの中央位置に、ロール上面の共通接線から30mm下の位置に上面が位置されるように鉄棒を配置した。熱処理工程を通過させたフィルムを98Nの張力下で2本のロール間を通過させた。フィルムを通過させた際に、鉄棒にフィルムが接触しない場合は○とし、鉄棒に接触した場合には×とした。これらの工程は連続して行ない、フィルムが鉄棒に接触したか否かの確認は目視にて行った。
また、実施例および比較例におけるフィルムの製膜条件を表1に示す。
[実施例1]
添加剤として平均粒径0.7μm(TEM法)のシリカ粒子を0.03重量%含有したポリエチレンテレフタレートを(極限粘度:0.60dl/g、酸価:20eq/t)を水分率が50ppmとなるように乾燥した後に押出機直上のホッパ内に仕込み、押出機内で285度の温度にて溶融させた。また、押出機で溶融する際には、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm以上の粒子を90%カット)で溶融樹脂を濾過した。次いで、溶融させた樹脂をT型のダイスからシートとして押し出し、静電印加キャスト法を用い、表面が30℃に調節されたキャスティングドラムに巻き付けて冷却固化させることによって、1,590μmの未延伸シートを得た。
そして、得られた未延伸シートを、加熱されたロール群で昇温した後、3.5倍に延伸した後に、その縦延伸フィルムをテンターに導き、1ゾーン目を125℃の雰囲気下で幅方向へ2.0倍延伸し、2ゾーン目を140℃の雰囲気下で3.0倍まで延伸し、3ゾーン目を170℃で4.0倍まで延伸し、その後、後述する方法で熱固定処理を施し、225℃で2.2%の横緩和処理を行った。また、ベアリングをガイドレールに沿わせることで、チェンリンクの屈曲角度を変位させ、長手方向のクリップ間隔を狭めることにより1.7%の縦緩和処理を行った。この縦緩和処理を行う間にフィルム温度は220℃から150℃に下がった。このフィルムの両縁部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって、厚さ約125μmの二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結価結果を表4に示す。
[熱固定処理]
上記熱固定処理は、図3の如き構造を有する熱固定装置にて行った。熱固定装置は第1〜4ゾーンという4個の熱固定ゾーンに区切られており、第1〜3ゾーンには、それぞれ、8個ずつのプレナムダクトa〜xが設けられており、第4ゾーンにも、8個のプレナムダクトが設けられている。各プレナムダクトは、フィルムの進行方向に対して垂直となるように、フィルムの進行方向に対して400mm間隔で上下に設置されている。そして、それらのプレナムダクトの熱風吹き出し口(ノズル)から延伸されたフィルムに熱風が吹き付けられるようになっている。
実施例1においては、a〜oの15本のプレナムダクトの熱風吹き出し口に、不連続な棒状の遮蔽板S,S・・を、図3の如き態様で取り付けた。図5は、プレナムダクトa〜oの熱風吹き出し口に遮蔽板S,S・・を取り付けた熱固定装置を上から見た様子を示したものであり、取り付けられた各遮蔽板S,S・・の長手方向の中心は、熱固定装置を通過するフィルムの幅の中心と略一致するように設定されている。また、各遮蔽板S,S・・の長さ(製造されるフィルムの幅方向における寸法)は、熱固定装置の入口から出口にかけて次第に幅広になるように(すなわち、末広がりになるように)調整されている。a〜oの各プレナムダクトの熱風吹き出し口の遮蔽率(遮蔽板による熱風吹き出し口の遮蔽面積/熱風吹き出し口の面積)を表2に示す。なお、実施例1における遮蔽板による遮蔽態様を「A態様」とする。
また、実施例1においては、熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3の如く調整した。なお、実施例1の熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度条件、風速条件においては、隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下になっている。なお、実施例1における第1〜4ゾーンの温度、風速条件を「I条件」とする。
[フィルムの特性評価]
上記の如く得られたフィルムを、上記した方法により特性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
[実施例2]
押出機による溶融押し出し量を増加させて、未延伸フィルムの幅を増加させ、未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを2,250μmに変更するとともに、キャスティングドラムに巻き付ける際にエアによる冷却風を用いて冷却した以外は、実施例1と同様に未延伸シートを得た。しかる後、得られた未延伸シートを、縦延伸倍率を3.1倍に変更して縦延伸した。さらに、その縦延伸フィルムを、をテンターに導き、1ゾーン目を140℃の雰囲気下で幅方向へ1.75倍延伸し、2ゾーン目を155℃の雰囲気下で2.5倍まで延伸し、3ゾーン目を180℃で3.25倍まで延伸し、4ゾーン目を190℃の雰囲気下で4.0倍まで延伸した。熱固定は装置のプレナムダクトの熱風吹き出し口に取り付ける遮蔽板を表2の如き遮蔽率になるように変更し、熱固定装置の第1〜4ゾーンの温度、風速を表3の如く変更した以外は、実施例1と同様に熱固定処理、横と縦の緩和処理をすることによって、厚さ188μmの二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結価結果を表4に示す。なお、実施例2における遮蔽板による遮蔽態様を「B態様」とし、実施例2における第1〜4ゾーンの温度、風速条件を「II条件」とする。
[実施例3]
未延伸シートの引取り速度を調整して未延伸シートの厚みを3,000μmに変更する以外は、実施例2と同じ方法により未延伸シートを得た。
さらに、実施例2と同様に横延伸、熱固定、横と縦の緩和処理を行い、厚さ250μmの二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[実施例4]
