JP5247886B2 - 多段変速機 - Google Patents

多段変速機 Download PDF

Info

Publication number
JP5247886B2
JP5247886B2 JP2011525868A JP2011525868A JP5247886B2 JP 5247886 B2 JP5247886 B2 JP 5247886B2 JP 2011525868 A JP2011525868 A JP 2011525868A JP 2011525868 A JP2011525868 A JP 2011525868A JP 5247886 B2 JP5247886 B2 JP 5247886B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
claw
gear
annular plate
plate member
engaging
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2011525868A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2011016396A1 (ja
Inventor
真也 松本
純 宮崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Honda Motor Co Ltd filed Critical Honda Motor Co Ltd
Priority to JP2011525868A priority Critical patent/JP5247886B2/ja
Publication of JPWO2011016396A1 publication Critical patent/JPWO2011016396A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5247886B2 publication Critical patent/JP5247886B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H3/00Toothed gearings for conveying rotary motion with variable gear ratio or for reversing rotary motion
    • F16H3/02Toothed gearings for conveying rotary motion with variable gear ratio or for reversing rotary motion without gears having orbital motion
    • F16H3/08Toothed gearings for conveying rotary motion with variable gear ratio or for reversing rotary motion without gears having orbital motion exclusively or essentially with continuously meshing gears, that can be disengaged from their shafts
    • F16H3/083Toothed gearings for conveying rotary motion with variable gear ratio or for reversing rotary motion without gears having orbital motion exclusively or essentially with continuously meshing gears, that can be disengaged from their shafts with radially acting and axially controlled clutching members, e.g. sliding keys
    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y10TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC
    • Y10TTECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER US CLASSIFICATION
    • Y10T74/00Machine element or mechanism
    • Y10T74/19Gearing
    • Y10T74/19219Interchangeably locked
    • Y10T74/19242Combined gear and clutch

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Structure Of Transmissions (AREA)

