JP4273437B1 - 二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム - Google Patents

二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】積層体のベースフィルムに好適な二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの提供。
【解決手段】フィルムの長手方向と45度の角度をなす方向の屈折率とそれに90度の角度をなす方向の屈折率との差異Δnabが0.015以上0.060以下である下記要件(1)〜(3)を満たすポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。(1)フィルムを長手方向に300mm、幅方向に210mmの試料の四隅のソリの高さがフィルムの厚み以下、(2)150℃で30分間熱処理した場合の四隅のソリの高さの平均が0.5mm以上5.0mm以下、(3)4方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、いずれも0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下
【選択図】なし

Description

本発明は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに関する。詳しくは、積層体のベースフィルムとして用いた際に優れた平面性と裁断加工性とを有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに関する。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる二軸延伸フィルムは、優れた透明性、寸法安定性、耐薬品性から、各種積層体のベースフィルムとして広く利用されている。特に、硬化収縮性樹脂組成物を積層するベースフィルム等の用途には、優れた強度、寸法安定性が要求されるため、比較的厚手のフィルムが用いられている。
上記の如き用途のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムには、通常の包装用途等のフィルムに比べて平面性(平面な台の上に戴置した場合のフラットネス)が良好であることが要求される。殊に、近年の製品の高性能化に伴って、平面性に対する要求が高く、平面性の乱れは品質上の欠陥となる。
一方、平面性の良好な空洞含有ポリエステル系フィルムを得ることを目的に、ロール状フィルムから切り出したフィルムのカールと、加熱後のカールを抑えることに関して、特許文献1、2の如く、縦延伸工程での表裏の赤外線の出力の変更および横延伸工程、熱固定工程のフィルムの温度差を設けて実施する方法が記載されている。
特開2001−342273号公報 特開2001−342274号公報
また、平面性の良好なフィルムを得ることを目的に、フィルムから切り出したフィルムのカールを加重下で抑えることに関して特許文献3の如く、フィルム表裏の温度差を縦延伸時に10℃以下とすることが記載されている。
特開平10−258458号公報
さらに、積層体のベースフィルムとして用いる場合、フィルムロールとして作製されたフィルムは、後加工において所定のサイズに裁断される。また、後加工において生産性をあげるために、フィルムを積み重ねた状態で切断加工すること行われている。そのため、フィルムの断裁性を向上させる方法として、特許文献4、特許文献5、特許文献6にあげるように、後加工において特殊な切断装置や切断方法が開示されている。
特開2001−252891号公報 特開2005−305637号公報 特開2006−289601号公報
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムをベースフィルムとして作製された積層体も平面性が良好であることが要求される。平面性の良好な積層体をえるために、上記のように比較的厚手のベースフィルムを用いたり、平面性の優れたベースフィルムを用いることが行われている。また、積層体自体にソリがあったとしても、積層体を部材として組立体を作製する場合は、アセンブリー方法を工夫することで積層体の平面性を調整することが行われている。そのため、従来のベースフィルムであっても問題なく使用することが可能であった。
しかしながら、硬化収縮性樹脂組成物を積層した場合、樹脂の硬化に伴う硬化収縮により、僅かではあるが硬化性樹脂層側に微小なソリが生じていることが分かった。より大面積化が求められる用途などにおいては、ソリの程度が少ないものが精密性の向上に役立つと考えた。
さらに、断裁性についても、ミルロールの中央部に由来するフィルムでは問題がないものの、ミルロールの端部に由来するフィルムでは、フィルムの切断面に「ヒゲ」と呼ばれるフィルムの切れ残りや、クラックが発生し易くなることを見出した。特に、フィルムを積み重ねた状態で切断加工する場合、切断面に生じたヒゲが原因で枚葉に重ねたフィルムの端縁部が高くなり位置ズレや平面性の歪みが生じる場合があった。さらに、より精密化が求められる用途においては、ヒゲから生じた切屑が要因となり、以後の加工性が悪化したり、不良の発生により、積層体として作製した場合の歩留まりが低下する可能性があった。そのため、上記のような切断方法を選択しても、長時間にわたって使用していると、その切れ味も悪くなり、刃の交換やその他条件調整が必要となるため、停台及び経費のロスが大きくなりうる。このような、ミルロールの取り位置で、断裁性が異なることは、ミルロールの幅方向において物性に歪みがあるためと考えられた。
本発明は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに関する。詳しくは、積層体のベースフィルムとした場合に優れた平面性を有するとともに、優れた断裁性を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに関する。例えば、切断加工時におけるヒゲ、切り粉、切断屑などの発生を抑制し、切断加工時に発生する平面性の崩れが品質上の問題とならない様にすると共に、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに硬化収縮性の樹脂組成物を積層した際に、硬化収縮性樹脂組成物の硬化収縮が発生しても、ベースフィルムが反対面に収縮性を有するために、全体として反りが均衡し、積層体全体として優れた平面性を備えることが可能なベースフィルムとして好適に使用できる二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに関する。
かかる本発明の内、第1の発明は、フィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向の屈折率とそれに90度の角度をなす方向の屈折率との差異Δnabが0.015以上0.060以下である透明ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムであって、下記要件(1)〜()を満たす二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムである。
(1)フィルムを製膜の長手方向に300mm、それに直角な幅方向に210mmの試料を採取し、前記試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定した際に、四隅のソリの高さの最大値がフィルムの厚み以下であること
(2)フィルムを製膜の長手方向に300mm、それに直角な幅方向に210mmの試料を採取し、前記試料の片側の面を上にして台紙に載せ、加熱オーブン中で150℃で30分間熱処理した後、台紙ごと前記試料を加熱オーブンより取り出し、前記試料を室温で30分放置した後、前記試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定した際に、四隅のソリの高さの平均が0.5mm以上5.0mm以下であること
なお、上記ソリの高さは加熱後に反ったフィルム試料の凹面を上にして測定する。よって、加熱後に室温で放置した後の前記試料のソリの高さが0mmであるか、もしくは、前記試料の断面がM字状である場合は、前記試料の上下面を反対にしてソリの高さを測定する。
(3)フィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの製膜の長手方向と135度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの製膜の長手方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの製膜の長手方向と90度の角度をなす方向(幅方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下であること
(4)フィルムを製膜の長手方向に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形のフィルム試料を切り出し、前記試料の四隅のソリの高さを(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定した際に、ソリの高さの最大値がフィルム厚み以下であること
(5)フィルム表面に下記硬化性樹脂組成物を、硬化後厚みが2mmになるように塗布した後、紫外線を塗布面より照射し、硬化させて得た硬化性樹脂積層フィルムから、フィルムを製膜の長手方向に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形のフィルム試料を切り出し、硬化性樹脂組成物面を上にして、前記試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定した際に、四隅のソリの高さの平均が0.5mm以下であること
