JP5254590B2 - 低分子量ノボラック樹脂、その製造方法およびそれを使用した熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents
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その解決手段の一つとして充填剤の使用量増加がある。充填剤量を多くすることにより成形品の線膨張係数の低減や吸湿率の低減、難燃性の向上が可能となるが、一方で充填量が多くなることにより配合物の流動性が低下し、成形性が悪くなるという問題が生じるため、樹脂成分の低粘度化が必要となる。
また、特許文献2には、ビフェノールとアリルクロライドとを水酸化カリウムの存在下で反応することにより、常温での粘度が数千mPa・sのアリル化ビフェノールを得ている。しかしながら、原料としてアリルクロライドの使用は塩素含有物質の発生を伴うため、地球環境に配慮するという観点でみると工業的に有利な方法であるとはいえない。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示される、オルソ位同士がメチレン結合で結合しているオルソ置換フェノール類の2核体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の面積比による含有率が50質量%以上で、かつ重量平均分子量と数平均分子量の分散度が1.5以下である低分子量ノボラック樹脂を提供する。
さらに、本発明は、エポキシ樹脂の硬化剤として前記低分子量ノボラック樹脂を使用した熱硬化性樹脂組成物を提供する。
一般式(1)で表される2核体の含有率は55質量%であると好ましく、MwとMnの分散度が1.4以下であると好ましい。
Rが示すアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基が好ましい。
また、本発明の低分子量ノボラック樹脂中に含まれる未反応フェノール類の含有率が1質量%以下であると、より高い効果が期待できることから好ましい。
この方法により、オルソ位同士がメチレン結合で結合しているオルソ置換フェノール類の2核体を主成分とする本発明の低分子量ノボラック樹脂が高収率で得られる。
オルソ置換フェノール類としては、例えば、オルソクレゾール、オルソエチルフェノール、オルソプロピルフェノール、オルソ−s−ブチルフェノール、オルソ−t−ブチルフェノール、オルソフェニルフェノール等が挙げられ、オルソクレゾール、オルソフェニルフェノールが好ましい。これらを単独もしくは2種以上を併用して使用することができる。
なお、この製造方法において、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド以外のアルデヒド類として、例えば、ベンズアルデヒド、フルフラール等を用いて得られる一般式(1)以外の成分を、本発明の低分子量ノボラック樹脂は含有していても良い。
この触媒を単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
また、弱酸性触媒の配合量は、フェノール類100質量部に対して、通常0.1〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.2〜5質量部の割合である。通常のノボラック樹脂を製造するときに使用する触媒として、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などがあるが、これらを使用すると反応系のpHが低くなり、その結果オルソ−オルソ以外の結合が生じて樹脂が高分子量化するため目的の樹脂が得られない。
有機溶媒の量としては、フェノール類100重量部に対して、1000質量部以下、好ましくは10〜100質量部程度、必要に応じて使用することができる。反応後は、必要に応じて水洗して残存触媒を除去しても良い。更に減圧蒸留または水蒸気蒸留を行って未反応物であるフェノール類を除去しても良い。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂の硬化剤として、本発明の低分子量ノボラック樹脂を使用したものである。