Description

本発明は、互いに平行な歯車軸にそれぞれ複数の駆動歯車と被動歯車が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支された多段変速機に関する。
この常時噛合い式の多段変速機は、駆動歯車と被動歯車の一方が歯車軸に固定され、他方が歯車軸に回転自在に軸支され、係合手段により回転自在の歯車のうち歯車軸に係合する歯車を切り換えることで変速を行う。
この歯車と歯車軸の係合に、カム部材により作動する揺動爪部材を用いた構成が、同じ出願人により先に出願された例にある(特許文献1)。
特願2008−246755
同特許文献1に開示された多段変速機の係合手段は、各歯車の内周面に係合凸部が形成され、他方の歯車軸には支軸ピンに軸支されて揺動する揺動爪部材が径方向外側に爪先端部を出没可能に設けられ、爪先端部が突出することで歯車の内周面の係合凸部に係合し、爪先端部が没することで歯車の係合凸部との係合を解除するものである。
この係合手段が係合するときは、歯車と歯車軸とが相対回転している状態で、歯車の内周面の係合凸部に揺動爪部材の爪先端部が衝接して係合するので、揺動爪部材の爪先端部の突出が小さい状態で歯車の係合凸部に係合すると、爪先端部の一部に過大な荷重が加わる場合があるため、爪を大きくする必要があった。
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、係合手段の係合爪が歯車の係合凸部に係合する際に係合爪の一部に過大な荷重が加わることを回避した多段変速機を供する点にある。
上記目的を達成するために、本発明は、
互いに平行な歯車軸にそれぞれ複数の駆動歯車(m)と被動歯車(n)が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、前記駆動歯車(m)と前記被動歯車(n)の一方の複数の歯車が歯車軸に固定され、他方の各歯車の内周面に形成された係合凸部(31)と歯車軸(12)に径方向外側に出没可能に設けられた係合爪(R)の突出により互いの係合を行う係合手段が各歯車ごとに切り換えられて変速を行う多段変速機において、前記歯車(n)の内周面に環状に突出した内周突条部(30C)に前記係合凸部(31)が形成され、前記歯車(n)の前記係合凸部(31)が形成される前記内周突条部(30C)の側面に相対回動自在に近接する環状板部材(35)と、前記歯車(n)と前記環状板部材(35)との間に介装され両者の所定の相対位置関係を弾性的に維持する戻しばね(38)とを備え、前記環状板部材(35)は、内周面に周方向に前記係合爪(R)と当接可能な傾斜面を有して当接凸部(36)が突出形成され、前記当接凸部(36)の少なくとも前記傾斜面形成部分を除いた部分が軸方向視で前記係合凸部(31)に重なるように前記戻しばね(38)により位置決めされ、前記当接凸部(36)の傾斜面は、前記係合爪(R)が係合可能な傾斜角を有する底部傾斜面(36pb)と前記係合爪(R)が係合不能で摺接する傾斜角を有する頂部傾斜面(36ps)とからなる多段変速機とした。
本発明の好適な実施形態は、
前記係合爪(R)は前記歯車軸に対して揺動して爪先端部(Rp)を径方向に出没し、前記係合爪(R)の爪先端部(Rp)が前記当接凸部(36)の底部傾斜面(36pb)に接したときの接点(Q)と前記係合爪(R)の揺動中心(P)とを結ぶ直線(PQ)と前記底部傾斜面(36pb)とのなす角度を直角に近い鈍角としたことを特徴とする。
本発明の好適な実施形態は、
前記直線(PQ)と前記底部傾斜面(36pb)とのなす角度(θ)は、90度を超えて100度以下の角度であることを特徴とする。
本発明の好適な実施形態は、
前記歯車(n)の前記内周突条部(30C)に形成された前記係合凸部(31)の周方向両側基部のうち少なくともシフトアップ用の前記係合爪(Ra)と係合する側の基部に溝(31v)を形成したことを特徴とする。
本発明の好適な実施形態は、
前記歯車(n)の前記係合凸部(31)が形成される前記内周突条部(30C)の側面に周方向に沿って円弧状溝(32)を設け、
前記環状板部材(35)の前記内周突条部(30C)に対向する側面に前記円弧状溝(32)に対応する円弧状切欠き(37)を形成し、前記円弧状溝(32)と前記円弧状切欠き(37)に跨って前記戻しばね(38)を介装し、前記環状板部材(35)の前記内周突条部(30C)に対向する側面の反対面を係止部材(39)により係止して前記環状板部材(35)の軸方向の移動を規制したことを特徴とする。
本発明の好適な実施形態は、
前記環状板部材(35)の前記当接凸部(36)の周方向幅は、ともに突出状態にあるシフトアップ用の前記係合爪(Ra)の爪先端部(Rp)とシフトダウン用の前記係合爪(Rb)の爪先端部(Rp)との周方向間隔より小さいことを特徴とする。
本発明の好適な実施形態は、
前記歯車(n)は、前記歯車軸(12)に外装された隣り合う軸受カラー部材(13,13)間に跨るように外嵌して回転自在に軸支され、前記軸受カラー部材(13)の前記環状板部材(35)が設けられた側の外周端縁が環状に切り欠かれて縁取り段部(13d)が形成され、同縁取り段部(13d)に前記歯車(n)の内周端縁が嵌合して軸支されることを特徴とする。
本発明の好適な実施形態は、
減速比が最小または最大の歯車のうち少なくとも最小の歯車(n6)には、前記環状板部材(35)との間に、前記戻しばね(38)による位置決めに代えて、前記環状板部材(35)を所定のフリクションを持って前記歯車(n6)に追随させるフリクション構造が構成されることを特徴とする。
本発明の好適な実施形態は、
前記フリクション構造は、前記歯車(n6)の前記内周突条部(30C)の側面と前記環状板部材(35)との間に環状のウェーブスプリング(60)が挟装される構造であることを特徴とする。
本発明の好適な実施形態は、
前記フリクション構造は、前記歯車(n6)の前記内周突条部(30C)の側面と前記環状板部材(35)との間に環状の皿ばね(70)が挟装される構造であることを特徴とする。
本発明によれば、
環状板部材(35)は当接凸部(36)の少なくとも傾斜面形成部分を除いた部分が軸方向視で係合凸部(31)に重なるように戻しばね(38)により位置決め(センタリング)されているので、係合爪(R)が係合するときは、歯車(n)の内周突条部(30C)に形成された係合凸部(31)に係合する前に環状板部材(35)の当接凸部(36)の傾斜面に当接することになり、環状板部材(35)の当接凸部(36)の傾斜面は、係合爪(R)が係合可能な傾斜角を有する底部傾斜面(36pb)と係合爪が係合不能で摺接する傾斜角を有する頂部傾斜面(36ps)とからなるので、係合爪(R)は大きく突出した状態では当接凸部(36)の底部傾斜面(36pb)に当接して係合したまま戻しばね(38)に抗して環状板部材(35)を摺動して歯車(n)の係合凸部(31)に係合するが、係合爪(R)が小さく突出した状態では当接凸部(36)の頂部傾斜面(36ps)に係合せずに摺接して当接凸部(36)を乗り越えてしまうので、係合爪(R)の一部に過大な荷重が加わることが回避され、当接凸部(36)を乗り越えた係合爪(R)は次に来る当接凸部(36)には大きく突出した状態で当接できる。
よって、歯車(n)の係合凸部(31)により係合爪(R)が一部に過大な荷重を受けることなく係合することができる。
係合爪(R)の爪先端部(Rp)が当接凸部(36)の底部傾斜面(36pb)に接したときの接点(Q)と係合爪(R)の揺動中心(P)とを結ぶ直線(PQ)と底部傾斜面(36pb)とのなす角度(θ)を直角に近い鈍角としたので、複数の係合爪(R)がそれぞれ対応する当接凸部(36)の底部傾斜面(36pb)に高い精度で同時に当接しなくても、順次揺動して当接することが可能で、一部の係合爪(R)が係合凸部(31)に係合できない事態を回避することができる。
前記直線(PQ)と前記底部傾斜面(36pb)とのなす角度(θ)は、90度を超えて100度以下の角度であるので、係合爪(R)が当接凸部(36)の底部傾斜面(36pb)に接すると滑らずに確実に係合するとともに、一部の係合爪(R)が係合凸部(31)に係合できない事態を確実に回避することができる。
歯車(n)の内周面に形成された係合凸部(31)の周方向両側基部のうち少なくともシフトアップ用の前記係合爪(Ra)と係合する側の基部に溝(31v)を形成したので、係合凸部(31)の係合面に係合爪(R)が当接して押圧された際に、この溝(31v)が形成されていることにより係合凸部(31)の基部に応力が集中せずに分散して構造的に係合凸部(31)の強度を高めることができる。
歯車(n)の円弧状溝(32)と環状板部材(35)の円弧状切欠き(37)に跨って戻しばね(38)を介装し、環状板部材(35)の内周突条部(30C)に対向する側面の反対面を係止部材(39)により係止して環状板部材(35)の軸方向の移動を規制したので、戻しばね(38)を介して歯車(n)に対する環状板部材(35)の周方向の位置決めが簡単でコンパクトな構造でできる。
環状板部材(35)の当接凸部(36)の周方向幅は、ともに突出状態にあるシフトアップ用係合爪(Ra)の爪先端部(Rp)とシフトダウン用係合爪(Rb)の爪先端部(Rp)との間の周方向間隔より小さいので、環状板部材(35)の当接凸部(36)がシフトアップ用係合爪(Ra)とシフトダウン用係合爪(Rb)との間に納まってシフトアップとシフトダウンのいずれにも即応できる状態とすることができる。
歯車(n)は、歯車軸(12)に外装された隣り合う軸受カラー部材(13,13)間に跨るように外嵌して回転自在に軸支され、軸受カラー部材(13)の環状板部材(35)が設けられた側の外周端縁が環状に切り欠かれて縁取り段部(13d)が形成され、同縁取り段部(13d)に歯車(n)の内周端縁が嵌合して歯車(n)が軸支されるので、歯車(n)の軸方向のスラスト力は軸受カラー部材(13)の縁取り段部(13d)が受けることで、歯車(n)の内周突条部(30C)と軸受カラー部材(13)との間隔は維持される。
したがって、内周突条部(30C)に近接する環状板部材(35)が軸受カラー部材(13)に押されて内周突条部(30C)に圧接されて、環状板部材(35)の歯車(n)に対する円滑な相対回転を妨げられることがないため、係合爪(R)を精度良く案内して歯車(n)の係合凸部(31)に適正なタイミングで係合することができる。
減速比が最小または最大の歯車のうち少なくとも最小の歯車(n6)には、環状板部材(35)との間に、戻しばね(38)による位置決めに代えて、環状板部材(35)を所定のフリクションを持って歯車(n6)に追随させるフリクション構造が構成される。
すなわち、シフトアップされて有効に働いている減速比が最小の歯車は、さらなるシフトアップ作業がなされないため、環状板部材(35)は戻しばね(38)によりセンタリングされる必要がなく、環状板部材(35)が所定のフリクションを持って歯車(n6)に追随すればよく、よって戻しばね(38)に代えて簡単なフリクション構造にし、構造を簡素化し、部品の加工性および組付け性も良好にしてコストの削減を図ることができる。
なお、減速比が最大の歯車も同様である。
歯車(n6)の内周突条部(30C)の側面と環状板部材(35)との間に環状のウェーブスプリング(60)が挟装されるフリクション構造とするので、構造の簡素化、組付け性の向上、コスト削減をさらに図ることができる。
歯車(n6)の内周突条部(30C)の側面と環状板部材(35)との間に環状の皿ばね(70)が挟装されるフリクション構造とするので、構造の簡素化、組付け性の向上、コスト削減をさらに図ることができる。
本発明の一実施の形態に係る多段変速機の断面図である。 カウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す断面図(図4,図5のII−II線断面図)である。 カウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す別の断面図(図4,図5のIII−III線断面図)である。 図2,図3のIV−IV線断面図である。 図2,図3のV−V線断面図である。 コントロールロッドとロストモーション機構の分解斜視図である。 コントロールロッドにロストモーション機構組み付けた状態とカムロッド等の分解斜視図である。 カウンタ歯車軸およびピン部材とスプリングの一部の分解斜視図である。 カウンタ歯車軸の左側面図(図8のIX矢視図)である。 揺動爪部材および支軸ピン,ピン部材,スプリングの分解斜視図である。 コントロールロッドに変速駆動手段の一部および係合手段を組み付けた状態を示す斜視図である。 図11に示す状態のカウンタ歯車軸に軸受カラー部材を外装した状態を示す斜視図である。 被動変速歯車の右側面図である。 環状板部材の右側面図である。 被動変速歯車と環状板部材等の分解断面図である。 被動変速歯車と環状板部材等の組付けた状態の断面図である。 揺動爪部材の係合爪部が大きく突出しているときにおける環状板部材の当接凸部が係合爪部に当接する直前の状態を示す要部拡大図である。 次いで、環状板部材の当接凸部が係合爪部に当接した状態を示す要部拡大図である。 次いで、被動変速歯車の係合凸部が係合爪部に当接した状態を示す要部拡大図である。 次いで、被動変速歯車の係合凸部が係合爪部に係合してカウンタ歯車軸をともに回転している状態を示す要部拡大図である。 揺動爪部材の係合爪部が小さく突出しているときにおける環状板部材の当接凸部が係合爪部に当接する直前の状態を示す要部拡大図である。 次いで、環状板部材の当接凸部が係合爪部に当接した状態を示す要部拡大図である。 次いで、当接凸部の頂部傾斜面上を係合爪部が滑りながら揺動している状態を示す要部拡大図である。 次いで、環状板部材の当接凸部を係合爪部が乗り越えている状態を示す要部拡大図である。 別の実施の形態に係る多段変速機のカウンタ歯車軸およびその周りの構造を示す断面図である。 図25のXXVI−XXVI線断面図である。 被動変速歯車と環状板部材とウェーブスプリング等の分解断面図である。 被動変速歯車と環状板部材とウェーブスプリング等の組付けた状態の断面図である。 ウェーブスプリングの正面図である。 同ウェーブスプリングの側面図である。 皿ばねの正面図である。 皿ばねの断面図である。 第6被動変速歯車と揺動爪部材と環状板部材の6速が確立した状態を示す要部拡大図である。 次いで、減速して第6被動変速歯車の係合凸部から正回転偶数段揺動爪部材の係合爪部Rpが離れた状態を示す要部拡大図である。
m…駆動変速歯車、m1〜m6…第1〜第6駆動変速歯車、
n…被動変速歯車、n1〜n6…第1〜第6被動変速歯車、
10…多段変速機、11…メイン歯車軸、12…カウンタ歯車軸、13…軸受カラー部材、
20…係合手段、22…圧縮スプリング、23…ピン部材、26…支軸ピン、
30L…左側環状穴、30R…右側環状穴、30C…内周突条部、31…係合凸部、31p…係合面、31v…溝、32…円弧溝、33…内周溝、35…環状板部材、36…当接凸部、36pb…底部傾斜面、36ps…頂部傾斜面、38…コイルばね、39…サークリップ、