(硬化性樹脂組成物)
東亞合成(株)製、M−315を40質量部、三菱レイヨン(株)製、ノナブチレングリコールジメタクリレート(PBOM)を40質量部、新中村化学工業(株)製ウレタンアクリレート(U−2PHA)を20質量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア184を1.2質量部を用いて硬化性樹脂組成物を調製した。
第2の発明は、前記ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの厚みが100μm以上400μm以下である。
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、断裁性が良好で、フィルム単体としても積層体としても平面性が良好である。よって、好ましい実施態様として、切断加工時に切粉、ヒゲの発生を抑え、ベースフィルムとして硬化収縮性樹脂組成物を積層しても、積層体全体としての平面性が良好である為、後加工性に優れる。また、好ましい実施態様として、収縮性の異なる、もしくは収縮性を有する素材を、積層、もしくは張り合わせても、積層体全体としての平面性が良好であると共に、枚葉として用いるても断裁性が良好である。
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、エチレングリコールおよびテレフタル酸を主な構成成分として含有する。本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびグリコール成分を共重合させても良い。上記の他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス−(4−カルボキシフェニルエタン)、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シクロヘキサン−1、4−ジカルボン酸等が挙げられる。上記の他のグリコール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ビスフェノールA等のエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。この他、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸成分も利用され得る。
このようなポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETという)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
本発明のフィルムをPETによって形成する場合には、原料であるPETの極限粘度(IV)は、0.45〜0.70dl/gが好ましく、0.55〜0.65dl/gがより好ましい。PET原料の極限粘度が0.45以下であると、回収されて再度押出機を通過した後のPETの重合度が低くなりすぎて、フィルムの延伸性が悪化したり、耐引き裂き性が低下したりするため好ましくない。反対に、極限粘度が0.70dl/gを上回ると、濾圧が大きくなりすぎて高精度濾過が困難となるので好ましくない。なお、樹脂原料のIVは、たとえば、以下のような方法で求められ、[η]として表される。
[極限粘度(IV)]
PETの粉砕試料を乾燥後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間、および、溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、Hugginsの定数が0.38であると仮定して算出する。
また、本発明のフィルムをPETによって形成する場合には、PET原料の酸価(AV)は、3〜30eq/tの範囲が好ましく、5〜25eq/tであるとより好ましい。酸価が3eq/t以下であると、重合速度が遅くなってしまい、製造効率が低下するので好ましくない。反対に、酸値が30eq/t以上であると、加水分解が進行し易く、重合度の低下を引き起こし易いので好ましくない。なお、樹脂原料の酸価は、たとえば、以下のような方法で求められる。
[酸価]
原料を粉砕した後、ベンジルアルコールに溶解し、クロロホルムを加えてから水酸化ナトリウム溶液で中和滴定し、PET1t当たりの水酸化ナトリウムの当量を算出する。
[Δnab]
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの製造時において、テンター内に幅方向に延伸する時にフィルム幅方向の物性の均一性が乱れる現象が生じることが知られている。この現象が生じるために、得られる二軸延伸フィルムは、フィルム幅方向の中央部から離れるほどΔnab(フィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向の屈折率と、フィルムの製膜の長手方向と135度の角度をなす方向の屈折率との差異(絶対値))が大きくなる。ここで、本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、ミルロールの端部に由来するものであって、Δnabが全ての領域で0.015以上0.060以下であるものに限定される。Δnabが0.015を下回るフィルムは、上記した「歪み(すなわち、幅方向における物性差)」の問題が生じない。一方、Δnabの上限は0.060であるが、より好ましくは0.057、さらに好ましくは0.055である。Δnabが0.060を上回るフィルムは歪が著しく、本発明の要件を満たすようにTS/TE等を調整することが困難である。なお、本発明におけるΔnabとは、フィルムの製膜の長手方向に平行な片端縁から50mm以内の位置および他端縁から50mm以内の位置においてそれぞれΔnabを測定して求めることができる。
[平面性とソリ]
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムから、製膜の長手方向(縦方向)に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形のフィルム試料を切り出した場合、下記測定条件により150℃、30分間の熱処理により四隅のソリの高さの平均が0.5mm以上5.0mm以下になることが必要である。
加熱後のソリは以下の方法により測定する。
(1)フィルム製膜の長手方向(縦方向もしくは機械方向ともいう)300mm×幅方向210mmの長方形のフィルム試料を切り出す。
(2)前記試料を、片側の面(例えばx面とする)を上にして平面な台紙に乗せ、加熱オーブンの棚板に載せる。ここで、台紙は厚紙、板紙ともいい、1mm程度の厚さのものが好適である。
(3)加熱オーブンを150℃に調整し、30分間、加熱処理を行う。
(4)加熱処理後、台紙ごと前記試料を取り出し、室温で30分放置する。なそ、ここでの室温条件は、温度23±2℃、湿度65±5%に管理された条件であることが望ましい。
(5)30分間放置した前記試料を水平なガラス板(厚さが5mm程度が望ましい)に乗せ、前記試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で、目視により最小目盛りの10分の1まで測定する。全試料について四隅のソリの高さを測定し、四隅のソリの高さの平均を求める。
(6)なお、加熱後室温で放置した後の前記試料のソリの高さが0mmであるか、もしくは、前記試料の断面(長方形のいずれかの辺)がM字状である場合は、前記試料の上下面を反対にして(前記x面を下にして)ソリの高さを測定する。つまり、本願のソリは加熱後にフィルムにソリが生じた場合の凹面を上にして四隅の高さを測定する。
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの上記条件で測定した150℃、30分間の熱処理による四隅のソリの高さの平均は、0.6m以上がより好ましく、0.7mm以上がさらに好ましい。上記条件で測定した150℃、30分間の熱処理による四隅のソリの高さの平均が、0.5mm未満の場合は、硬化収縮性樹脂を積層した場合、樹脂の硬化収縮によりソリに抗しきれず、積層体が全体として硬化樹脂組成層側に反り易くなる。また上記条件で測定した150℃、30分間の熱処理による四隅のソリの高さの平均は、4.0mm以下がより好ましく、3.5mm以下がさらに好ましい。上記条件で測定した150℃、30分間の熱処理による四隅のソリの高さの平均が、5。0mmを超える場合は、硬化収縮性樹脂を積層した場合、樹脂の硬化収縮によりソリ以上に強いソリが生じ、積層体が全体としてベースフィルム側に反り易くなり好ましくない。
記測定条件による150℃、30分間の熱処理により四隅のソリの高さの平均が0.5mm以上5.0mm以下である場合、片面に硬化収縮性樹脂組成物を積層し、硬化に伴う硬化収縮が生じても、積層体全体としては平面性が保持される。積層体全体としての平面性の許容範囲は、用途にもよるが、例えば、長手方向300mm×幅方向210mmの長方形の積層体の場合、四隅のソリの高さの平均は、0.5mm以下が好ましい。積層体のソリの高さが前記範囲内であれば、高い平面性が求められる精密用途でも好適に使用できる。
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、加熱処理前の状態では、平面性が良好であることが望ましい。よって、長手方向に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形のフィルム試料を切り出した場合、加熱処理を行わず、四隅のソリの高さを測定した際に、ソリの高さの最大値はフィルム厚み以下であり、四隅のソリの高さの平均値は、フィルムの厚みの20%以下であることが好ましい。