本発明の熱硬化性樹脂組成物に用いるエポキシ樹脂としては特に限定されず、公知のエポキシ樹脂が使用できる。エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、カテコール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等の二価のフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール変性型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型エポキシ樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型エポキシ樹脂、ビフェニル変性ノボラック型エポキシ樹脂等の三価以上のフェノール類から誘導されるエポキシ樹脂、有機リン化合物で変性されたエポキシ樹脂などが挙げられる。またこれらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を混合してもよい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、硬化反応を促進する目的で、硬化促進剤を適宜使用することもできる。硬化促進剤としては、特に限定されず公知のものを使用すれば良く、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられ、これらは単独でもしくは2種以上を併用して使用することができる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物には必要に応じて、充填剤、改質剤として使用される熱硬化性および熱可塑性樹脂、顔料、シランカップリング剤、離型剤等の種々の配合剤を目的に応じて添加することができる。
実施例1(低分子量ノボラック樹脂の製造)
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100部、酢酸亜鉛0.5部を仕込み、内温を130℃にして、37%ホルマリン64部を3時間かけて滴下した。反応中系内に水分が残らないよう、溜出物は全て系外に除去した。滴下終了後同温度で1時間反応した後数回水洗を行い触媒を除去した。次いで170℃、50mmHgの減圧下で水蒸気蒸留を行い未反応モノマーを除去し、GPCによるオルソ−オルソ(o−o’)結合の2核体の面積分率59%、重量平均分子量262、分散度1.2の低分子量オルソクレゾールノボラック樹脂を得た。この樹脂は結晶性を有しており、融点は112℃、溶融粘度(120℃)は1mPa・sであった。これらの結果を表1に示す。また、このノボラック樹脂のGPCチャートを図1に示す。
(1)GPC
カラム構成は昭和電工社製KF−801+KF−802+KF−802+KF−803(商品名)で行い、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し流量1ml/分で測定した。分子量はポリスチレン換算、面積分率は全ピーク面積中の百分率で算出した。
(2)融点
メトラー社製DSC20(商品名)を用いて窒素雰囲気中で測定した。
(3)軟化点
エレックス科学社製気相軟化点測定装置EX−719PD(商品名)を用いて昇温速度2.5℃/分で測定した。
(4)溶融粘度
リサーチ・イクウィップ社製ICI粘度計で、120℃で測定した。
実施例1において、触媒として、酢酸亜鉛0.5部の代わりに、ホウ酸1部を使用した以外は同様に行い、GPCによるオルソ−オルソ結合の2核体の面積分率64%、重量平均分子量210、分散度1.2の低分子量オルソクレゾールノボラック樹脂を得た。この樹脂は結晶性を有しており、融点は114℃、溶融粘度(120℃)は1mPa・sであった。これらの結果を表1に示す。
実施例1において、フェノール類として、オルソクレゾールの代わりにオルソフェニルフェノール100部、37%ホルマリンを41部使用した以外は同様に行い、オルソ−オルソ結合のGPCによる2核体の面積分率76%、重量平均分子量202、分散度1.2の低分子量オルソフェニルフェノールノボラック樹脂を得た。この樹脂は常温で半固形であり、溶融粘度(120℃)は1mPa・sであった。これらの結果を表1に示す。このノボラック樹脂のGPCチャートを図2に示す。
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、フェノール100部、37%ホルマリン30部、シュウ酸0.5部を仕込み100℃で5時間反応させた。次いで170℃、50mmHgの減圧下で水蒸気蒸留を行って未反応モノマーを除去し、GPCによるオルソ−オルソ結合の2核体の面積分率4%、重量平均分子量470、分散度1.4のフェノールノボラック樹脂を得た。この樹脂は常温で半固形であり、溶融粘度(120℃)は40mPa・sであった。これらの結果を表1に示す。