C…カムロッド、R…揺動爪部材、Rp…係合爪部、Rq…幅広端部、51…コントロールロッド、
60…ウェーブスプリング、70…皿ばね
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図24に基づいて説明する。
本実施の形態に係る多段変速機10は、自動二輪車に搭載される内燃機関に組み込まれて構成されている。
図1は、該多段変速機10の断面図であり、同図1に示すように、該多段変速機10は、内燃機関と共通の機関ケース1に設けられている。
左右割りの左機関ケース1Lと右機関ケース1Rが合体して構成された機関ケース1は、変速室2を形成しており、同変速室2にメイン歯車軸11とカウンタ歯車軸12が互いに平行に左右方向に指向して回転自在に軸支されている。
メイン歯車軸11は、左機関ケース1Lの側壁と右機関ケース1Rの側壁1RRにベアリング3L,3Rを介して回転自在に軸支され、右ベアリング3Rを貫通して変速室2から突出した右端部には多板式の摩擦クラッチ5が設けられている。
摩擦クラッチ5の左側には、図示されないクランク軸の回転が伝達されるプライマリ被動ギヤ4がメイン歯車軸11に回転自在に軸支されている。
内燃機関のクランク軸の回転がプライマリ被動ギヤ4から係合状態の摩擦クラッチ5を介してメイン歯車軸11に伝達される。
他方、カウンタ歯車軸12も、左機関ケース1Lの側壁と右機関ケース1Rの側壁1RRにベアリング7L,7Rを介して回転自在に軸支され、左ベアリング7Lを貫通して変速室2から突出した左端部には出力スプロケット70がスプライン嵌合して固定される。
出力スプロケット70に巻き掛けられた駆動チェーンが後方の図示されない後輪を駆動するスプロケットに巻き掛けられ、カウンタ歯車軸12の回転動力が後輪に伝達され、車両が走行する。
メイン歯車軸11には、左右のベアリング3L,3Rの間に駆動変速歯車m群がメイン歯車軸11と一体に回転可能にメイン歯車軸11に構成されている。
右ベアリング3Rに沿って第1駆動変速歯車m1がメイン歯車軸11に一体に形成され、メイン歯車軸11の同第1駆動変速歯車m1と左ベアリング3Lとの間に形成されたスプラインに右から左へ順に順次径を大きくした第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m2,m3,m4,m5,m6がスプライン嵌合されている。
他方、カウンタ歯車軸12には、左右のベアリング7L,7Rの間に被動変速歯車n群が円環状の軸受カラー部材13を介して回転自在に軸支されている。
カウンタ歯車軸12において、右ベアリング7Rの左に介装されたカラー部材14Rを介して外装された右端の軸受カラー部材13と、左ベアリング7Lの右に介装されたカラー部材14Lを介して外装された左端の軸受カラー部材13との間に、等間隔に5つの軸受カラー部材13が外装され、この全部で7つの軸受カラー部材13の隣り合う軸受カラー部材13,13間に跨るようにして右から左へ順次径を小さくした第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支されている。
メイン歯車軸11と一体に回転する第1,第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m1,m2,m3,m4,m5,m6は、カウンタ歯車軸12に回転自在に軸支される対応する第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6にそれぞれ常時噛み合っている。
第1駆動変速歯車m1と第1被動変速歯車n1の噛合が、最も減速比の大きい1速を構成し、第6駆動変速歯車m6と第6被動変速歯車n6の噛合が、最も減速比の小さい6速を構成し、その間順次減速比が小さくなって2速、3速、4速、5速が構成される。
カウンタ歯車軸12に変速段が奇数段の奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)と変速段が偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)が交互に配列されることになる。
中空筒状をなすカウンタ歯車軸12は、各被動変速歯車nと係合可能な係合手段20が後記するように組み込まれ、後記するように係合手段20の1構成要素である種類ごと2本ずつ4種類の計8本のカムロッドC(Cao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbe)がカウンタ歯車軸12の中空内周面に形成された後記するカム案内溝12gに嵌合して軸方向に移動自在に設けられる。
このカムロッドCを駆動して変速する変速駆動手段50の1構成要素であるコントロールロッド51が、カウンタ歯車軸12の中空中心軸に挿入されており、コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介して連動してカムロッドCを軸方向に移動する。
このコントロールロッド51を軸方向に移動する機構が、右機関ケース1Rに設けられている。
コントロールロッド51の軸方向の移動は、ロストモーション機構52,53を介してカムロッドCを軸方向に連動し、このカムロッドCの移動がカウンタ歯車軸12に組み込まれた係合手段20により各被動変速歯車nを選択的にカウンタ歯車軸12と係合して変速を行う。
図6を参照して、変速駆動手段50のコントロールロッド51は、円柱棒状をなし、軸方向の左右2か所に縮径して形成された外周凹部51a,51bがそれぞれ所定長さに亘って形成されている。
コントロールロッド51の右端は雄ねじが形成された雄ねじ端部51bbとなっており、雄ねじ端部51bbの手前に6角形状のナット部51cが形成されている。
このコントロールロッド51の左右の外周凹部51a,51bにそれぞれ対応してロストモーション機構52,53が組み付けられる。
左右のロストモーション機構52,53は、同じ構造のものを互いに左右対称になるように配設している。
左側のロストモーション機構52は、コントロールロッド51を摺動自在に嵌挿するスプリングホルダ52hが長尺ホルダ52hlと短尺ホルダ52hsの連結で構成され、内周面にコントロールロッド51の外周凹部51aに対応する内周凹部52haが形成されている。
このスプリングホルダ52hにコントロールロッド51を貫通させてスプリングホルダ52hを外周凹部51aに位置させたとき、スプリングホルダ52hの内周凹部52haとコントロールロッド51の外周凹部51aの両空間が共通の空間を構成する。
スプリングホルダ52hの内周凹部52haとコントロールロッド51の外周凹部51aの両空間に跨るようにスプリング受けである左右一対のコッタ52c,52cが対向して嵌挿され、両コッタ52c,52c間にコントロールロッド51に巻回される圧縮コイルスプリング52sが介装されて両コッタ52c,52cを離間する方向に付勢する。
なお、コッタ52cは、スプリングホルダ52hの内周凹部52haの内径を外径とし、コントロールロッド51の外周凹部51aの外径を内径とした中空円板状をなし、組み付けのため半割りにされている。
右側のロストモーション機構53(スプリングホルダ53h,長尺ホルダ53hl,短尺ホルダ53hs,内周凹部53ha,コッタ53c,圧縮コイルスプリング53s)も同じ構造をしてコントロールロッド51の外周凹部51bに配設される。
したがって、コントロールロッド51が軸方向に移動すると、左右のロストモーション機構52,53の圧縮コイルスプリング52s,53sを介してスプリングホルダ52h,53hが軸方向に移動する。
このコントロールロッド51の左右の外周凹部51a,51bに取り付けられたロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外周面に、8本のカムロッドC(Cao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbe)が放射位置にあって当接される(図7参照)。
カムロッドCは、断面が矩形で軸方向に長尺に延びる角柱棒状部材であり、スプリングホルダ52h,53hと接する内周側面の反対側の外周側面がカム面を形成しており、カム面にカム溝vが所要3か所に形成され、内周側面にはスプリングホルダ52h,53hのいずれか一方を左右から挟むように係止する一対の係止爪pが突出している。
カムロッドCは、断面が特別な形状をしておらず概ね外形が単純な矩形の角柱棒状部材であるので、カムロッドCを容易に製造することができる。
カム溝v1,v3,v5が奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する3か所に形成された奇数段用カムロッドCao,Cboには、正回転(加速時に被動変速歯車nから被動歯車軸に力が加わる回転方向)用と逆回転(減速時に被動変速歯車nから被動歯車軸に力が加わる回転方向)用の2種類があり、一方の正回転奇数段用カムロッドCaoは、内周側面に右側スプリングホルダ53hに係止する係止爪pを有し、他方の逆回転奇数段用カムロッドCboは、内周側面に左側スプリングホルダ52hに係止する係止爪pを有する(図7参照)。
同様に、カム溝v2,v4,v6が偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する3か所に形成された偶数段用カムロッドCae,Cbeには、正回転用と逆回転用の2種類があり、一方の正回転偶数段用カムロッドCaeは、内周側面に左側スプリングホルダ52hに係止する係止爪pを有し、他方の逆回転偶数段用カムロッドCbeは、内周側面に右側スプリングホルダ53hに係止する係止爪pを有する(図7参照)。
したがって、コントロールロッド51の軸方向の移動により、右側のロストモーション機構53の圧縮コイルスプリング53sを介してスプリングホルダ53hとともに正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが軸方向に連動し、左側のロストモーション機構52のコイルスプリング52sを介してスプリングホルダ52hとともに逆回転奇数段用カムロッドCboと正回転偶数段用カムロッドCaeが軸方向に連動する。
図7に示すように、コントロールロッド51のナット部51cより右側の右端部分には、円筒状をしたコントロールロッド操作子55が、その内側に嵌装されたボールベアリング56を介して取り付けられる。
ボールベアリング56は、軸方向に2個連結したもので、コントロールロッド51のナット部51cより右側の右端部分に嵌入され、雄ねじ端部51bbに螺合されるナット57によりナット部51cとの間で挟まれて締結される。
したがって、コントロールロッド操作子55は、コントロールロッド51の右端部を回転自在に保持している。
このコントロールロッド操作子55の螺着されたナット57より右側に延出した円筒部に直径方向に穿孔したピン孔55hが形成されており、同ピン孔55hにシフトピン58が貫通する。
コントロールロッド操作子55に貫通されたシフトピン58は、図1を参照して、両端を突出させている。
右機関ケース1Rの側壁1RRの右方に突出したガイド部1Raに溝条60が左右方向に指向して形成されており、この溝条60にシフトピン58の突出した一端頭部が摺動自在に嵌合してシフトピン58の回り止めとしている。
側壁1RRには右方に突出して支軸65が植設されて、同支軸65にベアリング66を介してシフトドラム67が回動自在に軸支されており、このシフトドラム67のシフト溝67vにシフトピン58の突出した他端部が摺動自在に嵌合している。
シフトドラム67のシフト溝67vは、ドラム外周面に略一周に亘って螺旋を描くように形成され、その間に所定回動角度(例えば60度)毎に1速から6速までの各変速段位置およびその途中にニュートラル位置が形成されている。
したがって、シフトドラム67の回動は、シフト溝67vに嵌合するシフトピン58をコントロールロッド操作子55とともに軸方向に移動させる。
コントロールロッド操作子55はコントロールロッド51の右端部を回転自在に保持しているので、結局シフトドラム67の回動はコントロールロッド51を軸方向に移動させる。
このシフトドラム67は、図示されないシフトセレクトレバーの手動操作によってシフト伝達手段(図示せず)を介して回動する。
シフト伝達手段は、シフトドラム67を所定角度毎の変速段位置に安定して保持させるシフトカム部材などの機構を備えてシフトセレクトレバーの操作動力をシフトドラム67の側縁に形成されたギヤ67gに伝達してシフトドラム67を順次変速段位置に回動する。
以上のように、変速駆動手段50は、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67が回動し、シフトドラム67の回動がシフト溝67vに嵌合したシフトピン58を案内して軸方向に移動し、シフトピン58の移動がコントロールロッド操作子55を介してコントロールロッド51を軸方向に移動し、コントロールロッド51の移動がロストモーション機構52,53を介して係合手段20の8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動する。
ロストモーション機構52,53が組み付けられたコントロールロッド51は、カウンタ歯車軸12の中空内に挿入され中心軸に配設される。
この中空円筒状のカウンタ歯車軸12は、内径がロストモーション機構52,53のスプリングホルダ52h,53hの外径に略等しく、コントロールロッド51に取り付けられたスプリングホルダ52h,53hを摺動自在に嵌挿する。
そして、カウンタ歯車軸12の中空の内周面における8か所の放射位置に断面が矩形の8本のカム案内溝12gが軸方向に指向して延出形成されている(図9参照)。
8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeは、図7に示す配列で対応するカム案内溝12gに摺動自在に嵌合する。
同種類のカムロッドCは、対称位置に配設される。
カウンタ歯車軸12に対するカムロッドCの回り止めとなるカム案内溝12gは、断面コ字状の単純な形状をして簡単に加工成形できる。
カム案内溝12gの深さはカムロッドCの放射方向の幅に等しく、よってカムロッドCの外周側面であるカム面はカム案内溝12gの底面に摺接し、内周側面は中空内周面と略同一面をなしてスプリングホルダ52h,53hの外周面に接し、内周側面から突出した係止爪pはスプリングホルダ52h,53hのいずれかを両側から挟むようにして掴む。
中空筒状をなすカウンタ歯車軸12は、軸受カラー部材13を介して被動変速歯車nが軸支される中央円筒部12aの左右両側に外径が縮径された左側円筒部12bと右側円筒部12cが形成されている(図8参照)。
左側円筒部12bにはワッシャ14Lを介してベアリング7Lが嵌合されるとともに、一部スプライン12sが形成されて出力スプロケット70がスプライン嵌合され、他方、右側円筒部12cにはワッシャ14Rを介してベアリング7Rが嵌合される(図1,図2,図3参照)。
