JP5251427B2 - 金属板材の板厚制御装置及び塑性係数推定用関数設定方法 - Google Patents
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Description
he=S+α×(P/M)・・・(式1)
して、ロール開度SをΔS修正するよう、圧下制御装置11に指令を与え、圧下モータ1
2を駆動する(圧下モータ12の伝達関数T(s)は、図3のように、一次遅れと積分とにより表されることが多い)。ロール開度SをΔS修正することは、図6において、ミル
ストレッチ曲線と塑性曲線との交点を点601から点602へ移動させることに相当し、これにより、出側板厚hを目標出側板厚hoに制御することができる。ここで、Qは塑性係数と呼ばれ、圧延荷重Pの変化量に対する板厚の変化量を表す係数であり、交点近傍での塑性曲線の傾きである。
ΔS=−{(Q+M)/ M}×Δh・・・(式2)
Q=(P2−P1)/(h1―h2)・・・(式3)
p=X(H,h,μ,σb,σf,k,R')・・・(式4)
k=Ak×{ln(Ho/h)}^Bk・・・(式5)
R'=[1+{Co/(H−h)}×p]×R・・・(式6)
塑性係数Qを圧延理論式から計算する方法は、金属板材の出側板厚がh1とh2の2種類の圧延条件において、それぞれの線荷重p1とp2を、前記圧延理論式を用いて計算し、式7から塑性係数Qを計算する手法である。ここで、Wは金属板材7の板幅である。
Q={(p2−p1)/(h1−h2)}×W・・・(式7)
式6で計算される扁平ロール半径R'が過大になるのは、式6の分母である入側板厚Hと出側板厚hとの差(H−h)が小さい場合である。通常、出側板厚hが小さければ、入側板厚Hも小さく、その差異(H−h)も小さくなるため、出側板厚hが小さいときには、扁平ロール半径R'が過大になると言っても良い。
図7は、原板板厚HoがHo=6(mm)、変形抵抗式(式5)の定数がAk=80(kg/mm2)、Bk=0.2の場合に、出側板厚hをh=0.5〜3.2(mm)まで変更し、圧延理論式から計算した塑性係数Qを板幅Wで割り、単位幅当たりの塑性係数q(以下、線塑性係数と記載する)を求め、プロットした図であるが、出側板厚hが薄くなると、線塑性係数qは急激に上昇している。この現象は、特許文献1に記載されているように、真のワークロール2の扁平後の形状が円弧にはならず、式6で計算される扁平ロール半径R'の形状とのずれが大きく、このため、圧延理論式では正しい塑性係数が計算できないからである。
このため、もし、過大な塑性係数QでゲージメータAGCの処理を実施した場合、式2から判るように、小さな板厚偏差Δhでも、過大にロール開度Sを修正することになり、
出側板厚の精度を悪化させるだけではなく、最悪の場合、金属板材7の入側張力σbがゼロになり、絞りと呼ばれる、弛んだ金属板材7が圧延機1に折り重なって圧延されてしまう通板トラブルや、入側張力σbが過大になり、金属板材7が破断する通板トラブルを発生させてしまう。
塑性係数Qの推定に関し、測定されたデータから塑性係数Qを求める別の方法として、特許文献2では、入側板厚H、圧延荷重P、入側張力σb、及び、出側張力σfを、センサを用いて検出し、それらと、式1で推定した推定出側板厚heとを、式4を出側板厚hで偏微分した式8に代入し、塑性係数Qを求める方法を提案している。ただし、検出した圧延荷重Pと推定出側板厚heを用いて、式6より扁平ロール半径R'を求め、式8に代入している。
Q=−(∂X/∂h)×W・・・(式8)
しかしながら、理論上は扁平ロール半径R'を求める式6も出側板厚hで偏微分しなければ、正確な塑性係数Qを求めることはできず、かつ、推定出側板厚heが小さい場合には、扁平ロール半径R'が過大になることには変らず、式8で計算される塑性係数Qも過大になってしまう問題がある。
