JP5256171B2 - 有機電界発光素子 - Google Patents

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Description

本発明は、有機電界発光素子(以下、適宜「有機EL発光素子」と略記する。)に関する。特に発光効率が高く、かつ駆動耐久性に優れた有機EL発光素子に関する。
電流を通じることによって励起され発光する薄膜材料を用いた有機EL発光素子が知られている。有機EL発光素子は、低電圧で高輝度の発光が得られるために、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い潜在用途を有し、それらの分野でデバイスの薄型化、軽量化、小型化、および省電力のなどの利点を有する。このため、将来の電子ディスプレイ市場の主役としての期待が大きい。しかしながら、実用的にこれらの分野で従来ディスプレイに代わって用いられるためには、発光輝度と色調、広い使用環境条件下での耐久性、安価で大量の生産性など多くの技術改良が課題となっている。
特に課題とされる一つは、発光効率の向上と駆動耐久性の改良である。上記の多くのデバイスは、薄型化、軽量化、小型化に当たって、まず高い輝度を実現することが課題であった。薄型化および軽量化に当たっては、デバイスのみでなく駆動電源のコンパクト化、軽量化も要求される。特に、電力が1次電池あるいは2次電池より供給される場合、省電力は大きな課題であり、低駆動電圧で高輝度を得ることが強く要望されている。従来、高輝度とするためには、高電圧を必要とし、電力消費を早める結果となっていた。また、高輝度および高電圧は、デバイスの耐久性を損なう結果となっていた。
有機EL発光素子では、発光層と隣接層の界面付近に励起子が集中して生成し、界面付近で生成した励起子は励起子拡散により移動した後に発光して基底状態に戻る。りん光材料を用いた有機EL発光素子では三重項励起子の寿命が長いために、発光するまでの励起子移動が蛍光材料を用いる場合よりも顕著である。移動して発光する位置が発光層内であれば問題は無いが、隣接層に励起子移動した場合には隣接層で無輻射的に失活することになるため、りん光材料を用いた有機EL発光素子の発光効率が低下してしまうという問題が発生する。特に励起子の生成位置は隣接層との界面近傍に偏ることが多いため、隣接層へのエネルギー移動は大きな効率低下を招くのである。このため、りん光材料を用いた有機EL発光素子では、励起子のブロック層としてエネルギーギャップの大きい材料の層を発光層の両側に設けることによって、移動してくる励起子をブロックして発光効率の低下を防止する方法が取られている(特許文献1参照)。しかし、励起子ブロック層を用いると、ブロック層と発光層との界面に励起子や電荷が集中することになるため、有機EL発光素子の耐久性が大きく悪化する場合が多く問題であった。
このため正孔注入層、発光層、および電子注入層などの陽極及び陰極に挟持される各層間に正孔、および電子の移動を妨げる障壁を設けない有機EL発光素子が提案されている(特許文献2、3および非特許文献1参照)。しかしながら、この有機EL発光素子は燐光発光材料を用いる場合に必要となる発光効率の向上は不十分であった。
有機EL発光素子の耐久性および発光効率の向上のため、電子輸送性の発光材料の発光層における濃度を陰極側から陽極側に向けて漸減し、また電気的に不活性な材料が陰極側から陽極側に向かって漸減する提案(特許文献4参照)されている。また、発光層の内部領域のドーパント濃度が、陽極側領域および陰極側領域のドーパント濃度より高いことが提案されている(特許文献5参照)が、いずれも有機EL発光素子の耐久性向上および発光効率の向上には不十分であった。
特開2001−85166号公報 国際公開2008/102644号明細書 特開2002−324680号公報 特開2009−32977号公報 国際公開2007/004563号明細書
Adv.Mater.2009,21,1−4
本発明は、発光効率が高く、かつ、駆動耐久性の良好な有機EL発光素子を提供することを課題とする。
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを備え、該発光層が少なくともホスト化合物、りん光発光材料、および電気的に不活性な化合物を含み、発光層内における平均T1エネルギーが陽極側の界面、および陰極側の界面からの距離が大きくなるに従って減少することを特徴とする有機電界発光素子により、高い発光効率と高い駆動耐久性を実現できることがわかった。
即ち、本発明における前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
<1> 陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを備え、該発光層が少なくともホスト化合物、りん光発光材料、および電気的に不活性な化合物を含み、発光層内における平均T1エネルギーが陽極側の界面、および陰極側の界面からの距離が大きくなるに従って減少することを特徴とする有機電界発光素子。
<2> 前記発光層内における平均T1エネルギーが、発光層の膜厚方向にエネルギー分布を有し、且つ陽極側の界面および陰極側の界面から離れた位置で最小となる<1>に記載の有機電界発光素子。
<3> 前記発光層内における前記電気的に不活性な化合物の濃度が、陽極側の界面および陰極側の界面からの距離が大きくなるに従って減少する<1>または<2>に記載の有機電界発光素子。
<4> 前記発光層に隣接する陽極側の隣接層および陰極側の隣接層の少なくとも一方が、発光層に含まれる前記りん光発光材料のT1エネルギーよりも小さいT1エネルギーを有する材料を含有する<1>から<3>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<5> 前記発光層に含まれる前記りん光発光材料が、発光層の膜厚方向に濃度分布を有し、該濃度分布が、陽極側の界面および陰極側の界面から離れた位置で最大となる<1>から<4>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<6> 前記発光層に含まれる前記りん光発光材料が、400nmから490nmに発光ピークを有する青色りん光発光材料である<1>から<5>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<7> 前記電気的に不活性な化合物を用いて形成した単独膜が示すT1エネルギーが、前記発光層に含有されるりん光発光材料およびホスト化合物のそれぞれを用いて形成した単独膜が示すT1エネルギーよりも大きいことを特徴とする<1>から<6>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<8> 前記電気的に不活性な化合物が、アダマンタン構造を含む化合物である<1>から<7>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
<9> 前記電気的に不活性な化合物が、Si連結系化合物である<1>から<7>のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
本発明によれば、低い駆動電圧で駆動することができ、発光効率が高く、駆動耐久性の良好な有機EL発光素子を提供することができる。
本発明の有機EL発光素子の層構成の一例を示す概略図である。 比較例1、2、5、および8における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例3、および6における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例4、および7における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例1、3、および5における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例2における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例4における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例6における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例7における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例9、10、13、および16における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例11、および14における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例12、および15における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例8、10、および12における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例9における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例11における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例13における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例14における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例17、18、21、および24における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例19、および22における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例20、および23における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例15、17、および19における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例16における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例18における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例20における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例21における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例25、26、29、および30における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例27、および30における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 比較例28、および31における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例22、24、および26における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例23における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例25における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例27における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。 実施例28における発光層の各構成成分の厚み方向の濃度分布、および発光層厚み方向の平均T1エネルギー変化を示す図である。
本発明の有機EL発光素子は、一対の電極(陽極と陰極)間に発光層を含む少なくとも一層の有機層を有し、該発光層が少なくともホスト化合物、りん光発光材料、および電気的に不活性な化合物を含み、発光層内における平均T1エネルギーが陽極側の界面、および陰極側の界面からの距離が大きくなるに従って減少することを特徴とする。
有機EL発光素子の性質上、前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極は、透明であることが好ましい。
本発明において発光層内における平均T1エネルギーとは、発光層を構成する各構成成分のT1エネルギーに各構成成分の含有率(質量含有率)を掛け、それらの和をとって算出した値である。
各構成成分のT1エネルギーは各構成成分を用いて形成した単独膜で評価する。
その測定方法は、各構成成分の単独膜を石英基板上に作製し、液体窒素の温度まで冷却して、りん光発光スペクトルを観測する。りん光発光スペクトルの短波長端のエネルギーを、その構成成分のT1エネルギーと定義する。
