JP5253769B2 - 樹脂成形品及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、自動車エンジンの吸気系部品等に好適に用いられる樹脂成形品及びその製造方法に関する。
エアクリーナやレゾネータといった自動車エンジンの吸気系部品に課される普遍の要求特性として、低比重で軽量であること、高強度であること、吸音性に優れること等が挙げられる。また、エンジンルームのコンパクト化や、エンジンの出力アップによる環境温度上昇への対応として、高い耐熱性を備えることも求められている。
このような自動車エンジンの吸気系部品に用いられる材料として、種々の高分子材料の検討が進められている。例えば、特許文献1では、溶媒に対する溶解性の異なる複数成分からなる高分子材料を混練成形後、少なくとも1成分の良溶媒中に浸漬し、当該成分を溶解除去してなる多孔質体を主体とする音響振動板20が開示されている(図5参照)。図5に示されるように、この音響振動板20は、ポリマー相21中に空孔22が分散形成されたものである。この音響振動板20によれば、密度を理論的計算に基づいて決定することができ、例えば発泡剤を用いたものに比して、設計や生産性の点で効果的で優位性が高いとされている。
また、特許文献2では、互いに非相溶であり、発泡剤に対する溶解度の異なる2種以上の樹脂組成物が相分離状態で混合している樹脂混合物を、発泡剤により発泡させてなることを特徴とする発泡体30が開示されている(図6参照)。図6に示されるように、この発泡体30は、第一ポリマー相31中に第二ポリマー粒子33が分散形成され、第二ポリマー粒子33中にのみ空孔32が形成されたものである。この発泡体30によれば、断熱性、遮音性、吸音性のいずれにも優れ、製造が容易で特に連続製造が可能であり、コスト的にも優れるとされている。
また、特許文献3では、(A)ポリアミド系樹脂、(B)ポリオレフィン系重合体、及び(C)相溶化剤からなる樹脂組成物の製造方法であって、(A)成分と(C)成分の混合物の溶融粘度が、同一温度、同一せん断速度、同一混練機での(B)成分の溶融粘度の1/3以下の条件で(A)〜(C)成分を混練することにより、(A)成分がマトリクス相41、(B)成分がドメイン42となることを特徴とする樹脂組成物40の製造方法が開示されている(図7参照)。この製造方法によれば、樹脂の優れた機械的強度、熱的性質、成形加工性、及び経済性を保持しつつ、樹脂組成物表面の化学的特性を著しく改善できるとされている。また、接着性及び反応性を飛躍的に向上させることができ、塗装性も著しく改良できるとされている。
特開平9−93691号公報 特開2002−69222号公報 特開平7−18088号公報
しかしながら、特許文献1では、通常行われる射出成形工程に加え、ポリマー溶出工程が必須となるため、工程が煩雑化する。また、溶出されるポリマーの分散状態が二元連続的な網目構造である必要があるところ、二元連続構造では強度に劣るため、構造用材料には不向きである。
また、特許文献2では、ポリマーに対する発泡剤の溶解度の相違により、1種のポリマーの内部のみを発泡させる技術であるところ、箱形状等の場合には全体を均一に発泡させて軽量化するためには、コアバック等の技術を併用する必要がある。
また、特許文献3では、(A)ポリアミド系樹脂と(B)ポリオレフィン系重合体の界面密着性が良好であるため、成形体内部に空孔が形成されることがなく、十分な低比重化、軽量化は期待できない。成形体の強度も、(A)成分自体が有する強度と(B)成分自体が有する強度との平均にすぎない。さらには、マトリクス相と分散相の溶融粘度により配合を規定しているところ、配合の体積分率や補強フィラーの存在が海島構造を得るのに必要な溶融粘度条件に影響を与えるため、文献に示されている条件では、自動車エンジンの吸気系部品に要求される材料特性を満たすことができない。