カウンタ歯車軸12の中空内は、カム案内溝12gが形成される内径がスプリングホルダ52h,53hの外径に等しい小径内周面と、同小径内周面の両側の内径がカム案内溝12gの底面と略同一周面をなす大径内周面とが形成されている(図2,図3参照)。
右側の拡大内径部の内側に前記コントロールロッド操作子55が半分程挿入されている。
このように、カウンタ歯車軸12の中空内にコントロールロッド51とロストモーション機構52,53と8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeが組み込まれると、これら全てが一緒に回転し、コントロールロッド51が軸方向に移動すると、左側ロストモーション機構52のコイルスプリング52sを介して逆回転奇数段用カムロッドCboと正回転偶数段用カムロッドCaeが軸方向に連動し、右側ロストモーション機構53のコイルスプリング53sを介して正回転奇数段用カムロッドCaoと逆回転偶数段用カムロッドCbeが軸方向に連動する。
ロストモーション機構52,53がカウンタ歯車軸12の軸方向に並んでコントロールロッド51の外周面と複数のカムロッドCの内側面との間に介装されるので、カウンタ歯車軸12の中空内にあってコントロールロッド51,ロストモーション機構52,53,カムロッドCと径方向に重なる構造で多段変速機10の軸方向の拡大を避け、ロストモーション機構52,53をカウンタ歯車軸12の中空内にコンパクトに収容して、多段変速機10自体の小型化を図ることができる。
ロストモーション機構52,53は、コントロールロッド51上に軸方向に2つ設け、各ロストモーション機構52,53は互いに別のカムロッドCを連動するので、1本のコントロールロッド51の移動に対して複数のカムロッドCに2種類の異なる動きをさせて変速を滑らかにさせることを可能とするとともに、ロストモーション機構52,53を対称な構造として、製造コストを抑えるとともに組立て時の部品管理を容易とする。
ロストモーション機構52,53がコントロールロッド51の外周面と複数のカムロッドCの内側面との間に介装されるスプリングホルダ52h,53hの内周凹部52ha,53haとコントロールロッド51の外周凹部51a,51bで形成される空間にコイルスプリング52s,53sが介装されるので、同じ形状のロストモーション機構52,53をコントロールロッド51上に構成することができる。
図8に示すように、カウンタ歯車軸12の軸受カラー部材13を介して被動変速歯車nが軸支される中央円筒部12aは、外径が大きく厚肉に構成されており、この厚肉の外周部に周方向に一周する幅狭の周方向溝12cvが第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6に対応して軸方向に亘って等間隔に6本形成されるとともに、軸方向に指向した軸方向溝12avが周方向に亘って等間隔に4本形成されている。
さらに、カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周部には、4本の軸方向溝12avで区画された4つの部分が各周方向溝12cvにおいて周方向溝12cvの溝幅を隣り合う軸方向溝12av,12av間に亘って長尺に左右均等に拡大した長尺矩形凹部12pと、周方向溝12cvの溝幅を隣り合う軸方向溝12av,12av間の一部で左右均等に拡大した短尺矩形凹部12qとが、軸方向に交互に形成されている。
長尺矩形凹部12pの底面の周方向に離れた2か所に軸方向に長尺の楕円形をして周方向溝12cvに跨って若干凹んだスプリング受部12d,12dが形成されている。
また、短尺矩形凹部12qと軸方向溝12avとの間の厚肉部で周方向溝12cv上にピン孔12hが前記カム案内溝12gまで径方向に穿孔されている。
すなわち、カウンタ歯車軸12の中空内周面から周方向の8か所に刻設されたカム案内溝12gの放射方向にピン孔12hが穿孔される。
各周方向溝12cv上にはそれぞれ4か所ピン孔12hが形成される。
スプリング受部12dには、楕円形に巻回された圧縮スプリング22がその端部を嵌装させて設けられる。
ピン孔12hにはピン部材23が摺動自在に嵌挿される。
なお、ピン孔12hが連通するカム案内溝12gの幅は、ピン部材23の外径幅より小さい。
したがって、ピン孔12hを進退するピン部材23がカム案内溝12gに脱落することがないので、カウンタ歯車軸12への係合手段20の組み付けを容易にする。
カム案内溝12gにはカムロッドCが摺動自在に嵌合されるので、ピン孔12hに嵌挿されたピン部材23は中心側端部が対応するカムロッドCのカム面に接し、カムロッドCの移動でカム溝vがピン孔12hに対応するとピン部材23がカム溝vに落ち込み、カム溝v以外の摺接面が対応するとピン部材は摺接面に乗り上げ、カムロッドCの移動により進退する。
ピン孔12h内でのピン部材23の進退は、その遠心側端部を周方向溝12cvの底面より外側に出没させる。
以上のような構造のカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周部に形成された長尺矩形凹部12pと短尺矩形凹部12qと両凹部間を連通する周方向溝12cvに、揺動爪部材Rが埋設され、軸方向溝12avに揺動爪部材Rを揺動自在に軸支する支軸ピン26が埋設される。
このようにして、全ての揺動爪部材Rが組み付けられた状態を図11に示す。
図10の分解斜視図には、奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する周方向溝12cvおよび長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12qに埋設される4個の揺動爪部材Rと、偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する周方向溝12cvおよび長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12qに埋設される4個の揺動爪部材Rとが、互いの相対角度位置関係を維持した姿勢で図示されており、加えて各揺動爪部材Rを軸支する支軸ピン26および各揺動爪部材Rに作用する圧縮スプリング22とピン部材23が示されている。
揺動爪部材Rは、全て同じ形状のものを使用しており、軸方向視で略円弧状をなし、中央に支軸ピン26が貫通する貫通孔の外周部が欠損して軸受凹部Rdが形成されており、同軸受凹部Rdの揺動中心に関して一方の側に幅広矩形の係合爪部Rpが形成され、他方の側には幅狭のピン受部Rrが延出し、その端部は幅広に拡大した幅広端部Rqが形成されている。
揺動爪部材Rは、ピン受部Rrがピン孔12hが形成された周方向溝12cvに揺動自在に嵌合し、一方の係合爪部Rpが長尺矩形凹部12pに揺動自在に嵌合するとともに軸受凹部Rdが軸方向溝12avに合致し、他方の幅広端部Rqが短尺矩形凹部12qに嵌合する。
そして、合致した軸受凹部Rdと軸方向溝12avに支軸ピン26が嵌合される。
揺動爪部材Rは、嵌合する周方向溝12cvに関して左右対称に形成されており、一方の幅広矩形の係合爪部Rpが他方のピン受部Rrおよび幅広端部Rqより重く、支軸ピン26に軸支されてカウンタ歯車軸12とともに回転したとき、遠心力に対して係合爪部Rpが重錘として作用して遠心方向に突出するように揺動爪部材Rを揺動させる。
揺動爪部材Rは、ピン受部Rrが揺動中心に関して反対側の係合爪部Rp側より幅が狭く形成されている。
また、ピン受部Rrは、ピン部材23を受け止めるだけの幅を具えれば足りるので、揺動爪部材Rを小型に形成することができ、かつ他方の係合爪部Rpの遠心力による揺動を容易にすることができる。
周方向に隣り合う揺動爪部材Rは、互いに対称な姿勢にカウンタ歯車軸12に組み付けられるので、互いに所定間隔を存して対向する係合爪部Rp,Rpは共通の長尺矩形凹部12pに嵌合し、他方の互いの近接する幅広端部Rqは共通の短尺矩形凹部12qに嵌合する。
揺動爪部材Rの係合爪部Rpの内側にカウンタ歯車軸12のスプリング受部12dに一端を支持された圧縮スプリング22が介装され、ピン受部Rrの内側にピン孔12hに嵌挿されたピン部材23がカムロッドCとの間に介装される。
このようにして、揺動爪部材Rが、支軸ピン26に揺動自在に軸支されてカウンタ歯車軸12の長尺矩形凹部12p,短尺矩形凹部12q,周方向溝12cvに埋設され、一方の係合爪部Rpが圧縮スプリング22により外側に付勢され、他方のピン受部Rrがピン部材23の進退により押圧されることで、圧縮スプリング22の付勢力および係合爪部Rpの遠心力に抗して揺動爪部材Rが揺動する。
ピン部材23が遠心方向に進行して揺動爪部材Rを揺動したときは、揺動爪部材Rは係合爪部Rpが長尺矩形凹部12pに没してカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出するものはない。
また、ピン部材23が退行したときは、圧縮スプリング22により付勢され遠心力が作用する係合爪部Rpがカウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの外周面より外側に突出し被動変速歯車nと係合可能とする。
揺動爪部材Rの係合爪部Rpの内側面と対向するカウンタ歯車軸12の長尺矩形凹部12pとの間に圧縮スプリング22が介装されるので、軸方向にスプリング専用のスペースが不要であり、カウンタ歯車軸12の軸方向の大型化を避けることができるとともに、圧縮スプリング22を揺動爪部材Rの軸方向幅の中央に配置して揺動爪部材R自体を軸方向両側を対称に形成することができ、よって被動変速歯車nとカウンタ歯車軸12の相対回転方向の両方向で係合および係合解除がなされる2種類の揺動爪部材を同じ形状の揺動爪部材Rとすることができ、形状の異なる揺動爪部材を用意する必要がない。
圧縮スプリング22がカウンタ歯車軸12の軸方向を長径とする楕円形状をなし、楕円形状をした圧縮スプリング22は、長径が揺動爪部材Rのピン受部Rrの幅より大きく、ピン受部Rrを揺動可能に嵌合する周方向に一周に亘って形成される周方向溝12cvを跨いで受け止められるので、カウンタ歯車軸12の加工を容易にするとともに、揺動爪部材Rを安定してカウンタ歯車軸12に組み付けることができる。
奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する4個の揺動爪部材Rと、偶数段の偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する4個の揺動爪部材Rは、互いに軸中心に90度回転した相対角度位置関係にある。
奇数段歯車(第1,第3,第5被動変速歯車n1,n3,n5)に対応する4個の揺動爪部材Rは、歯車の正回転方向で当接して各奇数段被動変速歯車n1,n3,n5とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する正回転奇数段揺動爪部材Raoと、歯車の逆回転方向で当接して各奇数段被動変速歯車n1,n3,n5とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する逆回転奇数段揺動爪部材Rboとが、それぞれ対称位置に一対ずつ設けられる。
同様に、偶数段歯車(第2,第4,第6被動変速歯車n2,n4,n6)に対応する4個の揺動爪部材Rは、歯車の正回転方向で当接して各偶数段被動変速歯車n2,n4,n6とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する正回転偶数段揺動爪部材Raeと、歯車の逆回転方向で当接して各偶数段被動変速歯車n2,n4,n6とカウンタ歯車軸12とが同期して回転するように係合する逆回転偶数段揺動爪部材Rbeとが、それぞれ対称位置に一対ずつ設けられる。
正回転奇数段揺動爪部材Raoが前記正回転奇数段用カムロッドCaoの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転奇数段揺動爪部材Rboが前記逆回転奇数段用カムロッドCboの移動により進退するピン部材23により揺動する。
同様に、正回転偶数段揺動爪部材Raeが前記正回転偶数段用カムロッドCaeの移動により進退するピン部材23により揺動し、逆回転偶数段揺動爪部材Rbeが前記逆回転偶数段用カムロッドCbeの移動により進退するピン部材23により揺動する。
カウンタ歯車軸12に係合手段20を組み込む場合、まず右端の軸受カラー部材13を中央円筒部12aの外周端部に外装し、その軸受カラー部材13の内側の軸方向溝12avに支軸ピン26の一端を嵌入するようにして右端の係合手段20を組み込み、次の軸受カラー部材13を前記支軸ピン26の他端を覆うように外装した後、前段と同じようにして次段の係合手段20を組み込むことを、順次繰り返して、最後に左端の軸受カラー部材13を外装して終了する。
図12に示すように、軸受カラー部材13は、中央円筒部12aの長尺矩形凹部12pおよび短尺矩形凹部12q以外の軸方向位置に外装され、それは軸方向溝12avに一列に連続して埋設される支軸ピン26の隣り合う支軸ピン26,26に跨って配置され、支軸ピン26および揺動爪部材Rの脱落を防止する。
カウンタ歯車軸12の中央円筒部12aの軸方向溝12avに埋設される支軸ピン26は、中央円筒部12aの外周面に接する深さに埋設されるので、軸受カラー部材13が外装されると、ガタなく固定される。
7個の軸受カラー部材13がカウンタ歯車軸12に等間隔に外装され、隣り合う軸受カラー部材13,13間に跨るようにして被動変速歯車nが回転自在に軸支される。
各被動変速歯車nは、図13および図15に示すように、内周面の左右周縁部を切り欠いて左右環状穴30L,30Rが形成され、この左右環状穴30L,30R間に内周突条部30Cが円環状に形成されている。
被動変速歯車nの左側環状穴30Lに対して右側環状穴30Rは、径が若干小さいがより深く形成されており、一方、軸受カラー部材13は、外周面が軸方向の略中央の段部によって左側小径部と右側大径部とが左右に形成されていて、被動変速歯車nの内径の小さい右側環状穴30Rに右側の軸受カラー部材13の左側小径部が滑動自在に嵌入し、内径の大きい左側環状穴30Lに左側の軸受カラー部材13の右側大径部が滑動自在に嵌入し、左右の軸受カラー部材13,13により被動変速歯車nは回動自在に軸支される(図2,図3参照)。
このようにしてカウンタ歯車軸12に軸受カラー部材13を介して第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6が回転自在に軸支される。
図13および図15を参照して、被動変速歯車nの内周中央に環状に突出した内周突条部30Cの内周面にはさらに係合凸部31が周方向に等間隔に4箇所突出形成されている。
係合凸部31は、側面視(図13に示す軸方向視)で円弧状をなし、その周方向の両端面が前記揺動爪部材Rの係合爪部Rpと当接し係合可能な傾斜した係合面31p,31pをなす。
係合凸部31の両側の係合面31p,31pが立ち上がる各基部には溝31v,31vが係合凸部31を両側から縊るように切り込んで形成されている。