平均T1エネルギーが高い方向へは励起子が拡散しにくく、平均T1エネルギーが低い方向へは励起子が拡散しやすくなる。
本発明においては、発光層内における平均T1エネルギーが、発光層の膜厚方向にエネルギー分布を有し、陽極側の界面、および陰極側の界面からの距離が大きくなるに従って減少することを特徴とし、陽極側の界面、および陰極側の界面から離れた位置で発光層内における平均T1エネルギーが最小となることが好ましいが、最小となる位置は、発光層の陽極側の界面および陰極側の界面でなければ、発光層内の厚み方向のいかなる位置でもよい。好ましくは、発光層の厚み方向において界面から5nm以上離れた位置で最小となるように設定するのが好ましい。
発光層内の厚み方向の平均T1エネルギーは、素子に用いられている有機材料の分析、発光層に用いられている有機材料の同定、発光層に用いられている有機材料の膜厚方向の濃度分布の測定、各有機材料の単独膜のT1エネルギー測定を行うことで、算出可能である。
有機EL発光素子に用いられている有機材料の分析はどのような方法で行っても良いが、一般的には製品の有機EL素子部分を有機溶剤で溶かし、HPLCにて成分を分離し、各成分に対して質量分析、NMR分析、元素分析を行うことで分子構造を同定する。有機材料が同定できれば各材料の単独膜を真空蒸着により作成し、液体窒素温度で燐光発光スペクトルを測定する。燐光発光スペクトルの短波長端のエネルギーをその材料のT1エネルギーと定義する。
発光層に用いられている有機材料の決定と膜厚方向の濃度分布の測定は、どのような方法で行なっても良いが、一般的には素子をスパッタリングにより削りながら逐次SIMS分析を行うことで測定が可能である。素子に用いられている有機材料の分子式とSIMSで得られた組成情報から、素子の膜厚方向の有機材料の組成分布、および、濃度分布を検出することができる。得られた素子の層構成から実質的な発光層を判断し、発光層の組成、および、濃度分布、各有機材料のT1エネルギーを元に、発光層内の平均T1エネルギーを算出する。平均T1エネルギーは各有機材料の単独膜のT1エネルギーに、発光層のある厚み位置での成分比(質量%)を掛け、和をとった値と定義する。
SIMS分析においては、層の界面が混ざったように見える場合があるが、意図的に混ぜた場合と、積層した場合の両方の測定を行うことで、混合されているのか、積層されているのかを判断することができる。
発光層の膜厚方向に平均T1エネルギーの分布を生じさせるには、発光層が有するホスト化合物、りん光発光材料、電気的に不活性な化合物、および必要によって加えるその他の成分の組成比を厚み方向で変化させればよい。
本発明における発光層の厚み方向の組成の濃度分布としては、平均T1エネルギーが発光層内部で低くなるように設計することで、三重項励起子が隣接層へ散逸することを防止で切ればどんな濃度分布をつけても問題ないが、たとえば発光層構成成分の中で最もT1エネルギーが高い材料濃度を隣接層界面で高く、中央で低くすることで目的が達成される。また発光層構成成分の中で最もT1エネルギーが低い材料濃度を隣接層界面で低く、中央で高くすることでも目的の設計となる。より具体的には、光学的に不活性な高T1エネルギーを有する材料を陽極側の界面、および陰極側の界面から離れるに従って漸減させたり、りん光発光材料を陽極側の界面、および陰極側の界面から離れるに従って漸増させたりすることができ、これらを複数組み合わせて用いてもよい。
これらのうちで好ましいのは、平均T1エネルギーの膜厚分布に大きな変化をつけられるという観点で、電気的に不活性な化合物を陽極側の界面、および陰極側の界面から離れるに従って漸減させる、りん光発光材料を陽極側の界面、および陰極側の界面から離れるに従って漸増させる、などである。平均T1エネルギーの膜厚分布が大きいほど励起子の拡散は膜厚方向に大きな異方性を示すことが予想され好ましい。
発光層の厚み方向の組成の濃度分布は、素子をスパッタリングにより削りながら逐次SIMS分析を行うことで測定することができる。
厚み方向に平均T1エネルギーの分布を有する本発明の発光層を得るためには、発光層の膜厚方向に上記のような組成分布を生じさせることが好ましい。
発光層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
厚み方向に平均T1エネルギーの分布を有する発光層は、例えば、発光層を蒸着等の方法で形成する場合は、蒸着させる組成物の組成比を変更したり、蒸着条件を変更したりすることで所望の構成の発光層を得ることができる。
発光層を構成するホスト化合物、りん光発光材料、および電気的に不活性な化合物などの厚み方向の組成比等の好ましい範囲は後述する。
(有機EL素子の構成)
本発明の有機EL発光素子における好適な態様は、陽極側から順に、少なくとも、(1)正孔注入層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、発光層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)、を有する態様、(2)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、発光層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)、を有する態様、(3)正孔注入層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)、を有する態様、(4)正孔注入層、正孔輸送層(正孔注入層と正孔輸送層は兼ねても良い)、発光層、電子輸送層、及び電子注入層(電子輸送層と電子注入層は兼ねても良い)、を有する態様などである。
本発明の有機EL発光素子は、上記した正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層はそれぞれ複数の層から構成されていてもよい。
また、これらの層以外の層を用いてもよく、上記した態様に正孔ブロック層、電子ブロック層などを用いてもよい。
また、発光層に隣接する陽極側の隣接層および陰極側の隣接層の少なくとも一方が、発光層に含まれるりん光発光材料のT1エネルギーよりも小さいT1エネルギーを有する材料を含有することも好ましい態様である。T1エネルギーが低い材料の方が一般的に電荷を流しやすく安定な材料が多く、駆動電圧が低く、耐久性が良好な場合が多い。T1エネルギーが低い隣接層とした場合、発光層からのエネルギー散逸量は増えてしまうが、本発明の発光層の構成では励起子は隣接層方向よりも発光層の中央方向に拡散しやすい構成になっているため、従来の素子に比較すると効率が維持されやすい。したがって、本発明の発光層の構成では、無理に不安定な隣接層を用いずに安定な低T1隣接層を用いて、高効率、高耐久性を両立することができる。
上述のような態様の有機EL発光素子とすることによって、高い発光効率を維持しながら、駆動耐久性の良好な有機EL発光素子を提供することができる。
次に、本発明の有機EL発光素子を構成する各要素について、詳細に説明する。
<発光層>
発光層は、電界印加時に、陽極、正孔注入層、または正孔輸送層から正孔を受け取り、陰極、電子注入層、または電子輸送層から電子を受け取り、正孔と電子の再結合の場を提供して発光させる機能を有する層である。
発光層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
発光層の厚さは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、2nm〜500nmが好ましく、外部量子効率の観点から、3nm〜200nmがより好ましく、10nm〜200nmが更に好ましい。また、発光層は1層であっても2層以上であってもよく、発光層内における平均T1エネルギーが陽極側の界面、および陰極側の界面からの距離が大きくなるに従って減少する態様であればよい。
また発光層のそれぞれの層が異なる発光色で発光してもよい。
本発明における発光層は、少なくともホスト化合物、りん光発光材料、および電気的に不活性な化合物をそれぞれ1種以上含む。本発明における発光層は、色純度を向上させるためや発光波長領域を広げるために2種類以上のりん光発光材料を含有することができる。
(りん光発光材料)
本発明におけるりん光発光材料を以下に述べるが、蛍光発光材料等を含んでもよい。
前記りん光発光材料としては、一般に、遷移金属原子又はランタノイド原子を含む錯体を挙げることができる。
例えば、該遷移金属原子としては、特に限定されないが、好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、及び白金が挙げられ、より好ましくは、レニウム、イリジウム、及び白金であり、更に好ましくはイリジウム、白金である。
ランタノイド原子としては、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、およびルテシウムが挙げられる。これらのランタノイド原子の中でも、ネオジム、ユーロピウム、及びガドリニウムが好ましい。
錯体の配位子としては、例えば、G.Wilkinson等著,Comprehensive Coordination Chemistry, Pergamon Press社1987年発行、H.Yersin著,「Photochemistry and
Photophysics of Coordination Compounds」
Springer−Verlag社1987年発行、山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」裳華房社1982年発行等に記載の配位子などが挙げられる。
具体的な配位子としては、好ましくは、ハロゲン配位子(好ましくは塩素配位子)、芳香族炭素環配位子(例えば、シクロペンタジエニルアニオン、ベンゼンアニオン、またはナフチルアニオンなど)、含窒素ヘテロ環配位子(例えば、フェニルピリジン、ベンゾキノリン、キノリノール、ビピリジル、またはフェナントロリンなど)、ジケトン配位子(例えば、アセチルアセトンなど)、カルボン酸配位子(例えば、酢酸配位子など)、アルコラト配位子(例えば、フェノラト配位子など)、一酸化炭素配位子、イソニトリル配位子、シアノ配位子であり、より好ましくは、含窒素ヘテロ環配位子である。
上記錯体は、化合物中に遷移金属原子を一つ有してもよいし、また、2つ以上有するいわゆる複核錯体であってもよい。異種の金属原子を同時に含有していてもよい。
これらの中でも、りん光発光材料の具体例としては、例えば、US6303238B1、US6097147、WO00/57676、WO00/70655、WO01/08230、WO01/39234A2、WO01/41512A1、WO02/02714A2、WO02/15645A1、WO02/44189A1、特開2001−247859、特願2000−33561、特開2002−117978、特開2002−225352、特開2002−235076、特願2001−239281、特開2002−170684、EP 1211257、特開2002−226495、特開2002−234894、特開2001−247859、特開2001−298470、特開2002−173674、特開2002−203678、特開2002−203679、特開2004−357791、特開2006−256999、特願2005−75341等の特許文献に記載のりん光発光化合物などが挙げられ、中でも、Ir錯体、Pt錯体、Cu錯体、Re錯体、W錯体、Rh錯体、Ru錯体、Pd錯体、Os錯体、Eu錯体、Tb錯体、Gd錯体、Dy錯体、Ce錯体が挙げられる。特に好ましくは、Ir錯体、Pt錯体、Re錯体であり、中でも金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含むIr錯体、Pt錯体、Re錯体が好ましい。
りん光発光材料の中でも、400nmから490nmに発光ピークを有する青色りん光発光材料を用いた場合には、発光層のT1エネルギーが大きいことに起因して隣接層へのエネルギー散逸がおきやすく、本発明の効果が大きくなる場合が多い。
(蛍光発光材料)
前記蛍光発光材料としては、一般には、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール、スチリルベンゼン、ポリフェニル、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、ナフタルイミド、クマリン、ピラン、ペリノン、オキサジアゾール、アルダジン、ピラリジン、シクロペンタジエン、ビススチリルアントラセン、キナクリドン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、シクロペンタジエン、スチリルアミン、芳香族ジメチリディン化合物、縮合多環芳香族化合物(アントラセン、フェナントロリン、ピレン、ペリレン、ルブレン、ペンタセンなど)、8−キノリノールの金属錯体、ピロメテン錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン等のポリマー化合物、有機シラン、およびこれらの誘導体などを挙げることができる。