ところで、従来一般的な軽量化技術としては、発泡剤を利用した発泡射出成形技術や、バルーン(中空粒子又は低比重粒子)を利用した技術が挙げられる。しかしながら、前者の発泡射出成形技術では、全面発泡は不可能で無発泡の面が存在するため、−5%程度の低比重化効果しか得られない。また、特殊な設備を要する。一方、後者のバルーンを利用した技術では、樹脂中にガラスバルーンや有機バルーン等の低比重バルーン又は中空バルーンを添加して混練するものであるため、混練や射出成形によりバルーンが破壊されやすく、低比重化効果が得られにくい。例えば、ガラスバルーンによる低比重化効果は−6%程度であり、有機バルーンでは低比重化効果はほとんど得られない。
従って、自動車エンジンの吸気系部品等に要求される材料特性を満たすためには、発泡等による中空組織の形成を通じた低比重化、軽量化が有効であるものの、従来の技術では部分発泡となり低比重化の取り分が小さい結果、十分な低比重化効果が得られないのが現状である。このため、十分な低比重化、軽量化を実現すべく、新発想による中空化技術の開発が求められている。
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動車エンジンの吸気系部品等に要求される材料特性を満たすべく、高強度、高耐熱性を有し、吸音性に優れるとともに、十分な低比重化、軽量化を実現できる樹脂成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、ポリアミド樹脂を主成分とするマトリクス相中に分散形成された空孔内に、ポリオレフィン樹脂を主成分とする分散粒子が収容された構造を有する樹脂成形品によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) ポリアミド樹脂を主成分とするマトリクス相と、このマトリクス相中に分散形成された空孔と、を備える樹脂成形品であって、前記空孔内に、ポリオレフィン樹脂を主成分とする分散粒子が収容されており、前記樹脂成形品中における前記ポリオレフィン樹脂の含有量は、25質量%〜40質量%であり、前記マトリクス相の融点が、前記分散粒子の融点よりも高く、且つ、前記分散粒子の溶融状態と固化状態の比容積差が、前記マトリクス相の溶融状態と固化状態の比容積差よりも大きく、前記マトリクス相と前記分散粒子の、同一温度且つ同一せん断速度における溶融粘度をそれぞれηm、ηd、体積分率をそれぞれφm、φdとしたときに、ηd/ηm<0.8、且つ、φd/φm<1.0の関係式を満たすことを特徴とする樹脂成形品
(2) 前記分散粒子が、前記マトリクス相に対して独立して移動可能であることを特徴とする(1)記載の樹脂組成物。
(3) ポリアミド樹脂に、相溶化剤及び補強フィラーを添加して一次混練した後に、前記ポリアミド樹脂に対して非相溶性のポリオレフィン樹脂を、樹脂成形品中における前記ポリオレフィン樹脂の含有量が25質量%〜40質量%となるようにさらに添加して二次混練する混練工程を備え、前記ポリアミド樹脂として、前記ポリオレフィン樹脂の融点よりも高い融点を有し、且つ、溶融状態と固化状態の比容積差が前記ポリオレフィン樹脂の溶融状態と固化状態の比容積差よりも小さいポリアミド樹脂を用いるとともに、前記ポリアミド樹脂と前記ポリオレフィン樹脂の、同一温度且つ同一せん断速度における溶融粘度をそれぞれηm、ηd、体積分率をそれぞれφm、φdとしたときに、ηd/ηm<0.8、且つ、φd/φm<1.0の関係式を満たすようなポリアミド樹脂及びポリオレフィン樹脂を用いることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
本発明に係る樹脂成形品は、ポリアミド樹脂を主成分とするマトリクス相中に分散形成された空孔内に、ポリオレフィン樹脂を主成分とする分散粒子が収容された構造を備えることから、次のような効果が得られる。第一に、マトリクス相を構成する材料としてポリアミド樹脂が用いられているため、ポリアミド樹脂の利点である高強度、高弾性率、高耐熱性を有する樹脂成形品が得られる。第二に、マトリクス相と分散粒子との間に空隙を有するため、低比重化、軽量化が可能であるとともに、断熱性、吸音性に優れた樹脂成形品が得られる。第三に、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを混練後、射出成形することにより成形可能であることから、製造が容易でコスト的にも有利である。