実施例1と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[実施例5]
極限粘度0.60dl/g、酸価16eq/tのポリエチレンテレフタレートを用いた以外は、実施例1と同様に行い、厚さ約125μmの二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較例1]
実施例1と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較例2]
実施例2と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較例3]
実施例3と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例3と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較例4]
実施例1と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較例5]
実施例3と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例3と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較例6]
実施例1と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定を行った以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較参考例1]
実施例1と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較参考例2]
実施例2と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較参考例3]
実施例1と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較参考例4]
実施例2と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較参考例5]
実施例1と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較参考例6]
実施例2と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較参考例7]
実施例1と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[比較参考例8]
実施例2と同様に得た縦延伸フィルムを、表1,2、3の条件により横延伸、熱固定、緩和処理を行った以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、実施例1と同様の方法によって評価した。評価結果を表4に示す。
[実施例のフィルムの効果]
表4から、実施例のフィルムは、いずれも、幅方向における熱収縮率の差(すなわち、熱収縮率差)が小さい上、熱収縮率の絶対値も小さく、後加工時の通過性も良好であり、厚み変動率(長手方向の厚み変動率)がきわめて小さく平面性が良好である上、フィルム表面のキズが非常に少なく、裁断性が良好である。
これに対して、比較例のフィルムは、幅方向における熱収縮率差が大きかったり、長手方向における熱収縮率値も大きかったり、後加工時における通過性が不良であることが分かる。加えて、比較例のフィルムは、厚み変動率(長手方向の厚み変動率)が大きく平面性が不良であったり、フィルム表面のキズが多く、パソコンの液晶画面に用いた場合に多くの光学欠点が検出されたりすることが分かる。
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、上記の如く優れた特性を有しているため、各種の光学用部材に使用される光学用フィルムや太陽電池部材、その他の後加工における熱処理を高温ゾーン(160℃程度)にて比較的長時間(10〜60秒)に亘って行う加工用フィルムとして好適に用いることができる。
従来の遮蔽板による遮蔽態様を示す説明図(a)は、熱固定装置の一部の鉛直断面を示したものであり、(b)は、プレナムダクトの熱風吹き出し口に遮蔽板を取り付けた状態を上から見た状態を示したものである。 特開2002−79638の図4である。各プレナムダクトの風量が一定であるため、プレナムダクトから吹き出る風速がプレナムダクト毎に異なっている。 本発明における遮蔽板による遮蔽態様を示す説明図である(a)は、熱固定装置の一部の鉛直断面を示したものであり、(b)は、プレナムダクトの熱風吹き出し口に遮蔽板を取り付けた状態を上から見た状態を示したものである)。 実施例、比較例、参考例、比較参考例で用いた熱固定装置を上から透視した状態を示す説明図である。 遮蔽板による遮蔽態様を示す説明図である。 本発明における長手方向の緩和を実施するクリップチェンの拡大部分を示す平面図である。 (a)本発明における長手方向の弛緩を実施するクリップチェンの拡大部分を示す縦の断面図である。(b)はガイドレールが半分程変位した状態を示す。 本発明における横延伸機全体を示す説明図である。
符号の説明
1:熱固定装置
2:熱風吹き出し口
3,a〜x:プレナムダクト
4:クリップ
5,6:クリップに連結したベアリング
7:チェンリンク
8:ジョイント部
9:クリップが取り付けられる台
10:クリップに連結したベアリング
11:ジョイント部に連結したベアリング
12:クリップ走行レール
13:ガイドレール
F:フィルム
S:遮蔽板
A:フィルムの巻き取り方向
Z1:第1ゾーン
Z2:第2ゾーン
Z3:第3ゾーン
Z4:第4ゾーン
N1、N2:中間ゾーン

Claims (6)