これらの中でも、りん光発光材料の具体例としては例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
発光層中のりん光発光材料は、発光層を構成する全構成成分の総質量に対して、平均で0.1質量%〜50質量%含有されることが好ましい、耐久性、発光効率の観点から1質量%〜40質量%含有されることがより好ましく、2質量%〜30質量%含有されることがさらに好ましい。
次に、本発明において、りん光発光材料の濃度変化によって発光層のT1エネルギーの変化を実現する場合のりん光発光材料の発光層における濃度の好ましい範囲を述べる。この場合には、りん光発光材料の発光層を構成する全構成成分の総質量に対する濃度は、陽極側の界面および陰極側の界面では2質量%以上90質量%以下含有されることが好ましく、5質量%以上70質量%以下含有されることがより好ましい。また、発光層の厚み方向におけるりん光発光材料の最小濃度は0質量以上50質量%以下含有されることが好ましく、2質量%以上30質量%以下含有されることがより好ましい。
(ホスト化合物)
本発明の発光層はホスト化合物を含み、正孔輸送性ホスト化合物または電子輸送性ホスト化合物を少なくとも1種以上含む。
(正孔輸送性ホスト化合物)
本発明の発光層に用いられる正孔輸送性ホスト化合物としては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.1eV以上6.3eV以下であることが好ましく、5.4eV以上6.1eV以下であることがより好ましく、5.6eV以上6.0eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが1.2eV以上3.1eV以下であることが好ましく、1.4eV以上3.0eV以下であることがより好ましく、1.8eV以上2.9eV以下であることが更に好ましい。
このような正孔輸送性ホスト化合物としては、具体的には、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
ピロール、カルバゾール、アゼピン、カルベン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、及びそれらの誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、正孔輸送性ホスト化合物としては、カルバゾール化合物、アゼピン化合物、もしくはカルベン錯体化合物、好ましく、特にカルバゾール化合物が好ましい。
正孔輸送性ホスト化合物としての具体的化合物としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(電子輸送性ホスト化合物)
本発明に用いられるホスト化合物として、正孔輸送性に優れる正孔輸送性ホスト化合物と同様に電子輸送性に優れる電子輸送性ホスト化合物を用いても良い。
本発明に用いられる発光層内の電子輸送性ホスト化合物としては、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、電子親和力Eaが2.5eV以上3.5eV以下であることが好ましく、2.6eV以上3.2eV以下であることがより好ましく、2.8eV以上3.1eV以下であることが更に好ましい。また、耐久性向上、駆動電圧低下の観点から、イオン化ポテンシャルIpが5.7eV以上7.5eV以下であることが好ましく、5.8eV以上7.0eV以下であることがより好ましく、5.9eV以上6.5eV以下であることが更に好ましい。
このような電子輸送性ホスト化合物としては、具体的には、例えば、以下の化合物を挙げることができる。
ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレン、ペリレン等のテトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
電子輸送性ホスト化合物として好ましくは、金属錯体、アゾール誘導体(ベンズイミダゾール誘導体、イミダゾピリジン誘導体等)、アジン誘導体(ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体等)であり、中でも、本発明においては耐久性の点から金属錯体化合物が好ましい。金属錯体化合物は金属に配位する少なくとも1つの窒素原子または酸素原子または硫黄原子を有する配位子をもつ金属錯体がより好ましい。
金属錯体中の金属イオンは特に限定されないが、好ましくはベリリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、インジウムイオン、錫イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、より好ましくはベリリウムイオン、アルミニウムイオン、ガリウムイオン、亜鉛イオン、白金イオン、またはパラジウムイオンであり、更に好ましくはアルミニウムイオン、亜鉛イオン、またはパラジウムイオンである。
前記金属錯体中に含まれる配位子としては種々の公知の配位子が有るが、例えば、「Photochemistry and Photophysics of Coordination Compounds」、Springer−Verlag社、H.Yersin著、1987年発行、「有機金属化学−基礎と応用−」、裳華房社、山本明夫著、1982年発行等に記載の配位子が挙げられる。
前記配位子として、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜20、特に好ましくは炭素数3〜15であり、単座配位子であっても2座以上の配位子であっても良い。好ましくは2座以上6座以下の配位子である。また、2座以上6座以下の配位子と単座の混合配位子も好ましい。
配位子としては、例えばアジン配位子(例えば、ピリジン配位子、ビピリジル配位子、ターピリジン配位子などが挙げられる。)、ヒドロキシフェニルアゾール配位子(例えば、ヒドロキシフェニルベンズイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルベンズオキサゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾール配位子、ヒドロキシフェニルイミダゾピリジン配位子などが挙げられる。)、アルコキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜10であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ、2−エチルヘキシロキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ、4−ビフェニルオキシなどが挙げられる。)、
ヘテロアリールオキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルオキシ、ピラジルオキシ、ピリミジルオキシ、およびキノリルオキシなどが挙げられる。)、アルキルチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、ヘテロアリールチオ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばピリジルチオ、2−ベンズイミダゾリルチオ、2−ベンズオキサゾリルチオ、および2−ベンズチアゾリルチオなどが挙げられる。)、シロキシ配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数3〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えば、トリフェニルシロキシ基、トリエトキシシロキシ基、およびトリイソプロピルシロキシ基などが挙げられる。)、芳香族炭化水素アニオン配位子(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜25、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニルアニオン、ナフチルアニオン、およびアントラニルアニオンなどが挙げられる。)、芳香族ヘテロ環アニオン配位子(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数2〜25、特に好ましくは炭素数2〜20であり、例えばピロールアニオン、ピラゾールアニオン、トリアゾールアニオン、オキサゾールアニオン、ベンゾオキサゾールアニオン、チアゾールアニオン、ベンゾチアゾールアニオン、チオフェンアニオン、およびベンゾチオフェンアニオンなどが挙げられる。)、インドレニンアニオン配位子などが挙げられ、好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、ヘテロアリールオキシ基、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、または芳香族ヘテロ環アニオン配位子であり、更に好ましくは含窒素ヘテロ環配位子、アリールオキシ配位子、シロキシ配位子、芳香族炭化水素アニオン配位子、または芳香族ヘテロ環アニオン配位子である。
金属錯体電子輸送性ホスト化合物の例としては、例えば特開2002−235076、特開2004−214179、特開2004−221062、特開2004−221065、特開2004−221068、特開2004−327313等に記載の化合物が挙げられる。
このような電子輸送性ホスト化合物としては、具体的には、例えば、以下の化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
また、本発明におけるホスト化合物の含有量は、発光効率、駆動電圧の観点から、正孔輸送性ホスト化合物と電子輸送性ホスト化合物の合計の含有量で、発光層を形成する全化合物質量に対して30質量%以上99質量%以下であることが好ましく、50質量%以上98質量%以下であることがより好ましい。
<電気的に不活性な化合物>
電気的に不活性な化合物とは、ある発光層において電荷輸送性を有さず、かつ、発光には直接寄与しないが、励起子のエネルギー移動を抑制する化合物である。このような電気的に不活性な化合物は、発光層に含まれるホスト材料と発光材料よりもバンドギャップが大きい材料である必要がある。バインダー材料とも呼ばれ、好ましくは、最高占有軌道と最低非占有軌道とのエネルギー差(Eg)が3.5eV以上である有機化合物である。本発明で用いる電気的に不活性な化合物(以下、適宜、バインダー材料ともいう。)のEgは3.0eV以上がより好ましく、3.5eV以上が特に好ましい。
また、電気的に不活性な化合物の最低励起三重項エネルギー準位(T1)は、該化合物と同じ発光層に含まれるりん光発光材料のT1より高いことが好ましい。例えば、青色りん光発光材料のT1は2.6eV前後であり、これからの三重項励起子の拡散抑制のためには、電気的に不活性な化合物のT1はそれ以上、すなわち、好ましくは2.7eV以上であり、より好ましくは2.9eV以上である。
また、電気的に不活性な化合物のイオン化ポテンシャル(Ip)は6.1eV以上であることが好ましい。さらにIpは6.2eV以上がより好ましく、6.3eV以上が特に好ましい。これにより、発光層30が青色燐光発光材料を含む場合でも、青色の発光効率を一層向上させることができる。特に、発光層にホスト化合物として広く用いられるN,N’−ジカルバゾリル−1,3−ベンゼン(mCPと略記する)のイオン化ポテンシャルは5.9eVであり、mCPから発光層の陰極側隣接層への正孔の筒抜けを抑制するためには、電気的に不活性な化合物のIpは、mCPのIpよりも大きいことが好ましく、6.1eV以上とすることにより、上記のような正孔の筒抜けを抑制することができ、発光効率を一層向上することができる。
また、電気的に不活性な化合物の電子親和力(Ea)は2.3eV以下であることが好ましい。このようなEaを有する電気的に不活性な化合物であれば、発光層からの電子の筒抜け(主に発光層のホスト化合物からの電子の筒抜け)が抑制され、発光効率を一層向上させることができる点で好ましい。発光層にホスト化合物として広く用いられるmCPの電子親和力は2.4eVであり、mCPから発光層の陽極側隣接層への電子の筒抜けを抑制するためには、電気的に不活性な化合物のEaは、mCPのEaよりも小さいことが好ましく、2.3eV以下とすることにより、電子筒抜けを抑制することができ発光効率を一層向上することができる。
本発明における発光層を構成する電気的に不活性な化合物としては、1種類の材料を用いてもよいし、複数種の材料を用いても良い。複数種の電気的に不活性な化合物を混合して用いる場合、その混合比率は好ましくは質量比で1:99〜50:50の範囲であり、より好ましくは、20:80〜50:50の範囲である。電気的に不活性な化合物を複数種混合して用いることにより、励起子の移動の抑制のほか、発光効率の向上と駆動耐久性の向上も図ることができる。
本発明に係る電気的に不活性な化合物の具体例は、特開2009−32976号公報に記載の化合物を挙げることができる。