一方、特許文献3では、塑性曲線を出側板厚hに依らず直線と見なして、検出した圧延荷重Pと、入側板厚H、及び、出側板厚hを式9に代入して、塑性係数Qを求める方法を提案している。
Q=P/(H−h)・・・(式9)
また、特許文献4では、冷間タンデム圧延機において、溶接点通過後の金属板材7の先端部で、板厚制御を開始する前に、先ず、検出した圧延荷重Paと式1にて求まる推定出側板厚haを記憶する。その後、圧延荷重Pが所定の圧延荷重Pbになるようロール開度Sを自動調節し、圧延荷重がPbとなったときの推定出側板厚を式1にて求める。そして、式10により塑性係数Qを求めた後、板厚制御を開始する方法を提案している。
Q=(Pb−Pa)/(ha―hb)・・・(式10)
りロール開度修正量ΔSを求める全ての板厚制御装置(AGC)に対して前記問題点が有
り、塑性係数Qの推定精度が悪い場合には、制御性能が低下し、出側板厚精度の悪化や通板トラブルを招いてしまう。
本発明は、上記課題に鑑みてなされた発明であり、金属板材を圧延機で圧延する際、少ない手間で塑性係数Qを正確に推定し、推定した塑性係数Qを用いて、金属板材の出側板厚を目標出側板厚に制御することを目的とする。
金属板材を圧延する単スタンドもしくは複数スタンドから構成される圧延機で用いられ、金属板材の出側板厚を推定する板厚推定器と、前記板厚推定器の出力値と目標出側板厚との偏差Δhを求める比較演算器と、前記金属板材の塑性係数Qを推定する塑性係数推定器と、圧延機のミル剛性係数Mと前記塑性係数Qから算出される係数値(M+Q)/Mと前記板厚推定器の出力値と目標出側板厚との偏差Δhとを乗じてロール開度修正量ΔSを算出する演算増幅器とを備えて構成される板厚制御装置であって、
前記塑性係数推定器は、前記金属板材の圧延条件を入力とし、前記塑性係数Qを出力とする、予め定められた式構造を持つ関数Fの値を計算することにより、前記金属板材の塑性係数Qを推定するものであり、
圧延荷重と入出側板厚とを用いて算出されるワークロールのロール扁平率が、予め定められた設定値以下である圧延条件によって金属板材の圧延を行い、当該圧延中に入出側の金属板材の張力が一定の条件で出側板厚を微少変化させることにより得られる、前記出側板厚の変化量と前記圧延荷重の変化量とから、当該圧延条件における当該金属板材の塑性係数を実測し、
前記金属板材の前記圧延条件を用いて圧延理論式から計算される塑性係数の値が、前記実測した塑性係数の値と一致するように、当該圧延理論式に設定する未知変数である摩擦係数の値を求め、
前記求めた前記摩擦係数の値を用いて、前記ロール扁平率が前記設定値以下である複数の圧延条件(n個の条件)のそれぞれに対して、前記圧延理論式を用いて塑性係数Q1,Q2,・・・,Qnの値を求め、
前記関数Fの値が前記塑性係数Q1,Q2,・・・,Qnの値にフィッティングするように、前記関数Fの定数の値を定めることにより関数Fが設定されていて、
前記圧延理論式は、前記金属板材の入側板厚H、前記金属板材の出側板厚h、前記金属板材とワークロールとの摩擦係数μ、前記金属板材の変形抵抗k、入側張力σb、出側張力σf、前記ワークロールの扁平ロール半径R'が与えられたときに、単位幅当たりの圧延荷重pを、式1の関数Xで求め、Hoを前記金属板材の圧延前の板厚、Ak、Bkを前記金属板材の硬さに応じて決まる定数として、前記金属板材の変形抵抗kを式2で求め、Coをワークロールのヤング率とポアソン比とから決まる定数、Rをワークロールの扁平前のロール半径とするときに、ワークロールの扁平ロール半径R'を式3で求める手法であり、
前記関数Fとして、設定出側板厚をhs、金属板材の変形抵抗係数をAk、圧延機のワークロール径をD、及び、金属板材の板幅をW、a1〜a4、b1、b2を定数として、式4または式5を用いることを特徴とする。