加熱処理を行わない場合の、ソリの高さの最大値は、フィルム厚み以下であることが好ましく、フィルム厚みの90%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましく、50%以下であることが特に好ましい。また、加熱処理を行わない場合のソリの高さの平均は、20%以下であることが好ましい。加熱処理を行わない場合のソリの高さ最大値がフィルム厚み以下、もしくは平均値が20%以下である場合は、硬化性樹脂の塗布などのフィルムの加工時において平面性の歪みが少なく加工精度が良好であるため、歩留まりの点から好ましい。なお、フィルムの平面性は広い範囲で良好であることが望ましいため、上記加熱前のフィルムにおける平面性を評価する場合は、前記試料を50枚程度(約3m×1m)測定することが望ましい。
[TS/TE]
本発明において、破断強度(TS)とは、フィルムが破断するのに必要な応力であり、具体的には、フィルムに引張力を徐々に加えていき、フィルムが破断した時の力を求め、これを単位面積あたりの応力に換算した値(単位:MPa)で表す。破断伸度(TE)とは、フィルムが破断するまでに伸びた割合(伸び率)であり、具体的には、フィルムに引張力を加えていったときにフィルムが破断するまでに伸びた長さを、元の長さで除した値(単位:%)で示す。本発明において、破断強度(TS)、破断伸度(TE)はJIS K 7127に準じて測定し、具体的には以下の方法により行う。すなわち、幅12.7mm、長さ200mmのフィルム試験片をサンプリングし、フィルム試験片を引張試験機(例えば、ORIENTEC社製、テンシロンRTC−125A)にセットし、温度23℃、湿度65%RHの環境下において、チャック間距離100mm、引取り速度200mm/minで伸張し、フィルム試験片の破断時の伸び、および破断に要した荷重の測定値から破断強度(TS)、破断伸度(TE)を算出する。
破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比(TS/TE)とフィルムの断裁性とは以下のような関係を有する。すなわち、TS/TEが大きいフィルムは破断強度が強く、伸度が少ないフィルムを意味する。このような特性を有するフィルムは、脆く腰がないフィルムとなり、切断加工時において切断面が毛羽立ち、ヒゲや切屑が発生し易い。一方、TS/TEが小さいフィルムは破断強度が小さく、伸度が大きいフィルムを意味する。このような特性を有するフィルムは、適度な粘りがあり腰の強いフィルムとなり、切断加工時においても切断面に荒れが少なく、断裁性が良い。また、余り低すぎるとフィルムが伸びて切れるので切断部分の変形が生じるため好ましくない。また、フィルムの部位によりTS/TE比が異なる場合は、同じ剪断力に対しても部位により断裁性に差が生じ、その差によって切断面のズレ、ヒゲが発生し易くなる。そのため、TS/TE比は等方性を有することが最も望ましい。以上のことから、断裁性においてはTS/TE比が小さく、部位によるTS/TE比の変動が小さいフィルムが好ましい。
本発明のフィルムは、フィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向(A方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの製膜の長手方向と135度の角度をなす方向(B方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの製膜の長手方向(MD方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの製膜の長手方向と90度の角度をなす方向(TD方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、いずれも0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下であることを特徴とする。TS/TE比の上限は、2.6(MPa/%)が好ましく、2.4(MPa/%)がより好ましく、2.2(MPa/%)がさらに好ましい。MD方向、TD方向、A方向、B方向とも、TS/TE比が2.6(MPa/%)以下であれば、フィルムの切裁性もよく、切断加工に好適である。TS/TE比の下限は、0.6(MPa/%)が好ましく、0.9(MPa/%)がさらに好ましい。TS/TE比が0.6(MPa/%)以上であると、フィルムが力学的に変型しにくく好適である。また、TS/TE比が、MD方向、TD方向、A方向、B方向とも上記範囲内であれば、TS/TE比に起因する、剪断ズレが生じにくい。なお、フィルムのTS/TE比が上記範囲のフィルムを得るための好ましい製膜方法については後述する。
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを構成するフィルムの厚みは、特に限定はされない。しかしながら、積層体のベースフィルムとしては、100μm以上400μm以下の厚みであると好ましい。また、フィルムの厚みは110μm以上がよりに好ましく、120μm以上がさらに好ましい。フィルムの厚みは100μm以上であれば、枚葉での取り扱いが容易となり好ましい。また、フィルムの厚みは、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。フィルムの厚みが400μm以下であれば、切断加工が容易となり好ましい。
本発明の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは単層でも、2層以上の積層構造を有するフィルムでも良いし、透明性を重視して微粒子を入れない二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの片面、又は両面に後加工工程時の接着性を改良する目的や滑り性を改良する目的で種々のコーティングを製膜時に付与したものでもなんら差し支えがない。
さらに、本発明のフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
また、本発明のフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム中には、必要に応じて微粒子を添加することができる。その際に添加する微粒子としては、公知の無機微粒子や有機微粒子を挙げることができる。さらに、フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。本発明におけるポリエチレンテレフタレート系樹脂には、微粒子を添加してポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの作業性(滑り性)を良好なものとすることが好ましい。微粒子としては任意のものが選べるが、たとえば無機系微粒子として、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等を挙げることができる。また、有機系微粒子として、たとえばアクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05〜2.0μmの範囲内で、必要に応じて適宜選択することができる。
なお、上記の粒子の平均粒径の測定は下記方法により行う。
粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(最も離れた2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径とする。
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに上記粒子を配合する方法としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めても良い。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うことができる。
本発明のソリに対する技術思想は以下の通りである。
(1)硬化収縮性樹脂組成物は、硬化による架橋構造を形成し、硬化前後において体積が10%程度減少する。そのためベースフィルムの片面に硬化性樹脂組成物を積層した場合、樹脂の硬化に伴う硬化収縮により、積層体全体として、硬化性樹脂組成物側が凹部になるようなソリが生じる。
(2)(1)のソリを防止する為に、硬化性樹脂の硬化収縮に抗するように、ベースフィルムに反対側のソリが生じれば、積層体全体としてソリが相殺できると考えた。このため、硬化性樹脂組成物層が無い、ベースフィルム単独では、積層面と反対側にソリが生じることが必要である。
(3)本発明者らはベースフィルムの片側に高温短時間の熱処理を行うと、熱処理面が収縮し、僅かにソリが発生することを確認して本発明の着想を得た。そこから、ベースフィルムにソリを発生させるにはフィルム表裏の熱収縮率が異なると良いと考えた。フィルムの表裏に熱収縮率差がある場合、硬化性樹脂の硬化処理に際して生じる熱により、収縮率の大きい面が凹部になるようなソリが発生する。ただし、加熱により発現するソリは僅かなものであった。しかし、本発明者らは、10%程度の大きな収縮率を有する硬化収縮性樹脂組成物を塗布した場合であっても、ベースフィルムを僅かに反らせるだけで、硬化収縮に抗して積層体全体として平面性が保たれるという驚くべき効果を見出した。
(4)しかも、このベースフィルムは、加工性の点から、加熱処理を施さない状態ではソリがなく実質上平面であり、従来のベースフィルムと同様に使用が出来る必要がある。つまり、本願発明のフィルムは、加熱処理前には平面であるにもかかわらず、加熱により顕在化する潜在的なソリを有するという従来にない特性を有するフィルムである。
[本発明のフィルムの製造方法]
<従来の縦延伸方法の問題点>