特に、電気的に不活性な化合物としては、アダマンタン構造を有する化合物、およびSi連結系化合物が、構造安定性、アモルファス膜の安定性の観点で好ましい。
アダマンタン化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、アミド基、ハロゲン基、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、シリル基を表し、該R〜Rの少なくとも1つは、二重結合又は三重結合を有する基である。X〜X12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、炭素数1〜6のアルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、アミド基、ハロゲン基、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基、シリル基を表す。
<置換基等の詳細な説明>
〜R、および、X〜X12で表される炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル(すなわち、2−ブチル)、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、n−ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表される炭素数2〜6のアルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル(すなわち、1−(2−プロペニル))、1−(1−プロペニル)、2−プロペニル、1−(1−ブテニル)、1−(2−ブテニル)、1−(3−ブテニル)、1−(1,3−ブタジエニル)、2−(2−ブテニル)、1−(1−ペンテニル)、5−(シクロペンタジエニル)、1−(1−シクロヘキセニル)などが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表される炭素数2〜6のアルキニル基としては、例えば、エチニル、プロパルギル(すなわち、1−(2−プロピニル))、1−(1−プロピニル)、1−ブタジイニル、1−(1,3−ペンタジイニル)などが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表されるアリール基としては、例えば、フェニル、o−トリル(すなわち、1−(2−メチルフェニル))、m−トリル、p−トリル、1−(2,3−ジメチルフェニル)、1−(3,4−ジメチルフェニル)、2−(1,3−ジメチルフェニル)、1−(3,5−ジメチルフェニル)、1−(2,5−ジメチルフェニル)、p−クメニル、メシチル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントラニル、2−アントラニル、9−アントラニル、および、4−ビフェニリル(すなわち、1−(4−フェニル)フェニル)、3−ビフェニリル、2−ビフェニリルなどのビフェニリル類、4−p−テルフェニリル(すなわち、1−4−(4−ビフェニリル)フェニル)、4−m−テルフェニリル(すなわち、1−4−(3−ビフェニリル)フェニル)などのテルフェニリル類などが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表されるヘテロアリール基としては、含まれるヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられ、具体的には、例えば、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジル、ピリミジル、トリアジニル、キノリル、イソキノリニル、ピロリル、インドリル、フリル、チエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、カルバゾリル、アゼピニルなどが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、シクロヘキシロキシ、フェノキシなどが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表されるアシル基としては、例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表されるアシロキシ基としては、例えば、アセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表されるアミノ基としては、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルフォリノなどが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表されるエステル基としては、例えば、メチルエステル(すなわち、メトキシカルボニル)、エチルエステル、イソプロピルエステル、フェニルエステル、ベンジルエステルなどが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表されるアミド基としては、例えば、アミドの炭素原子で連結した、N,N−ジメチルアミド(すなわち、ジメチルアミノカルボニル)、N−フェニルアミド、N,N−ジフェニルアミドや、アミドの窒素原子で連結した、N−メチルアセトアミド(すなわち、アセチルメチルアミノ)、N−フェニルアセトアミド、N−フェニルベンズアミドなどが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表されるハロゲンとしては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表される炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、1−パーフルオロプロピル、2−パーフルオロプロピル、パーフルオロペンチルなどが挙げられる。
〜R、および、X〜X12で表される炭素数1〜18のシリル基としては、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、トリフェニルシリル、メチルジフェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリルなどが挙げられる。
上記のR〜R、および、X〜X12は、更に他の置換基で置換されていてもよい。例えば、アルキル基にアリール基が置換したものとしては、ベンジル、9−フルオレニル、1−(2−フェニルエチル)、1−(4−フェニル)シクロヘキシルなどが挙げられ、アリール基にヘテロアリール基が置換されたものとしては、1−(4−Nーカルバゾリル)フェニル、1−(3,5−ジ(Nーカルバゾリル))フェニル、1−(4−(2−ピリジル)フェニル)などが挙げられる。
上記のR〜Rとして好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、エステル基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、シリル基であり、特に好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基である。
上記のX〜X12として好ましくは、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アミノ基、エステル基、シリル基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基であり、特に好ましくは、水素原子である。
〜R、および、X〜X12で表される炭素数1〜6のアルキル基としては好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルであり、より好ましくは、メチル、エチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシルであり、特に好ましくは、メチル、エチルである。
〜R、および、X〜X12で表されるアリール基として好ましくは、フェニル、o−トリル、1−(3,4−ジメチルフェニル)、1−(3,5−ジメチルフェニル)、1−ナフチル、2−ナフチル、9−アントラニル、および、ビフェニリル類、テルフェニリル類であり、より好ましくは、フェニル、ビフェニリル類、テルフェニリル類であり、より好ましくは、フェニルである。
〜R、および、X〜X12で表される水素原子は、重水素原子であってもよく、重水素原子である方が好ましい。
一般式(1)で表される化合物に含まれる水素原子は、その一部、もしくは、すべてが重水素原子で置換されていても良い。
〜Rの少なくとも1つは、二重結合、あるいは三重結合を有する基であるが、二重結合としては、例えば、C=C、C=O、C=S,C=N、N=N、S=O、P=Oなどが挙げられ、好ましくはC=C、C=O、C=N、S=O、P=Oであり、より好ましくはC=C、C=O、C=Nであり、特に好ましくはC=Cである。三重結合としては、C≡C、C≡Nが挙げられ、好ましくはC≡Cである。
〜Rの、二重結合、あるいは三重結合を有する基としては、アリール基が好ましく、なかでも、下記で表されるフェニル基、ビフェニリル基、テルフェニリル基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。
〜Rの少なくとも1つは、二重結合、あるいは三重結合を有する基であるが、R〜Rで二重結合、あるいは三重結合を有するものの数は2〜4が好ましく、3〜4がより好ましく、4が特に好ましい。
〜Rで二重結合、あるいは三重結合を有するものの数が1−3の場合、残りの単結合のみからなるR〜Rは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シリル基が好ましく、水素原子、アルキル基、シリル基が好ましく、水素原子、アルキル基が特に好ましい。
〜R、および、X〜X12は互いに連結して環構造を形成していても良い。たとえば、下記のように、X、X、Xが互いに連結して、ジアマンタン構造を形成していてもよく、さらに、X、X、X12が互いに連結して、トリアマンタン構造を形成していてもよい。これらのジアマンタン構造、トリアマンタン構造は、更に置換基で置換されていてもよい。
本発明に於いては好ましくは、一般式(1)で表される化合物の最高占有軌道と最低非占有軌道とのエネルギー差(Egと表記する)が4.0eV以上である。より好ましくは、4.2eV以上5eV以下である。
本発明に於いては好ましくは、一般式(1)で表される化合物の三重項最低励起準位(T1と表記する)が2.7eV以上である。より好ましくは、2.8eV以上3.5eV以下である。
また、本発明に於いては好ましくは、一般式(1)で表される化合物の電気親和力(Eaと表記する)が2.3eV以下である。より好ましくは、2.0eV以下である。
以下に本発明に用いられる一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明の化合物がこれらに限定されるものではない。
また、Si連結化合物も電気的に不活性な化合物の好ましい化合物である。以下にSi連結化合物の例を述べるが本発明はこれに限定されるものではない。
Si連結化合物として、特開2005−310672号公報に記載の化合物が好適に用いられる。特に下記一般式(2)に示すSi連結化合物が好ましい。
一般式(2)中、Ar11は互いに同じでも異なっていても良いアリール基あるいはヘテロアリール基を表す。Ar12はフェニレン基、ビフェニレン基、ベンゼン環が3環以上6環以下連結した基、2環以上6環以下の芳香環が縮環した縮合環のアリーレン基、あるいはヘテロアリーレン基を表す。Ar12はアリーレン基とヘテロアリーレン基が互いに連結したものであっても良い。R11、R12、およびR13は互いに同じでも異なっていても良いアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。
また、一般式(3)で示されるSi連結化合物も好ましい。
一般式(3)中、Ar21は互いに同じでも異なっていても良いアリール基あるいはヘテロアリール基を表し、Ar21上にさらにシリル基が置換することはない。Ar22は互いに同じでも異なっていても良いアリーレン基あるいはへテロアリーレン基を表す。Ar22は前記アリーレン基とヘテロアリーレン基が互いに連結したものであっても良い。R21、R22、およびR23は互いに同じでも異なっていても良いアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表し、mは1もしくは2を表す。
また、一般式(4)で示されるSi連結化合物も好ましい。