p=X(H,h,μ,σb,σf,k,R')・・・(式1)
k=Ak×{ln(Ho/h)}^Bk・・・(式2)
R'=[1+{Co/(H−h)}×p]×R・・・(式3)
F(hs,Ak,D,W)=a1×(hs^a2)×(Ak^a3)×(D^a4)×W・・・(式4)
F(hs,Ak,D,W)=b1×{(Ak×D/hs)^b2}×W・・・(式5)
さらに、前記塑性係数推定器において前記関数F(hs,Ak,D,W)の演算を実施する際に、設定出側板厚hsの代わりに、板厚推定器の出力値または圧延機出側に設置された板厚検出器の出力値を用いても良い。
また、本発明は前記知見に基づいてなされた塑性係数推定用関数設定方法であって、
金属板材の圧延時における板厚制御のために当該金属板材の塑性係数Qを推定する塑性係数推定器に、前記金属板材の圧延条件を入力とし、当該金属板材の塑性係数Qを出力とする、予め定められた式構造を持つ関数Fを設定する塑性係数推定用関数設定方法であって、
圧延荷重と入出側板厚とを用いて算出されるワークロールのロール扁平率が予め定められた設定値以下である圧延条件によって金属板材の圧延を行い、当該圧延中に入出側の金属板材の張力が一定の条件で出側板厚を微少変化させた結果から得られる、前記出側板厚の変化量と前記圧延荷重の変化量とから、当該圧延条件における当該金属板材の塑性係数を、塑性係数実測手段により実測する塑性係数実測工程と、
前記金属板材の前記圧延条件を用いて圧延理論式から計算される塑性係数の値が、前記実測した塑性係数の値と一致するように、当該圧延理論式に設定する未知変数である摩擦係数の値を摩擦係数導出手段により求める摩擦係数導出工程と、
前記求めた前記摩擦係数の値を用いて、前記ロール扁平率が前記設定値以下である複数の圧延条件(n個の条件)のそれぞれに対して、前記圧延理論式を用いて塑性係数Q1,Q2,・・・,Qnの値を塑性係数導出手段により求める塑性係数導出工程と、
前記関数Fの値が前記塑性係数Q1,Q2,・・・,Qnの値にフィッティングするように、前記関数Fの定数の値を定めることにより関数Fを関数導出手段により導出する関数導出工程と、
前記導出した関数Fを関数設定手段により前記塑性係数推定器に設定する関数設定工程と、を有し、
前記圧延理論式は、前記金属板材の入側板厚H、前記金属板材の出側板厚h、前記金属板材とワークロールとの摩擦係数μ、前記金属板材の変形抵抗k、入側張力σb、出側張力σf、前記ワークロールの扁平ロール半径R'が与えられたときに、単位幅当たりの圧延荷重pを、式1の関数Xで求め、Hoを前記金属板材の圧延前の板厚、Ak、Bkを前記金属板材の硬さに応じて決まる定数として、前記金属板材の変形抵抗kを式2で求め、Coをワークロールのヤング率とポアソン比とから決まる定数、Rをワークロールの扁平前のロール半径とするときに、ワークロールの扁平ロール半径R'を式3で求める手法であり、
前記関数Fとして、設定出側板厚をhs、金属板材の変形抵抗係数をAk、圧延機のワークロール径をD、及び、金属板材の板幅をW、a1〜a4、b1、b2を定数として、式4または式5を用いることを特徴とする。
p=X(H,h,μ,σb,σf,k,R')・・・(式1)
k=Ak×{ln(Ho/h)}^Bk・・・(式2)
R'=[1+{Co/(H−h)}×p]×R・・・(式3)
F(hs,Ak,D,W)=a1×(hs^a2)×(Ak^a3)×(D^a4)×W・・・(式4)
F(hs,Ak,D,W)=b1×{(Ak×D/hs)^b2}×W・・・(式5)
また、本発明では、圧延条件に応じて多数回の実験を行う手間が要らず、一回の実験のみで、塑性係数推定器を設計することが可能であり、手間が少ないという、実用上有益な効果もある。