係合凸部31の係合面31pに係合爪部Rpが当接して押圧された際に、この溝31vが形成されていることにより係合凸部31の基部に応力が集中せずに分散して構造的に係合凸部31の強度を高めることができる。
右側環状穴30Rの底面である内周突条部30Cの右側面には、周方向で4つの係合凸部31の各間に4つの円弧溝32が形成されている(図13,図15参照)。
また、右側環状穴30Rの内周面には軸方向所定箇所に内周溝33が形成されている(図15参照)。
この右側環状穴30Rには、外径が右側環状穴30Rの内径に略等しく内径が内周突条部30Cの内径に略等しい円環状をした環状板部材35が相対回動自在に嵌挿される。
環状板部材35は内周突条部30Cの右側面に摺接する。
環状板部材35は、図14および図15に示すように、内周に当接凸部36が周方向に等間隔に4箇所突出形成されている。
当接凸部36は、前記被動変速歯車nの係合凸部31と同様に、側面視(図14に示す軸方向視)で円弧状をなし、その周方向の両端面が前記揺動爪部材Rの係合爪部Rpと当接可能な傾斜面36pb,36psをなす。
環状板部材35の当接凸部36は、被動変速歯車nの係合凸部31より周方向に長尺である。
環状板部材35の左側面には、周方向で4つの当接凸部36の各間にそれぞれ円弧状切欠き37が形成されている(図13,図15参照)。
この環状板部材35の円弧状切欠き37は、被動変速歯車nの円弧溝32と周方向の長さは等しく、互いに対向する(図15参照)。
被動変速歯車nの右側環状穴30Rに環状板部材35を嵌挿する際に、4か所の相対向する円弧溝32と円弧状切欠き37の双方にコイルばね38を半体ずつ嵌合して介装する。
4本のコイルばね38は、被動変速歯車nに対して環状板部材35を弾性的に位置決めし、位置決めされた状態で、環状板部材35の当接凸部36の少なくとも傾斜面形成部分を除く部分が軸方向視で被動変速歯車nの係合凸部31に重なる(図5,図17参照)。
すなわち、図17に示すように、周方向に長尺の当接凸部36は、傾斜面36pb,36psを形成する両側部分が係合凸部31の周方向両端面(係合面31p,31p)よりも外側にはみ出している。
また、軸方向視で、当接凸部36の頂上円弧面は、係合凸部31の頂上円弧面と等しいか若干回転中心側に延出している。
そして、右側環状穴30Rの内周面に形成された内周溝33にサークリップ39が嵌合されて環状板部材35は被動変速歯車nに対して軸方向に位置決めされる(図16参照)。
このように、被動変速歯車nの右側環状穴30Rに嵌挿された環状板部材35は、コイルばね38により弾性的に位置決めされているので、被動変速歯車nに対して相対的な回動があると、コイルばね38のばね力が環状板部材35を元に戻す方向に働く。
被動変速歯車nに対して環状板部材35が外力の影響を受けずにコイルばね38により弾性的に位置決めされている状態における環状板部材35の当接凸部36およびその近傍を拡大して図17に示している。
同図17に示すように、環状板部材35の当接凸部36は、周方向の両端の揺動爪部材Rの係合爪部Rpと当接する傾斜面が、係合爪部Rpが係合可能な傾斜角を有する底部傾斜面36pbと係合爪部Rpが係合不能で摺接する傾斜角を有する頂部傾斜面36psとからなる。
当接凸部36の環状板部材35の内周面に近い底部側の底部傾斜面36pbは、内周面からの立ち上がり点での内周円の接線に対する傾斜角が頂部傾斜面36psより急傾斜面をなし、この底部傾斜面36pbに係合爪部Rpが当接すると、係合爪部Rpは滑ることなく係合する。
一方、当接凸部36の環状板部材35の内周面から離れた頂部側の頂部傾斜面36psは、底部傾斜面36pbから屈曲して傾斜角が緩い緩斜面をなすことで、この緩斜面の頂部傾斜面36psに係合爪部Rpが当接すると、係合爪部Rpは頂部傾斜面36psから回転中心側に押し付けられる大きな力を受けて、圧縮スプリング22に抗して揺動して頂部傾斜面36psを滑り、係合することなく当接凸部36を乗り越える。
このとき、コイルばね38により弾性的に位置決めされた環状板部材35は、被動変速歯車nに対して殆ど相対的に回動しない。
図17ないし図20は、揺動爪部材Rの係合爪部Rpが環状板部材35に当接する直前に大きく外側に揺動していたときの環状板部材35と被動変速歯車nおよびカウンタ軸12の動きを示したものである。
図17は、被動変速歯車nがコイルばね38により弾性的に位置決めされた環状板部材35とともに回転しているところに、揺動爪部材Rが圧縮スプリング22のばね力により揺動して係合爪部Rpが外側に突出し、係合凸部31より先行して回転する当接凸部36に当接する直前の状態を示しており、係合爪部Rpは十分に大きく突出しているため、当接凸部36の急傾斜面である底部傾斜面36pbが係合爪部Rpに当接しようとしている。
図18は、環状板部材35の当接凸部36の底部傾斜面36pbが揺動爪部材Rの係合爪部Rpの爪先端に当接した状態を示しており、底部傾斜面36pbは急傾斜面であるので、係合爪部Rpが滑ることなく底部傾斜面36pbに係合する。
したがって、係合爪部Rpの係合により環状板部材35は回転が規制され、被動変速歯車nが環状板部材35に対してコイルばね38に抗して相対回転して、図19に示すように、被動変速歯車nの係合突起31の係合面31pが係合爪部Rpに当接し係合する。
係合爪部Rpは十分に大きく突出した状態で、被動変速歯車nの係合突起31に衝接するので、係合爪部Rpの一部に過大な荷重が加わることなく係合し、図20に示すように、被動変速歯車nの回転が揺動爪部材Rを介してカウンタ歯車軸12に伝達される。
図21ないし図24は、揺動爪部材Rの係合爪部Rpが環状板部材35に当接する直前に小さく外側に揺動していたときの環状板部材35と被動変速歯車nおよびカウンタ軸12の動きを示したものである。
図21は、被動変速歯車nが環状板部材35とともに回転しているところに、揺動爪部材Rが揺動して係合爪部Rpが外側に突出し、係合凸部31より先行する当接凸部36に当接する直前の状態を示しており、係合爪部Rpは小さく突出して十分でないため、当接凸部36の緩斜面である頂部傾斜面36psが係合爪部Rpに当接しようとしている。
図22は、環状板部材35の当接凸部36の頂部傾斜面36psが揺動爪部材Rの係合爪部Rpの爪先端に当接した状態を示しており、頂部傾斜面36psは緩斜面であるので、係合爪部Rpは頂部傾斜面36psから回転中心側に押し付けられる大きな力を受ける。
よって、図23に示すように、揺動爪部材Rは圧縮スプリング22に抗して揺動して係合爪部Rpは頂部傾斜面36psに係合することなく頂部傾斜面36ps上を滑りながら回転中心側に揺動して引っ込む。
したがって、揺動爪部材Rの係合爪部Rpは、図24に示すように、コイルばね38により被動変速歯車nに対して殆ど相対的に回動しない環状板部材35の当接凸部36の頂上円弧面に至り、よって係合爪部Rpは当接凸部36を乗り越えることになる。
係合爪部Rpが当接凸部36を乗り越えることことは、被動変速歯車nの係合凸部31を乗り越えることであり、係合爪部Rpは係合凸部31に当接することもなく、当該係合凸部31では動力の伝達はなされない。
ただし、次に回転してくる環状板部材35の当接凸部36に対しては、係合爪部Rpを大きく突出する余裕があるので、前記図18ないし図21に示した経過をたどって、係合爪部Rpが係合凸部31に係合して動力伝達がなされることになる。
以上のように、環状板部材35は傾斜面36pb,36psにより揺動爪部材Rの係合爪部Rpの外側への突出量を選別しており、揺動爪部材Rの係合爪部Rpが、十分に突出する余裕がなく小さく突出した状態での被動変速歯車nの係合凸部31との係合は回避されるので、係合爪部Rpの爪先端が係合凸部31に衝接して爪先端の一部に過大な荷重が加わり、損傷を受けるようなことは防止することができる。
なお、被動変速歯車nの係合凸部31が周方向両端に係合面31pと係合面31pを有すると同様に、環状板部材35の当接凸部36も周方向両端に傾斜面36pb,36psと傾斜面36pb,36psを有するので、逆回転方向における揺動爪部材Rと被動変速歯車nの係合凸部31との係合についても環状板部材35が働き、係合爪部Rpの一部に過大な荷重が加わるような事態は回避される。
また、被動変速歯車nの係合凸部31と同時に係合する揺動爪部材Rを、カウンタ歯車軸12の中心軸対称に一対備えており、一方が係合して他方が係合していない事態は避けなければならない。
そのためには、環状板部材35の一対の底部傾斜面36pbに一対の揺動爪部材Rの係合爪部Rpが必ずともに当接し係合する必要がある。
正確に同時に当接するためには、揺動爪部材Rおよび環状板部材35等の部品の加工・組付け精度に高い精度が要求され、コストが増加する。
そこで、本環状板部材35は、底部傾斜面36pbの傾斜角度を工夫している。
すなわち、図18を参照して、揺動爪部材Rの係合爪部Rpが底部傾斜面36pbに接したときの接点Qと揺動爪部材Rの揺動中心P(ピン26の軸中心)とを結ぶ直線PQと、底部傾斜面36pbとのなす角度θを直角に近い鈍角としたものであり、図18に示す状態では角度θは93度である。
揺動爪部材Rおよび環状板部材35等の部品の加工・組付け精度がそれ程高くなく、一対の揺動爪部材Rの係合爪部Rpの一方が先に環状板部材35の一対の底部傾斜面36pbの一方に当接し係合したとしても、角度θが90度を超えて底部傾斜面36pbが開いているので、他方の係合爪部Rpが他方の底部傾斜面36pbに後から揺動して係合することが可能である。
よって、一対の揺動爪部材Rの係合爪部Rpが同時に環状板部材35の一対の底部傾斜面36pbに当接しなくても、順次係合爪部Rpが揺動して当接することが可能で、一方の揺動爪部材Rが被動変速歯車nの係合凸部31に係合できない事態を回避することができる。
なお、直線PQと底部傾斜面36pbとのなす角度θとしては、90度<θ≦100度が好ましい角度である。
なお、角度θが100度を超えて大きくなると、係合爪部Rpが底部傾斜面36pbに係合せずに滑る可能性がある。
正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)と逆回転奇数段揺動爪部材Rbo(逆回転偶数段揺動爪部材Rbe)は、互いに対向する側に係合爪部Rp,Rpを延出しており、正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)は被動変速歯車n(およびカウンタ歯車軸12)の正回転方向で係合凸部31に当接して係合し、逆回転奇数段揺動爪部材Rbo(逆回転偶数段揺動爪部材Rbe)は被動変速歯車nの逆の回転方向で、係合凸部31に当接して係合する。
なお、正回転奇数段揺動爪部材Rao(正回転偶数段揺動爪部材Rae)は被動変速歯車nの逆の回転方向では係合爪部Rpが外側に突出していても係合せず、同様に、逆回転奇数段揺動爪部材Rbo(逆回転偶数段揺動爪係合部材Rbe)は被動変速歯車nの正回転方向では係合爪部Rpが外側に突出していても係合しない。
カムロッドCがニュートラル位置にあれば、全ての被動変速歯車nは、それぞれ対応する係合手段20のカムロッドCの移動位置によりピン部材23が突出して揺動爪部材Rのピン受部Rqを内側から押し上げ係合爪部Rpを内側に引っ込めた係合解除状態にあって、カウンタ歯車軸12に対して自由に回転する。
一方、係合手段20のカムロッドCのニュートラル位置以外の移動位置によりピン部材23がカム溝vに入り揺動爪部材Rが揺動して係合爪部Rpを外側に突出した係合可能状態となれば、対応する被動変速歯車nの係合凸部31が環状板部材35の当接凸部36の後に係合爪部Rpに当接して、該被動変速歯車nの回転がカウンタ歯車軸12に伝達されるか、またはカウンタ歯車軸12の回転が該被動変速歯車nに伝達される。
前記変速駆動手段50において、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67を所定量回動し、シフトドラム67の回動がシフト溝67vに嵌合したシフトピン58を介してコントロールロッド51を軸方向に所定量移動し、ロストモーション機構52,53を介して係合手段20の8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動する。
カムロッドCが軸方向に移動することで、カムロッドCのカム面に摺接するピン部材23がカム溝vに入ったり抜けたりして進退し、揺動爪部材Rを揺動して、被動変速歯車nとの係合を解除し、他の被動変速歯車nと係合してカウンタ歯車軸12と係合する被動変速歯車nを変えることで変速が行われる。
なお、変速駆動手段として、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67を回転して変速を行うようにしているが、変速駆動モータを駆動してゼネバ・ストップ機構等を介してシフトドラムを回転させるようにして変速を行うようにしてもよい。
内燃機関の動力は、摩擦クラッチ5を介してメイン歯車軸11に伝達されて、第1,第2,第3,第4,第5,第6駆動変速歯車m1,m2,m3,m4,m5,m6を一体に回転しており、これらにそれぞれ常時噛合する第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6をそれぞれの回転速度で回転させている。
図2ないし図5は、1速状態を示しており、図4では第1被動変速歯車n1が矢印方向に回転し、図5では第2被動変速歯車n2が矢印方向に回転しており、第1被動変速歯車n1よりも第2被動変速歯車n2が高速で回転している。
第1被動変速歯車n1に対応する係合手段20のピン部材23のみが正回転奇数段用カムロッドCaoおよび逆回転奇数段用カムロッドCboのカム溝v1に入っており(図2参照)、したがって該係合手段20の正回転奇数段揺動爪部材Raoが係合爪部Rpを外側に突出して、回転する第1被動変速歯車n1の係合凸部31が正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpに係合して(図4参照)、カウンタ歯車軸12を第1被動変速歯車n1とともに第1被動変速歯車n1と同じ回転速度で回転している。
この1速状態では、第2被動変速歯車n2は、対応する係合手段20のピン部材23が偶数段用カムロッドCae,Cbeのカム溝v2から出て突出し(図3参照)、該係合手段20の偶数段揺動爪部材Rae,Rbeが係合爪部Rpを内側に引っ込めているので、空回りしている。
他の第3,第4,第5,第6被動変速歯車n3,n4,n5,n6も同様で空回りしている(図2,図3参照)。
ここで、2速に変速すべく、シフトセレクトレバーの手動操作によってシフトドラム67を回動してコントロールロッド51が軸方向右方に移動すると、ロストモーション機構52,53のコイルスプリング52s,53sを介して8本のカムロッドCao,Cao,Cae,Cae,Cbo,Cbo,Cbe,Cbeを連動して軸方向右方に移動しようとする。