一般式(4)中、Ar32は互いに同じでも異なっていても良いアリーレン基、アゾール構造を含む基、ヘテロ原子が2個以上のアジン構造を含む基、フラン構造を含む基、あるいはチオフェン構造を含む基を表す。Ar32は前記アリーレン基、アゾール構造を含む基、ヘテロ原子が2個以上のアジン構造を含む基、フラン構造を含む基、チオフェン構造を含む基が互いに連結したものであっても良い。R31、R32、およびR33は互いに同じでも異なっていても良いアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基を表す。
本発明においては好ましくは、一般式(2)〜(4)で表される化合物の最高占有軌道と最低非占有軌道とのエネルギー差(Egと表記する)が3.5eV以上である。より好ましくは、4.0eV以上である。
本発明においては好ましくは、一般式(2)〜(4)で表される化合物の三重項最低励起準位(T1と表記する)が2.7eV以上である。より好ましくは、2.8eV以上である。
また、本発明においては好ましくは、一般式(2)〜(4)で表される化合物の電気親和力(Eaと表記する)が2.3eV以下である。より好ましくは、2.0eV以下である。
以下に本発明に用いられる一般式(2)〜(4)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明の化合物がこれらに限定されるものではない。
発光層に含まれる電気的に不活性な化合物の含有量は、発光層を構成する全構成成分の総質量に対して平均値として5質量%以上90質量%以下であることが好ましく、10質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
次に、本発明において、電気的に不活性な化合物の濃度変化によって発光層のT1エネルギーの濃度変化を実現する場合の電気的に不活性な化合物の濃度の好ましい範囲を述べる。この場合には、電気的に不活性な化合物の発光層を構成する全構成成分の総質量に対する濃度は、陽極側の界面および陰極側の界面では5質量%以上90質量%以下含有されることが好ましく、10質量%以上70質量%以下含有されることがより好ましい。また、発光層の厚み方向における電気的に不活性な化合物の最小濃度は0質量%以上50質量%以下含有されることが好ましく、0質量%以上30質量%以下含有されることがより好ましい。
<正孔注入層、正孔輸送層>
正孔注入層、および正孔輸送層は、陽極又は陽極側から正孔を受け取り陰極側に輸送する機能を有する層である。正孔注入層及び正孔輸送層は、単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
これらの層に用いられる正孔注入材料、又は正孔輸送材料としては、低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。
特に陽極に接する層は、pドープされていることが好ましい。正孔注入層あるいは正孔輸送層に導入するドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用でき、具体的には、無機化合物は塩化第二鉄や塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、および五塩化アンチモンなどのルイス酸化合物を好適に用いることができる。
有機化合物の場合は、置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基などを有する化合物、キノン系化合物、酸無水物系化合物、フレーレンなどを好適に用いることができる。
具体的にはヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、テトラメチルベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、o−ジシアノベンゼン、p−ジシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、p−シアノニトロベンゼン、m−シアノニトロベンゼン、o−シアノニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1−ニトロナフタレン、2−ニトロナフタレン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9−シアノアントラセン、9−ニトロアントラセン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、マレイン酸無水物、フタル酸無水物、レラーレン化合物などが挙げられる。
このうちヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、1,4−ジシアノテトラフルオロベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、p−ジニトロベンゼン、m−ジニトロベンゼン、o−ジニトロベンゼン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,3−ジニトロナフタレン、1,5−ジニトロナフタレン、9,10−アントラキノン、1,3,6,8−テトラニトロカルバゾール、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,3,5,6−テトラシアノピリジン、またはC60が好ましく、ヘキサシアノブタジエン、ヘキサシアノベンゼン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、p−フルオラニル、p−クロラニル、p−ブロマニル、2,6−ジクロロベンゾキノン、2,5−ジクロロベンゾキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,2,4,5−テトラシアノベンゼン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノベンゾキノン、または2,3,5,6−テトラシアノピリジンが特に好ましい。
これらの電子受容性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔注入層材料に対して0.01質量%以上60質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上50質量%以下であることが更に好ましく、0.1質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。該使用量が、正孔注入材料に対して0.01質量%未満のときには、本発明の効果が不十分であるため好ましくなく、60質量%を超えると正孔注入能力が損なわれる可能性が高いため好ましくない。
正孔注入層がアクセプタを含有する場合、正孔輸送層は、実質的にアクセプタを含有しないことが好ましい。
正孔注入材料、および正孔輸送材料としては、例えば、ピロール、インドール、カルバゾール、アザインドール、アザカルバゾール、ピラゾール、イミダゾール、ポリアリールアルカン、ピラゾリン、ピラゾロン、フェニレンジアミン、アリールアミン、アミノ置換カルコン、スチリルアントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、シラザン、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、有機シラン、カーボン膜、又はそれらの誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、インドール化合物、カルバゾール化合物、アザインドール化合物、アザカルバゾール化合物、芳香族第三級アミン化合物、チオフェン化合物が好ましく、特に分子内にインドール骨格、カルバゾール骨格、アザインドール骨格、アザカルバゾール骨格、又は芳香族第三級アミン骨格を複数個有するものが好ましい。
このような正孔注入材料、および正孔輸送材料としての具体的化合物としては、前記した正孔輸送ホスト化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記正孔注入層、及び正孔輸送層には、電子受容性ドーパントを含有させることができる。
前記電子受容性ドーパントとしては、電子受容性で有機化合物を酸化する性質を有すれば、無機化合物でも有機化合物でも使用できる。
前記無機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば塩化第二鉄、塩化アルミニウム、塩化ガリウム、塩化インジウム、五塩化アンチモン等のハロゲン化金属;五酸化バナジウム、三酸化モリブデン等の金属酸化物、などが挙げられる。
前記有機化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば置換基としてニトロ基、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基等を有する化合物;キノン系化合物、酸無水物系化合物、フラーレン、などが挙げられる。
これらの電子受容性ドーパントは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
前記電子受容性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、正孔輸送層材料又は正孔注入材料に対して0.01質量%〜50質量%が好ましく、0.05質量%〜20質量%がより好ましく、0.1質量%〜10質量%が更に好ましい。
前記正孔注入層及び正孔輸送層は、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、スパッタ法等の乾式製膜法、湿式塗布方式、転写法、印刷法、インクジェット方式、などにより好適に形成することができる。
前記正孔注入層及び正孔輸送層の厚さは、1nm〜500nmが好ましく、5nm〜200nmがより好ましく、10nm〜100nmが更に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層の厚さは、特に限定されるものではないが、駆動電圧低下、発光効率向上、耐久性向上の観点から、厚さが1nm〜5μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることが更に好ましく、10nm〜500nmであることが特に好ましい。
正孔注入層、正孔輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
また、正孔輸送層におけるキャリア移動度は、一般的に、10−7cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下であり、中でも、発光効率の点から10−5cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が好ましく、10−4cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が更に好ましく、10−3cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が特に好ましい。
<電子注入層、電子輸送層>
電子注入層、及び電子輸送層は、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、蒸着法、湿式製膜法、MBE(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム法、分子積層法、LB法、印刷法、転写法、などにより好適に形成することができる。
前記電子輸送層の厚みは、1nm〜200nmであることが好ましく、1nm〜100nmであることがより好ましく、1nm〜50nmであることが更に好ましい。
前記電子注入層の厚みは、1nm〜200nmが好ましく、1nm〜100nmがより好ましく、1nm〜50nmであることが更に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、陰極から電子を注入する機能、電子を輸送する機能、陽極から注入され得た正孔を障壁する機能のいずれかを有している層である。
陰極と接する層は、nドープされていることが好ましい。
電子注入層、あるいは電子輸送層に導入される電子供与性ドーパントとしては、電子供与性で有機化合物を還元する性質を有していればよく、Liなどのアルカリ金属、Mgなどのアルカリ土類金属、希土類金属を含む遷移金属などが好適に用いられる。
特に仕事関数が4.2eV以下の金属が好適に使用でき、具体的には、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、Cs、La、Sm、Gd、およびYbなどが挙げられる。
これらの電子供与性ドーパントは、単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
電子供与性ドーパントの使用量は、材料の種類によって異なるが、電子輸送層材料に対して0.1質量%〜99質量%であることが好ましく、1.0質量%〜80質量%であることが更に好ましく、2.0質量%〜70質量%であることが特に好ましい。該使用量が、電子輸送層材料に対して0.1質量%未満のときには、本発明の効果が不十分であるため好ましくなく、99質量%を超えると電子輸送能力が損なわれる可能性が高いため好ましくない。