図1は、本発明の板厚制御装置を単スタンド圧延機1に適用した場合の装置構成図である。
図1では、先ず、ロール開度Sと圧延荷重Pより、金属板材7の出側板厚の推定値heを板厚推定器8により推定し、目標出側板厚hoとの板厚偏差Δh(he−ho)を比較
演算器9により求める。次に、塑性係数推定器13により、圧延条件に応じて金属板材7の塑性係数Qを推定し、推定した塑性係数Qと予め設定されたミル剛性係数Mとを用いて、板厚偏差Δhをゼロとするために必要なロール開度修正量ΔSを、式2の演算を行う演
算増幅器10にて求める。そして、演算増幅器10の出力値ΔSにより、圧下制御装置1
1に指令を与え、圧下モータ12を介して圧下装置4を駆動することで、ロール開度Sを変更し、金属板材7の出側板厚hを目標出側板厚hoに制御している。
he=S+U(P)+W(v)+g・・・(式11)
he=(V/v)×H・・・(式12)
目標出側板厚hoは、金属板材7の出側板厚hの制御目標値であり、板厚推定器8の精度が高い場合には、予め指定されている設定出側板厚hsとして良いが、板厚推定器8の精度が低い場合には、制御開始時点の板厚推定器8の値を記憶し、記憶した値を目標出側板厚hoとしても良い。
以下、図2の各ステップを実例に基づき説明する。
S1)先ず、式6で計算されるロール扁平率γが予め指定された設定値γmax以下の金属板材を用いて、実験による方法にて(前述した式3を用いて)、金属板材の正確な塑性係数Qa(以下、実測値Qaと記載する)を求める。ここで、ロール扁平率γの設定値γmaxは、圧延理論式で計算される塑性係数Q(以下、圧延理論値Qbと記載する)と真値との誤差が少ない範囲で、なるべく大きい値に定めれば良く、概ね5倍に設定すれば良い。
以上のように本実施形態では、例えばステップS1の処理を行うことにより塑性係数実測工程(手段)が実現される。
S21)先ず、摩擦係数μ1と摩擦係数μ2の初期値を定める。ただし、摩擦係数μ1で計算した圧延理論値Qbが実測値Qaより小さく、摩擦係数μ2で計算した圧延理論値Qbが実測値Qaより大きくなるように、摩擦係数μ1と摩擦係数μ2の初期値を定める。例えば、冷間圧延の場合、摩擦係数μは0.01〜0.1であり、摩擦係数μが大きいほど塑性係数Qは大きくなるため、μ1=0.01、μ2=0.1とすれば良い。また、圧延理論値Qbと実測値Qaとの最大誤差を表す収束条件値eを定める。例えば、圧延理論値Qbと実測値Qaとの誤差を0.1%以下としたい場合には、e=Qa×0.1/100とすれば良い。
S23)摩擦係数μ3にて、圧延理論式より塑性係数Qの圧延理論値Qbを求める。
S24)求めた圧延理論値Qbと実測値Qaとを比較し、Qb<Qa−eであれば、摩擦係数μ1を摩擦係数μ3に置き換え、Qb>Qa+eであれば、摩擦係数μ2を摩擦係数μ3に置き換え、摩擦係数μ1と摩擦係数μ2の差を狭め、ステップS22に戻る。それ以外の|Qb−Qa|≦eの場合には、摩擦係数μを摩擦係数μ3として収束計算を終わらせる。
例えば、前記ステップS1記載の圧延条件で、摩擦係数μ1、μ2の初期値をそれぞれμ1=0.01、μ2=0.1として、図12のフローに添って、実測値Qaと圧延理論値Qbとの誤差が0.1%以下となる摩擦係数μを求めたところ、μ=0.0834であった。
以上のように本実施形態では、例えばステップS2の処理を行うことにより摩擦係数導出工程(手段)が実現される。
そこで、過去一ヶ月間に圧延機1で圧延された金属板材7の圧延条件と前記摩擦係数μとを用いて、各塑性係数QをOrowanの圧延理論式から計算し、それらの中で、ロール扁平率γが5倍以下であったn=37,098個の塑性係数Qの圧延理論値をQ1,Q2,・・・,Qnとした。
以上のように本実施形態では、例えばステップS3の処理を行うことにより塑性係数導出工程(手段)が実現される。