これまで、フィルムの平面性を制御する方法として、特許文献1(特開2001−342273号公報)、特許文献2(特開2001−342274号公報)に記載された方法が開示されている。特許文献1、特許文献2では、空洞含有ポリエステル系フィルムの場合は、フィルム表裏の構造差に起因するカールを抑制する手段として、「(1)空洞の体積分率を小さくし、且つ各々の空洞サイズを小さく抑制しすることで、内部歪に耐えてカールの発生を抑制する方法、(2)フィルム厚み方向に空洞に分布を持たせる方法、(3)押し出し時の冷却差によるフィルム厚み方向の結晶化度の差に始まる各工程で付与されるフィルム表裏の構造差に起因するカールを制御するために、積極的にフィルム表裏の構造差を発生させ、必然的な構造差と補完しあってカール値をゼロに近づける方法」が記載されている。
さらに、「ポリエステル樹脂に非相溶の熱可塑性樹脂に由来する空洞をフィルム内部に多数含有する空洞含有ポリエステル系フィルムでは、カールの少ないフィルムを得ることは従来の技術では非常に困難である」が、「通常の透明ポリエステルフィルムでは、巻き癖カールの発生は非常に緩やかであり、問題となることは非常に少ない。」ことが記載されている。
しかしながら、特許文献1、2ではカールをなくす点に主眼が置かれているのに対し、本発明ではフィルムに潜在的なソリを積極的に付与することを目的とするものである。さらに、特許文献1、2では空洞含有フィルムが前提であるのに対し、本発明では空洞を含有しない透明なポリエチレンテレフタレート系フィルムにおいて潜在的なソリを付与するものである。
空洞含有フィルムと、空洞を含有しないポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムとでは熱伝導度が異なる(空洞含有フィルムは熱伝導度小さいが、空洞の無いフィルムにおいては熱伝導度大きい)。よって、空洞を含有しないポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの場合、特許文献1、2の方法では、製造工程中において、潜在的なソリの発現に必要な表裏の温度差を付けることは難い。
更に、フィルムに加重を掛けた時にカールが生じないことを目的として、特許文献3(特開平10−258458号公報)に記載された方法により縦延伸工程でのフィルム表裏の温度差を10℃以下に設定する方法が開示されている。
特許文献3はカールを生じないフィルムを得ることを目的とするに対し、本発明ではフィルムに、硬化性樹脂の硬化に伴う硬化収縮が生じても、それに均衡しうる潜在的なソリを有するフィルムを得ることを目的とするものである。そのため、加熱による熱収縮を表裏で異なるようにするためには、特許文献3のように、一段延伸では不十分であった。本願発明のフィルムを得るためには、理由は明確ではないが、後述するように多段の延伸が必要であった。
本発明者らは、上記した従来の延伸方法が有する問題点を解消すべく、どうすれば、加熱処理前には平面であるにもかかわらず、加熱により顕在化する潜在的なソリを有するフィルムを得ることが出来るか鋭意検討した。その結果、従来の延伸方法とは異なり、フィルムの製造工程において積極的にフィルム表裏における分子配向差を設けることにより、加熱によりソリが発現するフィルムを得ることを見出し、本願発明を完成するに至った。より具体的には、以下のような(1)〜(3)に記載した達成手段を相互に関連させることにより、加熱処理前には平面であるにもかかわらず、加熱により顕在化する潜在的なソリを有するという従来にない特性を有するフィルムを得たのである。
<本発明のフィルムの製造方法の特徴1>
(1)未延伸シートの表裏の温度差
本発明のフィルムの製造において、まず溶融した樹脂を口金より押出し、冷却したキャスティングドラムに巻き取ることで急冷固化し、未延伸シートを得る。この際、未延伸シートの厚みは、例えば、100μm以上の厚手のフィルムにおいては、凡そ1000μmかそれ以上になる。未延伸シートの冷却はシート表面から行われるため、キャスティングドラムに接した面(以下、表面(F)と言う)と、その反対面(以下、裏面(B)という)とで冷却効率が異なり、未延伸シートの表裏で温度差が生じる。
未延伸シートの厚みにも依存するが、この未延伸シートの表裏の温度差により、フィルムのカールの発現が異なる。表裏の温度差が大きくなると、シート自体がカールし、ロール表面にシート中央部がロールに密着せず、ロール上で接触が不十分となる。これにより、工程内での意図しない個所との接触し、フィルムにキズが発生することとなる。このため、通常、シートの表裏の温度差は大きくし過ぎないようにすることが行われていた。しかしながら、本願発明では、加熱処理によりソリを発現させるためには、シートの表裏で結晶性に差異を設けることにより延伸工程において延伸配向に差異を生じさせて、加熱後のソリの発現を図るものである。この表裏の結晶性に差異を設けるには表裏の温度差が低くてもまた、高くても不可で適当な範囲があると推定した。
本願発明者は、上記特性を満たすため、未延伸シートの表裏の温度差とシート全体の温度の適正化について鋭意検討を行った。その結果、キャスティングドラムに続く第二冷却ロール(引き離しロール)の離れ際において、未延伸シートの表面(F)の表面温度をF、裏面(B)の表面温度をBとした場合に、未延伸シート表裏の表面温度差(F−B)は℃以上33℃以下が望ましいことを見出した。
具体的には、第二冷却ロールの出口でシート表裏の表面温度差は8℃以上がさらに好ましく、10℃以上が特に好ましい。またシート表裏の表面温度差は、30℃以下がより好ましく、28℃以下がさらに好ましく、25℃以下が特に好ましい。
未延伸シート表裏の表面温度差(F−B)を上記範囲に制御する方法としては、冷却時間や、冷却ロールの温度を適宜制御することが望ましい。冷却されたキャスティングドラムに直接接する表面(F)は、裏面(B)に比較して早く冷却される。よって、1,000μm以上に厚くなると、表面温度差はキャスティングドラムで冷却している間、シート表裏の表面温度差が大きくなる状態が生じる。その後、キャスティングドラムに続く第二冷却ロールがある場合は、第二冷却ロールにより裏面(B)が冷却され、シート表裏の表面温度差が小さくなる。上記のような場合、例えば、冷却エアを用いて裏面を冷却させたり、キャスティングドラム径を小さくすることで早めに第二冷却ロールによる裏面の冷却を行うことにより、シート表裏の表面温度差を制御するのができる。また、冷却に要する時間は、シートの厚みや冷却ロールの速度などに依存するので、適宜、冷却エアの温度、冷却範囲、第二冷却ロールの温度などを調整するのが好ましい。
(2)縦延伸における表裏の温度差
本発明のフィルムを得るためには、縦延伸工程においてフィルム表裏に温度差を設け、フィルム表裏において分子の配向の程度を変えることが望ましい。縦延伸工程においてフィルム表裏の温度差を設けると、表面温度の高い側より表面温度が低い側の方が、配向歪みが残存し、加熱処理により発現する潜在的なソリが生じやすくなる。本発明のフィルムの製造での縦延伸時において、表裏の温度差を設けるために、ロールの温度設定や、非接触の赤外線照射、高速加熱エアによる加熱、その他の加熱または冷却手段を用いることが可能である。
さらに、本発明のフィルムを得るためには、表裏の温度差を設けた縦延伸を、多段、少なくとも2段以上で行いことが望ましい。本願の目的とする加熱により発現する潜在的なソリを設けるためには、一段で延伸しても、温度差による効果は少なく、延伸配向が進んだ状態で更に、温度差を設けた延伸を行うことが望ましい。すなわち、表裏で温度差を設けた延伸操作を少なくとも2回繰り返すことで、一段目の処理により表裏の配向が異なった状態を、更に温度差を設けて延伸を行うことにより、硬化収縮に拮抗しうるような十分な配向歪が得られないのではないかと考えている。特に、表裏の温度差を付けて一段で延伸した後に、一旦、冷却し、再度、表裏の温度差を設けた縦延伸を行うことは、効果的に配向歪を設ける点でより好ましい。
二段以上の縦延伸を行う場合、延伸倍率や表裏の温度差は、フィルムの厚さに応じて設定するのが望ましい。具体的には、周速差を設けたロール間において赤外線ヒータにより縦延伸を行い、100〜300μmの製品厚みのフィルムを作成する場合は、長手方向(縦方向)に2.0倍以上3.2倍以下の倍率となるように延伸した後に、その縦延伸後のフィルムを、表面温度が冷却されたニップロール間を通過させ、長手方向に1.03倍以上1.5倍以下の倍率となるように二段以上の延伸をすることが好ましい。表裏の温度差については、例えば、125μmの製品厚みのフィルムを作成する場合、一段目については、表裏の温度の平均が70℃以上115℃以下であって、表裏の温度差が0.3℃以上3℃以下となるように調整することが好ましく、二段目については、表裏の温度差が2℃以上5℃以下に調整することが好ましい。表裏の温度の平均が70℃未満では延伸が困難で厚み斑が生じやすくなり、115℃を超えでは表裏の温度差をつけることによる効果が得られにくくなる。また、表裏の温度差が5℃を超えると縦延伸後のシート自体にカールが生じ、ロールに沿わなくなり、キズが生じる原因となる。(なお、縦延伸工程におけるフィルム表裏の温度とはシートを厚み方向に三分割した中央以外の二つをいう。具体的には、伝熱計算により求めることが可能である。)
延伸工程においてフィルム表裏に温度差を設けて配向歪みを設ける場合は、延伸変形速度が高い方が適している。そのため、表裏の配向歪を設ける上では、上記のように縦延伸工程の方が、横延伸工程よりも適している。ただし、横延伸工程においても上下に温度差を設け、多段の延伸を行うことでフィルム表裏の配向歪を設けることは可能である。なお、本発明の好ましい横延伸方法については後述する。
(3)熱固定温度の上下の温度差