電子注入層、電子輸送層の材料としては、具体的には、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、イミダゾール、トリアゾ−ル、オキサゾ−ル、オキサジアゾ−ル、フルオレノン、アントラキノジメタン、アントロン、ジフェニルキノン、チオピランジオキシド、カルボジイミド、フルオレニリデンメタン、ジスチリルピラジン、フッ素置換芳香族化合物、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン、およびそれらの誘導体(他の環と縮合環を形成してもよい)、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体等を挙げることができる。
電子注入層、電子輸送層の厚さは、特に限定されるものではないが、駆動電圧低下、発光効率向上、耐久性向上の観点から、厚さが1nm〜5μmであることが好ましく、5nm〜1μmであることが更に好ましく、10nm〜500nmであることが特に好ましい。
電子注入層、電子輸送層は、上述した材料の1種又は2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成又は異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
また、電子輸送層におけるキャリア移動度は、一般的に、10−7cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下であり、中でも、発光効率の点から10−5cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が好ましく、10−4cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が更に好ましく、10−3cm・V−1・s−1以上10−1cm・V−1・s−1以下が特に好ましい。
<電極>
本発明の有機EL発光素子は、一対の電極、即ち陽極と陰極とを含む。前記有機EL発光素子の性質上、陽極及び陰極のうち少なくとも一方の電極は透明であることが好ましい。通常、陽極は有機化合物層に正孔を供給する電極としての機能を有していればよく、陰極は有機化合物層に電子を注入する電極としての機能を有していればよい。
前記電極としては、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、有機EL発光素子の用途、目的に応じて公知の電極材料の中から適宜選択することができる。
前記電極を構成する材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、導電性化合物、又はこれらの混合物等が好適に挙げられる。
−陽極−
前記陽極を構成する材料としては、例えば、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これらの金属と導電性金属酸化物との混合物又は積層物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料、又はこれらとITOとの積層物、などが挙げられる。これらの中でも、導電性金属酸化物が好ましく、生産性、高導電性、透明性等の点からはITOが特に好ましい。
−陰極−
前記陰極を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属(例えばLi、Na、K、Cs等)、アルカリ土類金属(例えばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、イッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。
前記アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、アルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属又はアルカリ土類金属との合金若しくはこれらの混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
前記電極の形成方法については、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができ、例えば印刷方式、コーティング方式等の湿式方式;真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式;CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などが挙げられる。これらの中でも、前記電極を構成する材料との適性を考慮し、適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料としてITOを選択する場合には、直流又は高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等に従って形成することができる。陰極の材料として金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って形成することができる。
なお、前記電極を形成する際にパターニングを行う場合は、フォトリソグラフィー等による化学的エッチングによって行ってもよいし、レーザー等による物理的エッチングによって行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法によって行ってもよい。
<基板>
本発明の有機EL発光素子は、基板上に設けられていることが好ましく、電極と基板とが直接接する形で設けられていてもよいし、中間層を介在する形で設けられていてもよい。
前記基板の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)、ガラス(無アルカリガラス、ソーダライムガラス等)等の無機材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の有機材料、などが挙げられる。
前記基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、基板の形状としては、板状であることが好ましい。基板の構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。基板は透明でも不透明でもよく、透明な場合は無色透明でも有色透明でもよい。
前記基板には、その表面又は裏面に透湿防止層(ガスバリア層)を設けることができる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、例えば窒化珪素、酸化珪素等の無機物などが挙げられる。
前記透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
−保護層−
有機EL発光素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
前記保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばIn、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属;MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物;SiNx、SiNxOy等の金属窒化物;MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質、などが挙げられる。
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、転写法などが挙げられる。
−封止容器−
本発明の有機EL発光素子は、封止容器を用いて素子全体が封止されていてもよい。更に、前記封止容器と有機EL発光素子の間の空間には、水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
前記水分吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、酸化マグネシウム、などが挙げられる。
前記不活性液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばパラフィン類、流動パラフィン類;パーフルオロアルカン、パーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;塩素系溶剤、シリコーンオイル類、などが挙げられる。
−樹脂封止層−
本発明の有機EL発光素子は、大気からの酸素や水分による素子性能劣化を樹脂封止層により封止することで抑制することが好ましい。
前記樹脂封止層の樹脂素材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ゴム系樹脂、エステル系樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、水分防止機能の点からエポキシ樹脂が特に好ましい。前記エポキシ樹脂の中でも熱硬化型エポキシ樹脂、又は光硬化型エポキシ樹脂が好ましい。
前記樹脂封止層の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂溶液を塗布する方法、樹脂シートを圧着又は熱圧着する方法、蒸着やスパッタリング等により乾式重合する方法、などが挙げられる。
−封止接着剤−
封止接着剤は、端部よりの水分や酸素の侵入を防止する機能を有するものである。前記封止接着剤の材料としては、前記樹脂封止層で用いる材料と同じものを用いることができる。これらの中でも、水分防止の点からエポキシ系の接着剤が好ましく、光硬化型接着剤あるいは熱硬化型接着剤が特に好ましい。
前記封止接着剤にフィラーを添加することも好ましい。前記フィラーとしては、例えばSiO、SiO(酸化ケイ素)、SiON(酸窒化ケイ素)、SiN(窒化ケイ素)等の無機材料が好ましい。該フィラーの添加により、封止接着剤の粘度が上昇し、加工適正が向上し、及び耐湿性が向上する。
前記封止接着剤は、乾燥剤を含有してもよい。前記乾燥剤としては、例えば酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、などが挙げられる。前記乾燥剤の添加量は、前記封止接着剤に対し0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、0.05質量%以上15質量%以下がより好ましい。前記添加量が、0.01質量%未満であると、乾燥剤の添加効果が薄れることになり、20質量%を超えると、封止接着剤中に乾燥剤を均一分散させることが困難になることがある。
本発明においては、前記乾燥剤の入った封止接着剤をディスペンサー等により任意量塗布し、塗布後第2基板を重ねて、硬化させることにより封止することができる。
図1は、本発明の有機EL発光素子の層構成の一例を示す概略図である。有機EL素子10は、ガラス基板1上に形成された陽極2(例えばITO電極)と、正孔注入層3と、正孔輸送層4と、発光層5と、電子輸送層6と、電子注入層7と、陰極8(例えばAl−Li電極)とをこの順に積層してなる層構成を有する。なお、陽極2(例えばITO電極)と陰極8(例えばAl−Li電極)とは電源を介して互いに接続されている。
−駆動−
本発明の有機EL発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
本発明の有機EL発光素子は、薄膜トランジスタ(TFT)によりアクティブマトリックスへ適用することができる。薄膜トランジスタの活性層としてアモルファスシリコン、高温ポリシリコン、低温ポリシリコン、微結晶シリコン、酸化物半導体、有機半導体、カーボンナノチューブ等を適用することができる。
本発明の有機EL発光素子は、例えばWO2005/088726号パンフレット、特開2006−165529号公報、米国特許出願公開2008/0237598A1明細書などに記載の薄膜トランジスタを適用することができる。
本発明の有機EL発光素子は、特に制限はなく、種々の公知の工夫により、光取り出し効率を向上させることができる。例えば、基板表面形状を加工する(例えば微細な凹凸パターンを形成する)、基板、ITO層、有機層の屈折率を制御する、基板、ITO層、有機層の膜厚を制御すること等により、光の取り出し効率を向上させ、外部量子効率を向上させることが可能である。
本発明の有機EL発光素子からの光取り出し方式は、トップエミッション方式であってもボトムエミッション方式であってもよい。
本発明の有機EL発光素子は、共振器構造を有してもよい。共振器構造としては、例えば、透明基板上に、屈折率の異なる複数の積層膜よりなる多層膜ミラー、透明又は半透明電極、発光層、及び金属電極を重ね合わせて有する。発光層で生じた光は多層膜ミラーと金属電極を反射板としてその間で反射を繰り返し共振する。