圧延条件の一部である金属板材7の設定出側板厚hsと、変形抵抗係数Ak、及び、ワークロールの直径Dと、塑性係数Qとの関係は、圧延現象から以下a〜dの関係がある。
a)図7より、金属板材7の出側板厚h(≒設定出側板厚hs)と塑性係数Qには負の相関がある。
b)金属板材7が硬くなれば、塑性係数Qも大きくなるため、金属板材7の硬さを表す変形抵抗係数Akと塑性係数Qには正の相関がある。
c)ワークロール2の径が小さくなれば、加工に必要な力(圧延荷重)も小さくなり、それに応じて塑性係数Qも小さくなるため、ワークロール2のロール径Dと塑性係数Qには正の相関がある。
d)金属板材の板幅Wと塑性係数Qには単純比例関係がある。
f)入側張力σbと出側張力σfは通板安定性より一定値に設定される値(もしくは、設定出側板厚hsと板幅W、及び、変形抵抗係数Akと相関が高い値)になる。
g)摩擦係数μも設定出側板厚hsとロール径Dと相関が高い値になる。
h)変形抵抗係数Bkと係数Coは、ほぼ一定の値になる。
従って、塑性係数Qを推定するために必要な独立変数は、設定出側板厚hs、変形抵抗係数Ak、ロール径D、及び、板幅Wであり、これら4つの圧延条件を入力とする関数、
Q=F(hs,Ak,D,W)
を用いて、前記圧延理論値(Q1,Q2,・・・,Qn)をフィッティングすることが可能である。
F(hs,Ak,D,W)=a1×(hs^a2)×(Ak^a3)×(D^a4)×W・・・(式13)
以上のようにして求めた関数F(hs,Ak,D,W)の精度確認として、h=0.65〜1.6(mm),Ak=100(kg/mm2)の金属板材に対して、圧延理論値Qbと式13の値、及び、追加実験にて求めた塑性係数Qの実測値Qaとの比較を図9に示す。
図9より、ロール扁平率γが5倍以下の圧延条件では、式13の値と圧延理論値(○印)とは、ほぼ同じ値であるが、ロール扁平率γが5倍より大きくなると、式13の値より圧延理論値(●印)の方が過大になっている。式13の値と実測値Qa(左側×印)とは、ロール扁平率γが5倍以上でも良く一致しているが、出側板厚hが0.8(mm)のときには、ロール扁平率γが8倍に達し、圧延理論値Qb(左から3番目の●印)は前記実測値Qaより大きな値となっていることが判る。
F(hs,Ak,D,W)=b1×{(Ak×D/hs)^b2}×W・・・(式14)
式14の式構造を持つ関数F(hs,Ak,D,W)を用い、前記過去一ヶ月間の圧延理論値(Q1,Q2,・・・,Qn)をフィッティングしたときには、定数b1とb2は、b1=0.000016,b2=1.2であった。図9に対応する図を図10に示す。式14の式構造を用いると、圧延理論値Qbや実測値Qaよりも若干低い値となるが、ロール扁平率γが大きい圧延条件にて塑性係数Qが過大になることもなく、式13と式14の値の差は5%以下であるため、式14を用いても実用上問題ない。
前記では、圧延理論値(Q1,Q2,...,Qn)をフィッティングする為に必要な圧延条件として、設定出側板厚hs、変形抵抗係数Ak、ロール径D、板幅Wを用いたが、これらと相関のある他の圧延条件に置換えても構わない。例えば、設定出側板厚hsの代わりに、入側設定板厚Hsや目標出側板厚hoを用いても良い。また、変形抵抗係数Akの代わりに平均変形抵抗km、ロール径Dの代わりにロール半径Rに置換えても構わない。また、圧延速度等の圧延条件を関数Fの入力変数に加えても構わない。
以上、ステップS1〜ステップS4の手順で関数Fを設計し、その関数Fの演算を塑性係数推定器13で実施することで、正確な塑性係数Qを演算増幅器10へ与えることができる。
以上のように本実施形態では、例えばステップS4の処理を行うことにより関数導出工程(手段)、関数設定工程(手段)が実現される。