本発明おいて、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程において、フィルムの表裏の温度を0.1℃以上、0.5℃以下の温度差を設けることが好ましい。これは表裏の熱処理の程度に差異を設けることで、実質的に表裏の収縮率を変更することにある。熱固定工程において表裏の温度差を設けるには、例えば、熱固定装置のフィルムを介した上下で温度を変更する、または/そして風速差を設けることで可能となる。フィルムの表裏に上記温度差を設けるためには、熱固定装置の上下の温度差は3℃以上30℃以下が好ましい。3℃未満ではフィルムの温度差を付けるのに上下の風速差が5m/秒を超すこととなり、フィルムに歪み力が働くため、熱収縮率の制御が困難となったり、平面性の不均一が生じたり、厚みが変化する場合があり好ましくない。また、30℃超の温度ではフィルム上下の空気の密度差によりエアバランスの崩れが生じやすく好ましくない。熱固定工程において表裏の温度を実際に測定するのは困難な場合がある。そのため、シュミレーションによる表裏の温度の推定することが可能である。
本願発明においては、加熱処理前には平面であるにもかかわらず、加熱により顕在化する潜在的なソリを有するフィルムを得るためには、上記達成手段(1)〜(3)を適宜選択、もしくは組み合わせることが望ましい。本発明の表裏の熱収縮率を直接評価するのは困難であるが、上記達成手段により、表裏の熱収縮率と言う物性を微妙にコントロールするという思想が達成できたと考えている。
上記に詳述した方法以外、例えば製膜中に片面熱処理を行う加熱ロールを通過させたり、片面冷却反対面を赤外線加熱、熱風加熱など他の方法を用いることも可能と考えられる。更に、二軸延伸後のフィルムを表裏のフィルムの温度をオフラインで変更して熱処理を行って熱処理することにより、表裏の熱収縮率を変更することにより、加熱後のソリを望みの熱収縮率差にすることも可能である。
<従来の横延伸方法の問題点>
また、本発明のフィルムを得るためには、縦延伸を施したフィルムに横延伸を行う必要がある。ところが幅方向に延伸する場合には、幅方向での力の伝達が横延伸機内の端部と中央部で異なる。即ち、端部は横延伸を実施するために把持部で掴まれていて、動きが制限されているが、中央部は長手方向に動くことが可能な状態である。この状態では丁度、1本のロープを左右に引っ張った状態と同じ様に懸垂線の曲線を描く。横延伸の場合は長手方向でその懸垂線の形状は延伸初期から延伸後期で刻々と変化をしていく。この変化は例えば横延伸の始まる前のフィルムシートに長手方向に垂直に(幅方向に平行に)フィルムシートの表面に速乾性のインクで線を入ことで可視化することが出来る。横延伸初期はその線は流れ方向の後側に凸に見え、延伸が進むとある所で一直線になり、その後に流れ方向に凹となって見える。
この横延伸の挙動により従来の延伸条件では幅方向の物性の差が生じ、フィルムを使用する時に機台中央部分から採取したフィルムでは問題が生じ無いが機台の端部(フィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向の屈折率と、それに90度の角度をなす方向の屈折率との差異Δnabが0.015以上0.060以下)から採取したフィルムではフィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向と、それに90度の角度をなす方向の配向特性に違いが有る。このことがフィルムの切断時に斜め方向の力学挙動により切断性に影響を生じる。
本発明者らは、上記した従来の延伸方法が有する問題点を解消すべく、どうすればフィルムの配向特性歪みによるフィルムの切断性への影響のきわめて少ないフィルムを作ることが出来るか鋭意検討した。その結果、以下のような横延伸工程の延伸条件を従来とは全く異なる条件で行うことにより、次工程での加工適正のきわめて優れた、断裁性の良いフィルムを得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
<本発明のフィルムの製造方法の特徴2>
縦延伸工程を経たフィルムは次いでテンター内で横延伸処理がなされる。テンター内は(イ)縦延伸を施されたフィルムを横方向に延伸する為にフィルムを延伸に適した温度まで昇温する予熱部分と、(ロ)昇温されたフィルムを横方向に延伸する延伸部分、(ハ)引き続き縦及び横延伸による歪を低減する熱処理を施す熱固定処理部分、(ニ)横方向の歪を更に低減する緩和処理部分、(ホ)最後に熱の掛かったフィルムをガラス転移点(Tg)以下に冷却する冷却部分、に区分できる。テンター側部には、チェーンにつながれたクリップを走行させるレールが設置されており、フィルムはクリップに保持された状態でテンター内を走行する。
(イ)の予熱部分では、フィルムの上部および/もくしは下部に設置されたプロナムダクトから噴出す熱風によりフィルム温度が昇温する。フィルムは昇温により膨張するが、かかる膨張相当分による弛みが生じないように、フィルム端部を保持するクリップの走行レールは僅かな幅方向の拡がりが施されている。こうして、プレナムダクトから噴出する風の風圧によりフィルムのバタツキを抑え、熱風が均一にフィルム表面に当たる様に工夫している。
(ロ)の延伸部分ではフィルムを横方向に延伸する為に、フィルム全体の長手方向の進行に対してクリップチェーンは斜め方向に向かってフィルム幅方向に拡がるように設置される。端部をクリップで保持されたフィルムは進行に伴い、幅方向に引っ張られて横方向の延伸が施される。フィルムの延伸倍率はクリップチェーンの走行レールの拡がりの程度(角度と距離)に応じて決定される。
(ハ)の熱固定部分ではフィルムが縦方向及び、横方向に延伸された際に生じた歪を低減する為に、フィルムに高温の熱を掛け、歪を除去している。この部分の温度により主として縦方向の熱収縮率の大きさが決定される。
(ニ)の緩和処理部分は横方向の歪を更に低減する為に、クリップチェーンの走行レール幅を幅方向に縮めるなどの処理により、幅方向の歪を除去している。この処理の程度(温度及び緩和率)に応じて主として横方向の熱収縮率は決まる。
(ホ)の冷却部分ではフィルムをTg以下に冷却し、(ハ)、(ニ)の歪を低減した状態でフィルムを室温付近で取り出す様に冷却している。
それぞれの部分は上記の様な役割を担っているが、本発明では(ロ)の延伸部分では、二軸延伸フィルムが持つ幅方向の全方位の物性の均一化と厚み斑の低減の両立を意図し、(ハ)の熱固定処理部分では縦方向の熱収縮率が均一になるように意図している。
(ロ)の延伸部分ではフィルムは、進行方向に対して斜め方向に設置されたクリップチェーンの走行レールに従い、横方向に延伸される。延伸過程でフィルムの両端はクリップによって把持され、固定される。しかし、クリップから離れた領域、特にフィルムの中央領域では両端部分に比べて自由度が高い。このように力学的自由度に局所的な差がある中で、フィルム全体としては力の作用が均衡した状態で、延伸が施される。また、フィルムは幅方向以外にも、長手方向の力のバランスも均衡した状態にあり、熱固定部分からの影響も受けている。これらの力作用の関係は、幅方向において端部が固定された懸垂線様の状態で均衡している。この力の作用をフィルム中央部で観察すると、延伸初期ではフィルム進行方向に向かって進める様に作用し、延伸後期では中央部が進行方向に対して遅れる様に作用する。この様な力の作用によって、いわゆるボウイング現象が観察される。
この力の作用の結果、フィルム端部の物性はフィルムの製膜の長手方向と45度の方向の特性と、それと直角の方向の特性とで差が生じることとなる。この特性のうち、配向特性の状態に起因する破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比TS/TEの差が断裁性に影響すると考えられる。
一般的に、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなるフィルムの引張試験を行うと、所定の歪み量に達するまで、応力が略一定の割合で増加し、所定の歪み量に達すると、歪み量が増加しても応力が増加しないプラトーな領域が出現する(なお、かかる引張初期における応力が飽和する点を降伏点という)。そして、そのようなプラトーな領域が出現した後に、再度、歪み量の増加に伴って応力が増加する領域が出現し(かかる降伏点後に応力が再度立ち上がり始める点を立ち上がり点という)、応力が二次的に増加した後に破断する、という傾向を示す。このような、応力と歪みの曲線をS−S曲線という。
上記物性差を小さくする為に、横方向の延伸温度を単純に高温に設定すると、延伸が「S−S曲線におけるプラトーな領域に相当する歪み量を与えるような延伸」に相当し、フィルムに厚み斑が生じる恐れがあった。さらに、横方向の延伸温度を高くすると、予熱領域との温度の差異が大きくなり、テンター内の温度状態に乱れが生じることによる厚み斑も生じる恐れがあった(なお、フィルムのΔnabが0.015未満の場合は比TS/TEの差は断裁性に影響を与える程、大きくならない)。フィルムにこのよう厚み斑により平面性に乱れが生じると、近年ますます精密化する後加工工程では使用に耐えない。ところが、驚くべきことに、以下の様に横延伸倍率と温度の関係を適性化する事により、平面性が良好で断裁性の良好なものが得ることが可能になることを見出した。
(1)横延伸工程の温度区分域の温度の制御
横延伸工程において、テンター内は通常、複数の温度区分域が設けられているが、本発明のフィルムを得るためには、連続する各温度区分域の設定温度差を延伸の前半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域まで)までは5℃以上35℃以下とし、後半部分(延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率まで)は5℃以上30℃以下とする必要がある。一方、1.8倍を含む温度区分領域と次の温度区分領域での温度差は5℃以上40℃以下とするのが好ましい。
上記温度範囲で制御することが好ましい理由としては以下のように考えている。すなわち、横延伸工程の延伸前半では、フィルムの引っ張り特性のS−Sカーブの延伸応力増大域で延伸が行なわれるため、温度斑による影響が生じやすい。そのため、上記のように延伸前半での隣接する温度区分域の温度差は低く抑えることが望ましい。また、横延伸工程の延伸後半では、延伸温度を比較的高温に設定するため、フィルムの延伸応力が低下する。よって、延伸後半での隣接する温度区分域の温度差は前半よりも大きくすることができる。さらに、横延伸工程の中間ではS−S曲線のプラトーな領域に相当するため、他の温度区分域に比べ温度変化に対して影響が受けがたく、他の温度区分域よりも大きな温度差が許容される。このように、本発明ではS−S曲線に応じて上記のごとく温度区分域間の温度差を制御する。