共振器構造の別の好ましい態様では、透明基板上に、透明又は半透明電極と金属電極がそれぞれ反射板として機能して、発光層で生じた光はその間で反射を繰り返し共振する。
共振構造を形成するためには、2つの反射板の有効屈折率、反射板間の各層の屈折率と厚みから決定される光路長を所望の共振波長の得るのに最適な値となるよう調整される。第一の態様の場合の計算式は、特開平9−180883号公報に記載されている。第2の態様の場合の計算式は、特開2004−127795号公報に記載されている。
−用途−
本発明の有機EL発光素子は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表示素子、ディスプレイ、バックライト、電子写真、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等に好適に利用できる。
前記有機ELディスプレイをフルカラータイプのものとする方法としては、例えば「月刊ディスプレイ」、2000年9月号、33〜37ページに記載されているように、色の3原色(青色(B)、緑色(G)、赤色(R))に対応する光をそれぞれ発光する有機EL素子を基板上に配置する3色発光法、白色発光用の有機EL発光素子による白色発光をカラーフィルターを通して3原色に分ける白色法、青色発光用の有機EL発光素子による青色発光を蛍光色素層を通して赤色(R)及び緑色(G)に変換する色変換法、などが知られている。また、上記方法により得られる異なる発光色の有機EL発光素子を複数組み合わせて用いることにより、所望の発光色の平面型光源を得ることができる。例えば、青色及び黄色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、青色、緑色、赤色の発光素子を組み合わせた白色発光光源、などが挙げられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、図2〜図33では、平均T1エネルギーを平均T1値と記載し、本実施例においても平均T1エネルギーを平均T1値と称することがある。また、発光層における各成分の濃度は、特に断らない限り、発光層の全体に対する濃度をそれぞれ表す。
(比較例1)
−有機EL発光素子の作製−
0.7mm厚み、2.5cm角のガラス基板を洗浄容器に入れ、2−プロパノール中で超音波洗浄した後、30分間UV−オゾン処理を行った。このガラス基板上に真空蒸着法にて以下の各層を蒸着した。蒸着速度、膜厚は水晶振動子を用いて測定した。また、膜厚方向に濃度依存性を設ける場合は、各蒸着源の電流値を制御することで、各材料の蒸着速度を変化させ、トータルの蒸着速度が一定となるように調節して成膜を行った。
まず、ガラス基板上に、陽極としてITO(Indium Tin Oxide)を厚み100nmにスパッタ蒸着した。
次に、陽極(ITO)上に、正孔注入層として2TNATA(4,4',4''−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン)および2TNATAに対して0.3質量%のF4TCNQ(p−ドープ材、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン)を厚み120nmに共蒸着した。
次に、正孔注入層上に、正孔輸送層としてNPD(N,N’−ジナフチル−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン)を厚み10nmに蒸着した。
次に、正孔輸送層上に、正孔輸送性ホスト材料であるCBP(N,N’−ジ−カルバゾリル−4,4’−ビフェニル)と、15質量%の緑色燐光発光材料である化合物A(下記構造)と、7.5質量%の電気的に不活性な材料である化合物E(下記構造)をドープした発光層を30nmの厚みとなるよう濃度一定で蒸着した。この発光層における濃度と平均T1値を図2に示す。平均T1値は発光層全体で均一である。
次に、発光層上に、電子輸送層として電子輸送性材料であるBAlqを厚み30nmに蒸着した。
次に、電子輸送層上に、電子注入層として電子注入材料であるLiFを厚み1nmとなるように蒸着した。
次に、電子注入層上に、シャドウマスク(発光領域が2mm×2mmとなるマスク)を設置し、陰極として、金属アルミニウムを厚み100nmとなるように蒸着した。
以上により作製した積層体を、窒素ガスで置換したグローブボックス内に入れ、ガラス製の封止缶、及び紫外線硬化型の接着剤(XNR5516HV、長瀬チバ株式会社製)を用いて封止した。以上により、比較例1の有機EL発光素子を作製した。
(比較例2)
比較例1の正孔輸送層を7nmのNPD、3nmの化合物Hの積層構成に変更する以外は、比較例1と同様にして比較例2の有機EL発光素子を作成した。発光層は比較例1と同じ構成とした(図2)。平均T1値は発光層全体で均一である。
(比較例3)
比較例2の発光層を、以下の構成に変える以外は比較例2と同様にして比較例3の有機EL発光素子を作成した。発光層において、膜厚の方向に化合物EとCBPの濃度が変化する構成とした。化合物Aの濃度は15質量%とし、発光層全体で一定とした。化合物Eの濃度を陽極側から陰極側へ向かって0質量%から15質量%に増加させ、CBPの濃度を陽極側から陰極側へ向かって85質量%から70質量%に減少させた。この化合物A、化合物E、およびCBPの発光層の濃度変化、および発光層の平均T1値の変化を図3に示す。平均T1値は発光層の厚み方向に変化しており、正孔輸送層側の界面で最も低い値となる。
(比較例4)
比較例2の発光層を、以下の構成に変える以外は比較例2と同様にして比較例4の有機EL発光素子を作成した。発光層において、膜厚の方向に化合物EとCBPの濃度が変化する構成とした。化合物Aの濃度は15質量%とし、発光層全体で一定とした。化合物Eの濃度を陽極側から陰極側へ向かって15質量%から0質量%に減少させ、CBPの濃度を陽極側から陰極側へ向かって70質量%%から85質量%に増加させた。この化合物A、化合物E、およびCBPの発光層の濃度変化、および発光層の平均T1値の変化を図4に示す。平均T1値は発光層の厚み方向に変化しており、電子輸送層側の界面で最も低い値となる。
(比較例5)
比較例1の電子輸送層をBAlqから化合物Iに変更する以外は、比較例1と同様にして比較例5の有機EL発光素子を作成した。発光層は比較例1と同じ構成とした(図2)。
(比較例6)
比較例3の電子輸送層をBAlqから化合物Iに変更する以外は、比較例3と同様にして比較例6の有機EL発光素子を作成した。発光層は比較例3と同じ構成とした(図3)。
(比較例7)
比較例4の電子輸送層をBAlqから化合物Iに変更する以外は、比較例4と同様にして比較例7の有機EL発光素子を作成した。発光層は比較例4と同じ構成とした(図4)。
(比較例8)
比較例1の正孔輸送層を7nmのNPD、3nmの化合物Hの積層構成に変更し、電子輸送層をBAlqから化合物Iに変更する以外は、比較例1と同様にして比較例8の有機EL発光素子を作成した。発光層は比較例1と同じ構成とした(図2)。平均T1値は発光層全体で均一である。
(実施例1)
比較例1の発光層を、以下の構成に変える以外は比較例1と同様にして実施例1の有機EL発光素子を作成した。発光層において、膜厚の方向に化合物EとCBPの濃度が変化する構成とした。化合物Aの濃度は15質量%とし、発光層全体で一定とした。化合物Eの濃度を陽極側から発光層中央へ向かって15質量%から0質量%に減少させ、さらに発光層中央から陰極側へ0質量%から15質量%に増加させた。それに伴ってCBPの濃度を陽極側から発光層中央へ70質量%から85質量%に増加させ、さらに発光層中央から陰極側へ85質量%から70質量%へ減少させた。この化合物A、化合物E、およびCBPの発光層の濃度変化、および発光層の平均T1値の変化を図5に示す。平均T1値は発光層の厚み方向に変化しており、発光層中央付近で最も低い値となる。
(実施例2)
比較例1の発光層を、以下の構成に変える以外は比較例1と同様にして実施例2の有機EL発光素子を作成した。発光層において、膜厚の方向に化合物EとCBPの濃度が変化する構成とした。化合物Aの濃度は15質量%とし、発光層全体で一定とした。化合物Eの濃度を陽極側から発光層中央へ向かって30質量%から0質量%に減少させ、さらに発光層中央から陰極側へ0質量%から30質量%に増加させた。それに伴ってCBPの濃度を陽極側から発光層中央へ55質量%から85質量%に増加させ、さらに発光層中央から陰極側へ85質量%から55質量%へ減少させた。この化合物A、化合物E、およびCBPの発光層の濃度変化、および発光層の平均T1値の変化を図6に示す。平均T1値は発光層の厚み方向に変化しており、発光層中央付近で最も低い値となる。
(実施例3)
実施例1の正孔輸送層を7nmのNPD、3nmの化合物Hの積層構成に変更し、実施例1と同様にして実施例3の有機EL発光素子を作成した。発光層は実施例1と同じ構成とした(図5)。平均T1値は発光層の厚み方向に変化しており、発光層中央付近で最も低い値となる。
(実施例4)
比較例2の発光層を、以下の構成に変える以外は比較例2と同様にして実施例4の有機EL発光素子を作成した。発光層において、膜厚の方向に化合物EとCBPの濃度が変化する構成とした。化合物Aの濃度は15質量%とし、発光層全体で一定とした。化合物Eの濃度を陽極側から発光層中央へ向かって15質量%から0質量%に減少させ、さらに発光層中央から陰極側へ0質量%から30質量%に増加させた。それに伴ってCBPの濃度を陽極側から発光層中央へ70質量%から85質量%に増加させ、さらに発光層中央から陰極側へ85質量%から55質量%へ減少させた。この化合物A、化合物E、およびCBPの発光層の濃度変化、および発光層の平均T1値の変化を図7に示す。平均T1値は発光層の厚み方向に変化しており、発光層中央付近で最も低い値となり、電子輸送層側で最も大きくなる。
(実施例5)
実施例1の電子輸送層をBAlqから化合物Iに変更する以外は、実施例1と同様にして実施例3の有機EL発光素子を作成した。発光層は実施例1と同じ構成とした(図5)。平均T1値は発光層の厚み方向に変化しており、発光層中央付近で最も低い値となる。
(実施例6)
比較例5の発光層を、以下の構成に変える以外は比較例5と同様にして実施例6の有機EL発光素子を作成した。発光層において、膜厚の方向に化合物EとCBPの濃度が変化する構成とした。化合物Aの濃度は15質量%とし、発光層全体で一定とした。化合物Eの濃度を陽極側から発光層中央へ向かって30質量%から0質量%に減少させ、さらに発光層中央から陰極側へ0質量%から15質量%に増加させた。それに伴ってCBPの濃度を陽極側から発光層中央へ55質量%から85質量%に増加させ、さらに発光層中央から陰極側へ85質量%から70質量%へ減少させた。この化合物A、化合物E、およびCBPの発光層の濃度変化、および発光層の平均T1値の変化を図8に示す。平均T1値は発光層の厚み方向に変化しており、発光層中央付近で最も低い値となり、正孔輸送層側で最も平均T1値が大きくなる。
(実施例7)
比較例5の発光層を、以下の構成に変える以外は比較例5と同様にして実施例7の有機EL発光素子を作成した。発光層において、膜厚の方向に化合物Eと化合物Aの濃度が変化する構成とした。CBPの濃度は70質量%とし、発光層全体で一定とした。化合物Eの濃度を陽極側から発光層中央へ向かって15質量%から0質量%に減少させ、さらに発光層中央から陰極側へ0質量%から15質量%に増加させた。それに伴って化合物Aの濃度を陽極側から発光層中央へ15質量%から30質量%に増加させ、さらに発光層中央から陰極側へ30質量%から15質量%へ減少させた。この化合物A、化合物E、およびCBPの発光層の濃度変化、および発光層の平均T1値の変化を図9に示す。平均T1値は発光層の厚み方向に変化しており、発光層中央付近で最も低い値となる。
下記に比較例、実施例で用いた材料の構造をまとめて示す。
各化合物のT1エネルギーおよびりん光発光材料の発光ピーク波長を表1に、また、用いた材料の分子構造を示す。表1で、mCPはN,N’−ジカルバゾリル−1,3−ベンゼンであり、BAlqはアルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノラト)−4−フェニルフェノラトである。
比較例1〜8、および実施例1〜7で用いた正孔輸送層、発光層、電子輸送層の構成を表2に示す。
このようにして得られた緑色発光の有機EL発光素子を用いて下記の評価を行った。結果はまとめて表3に示す。
外部量子効率は、作製した発光素子をKEITHLEY製ソ−スメジャ−ユニット2400型を用いて、直流電流を発光素子に印加し発光させた。電流値0.25mA/cmで発光させ、その発光スペクトルと光量とをトプコン社製輝度計SR−3を用いて測定し、発光スペクトル、光量と測定時の電流から外部量子効率を計算した。
駆動耐久性は、KEITHLEY製ソ−スメジャ−ユニット2400型を用いて、発光輝度が2000cd/m(比較例9〜32、および実施例8〜28では360cd/m)となるように電流値を調節して定電流駆動を行い、トプコン社製輝度計SR−3を用いて輝度を測定し、輝度が初期の1/2になる時間を測定した。