従って、本発明によれば、自動車エンジンの吸気系部品に適用される樹脂材料に必要とされる高強度、高耐熱性、優れた吸音性能をはじめ、低比重化、軽量化のニーズにも対応できる樹脂成形品、及びその製造方法を提供できる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
<樹脂成形品
本発明に係る樹脂成形品は、ポリアミド樹脂を主成分とするマトリクス相と、このマトリクス相中に分散形成された空孔と、を備え、空孔内に、ポリオレフィン樹脂を主成分とする分散粒子が収容されていることを特徴とする。即ち、マトリクス相(ポリアミド樹脂)と分散粒子(ポリオレフィン樹脂)との間に空隙が形成されていることを特徴とする。
本発明に係る樹脂成形品は、分散粒子(ポリオレフィン樹脂)が、マトリクス相(ポリアミド樹脂)に対して独立して移動可能な、いわゆる鈴構造を有することが好ましい。このような鈴構造を有する樹脂成形品によれば、共振現象を利用して特に優れた吸音性が得られる。
本発明に係る樹脂成形品は、樹脂の成形収縮現象を利用することにより形成される。ここで、成形収縮現象とは、金型に充填された溶融樹脂が冷却固化する際に起こる収縮現象である。また、この収縮現象は、溶融状態にある樹脂と固化状態にある樹脂との比容積が異なる結果、生じる現象である。本発明では、この成形収縮現象を、互いに相溶しないポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを混合した組成物に適用したものである。
本発明に係る樹脂成形品1の形成過程を、図1を参照しながら説明する。先ず、互いに非相溶であるポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂とを混合した後に溶融させ、この溶融樹脂10を金型に充填する(図1の(A))。充填後、徐々に冷却を進めていくと、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂との相分離が起こり、ポリアミド樹脂を主成分とするマトリクス相11aが形成されるとともに、マトリクス相11a中にポリオレフィン樹脂を主成分とする分散粒子12aが形成される(図1の(B))。
ここで、マトリクス相11aの融点が分散粒子12aの融点よりも高い場合には、さらに冷却を進めていくと、より高い融点を有するマトリクス相11aの収縮・固化現象が先に生じる(図1の(C))。そして、さらに冷却が進むと、融点の低い分散粒子12bの収縮・固化現象が続いて生じる結果、マトリクス相11cと分散粒子12cとの間に空隙13が形成される(図1の(D))。これにより、マトリクス相11cと分散粒子12cとの間に空隙13が形成された樹脂成形品1が得られる。
以上のようなことから、本発明に係る樹脂成形品1では、マトリクス相11cの融点が分散粒子12cの融点よりも高く、且つ、分散粒子12cの溶融状態と固化状態の比容積差が、マトリクス相11cの溶融状態と固化状態の比容積差よりも大きいことが好ましい。このような条件を満たすときに、マトリクス相11cと分散粒子12cとの間に空隙13が効率良く形成され、十分な低比重化、軽量化が実現できるとともに、より優れた吸音性、断熱性を有する樹脂成形品1が得られる。
ここで、マトリクス相11cの融点が分散粒子12cの融点よりも高く、且つ、分散粒子12cの溶融状態と固化状態の比容積差が、マトリクス相11cの溶融状態と固化状態の比容積差よりも大きい場合において、マトリクス相11cと分散粒子12cそれぞれの温度と比容積との関係の一例を図2に示す。図2は、マトリクス相としてポリアミド樹脂PA66(東レ製「アミランCM3001−N」)を用い、分散粒子としてポリプロピレン樹脂PP(プライムポリマー製「プライムポリプロ J704UG」)を用いた場合の温度と比容積との関係を示す図である。図2に示されるように、温度が低くなると、融点の高いマトリクス相11cが先に収縮・固化して比容積が小さくなり、次いで、より融点の低い分散粒子12cが収縮・固化して比容積が小さくなることが分かる。
また、図2における分散粒子12cの比容積とマトリクス相11cの比容積との差が、マトリクス相11cと分散粒子12cとの間に形成される空隙13の容積に相当する。このことから、分散粒子12cの溶融状態と固化状態の比容積差を、マトリクス相11cの溶融状態と固化状態の比容積差よりも大きいものとした場合に、より大きな容積の空隙の形成が可能となり、好ましいのが分かる。