図13では、前記圧延条件にて、式13の式構造を持つ関数Fを前記手順で求め、その関数Fの演算を塑性係数推定器13で行っている。また、板厚推定器8として、式1のゲージメータ方式を用いており、スケールファクターαは0.98に設定している。また、金属板材7が圧延機1に噛み込んでから0.5秒後に板厚制御を開始するように設定し、板厚制御開始時の推定出側板厚heを記憶し、目標出側板厚hoとしている。
以上、本実施例からも判るように、式2を用いる板厚制御装置では、金属板材7の塑性係数Qを精度良く推定する必要があり、本発明の金属板材の板厚制御装置を用いれば、1回の実験で精度の高い塑性係数Qを予測する関数Fを設計することができ、関数Fを演算する塑性係数推定器13の出力値を用いて演算増幅器10が式2の演算を実施することで、制御性能が向上し、出側板厚の精度を高め、かつ、過度なロール開度Sの修正による通板トラブルを防止することができる。
また、前述した実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
2 ワークロール
3 バックアップロール
4 圧下装置
5 圧延モータ
6 荷重検出器
7 金属板材
8 板厚推定器
9 比較演算器
10 演算増幅器
11 圧下制御装置
12 圧下モータ
13 塑性係数推定器
Claims (3)
- 金属板材を圧延する単スタンドもしくは複数スタンドから構成される圧延機で用いられ、金属板材の出側板厚を推定する板厚推定器と、前記板厚推定器の出力値と目標出側板厚との偏差Δhを求める比較演算器と、前記金属板材の塑性係数Qを推定する塑性係数推定器と、圧延機のミル剛性係数Mと前記塑性係数Qから算出される係数値(M+Q)/Mと前記板厚推定器の出力値と目標出側板厚との偏差Δhとを乗じてロール開度修正量ΔSを算出する演算増幅器とを備えて構成される板厚制御装置であって、
前記塑性係数推定器は、前記金属板材の圧延条件を入力とし、前記塑性係数Qを出力とする、予め定められた式構造を持つ関数Fの値を計算することにより、前記金属板材の塑性係数Qを推定するものであり、
圧延荷重と入出側板厚とを用いて算出されるワークロールのロール扁平率が、予め定められた設定値以下である圧延条件によって金属板材の圧延を行い、当該圧延中に入出側の金属板材の張力が一定の条件で出側板厚を微少変化させることにより得られる、前記出側板厚の変化量と前記圧延荷重の変化量とから、当該圧延条件における当該金属板材の塑性係数を実測し、
前記金属板材の前記圧延条件を用いて圧延理論式から計算される塑性係数の値が、前記実測した塑性係数の値と一致するように、当該圧延理論式に設定する未知変数である摩擦係数の値を求め、
前記求めた前記摩擦係数の値を用いて、前記ロール扁平率が前記設定値以下である複数の圧延条件(n個の条件)のそれぞれに対して、前記圧延理論式を用いて塑性係数Q1,Q2,・・・,Qnの値を求め、
前記関数Fの値が前記塑性係数Q1,Q2,・・・,Qnの値にフィッティングするように、前記関数Fの定数の値を定めることにより関数Fが設定されていて、
前記圧延理論式は、前記金属板材の入側板厚H、前記金属板材の出側板厚h、前記金属板材とワークロールとの摩擦係数μ、前記金属板材の変形抵抗k、入側張力σb、出側張力σf、前記ワークロールの扁平ロール半径R'が与えられたときに、単位幅当たりの圧延荷重pを、式1の関数Xで求め、Hoを前記金属板材の圧延前の板厚、Ak、Bkを前記金属板材の硬さに応じて決まる定数として、前記金属板材の変形抵抗kを式2で求め、Coをワークロールのヤング率とポアソン比とから決まる定数、Rをワークロールの扁平前のロール半径とするときに、ワークロールの扁平ロール半径R'を式3で求める手法であり、