正回転奇数段用カムロッドCaoは、ピン部材23を介して作動する正回転奇数段揺動爪部材Raoが第1被動変速歯車n1の係合凸部31と係合して第1被動変速歯車n1から動力を受けているので、正回転奇数段揺動爪部材Raoを揺動して係合を解除するのに相当大きな摩擦抵抗があり、当初直ぐには移動せず、よって逆回転偶数段用カムロッドCbeも停止したままであるが、正回転偶数段用カムロッドCaeと逆回転奇数段用カムロッドCboは抵抗なく移動する。
逆回転奇数段用カムロッドCboの移動で1速の逆回転奇数段揺動爪部材Rboが係合爪部Rpを内側に引っ込める。
正回転偶数段用カムロッドCaeの移動で、カム溝v2にピン部材23が入り、よって第2被動変速歯車n2に対応する正回転偶数段揺動爪部材Raeが圧縮スプリング22の付勢力および係合爪部Rpの遠心力により揺動して係合爪部Rpを外側に突出し、第2被動変速歯車n2に係合可能となり、第1被動変速歯車n1とともに回転するカウンタ歯車軸12より高速で回転する第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの外側に突出した係合爪部Rpに追いつき当接する。
この直後から、より高速で回転する第2被動変速歯車n2によりカウンタ歯車軸12が第2被動変速歯車n2と同じ回転速度で回転し始め、第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpが離れ、実際の1速から2速へのシフトアップが実行される。
第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpが離れることで、正回転奇数段揺動爪部材Raoを固定する摩擦抵抗が無くなり、ロストモーション機構53のコイルスプリング53sにより付勢されていた正回転奇数段用カムロッドCaoが後れて右方に移動してカム溝v1に入っていたピン部材23が抜け出し、1速の正回転奇数段揺動爪部材Raoを揺動してその係合爪部Rpを内側に引っ込める。
以上のように、1速状態から減速比が1段小さい2速状態にシフトアップする際に、第1被動変速歯車n1の係合凸部31が正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpに当接して係合しカウンタ歯車軸12を第1被動変速歯車n1と同速度で回転させている状態で、より高速で回転する第2被動変速歯車n2の係合凸部31が正回転偶数段揺動爪部材Raeの係合爪部Rpに追いつき当接してカウンタ歯車軸12を第2被動変速歯車n2とともにより高速度で回転させて変速するので、第1被動変速歯車n1の係合凸部31から正回転奇数段揺動爪部材Raoの係合爪部Rpは自然と離れていき係合が円滑に解除されるため、係合解除に力を要せず滑らかに作動して滑らかなシフトアップを行うことができる。
2速から3速、3速から4速、4速から5速、5速から6速の各シフトアップも同様に、被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合している状態で、減速比が1段小さい被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合してシフトアップがなされるので、係合解除に力を要せず滑らかに作動して変速用のクラッチを必要とせず、かつシフトアップ時の切換え時間に全くロスがなく、駆動力の抜けがないとともに変速ショックも小さく、滑らかなシフトアップを行うことができる。
シフトダウンも同様に、被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合している状態で、減速比が1段大きい被動変速歯車nに揺動爪部材Rが係合してシフトダウンがなされるので、係合解除に力を要せず滑らかに作動して変速用のクラッチを必要とせず、かつシフトダウン時の切換え時間に全くロスがなく、駆動力の抜けがないとともに変速ショックも小さく、滑らかなシフトダウンを行うことができる。
被動変速歯車nが揺動爪部材Rに係合するに際しては、前記したように、環状板部材35の傾斜面36pb,36psにより揺動爪部材Rの係合爪部Rpの突出量を選別して、十分に突出する余裕がなく小さく突出した状態での被動変速歯車nの係合凸部31との係合は回避され、大きく突出した状態で確実に係合するようにしているため、係合爪部Rpの爪先端の一部に過大な荷重が加わるのを防止することができ、揺動爪部材を小さくすることができる。
次に、別の実施の形態について図25ないし図34に基づいて説明する。
本実施の形態における多段変速機は、前記実施の形態に係る多段変速機10と以下の2つの相違点を除き同じ構造のものであり、よって、同じ部材には同じ符号を用いる。
前記多段変速機10は、カウンタ歯車軸12に軸受カラー部材13を介して回転自在に軸支される第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5,n6の各内周突条部30Cに揺動爪部材Rの係合爪部Rpと係合する係合凸部31が形成されていて、同係合凸部31の両側の係合面31p,31pが立ち上がる両側基部には溝31v,31vが形成されているのに対して、本多段変速機は、図26に示すように、係合凸部31の両側の一方、シフトアップ用の揺動爪部材R(正回転奇数段揺動爪部材Rao、正回転偶数段揺動爪部材Rae)と係合する側にのみ溝31vが形成されていない。
これが第1の相違点である。
この溝31vは、係合凸部31の係合面31pに係合爪部Rpが当接して押圧された際に、係合凸部31の基部に応力を集中させず分散して構造的に強度を高めるものであるが、シフトアップ時の係合押圧力に比べ、シフトダウン時の係合押圧力は小さく、係合凸部31におけるシフトダウン用の揺動爪部材R(逆回転奇数段揺動爪部材Rbo、逆回転偶数段揺動爪部材Rbe)が係合する側の係合面31pの基部に溝31vを浅く形成したり、必要とされない場合がある。
係合凸部31の一方の溝31vを形成しないことで、加工作業が削減される。
次に、第2の相違点は、減速比が最小の第6被動変速歯車n6について、その内周面に形成される内周突条部30Cと環状板部材35との間に介装されていたコイルばね(戻しばね)38を取り外し、コイルばね38による位置決めに代えて、内周突条部30Cの側面と環状板部材35との間に環状のウェーブスプリング60が適度な圧力で挟装され、環状板部材35を所定のフリクションを持って第6被動変速歯車n6に追随させるフリクション構造が構成されている点である。
第6被動変速歯車n6の内周に組付けられるウェーブスプリング60,環状板部材35,サークリップ39および軸受カラー部材13の分解断面図を図27に示し、その組付けられた状態を図28に示す。
第6被動変速歯車n6の内周面は、左右環状穴30L,30R間に内周突条部30Cが円環状に形成されており、右側環状穴30Rの内周面には所定軸方向位置に、サークリップ39が嵌合される内周溝33が形成されている。
しかし、他の歯車とは違って、第6被動変速歯車n6は内周突条部30Cの側面にコイルばね38を介装する円弧溝32は形成されていない。
同様に、環状板部材35にもコイルばね38を介装する円弧状切欠き37が形成されていない。
したがって、第6被動変速歯車n6および環状板部材35の加工製造が容易にできる。
なお、環状板部材35は、円弧状切欠き37を有しないこと以外は、前記実施の形態の環状板部材35と同じで、符号も同じとする。
ウェーブスプリング60は、図29および図30に示すように、フラットワイヤにウェーブ(波形状)を形成しながら環状に成形し、ばね特性を持たせたもので、狭い間隙でも挟装して付勢力を働かせることができる。
このウェーブスプリング60は、外径が第6被動変速歯車n6の右側環状穴30Rの内径より若干小さく、右側環状穴30Rに嵌挿される。
第6被動変速歯車n6の右側環状穴30Rには、嵌挿されたウェーブスプリング60に重ねて環状板部材35がさらに嵌挿され、環状板部材35がウェーブスプリング60を第6被動変速歯車n6の内周突条部30Cに対して適当に押圧する状態で、右側環状穴30Rの内周面に形成された内周溝33にサークリップ39が嵌合されて環状板部材35が位置決めされる。
したがって、第6被動変速歯車n6の内周突条部30Cの側面と環状板部材35との間に環状のウェーブスプリング60が適度な圧力で挟装されることになり、環状板部材35を所定のフリクションを持って第6被動変速歯車n6に追随させるフリクション構造が構成される。
なお、ウェーブスプリング60の代わりに、図31および図32に図示するような環状の皿ばね70を用いてもよい。
第6被動変速歯車n6の左側環状穴30Lと右側環状穴30Rには、軸受カラー部材13,13が嵌合されてカウンタ歯車軸12との間に介装されるが、フリクション構造が構成される右側環状穴30Rに嵌合される軸受カラー部材13は、環状板部材35側の外周端縁が環状に切り欠かれて縁取り段部13dが形成されており、この縁取り段部13dが第6被動変速歯車n6の内周端縁に嵌合する。
図28に示すように、右側環状穴30Rに縁取り段部13dで嵌合した軸受カラー部材13は、その軸方向内側のサークリップ39との間に隙間40を形成している。
すなわち、第6被動変速歯車n6の軸方向のスラスト力は軸受カラー部材13の縁取り段部13dが受けることで、第6被動変速歯車n6の内周突条部30Cと軸受カラー部材13との間隔は維持される。
したがって、内周突条部30Cにウェーブスプリング60を適当な圧力で挟みつける環状板部材35が軸受カラー部材13に押されてウェーブスプリング60がさらに強く挟圧されて環状板部材35の第6被動変速歯車n6に対する相対回転を妨げられるようなことがないため、揺動爪部材Rを精度良く案内して第6被動変速歯車n6の係合凸部31に適正なタイミングで係合することができる。
第6被動変速歯車n6以外の第1,第2,第3,第4,第5被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5についても、軸受カラー部材13の環状板部材35側の外周端縁は環状に切り欠かれて縁取り段部13dが形成されて、この縁取り段部13dが第1,第2,第3,第4,第5,第6被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5の内周端縁に嵌合するようになっていて、軸受カラー部材13とサークリップ39との間に隙間40が確保されている。
したがって、第1,第2,第3,第4,第5被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5がスラスト力を受けても軸受カラー部材13が各環状板部材35を押圧することはなく、各環状板部材35の第1,第2,第3,第4,第5被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5に対する円滑な相対回転を妨げられることがないため、揺動爪部材Rを精度良く案内して係合凸部31に適正なタイミングで係合することができる。
なお、先の実施の形態においても、同様の構造をなし、図16に示すように、軸受カラー部材13とサークリップ39との間に隙間40が確保されている。
減速比が最小の第6被動変速歯車n6については、前記したように、他の第1,第2,第3,第4,第5被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5とは異なり、コイルばね38による環状板部材35の位置決め構造に代えて、内周突条部30Cの側面と環状板部材35との間に環状のウェーブスプリング60が適度な圧力で挟装されるフリクション構造にして、環状板部材35を所定のフリクションを持って第6被動変速歯車n6に追随させるようにしている。
減速比が最小の6速が確立している状態では、図33に示すように、第6被動変速歯車n6は、その係合凸部31が係合爪部Rpを突出した正回転偶数段揺動爪部材Raeに係合して動力が伝達されており、環状板部材35は当接凸部36を正回転偶数段揺動爪部材Raeに押されて係合凸部31より逆回転側に移動している。
なお、図34に示すように、環状板部材(35)の前記当接凸部(36)の周方向幅Wは、ともに突出状態にあるシフトアップ用の正回転偶数段揺動爪部材Raeの係合爪部Rpとシフトダウン用の逆回転偶数段揺動爪部材Rbeの係合爪部Rpとの間の周方向間隔Dより小さいので、環状板部材35の当接凸部36は正回転偶数段揺動爪部材Raeと逆回転偶数段揺動爪部材Rbeとの間に納まってシフトアップとシフトダウンのいずれにも即応できる状態とすることができる。
6速が確立している図33に示す状態で、減速されてシフトダウン操作がなされると、第6被動変速歯車n6は、カウンタ歯車軸12とともに旋回する正回転偶数段揺動爪部材Rae,逆回転偶数段揺動爪部材Rbeより回転が遅くなり、図34に示すように、正回転偶数段揺動爪部材Raeは係合凸部31から離れるが、このとき環状板部材35の当接凸部36はウェーブスプリング60のフリクションにより係合凸部31に追随して相対位置を変えず、係合凸部31より逆回転側に移動したままであり、この係合凸部31に逆回転偶数段揺動爪部材Rbeの突出していた係合爪部Rpが近づいてくる。
したがって、逆回転偶数段揺動爪部材Rbeの突出した係合爪部Rpは、係合凸部31より逆回転側にある環状板部材35の当接凸部36にまず当接して、当接凸部36を正回転側に移動しながら第6被動変速歯車n6の係合凸部31に確実に係合する(図34の2点鎖線を参照)。
このように、係合凸部31から正回転偶数段揺動爪部材Raeの係合爪部Rpが離れたときに、戻しばね等により環状板部材35の当接凸部36を係合凸部31と中央で重なる位置に移動させる必要がない。
シフトアップ操作がなされる5速以下の変速段では、減速して正回転揺動爪部材Raが係合凸部31から離れた状態で(図33参照)、増速してシフトアップがなされることがあり、そのときはもし環状板部材35が逆回転方向に移動したままであると、正回転揺動爪部材Raの係合爪部Rpが事前に環状板部材35の当接凸部36に当接することなく、直接係合凸部31に衝接することになるので、係合凸部31により係合爪部Rpの一部に過大な荷重を受けることがある。
そのため、第1,第2,第3,第4,第5被動変速歯車n1,n2,n3,n4,n5については、コイルばね38により環状板部材35の当接凸部36が係合凸部31と中央で重なるように位置決めされるように、常に付勢されている。
そして、増速してシフトアップがなされることがない第6被動変速歯車n6については、ウェーブスプリング60により環状板部材35の当接凸部36を係合凸部31に追随させるフリクション構造が採用されている。
以上のように、減速比が最小の第6被動変速歯車n6については、コイルばね38による環状板部材35の位置決め構造に代えて、第6被動変速歯車n6の内周突条部30Cの側面と環状板部材35との間に環状のウェーブスプリング60が適度な圧力で挟装される簡単なフリクション構造にしたので、構造を簡素化し、部品の加工性および組付け性も良好にしてコストの削減を図ることができる。
なお、減速比が最大の第1被動変速歯車n1についても、1速が確立しているときに、シフトダウン操作はしないので、必要に応じてフリクション構造としてもよい。