また、本発明に係る樹脂成形品は、マトリクス相11cと分散粒子12cの、同一温度且つ同一せん断速度における溶融粘度をそれぞれηm、ηd、体積分率をそれぞれφm、φdとしたときに、ηd/ηm<0.8、且つ、φd/φm<1.0の関係式を満たすことが好ましい。この関係式を満たすときに、上述したようないわゆる鈴構造を有する樹脂成形品が得られる。
[ポリアミド樹脂]
マトリクス相11cの主成分であるポリアミド樹脂としては、分散粒子12cの主成分であるポリオレフィン樹脂に対して非相溶性であれば特に限定されず、従来公知のポリアミド樹脂を用いることができる。好ましくは、分散粒子12cの主成分であるポリオレフィン樹脂よりも高い融点を有し、且つ、その溶融状態と固化状態の比容積差が、分散粒子12cの主成分であるポリオレフィン樹脂の溶融状態と固化状態の比容積差よりも小さいポリアミド樹脂である。さらに好ましくは、マトリクス相11cの主成分であるポリアミド樹脂と分散粒子12cの主成分であるポリオレフィン樹脂の、同一温度且つ同一せん断速度における溶融粘度をそれぞれηm、ηd、体積分率をそれぞれφm、φdとしたときに、ηd/ηm<0.8、且つ、φd/φm<1.0の関係式を満たすものである。
ポリアミド樹脂の具体例としては、ジアミンとジカルボン酸との重縮合、ω−アミノ酸の自己縮合、ラクタム類の開環重合等により得られるものが挙げられる。このようなポリアミド系樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン1212等の脂肪族ナイロン、及びナイロンMXD6等の、一部又は全部が芳香族環からなるナイロン、非晶質ナイロンが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
[ポリオレフィン樹脂]
分散粒子12cの主成分であるポリオレフィン樹脂としては、マトリクス相11cの主成分であるポリアミド樹脂に対して非相溶性であれば特に限定されず、従来公知のポリオレフィン樹脂を用いることができる。好ましくは、マトリクス相11cの主成分であるポリアミド樹脂よりも低い融点を有し、且つ、その溶融状態と固化状態の比容積差が、マトリクス相11cの主成分であるポリアミド樹脂の溶融状態と固化状態の比容積差よりも大きいポリオレフィン樹脂である。さらに好ましくは、マトリクス相11cの主成分であるポリアミド樹脂と分散粒子12cの主成分であるポリオレフィン樹脂の、同一温度且つ同一せん断速度における溶融粘度をそれぞれηm、ηd、体積分率をそれぞれφm、φdとしたときに、ηd/ηm<0.8、且つ、φd/φm<1.0の関係式を満たすものである。
ポリオレフィン樹脂の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン重合体、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンの相互共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン・カルボン酸不飽和エステル共重合体等のエチレンと極性基モノマーとの共重合体、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1共重合体ゴム等のオレフィン系ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレンビニルエステル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体等のエチレン−α、β−カルボン酸又はその誘導体との共重合体等のエチレン系(共)重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
[相溶化剤、補強フィラー]