  1. フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の屈折率とそれに90度の角度をなす方向の屈折率との差異Δnabが0.015以上0.060以下であるポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムで下記要件(1)〜(7)を満たすことを特徴とするポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
    (1)フィルムの巻取方向と45度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの巻取方向と135度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、巻取方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、巻取方向と90度の角度をなす方向(幅方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、いずれも0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下であること
    (2)フィルムの幅方向の長さが70cm以上のフィルムについて、フィルム幅方向に均等に5分割し、各5分割したフィルムの幅方向における中央部より切り出した5つの試料について、150℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS150を求めたときに、それらのHS150の最大値と最小値の差が0.1%以下であること
    (3)前記5つの試料のHS150が、0.0%以上0.5%未満であること
    (4)前記5つの試料について、180℃で30分間加熱したときのフィルム巻き取り方向の熱収縮率であるHS180を求め、それらのHS180の最大値と最小値の差が0.15%以下であること
    (5)前記5つの試料のHS180が、0.7%以上1.5%未満であること
    (6)フィルムの巻取方向の厚み変動率が6%以下であること
    (7)フィルムの厚みが70μm以上400μm以下であること
  2. 請求項1に記載されたポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを製造するための製造方法であって、押出機から原料樹脂を溶融押し出しすることにより未延伸シートを形成するフィルム化工程と、そのフィルム化工程で得られる未延伸シートを縦方向および横方向に二軸延伸する二軸延伸工程と、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程とを含んでおり、その横延伸工程が、下記要件(8)〜(12)を満たし、熱固定工程が下記要件(13)〜(16)を満たすことを特徴とするポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造方法。
    (8)横延伸工程において、連続する温度区分域の設定温度の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)では5℃以上20℃以下であること
    (9)横延伸工程における延伸において1.8倍を通過する温度域が100℃以上160℃未満であること
    (10)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)と次の後半部分の最初の温度区分領域の間では5℃以上40℃以下であること
    (11)横延伸工程において、連続する温度区分域の温度設定の差が、横延伸の後半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率まで)では5℃以上30℃以下であること
    (12)横延伸工程における延伸において最終延伸倍率に到達する温度域が160℃以上220℃未満であること
    (13)熱風を吹き出す幅広な複数のプレナムダクトが、フィルムの進行方向に対して上下に対向して配置されていること
    (14)前記複数のプレナムダクトに熱風の吹き出し口を遮蔽するための遮蔽板が取り付けられていること
    (15)前記各遮蔽板のフィルムの進行方向における寸法が、フィルムの進行方向における各プレナムダクトの吹き出し口の寸法と略同一に調整されており、前記各遮蔽板のフィルムの幅方向における寸法が、フィルムの進行方向に対して次第に長くなるように調整されていること
    (16)熱固定後、長手方向の緩和処理を実施する工程があること
  3. 請求項2に記載の長手方向の緩和処理をする工程において、フィルム端部を保持するクリップと隣接クリップとの間に屈曲可動なチェンリンクで連結するジョイント部を有し,当該ジョイント部に連結したベアリングがガイドレールを走行することで、チェンリンクの屈曲角度が変位することにより、クリップの進行方向の間隔を収縮させることで当該長手方向の緩和処理を行うことを特徴とするポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造方法。
  4. 二軸延伸工程がフィルムを縦方向に延伸した後に横方向に延伸するものであるとともに、その横延伸を行うゾーンと熱固定装置との間に、風の吹き付けを実行しない中間ゾーンを設けたことを特徴とする請求項2または3に記載のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造方法。
  5. 熱固定装置が、複数の熱固定ゾーンに分割されているとともに、隣接し合う熱固定ゾーン間における温度差と風速差との積が、いずれも、250℃・m/s以下となるように設定されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造方法。
  6. ポリエステルの溶融押出時に、任意のメルトラインで、初期濾過効率が90%以上で濾過粒子サイズが15μm以下の濾材を用いて、精密濾過を行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造方法。
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