また、これらの温度設定は、フィルムの進行方向に向かって段階的に設定温度を上げることが好ましい。テンター内では、フィルムの進行に伴って随伴流が発生するので、フィルム進行方向にそって上流から下流への空気の流れが生じる。そのため、連続する2つの温度区分域で設定温度に差がある場合、温度区分域の境界で温度の乱れが生じる。設定温度の差が大きい場合は、テンター内の温度の分布の乱れが大きくなり、フィルムの延伸状態に乱れが生じ、厚み斑による平面性の乱れの要因となる。そこで、連続する各温度区分域の設定温度を一定範囲に設定し、幅方向、長手方向のフィルム温度が安定化することとした。これにより、テンター内の横延伸部分の温度の乱れに起因するフィルムの厚み斑が低減することができる。本発明のフィルムを得るための前記設定温度差の下限は5℃以上、好ましくは10℃以上とすることが望ましい。設定温度差が5℃未満の場合は、最終温度区域の設定温度を後述の設定温度にすることが難しくなる。また、前記設定温度差の上限は1.8倍を含む温度区分領域までは35℃以下が必要である。一方、延伸倍率が1.8倍を含む温度区分領域の次の温度区分領域から最終延伸倍率までは30℃以下が望ましい。一方、1.8倍を含む温度区分領域とその次の温度区分領域間は40℃以下、好ましくは30℃以下とすることが望ましい。設定温度差が40℃超の場合は、フィルムの厚みの乱れとなり、上記効果が得られない。
予熱部分(イ)から延伸部分(ロ)の最初の温度区分との連続する2つの温度区分域においても、設定温度差を5℃以上40℃以下にすることが好ましい。予熱部分では、延伸が可能な温度程度になるようにフィルムを温める必要がある。そのため延伸部分の温度を高温に設定する場合は、フィルムの温度は縦延伸の延伸温度〜縦延伸の延伸温度+15℃程度が好ましい。なお、予熱部分の設定温度は予熱部分の長手方向の長さとフィルムを走行させる速度とフィルムの厚みに応じて制御することが望ましい。
(2)横延伸工程の延伸前半での温度の制御
横延伸工程の初期の部分ではフィルムの温度は予熱部分で昇温された後、横延伸工程の延伸前半では、フィルムの引っ張り特性のS−Sカーブの延伸応力増大域で延伸が行なわれる。本発明のフィルムを得るためには、横延伸工程の前半部分の温度域を100℃以上160℃未満とし、比較的低温で横延伸を行うことが好ましい。設定温度を100℃未満とすると、フィルムが破断し易くなり、好ましくない。また、設定温度を160℃以上とすると、延伸条件が「S−S曲線におけるプラトーな領域に相当する歪み量を与えるような延伸」に相当するだけでなく、予熱部分との温度の差異が大きくなり、テンター内の温度バランスが不安定となり、厚み斑による平面性の乱れが生じ易くなり好ましくない。なお、後述のごとく、延伸前半から後半に掛けて温度は高める方向で設定することが望ましい。しかしながら、延伸前半で複数の温度区分域による段階的な温度設定を設けることが困難な場合には、延伸前半と後述する延伸後半の領域間で、目的の効果を得る為に温度差を調整しても良い。
ここで延伸前半の意味する所は、横延伸工程の前半領域でなされる延伸であり、S−Sカーブの延伸応力増大域で行われる延伸である。具体的には、横延伸倍率が1.8倍を含む区分領域をいう。延伸前半の延伸倍率はその全区分領域数に依存する。例えば、最終の横延伸倍率が4倍の場合、全区分領域数が3の時は2.0倍となり、全区分領域数が4の時は2.5倍となる。本発明では、1.8倍を含む区分領域における設定温度を100℃以上160℃未満として比較的低温での延伸を行う。
(3)横延伸工程の最終到達部での温度の制御
本発明のフィルムを得るためには、横延伸工程の最終到達部をの温度域を160℃以上220℃未満とし、比較的高温に設定することが好ましい。高温に設定することで前述のTS/TE比の差異が小さくなり、断裁性を良好にすることができる。
ここで延伸後半の意味する所は、横延伸工程の後半領域でなされる延伸であり、具体的には横延伸倍率が1.8倍を含む区分領域の次の区分領域から最終到達倍率までである。延伸後半の延伸倍率は、その全区分領域数に依存する。例えば、最終の横延伸倍率が4倍の場合、全区分領域数が3の時は2.0倍から、全区分領域数が4の時は2.5倍からとなる。そして、前半の倍率を含めた最終倍率は、3倍以上5倍未満、好ましくは4.8倍未満、より好ましくは4.4倍と設定することができる。例えば、最終の横延伸倍率が4倍で、横延伸ゾーンを3段とする場合のプロセス条件は以下のようになる。1段目の倍率は1.0〜2.0倍、2段目の倍率は2.0〜3.0倍、3段目の倍率は3.0倍〜4.0倍となり、1段目のゾーンが延伸の前半部となる。温度の設定は予熱ゾーンの最終温度を105℃とし、最終倍率到達区間の温度を165℃とすると、1ゾーン目は110〜145℃、2ゾーン目は145〜160℃とするのが好ましい。但し、製膜速度など設定によっては2ゾーンの温度設定であっても可能である。
本発明のフィルムは、上記の様な高度に制御された横延伸を実施することにより得ることができる。上記横延伸工程により、フィルムの製膜の長手方向と45度の方向とそれに90度をなす方向とのTS/TE比の差が小さくなったのは、以下のようなメカニズムによると考えている。横延伸工程では前述のように横方向および長手方向のフィルム全体において力作用が均衡した状態にあり、長手方向では延伸初期ではフィルム進行方向に向かって進める様に作用し、延伸後期では中央部が進行方向に対して遅れる様に作用する。ここで、横延伸の最終到達部の延伸温度を高温に設定すると、横延伸工程の最終の延伸張力が下がる。これにより、フィルムの長手方向にそって熱固定部分から伝播する力の作用の影響が緩和され、長手方向で作用する力の歪が緩和されたと考えられる。さらに、フィルムの製膜の長手方向(MD方向)とそれに90度をなす方向(TD方向)の配向特性は縦延伸と横延伸の倍率を適度に採用することにより得ることができる。即ち、本発明の場合、縦方向の全体倍率は2.1〜4.8倍となるがそのこの好ましい範囲は2.7〜3.8倍であるが、横延伸倍率はその縦倍率より0.3〜0.5倍高い倍率が横厚みの均一性から好ましく適用できるが余り横延伸倍率を大きくすると横の配向特性が縦に比較して大きくなり過ぎる場合がある。
一方、横方向の力作用については以下のように考えられる。フィルム中央部では進行方向での力しか作用しないため、フィルムに掛かる力作用は長手方向に対して左右対称になる。これに対して、フィルム端部ではクリップに保持された状態で斜め方向に進行し、進行方向だけでなく、斜め方向の力が加わる。そのため、フィルム端部の力作用は進行方向に対して左右対称にならない。TS/TE比の差を小さくするためには、この力作用を左右対称に近づける必要がある。これには、横延伸工程を高温行い、フィルムにかかる延伸張力を小さくすることが有効である。ただし、単に延伸工程を高温で行うと、厚み斑による平面性の乱れが生じる恐れがある。そこで、横延伸工程の前半では、延伸温度を比較的低くすることで、厚み斑の生じにくい「S−Sカーブの延伸応力の増加する領域」で延伸を行い、厚みが均一化されてきた状態で、今度は延伸温度を高くし、横方向の延伸応力を低くして全体の力の作用のバランスにより、延伸を行うこととした。これにより、厚みの斑を増加させずに、フィルムの製膜の長手方向(MD方向)と45度(A方向)、フィルムの製膜の長手方向と90度(TD方向)およびフィルムの製膜の長手方向と135度(B方向:A方向に90度)をなす方向の破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比TS/TEの差異を小さくすることが可能となったと考えられる。
なお、フィルムの縦延伸工程において、上記した(1)〜(3)の手段を用いることにより、フィルムにフィルムの厚み斑の低減と、縦延伸と横延伸の配向特性を勘案した倍率を採用することにより、フィルムの製膜の長手方向(MD方向)と、フィルムの製膜の長手方向と45度(A方向)、フィルムの製膜の長手方向と90度(TD方向)およびフィルムの製膜の長手方向と135度(B方向:A方向に90度)をなす方向の破断強度(TS)と破断伸度(TE)の比TS/TEの差異の低減の両立を図ることが可能となったと考えられる。なお、上記した(1)〜(3)の手段の内の特定の何れかのみが、フィルムの平面性およびTS/TE比の差異の低減に有効に寄与するものではなく、(1)〜(3)の手段を組み合わせて用いることにより、非常に効率的にフィルムの平面性の保持、TS/TE比の差異の低減が可能になるものと考えられる。
本発明における達成手段は上記の通りであるが、上記以外の製造条件、製造工程については後述する態様をとることができる。
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエチレンテレフタレート系樹脂原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
また、本発明では、横延伸工程に引き続き、熱固定処理を行う。熱固定処理工程の温度は180℃以上240℃以下が好ましい。熱固定処理の温度が180℃未満では、熱収縮率の絶対値が大きくなってしまうので好ましくない。反対に、熱固定処理の温度が240℃を超えると、フィルムが不透明になり易く、また破断の頻度が多くなり好ましくない。なお、好適な熱固定処理方法については、後述する。
熱固定処理で把持具のガイドレールを先狭めにして、弛緩処理することは熱収縮率、特に幅方向の熱収縮率の制御に有効である。弛緩処理する温度は熱固定処理温度からポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムのガラス移転温度Tgまでの範囲で選べるが、好ましくは(熱固定処理温度)−10℃〜Tg+10℃である。この幅弛緩率は1〜6%が好ましい。1%未満では効果が少なく、6%を超えるとフィルムの平面性が悪化して好ましくない。