なお、マトリクス相11c中には、主成分であるポリアミド樹脂の他、相溶化剤や補強フィラーが含まれることが好ましい。相溶化剤の作用により、本来的に非相溶であるポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂との混合が容易となる結果、ポリオレフィン樹脂を主成分とする分散粒子12cが収容された空孔を、マトリクス相11c全体に均一に分散形成することが可能となる。また、補強フィラーの作用により、より高強度な樹脂成形品1が得られる。
上記相溶化剤としては、本来的に非相溶であるポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂との混合を容易ならしめるものであれば特に限定されず、従来公知の相溶化剤を用いることができる。具体的には、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、酸無水物、酸ハロゲン化物等のカルボン酸又はその誘導体、ケトン、アルデヒド、ラクトン、ラクタム等のカルボニル基又はそれらの誘導体を含むモノマー、エポキシ含有モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、環状イミノエーテル基含有モノマー又はその誘導体等の反応性モノマーとα−オレフィンとの共重合体、ポリオレフィン系重合体を前記反応性モノマーでグラフト変性した組成物、マクロマー系相溶化剤、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等を用いることができる。これらを単独で用いてもよく、複数を併用してもよい。
上記補強フィラーとしては、樹脂成形品1の強度を高めることができるものであれば特に限定されず、従来公知の補強フィラーを用いることができる。有機、無機を問わず、形状も粉粒状、鱗片状、針状、球状、中空状、繊維状いずれのものでも用いることができる。具体的には、マイカ、グラファイト、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレン、フェノール繊維、アラミド繊維、モンモリロナイト、タルク、板状アルミナ、各種ウィスカー等を用いることができる。
<製造方法>
本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、ポリアミド樹脂に、相溶化剤及び補強フィラーを添加して一次混練した後に、ポリアミド樹脂に対して非相溶性のポリオレフィン樹脂をさらに添加して二次混練する混練工程を備える。また、ポリアミド樹脂として、ポリオレフィン樹脂の融点よりも高い融点を有し、且つポリオレフィン樹脂の溶融状態と固化状態の比容積差よりも小さい比容積差を有するポリアミド樹脂を用いることを特徴とする。この製造方法によれば、ポリアミド樹脂を主成分とするマトリクス相中に分散形成された空孔内に、ポリオレフィン樹脂を主成分とする分散粒子が収容された構造を有する樹脂成形品が得られる。
一次混練及び二次混練いずれも、混練の方法は特に限定されず、従来公知の混練機が用いられ、溶融混練が行われる。溶融混練する際の温度は、用いる樹脂に応じて適宜設定される。また、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂との配合比については、要求特性に応じて適宜設定される。好ましくは、樹脂成形品中におけるポリオレフィン樹脂の添加量が25質量%〜40質量%となるように配合される。相溶化剤及び補強フィラーの配合量についても同様であり、要求特性に応じて適宜設定される。
本発明に係る樹脂成形品の製造方法では、ポリアミド樹脂とポリオレフィン樹脂の、同一温度且つ同一せん断速度における溶融粘度をそれぞれηm、ηd、体積分率をそれぞれφm、φdとしたときに、ηd/ηm<0.8、且つ、φd/φm<1.0の関係式を満たすようなポリアミド樹脂及びポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。これにより、上述したような鈴構造を有する樹脂成形品が得られ、十分な低比重化、軽量化が可能であるとともに、より優れた吸音性能が得られる。