前記関数Fとして、設定出側板厚をhs、金属板材の変形抵抗係数をAk、圧延機のワークロール径をD、及び、金属板材の板幅をW、a1〜a4、b1、b2を定数として、式4または式5を用いることを特徴とする金属板材の板厚制御装置。
p=X(H,h,μ,σb,σf,k,R')・・・(式1)
k=Ak×{ln(Ho/h)}^Bk・・・(式2)
R'=[1+{Co/(H−h)}×p]×R・・・(式3)
F(hs,Ak,D,W)=a1×(hs^a2)×(Ak^a3)×(D^a4)×W・・・(式4)
F(hs,Ak,D,W)=b1×{(Ak×D/hs)^b2}×W・・・(式5) - 前記塑性係数推定器において前記関数F(hs,Ak,D,W)の演算を実施する際に、設定出側板厚hsの代わりに、前記板厚推定器の出力値または前記圧延機の出側に設置された板厚検出器の出力値を用いることを特徴とする請求項1に記載の金属板材の板厚制御装置。
- 金属板材の圧延時における板厚制御のために当該金属板材の塑性係数Qを推定する塑性係数推定器に、前記金属板材の圧延条件を入力とし、当該金属板材の塑性係数Qを出力とする、予め定められた式構造を持つ関数Fを設定する塑性係数推定用関数設定方法であって、
圧延荷重と入出側板厚とを用いて算出されるワークロールのロール扁平率が予め定められた設定値以下である圧延条件によって金属板材の圧延を行い、当該圧延中に入出側の金属板材の張力が一定の条件で出側板厚を微少変化させた結果から得られる、前記出側板厚の変化量と前記圧延荷重の変化量とから、当該圧延条件における当該金属板材の塑性係数を、塑性係数実測手段により実測する塑性係数実測工程と、
前記金属板材の前記圧延条件を用いて圧延理論式から計算される塑性係数の値が、前記実測した塑性係数の値と一致するように、当該圧延理論式に設定する未知変数である摩擦係数の値を摩擦係数導出手段により求める摩擦係数導出工程と、
前記求めた前記摩擦係数の値を用いて、前記ロール扁平率が前記設定値以下である複数の圧延条件(n個の条件)のそれぞれに対して、前記圧延理論式を用いて塑性係数Q1,Q2,・・・,Qnの値を塑性係数導出手段により求める塑性係数導出工程と、
前記関数Fの値が前記塑性係数Q1,Q2,・・・,Qnの値にフィッティングするように、前記関数Fの定数の値を定めることにより関数Fを関数導出手段により導出する関数導出工程と、
前記導出した関数Fを関数設定手段により前記塑性係数推定器に設定する関数設定工程と、を有し、
前記圧延理論式は、前記金属板材の入側板厚H、前記金属板材の出側板厚h、前記金属板材とワークロールとの摩擦係数μ、前記金属板材の変形抵抗k、入側張力σb、出側張力σf、前記ワークロールの扁平ロール半径R'が与えられたときに、単位幅当たりの圧延荷重pを、式1の関数Xで求め、Hoを前記金属板材の圧延前の板厚、Ak、Bkを前記金属板材の硬さに応じて決まる定数として、前記金属板材の変形抵抗kを式2で求め、Coをワークロールのヤング率とポアソン比とから決まる定数、Rをワークロールの扁平前のロール半径とするときに、ワークロールの扁平ロール半径R'を式3で求める手法であり、
前記関数Fとして、設定出側板厚をhs、金属板材の変形抵抗係数をAk、圧延機のワークロール径をD、及び、金属板材の板幅をW、a1〜a4、b1、b2を定数として、式4または式5を用いることを特徴とする塑性係数推定用関数設定方法。
p=X(H,h,μ,σb,σf,k,R')・・・(式1)
k=Ak×{ln(Ho/h)}^Bk・・・(式2)
R'=[1+{Co/(H−h)}×p]×R・・・(式3)
F(hs,Ak,D,W)=a1×(hs^a2)×(Ak^a3)×(D^a4)×W・・・(式4)
F(hs,Ak,D,W)=b1×{(Ak×D/hs)^b2}×W・・・(式5)
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