上記した方法により製造される本発明のフィルムは、断裁性、平面性に優れており、特に硬化収縮性樹脂組成物を塗工するベースフィルムには硬化樹脂が硬化収縮するのでその硬化収縮後の平面性を保つのに好適に使用できる。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。なお、フィルム特性の評価方法は以下の通りである。
(1)Δnabの測定
得られたフィルムの製膜の長手方向に平行な両端縁から50mm以内の位置および中央の位置からそれぞれフィルム試験片を採取した。フィルム試験片を23℃、65%RHの雰囲気中で2時間以上放置した後に、アタゴ社製の「アッベ屈折計4T型」を用いて、フィルムの製膜の長手方向向と45度の角度をなす方向の屈折率(n)、および、フィルムの製膜の長手方向と135度の角度をなす方向(すなわち、上記した45度の方向と90度の角度をなす方向)の屈折率(n)をそれぞれ測定した。そして、それらの2つの屈折率の差異の絶対値をΔnabとして算出した。これら2つの屈折率の差異の絶対値をΔnabとし、Δnab=│n―n│により算出した。フィルムの両端および中央のΔnabいずれも0.015以上0.060以下であることを確認し、表中には両端部のΔnabを表示した。
(2)フィルムの平面性1
フィルムから長手方向300mm×幅方向210mmの試料を50枚採取する。この試料を未延伸シート工程で最初に冷却ロールに接した面(表面(F))を上にして、温度23±2℃、湿度65±5%に管理された室内で、水平なガラス板(厚さ5mm)の上に載せてフィルム試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定する。四隅の高さが「0」もしくは、断面がM字状に見える時は反対面を上にしてソリを測定する。全試料において測定した四隅のソリの高さの平均値と、全試料において測定した四隅のソリの高さの最大値を表示する。
(3)フィルムの加熱後のソリ
フィルムから長手方向300mm×幅方向210mmの試料を5枚採取する。この試料を未延伸シート工程で最初に冷却ロールに接した面(表)を上にして150℃に調節した加熱オーブンの棚板の上に台紙(厚さ1mm)の上に載せて入れ30分間熱処理する。その後棚板の上に載せた台紙ごとフィルム試料を加熱オーブンより取り出し、温度23±2℃、湿度65±5%に管理された室内で、30分放置する。30分放置後、フィルム試料を水平なガラス板(厚さ5mm)に移し、フィルムの四隅のソリ(水平面から垂直方向の高さ)の高さをJIS金尺(0.5mm目盛)で測定する。四隅の高さが「0」もしくは、断面がM字状に見える時は反対面を上にしてソリを測定する。全試料において測定した四隅のソリの高さを平均して表示する。
(4)硬化性樹脂積層フィルムの平面性2(フィルムに硬化収縮性樹脂組成物を塗布しての評価)
東亞合成(株)製、M−315を40質量部、三菱レイヨン(株)製、ノナブチレングリコールジメタクリレート(PBOM)を40質量部、新中村化学工業(株)製ウレタンアクリレート(U−2PHA)を20質量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア184を1.2質量部を用いて樹脂組成物を調製した。前記樹脂組成物を、フィルムアプリケータを用いて、加熱によるソリで凸になる側のフィルムの表面(上記(2)フィルムの加熱後のソリの測定において台紙に接する面)に、硬化後厚みが2mmになるように塗布した。ランプ発光長50cm、160W/cmの高圧水銀灯を光源とし、照射量1J/cm(測定機器:(株)オーク製作所製、UV−350)の紫外線を塗布面よりに照射し、前記樹脂組成物を硬化させた。尚、下記測定法により硬化収縮率を測定した場合、前記樹脂組成物は約8.0%の硬化収縮率を示した。こうして得た硬化性樹脂積層フィルムから長手方向300mm×幅方向210mmの大きさにカットした試料を5枚採取した。樹脂組成物面を上にして水平なガラス板(厚さ5mm)の上に置き、JIS金尺(0.5mm目盛)にて四隅のソリの高さ(水平面からの垂直距離)を測定する。全試料において測定した四隅のソリの高さを平均して表示する。
硬化物の空気中での重量aおよび水中での重量bを測定し、式(i)より固体比重dsを求め、次に比重瓶を用いて硬化前の硬化性樹脂組成物の液比重dを測定し、上記の固体比重d値とから硬化収縮率s(%)を式(ii)より求めた。
=a/(a−b) (i)
s=(1−d/d)×100 (ii)
(5)破断強度[TS]、破断伸度[TE]
フィルムの巻取方向(MD方向)と、それに45度の角度をなす方向(A方向)と、90度の角度をなす方向(TD方向)と、135度の角度をなす方向(B方向)との、4箇所から、幅12.7mm、長さ200mmのフィルム試験片をサンプリングした。フィルム試験片を引張試験機(ORIENTEC社製、テンシロンRTC−125A)にセットし、温度23℃、湿度65%RHの環境下において、チャック間距離100mm、引取り速度200mm/minで伸張し、破断に要する応力とフィルムの伸びを計測した。2回の測定の平均値から、破断強度 (MPa)、破断伸度(%)を求めた。
(6)フィルムの断裁性
ギロチンカッタによりフィルムを切断し、その断裁性を評価する。断裁性とは、例えばハサミやカッターで切る際の切り易さで、切り口の滑らかさが良好な事を言う。切断方法によりその切れ性は変わるが、押し切り方法の断裁機(コクヨ社製、DN−1N)を用いて、200mmの長さにわたって切断し、その切り口の様子を目視で観察した。切断試験は30回行い、その様子によって以下のように評価した。
判定
○:切り屑も発生せず、切り口ヒゲも発生しない。
△:切り屑もしくは切り口ヒゲが1〜10回発生。
×:切り屑もしくは切り口ヒゲが11回以上発生。
また、実施例および比較例におけるフィルムの製膜条件を表1に示す。
(7)フィルムの厚み
製膜後のフィルムの厚みは、電子マイクロメーターMILLITRON(精工精密機械販売)を用いて長手方向300mm、それに直角な方向に210mmに切り出した試料の長手方向に直角な方向に約20mmずつの位置で10回計測し、その平均値を求める。
Figure 0004273437
[実施例1]
添加剤として平均粒径0.7μmのシリカ粒子(富士シリシア化学株式会社製、サイリシア310)を0.03質量%含有したポリエチレンテレフタレート([η]=0.60)を水分率が50ppm以下となる様に乾燥した後、押出機に仕込み、285℃の温度で溶融した。押出機で樹脂を溶融し、ステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm以上の粒子を90%カット)で濾過した。次いで、T型ダイスから樹脂シートを押し出し、静電印加キャスト法を用いて表面温度が22℃のキャスティングドラムに巻きつけ、冷却固化させ1710μmの未延伸シートを得た。更に22℃の第二の冷却ロール(引き離しロール)から離れた未延伸シートの表裏の表面温度差(F−B)は、表1に記載のとおりであった。
そして、得られた未延伸シートを、加熱されたロール群でフィルム温度を昇温した後、前後に配置した第一ニップロールと第二ニップロールとの間で、それらのニップロールの間に設けた赤外線ヒータ(第一赤外線ヒータ)によって加熱しながら、長手方向(縦方向)に2.77倍延伸した(一段目の縦延伸)。このとき、第一赤外線ヒータにおいて、表の側の赤外線出力を100%とすると、裏側の赤外線の出力を90%とした。ここで後側の第二ニップロールは冷却をした。
しかる後、その縦延伸後のフィルムを、第二ニップロールとその第二ニップロールの直後に配置した第三ニップロールとの間で、ニップロールの間に設けた赤外線ヒータ(第二赤外線ヒータ)によって加熱しながら、長手方向(縦方向)に1.17倍延伸した(二段目の縦延伸)。更に、第三ニップロールとその直後に配置した第四ニップロールとの間で、ニップロール間に設けた赤外線ヒータ(第三赤外線ヒータ)によって加熱しながら、長手方向(縦方向)に1.08倍延伸した(三段目の縦延伸)。第二、第三赤外線ヒータにおいて、表の側の赤外線出力を100%とすると、裏側の赤外線の出力を95%とした。なお、赤外線ヒータの出力と表面温度の関係を予めモデル機で測定をしておき、上記の設定により、フィルム表面の温度差が表裏で、第一段目は2℃、第二段目は3℃、第三段目は3℃となるように調節した。
上記の如く、未延伸フィルムを縦方向に三段で延伸した後に、その縦延伸フィルムをテンターに導き、1ゾーン目を140℃の雰囲気下で幅方向へ2.0倍延伸し、2ゾーン目を155℃の雰囲気下で3.0倍まで延伸し、3ゾーン目を180℃で4.0倍まで延伸し、その後、233℃で熱固定処理を施し、225℃で2.2%の横緩和処理を行い、両縁部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって、厚さ125μmで3,300mm幅の二軸延伸フィルムを約3,000mの長さに亘って巻き取ったフィルムを製造した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例2]
実施例1よりキャスティングドラムに巻き付ける速度を変更し、キャスティングドラムに巻きつける際にエアによる冷却風19℃を用いて冷却固化させ未延伸シートの厚みを3150μmとした。30℃の第二の冷却ロール(引き離しロール)から離れた未延伸シートの表面温度差(F−B)は、表1に記載のとおりであった。そして、得られた未延伸シートを、表1の様に縦延伸し、さらに実施例1と同様に横延伸した。なお、表1中の裏面側の赤外線の出力は、表面側の出力を100として場合の出力割合(%)として表示した。その後、225℃で1.7%の横緩和処理をすることによって、厚さ250μmの二軸延伸フィルムを製造した。
[実施例3]