なお、本発明は、上述した説明に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。また、本発明は、自動車エンジンの吸気系部品に限定されず、同様の特性が要求される様々な分野への適用が可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、添加剤の添加等、細部の構成を適宜、変更することができる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<実施例1〜7、9〜11及び13〜15、比較例1〜10、参考例1及び2
表1〜4に示される配合に従って原料を配合したうえで、一次混練、二次混練を実施した後、射出成形することにより試験片を得た。なお、混練、射出成形、溶融粘度測定、比重測定、曲げ弾性率の測定、吸音率測定、組織観察、比剛性の各条件は以下の通りとした。
[混練]
混練は、ベルストルフ社製の二軸混練押出機ZE40A(φ43mm、L/D=40)を用い、一次混練、二次混練ともに、温度270℃、スクリュー回転数150rpm、吐出量4kg/hの条件で行った。具体的には、表1〜4に示される配合に従って、ポリアミド樹脂に相溶化剤及び補強フィラーを添加して1次混練することにより得られた樹脂成形品に、ポリオレフィン樹脂を添加して2次混練することにより、最終的な樹脂成形品を得た。
[射出成形]
射出成形は、クロックナー社製の射出成形機F40を用いて行った。具体的には、ASTM D790曲げ試験用の試験片(100mmφ×0.8t円板)を、射出成形により得た。
[溶融粘度測定]
溶融粘度の測定は、東洋精機製作所製のキャピログラフ ID PMD−Cを用い、測定温度を270℃、せん断速度を6.08sec〜12160secとして行った。
[比重測定]
比重の測定は、ミラージュ貿易(株)製の電子比重計SD−120Lを用い、アルキメデス式で行った。
[曲げ弾性率測定]
曲げ弾性率の測定は、インストロン社製のINSTRON 5582型を用いて行った。測定方法は、ASTM D790に準拠して、23℃の条件下で行った。
[吸音率測定]
吸音率の測定は、Bruel&Kjaer社製の垂直入射音測定装置を用い、測定サンプルの大きさをφ100×4mmtとして行った。
[組織観察]
組織観察は、オリンパス社製の偏光顕微鏡BX60を用いて行った。
[比剛性]
下記の数式(1)で表される膜面共振周波数理論式において、膜面の重量が板厚と比重とに比例するという下記の数式(2)で表される関係式を利用することにより、下記数式(3)で表されるような関係式が導出される。
Figure 0005253769
[上記数式において、fは周波数、Eはエネルギー、ρは比重、tは板厚、Wは膜面の重量を表す。]
上記数式(3)におけるE/ρは比剛性と呼ばれる。比剛性は軽量化の指標(構造効率指数)とされており、値が大きいほど軽量化取り分が大きいとされる。比剛性の値は、曲げ弾性率と比重の測定結果より算出した。
[結果]
測定結果を表1〜4に示す。なお、表中に記載されているドメインは、ポリオレフィン樹脂を主成分とする分散粒子を意味する。
Figure 0005253769
Figure 0005253769
Figure 0005253769
Figure 0005253769
光学顕微鏡による組織構造の観察を行った結果、表1〜4に示される通り、実施例全てにおいて鈴構造が形成されていることが確認された。マトリクス相中に分散形成された空孔の径は15μm〜150μmであり、内包されている分散粒子の径は10μm〜100μmであった。一方、いずれの比較例においても、鈴構造の形成は確認されなかった。この観察結果から、鈴構造を有する本実施例の樹脂成形品は、比較例に比して吸音特性に優れることが分かった。
また、実施例は、比較例に比して、全体的に比重が若干低い傾向にあることが確認された。一方、曲げ弾性率については、比較例に比して実施例の方が明らかに高い値であることが確認され、高弾性率であることが確認された。
実施例及び比較例の測定結果に基づいて、溶融粘度比ηd/ηmと、体積比φd/φmとの関係をプロットしたものを図3に示す。図3に示されるように、実施例はいずれも、ηd/ηm<0.8、且つ、φd/φm<1.0の範囲にあるのに対して、比較例はこれらの関係式のいずれかを満たしておらず、これらの関係式を満たす場合に鈴構造が形成されることが確認された。例えば、比較例1、2、及び7では、無水マレイン酸変性のPPを用いているため、ポリアミド樹脂との相溶性が良好となる結果、界面の分離が進まなかったことが原因と考えられた。