なお、表3に記載の各層のT1エネルギーは、前記したように、有機層の濃度分布と各材料のT1エネルギーの値から平均T1エネルギーとして算出した。平均T1エネルギーは直接測定することはできないので、各有機材料の単独膜のT1エネルギーに、発光層のある厚み位置での各材料の成分比(質量%)を掛け、それらの和をとった値で表した。
実施例1〜7の発光層のT1エネルギーの左欄の数字は、陽極側の界面の発光層の平均T1エネルギーを表し、中央の欄の数字は発光層の中央のT1エネルギーを表し、右欄の数字は陰極側の界面の発光層のT1エネルギーである。
比較例1、2、5、および8は濃度一定なので、発光層の値を記載した。比較例3、4、6、および7においては発光層のT1エネルギーの欄で左欄の数字は、陽極側の界面の発光層のT1エネルギーを表し、また、右欄の数字は陰極側の界面の発光層のT1エネルギーを表す。
表3の結果から以下のことがわかる。
比較例1と実施例1、2とを比較すると、発光層が均一な平均T1エネルギーを持つ比較例1に比較して実施例1、2はいずれも高い発光効率と耐久性を両立できた。このとき発光層に隣接する材料はいずれの素子も同じ材料を用いていることから、発光層で生成した励起子が拡散する際に比較例1では隣接層に拡散して効率の低下を招いたのに対し、実施例では発光層中央に向かって異方的に拡散することで効率の低下を防止できたものと考えられる。
比較例2〜4と実施例3、4とを比較すると、比較例2〜4では比較例1に対して高T1値の正孔輸送層を用いたことで効率が改善したものの、エネルギーギャップの大きい正孔輸送材料の不安定性のためか、耐久性が全体的に低下した。それに対して実施例3、4では、比較例と同じ隣接層を用いても発光層中央に励起子を拡散させることで、励起子の散逸量が抑制されて効率が向上し、かつ、電荷がたまる正孔輸送層と発光層の界面で発生した励起子が発光層中央に向かって異方的に拡散するため電荷と励起子の集中による劣化が抑制されて耐久性が向上したものと考えられる。
比較例5〜8と実施例5〜7とを比較すると、比較例5〜7では比較例1に対して高T1値の電子輸送層を用いたことで効率が改善したものの、エネルギーギャップの大きい電子輸送材料の不安定性のためか、耐久性が全体的に低下した。比較例8では両側に高T1値の隣接層を用いたことで非常に高い効率が得られたが、隣接層の不安定性と界面への電荷と励起子の集中により耐久性が大幅に低下したものと考えられる。それに対して実施例5〜7では、比較例と同じ隣接層を用いても発光層中央に励起子を拡散させることで、励起子の散逸量が抑制されて効率が向上し、かつ、電荷がたまる正孔輸送層と発光層の界面で発生した励起子が発光層中央へ拡散するため電荷と励起子の集中による劣化が抑制されて耐久性が向上したものと考えられる。
(比較例9〜16、実施例8〜14)
比較例1〜8、および実施例1〜7におけるCBPをmCPに、化合物Aを化合物Bに、化合物Iを化合物Jにそれぞれ変更する以外は全て同様にして比較例9〜16、および実施例8〜14の有機EL発光素子をそれぞれ作成した。用いた正孔輸送層、発光層、電子輸送層の構成を表4に示す。また、各有機EL発光素子の発光層における、各有機材料の濃度分布および発光層の平均T1値を図10〜図17に示す。得られた比較例9〜16、および実施例8〜14の有機EL発光素子の量子効率と耐久性を評価した結果を表5に示す。
表5の結果から以下のことがわかる。
比較例9と実施例8、および9とを比較すると、発光層が均一な平均T1エネルギーを持つ比較例9に比較して実施例8、および9はいずれも高い発光効率と耐久性を両立できた。このとき発光層に隣接する材料はいずれの素子も同じ材料を用いていることを考慮すると、発光層で生成した励起子が拡散する際に比較例9では隣接層にも拡散して効率の低下を招いたのに対し、実施例では発光層中央に拡散することで効率の低下を防止できたものと考えられる。
比較例10〜12と実施例10、11とを比較すると、比較例10〜12では比較例9に対して高T1値の正孔輸送層を用いたことで効率が改善したものの、エネルギーギャップの大きい正孔輸送材料の不安定性のためか、耐久性が全体的に低下した。それに対して実施例10、11では、比較例と同じ隣接層を用いても発光層中央に励起子を拡散させることで、励起子の散逸量が抑制されて効率がさらに向上し、かつ、電荷がたまる正孔輸送層と発光層の界面で発生した励起子が発光層中央へ拡散するため電荷と励起子の集中による劣化が緩和されて耐久性が向上したものと考えられる。
比較例13〜16と実施例12〜14とを比較すると、比較例13〜15では比較例1に対して高T1値の電子輸送層を用いたことで効率が改善したものの、エネルギーギャップの大きい電子輸送材料の不安定性のためか、耐久性が全体的に低下した。比較例16では両側に高T1値の隣接層を用いたことで非常に高い効率が得られるが、隣接層の不安定性と界面への電荷と励起子の集中により耐久性が大幅に低下したものと考えられる。それに対して実施例12〜14では、比較例と同じ隣接層を用いても発光層中央に励起子を拡散させることで、励起子の散逸量が抑制されて効率が向上し、かつ、電荷がたまる正孔輸送層と発光層の界面で発生した励起子が発光層中央へ拡散するため電荷と励起子の集中による劣化が緩和されて耐久性が向上したものと考えられる。
(比較例17〜24、実施例15〜21)
比較例9〜16、および実施例8〜14におけるmCPを化合物Kに、化合物Bを化合物Cにそれぞれ変更する以外は全て同様にして比較例17〜24、および実施例15〜21の有機EL発光素子を作成した。用いた正孔輸送層、発光層、電子輸送層の構成を表6に示す。また、各有機EL発光素子の発光層における、各有機材料の濃度分布および発光層の平均T1値を図18〜図25に示す。得られた比較例17〜24、実施例15〜21の有機EL発光素子の量子効率と耐久性を評価した結果を表7に示す。
表7の結果から以下のことがわかる。
比較例17と実施例15、16とを比較すると、発光層が均一な平均T1エネルギーを持つ比較例17に比較して実施例15、16はいずれも高い発光効率と耐久性を両立できた。このとき発光層に隣接する材料はいずれの有機EL発光素子も同じ材料を用いていることを考慮すると、発光層で生成した励起子が拡散する際に比較例17では隣接層にも拡散して効率の低下を招いたのに対し、実施例では発光層中央に拡散することで効率の低下を防止できると考えられる。
比較例18〜20と実施例17、18とを比較すると、比較例18〜20では比較例17に対して高T1値の正孔輸送層を用いたことで効率が改善したものの、エネルギーギャップの大きい正孔輸送材料の不安定性のためか耐久性が全体的に低下したものと考えられる。それに対して、実施例17、18では、比較例と同じ隣接層を用いても発光層中央に励起子を拡散させることで、励起子の散逸量が抑制されて効率がさらに向上し、かつ、電荷がたまる正孔輸送層と発光層の界面で発生した励起子が発光層中央へ拡散するため電荷と励起子の集中による劣化が緩和されて耐久性が向上したものと考えられる。
比較例21〜24と実施例19〜21とを比較すると、比較例21〜23では比較例17に対して高T1値の電子輸送層を用いたことで効率が改善したものの、エネルギーギャップの大きい電子輸送材料の不安定性のためか、耐久性が全体的に低下した。比較例24では両側に高T1値の隣接層を用いたことで非常に高い効率が得られるが、隣接層の不安定性と界面への電荷と励起子の集中により耐久性が大幅に低下したものと考えられる。それに対して実施例19〜21では、比較例と同じ隣接層を用いても発光層中央に励起子を拡散させることで、励起子の散逸量が抑制されて効率が向上し、かつ、電荷がたまる正孔輸送層と発光層の界面で発生した励起子が発光層中央へ拡散するため電荷と励起子の集中による劣化が緩和されて耐久性が向上したものと考えられる。
(比較例25〜32、実施例22〜28)
比較例17〜24、実施例15〜21の化合物Kを化合物Lに、化合物Cを化合物Dに変更する以外は全て同様にして比較例25〜32、実施例22〜28の有機EL発光素子を作成した。用いた正孔輸送層、発光層、電子輸送層の構成を表8に示す。また、各有機EL発光素子の発光層における、各有機材料の濃度分布および発光層の平均T1値を図26〜図32に示す。得られた比較例25〜32、実施例22〜28の有機EL発光素子の量子効率と耐久性を評価した結果を表9に示す。
表9の結果から以下のことがわかる。
比較例25と実施例22、23とを比較すると、発光層が均一な平均T1エネルギーを持つ比較例25に比較して実施例22、23はいずれも高い発光効率と耐久性を両立できた。このとき発光層に隣接する材料はいずれの素子も同じ材料を用いていることを考慮すると、発光層で生成した励起子が拡散する際に比較例25では隣接層にも拡散して効率の低下を招いたのに対し、実施例では発光層中央に拡散することで効率の低下を防止できると考えられる。
比較例26〜28と実施例24、25とを比較すると、比較例26〜28では比較例25に対して高T1値の正孔輸送層を用いたことで効率が改善したものの、エネルギーギャップの大きい正孔輸送材料の不安定性のためか、耐久性が全体的に低下した。それに対して実施例24、25では、比較例と同じ隣接層を用いても発光層中央に励起子を拡散させることで、励起子の散逸量が抑制されて効率がさらに向上し、かつ、電荷がたまる正孔輸送層と発光層の界面で発生した励起子が発光層中央へ拡散するため電荷と励起子の集中による劣化が緩和されて耐久性が向上したものと考えられる。
比較例21〜24と実施例19〜21とを比較すると、比較例21〜23では比較例17に対して高T1値の電子輸送層を用いたことで効率が改善したものの、エネルギーギャップの大きい電子輸送材料の不安定性のためか耐久性が全体的に低下したものと考えられる。比較例24では両側に高T1値の隣接層を用いたことで非常に高い効率が得られるが、隣接層の不安定性と界面への電荷と励起子の集中により耐久性が大幅に低下したものと考えられる。それに対して実施例19〜21では、比較例と同じ隣接層を用いても発光層中央に励起子を拡散させることで、励起子の散逸量が抑制されて効率が向上し、かつ、電荷がたまる正孔輸送層と発光層の界面で発生した励起子が発光層中央へ拡散するため電荷と励起子の集中による劣化が緩和されて耐久性が向上したものと考えられる。
表3、5、7、および9の結果をあわせて考えると、本発明を用いた実施例はいずれも量子効率が高く、かつ、駆動耐久性が良好であることがわかる。
1 基板
2 陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層
6 電子輸送層
7 電子注入層
8 陰極
10 有機EL発光素子

Claims (8)

  1. 陽極及び陰極からなる一対の電極と、該電極間に発光層を含む少なくとも一層の有機層とを備え、該発光層が少なくともホスト化合物、りん光発光材料、および電気的に不活性な化合物を含み、発光層内における平均T1エネルギーが陽極側の界面、および陰極側の界面からの距離が大きくなるに従って減少し、前記発光層内における前記電気的に不活性な化合物の濃度が、陽極側の界面および陰極側の界面からの距離が大きくなるに従って減少する有機電界発光素子。
  2. 前記発光層内における平均T1エネルギーが、発光層の膜厚方向にエネルギー分布を有し、且つ陽極側の界面および陰極側の界面から離れた位置で最小となる請求項1に記載の有機電界発光素子。
  3. 前記発光層に隣接する陽極側の隣接層および陰極側の隣接層の少なくとも一方が、発光層に含まれる前記りん光発光材料のT1エネルギーよりも小さいT1エネルギーを有する材料を含有する請求項1または請求項2に記載の有機電界発光素子。
  4. 前記発光層に含まれる前記りん光発光材料が、発光層の膜厚方向に濃度分布を有し、該濃度分布が、陽極側の界面および陰極側の界面から離れた位置で最大となる請求項1から請求項のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  5. 前記発光層に含まれる前記りん光発光材料が、400nmから490nmに発光ピークを有する青色りん光発光材料である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  6. 前記電気的に不活性な化合物を用いて形成した単独膜が示すT1エネルギーが、前記発光層に含有されるりん光発光材料およびホスト化合物のそれぞれを用いて形成した単独膜が示すT1エネルギーよりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  7. 前記電気的に不活性な化合物が、アダマンタン構造を含む化合物である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
  8. 前記電気的に不活性な化合物が、Si連結系化合物である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の有機電界発光素子。
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