未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを2440μmに変更し、表1の様に縦延伸した以外は実施例1と同様に実施した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例4]
未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを3150μmに変更し、表1の様に縦延伸した以外は実施例1と同様に実施した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例5]
実施例2と同様にして得た未延伸フィルムを表1の様に変更した以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。加熱後のソリは実施例2とは逆になっていた。評価結果を表2に示す。
[実施例6]
実施例1と同様にして得た未延伸フィルムを第一ニップロールの直前に設けた赤外線ヒータにより、表面のみ加熱し、表1に記載のようなフィルム表裏の温度差を設けた。しかる後、縦延伸した以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例7]
実施例2と同様にして得た未延伸フィルムを第一ニップロールの直前に設けた高速加熱エアにより、表面のみ加熱し、表1に記載のようなフィルム表裏の温度差を設けた。しかる後、縦延伸した以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
[実施例8]
実施例5と同様にして得た未延伸フィルムを第一ニップロールの直前に設けた高速冷却エアにより、裏面のみ冷却し、表1に記載したような表裏の温度差を設けた。しかる後、表1の様に延伸条件を変更した以外は実施例5と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。加熱後のソリは実施例2とは逆になっていた。評価結果を表2に示す。
[比較例1]
実施例1と同様に未延伸シートを得た後、縦延伸の一段目および二段目以降の赤外線ヒータの出力を調整して表裏の出力差が無い様に縦延伸を実施した。さらに、横延伸の予熱・延伸温度を表1の様に変更した以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
[比較例2]
実施例3と同様に未延伸シートを得た後、表1の様に縦延伸を実施した。そして、横延伸を表1の様に変更して実施したそして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
[比較例3]
実施例5と同様に未延伸シートを得た後、表1の様に縦延伸を実施した。その後、横延伸および熱固定を表1に示した様に実施した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。
[比較例4]
実施例3と同様に未延伸シートを得た後、表1の様に縦延伸を実施した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。
[比較例5]
実施例3と同様にして得られた一軸延伸シートを、横延伸条件を表1の様に変更して二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。
[比較例6]
実施例5と同様にして得られた一軸延伸シートを、横延伸条件を表1の様に変更して二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した
[比較例7]
実施例6と同様にして得られた未延伸シートを、縦延伸条件を表1の様に変更して二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。
[比較例8]
実施例1と同様にして得た未延伸シートを第一ニップロールの直後に設けた赤外線ヒータにより、片面のみ加熱した。しかる後、実施例1の一段目のみ用いて一段で縦延伸した以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
[参考比較例1]
実施例5と同様に得た未延伸シートを表1の様に縦延伸、横延伸条件を変更して二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。
[参考比較例2]
実施例5と同様に得た未延伸シートを表1の様に縦延伸、横延伸条件を変更して二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。
Figure 0004273437
断裁性が「○」であって、平面性1の平均値がフィルムの厚みの20%以下、最大値がフィルムの厚み以下であって、平面性2の平均値が0.5mm以下であるものを、合格とし、判定を「○」とした。また、一つでも不合格なものは、判定を「×」とした。
表2から、実施例のフィルムは、いずれも、平面性が良好である上、TS/TE比の値も小さく、断裁性も良好である。さらに、硬化収縮性樹脂組成物を塗布し、硬化に伴う硬化収縮が起こっても、表裏の熱収縮率の違いに起因して積層体全体としての平面性は極めて良い。
本発明のポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムは、断裁性および平面性に優れ、積層体のベースフィルムとして好適である。例えば、レンズフィルム、拡散フィルム、ハードコートフィルム、NIRフィルムなどの各種光学フィルム、タッチパネル、ITOなど積層体のベースフィルムとして好適である。また、硬化性塗剤などを塗布積層する建材用途、硬化性樹脂インキなどを用いる記録材用途、2枚以上のフィルムを張り合わせて用いる張り合わせ部材用途などのベースフィルムとしても好適である。

Claims (2)

  1. フィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向の屈折率とそれに90度の角度をなす方向の屈折率との差異Δnabが0.015以上0.060以下である透明ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムであって、下記要件(1)〜()を満たす二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
    (1)フィルムを製膜の長手方向に300mm、それに直角な幅方向に210mmの試料を採取し、前記試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定した際に、四隅のソリの高さの最大値がフィルムの厚み以下であること
    (2)フィルムを製膜の長手方向に300mm、それに直角な幅方向に210mmの試料を採取し、前記試料の片側の面を上にして台紙に載せ、加熱オーブン中で150℃で30分間熱処理した後、台紙ごと前記試料を加熱オーブンより取り出し、前記試料を室温で30分放置した後、前記試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定した際に、四隅のソリの高さの平均が0.5mm以上5.0mm以下であること
    (なお、加熱後に室温で放置した後の前記試料のソリの高さが0mmであるか、もしくは、前記試料の断面がM字状である場合は、前記試料の上下面を反対にしてソリの高さを測定する。)
    (3)フィルムの製膜の長手方向と45度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの製膜の長手方向と135度の角度をなす方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの製膜の長手方向の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEと、フィルムの製膜の長手方向と90度の角度をなす方向(幅方向)の破断強度TSと破断伸度TEの比TS/TEが、0.6(MPa/%)以上2.6(MPa/%)以下であること
    (4)フィルムを製膜の長手方向に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形のフィルム試料を切り出し、前記試料の四隅のソリの高さを(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定した際に、ソリの高さの最大値がフィルム厚み以下であること
    (5)フィルム表面に下記硬化性樹脂組成物を、硬化後厚みが2mmになるように塗布した後、紫外線を塗布面より照射し、硬化させて得た硬化性樹脂積層フィルムから、フィルムを製膜の長手方向に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形のフィルム試料を切り出し、硬化性樹脂組成物面を上にして、前記試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定した際に、四隅のソリの高さの平均が0.5mm以下であること
    (硬化性樹脂組成物)
    東亞合成(株)製、M−315を40質量部、三菱レイヨン(株)製、ノナブチレングリコールジメタクリレート(PBOM)を40質量部、新中村化学工業(株)製ウレタンアクリレート(U−2PHA)を20質量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア184を1.2質量部を用いて硬化性樹脂組成物を調製した。
  2. 前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの厚みが100μm以上400μm以下である請求項1に記載の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム。
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