比剛性(E/ρ)の値を比較すると、鈴構造を有する本実施例の樹脂成形品の方が、鈴構造を有さない比較例の樹脂成形品よりも大きな値であった。比剛性は軽量化の指標(構造効率指数)とされており、値が大きいほど軽量化取り分が大きいとされている。このため、比剛性の値からも、本実施例の樹脂成形品は比較例に比して軽量であることが分かった。なお、本実施例の樹脂成形品の比剛性は、一般的なガラス強化ナイロンと比較しても高い比剛性を有している。
実施例1〜3、比較例1及び2の吸音率測定結果に基づいて、周波数と吸音率との関係をプロットしたものを図4に示す。図4に示される通り、実施例1〜3では、1500Hz以下の周波数領域において、吸音率の極大部が確認された。これに対して、比較例1及び2では、吸音率の極大部は確認されなかった。一般に、自動車エンジンの吸気系部品では、500Hz以下の低周波数領域については、レゾネータ等のデバイスにより消音し、500Hz〜1500Hzの高周波数領域については、吸気系管長により減衰させている。この点、本実施例では、700Hz〜1200Hz付近に吸音率の極大部が存在することから、本実施例の樹脂成形品によれば、吸気系部品のコンパクト化、ひいては材料の軽量化が可能である。
本発明に係る樹脂成形品の形成過程を説明するための図である。 マトリクス相及び分散粒子の温度と比容積との関係の一例を示す図である。 溶融粘度比ηd/ηmと体積比φd/φmとの関係を示す図である。 周波数と吸音率との関係を示す図である。 特許文献1に開示されている樹脂成形品の模式図である。 特許文献2に開示されている樹脂成形品の模式図である。 特許文献3に開示されている樹脂成形品の模式図である。
1 樹脂成形品
10、10a、10b 溶融樹脂
11a、11b、11c マトリクス相
12a、12b、12c 分散粒子
13 空隙

Claims (3)

  1. ポリアミド樹脂を主成分とするマトリクス相と、このマトリクス相中に分散形成された空孔と、を備える樹脂成形品であって、
    前記空孔内に、ポリオレフィン樹脂を主成分とする分散粒子が収容されており、
    前記樹脂成形品中における前記ポリオレフィン樹脂の含有量は、25質量%〜40質量%であり、
    前記マトリクス相の融点が、前記分散粒子の融点よりも高く、且つ、前記分散粒子の溶融状態と固化状態の比容積差が、前記マトリクス相の溶融状態と固化状態の比容積差よりも大きく、
    前記マトリクス相と前記分散粒子の、同一温度且つ同一せん断速度における溶融粘度をそれぞれηm、ηd、体積分率をそれぞれφm、φdとしたときに、ηd/ηm<0.8、且つ、φd/φm<1.0の関係式を満たすことを特徴とする樹脂成形品
  2. 前記分散粒子が、前記マトリクス相に対して独立して移動可能であることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形品
  3. ポリアミド樹脂に、相溶化剤及び補強フィラーを添加して一次混練した後に、前記ポリアミド樹脂に対して非相溶性のポリオレフィン樹脂を、樹脂成形品中における前記ポリオレフィン樹脂の含有量が25質量%〜40質量%となるようにさらに添加して二次混練する混練工程を備え、
    前記ポリアミド樹脂として、前記ポリオレフィン樹脂の融点よりも高い融点を有し、且つ、溶融状態と固化状態の比容積差が前記ポリオレフィン樹脂の溶融状態と固化状態の比容積差よりも小さいポリアミド樹脂を用いるとともに、
    前記ポリアミド樹脂と前記ポリオレフィン樹脂の、同一温度且つ同一せん断速度における溶融粘度をそれぞれηm、ηd、体積分率をそれぞれφm、φdとしたときに、ηd/ηm<0.8、且つ、φd/φm<1.0の関係式を満たすようなポリアミド樹脂及びポリオレフィン樹脂を用いることを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
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