Claims (10)

  1. 互いに平行な歯車軸にそれぞれ複数の駆動歯車(m)と被動歯車(n)が変速段毎に常時噛み合い状態で軸支され、前記駆動歯車(m)と前記被動歯車(n)の一方の複数の歯車が歯車軸に固定され、他方の各歯車の内周面に形成された係合凸部(31)と歯車軸(12)に径方向外側に出没可能に設けられた係合爪(R)の突出により互いの係合を行う係合手段が各歯車ごとに切り換えられて変速を行う多段変速機において、
    前記歯車(n)の内周面に環状に突出した内周突条部(30C)に前記係合凸部(31)が形成され、
    前記歯車(n)の前記係合凸部(31)が形成される前記内周突条部(30C)の側面に相対回動自在に近接する環状板部材(35)と、
    前記歯車(n)と前記環状板部材(35)との間に介装され両者の所定の相対位置関係を弾性的に維持する戻しばね(38)とを備え、
    前記環状板部材(35)は、内周面に周方向に前記係合爪(R)と当接可能な傾斜面を有して当接凸部(36)が突出形成され、前記当接凸部(36)の少なくとも前記傾斜面形成部分を除いた部分が軸方向視で前記係合凸部(31)に重なるように前記戻しばね(38)により位置決めされ、
    前記当接凸部(36)の傾斜面は、前記係合爪(R)が係合可能な傾斜角を有する底部傾斜面(36pb)と前記係合爪(R)が係合不能で摺接する傾斜角を有する頂部傾斜面(36ps)とからなることを特徴とする多段変速機。
  2. 前記係合爪(R)は前記歯車軸に対して揺動して爪先端部(Rp)を径方向に出没し、
    前記係合爪(R)の爪先端部(Rp)が前記当接凸部(36)の底部傾斜面(36pb)に接したときの接点(Q)と前記係合爪(R)の揺動中心(P)とを結ぶ直線(PQ)と前記底部傾斜面(36pb)とのなす角度(θ)を直角に近い鈍角としたことを特徴とする請求項1記載の多段変速機。
  3. 前記直線(PQ)と前記底部傾斜面(36pb)とのなす角度(θ)は、90度を超えて100度以下の角度であることを特徴とする請求項2記載の多段変速機。
  4. 前記歯車(n)の前記内周突条部(30C)に形成された前記係合凸部(31)の周方向両側基部のうち少なくともシフトアップ用の前記係合爪(Ra)と係合する側の基部に溝(31v)を形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項記載の多段変速機。
  5. 前記歯車(n)の前記係合凸部(31)が形成される前記内周突条部(30C)の側面に周方向に沿って円弧状溝(32)を設け、
    前記環状板部材(35)の前記内周突条部(30C)に対向する側面に前記円弧状溝(32)に対応する円弧状切欠き(37)を形成し、
    前記円弧状溝(32)と前記円弧状切欠き(37)に跨って前記戻しばね(38)を介装し、
    前記環状板部材(35)の前記内周突条部(30C)に対向する側面の反対面を係止部材(39)により係止して前記環状板部材(35)の軸方向の移動を規制したことを特徴とする請求項1記載の多段変速機。
  6. 前記環状板部材(35)の前記当接凸部(36)の周方向幅は、ともに突出状態にあるシフトアップ用の前記係合爪(Ra)の爪先端部(Rp)とシフトダウン用の前記係合爪(Rb)の爪先端部(Rp)との間の周方向間隔より小さいことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項記載の多段変速機。
  7. 前記歯車(n)は、前記歯車軸(12)に外装された隣り合う軸受カラー部材(13,13)間に跨るように外嵌して回転自在に軸支され、
    前記軸受カラー部材(13)の前記環状板部材(35)が設けられた側の外周端縁が環状に切り欠かれて縁取り段部(13d)が形成され、同縁取り段部(13d)に前記歯車(n)の内周端縁が嵌合して前記歯車(n)が軸支されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項記載の多段変速機。
  8. 減速比が最小または最大の歯車のうち少なくとも最小の歯車(n6)には、前記環状板部材(35)との間に、前記戻しばね(38)による位置決めに代えて、前記環状板部材(35)を所定のフリクションを持って前記歯車(n6)に追随させるフリクション構造が構成されることを特徴とする請求項1記載の多段変速機。
  9. 前記フリクション構造は、前記歯車(n6)の前記内周突条部(30C)の側面と前記環状板部材(35)との間に環状のウェーブスプリング(60)が挟装される構造であることを特徴とする請求項8記載の多段変速機。
  10. 前記フリクション構造は、前記歯車(n6)の前記内周突条部(30C)の側面と前記環状板部材(35)との間に環状の皿ばね(70)が挟装される構造であることを特徴とする請求項8記載の多段変速機。
JP2011525868A 2009-08-03 2010-07-30 多段変速機 Active JP5247886B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011525868A JP5247886B2 (ja) 2009-08-03 2010-07-30 多段変速機