比較例1において、フェノール類として、フェノールの代わりに、オルソクレゾール100部、37%ホルマリンを64部使用した以外は同様に行い、GPCによるオルソ−オルソ結合の2核体の面積分率0.8%、重量平均分子量854、分散度1.6のオルソクレゾールノボラック樹脂を得た。この樹脂の軟化点は95℃、溶融粘度(120℃)は1000mPa・sであった。これらの結果を表1に示す。このノボラック樹脂のGPCチャートを図3に示す。
実施例1において、フェノール類としてオルソクレゾール95部およびメタクレゾール5部、37%ホルマリンを64部使用した以外は同様に行い、GPCによるオルソ−オルソ結合の2核体の面積分率45%、重量平均分子量370、分散度1.4のクレゾールノボラック樹脂を得た。この樹脂の軟化点は55℃、溶融粘度(120℃)は16mPa・sであった。これらの結果を表1に示す。
実施例1〜3で得られた低分子量ノボラック樹脂、比較例1〜3で得られたノボラック樹脂のそれぞれに、オルソクレゾール型エポキシ樹脂(エポキシ当量205)をフェノール性水酸基と当量になるように配合し、硬化促進剤のトリフェニルフォスフィンをエポキシ樹脂100部に対して1部、さらに充填剤として溶融シリカ粉末を配合物全重量の70%になるように配合した。これらを100℃の熱ロールにて溶融混練して熱硬化性樹脂組成物を得た。
得られた熱硬化性樹脂組成物を金型にて170℃、15分、圧力30kg/cm2で加圧成形する。その後、170℃で3.5時間アフターキュアを行って、テストピースを作製した。これらを前記の順に対応させて実施例4〜6、比較例4〜6とした。得られたテストピースについて、下記方法で特性を評価した結果を表2に示す。
(5)曲げ強度
JIS K−6911に準拠した方法で測定した。
(6)ガラス転移温度と熱膨張係数の評価
実施例4〜6、比較例4〜6で得られたテストピースを用いて、耐熱性の評価としてSII社製SSC/5200(商品名)を使用してTMA法にてガラス転移温度及び線膨張係数を測定した。昇温速度は10℃/分で行った。
実施例1〜3で得られた低分子量ノボラック樹脂、比較例1〜3で得られたノボラック樹脂のそれぞれにオルソクレゾール型エポキシ樹脂(エポキシ当量205)をフェノール性水酸基と当量になるように配合し、硬化促進剤のトリフェニルフォスフィンをエポキシ樹脂100部に対して1部、さらに充填剤として溶融シリカ粉末を配合物全重量の85%になるように配合した。これらを100℃の熱ロールにて溶融混練して熱硬化性樹脂組成物を得た。これらを前記の順に対応させて実施例7〜9、比較例7〜9とした。
得られた熱硬化性樹脂組成物について、充填剤と樹脂が均一に分散しているかどうかを目視にて外観を観察した。実施例7〜9のように充填剤と樹脂が十分に混合している場合は外観色が均一であって手触りが滑らかであるが、比較例7〜9のように、混合が不十分の場合は樹脂が不均一な斑模様となり、かつ樹脂と混合されていない充填剤が粉末のまま存在するため、手触りがパサパサしたものとなる。特性評価試験の結果を表3に示す。
本発明の低分子量ノボラック樹脂を半導体封止材用として使用した場合、充填剤量を多くすることにより成形品の線膨張係数の低減や吸湿率の低減、難燃性の向上が可能となる。また、その硬化物は、良好な耐熱性、耐湿性、機械的特性、電気絶縁性、金属との接着性などを有し、従って、高信頼性を必要とする電子材料用途に非常に有効である。具体的には電子部品の封止材用樹脂組成物、プリント基板用樹脂組成物、プリント基板および樹脂付き銅箔に使用する層間絶縁材料用樹脂組成物、レジストインキ、導電ペースト(導電性充填剤含有)、塗料、接着剤、複合材料等に利用可能である。
Claims (6)
- 前記ノボラック樹脂中に含まれる未反応フェノール類の含有率が1質量%以下である請求項1に記載のノボラック樹脂。
- オルソ置換フェノール類とホルムアルデヒドおよび/またはパラホルムアルデヒドとを、二価金属の酢酸塩類、ホウ酸、及び二価金属のホウ酸塩からなる群から選択された少なくとも1種の触媒存在下、系中の水分を除去しつつ反応させる請求項1または2に記載のノボラック樹脂の製造方法。
- エポキシ樹脂の硬化剤として請求項1または2に記載のノボラック樹脂を使用した熱硬化性樹脂組成物。
- 固形分でノボラック樹脂1.0当量に対し、エポキシ樹脂が0.8〜1.2当量である請求項4に記載の熱硬化性樹脂組成物。
- 充填剤を含む請求項4または5に記載の熱硬化性樹脂組成物。
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