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009180890 2009-08-03
JP2009180890 2009-08-03
PCT/JP2010/062882 WO2011016396A1 (ja) 2009-08-03 2010-07-30 多段変速機
JP2011525868A JP5247886B2 (ja) 2009-08-03 2010-07-30 多段変速機

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2011016396A1 JPWO2011016396A1 (ja) 2013-01-10
JP5247886B2 true JP5247886B2 (ja) 2013-07-24

Family

ID=43544291

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011525868A Active JP5247886B2 (ja) 2009-08-03 2010-07-30 多段変速機

Country Status (7)

Country Link
US (1) US8616078B2 (ja)
EP (1) EP2463555B1 (ja)
JP (1) JP5247886B2 (ja)
CN (1) CN102472370B (ja)
CA (1) CA2767559C (ja)
ES (1) ES2428753T3 (ja)
WO (1) WO2011016396A1 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9114458B2 (en) 2009-08-21 2015-08-25 Illinois Tool Works Inc. Pipe end machining device with axial autofeed
KR101241217B1 (ko) * 2010-11-30 2013-03-13 현대자동차주식회사 자동차의 수동 변속기
JP5899086B2 (ja) * 2012-08-23 2016-04-06 本田技研工業株式会社 多段変速機の変速駆動機構
US9636836B2 (en) 2013-10-03 2017-05-02 Illinois Tool Works Inc. Pivotal tool support for a pipe machining apparatus
DE102016207103B4 (de) 2016-04-27 2018-06-07 Schaeffler Technologies AG & Co. KG Getriebe mit Kupplung und unterbrechungsfrei schaltbarer Schalteinheit zum Schalten zwischen den Getriebeeingangswellen
DE102016208932A1 (de) 2016-05-24 2017-11-30 Schaeffler Technologies AG & Co. KG Doppelkupplung mit unterbrechungsfrei schaltbarer Schalteinheit und Antriebsstrang mit Doppelkupplung
CN112728021B (zh) * 2020-12-28 2022-05-17 重庆市佳南工贸有限公司 一种变速箱

Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5074560U (ja) * 1973-11-08 1975-06-30
JPS54108169A (en) * 1978-02-15 1979-08-24 Yamaha Motor Co Ltd Change gear device
JPS5888043U (ja) * 1981-12-10 1983-06-15 本田技研工業株式会社 自動変速装置

Family Cites Families (19)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US1102427A (en) * 1911-01-05 1914-07-07 Ralph L Morgan Transmission-gearing.
US3889547A (en) * 1973-09-13 1975-06-17 Sun Jun Kai Hydraulically selectable gear transmission
JPS5074650U (ja) 1973-11-13 1975-06-30
US5689998A (en) * 1994-03-31 1997-11-25 The Anchored Corporation Continuous-torque variable-speed transmission
US5570608A (en) * 1995-02-06 1996-11-05 Miller; Robert H. Power transmission
FR2805587B1 (fr) * 2000-02-28 2002-05-17 Valeo Dispositif de transmission automatise a engrenages, en particulier pour vehicule automobile
JP2004529294A (ja) * 2001-03-15 2004-09-24 ヴァレオ 自動車用のトルク変換機付き自動変速装置
US7484605B2 (en) * 2005-06-09 2009-02-03 Means Industries, Inc. Overrunning radial coupling assembly and method for controlling the engagement of inner and outer members of the assembly
FR2913661B1 (fr) * 2007-03-16 2009-04-24 Guy Cavalerie Boite de vitesses a engrenages pour velo,systeme de changement des vitesses
JP4598012B2 (ja) 2007-03-29 2010-12-15 富士フイルム株式会社 インクジェット記録媒体の製造方法
US7882758B2 (en) * 2007-09-21 2011-02-08 Honda Motor Co., Ltd. Transmission and method of up-shifting for transmission
JP4998728B2 (ja) * 2007-09-28 2012-08-15 本田技研工業株式会社 ツインクラッチ式変速装置
JP5386100B2 (ja) * 2008-03-31 2014-01-15 本田技研工業株式会社 多段変速機
JP5142789B2 (ja) * 2008-03-31 2013-02-13 本田技研工業株式会社 多段変速機
JP5184942B2 (ja) * 2008-03-31 2013-04-17 本田技研工業株式会社 多段変速機
JP5049183B2 (ja) * 2008-03-31 2012-10-17 本田技研工業株式会社 多段変速機
JP5086870B2 (ja) * 2008-03-31 2012-11-28 本田技研工業株式会社 多段変速機
JP5036613B2 (ja) * 2008-03-31 2012-09-26 本田技研工業株式会社 多段変速機
JP5086957B2 (ja) 2008-09-25 2012-11-28 本田技研工業株式会社 多段変速機

Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5074560U (ja) * 1973-11-08 1975-06-30
JPS54108169A (en) * 1978-02-15 1979-08-24 Yamaha Motor Co Ltd Change gear device
JPS5888043U (ja) * 1981-12-10 1983-06-15 本田技研工業株式会社 自動変速装置

Also Published As

Publication number Publication date
WO2011016396A1 (ja) 2011-02-10
CA2767559A1 (en) 2011-02-10
JPWO2011016396A1 (ja) 2013-01-10
CN102472370B (zh) 2014-12-31
EP2463555B1 (en) 2013-09-11
US8616078B2 (en) 2013-12-31
CN102472370A (zh) 2012-05-23
EP2463555A4 (en) 2012-12-12
US20120152046A1 (en) 2012-06-21
EP2463555A1 (en) 2012-06-13
ES2428753T3 (es) 2013-11-11
CA2767559C (en) 2014-05-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5086956B2 (ja) 多段変速機
JP5247886B2 (ja) 多段変速機
EP2233784B1 (en) Multistage transmission
JP5714954B2 (ja) 出力スプロケットの取付構造
JP2009243655A (ja) 多段変速機
JP5143055B2 (ja) 多段変速機の潤滑構造
JP5185227B2 (ja) 多段変速機
JP5049237B2 (ja) 多段変速機
JP5049238B2 (ja) 多段変速機
JP5231332B2 (ja) 多段変速機
JP5425741B2 (ja) 潤滑構造およびその潤滑構造を用いた多段変速機
JP5086957B2 (ja) 多段変速機
JP5208811B2 (ja) 多段変速機の変速駆動機構
JP5247538B2 (ja) 出力スプロケット取付構造
JP5178583B2 (ja) 多段変速機の変速駆動機構
JP5349209B2 (ja) 多段変速機
JP2012215236A (ja) 多段変速機
JP5238548B2 (ja) 多段変速機
JP5129180B2 (ja) 自動二輪車搭載内燃機関の変速用アクチュエータ取付構造
JP5238549B2 (ja) 多段変速機
JP5238550B2 (ja) 自動二輪車搭載内燃機関の変速用アクチュエータの配置構造
JP2013204598A (ja) 多段変速機

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130402

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130409

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 5247886

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20160419

Year of fee payment: 3